説明

配線ダクト

【課題】配線を確実に収容することが可能な配線ダクトを提供する。
【解決手段】配線を収容可能な配線ダクト本体11と、配線ダクトに長手方向に沿って形成された開口部12の少なくとも一部を閉塞して配線が脱落するのを防止する脱落防止金具15と、を備えた配線ダクト10において、脱落防止金具は、開口部の端部を付勢力を持って挟持可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、寒冷地における列車のレールには電気融雪器が設置されている。この電気融雪器の配線は、線路に沿って配線ダクトが設けられ、その配線ダクト内に敷設されている。従来の配線ダクト110は、図5、図6に示すように、断面略C字状の配線ダクト本体111内にケーブル(不図示)を収容し、所定間隔ごとに脱落防止金具115を配線ダクトの開口部112に取り付けている。このような配線ダクトの開口部を塞ぐカバーとしては、特許文献1のようなものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−172717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のようなカバーは、配線ダクトの開口部を覆うとともに開口部の両側に形成された壁部の外側に覆うように構成されている。このような構成のカバーでは砕石上に配される配線ダクトに取り付けるには砕石を避けて取り付ける必要があり、カバーの取り付けに手間がかかるという問題がある。
【0005】
また、特許文献1のカバーや図7に示す従来の金具115では、列車の振動などにより配線ダクト本体111から脱落する虞がある。配線ダクトからケーブルが脱落して露出すると、ケーブルの絶縁低下を招く虞がある。さらに、脱落した金具115は、点検の際に復旧させる必要があり、作業に手間がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、ケーブルを確実に収容することが可能な配線ダクトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、配線を収容可能な配線ダクト本体と、該配線ダクトに長手方向に沿って形成された開口部の少なくとも一部を閉塞して前記配線が脱落するのを防止する脱落防止金具と、を備えた配線ダクトにおいて、前記脱落防止金具は、前記開口部の端部を付勢力を持って挟持可能に構成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記配線ダクト本体は、長手方向に沿って形成された側壁部と、該側壁部の上端および下端からそれぞれ側方へ延設された上板部および下板部と、前記上板部から下方へ折り返された上側折返し部と、前記下板部から上方へ折り返された下側折返し部と、を有し、前記上側折返し部と前記下側折返し部との間が前記開口部として形成され、内部が前記配線の収容部として構成されており、前記脱落防止金具は、前記側壁部に当接される側壁押さえ部と、該側壁押さえ部に連接され前記上板部を架け渡すように形成された水平板部と、該水平板部に連接され前記上側折返し部、前記開口部および前記下側折返し部を架け渡すように形成された垂直板部と、該垂直板部における前記収容部に面した内側面に配され、前記垂直板部に向かって付勢力を有する付勢板部と、を備え、前記垂直板部と前記付勢板部との間に前記下側折返し部が挟持されることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載した発明は、前記側壁押さえ部に、前記側壁部に向かって付勢力を有する付勢部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載した発明は、前記配線ダクト本体が、列車のレールに沿って配され、該レールに設けられる電気融雪器の配線を前記収容部に収容可能に構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、配線ダクト本体の開口部の端部に取り付ける脱落防止金具に付勢力を持たせ、付勢しながら開口部の端部を挟持できるようにすることにより、脱落防止金具を配線ダクト本体に強固に取り付けることができる。したがって、配線ダクトに振動などが生じても脱落防止金具は配線ダクト本体から脱落することがなくなり、配線を確実に収容することができる。
【0012】
請求項2に記載した発明によれば、配線ダクト本体に取り付ける配線の脱落防止金具に付勢力を有する付勢板部を形成し、配線ダクト本体の一部である下側折返し部を付勢板部と垂直板部との間で付勢しながら挟持するようにするため、脱落防止金具は配線ダクト本体に強固に取り付けられる。したがって、配線ダクトに振動などが生じても脱落防止金具は配線ダクト本体から脱落することがなくなり、配線を確実に収容することができる。
【0013】
請求項3に記載した発明によれば、側壁押さえ部に付勢部を形成することにより、より強固に脱落防止金具を配線ダクト本体に取り付けることができる。また、付勢部を形成することにより、多少の寸法誤差が生じても吸収することができ、確実に脱落防止金具を配線ダクト本体に取り付けることができる。
【0014】
