説明

配管断熱システム部材およびその施工方法

【課題】建造物の内外に設置された配管を断熱する際の施工を容易に行うことができる配管断熱システム部材およびその施工方法を提供する。
【解決手段】配管断熱システム10では、配管1のうち直管2または屈曲管の部分については、ゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材により構成された管被覆部材20で覆い、配管1のうちチーズ3やエルボ4等の役物の部分については、発泡スチロール成形品等の樹脂系発泡体成形品、およびその外側表面に貼り付けたアルミ箔等により構成された役物被覆部材30,60で覆う。また、役物被覆部材30,60に両面粘着テープの貼り付け等により粘着加工を施しておき、管被覆部材20と役物被覆部材30,60とを粘着により接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の内外に設置された配管を断熱するための配管断熱システム部材およびその施工方法に係り、直管または屈曲管とこれらの管を連結する役物とにより構成された配管の断熱に利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調・衛生設備等の各種設備において配管の断熱を行う際には、例えば、繊維系断熱材であるグラスウール、あるいは樹脂系発泡体であるポリウレタンフォーム(PUF)やポリエチレンフォーム(PEF)等が用いられている。これらの繊維系断熱材や樹脂系発泡体は、吸湿性のある断熱材であるため、結露やカビの発生を防ぐために防湿層を設けなければならない。
【0003】
これに対し、優れた防湿効果を発揮する軟質ゴム系発泡体(FEF;Flexible Elastometic Foam)を用いた配管の断熱も行われている。この軟質ゴム系発泡体を用いることで、防湿層の形成が不要になるとともに、それに伴って防湿層の施工も不要になるという利点があるが、その一方で、ゴムの場合は、手作業での切り貼りとなることから、成型品の場合に比べ、施工に手間がかかるという問題がある。
【0004】
なお、以上のように、断熱性能の確保および施工の容易化は、ともに配管断熱の分野における技術テーマであり、各種の提案がなされている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−47587号公報
【特許文献2】特開2000−320787号公報
【特許文献3】特開2005−106145号公報
【特許文献4】特開平10−54498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、軟質ゴム系発泡体を用いて配管の断熱を行えば、優れた防湿効果を発揮させることができ、断熱性能を長期間維持することが可能となるものの、その一方で、手作業が多くなり、施工が容易ではなくなるという問題が生じる。
【0007】
さらに、各種設備の配管は、通常、直管または屈曲管と、これらの管を連結するエルボやフランジ等の役物(やくもの)とにより構成されるが、我が国では、建造物の設置スペースが狭く、必然的に役物の設置数が多くなるという事情があることから、このことも施工の容易化を妨げる要因となっている。
【0008】
従って、十分な断熱性能を確保しつつ、施工の容易化を図ることができるような配管断熱システムの開発が望まれる。
【0009】
本発明の目的は、建造物の内外に設置された配管を断熱する際の施工を容易に行うことができる配管断熱システム部材およびその施工方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、直管または屈曲管とこれらの管を連結する役物とにより構成された配管を断熱するための配管断熱システム部材であって、直管または屈曲管の外周面を覆うように配置される管被覆部材と、役物の外側表面を覆うように配置される役物被覆部材とを組み合わせてなり、管被覆部材は、ゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材により構成され、役物被覆部材は、樹脂系発泡体成形品の外側表面に、管被覆部材の外周面の色と同色のコーティングを施したアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品を貼り付け、かつ、樹脂系発泡体成形品の管被覆部材との接合面に粘着加工を施した構成とされていることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、「管被覆部材」は、チューブ状の成形品を長手方向(円筒の軸線方向)に沿って1カ所切断した背割れタイプの部材(図4参照)、切断箇所のないチューブ状の成形品、チューブ状の成形品を長手方向(円筒の軸線方向)に沿って2カ所以上切断した分割タイプの部材、直管または屈曲管の外周に手作業で巻き付けるシート状の部材のいずれであってもよく、さらには、これらの外周側に、ゴムまたはエラストマーの発泡体の色とは異なる色の着色用のシートを貼り付けた構成のもの(図6参照)でもよい。
