説明

配管固定機構

【課題】配管固定機構の設置よる部品点数の増加を防ぎ、車両用空気調和装置の部品費用及び組立て工数の増加を防ぐ。
【解決手段】ケース素子の1つである第1ケース素子C21に一体形成される第1パーツ2と、ケースとして組み立てられた際に第1ケース素子C21に隣接する第2ケース素子C3に一体形成される第2パーツ3とを備え、第1パーツ2と第2パーツ3とで狭持することによって複数の配管A,Bを一纏めに保持して固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管固定機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、車両用空気調和装置では、空気をヒータコアで加熱することによって温風を生成している。このヒータコアの熱源としては一般的にエンジンの冷却水が用いられており、エンジンを冷却することによって加熱された冷却水が配管を介してヒータコアに供給されることでヒータコアが加熱される。
【0003】
車両用空気調和装置としては、様々なタイプのものが存在するが、その中の1つに空気を冷却するためのエバポレータがエンジンルーム側に配置され、上記ヒータコアが室内側に配置されるものがある。
上述のようにヒータコアはエンジンの冷却水によって加熱されるものである。このため、エンジンルームとヒータコアとを配管で接続する必要があるが、ヒータコアがエンジンルーム側に配置されていない場合には、エンジンルームから引き出された配管をヒータコアに直結することができず、エバポレータ等を回避して引き廻す必要がある。具体的には、エバポレータ等を内部に収容するケースの外部で上記配管を引き廻してヒータコアに接続する構成を採用している。
【0004】
このようにケースの外部で引き廻される距離が長くなる場合には、車両等の振動により配管が移動しないように、配管固定機構によって配管の端に近い位置をケースに固定している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−136937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1から分かるように、従来の配管固定機構は、配管を固定するための部品が別体とされている。このため、部品点数が増加し、この増加によって車両用空気調和装置の部品費用が増加し、また車両用空気調和装置の組立て工数が増大することとなる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、配管固定機構の設置よる部品点数の増加を防ぎ、車両用空気調和装置の部品費用及び組立て工数の増加を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、車両用空気調和装置にて、複数のケース素子が組み立てられて構成されるケースの外部で引き廻される複数の配管を一纏めに保持して固定する配管固定機構であって、上記ケース素子の1つである第1ケース素子に一体形成される第1パーツと、上記ケースとして組み立てられた際に上記第1ケース素子に隣接する第2ケース素子に一体形成される第2パーツとを備え、上記第1パーツと上記第2パーツとで狭持することによって複数の上記配管を一纏めに保持して固定するという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、前記第1パーツと前記第2パーツとで狭持される前記配管の途中領域は、上記配管を一方向に向かわせるために形成された湾曲領域であるという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1または2の発明において、第1パーツと上記第2パーツとが嵌合された状態において内部が中空とされると共に上記第1パーツと上記第2パーツとが嵌合されることで形成される複数の配管挿入孔を有し、上記配管に作用する外力の方向に開口する上記配管挿入孔が形成される領域の肉厚が他の領域よりも厚いという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、配管固定機構が2つのパーツ(第1パーツと第2パーツ)に分割して構成されており、第1パーツと第2パーツとが異なるケース素子(第1ケース素子と第2ケース素子)に一体形成されている。このため、ケース素子を組み立てることによって第1のパーツと第2のパーツとによって複数の配管が一纏めに保持されて固定される。
