説明

配線・配管材収容用保護材の段差部乗越え用スペーサ、配線・配管材収容用保護材設置構造、及び、段差部を乗越えて配線・配管材収容用保護材を取付面に設置する方法

【課題】壁面上の段差部を乗り越えて保護材を配設することを可能にする、配線・配管材収容用保護材の段差部乗越え用スペーサ、配線・配管材収容用保護材設置構造を提供することにある。
【解決手段】本発明のスペーサ100は、取付面Tに配置されたときに段差部Sに向けて上昇傾斜する傾斜部102を備えており、保護カバー200が取付面Tに設置された際に、傾斜部102は、保護カバー200に当接し、該保護カバー200を撓み範囲内で撓ませることを特徴とする。また、保護材設置構造10は、スペーサ100が取付面Tに配置され、保護カバー200が撓み範囲内で撓んで段差部Sを乗り越えた状態で取付面Tに取り付けられてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁面等の段差部を有する取付面に取り付けられる配線・配管材収容用保護材の段差部乗越え用スペーサ、配線・配管材収容用保護材設置構造、及び、段差部を乗越えて配線・配管材収容用保護材を取付面に設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の壁面に沿って配線・配管材が布設される場合、配線・配管材を内部に収容して保護する、保護ダクトやモールなどの配線・配管材収容用保護材(カバー又は管)が壁面に沿って配設される。配線・配管材収容用保護材は一般には直状且つ剛体状に形成され、配線・配管材が壁面に沿って布設される前又は後に、壁面上に位置する取付面に固定される。しかしながら、取付面が高床面と低床面とからなる場合、又は水切り部、配線・配管材の布設経路などの凹凸部が取付面に形成されている場合には、取付面上に段差が形成され、この段差が障害となり、直状の保護カバーを取付面に直接設置することができなかった。
【0003】
これに対して、特許文献1には、エアコン用冷媒管を空中配管するための付属保護カバー1を備える設置構造が提案されている(図16(a)参照)。この配管例は、建物壁Wの平面部に障害物V(段差部)が設けられていて、障害物を跨いだ状態で空中配管されたものである。付属保護カバー1は、各直状カバー2をつなぐ継ぎ手として働き、長手方向の2箇所で逆方向に屈曲されて、各直状カバー2を空中配管している。
【0004】
そして、特許文献2には、可撓性配線ダクト3を備える設置構造が提案されている(図16(b))。この可撓性配線ダクト3の本体は、軸線の周りに断面が逆U形の外向き屈曲リブと断面がU形の内向き屈曲リブとを軸線方向へ交互に形成し、外向き屈曲リブの内側と内向き屈曲リブの外側に断面がU形と逆U形の蛇腹部4を軸線方向へ交互にそれぞれ形成した全方位に屈撓可能な蛇腹構造を有し、且つ、可撓性配線ダクト3の一端及び他端に配線ダクト用差し口5を有する。そして、障害物の両側に布設された直状の配線ダクト6の端部に可撓性配線ダクト1の配線ダクト用差し口5を接続し、蛇腹部4を障害物V(段差部)に当接させて屈曲させることにより、壁面Wから突出する障害物Vを乗り越えた状態で配線ダクトを設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−103716号公報
【特許文献2】特開2005−6473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の継ぎ手状の付属保護カバーを用いて配線・配管材収容用保護材(保護カバー)を布設するときには、障害物の前後で直状の保護材を切断分割する必要があり、分割箇所の数に応じて付属保護カバーを必要するので、作業工程、部品点数が多くなって、製造コストが上がり且つ組み立て作業が煩雑になるという問題があった。また、特許文献2の可撓性配線ダクトを用いて、段差部を乗り越えた状態で保護材(配線ダクト)を布設するときに、直状の保護材を段差前後で2つに切断分割して配置する必要があり、配線・配管材収容用保護材布設における作業性等が低下する。また、保護材が壁面(取付面)に設置されたときに可撓性配線ダクトの蛇腹部が外部に露出されるので、見栄えが悪くなり、段差部付近の美観を損なうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであり、その目的は、壁面上の段差部を乗り越えて配線・配管材収容用保護材を容易に配設することを簡易な構造で可能にし、且つ、段差部における当該保護材の美観を改善することを可能にする、配線・配管材収容用保護材の段差部乗越え用スペーサ、配線・配管材収容用保護材設置構造、及び、段差部を乗越えて配線・配管材収容用保護材を取付面に設置する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の段差部乗越え用スペーサは、断面形状が長手方向に連続する長尺直状であり長手方向に撓み性を有する配線・配管材収容用保護材を、段差部を有する取付面に、前記段差部を乗り越えた状態で設置するために、前記取付面に配置される段差部乗越え用スペーサであって、
前記取付面に配置されたときに前記段差部に向けて前端部側から後端部側に上昇傾斜する傾斜部を備え、