【0012】
また、「樹脂系発泡体成形品」には、例えば、発泡スチロール、ポリスチレンフォーム(EPS)、ポリウレタンフォーム(PUF)、ポリエチレンフォーム(PEF)、フェノールフォーム(PF)等の成形品が含まれるが、特に、性能面およびコスト面を総合的に勘案すると、発泡スチロール成形品とすることが好ましい。
【0013】
さらに、「樹脂製フィルム」には、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルムが含まれ、「積層品」には、複数種類の樹脂製フィルムを積層したものの他、アルミ箔と樹脂製フィルムとを積層したものも含まれる。そして、後者のアルミ箔と樹脂製フィルムとの積層品は、例えば、PETのフィルム、アルミ箔、PVCのフィルムをこの順に積層する場合のように、全て異なる種類の材料を積層したものでもよく、あるいは、例えば、アルミ箔、PETのフィルム、アルミ箔、PETのフィルムをこの順に積層する場合のように、同じ積層パターンを複数回繰り返したもの等でもよい。
【0014】
また、樹脂系発泡体成形品の管被覆部材との接合面に施される「粘着加工」には、両面粘着テープを貼り付けることの他、粘着剤を塗布することも含まれる。
【0015】
このような本発明の配管断熱システム部材においては、配管のうち直管または屈曲管の部分については、ゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材により構成された管被覆部材で覆われるので、従来の繊維系断熱材であるグラスウール、あるいは樹脂系発泡体であるポリウレタンフォーム(PUF)やポリエチレンフォーム(PEF)等による配管断熱の場合に比べ、優れた防湿効果を得ることができ、断熱性能を長期間維持することが可能となる。
【0016】
また、配管のうち役物の部分については、樹脂系発泡体、およびアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品により構成された役物被覆部材で覆われるので、樹脂系発泡体により断熱性能が確保されるとともに、防湿材としてのアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品により防湿効果を得ることができるうえ、樹脂系発泡体成形品を用いるので、施工現場での手作業での切り貼りを行う必要がないため、施工が容易になる。
【0017】
さらに、役物被覆部材には、管被覆部材との接合面に粘着加工が施されているので、役物被覆部材と管被覆部材とを粘着により接合することができ、これによっても施工が容易になる。
【0018】
そして、役物被覆部材を構成するアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品の表面には、管被覆部材の外周面の色と同色のコーティングが施されているので、外見上、役物被覆部材と管被覆部材とは同一色となり、意匠性が向上し、これらにより前記目的が達成される。
【0019】
なお、前述した特許文献1〜4のいずれにも、本発明のような特徴を有する役物被覆部材と管被覆部材とを組み合わせてなる配管断熱システム部材の記載はない。
【0020】
また、前述した配管断熱システム部材において、管被覆部材は、円筒状に成形されたゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材を、円筒の長手方向に沿って切断し、切断して形成された対向する背割れ面の両面または片面に粘着加工を施した構成とされ、管被覆部材の外周面は、黒色とされ、役物被覆部材には、黒色のコーティングを施したアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品が貼り付けられていることが望ましい。
【0021】
ここで、対向する背割れ面の両面または片面に施される「粘着加工」には、粘着剤を塗布することの他、両面粘着テープを貼り付けることも含まれる。
【0022】
このように背割れタイプの管被覆部材とし、かつ、役物被覆部材のアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品の表面に黒色のコーティングを施した場合には、背割れ面同士を粘着により接合することで、管被覆部材の設置作業を行うことができるので、より一層、施工が容易になる。また、管被覆部材を構成するゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材は、通常、黒色であり、この断熱材の表面に着色のための特別な処理(例えば、着色用のシートを貼り付けたり、塗装したりする処理等)を施さなくても、管被覆部材の外周面を黒色にすることができるので、役物被覆部材のアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品の表面に黒色のコーティングを施すことにより、連結される役物被覆部材および管被覆部材の双方の表面の色を黒で統一することができることから、施工の手間をかけることなく、容易に意匠性を向上させることが可能となる。
