説明

配管路システム及び配管路の夾雑物除去方法

【課題】 配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去することができるだけでなく、さまざまな配管路に対してフレキシブルに対応することができる配管路システム及び配管路の夾雑物除去方法を提供する。
【解決手段】 上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路15を備え、配管路15の対象部151に詰まった夾雑物を除去する配管路システムにおいて、対象部151の流体の流れを遮断可能な制御弁152と、制御弁152の開閉動作を実行させる制御手段2とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去する配管路システム及び配管路の夾雑物除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管路システムとして、上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路と、加圧水を配管路の上流側に向けて送る加圧水供給装置とを備える配管路システムが知られている(例えば、特許文献1)。斯かる配管路システムによれば、加圧水供給装置が配管路の上流側に向けて加圧水を供給することで、小口径配管等の対象部に詰まった夾雑物を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−70891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に係る配管路システムによれば、加圧水供給装置という設備が必要になるため、斯かる加圧水供給装置を設置するスペースが必要である。また、例えば、斯かる加圧水供給装置を既設の配管路システムに導入するには、大掛かりな改造等の対応(費用、期間)が必要である。
【0005】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去することができるだけでなく、さまざまな配管路に対してフレキシブルに対応することができる配管路システム及び配管路の夾雑物除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る配管路システムは、上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路を備え、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去する配管路システムにおいて、対象部の流体の流れを遮断可能な制御弁と、制御弁の開閉動作を実行させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る配管路システムによれば、制御弁は、上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路に対して、対象部における流体の流れを遮断できる。そして、制御手段は、制御弁の開閉動作を実行させる。これにより、配管路の対象部が無圧状態から加圧状態になるため、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去することができる。
【0008】
また、本発明に係る配管路システムにおいては、制御弁は、対象部の下流側に配置されてもよい。
【0009】
斯かる構成の配管路システムによれば、制御弁が開放状態から閉塞状態に切り替えた際に、部分的な逆流や振動等が対象部で瞬時的に発生するため、配管路内部に付着していた夾雑物が配管路内部から剥がれる又は剥がれ易くなるという効果が期待できる。
【0010】
また、本発明に係る配管路システムにおいては、対象部の流体の流量を測定する流量測定手段をさらに備え、制御手段は、対象部の流体の流量が設定値以下となった際に、制御弁の開閉動作を実行させてもよい。
【0011】
斯かる構成の配管路システムによれば、流量測定手段が対象部の流体の流量を測定する。そして、対象部の流体の流量が設定値以下となった際に、制御手段が制御弁の開閉動作を実行させる。したがって、例えば、配管路の対象部に夾雑物が詰まった際に、制御弁の開閉動作を効果的に実行することができる。
【0012】
また、本発明に係る配管路システムにおいては、制御手段は、対象部の流体の流量が設定値以上になる又は制御弁の開閉動作が設定回数になるまで、制御弁の開閉動作を実行させてもよい。
【0013】
斯かる構成の配管路システムによれば、制御手段は、対象部の流体の流量が設定値以上になるか、又は、制御弁の開閉動作が設定回数になるまで、制御弁の開閉動作を実行する。これより、対象部の流体の流量が設定値以上になると、制御弁の開閉動作が終了され、また、対象部の流体の流量が設定値以上にならなくても、制御弁の開閉動作が設定回数になると、制御弁の開閉動作が終了する。したがって、制御弁が不必要に開閉動作を実行することを抑制できる。
【0014】
また、本発明に係る配管路の夾雑物除去方法は、上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路を備え、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去する配管路の夾雑物除去方法において、対象部の流体の流れを遮断可能な制御弁が開閉動作を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の如く、本発明によれば、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去することができるだけでなく、さまざまな配管路に対してフレキシブルに対応することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る配管路システムの要部系統図を示す。
【図2】同実施形態に係る配管路システムの制御ブロック図を示す。
【図3】同実施形態に係る配管路システムの制御弁開閉処理フローを示す。
【図4】同実施形態に係る配管路システムの夾雑物除去方法を説明する図であって、流量と制御弁の開閉動作との関係図を示す。
【図5】同実施形態に係る配管路システムの夾雑物除去方法を説明する図であって、流量と制御弁の開閉動作との関係図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る配管路システムにおける一実施形態について、図1〜図5を参酌して説明する。
【0018】