請求項4に記載した発明によれば、振動が多く生じる列車のレールの近傍に配線ダクトを設置しても脱落防止金具が配線ダクト本体から脱落するのを防止することができる。また、列車のレール下方には砕石が敷き詰められていることが多いが、脱落防止金具を配線ダクト本体に取り付ける際に、脱落防止金具が砕石と干渉することなく取り付けることができる。したがって、脱落防止金具を容易に、かつ確実に配線ダクト本体に取り付けることができる。つまり、レールに設けられる電気融雪器用の配線を確実に収容することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における配線ダクトの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における配線ダクト本体の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における脱落防止金具の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における配線ダクトをレールの電気融雪器用に配置した状態を示す図である。
【図5】従来の配線ダクトの斜視図である。
【図6】図5のA−A線に沿う断面図である。
【図7】従来の脱落防止金具の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態における脱落防止金具の別の態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1は配線ダクトの斜視図である。
図1に示すように、配線ダクト10は、長尺に形成された断面略C字状の配線ダクト本体11と、配線ダクト本体11の長手方向に沿って形成された開口部12を部分的に閉塞し、配線ダクト本体11内の収容部13に収容される配線が脱落するのを防止するために取り付けられる脱落防止金具15と、を備えている。
【0017】
図2に示すように、配線ダクト本体11は、例えばステンレスで形成されており、長手方向に延設された側壁部21と、側壁部21の上端から略水平方向へ延設された上板部22と、側壁部21の下端から略水平方向へ延設された下板部23と、上板部22における側壁部21と連接される側の反対側の端部から下方へ折り返された上側折返し部24と、下板部23における側壁部21と連接される側の反対側の端部から上方へ折り返された下側折返し部25と、を有している。また、上側折返し部24と下側折返し部25との間が開口部12として形成され、その内部は配線が収容可能な収容部13として構成されている。
【0018】
図3に示すように、脱落防止金具15は、例えばステンレスで形成された断面略L字状の部材であり、側壁部21の外側面21aに当接される側壁押さえ部31と、側壁押さえ部31に連接され上板部22を架け渡すように形成された水平板部32と、水平板部32に連接され上側折返し部24、開口部12および下側折返し部25を架け渡すように形成された垂直板部33と、垂直板部33における収容部13に面した内側面33aに配され、垂直板部33に向かって付勢力を有する付勢板部34と、を備えている。なお、垂直板部33と付勢板部34とは、略同一の幅で形成されている。
【0019】
付勢板部34は、垂直板部33に当接して例えば溶接接合された当接部36と、当接部36に連接され垂直板部33から離間する方向に延設されたクランク部37と、クランク部37に連接され垂直板部33と略平行に配された挟持片部38と、を備えている。そして、垂直板部33と狭持片部38との間に形成された空間Dに配線ダクト本体11の下側折返し部25が嵌合されて支持固定されるように構成されている。
【0020】
また、脱落防止金具15の側壁押さえ部31は、幅方向に沿って付勢部35が形成されている。具体的には、側壁押さえ部31の幅方向に沿って凹陥部が形成され、該凹陥部が付勢部35として構成されている。また、側壁押さえ部31の下端部31aは、脱落防止金具15を配線ダクト本体11に取り付けた際に、側壁部22の外側面21aから所定距離離間するように構成されている。このようにすることで、メンテナンスなどで脱落防止金具15を配線ダクト本体11から取り外す際に、下端部31aに手を掛けることができ、容易に脱落防止金具15を取り外すことができる。
【0021】
図4は配線ダクトを列車のレールに沿って配置し、レールに設けられる電気融雪器の配線を配線ダクトに収容した状態を示す図である。
図4に示すように、特に寒冷地などでは列車のレール50に電気融雪器(不図示)を設けている。そして、電気融雪器に電源を供給するための配線51が配線ダクト10に収容されている。ここで、配線ダクト10はレール50に沿って配設されるとともに、砕石53上に配設されている。また、配線ダクト10の開口部12がレール50の方向を向くように配置されている。
【0022】
なお、レール50側から延設されている配線51は、配線ダクト10の収容部13内に収容されるまでは配線51を保護するために保護菅54に収容されている。保護菅54は、例えば樹脂製のフレキシブル配管を用いている。
【0023】
さらに、配線51が収容された状態で、開口部12を部分的に閉塞して配線51が収容部13内から露出しないように脱落防止金具15が所定間隔ごとに取り付けられている。
【0024】
次に、脱落防止金具15を配線ダクト本体11に取り付ける方法について説明する。
脱落防止金具15を配線ダクト本体11に取り付けるには、まず脱落防止金具15の垂直板部33と付勢板部34の狭持片部38との空間Dに、配線ダクト本体11の下側折返し部25を嵌合させる。なお、空間Dの幅D1は、配線ダクト本体11の厚さD2よりも小さく形成されており、狭持片部38は空間Dの幅D1を広げる方向に移動しようとする。このとき、付勢板部34は例えばステンレスの薄板で形成されているため、元の位置に戻ろうとする付勢力が生じる。つまり、狭持片部38が板バネとして機能する。したがって、垂直板部33と狭持片部38とで下側折返し部25を強固に挟持しようとする力が生じる。
