説明

配管長測定システム及び配管長算出装置

【課題】冷媒配管長を正確に測定するための準備が容易となる配管長測定システムを提供する。
【解決手段】周波数測定装置10は、空調機における室外機50と室内機60とを接続する冷媒配管70の室外機50側の末端近傍に配置され、冷媒配管70の周波数特性を測定する。フィルタ30は、周波数特性測定装置10の端子11の接続箇所よりも室外機50側に、冷媒配管70を包むようにして取り付けられている。配管長算出装置20は、周波数測定装置10とインタフェースケーブル40を介して接続し、周波数測定装置10が測定した周波数特性をインタフェースケーブル40を介して取得する。配管長算出装置20は、取得した周波数特性から最小の反共振周波数を抽出し、該抽出した最小の反共振周波数に基づいて冷媒配管70の長さを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の長さを測定する技術に関し、特に、空調機における冷媒配管の長さを測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビル等に設置された空調機を別の機種に交換する場合、コスト削減等のため、室外機と室内機間の冷媒配管については、既設のものをそのまま流用し、冷媒のみを交換するケースが一般的である。この場合、交換する冷媒量が適正量より多かったり、あるいは少なかったりすると、必要な冷却能力が確保できなくなる不冷状態に陥ってしまうおそれがある。したがって、冷媒を交換する際には、冷媒配管の長さ(冷媒配管長)に応じた適切な量の冷媒を充填する必要がある。
【0003】
しかしながら、工事上の問題等により冷媒配管が設計書とは異なった配置で敷設されることがあり、実際の冷媒配管長が、必ずしも設計書に記された値と一致しているという保証はない。
【0004】
これに対し、例えば、特許文献1には、冷媒配管に振動を与える送信部と、その振動を検知する受信部を冷媒配管の所定位置に複数取り付け、送信部が与えた振動が各受信部に検知される伝搬時間から各区間の長さを測定し、所定のアルゴリズムに基づいて冷媒配管長を算出する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−85892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の技術において、精度良く冷媒配管長を測定するためには、送信部や受信部といった測定装置を冷媒配管の各末端に配置する必要がある。このため、分岐の多い冷媒配管等では、容易に測定装置を取り付けることができず、測定の開始までに多くの時間を要する。また、設計図とは異なった配置や分岐で冷媒配管が配置されている場合では、どの室内機が当該冷媒配管の末端にあたるのかを判断することが困難であり、測定装置の設置にさらに手間がかかることが予想される。
【0007】
また、セキュリティ上の問題により、屋内への立ち入り許可が得られないビル等では、室内機の傍に測定装置を取り付けることができない事態も発生し得る。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、冷媒配管長を正確に測定するための準備が容易となる配管長測定システム及び配管長算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る配管長測定システムは、
空調機における室外機と室内機とを接続する冷媒配管の一の末端近傍に配置され、当該冷媒配管の周波数特性を測定する周波数特性測定手段と、
該周波数特性測定手段による前記冷媒配管上の測定箇所と、該測定箇所に最も近い前記室外機又は室内機との間に取り付けられ、前記測定の際の検査信号の当該室外機又は室内機への流入を防止するフィルタと、
前記周波数特性測定手段が測定した前記周波数特性から最小の反共振周波数を抽出し、該抽出した最小の反共振周波数に基づいて当該冷媒配管の長さを算出する配管長算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の観点に係る配管長測定システムは、
空調機における室外機と1又は複数の室内機とを接続する冷媒配管の一の末端近傍に配置され、当該冷媒配管の周波数特性を測定する周波数特性測定手段と、
該周波数特性測定手段による前記冷媒配管上の測定箇所と、該測定箇所に最も近い前記室外機又は室内機との間に取り付けられ、前記測定の際の検査信号の当該室外機又は室内機への流入を防止するフィルタと、