つまり、本発明によれば、配管固定機構を構成するパーツがケース素子に一体形成されているため、配管固定機構を構成する部品を別体で設ける必要がなく、配管固定機構を設置することによる部品点数の増加を防ぐことができる。このため、本発明によれば、車両用空気調和装置の部品費用の増加を防ぐことができる。
また、本発明によれば、従来から行われているケース素子の組立てを行うことによって複数の配管を保持して固定することができ、車両用空気調和装置の組立て工数の増加を防ぐことができる。
したがって、本発明によれば、配管固定機構の設置よる部品点数の増加を防ぎ、車両用空気調和装置の部品費用及び組立て工数の増加を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の配管固定機構を備える車両用空気調和装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の配管固定機構を拡大すると共に分解して図示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る配管固定機構の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
図1は、本実施形態の配管固定機構を備える車両用空気調和装置S1(HVAC:Heating Ventilation Air Conditioning)の概略構成を示す斜視図である。
この図に示すように、本実施形態において車両用空気調和装置S1は、ブロワユニットU1と、ヒータユニットU2と、ダクトユニットU3とを備えている。
【0013】
ブロワユニットU1は、外気を取り込む、あるいは内気を循環させることによって空気流を発生させるものである。このブロワユニットU1は、外形を形作るブロワケースC1や、該ブロワケースC1の内部に収容される不図示のブロワ等を備えている。
また、ブロワユニットU1が備えるブロワケースC1は、図1に示すように、3つの小ケースC11〜C13に分割されて構成されている。
【0014】
ヒータユニットU2は、ブロワユニットU1によって生成された空気流の調和を行って調和空気を生成すると共に、調和空気を室内に供給するものである。このヒータユニットU2は、外形を形作るヒータケースC2や、該ヒータケースC2に収容される不図示のヒータコア及びエバポレータ等を備えている。
また、ヒータユニットU2が備えるヒータケースC2は、図1に示すように、2つの小ケースC21,C22(ケース素子)に分割されて構成されている。
【0015】
ダクトユニットU3は、ブロワユニットU1とヒータユニットU2との間に配置されており、ブロワユニットU1で生成された空気流をヒータユニットU2に通気するための流路として機能するものである。このダクトユニットU3は、外形を形作るダクトケースC3(ケース素子)や、該ダクトケースC3の内部に収容される不図示のダクト等を備えている。
【0016】
そして、ブロワユニットU1が備える小ケースC11〜C13と、ヒータユニットU2が備える小ケースC21,C22と、ダクトケースC3とによって、車両用空気調和装置S1のケースCが構成されている。
つまり、車両用空気調和装置S1のケースCは、小ケースC11〜C13と、小ケースC21,C22と、ダクトケースC3からなる複数のケース素子が組み立てられて構成されている。
【0017】
なお、ブロワユニットU1に収容される構成、ヒータケースC2に収容される構成、及びダクトケースC3に収容される構成については、周知の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0018】
図1に示すように、車両用空気調和装置S1は、ヒータユニットU2が備えるヒータコアに接続される2本の配管A,Bを備えている。これらの配管A,Bは、車両用空気調和装置S1のケースCの外部で引き廻され、ヒータコアとエンジンルームとを接続しており、エンジンルームとヒータコアとの間でエンジンの冷却水を流す流路として機能するものである。
より詳細には、配管Aは、ケースCの上方を介して引き廻されており、エンジンルームからの冷却水をヒータコアに供給する流路として機能する。また、配管Bは、ケースCの下方を介して引き廻されており、ヒータコアから送り出された冷却水をエンジンルームに戻す流路として機能する。
そして、これらの配管A,Bは、図1に示すように、本実施形態の配管固定機構1が設置される領域に集約され、当該領域で湾曲されてエンジンルームに向かうように構成されている。
【0019】
本実施形態の配管固定機構1は、ケースCの外部で引き廻される配管A,B(複数の配管)を一纏めに保持して固定するものである。
