説明

配管接続用アダプタ及び耐震継手への仮設配管の接続方法

【課題】耐震継手の受口管部にも短時間で簡単に仮設配管を着脱可能とする。
【解決手段】配管接続用アダプタ1は、耐震継手の受口管部20よりも大径のフランジ2と、そのフランジ2の一方の面に設けられ、受口管部20へ圧入可能で、且つ先端がロックリング25に達しない長さを有する差込筒3と、フランジ2の他方の面に設けられ、差込筒3内と連通して仮設配水管を接続可能な接続管4と、フランジ2を受口管部20への押圧状態で固定する受けリング9及びボルト10と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受口管部に挿入管部を挿入して接合する耐震継手を採用した配管に、仮設配管を接続するために用いられる配管接続用アダプタと、その配管接続用アダプタを用いて耐震継手へ仮設配管を接続するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
水道管やガス管等の配管においては、地震等による外力が作用しても離脱しにくい工夫がなされた耐震継手がよく用いられる。これは、NS形やS形等と称される構造で、拡開した受口管部と、その受口管部に挿入される挿入管部とからなり、受口管部の内周面に凹設した環状溝にシール部材を装着すると共に、奥側のシール部材の内周側にロックリングを装着する一方、挿入管部の先端外周に、受口管部に差し込まれた状態でロックリングの奥側に位置する環状突起を周設した構成となっている(例えば特許文献1、図8参照)。このロックリングと環状突起との係合によって挿入管部の離脱方向への移動が規制され、受口管部と挿入管部との一体性が高められるものである。
【0003】
【特許文献1】特開2001−317659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば配水管の布設替えを行う場合、図1に示すように、配水管A,B間に布設されて宅地等への給水管31を接続した配水管Cを、バルブV1,V2を含めて交換するような場合、工事中に長時間の断水を行わないように、先にバルブV1,V2を設置して両バルブ間に仮設配水管30を接続し、その仮設配水管30に給水管31を接続して、宅地等への給水を確保してから配水管Cの交換が行われる。
しかし、バルブV1,V2として、上記耐震継手の受口管部を両端に備えた周知のソフトシール弁を採用すると、これに合わせた挿入管部を備えた仮設配水管30を接続することになるが、上記ロックリングと環状突起との係合によって挿入管部の取り外しが簡単に行えないため、上記特許文献1に開示されるような管脱着装置を用いて挿入管部の着脱を行うか、若しくは仮設配水管として一部切り管を接続し、その先から布設を行う必要がある。従って、布設替えに係る作業に時間や手間が掛かり、作業効率が悪くなる上、管脱着装置を耐震継手に装着して使用するスペースや、仮設配水管として切り管を布設するためのスペースを確保するために作業ピットも大きくなり、工事範囲の拡大にも繋がってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、耐震継手の受口管部にも短時間で簡単に仮設配管を着脱可能とし、作業効率の向上を図ると共に、作業ピットも省スペース化できる配管接続用アダプタと、耐震継手への仮設配管の接続方法とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、挿入管部の先端を係止させるロックリングを内周面に備えた耐震継手の受口管部へ仮設配管を接続するために設けられる配管接続用アダプタであって、受口管部よりも大径のフランジと、そのフランジの一方の面に設けられ、受口管部へ圧入可能で、且つ先端がロックリングに達しない長さを有する差込筒と、フランジの他方の面に設けられ、差込筒内と連通して仮設配管を接続可能な接続部と、フランジを受口管部への押圧状態で固定する固定手段と、を備えたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の目的に加えて、フランジを簡単且つ確実に固定するために、固定手段は、受口管部の外周に装着された受けリングとフランジとをボルトで連結する構成としたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の目的に加えて、仮設配管着脱時の空気や泥等の混入防止や、既設配水管からの赤水の排出等の管洗浄を効果的に行うために、接続部を、その内径部が差込筒の内周に接するように差込筒の中心から偏心した位置に設けたものである。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、耐震継手への仮設配管の接続方法であって、挿入管部の先端を係止させるロックリングを内周面に備えた耐震継手の受口管部に、請求項1乃至3の何れかに記載の配管接続用アダプタの差込筒を挿入し、固定手段で配管接続用アダプタのフランジを受口管部に固定して、配管接続用アダプタの接続部に仮設配管を接続することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び4に記載の発明によれば、配管接続用アダプタが受口管部へ短時間で簡単に着脱可能となるため、管脱着装置を用いることなく仮設配管を容易に設置可能となり、作業効率が向上する。