前記周波数特性測定手段が測定した前記周波数特性から、所定条件の下、複数の反共振周波数を抽出し、該抽出した複数の反共振周波数に基づいて、当該冷媒配管に分岐が存在するか否かを判定し、分岐が存在しないと判定した場合には、前記抽出した複数の反共振周波数の内の最小の反共振周波数に基づいて当該冷媒配管の長さを算出し、分岐が存在すると判定した場合には、前記抽出した複数の反共振周波数の内から、前記最小の反共振周波数以外で且つ高調波成分に該当しない全ての反共振周波数を抽出し、該抽出した全ての反共振周波数に基づいて、当該冷媒配管の長さを算出する配管長算出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷媒配管長を正確に測定するための準備が容易となり、作業の手間が大幅に低減され、測定時間の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係る配管長測定システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1の配管長算出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1の構成を電気的な等価回路で示した図である。
【図4】図1の冷媒配管上の信号波形を示す図である。
【図5】図1の冷媒配管の周波数特性の例を示す図である。
【図6】実施形態1の配管長算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】分岐がある冷媒配管の例を示す概略図である。
【図8】図7に示す冷媒配管の周波数特性を示す図である。
【図9】図8の周波数特性から抽出した反共振周波数と、その反共振周波数に対応する長さとの関係を示す表である。
【図10】分岐がある場合の冷媒配管長の算出方法を説明するための図である。
【図11】実施形態2の配管長算出処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る配管長測定システム1の全体構成を示す概略図である。図1に示すように、配管長測定システム1は、周波数特性測定装置10と、配管長算出装置20と、フィルタ30a及び30bと、から構成される。周波数特性測定装置10と配管長算出装置20とは、シリアルケーブル等のインタフェースケーブル40を介して接続されている。
【0015】
図1に示す空調機は、それぞれ1台ずつの室外機50と室内機60とで構成される。この空調機は、一般的な空調機と同様、室外機50と室内機60との間の冷媒配管70内で冷媒を循環させることで空調動作を行う。冷媒配管70は、それぞれ金属製のガス配管71と液配管72とで構成される。
【0016】
周波数特性測定装置10は、冷媒配管70の周波数特性を測定する装置であり、ネットワークアナライザーとしての機能を備える。周波数特性測定装置10は、室外機50の近傍に設置され、一方の端子11aが、ガス配管71の室外機50側の末端付近に接続され、他方の端子11bが、液配管72の室外機50側の末端付近に接続される。
【0017】
周波数特性測定装置10は、所定の周波数の検査信号を冷媒配管70に向けて出力し、同時に冷媒配管70上の信号レベルを計測する。そして、検査信号の信号レベルと計測した信号レベルの比であるゲイン値を求め、求めたゲイン値を内蔵するバッファ(図示せず)に保存する。周波数特性測定装置10は、検査信号の周波数を所定範囲で連続的に変化させて同様の処理を行う。そして、各周波数毎のゲイン値を冷媒配管70の周波数特性データとして、インタフェースケーブル40を介して、配管長算出装置20に送信する。例えば、周波数特性測定装置10は、SパラメータのS11を測定し、そのパラメータ値を用いて周波数特性データを得るようにしてもよい。
【0018】
フィルタ30a,30bは、例えば、フェライトコアで構成され、それぞれ、ガス配管71及び液配管72の所定位置に所定態様で取り付けられる。具体的には、フィルタ30aは、周波数特性測定装置10の端子11aの接続箇所よりも室外機50側にガス配管71を包むように取り付けられる。同様に、フィルタ30bは、周波数特性測定装置10の端子11bの接続箇所よりも室外機50側に液配管72を包むように取り付けられる。
【0019】
フィルタ30a,30bを上記のような態様で取り付けることで、検査信号の周波数に対して十分大きいインピーダンスを冷媒配管70に持たせることができ、検査信号が室外機50に流れ込むことが防止でき、検査信号を室外機50と室内機60間の冷媒配管70上で伝搬させることが可能となる。
【0020】
配管長算出装置20は、図2に示すように、インタフェース部200と、と、補助記憶部201と、表示部202と、入力部203と、制御部204と、を備える。