【0023】
また、本発明は、直管または屈曲管とこれらの管を連結する役物とにより構成された配管を断熱するための配管断熱システム部材の施工方法であって、樹脂系発泡体成形品の外側表面に、黒色のコーティングを施したアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品を貼り付け、かつ、樹脂系発泡体成形品の隣接配置される被覆部材との接合面に粘着加工を施した構成を有する役物被覆部材を、役物の外側表面を覆うように配置するとともに、円筒状に成形されたゴムまたはエラストマーの発泡体からなる黒色の断熱材を、円筒の長手方向に沿って切断し、切断して形成された対向する背割れ面の両面または片面に粘着加工を施した構成を有する管被覆部材を、直管または屈曲管の外周面を覆うように配置した後、役物被覆部材の粘着加工を施した面と管被覆部材の端面とを粘着により接合するとともに、管被覆部材の対向する背割れ面同士を粘着により接合することを特徴とするものである。
【0024】
このような本発明の配管断熱システム部材の施工方法においては、前述した本発明の配管断熱システム部材で得られる各効果がそのまま得られるので、断熱性能の確保および施工の容易化を図ることが可能となり、これにより前記目的が達成される。
【発明の効果】
【0025】
以上に述べたように本発明によれば、配管のうち直管または屈曲管の部分については、ゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材により構成された管被覆部材で覆われ、配管のうち役物の部分については、樹脂系発泡体、およびアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品により構成された役物被覆部材で覆われ、また、部材間の接合は粘着により行われるので、十分な断熱効果を得ることができるとともに、配管断熱のための施工を容易に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の配管断熱システムの全体構成を分解状態および組立状態で示す斜視図。
【図2】前記実施形態の配管断熱システム部材を構成する役物被覆部材の分解状態の拡大斜視図。
【図3】図2におけるA−A断面で示された前記実施形態の役物被覆部材の組立状態の断面図。
【図4】前記実施形態の配管断熱システム部材を構成する管被覆部材の拡大斜視図。
【図5】図4におけるB−B断面で示された前記実施形態の管被覆部材の要部の断面図。
【図6】本発明の変形の形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本実施形態の配管断熱システム10の全体構成が分解斜視状態(施工前の状態)および組立斜視状態(施工後の状態)で示されている。図2は、配管断熱システム部材である役物被覆部材30の分解状態を示す拡大斜視図であり、図3は、図2中のA−A断面で示された役物被覆部材30の組立状態の断面図である。また、図4は、配管断熱システム部材である管被覆部材20の拡大斜視図であり、図5は、図4中のB−B断面で示された管被覆部材20の背割れ面22A,22B近傍の断面図である。
【0028】
図1において、配管断熱システム10は、配管1の断熱を行うための複数の部材からなるシステムである。図1の例に示された配管1は、複数本の直線状に延びる中空円管である直管2と、3本の直管2を連結するT字状のチーズ3と、例えば90度等の角度をなす状態で2本の直管2を連結するL字状のエルボ4とを含んで構成されている。
【0029】
チーズ3やエルボ4は、いわゆる役物(やくもの)であり、一般的な管材ではなく、特定の位置や用途だけに使用される異形の管材であるが、本願発明でいう「役物」には、チーズ3やエルボ4の他に、例えば、フランジ、異径管用の継ぎ手、Y字分岐、バルブや流量計やセンサ等の機器などが含まれ、これらにも本願発明における役物被覆部材を適用することができる。
【0030】
また、図1の例では、配管1のうち役物以外の部分は、直管2となっているが、例えばS字状や螺旋状等のように屈曲している屈曲管でもよく、屈曲管にも本願発明における管被覆部材を適用することができる。但し、ここでいう「屈曲管」は、役物であるエルボのことではなく、管の内径に対し、長手方向(流れ方向)の長さが比較的長い一般的な管のことである。また、図1の例では、直管2は、中空円管とされているが、本願発明でいう直管や屈曲管の断面形状は任意である。