本実施形態に係る配管路システムは、図1及び図2に示すように、上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路1と、配管路1の各部を制御する制御手段2とを備える。なお、本実施形態において、配管路システムは、水力発電所の給水系統の配管路としている。
【0019】
配管路1は、主幹配管路10と、ストレーナ11を介して、主幹配管路10から分岐される複数の分岐配管路12〜15とを備える。そして、複数の分岐配管路12〜15には、発電機エアクーラや発電機スラスト及び下部メタルを冷却するための発電機用冷却水配管路12と、集油槽を冷却するための集油槽用冷却配管路13と、水車の軸受を冷却するための水車軸受冷却配管路14と、水車の填座に給水するための水車填座給水配管路15とが設けられている。
【0020】
水車填座給水配管路15は、配管内の水の流量を調整する流量調整手段151と、配管内の水の流れを遮断可能な制御弁152とを備える。また、水車填座給水配管路15は、配管内の水の流量を測定する流量測定手段153を備える。なお、本実施形態において、主幹配管路10の配管サイズが150Aであるのに対して、水車填座給水配管路15の配管サイズは、15Aである。
【0021】
流量調整手段151は、本実施形態において、管の内径を一部小さくして圧力を損失させることで流量を調整するオリフィス弁としている。したがって、斯かる流量調整手段151は、ごみやヘドロといった夾雑物が詰まり易い箇所であって、本発明に係る「配管路の対象部」である。
【0022】
制御弁152は、流量調整手段151の下流側に配置されている。そして、制御弁152は、本実施形態において、電動弁としており、瞬時に(例えば1〜2秒で)開閉動作を可能としている。
【0023】
流量測定手段153は、配管内の水の流量を検出する流量検出部153aを備え、流量検出部153aで検出した流量が設定値以下となった際に、制御手段2に向けて信号を出力するように構成されている。また、流量測定手段153は、該信号を出力する際の設定値を自由に設定するための流量値設置部153bをさらに備える。なお、流量測定手段153は、本実施形態において、電磁流量計としている。
【0024】
制御手段2は、流量調整手段151の水の流量、即ち、流量測定手段153で測定した流量が設定値以下となった際に、制御弁152の開閉動作を実行させる。具体的には、制御手段2は、流量調整手段151に詰まった夾雑物を除去すべく、流量調整手段151が無圧状態から加圧状態となるように、制御弁152の開閉動作を実行させる。
【0025】
そして、制御手段2は、流量測定手段153で測定した流量(流量調整手段151の水の流量)が設定値以上になる又は制御弁152の開閉動作が設定回数(本実施形態においては2回)になるまで、制御弁152の開閉動作を実行させる。なお、配管路システムには、制御弁152を開放させる時間と閉塞させる時間とを自由に設定するための開閉設定手段3が設けられている。
【0026】
本実施形態に係る配管路システムの構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る制御弁の開閉動作について、図3〜図5を参酌して説明する。
【0027】
ステップ100においては、制御弁152が開放され、水車填座給水配管路15に水が流れる。そして、ステップ101に進むと、流量測定手段153で測定する水の流量が設定値以下であるか否か判定し、設定値以下である場合には、ステップ102に進む一方、設定値以下でない場合には、再びステップ101に戻る。
【0028】
ステップ102においては、制御弁152が所定時間(例えば15秒)閉塞され、その後、制御弁152が所定時間(例えば15秒)開放され、ステップ103に進む。このとき、流量調整手段151が無圧状態から加圧状態となるように、制御弁152が開閉動作することになるため、流量調整手段151に詰まった夾雑物が除去され得る。
【0029】
ステップ103においては、流量測定手段153で測定する水の流量が設定値以下であるか否か判定し、設定値以下である場合には、ステップ104に進む一方、図4に示すように、設定値以下でない場合には、ステップ101に戻る。即ち、図4に示すように、制御弁152が1回の開閉動作を実行することで、流量測定手段153で測定する水の流量が設定値以上になると、制御弁152の開閉動作は、1回で終了される。
【0030】
ステップ104においては、制御弁152の2回目の開閉動作が実行されることになり、具体的には、制御弁152が所定時間(例えば15秒)閉塞され、その後、制御弁152が開放され、ステップ105に進む。そして、ステップ105においては、流量測定手段153で測定する水の流量が設定値以下であるか否か判定し、設定値以下でない場合には、ステップ101に戻る一方、図5に示すように、設定値以下である場合には、ステップ106に進む。
【0031】
ステップ106においては、制御弁152の開閉動作が強制的に終了され、制御弁152の開放が維持される。即ち、図5に示すように、制御弁152の開閉動作を2回実行しても、流量測定手段153で測定する水の流量が設定値以下である場合には、制御弁152の開閉動作だけでは、流量調整手段151に詰まった夾雑物が除去できないと判断され、制御弁152の開閉動作が不必要に実行されることを防止している。
【0032】
以上より、本実施形態に係る配管路システムによれば、制御弁152は、上流側から下流側に向けて水を流通させる水車填座給水配管路15に対して、水の流れを遮断できる。そして、制御手段2は、制御弁152の開閉動作を実行させる。これにより、水車填座給水配管路15(流量調整手段151)が無圧状態から加圧状態になるため、水車填座給水配管路15(流量調整手段151)に詰まった夾雑物を除去することができる。したがって、さまざまな配管路に対してフレキシブルに対応することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る配管路システムによれば、制御弁152が開放状態から閉塞状態に切り替えた際に、部分的な逆流や振動等が流量調整手段151で瞬時的に発生するため、流量調整手段151の内部に付着していた夾雑物が流量調整手段151の内部から剥がれる又は剥がれ易くなるという効果が期待できる。
【0034】
また、本実施形態に係る配管路システムによれば、流量測定手段153が水車填座給水配管路15(流量調整手段151)に流れる水の流量を測定する。そして、水車填座給水配管路15(流量調整手段151)に流れる水の流量が設定値以下となった際に、制御手段2が制御弁152の開閉動作を実行させる。したがって、流量調整手段151に夾雑物が詰まった際に、制御弁152の開閉動作を効果的に実行することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る配管路システムによれば、制御手段2は、水車填座給水配管路15(流量調整手段151)に流れる流量が設定値以上になるか、又は、制御弁152の開閉動作が設定回数(2回)になるまで、制御弁152の開閉動作を実行する。これより、水車填座給水配管路15(流量調整手段151)に流れる流体の流量が設定値以上になると、制御弁152の開閉動作が終了される。