【0021】
インタフェース部200は、RS485規格、RS−232C規格等の通信インタフェース装置から構成され、制御部204からの指令に従って、インタフェースケーブル40を介して、周波数特性測定装置10とシリアル通信を行う。補助記憶部201は、フラッシュメモリ等の読み書き可能な不揮発性の半導体メモリやハードディスクドライブ等から構成される。補助記憶部201は、各構成部を制御するためのデバイスドライバや後述する配管長算出処理を実行するためのプログラム(配管長算出プログラム)、周波数特性測定装置10から送られてきた周波数特性データ等を記憶する。
【0022】
表示部202は、CRTや液晶モニタ等の表示デバイスにより構成され、制御部204から供給される文字や画像等のデータを表示する。入力部203は、キーボード、キーパッド、タッチパッドやマウス等の入力デバイスから構成され、ユーザからの操作入力を受け付け、受け付けた信号を制御部204に送出する。なお、表示部202及び入力部203をタッチパネルで具現化してもよい。
【0023】
制御部204は、CPU(Central Processing Unit)、主記憶装置(何れも図示せず)等で構成され、インタフェース部200、補助記憶部201、表示部202、入力部203を制御し、それに付随して、これらとの間でデータの授受を行う。また、補助記憶部201に記憶されている配管長算出プログラムに従って、後述する配管長算出処理を実行する。
【0024】
次に、図1に示す冷媒配管70の周波数特性について説明する。図1で示される構成は、図3に示すような電気的な等価回路で表すことができる。この回路では、周波数特性測定装置10を交流の信号源、ガス配管71と液配管72を2線1対の長さL[m]の導線とみなしている。また、ガス配管71と液配管72は、室内機60の金属製の筐体を介して電気的に短絡している。
【0025】
図3において、検査信号は、周波数特性測定装置10から出力され、冷媒配管70を伝搬していき、室内機60側の末端に到達する。室内機60では、ガス配管71と液配管72が電気的に短絡しているため、この検査信号が位相反転した反射信号が、冷媒配管70上を逆方向に伝搬していく。したがって、周波数特性測定装置10は、検査信号と反射信号を重ね合わせた合成信号の比(ゲイン値)を測定することになる。
【0026】
冷媒配管70の長さがL[m]で、検査信号の波長λ[m]が、L=λ/2(λ、3λ/2、・・・)で表すことができるとき、周波数特性測定装置10の測定位置では、常に検査信号と反射信号の信号レベルが正負逆となり、合成信号の信号レベルは常に0になる。したがって、ゲイン値も0となる。
【0027】
図4に、冷媒配管70上における周波数特性測定装置10の測定位置での検査信号、反射信号、合成信号の時間変化を示す。実際には、冷媒配管70の抵抗成分やインダクタ成分等により、反射信号は減衰するため、ゲイン値は0にはならない。しかし、検査信号の波長λ[m]が上記以外となる周波数に比べ、ゲイン値が著しく減少することに変わりはない。
【0028】
このようにゲイン値が著しく減少する現象は反共振と呼ばれている。以下、この反共振が起こる検査信号の周波数を反共振周波数と呼ぶ。ここで、周波数f[Hz]の検査信号の波長λ[m]は、λ=c/f(cは電気信号の伝搬速度で300×10[m/s])で表すことができる。
【0029】
図5は、周波数特性測定装置10が測定した冷媒配管70の周波数特性の例を示す図である。この例では、冷媒配管70の長さLは、50[m]である。ここで、周波数が3MHzで反共振が起こり、ゲイン値が著しく小さくなっていることが分かる。また6MHz、9MHz・・・といった高調波成分でも同様に反共振が起こっている。この周波数特性の結果から、最小の反共振周波数(最小反共振周波数)f0(この例では、3MHz)を用いて、冷媒配管70の長さLを導出することができる。
【0030】
即ち、L=λ0/2(λ0=c/f0)=50[m]となる。
【0031】
図6は、配管長算出装置20の制御部204が配管長算出プログラムに従って実行する配管長算出処理の手順を示すフローチャートである。この配管長算出処理は、ユーザによる入力部203を介した所定操作により起動する。
【0032】
先ず、制御部204は、補助記憶部201から周波数特性測定装置10が測定した周波数特性データを読み出して取得する(ステップS101)。制御部204は、取得した周波数特性データから最小反共振周波数を抽出する(ステップS102)。
【0033】