続いて、図2を参照して、本実施形態の配管固定機構1について詳細に説明する。図2は、本実施形態の配管固定機構1を拡大すると共に分解して図示した分解斜視図である。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の配管固定機構1は、ヒータユニットU2が備える小ケースC21(ケース素子の1つである第1ケース素子)に一体形成される第1パーツ2と、ケースCとして組み立てられた際に小ケースC21と隣接するダクトケースC3(第2ケース素子)に一体形成される第2パーツ3とに分割されて構成されている。
そして、第1パーツ2と第2パーツ3とは嵌合可能なように当接形状が略同一に設定されている。
【0021】
第2パーツ3には第1パーツ側に突出する爪部3aが形成され、第1パーツ2には爪部3aが挿入可能な溝2aが形成されている。これらの爪部3a及び溝2aは、小ケースC21とダクトケースC3とが組立てられた際に、爪部3aが溝2aに挿入されるように配置されている。
そして、爪部3aが溝2aに挿入されることによって第1パーツ2と第2パーツ3とが位置決めされると共に嵌合されるように構成されている。
【0022】
また、第1パーツ2と第2パーツ3とが嵌合された状態で、本実施形態の配管固定機構1の内部が中空となるように、第1パーツ2及び第2パーツ3は、当該内部空間に相当する領域が削られて構成されている。
なお、本実施形態においては、配管固定機構1の内部が中空となることによる強度低下を抑制するために、配管固定機構1の補強を行うためのリブ4が第1パーツ2及び第2パーツ3に設けられている。
【0023】
また、本実施形態の配管固定機構1は、第1パーツ2と第2パーツ3とが嵌合された状態において、配管A及び配管Bを挿入する配管挿入孔5を有している。具体的には、配管挿入孔5として、配管Aのヒータコアに接続される側の出入口となる配管挿入孔5A1と、配管Aのエンジンルームに接続される側の出入口となる配管挿入孔5A2と、配管Bのヒータコアに接続される側の出入口となる配管挿入孔5B1と、配管Bのエンジンルームに接続される側の出入口となる配管挿入孔5B2とを備えている。
配管挿入孔5A2,5B2は、エンジンルーム側に向けて配置される天井壁6にエンジンルームに向けて開口するように形成されている。また、配管挿入孔5A1,5B1は、天井壁6とケース素子(小ケースC21及びダクトケースC3)とを接続する側壁7に形成されている。
【0024】
また、本実施形態の配管固定機構1では、天井壁6が側壁7よりも肉厚に形成されている。
ここで、本実施形態の配管固定機構1によって保持されて固定される配管A,Bは、配管固定機構1とエンジンルームとを接続する方向に力を受ける。
つまり、本実施形態の配管固定機構1は、配管A,Bに作用する外力の方向に開口する配管挿入孔5A2,5B2が形成される領域の肉厚が他の領域よりも厚く形成されている。
【0025】
そして、本実施形態の配管固定機構1では、小ケースC21とダクトケースC3とが組立てられることで、第1パーツ2と第2パーツとが嵌合される。そして、嵌合された第1パーツ2と第2パーツ3とで狭持することによって配管A,Bを一纏めに保持して固定する。
ここで、第1パーツ2と第2パーツ3とは嵌合可能に構成されているため、第1パーツ2と第2パーツ3とを嵌合した場合には、配管A,Bは、当該配管A,Bをエンジンルーム方向に向かわせるために形成された湾曲領域Rが本実施形態の配管固定機構1に挿通された状態で保持されて固定される。
なお、第1パーツ2と第2パーツ3とは嵌合された状態での位置ズレを抑制するために、ビス8によって固定される。
【0026】
以上のような本実施形態の配管固定機構1においては、配管固定機構1が2つのパーツ(第1パーツ2と第2パーツ3)に分割して構成されており、第1パーツ2と第2パーツ3とが異なるケース素子(小ケースC21とダクトケースC3)に一体形成されている。このため、ケース素子を組み立てることによって第1のパーツ2と第2のパーツ3とによって配管A,Bが一纏めに保持されて固定される。
つまり、本実施形態の配管固定機構1によれば、配管固定機構1を構成するパーツがケース素子に一体形成されているため、配管固定機構を構成する部品を別体で設ける必要がなく、配管固定機構を設置することによる部品点数の増加を防ぐことができる。このため、本実施形態の配管固定機構1によれば、車両用空気調和装置の部品費用の増加を防ぐことができる。
また、本実施形態の配管固定機構1によれば、従来から行われているケース素子の組立てを行うことによって配管A,Bを保持して固定することができ、車両用空気調和装置の組立て工数の増加を防ぐことができる。