また、作業ピットも省スペースとなるので、工事区間が最小限で済み、工事期間の短縮も期待できる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、受口管部の形状を利用してフランジを簡単且つ確実に固定することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、接続部が差込筒の上側となるように配管接続用アダプタを接続すれば、空気が混入しても接続部側で容易に排除でき、泥等の混入も防止可能となる。逆に、接続部が差込筒の下側となるように配管接続用アダプタを接続すれば、既設配水管からの赤水の排出等管洗浄が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の配管接続用アダプタ(以下単に「アダプタ」という。)の一例を示す説明図で、アダプタ1は、円形のフランジ2の一方の面に差込筒3を同心で突設し、他方の面に、手動開閉弁5を備えて差込筒3内と連通する接続部としての接続管4を突設してなる。接続管4は、その内径部が差込筒3の内周に接するように差込筒3の中心から偏心した位置に設けられている。
また、フランジ2の外周寄りには、4つのネジ孔6,6・・が周方向へ等間隔で配設され、その内側にも、点対称位置に2つのネジ孔7,7が形成されている。
【0010】
図3は、このアダプタ1をソフトシール弁の受口管部20に接続した状態を示すもので、受口管部20は、内周に凹設した環状溝21にゴム輪22が収容され、そのゴム輪22の奥側に凹設した第2環状溝23内に、ゴムリング24とロックリング25とを夫々収容した周知のNS形となっている。ここに挿入管部を挿入すると、挿入管部の先端外周に設けた突起がロックリング25と係止して抜け止め装着されるものである。
ここで、アダプタ1の差込筒3は、受口管部20のゴム輪22に圧入される外径を有したものであるが、長さは、接続状態で先端がゴム輪22を越えるが、ロックリング25までは達しない長さとなっている。また、先端外周には、圧入時のゴム輪22との干渉を軽減するために面取部8が形成されている。
【0011】
9は、一対の半割部を組み合わせて互いにボルトで一体化される受けリングで、受口管部20の外周に凹設されたくびれ部26の位置で組み付けられ、周方向へ等間隔に貫通させた4本のボルト10,10・・をフランジ2に設けたネジ孔6にねじ込むことで、アダプタ1のフランジ2を受口管部20の端部に押圧して受口管部20に固定可能となる。この受けリング9とボルト10とがフランジ2の固定手段となり、アダプタ1に加わる止水圧を受けることができる。
【0012】
以上の如く構成されたアダプタ1は、図1に示したような配水管Cの布設替えを行う場合、まず、配水管A,Bを断水させてバルブV1,V2としてソフトシール弁を設置した後、各ソフトシール弁の受口管部20,20にアダプタ1,1を接続する。このとき、接続管4が上側となる回転位置で差込筒3を受口管部20の内径にあてがって押し込んだ後、受口管部20のくびれ部26に受けリング9を取り付けて、ボルト10を受けリング9に貫通させてアダプタ1のフランジ2にねじ込む。このねじ込みによって差込筒3がさらに押し込まれてフランジ2が受口管部20の端部に当接し、アダプタ1の取付は完了する。なお、アダプタ1の取付の際、差込筒3が押し込まれやすいように予め差込筒3の外周に潤滑剤を塗布しておくのが望ましい。
【0013】
そして、両アダプタ1,1の接続管4,4間に仮設配水管30を接続して同図に点線で示すように各宅地等への給水管を接続し、配水管A,Bの断水を解除してソフトシール弁を開け、手動開閉弁5を開弁させれば、各宅地等への給水が行われる。こうして仮設配水管30を接続している状態で配水管Cを新管に交換する。
なお、各アダプタ1において接続管4は差込筒3の上側で接続されているので、取付の際に空気が混入しても接続管4側で容易に排除でき、泥等の混入も防止される。逆に、接続管4が差込筒3の下側となるようにアダプタ1を接続すれば、既設配水管からの赤水の排出等管洗浄が容易に行える。
【0014】
新管の設置後は、ソフトシール弁及び各アダプタ1の手動開閉弁5を閉弁させた後、給水管31を新管に付け替え、各アダプタ1の接続管4から仮設配水管30を取り外すと共に、ボルト10をフランジ2から取り除き、受けリング9を取り外してアダプタ1を受口管部20から抜き取る。このとき、フランジ2のネジ孔7,7にボルトを螺合させ、ボルトを利用してフランジ2を引っ張るようにすれば、アダプタ1を容易に受口管部20から抜き取ることができる。後は新管と受口管部20とを切り管や継輪等を用いて連結すればよい。
【0015】
このように、上記形態によれば、受口管部20よりも大径のフランジ2と、そのフランジ2の一方の面に設けられ、受口管部20へ圧入可能で、且つ先端がロックリング25に達しない長さを有する差込筒3と、フランジ2の他方の面に設けられ、差込筒3内と連通して仮設配水管30を接続可能な接続管4と、フランジ2を受口管部20への押圧状態で固定する受けリング9及びボルト10とを備えたアダプタ1を用いたことで、受口管部20へ短時間で簡単に着脱可能となる。よって、管脱着装置を用いることなく仮設配水管30を容易に設置可能となり、作業効率が向上する。また、作業ピットも省スペースとなるので、工事区間が最小限で済み、工事期間の短縮も期待できる。
特に、フランジ2の固定手段を、受口管部20の外周に装着された受けリング9とフランジ2とをボルト10で連結する構成としたことで、受口管部20の形状を利用してフランジ2を簡単且つ確実に固定することができる。
【0016】