そして、制御部204は、抽出した最小反共振周波数と上記の式から、冷媒配管70の長さ(冷媒配管長)を算出する(ステップS103)。制御部204は、算出した冷媒配管長を表示部202を介して表示する(ステップS104)。
【0034】
以上のように、本実施形態の配管長測定システム1によれば、冷媒配管の周波数特性を測定するための測定装置を当該冷媒配管の両末端付近に設置する必要がなく、一方の末端付近に設置するだけで済むため、測定装置(周波数特性測定装置10)の設置準備が容易であり、作業の手間が大幅に低減され、測定時間の短縮が図れる。
【0035】
また、冷媒配管の室外機側の末端付近の箇所のみを測定地点とするため、セキュリティ上の問題等により、屋内への立ち入り許可が得られないビル等においても、冷媒配管長を測定することが可能になる。
【0036】
(実施形態2)
上述したように、分岐がない冷媒配管の長さは、実施形態1に係る配管長測定システム1による配管長算出処理で求めることができる。しかしながら、図7に示すように、冷媒配管80が分岐し、複数の室内機(60a、60b)に接続する場合では、上記の配管長算出処理によって冷媒配管80の長さを測定することは困難である。これは、周波数特性測定装置10が出力した検査信号は、短絡した各室内機(60a、60b)だけでなく分岐地点でもいくらかの反射があり、また、分岐先のそれぞれで長さが異なるため、反共振が起こる周波数が複雑になるからである。
【0037】
本実施形態の配管長測定システムでは、分岐が存在する冷媒配管についても長さを測定できるように、実施形態1の配管長測定システム1による配管長算出処理に変更を加えた。以下、本実施形態の配管長測定システムによる配管長算出処理について詳細に説明する。なお、配管長算出処理以外の点については、本実施形態の配管長測定システムは、実施形態1の配管長測定システム1と同様の構成及び機能を有する。したがって、以下の説明において、周波数特性測定装置、配管長算出装置のハードウェア構成及び各構成部の機能については、実施形態1と同一の符号を用いることで説明を省略する。
【0038】
図7において、室外機50と、室内機60a,60bが、全長290mの冷媒配管80に接続されている構成となっている。なお、図7では、ガス配管と液配管をまとめて、1本の冷媒配管80として表している。周波数特性測定装置10は、室外機50の近傍に設置され、端子11が、冷媒配管80の室外機50側の末端付近に接続されている。また、図示はしないが、実施形態1と同様、フェライトコア等で構成されるフィルタが、周波数特性測定装置10の端子11の接続箇所よりも室外機50側に、冷媒配管80を包むようにして取り付けられている。
【0039】
図8は、電磁界シミュレータによるシミュレーションによって得られた図7に示す冷媒配管80の周波数特性を示す図である。この周波数特性によると、分岐がない場合と異なり、高調波成分以外の反共振周波数が含まれていることが確認できる。
【0040】
図9は、図8の周波数特性から抽出した反共振周波数fnと、その反共振周波数を用いて、Ln=λn/2(λn=c/fn)の式(即ち、分岐がない場合の算出式)から求めた長さLnとの関係を示す表である。
【0041】
図10は、図9に示す各データの内、最小反共振周波数と、最小反共振周波数より高い周波数の反共振周波数の高調成分を除いた反共振周波数fnと、その反共振周波数fnに対応する長さLnをハイライト表示した表である。この表から、各ハイライト表示した反共振周波数fnに対応する長さLnの総和が、冷媒配管80の全長となっていることが判る。
【0042】
図11は、本実施形態の配管長算出装置20により実行される配管長算出処理の手順を示すフローチャートである。この配管長算出処理は、ユーザによる入力部203を介した所定操作により起動する。
【0043】
先ず、制御部204は、補助記憶部201から周波数特性測定装置10が測定した周波数特性データを読み出して取得する(ステップS201)。そして、制御部204は、取得した周波数特性データから最小反共振周波数を抽出し、バッファ(図示せず)に格納する(ステップS202)。
【0044】
また、制御部204は、取得した周波数特性データから、最小反共振周波数〜所定周波数間に存在する全ての反共振周波数を抽出し、バッファに格納する(ステップS203)。ここでは、例えば、最小反共振周波数の10倍の周波数までに存在する反共振周波数を抽出対象とする。
【0045】
制御部204は、当該冷媒配管に分岐があるか否かを判定する(ステップS204)。この際、ステップS203で抽出した反共振周波数が、最小反共振周波数の整数倍の周波数に全て該当する場合、制御部204は、当該冷媒配管に分岐はないと判定する。その他の場合は、分岐ありとして判定する。