【0025】
続いて、脱落防止金具15を配線ダクト本体11の外周面に沿うように配し、側壁押さえ部31の付勢部35を側壁部21の外側面21aに当接させる。
【0026】
そして、配線ダクト本体11の上板部22と脱落防止金具15の水平板部32とが当接するように脱落防止金具15を下方へ移動させると、脱落防止金具15の取り付けが完了する。
【0027】
本実施形態によれば、配線ダクト本体11の開口部12の端部に取り付ける脱落防止金具15に付勢力を持たせ、付勢しながら開口部12の端部を挟持できるようにすることにより、脱落防止金具15を配線ダクト本体11に強固に取り付けることができる。したがって、配線ダクト10に振動などが生じても脱落防止金具15は配線ダクト本体11から脱落することがなくなり、配線51を確実に収容することができる。
【0028】
具体的には、配線ダクト本体11に取り付ける配線51の脱落防止金具15に付勢力を有する付勢板部34を形成し、配線ダクト本体11の一部である下側折返し部25を付勢板部34と垂直板部33との間で付勢しながら挟持するようにしたため、脱落防止金具15は配線ダクト本体11に強固に取り付けられる。
【0029】
また、側壁押さえ部31に付勢部35を形成することにより、より強固に脱落防止金具15を配線ダクト本体11に取り付けることができる。また、付勢部35を形成することにより、多少の寸法誤差が生じても吸収することができ、確実に脱落防止金具15を配線ダクト本体11に取り付けることができる。
【0030】
上述のように構成した脱落防止金具15を用いることにより、振動が多く生じる列車のレール50の近傍に配線ダクト10を設置しても脱落防止金具15が配線ダクト本体11から脱落するのを防止することができる。また、列車のレール50の下方には砕石53が敷き詰められていることが多いが、脱落防止金具15を配線ダクト本体11に取り付ける際に、脱落防止金具15が砕石53と干渉することなく取り付けることができる。したがって、脱落防止金具15を容易に、かつ確実に配線ダクト本体11に取り付けることができる。つまり、レール50に設けられる電気融雪器用の配線51を確実に収容することが可能となる。
【0031】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、脱落防止金具の側壁押さえ部に付勢部を形成した場合の説明をしたが、図8に示すような形状の脱落防止金具115を用いてもよい。具体的に、脱落防止金具115は、側壁押さえ部131に付勢部を設けず、側壁押さえ部131自体が板バネの機能を有するように構成している。また、付勢板部134を断面で折れ線状に形成し、付勢板部134と垂直板部33との間に下側折返し部25を挟持するように構成している。なお、配線ダクト本体の側壁部および上板部に、脱落防止金具の側壁押さえ部および水平板部がそれぞれ当接するように構成すると、脱落防止金具を強固に配線ダクト本体に支持固定することができる。
【符号の説明】
【0032】
10…配線ダクト 11…配線ダクト本体 12…開口部 13…収容部 15…脱落防止金具 21…側壁部 22…上板部 23…下板部 24…上側折返し部 25…下側折返し部 31…側壁押さえ部 32…水平板部 33…垂直板部 33a…内側面 34…付勢板部 35…付勢部 50…レール 51…配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線を収容可能な配線ダクト本体と、
該配線ダクトに長手方向に沿って形成された開口部の少なくとも一部を閉塞して前記配線が脱落するのを防止する脱落防止金具と、を備えた配線ダクトにおいて、
前記脱落防止金具は、前記開口部の端部を付勢力を持って挟持可能に構成されていることを特徴とする配線ダクト。
【請求項2】
前記配線ダクト本体は、長手方向に沿って形成された側壁部と、該側壁部の上端および下端からそれぞれ側方へ延設された上板部および下板部と、前記上板部から下方へ折り返された上側折返し部と、前記下板部から上方へ折り返された下側折返し部と、を有し、前記上側折返し部と前記下側折返し部との間が前記開口部として形成され、内部が前記配線の収容部として構成されており、
前記脱落防止金具は、前記側壁部に当接される側壁押さえ部と、該側壁押さえ部に連接され前記上板部を架け渡すように形成された水平板部と、該水平板部に連接され前記上側折返し部、前記開口部および前記下側折返し部を架け渡すように形成された垂直板部と、該垂直板部における前記収容部に面した内側面に配され、前記垂直板部に向かって付勢力を有する付勢板部と、を備え、
前記垂直板部と前記付勢板部との間に前記下側折返し部が挟持されることを特徴とする請求項1に記載の配線ダクト。
【請求項3】
前記側壁押さえ部に、前記側壁部に向かって付勢力を有する付勢部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の配線ダクト。
【請求項4】
前記配線ダクト本体が、列車のレールに沿って配され、該レールに設けられる電気融雪器の配線を前記収容部に収容可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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