なお、フランジの固定手段は、上記形態に限定するものではなく、例えば受けリングを、図4(A)に示すように、半円弧状の板体12の端部側面に同心円弧状の連結板13を溶接し、連結板13を含む等間隔位置に透孔14,14・・を設けた半割リング11,11を、同図(B)のように一対組み合わせて受けリング9aを形成する構造とすれば、受口管部20へ組み付けて一方の連結板13と他方の板体12の透孔14,14を貫通させてボルト10をフランジ2へねじ込めば、半割リング11,11の一体化と受けリング9aの装着とが同時に行え、半割リング11,11同士を先に組み付けてからフランジと連結する必要がなくなる。
【0017】
また、上記形態のようにボルトで連結するものに限らず、図5のようにフランジ2に基端を貫通させたフック棒15,15・・の先端を受けリング9や9aの透孔に掛止させ、基端側のナット16の締め込みでフランジ2を受口管部20へ押圧させる等の設計変更が可能である。この場合、逆に受けリング側にフック棒15を設けて先端をフランジ2に掛止させるようにしてもよい。
さらに、受けリングは、受口管部にくびれ部がない場合は奥側の小径部に対して装着しても差し支えない。このとき、小径部の外面が傾斜している場合は受けリングの内面を当該傾斜に合わせてテーパ状にするのが望ましい。
但し、ソフトシール弁の場合は図6に示すように受口管部20の外面に環状部27が設けられていることが多いので、この環状部27を利用してフック棒15を係止させるようにすれば、受けリングが不要となり、より作業が楽となる。
【0018】
一方、アダプタに設ける接続管も、1本に限らず、径やタイプが異なる複数の接続管を設け、必要に応じて任意の接続管を選択できるようにしても差し支えない。勿論手動開閉弁の省略も可能である。
例えば図5に示すアダプタ1では、手動開閉弁5がある接続管4とない接続管4aとを2本設けたもので、この場合も各接続管4,4aの内径部が差込筒3の内周に接する位置に設けているため、使用する接続管が差込筒3の上側に位置するように装着すればよい。
さらに、接続部としては上記接続管に限らず、例えばアダプタのフランジに設けたネジ孔として、仮設配水管を直接ねじ込み接続させる等、他の形態も採用できる。
【0019】
その他、上記形態ではソフトシール弁の受口管部に仮設配水管を接続する場合で説明しているが、ソフトシール弁に限らず、耐震継手の受口管部であれば他の配管においても本発明のアダプタは採用可能である。勿論耐震継手としてはNS形以外にS形等の他のタイプでも差し支えなく、耐震継手のタイプに合わせて差込筒の径や長さを変更すればよい。
一方、上記形態では、水道管において仮設配水管を用いる場合で説明しているが、ガス管において仮設配管を用いる場合も本発明の適用は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】配水管の布設替えを示す説明図である。
【図2】アダプタの説明図で、(A)が側面、(B)が背面を夫々示す。
【図3】アダプタを受口管部に装着した状態を示す説明図である。
【図4】(A)は変更した半割リングの側面及び正面を、(B)は受けリングの正面を夫々示す。
【図5】変更例のアダプタを受口管部に装着した状態を示す説明図である。
【図6】フック棒を利用したアダプタの装着状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・配管接続用アダプタ、2・・フランジ、3・・差込筒、4,4a・・接続管、、5・・手動開閉弁、6,7・・ネジ孔、9,9a・・受けリング、10・・ボルト、15・・フック棒、20・・受口管部、26・・くびれ部、30・・仮設配水管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入管部の先端を係止させるロックリングを内周面に備えた耐震継手の受口管部へ仮設配管を接続するために用いられる配管接続用アダプタであって、
前記受口管部よりも大径のフランジと、そのフランジの一方の面に設けられ、前記受口管部へ圧入可能で、且つ先端が前記ロックリングに達しない長さを有する差込筒と、前記フランジの他方の面に設けられ、前記差込筒内と連通して前記仮設配管を接続可能な接続部と、前記フランジを前記受口管部への押圧状態で固定する固定手段と、を備えたことを特徴とする配管接続用アダプタ。
【請求項2】
固定手段は、受口管部の外周に装着された受けリングとフランジとをボルトで連結するものである請求項1に記載の配管接続用アダプタ。
【請求項3】
接続部を、その内径部が差込筒の内周に接するように前記差込筒の中心から偏心した位置に設けた請求項1又は2に記載の配管接続用アダプタ。
【請求項4】
挿入管部の先端を係止させるロックリングを内周面に備えた耐震継手の受口管部に、請求項1乃至3の何れかに記載の配管接続用アダプタの差込筒を挿入し、固定手段で前記配管接続用アダプタのフランジを前記受口管部に固定して、前記配管接続用アダプタの接続部に仮設配管を接続することを特徴とする耐震継手への仮設配管の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−17005(P2007−17005A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2006−290434(P2006−290434)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(500529676)名古屋市 (8)
【Fターム(参考)】