【0046】
上記の判定の結果、分岐がない場合(ステップS204;NO)、制御部204は、抽出した最小反共振周波数に基づいて、L[m]=λ0/2(λ0=c/f0)の式から当該冷媒配管(例えば、図1の冷媒配管70)の長さを算出して求める(ステップS205)。
【0047】
一方、分岐がある場合(ステップS204;YES)、制御部204は、ステップS203で抽出した反共振周波数の内から、高調波成分に該当しない全ての反共振周波数を抽出する(ステップS206)。そして、制御部204は、ステップS206で抽出した反共振周波数に基づいて、当該冷媒配管(例えば、冷媒配管80)の長さを算出する(ステップS207)。具体的には、制御部204は、ステップS206で抽出した反共振周波数毎に、長さLnを下記式により求め、これらの総和を当該冷媒配管の長さとする。
【0048】
Ln[m]=λn/2(λn=c/fn)
【0049】
そして、制御部204は、算出した冷媒配管長を表示部202を介して表示する(ステップS208)。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の配管長測定システムは、実施形態1の配管長測定システム1と同等の作用効果を奏し得る。即ち、冷媒配管の周波数特性を測定するための測定装置を当該冷媒配管の各末端付近に設置する必要がなく、一の末端付近に設置するだけで済むため、測定装置(周波数特性測定装置10)の設置準備が容易であり、作業の手間が大幅に低減され、測定時間の短縮が図れる。
【0051】
また、冷媒配管の室外機側の末端付近の箇所のみを測定地点とするため、セキュリティ上の問題等により、屋内への立ち入り許可が得られないビル等においても、冷媒配管長を測定することが可能になる。
【0052】
さらに、上記の作用効果に加え、本実施形態の配管長測定システムは、分岐のある冷媒配管の長さも測定できるという特有の効果も奏する。
【0053】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0054】
例えば、冷媒配管の周波数特性の測定において、ユーザ操作等により、配管長算出装置20から周波数特性測定装置10に対して測定開始を要求するコマンドを送信し、周波数特性測定装置10は、かかるコマンドの受信をトリガとして、周波数特性の測定を開始するようにしてもよい。
【0055】
また、上記各実施形態では、各周波数毎のゲイン値を冷媒配管の周波数特性データとしているが、各周波数毎の冷媒配管上の電圧のピーク値や冷媒配管上の電圧の実効値を周波数特性データとしてもよい。
【0056】
また、周波数特性測定装置10と配管長算出装置20との間の通信インタフェースに限定はなく、例えば、USBインタフェースやイーサネット(登録商標)インタフェース等を介して、周波数特性データの受け渡しを行ってもよい。
【0057】
また、フレキシブルディスク、USBメモリやSDカード等のメモリカード等の記録媒体を介して、周波数特性データの受け渡しを行ってもよい。
【0058】
また、周波数特性測定装置10及び配管長算出装置20の双方の機能を併せ持つ一装置により、周波数特性の測定及び冷媒配管長の算出を行ってもよい。
【0059】
また、冷媒配管の室外機側の末端付近ではなく、室内機側の末端付近の箇所のみを測定地点としてもよい。このようにしても、測定装置(周波数特性測定装置10)の設置準備が容易となり、作業の手間が大幅に低減され、測定時間の短縮が図れるという効果を奏する。
【0060】
また、プログラムの適用により、既存のパーソナルコンピュータ(PC)等を上記各実施形態の配管長算出装置20として機能させることも可能である。即ち、上述の制御部204が実行した配管長算出プログラムを既存のPC等にインストールし、当該PC等のCPU等が、かかる配管長算出プログラムを実行することで、当該PC等を配管長算出装置20として機能させることが可能となる。
【0061】
このような配管長算出プログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、メモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネットなどの通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0062】