【0031】
そして、配管断熱システム10では、図1の例に示された配管1のうち、直管2については、配管断熱システム部材の一要素である管被覆部材20により被覆し、役物であるチーズ3、エルボ4については、配管断熱システム部材の一要素である役物被覆部材30,60によりそれぞれ被覆するようになっている。従って、配管断熱システム10を構築するための配管断熱システム部材は、管被覆部材20と、各種の役物被覆部材30,60等とを組み合わせてなるものである。
【0032】
図4および図5において、管被覆部材20は、直管2の部分を断熱被覆するための部材であり、円筒状に成形されたゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材21を、円筒の長手方向(円筒の軸線方向)に沿って切断して形成された背割れタイプの部材である。なお、本願明細書では、この断熱材21を軟質ゴム系発泡体(FEF;Flexible Elastometic Foam)と称するものとする。
【0033】
また、管被覆部材20の断熱材21を切断して形成された、対向する背割れ面22A,22Bの両面または片面(図示の例では、両面とする。)には、粘着加工が施されている。すなわち、断熱材21の背割れ面22A,22Bには、粘着剤23が塗布され、この粘着剤23の上(外側)には、予定しない状態で粘着剤23に部材等が付着することを防止するための剥離ライナ24が貼り付けられ、この剥離ライナ24を剥がすことにより所望の部材(ここでは、背割れ面22A,22B同士)を粘着することができるようになっている。
【0034】
軟質ゴム系発泡体(FEF)からなる断熱材21は、黒色であるが、本実施形態では、断熱材21の外周側に着色用のシート(後述する図6参照)を貼り付けることはしないので、管被覆部材20の外周面は、黒色となっている。
【0035】
なお、図4および図5において、粘着剤23の層および剥離ライナ24は、説明の便宜上、かなり厚みを持たせた状態で誇張されて図示されているが、これらの実際の厚みは、管被覆部材20の全体の大きさに対し、相対的には、より薄いものであり、また、粘着剤23の層と剥離ライナ24との相対的な厚み関係も、図示の状態は実際のものとは異なっている。さらに、図4は、背割れ面22A,22B同士の間隔を一部拡げた状態で図示されており、図1や図5も、背割れタイプの部材であるイメージを出すために、背割れ面22A,22B同士の間隔を拡げた状態で記載されているが、実際には、ほぼ隙間がない程に狭く、両面の剥離ライナ24同士が接触する部分があってもよい。
【0036】
図2および図3において、役物被覆部材30は、チーズ3の部分を断熱被覆するための部材であり、長手方向(流れ方向)に沿う面、すなわちチーズ3の軸線を含む面で2分割された役物被覆部材30A,30Bにより構成されている。これらの役物被覆部材30A,30Bは、チーズ3を覆うように、すなわちチーズ3が空洞部に収まるように成形された樹脂系発泡体成形品である発泡スチロール成形品31A,31Bと、これらの発泡スチロール成形品31A,31Bの外側表面にそれぞれ貼り付けられたアルミ箔40と、発泡スチロール成形品31A,31Bの管被覆部材20との接合面32A,32B,33A,33B,34A,34Bにそれぞれ貼り付けられた両面粘着テープ50とを備えて構成されている。
【0037】
アルミ箔40には、図3に示すように、管被覆部材20の外周面の色(本実施形態では、軟質ゴム系発泡体(FEF)の地色である黒色)と同色である黒色のコーティング41が施されている。このアルミ箔40は、工場出荷時から、粘着剤42により発泡スチロール成形品31A,31Bの外側表面にそれぞれ貼り付けられている。本実施形態では、工場で、黒色のコーティング41が施されたアルミ箔40の裏面に粘着剤42を塗布したアルミテープを、発泡スチロール成形品31A,31Bの外側表面に貼り付けることにより、役物被覆部材30A,30Bが製造されている。従って、図2に示すように、役物被覆部材30A,30Bの外側表面に、アルミテープの端縁43の線が入っているが、発泡スチロール成形品31A,31Bへのアルミ箔40の貼付方法は、これに限定されるものではなく、任意である。
【0038】
両面粘着テープ50は、基層シート51と、この基層シート51の一方の面に塗布された粘着剤52と、他方の面に塗布された粘着剤53とを備えて構成されている。そして、両面粘着テープ50は、粘着剤52により発泡スチロール成形品31A,31Bの管被覆部材20との接合面32A,32B,33A,33B,34A,34Bにそれぞれ貼り付けられている。また、粘着剤53には、予定しない状態で粘着剤53に部材等が付着することを防止するための剥離ライナ54が貼り付けられ、この剥離ライナ54を剥がすことにより所望の部材(ここでは、管被覆部材20)を粘着することができるようになっている。