【0036】
反対に、水車填座給水配管路15(流量調整手段151)に流れる流体の流量が設定値以上にならなくても、制御弁152の開閉動作が設定回数となると、制御弁152の開閉動作が終了する。したがって、制御弁152が不必要に開閉動作を実行することを抑制できる。なお、水車填座給水配管路15(流量調整手段151)に流れる流体の流量が設定値以上にならない場合には、例えば、配管路を解体して夾雑物を除去することになる。
【0037】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0038】
上記実施形態に係る配管路システムにおいては、配管路が水力発電所の給水系統の配管路である構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、配管路は、特に限定されることなく、要するに、上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路を備え、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去するような構成であればよい。
【0039】
また、上記実施形態に係る配管路システムにおいては、制御手段2が制御弁152の開閉動作(閉動作)を2回実行しても、水車填座給水配管路15に流れる流体の流量が設定値以上にならない場合には、制御弁152の開閉動作を終了する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。
【0040】
具体的には、制御手段2は、制御弁152の開閉動作を3回以上実行させる構成でもよく、また、水車填座給水配管路15に流れる流体の流量が設定値以上になるまで、制御弁152の開閉動作を継続して実行させる構成でもよい。例えば、開閉設定手段3にて設定回数を設定できる構成としてもよい。
【0041】
また、上記実施形態に係る配管路システムにおいては、制御弁152が閉塞した際に、配管路15を完全に閉塞する構成、即ち、シャット弁である構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、制御弁152は、流量調整弁であって、閉塞した際に、流体を一部流通させる構成でもよい。
【0042】
また、上記実施形態に係る配管路システムにおいては、制御弁152が開閉動作する際に、開放する時間及び閉塞する時間が同じ時間(15秒)である構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、開放する時間と閉塞する時間が異なる時間である構成でもよく、また、斯かる時間が次第に長くなったり短くなったりする構成でもよい。
【0043】
また、上記実施形態に係る配管路システムにおいては、オリフィス弁である流量調整手段151に詰まる夾雑物を除去する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、流量調整弁である流量調整手段に詰まる夾雑物を除去する構成でもよく、配管の曲管部(エルボやベント)に詰まる夾雑物を除去する構成でもよく、また、異なる配管径の配管を接続する接続部に詰まる夾雑物を除去する構成でもよい。
【0044】
また、上記実施形態に係る配管路システムにおいては、制御弁152が流量調整手段151の下流側に配置される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、制御弁152は、流量調整手段151の上流側に配置される構成でもよい。
【0045】
また、上記実施形態に係る配管路システムにおいては、水車填座給水配管路15(流量調整手段151)に流れる水の流量が設定値以下となった際に、制御手段2が制御弁152の開閉動作を実行させる構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、制御手段2は、所定期間(例えば3日間)毎に制御弁152の開閉動作を実行する構成でもよい。
【0046】
また、本発明に係る配管路システムにおいては、制御弁152が開閉したことで、水車填座給水配管路15に流れる流体の流量が制御弁152の開閉動作前よりも増加した場合には、制御手段2が制御弁152を再度開閉する一方、水車填座給水配管路15に流れる流体の流量が制御弁152の開閉動作前よりも増加しなかった場合には、制御手段2が制御弁152の開放を維持する構成でもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…配管路、2…制御手段、3…開閉設定手段、10…主幹配管路、11…ストレーナ、12,13,14,15…分岐配管路、151…流量調整手段(対象部)、152…制御弁、153…流量測定手段、153a…流量検出部、153b…流量値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路を備え、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去する配管路システムにおいて、
対象部の流体の流れを遮断可能な制御弁と、制御弁の開閉動作を実行させる制御手段とを備えることを特徴とする配管路システム。
【請求項2】
制御弁は、対象部の下流側に配置される請求項1に記載の配管路システム。
【請求項3】
対象部の流体の流量を測定する流量測定手段をさらに備え、
制御手段は、対象部の流体の流量が設定値以下となった際に、制御弁の開閉動作を実行させる請求項1又は2に記載の配管路システム。
【請求項4】
制御手段は、対象部の流体の流量が設定値以上になる又は制御弁の開閉動作が設定回数になるまで、制御弁の開閉動作を実行させる請求項3に記載の配管路システム。
【請求項5】
上流側から下流側に向けて流体を流通させる配管路を備え、配管路の対象部に詰まった夾雑物を除去する配管路の夾雑物除去方法において、
対象部の流体の流れを遮断可能な制御弁が開閉動作を実行することを特徴とする配管路の夾雑物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107040(P2013−107040A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253897(P2011−253897)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】