この場合、上述した配管長算出処理を実行する機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などでは、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体等に格納してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、空調機の冷媒配管長の測定に好適に適用され得る。
【符号の説明】
【0064】
1 配管長測定システム
10 周波数特性測定装置
11a、11b 端子
20 配管長算出装置
30a、30b フィルタ
40 インタフェースケーブル
50 室外機
60、60a、60b 室内機
70、80 冷媒配管
71 ガス配管
72 液配管
200 インタフェース部
201 補助記憶部
202 表示部
203 入力部
204 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機における室外機と室内機とを接続する冷媒配管の一の末端近傍に配置され、当該冷媒配管の周波数特性を測定する周波数特性測定手段と、
該周波数特性測定手段による前記冷媒配管上の測定箇所と、該測定箇所に最も近い前記室外機又は室内機との間に取り付けられ、前記測定の際の検査信号の当該室外機又は室内機への流入を防止するフィルタと、
前記周波数特性測定手段が測定した前記周波数特性から最小の反共振周波数を抽出し、該抽出した最小の反共振周波数に基づいて当該冷媒配管の長さを算出する配管長算出手段と、を備える、
ことを特徴とする配管長測定システム。
【請求項2】
空調機における室外機と1又は複数の室内機とを接続する冷媒配管の一の末端近傍に配置され、当該冷媒配管の周波数特性を測定する周波数特性測定手段と、
該周波数特性測定手段による前記冷媒配管上の測定箇所と、該測定箇所に最も近い前記室外機又は室内機との間に取り付けられ、前記測定の際の検査信号の当該室外機又は室内機への流入を防止するフィルタと、
前記周波数特性測定手段が測定した前記周波数特性から、所定条件の下、複数の反共振周波数を抽出し、該抽出した複数の反共振周波数に基づいて、当該冷媒配管に分岐が存在するか否かを判定し、分岐が存在しないと判定した場合には、前記抽出した複数の反共振周波数の内の最小の反共振周波数に基づいて当該冷媒配管の長さを算出し、分岐が存在すると判定した場合には、前記抽出した複数の反共振周波数の内から、前記最小の反共振周波数以外で且つ高調波成分に該当しない全ての反共振周波数を抽出し、該抽出した全ての反共振周波数に基づいて、当該冷媒配管の長さを算出する配管長算出手段と、を備える、
ことを特徴とする配管長測定システム。
【請求項3】
前記周波数特性測定手段による前記冷媒配管上の測定箇所が、前記室外機側の末端近傍である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の配管長測定システム。
【請求項4】
前記周波数特性は、前記周波数特性測定手段によって前記冷媒配管に出力された前記検査信号の信号レベルと、前記周波数特性測定手段によって計測された信号レベルの比である、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の配管長測定システム。
【請求項5】
前記周波数特性は、前記周波数特性測定手段によって計測された前記冷媒配管上の電圧のピーク値である、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の配管長測定システム。
【請求項6】
前記周波数特性は、前記周波数特性測定手段によって計測された前記冷媒配管上の電圧の実効値である、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の配管長測定システム。
【請求項7】
空調機における室外機と1又は複数の室内機とを接続する冷媒配管の周波数特性から、所定条件の下、複数の反共振周波数を抽出し、該抽出した複数の反共振周波数に基づいて、当該冷媒配管に分岐が存在するか否かを判定し、分岐が存在しないと判定した場合には、前記抽出した複数の反共振周波数の内の最小の反共振周波数に基づいて当該冷媒配管の長さを算出し、分岐が存在すると判定した場合には、前記抽出した複数の反共振周波数の内から、前記最小の反共振周波数以外で且つ高調波成分に該当しない全ての反共振周波数を抽出し、該抽出した全ての反共振周波数に基づいて、当該冷媒配管の長さを算出する、 ことを特徴とする配管長算出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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