【0039】
また、図2に示すように、発泡スチロール成形品31A,31B同士の接合面35A,35Bには、位置合わせ用の凹部36および凸部37が設けられ、これらの凹部36と凸部37との嵌合により役物被覆部材30A,30Bの組立時の位置合わせが行われるようになっている。この際、凹部36および凸部37の形状や設置位置は、図示の例に限定されるものではない。
【0040】
なお、図2および図3において、アルミ箔40、黒色のコーティング41、および粘着剤42の層は、説明の便宜上、かなり厚みを持たせた状態で誇張されて図示されているが、これらの実際の厚みは、役物被覆部材30の全体の大きさに対し、相対的には、より薄いものであり、また、これらの3層の相対的な厚み関係も、図示の状態は実際のものとは異なっている。さらに、両面粘着テープ50の基層シート51、粘着剤52の層、粘着剤53の層、および剥離ライナ54の場合も同様であり、誇張されて図示されるとともに、これらの4層の相対的な厚み関係も、実際のものとは異なっている。
【0041】
図1において、役物被覆部材60は、エルボ4の部分を断熱被覆するための部材である。この役物被覆部材60は、チーズ3用の役物被覆部材30の場合と同様に、2分割された役物被覆部材60A,60Bにより構成されているが、断熱被覆構造および他の部材との接合部分の構造は、チーズ3用の役物被覆部材30の場合と同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0042】
このような本実施形態においては、以下のようにして配管断熱システム部材である管被覆部材20および役物被覆部材30,60等を用いて配管断熱システム10の施工を行う。
【0043】
図1に示すように、先ず、役物被覆部材30A,30Bを凹凸嵌合により位置合わせしながら組立てて、配管1のうちチーズ3の部分を覆うように役物被覆部材30を配置する。同様にして、役物被覆部材60A,60Bを凹凸嵌合により位置合わせしながら組立てて、配管1のうちエルボ4の部分を覆うように役物被覆部材60を配置する。チーズ3やエルボ4以外の役物がある場合には、それらの役物も、それら専用の役物被覆部材で覆う。そして、組み立てた役物被覆部材を固定するために、これらの役物被覆部材の接合部分(役物被覆部材30Aと役物被覆部材30Bとの接合部分や、役物被覆部材60Aと役物被覆部材60Bとの接合部分等)に、アルミ箔に粘着加工を施したアルミテープ70を貼り付けることにより、これらの役物被覆部材が自然に分割することを防ぐとともに、継ぎ目を覆い隠す。
【0044】
次に、管被覆部材20の長さを切断等により調整した後、管被覆部材20の背割れ面22A,22B同士の間隔を一時的に拡げながら、管被覆部材20を直管2(あるいは、屈曲管でもよい。)の外周面を覆うように配置する。
【0045】
続いて、管被覆部材20に貼り付けられている剥離ライナ24を剥がし(図4参照)、図4中の矢印Pのように力を加え、管被覆部材20の背割れ面22A,22B同士を粘着により圧着する。それから、役物被覆部材30に貼り付けられている両面粘着テープ50の剥離ライナ54を剥がし(図2参照)、役物被覆部材30と管被覆部材20とを粘着により接合する。また、図示はされてないが、管被覆部材20を連続配置する場合には、両面粘着テープを用いて管被覆部材20の端面同士を粘着により接合する。
【0046】
さらに、図1に示すように、部材間の接合部分、すなわち役物被覆部材30と管被覆部材20との接合部分、および管被覆部材20同士の接合部分(不図示)に、アルミ箔に粘着加工を施したアルミテープ70を貼り付けることにより、継ぎ目を覆い隠す。このアルミテープ70は、アルミ箔の一方の面に粘着剤を塗布し、他方の面に黒いコーティングを施したものであり、役物被覆部材30の外側表面へのアルミ箔40の貼り付け(工場での加工)に用いたアルミテープと同じものを用いることができる。
【0047】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、配管断熱システム10では、配管1のうち、直管2または屈曲管(不図示)の部分については、ゴムまたはエラストマーの発泡体(軟質ゴム系発泡体)からなる断熱材21により構成された管被覆部材20で覆われるので、従来の繊維系断熱材であるグラスウール、あるいは樹脂系発泡体であるポリウレタンフォーム(PUF)やポリエチレンフォーム(PEF)等による配管断熱の場合に比べ、優れた防湿効果を得ることができ、断熱性能を長期間維持することができる。
【0048】