したがって、本実施形態の配管固定機構1によれば、配管固定機構の設置よる部品点数の増加を防ぎ、車両用空気調和装置の部品費用及び組立て工数の増加を防ぐことが可能となる。
【0027】
また、本実施形態の配管固定機構1では、第1パーツ2と第2パーツ3とが嵌合可能に構成され、第1パーツ2と第2パーツ3とを嵌合することによって、配管A,Bの途中領域が挿通された状態で配管A,Bを保持する。
このため、配管A,Bの全周を保持できるため、確実に配管A,Bを保持して固定することが可能となる。
さらに、本実施形態の配管固定機構1では、配管A,Bをエンジンルーム方向(一方向)に向かわせるために形成された湾曲領域Rが挿通された状態で配管A,Bを保持する。
このため、配管固定機構1から送り出される配管を全てエンジンルーム方向とすることができ、エンジンルームと配管A,Bとの接続を容易に行うことができる。
また、湾曲領域Rを保持することによって、配管A,Bを複数の方向から支えることが可能となり、様々な方向に作用する応力に対して配管A,Bを強固に固定することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態の配管固定機構1では、配管A,Bに作用する外力の方向に開口する配管挿入孔5A2,5B2が形成される領域である天井壁6の肉厚が、他の領域である側壁7よりも厚くされている。
このため、配管A,Bを介して上記外力を受ける場合であっても、配管固定機構1が損傷することを効率的に抑制することが可能となる。また、エンジンルーム側からかかる外力によって配管A,Bが車両空気量和装置S1側に引っ込むことを抑制することが可能となる。
【0029】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0030】
例えば、上記実施形態においては、第1パーツ2が小ケースC21に一体形成され、第2パーツ3がダクトケースC3に一体形成される構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、組み立てられた際に隣接するケース素子であればいずれのケース素子に第1パーツ2と第2パーツ3とを一体形成しても良い。例えば、小ケースC21に第1パーツ2を一体形成し、小ケースC22に第2パーツ3を形成しても良い。
ただし、配管A,Bに引き廻し距離を考慮すると、ヒータコアに極力近いケース素子(上記実施形態においては、小ケースC21とダクトケースC3)に第1パーツ2と第2パーツ3とを一体形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0031】
1……配管固定機構、2……第1パーツ、3……第2パーツ、5……配管挿入孔、6……天井壁、7……側壁、A,B……配管、C……ケース、C11〜C13……小ケース(ケース素子)、C21,C22……小ケース(ケース素子)、C3……ダクトケース(ケース素子)、R……湾曲領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空気調和装置にて、複数のケース素子が組み立てられて構成されるケースの外部で引き廻される複数の配管を一纏めに保持して固定する配管固定機構であって、
前記ケース素子の1つである第1ケース素子に一体形成される第1パーツと、前記ケースとして組み立てられた際に前記第1ケース素子に隣接する第2ケース素子に一体形成される第2パーツとを備え、前記第1パーツと前記第2パーツとで狭持することによって複数の前記配管を一纏めに保持して固定することを特徴とする配管固定機構。
【請求項2】
前記第1パーツと前記第2パーツとで狭持される前記配管の途中領域は、前記配管を一方向に向かわせるために形成された湾曲領域であることを特徴とする請求項1記載の配管固定機構。
【請求項3】
第1パーツと前記第2パーツとが嵌合された状態において内部が中空とされると共に前記第1パーツと前記第2パーツとが嵌合されることで形成される複数の配管挿入孔を有し、前記配管に作用する外力の方向に開口する前記配管挿入孔が形成される領域の肉厚が他の領域よりも厚いことを特徴とする請求項1または2記載の配管固定機構。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−20521(P2011−20521A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165951(P2009−165951)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】