また、配管1のうち、チーズ3やエルボ4等の役物の部分については、発泡スチロールおよびアルミ箔40により構成された役物被覆部材30,60等で覆われるので、発泡スチロールにより断熱性能を確保することができるとともに、防湿材としてのアルミ箔40により防湿効果を得ることができる。
【0049】
さらに、チーズ3やエルボ4等の役物の大きさや形状に応じて作られた発泡スチロール成形品31A,31B等により構成される役物被覆部材30,60等を用いて施工を行うことができるので、施工現場での手作業での切り貼りを行う必要がないため、施工を容易に行うことができる。
【0050】
そして、役物被覆部材30,60等には、管被覆部材20との接合面32A,32B,33A,33B,34A,34B等に両面粘着テープ50が貼り付けられているので、役物被覆部材30,60等と管被覆部材20とを粘着により接合することができる。このため、液状の接着剤を用いた施工を行う必要はないので、施工を容易に行うことができる。
【0051】
また、予め長手方向(流れ方向)に沿って切断されている背割れタイプの管被覆部材20を用いるので、部材の切断作業の手間を省くことができる。さらに、管被覆部材20の背割れ面22A,22Bには、粘着加工が施されているので、液状の接着剤を用いずに、背割れ面22A,22B同士を粘着により容易に圧着することができる。このため、施工を容易に行うことができる。
【0052】
また、役物被覆部材30,60等を構成するアルミ箔40の表面には、管被覆部材20の外周面の色(すなわち、軟質ゴム系発泡体の地色である黒色)と同色である黒色のコーティングが施されているので、外見上、役物被覆部材30,60等と管被覆部材20とは同一色となり、意匠性を向上させることができる。さらに、部材間の継ぎ目を覆うアルミテープ70(図1参照)にも、黒色のコーティングが施されているので、意匠性を、より一層向上させることができる。
【0053】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0054】
すなわち、前記実施形態では、チューブ状(円筒状)の成形品を長手方向(円筒の軸線方向)に沿って1カ所切断した背割れタイプの管被覆部材20(図4参照)を用いていたが、本発明における管被覆部材は、これに限定されるものではなく、切断箇所のないチューブ状の成形品からなる管被覆部材でもよく、チューブ状の成形品を長手方向(円筒の軸線方向)に沿って2カ所以上切断した分割タイプの管被覆部材(例えば、役物被覆部材30A,30Bの場合と同様に2分割された管被覆部材)でもよく、直管2または屈曲管の外周に手作業で巻き付けるシート状の管被覆部材でもよく、要するに、ゴムまたはエラストマーの発泡体(軟質ゴム系発泡体)からなる断熱材21を含んで構成され、かつ、直管2や屈曲管の外周面の全周を覆うように配置することができればよい。但し、施工の容易化という点で、前記実施形態のような背割れタイプの管被覆部材20を用いることが好ましい。
【0055】
また、前記実施形態では、役物被覆部材30,60等の外側表面および管被覆部材20の外周面は、黒色で統一されていたが、例えば青色等の黒色以外の色で統一するようにしてもよい。この場合は、役物被覆部材については、アルミ箔40に黒色以外の色のコーティングを施すとともに、管被覆部材については、前記実施形態の背割れタイプの管被覆部材20(図4参照)、あるいは上述した各種タイプの管被覆部材の外周側に、次のような黒色以外の色の着色用のシート80(図6参照)を貼り付ければよい。
【0056】
図6において、着色用のシート80は、ゴムまたはエラストマーの発泡体(軟質ゴム系発泡体)からなる基層81の一方の面に、例えば青色等の黒色以外の色のコーティング82が施されるとともに、基層81の他方の面に、粘着剤83が塗布され、さらに、粘着剤83の上(外側)に、剥離ライナ84が貼り付けられて構成されている。従って、剥離ライナ84を剥がし、着色用のシート80を、前記実施形態の背割れタイプの管被覆部材20(図4参照)、あるいは上述した各種タイプの管被覆部材の外周側に貼り付けることにより、例えば青色等の黒色以外の表面色を有する管被覆部材を形成することができる。これにより、外見上、役物被覆部材と管被覆部材とを、黒色以外の色で統一することができる。但し、着色用のシート80を貼り付ける作業を省き、施工の容易化を図るという点で、前記実施形態のように、役物被覆部材30,60等を構成するアルミ箔40に黒色のコーティングを施すことにより、黒色で統一することが好ましい。
【0057】
また、前記実施形態では、役物被覆部材30,60等の防湿材としてアルミ箔40が用いられていたが、これに限定されるものではなく、樹脂製フィルムを用いてもよく、あるいはアルミ箔と樹脂製フィルムとの積層品や、複数種類の樹脂製フィルムの積層品を用いてもよい。
【0058】
さらに、前記実施形態では、役物被覆部材30等を構成する樹脂系発泡体成形品として、発泡スチロール成形品31A,31B等が用いられていたが、発泡スチロール成形品に限定されるものではなく、例えば、ポリスチレンフォーム(EPS)、ポリウレタンフォーム(PUF)、ポリエチレンフォーム(PEF)、フェノールフォーム(PF)等の他の樹脂系発泡体成形品を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明の配管断熱システム部材およびその施工方法は、例えば、空調・衛生設備、冷熱、地域冷暖房、冷媒、鉄道、船舶、プラント、原子力発電設備、半導体生産装置、クリーンルーム、製薬工場設備、食品機械、飲料・ビールの工場設備、食糧や食品の工場設備、低温物流・冷蔵倉庫、冷凍倉庫関連設備、水産物や農産物の加工設備・貯蔵庫、コールドチェーンの設備、エコキュート、ガスヒーポン、消防施設・スプリンクラー・凍結防止・トンネル内消防施設設備、太陽光給湯、環境・省エネ分野等の各種設備の配管の断熱に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0060】
1 配管
2 直管
3 役物であるチーズ
4 役物であるエルボ
10 配管断熱システム
20 配管断熱システム部材である管被覆部材
21 ゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材
22A,22B 背割れ面
23 粘着加工の一態様として塗布された粘着剤
30,60 配管断熱システム部材である役物被覆部材
31A,31B 樹脂系発泡体成形品である発泡スチロール成形品
40 アルミ箔
41 アルミ箔に施した黒色のコーティング
50 粘着加工の一態様として貼り付けられた両面粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管または屈曲管とこれらの管を連結する役物とにより構成された配管を断熱するための配管断熱システム部材であって、
前記直管または前記屈曲管の外周面を覆うように配置される管被覆部材と、前記役物の外側表面を覆うように配置される役物被覆部材とを組み合わせてなり、
前記管被覆部材は、ゴムまたはエラストマーの発泡体からなる断熱材により構成され、
前記役物被覆部材は、樹脂系発泡体成形品の外側表面に、前記管被覆部材の外周面の色と同色のコーティングを施したアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品を貼り付け、かつ、前記樹脂系発泡体成形品の前記管被覆部材との接合面に粘着加工を施した構成とされている
ことを特徴とする配管断熱システム部材。
【請求項2】
前記管被覆部材は、円筒状に成形された前記ゴムまたは前記エラストマーの発泡体からなる断熱材を、円筒の長手方向に沿って切断し、切断して形成された対向する背割れ面の両面または片面に粘着加工を施した構成とされ、
前記管被覆部材の外周面は、黒色とされ、前記役物被覆部材には、黒色のコーティングを施したアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品が貼り付けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の配管断熱システム部材。
【請求項3】
直管または屈曲管とこれらの管を連結する役物とにより構成された配管を断熱するための配管断熱システム部材の施工方法であって、
樹脂系発泡体成形品の外側表面に、黒色のコーティングを施したアルミ箔若しくは樹脂製フィルムまたはこれらの積層品を貼り付け、かつ、前記樹脂系発泡体成形品の隣接配置される被覆部材との接合面に粘着加工を施した構成を有する役物被覆部材を、前記役物の外側表面を覆うように配置するとともに、
円筒状に成形されたゴムまたはエラストマーの発泡体からなる黒色の断熱材を、円筒の長手方向に沿って切断し、切断して形成された対向する背割れ面の両面または片面に粘着加工を施した構成を有する管被覆部材を、前記直管または前記屈曲管の外周面を覆うように配置した後、
前記役物被覆部材の粘着加工を施した面と前記管被覆部材の端面とを粘着により接合するとともに、前記管被覆部材の前記対向する背割れ面同士を粘着により接合する
ことを特徴とする配管断熱システム部材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225403(P2012−225403A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92509(P2011−92509)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(511097681)
【Fターム(参考)】