前記保護材が前記取付面に設置された際に、前記傾斜部は、前記保護材に当接して、前記保護材が前記段差部を乗り越えるように前記保護材を撓み範囲内で撓ませることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の段差部乗越え用スペーサでは、請求項1の段差部乗越え用スペーサにおいて、前記段差部の高さにあわせて高さ調整すべく、連結可能な複数の分割体から構成されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の段差部乗越え用スペーサでは、請求項1又は2の段差部乗越え用スペーサにおいて、前記複数の分割体は、長手方向に連結可能に形成され、長手方向に連結することにより連続する傾斜部を形成する第1分割体と第2分割体とからなり、前記第1分割体と前記第2分割体とは高さが略半分となる位置で分割されてなり、前記第1分割体と前記第2分割体とは積み重ね可能に形成されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の段差部乗越え用スペーサでは、請求項3の段差部乗越え用スペーサにおいて、前記取付面に当接するための下底部と、前記後端部側で前記傾斜部に隣接するとともに前記下底部に対して略平行な上底部と、をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の保護材設置構造は、断面形状が長手方向に連続する長尺直状であり長手方向に撓み性を有する配線・配管材収容用保護材を、段差部を有する取付面に、前記段差部を乗り越えた状態で設置する保護材設置構造であって、
前記段差部に向けて前記保護材の撓み範囲内で上昇傾斜する傾斜部を形成するように、請求項1から4のいずれかのスペーサが前記取付面に配置され、
前記保護材が前記傾斜部に当接することにより、前記保護材が撓み範囲内で撓んで前記段差部を乗り越えた状態で前記取付面に取り付けられてなることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の保護材設置構造では、請求項5の保護材設置構造において、前記保護材は、取付面に固定される基台と該基台に係合する蓋体とからなり、撓んだ状態においても、前記基台と前記蓋体との係合が維持可能に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の方法では、断面形状が長手方向に連続する長尺直状であり長手方向に撓み性を有する配線・配管材収容用保護材を、段差部を有する取付面に、前記段差部を乗り越えた状態で設置する方法であって、
前記段差部に向けて前記保護材の撓み範囲内で上昇傾斜する傾斜部を形成するように、請求項1から4のいずれかのスペーサを前記取付面に配置するステップと、
前記保護材を前記傾斜部に当接させることにより、前記保護材を撓み範囲内で撓ませて前記段差部を乗り越えた状態で前記取付面に取り付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、段差部乗越え用スペーサを取付面に配置して、該スペーサを介して取付面に保護材を設置することにより、保護材は、スペーサの傾斜部に当接して撓み変形される。当該傾斜部は第1取付面から第2取付面に向かって傾斜しているので、保護材が傾斜部に沿って撓むことにより、段差部を乗り越えた状態で保護材を取付面に設置することを可能にする。即ち、スペーサを取付面に取り付けてその上に保護材を設置するだけの簡易な保護材設置構造で、段差部を有する取付面に保護材を容易に設置することができる。また、スペーサは保護材と取付面との間に位置するので、外部に露出される割合が少なく、段差部乗越え部分における美観を損なうことがない。従って、本発明のスペーサを用いることにより、保護材布設における作業性及び保護材設置構造における美観を改善する。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、段差部の高さに応じて、スペーサの高さを調整することにより、段差部の高さが異なる場合においても、段差部を乗り越えるように傾斜部で保護材を撓ませて取付面に設置することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、第1分割体と第2分割体とは高さが略半分となる位置で、長手方向に連結可能に分割されてなることにより、第1分割体と第2分割体とを長手方向に連結させて、スペーサの高さを段差部の高さにより近づけることが可能である。また、第1分割体と第2分割体とが積み重ね可能であることにより、スペーサの高さをさらに調整することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、上底部は、他端部側で傾斜部に隣接し、且つ、下底部に対して平行であることにより、該スペーサを介して保護材を取付面に設置したときに、より緩やかに保護材を撓ませることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、保護材設置構造は請求項1から4のいずれかの段差部乗越え用スペーサを用いることから、これらの各効果を奏する作業性、美観に優れた保護材設置構造を提供する。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、保護材は、取付面に固定される基台と、基台に係合する蓋体とからなり、撓んだ状態で基台と蓋体との係合を維持可能であることにより、蓋体を基台に装着した状態の保護材を取付面に設置する際において保護材を撓ませても蓋体が外れてしまう不具合が少なく、また、保護材を取付面に設置した後においても蓋体を自由に着脱可能である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、本発明の方法では、請求項1から4のいずれかの段差部乗越え用スペーサを用いることから、これらの各効果を奏するので、優れた作業性及び美観を有するように保護材を取付面に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態における段差部乗越え用スペーサの全体斜視図。
【図2】図1の段差部乗越え用スペーサを示し、(a)は平面図、(b)は側面図。
【図3】図1の第1分割体を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は横断面図。
【図4】図1の第2分割体を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は横断面図。
【図5】図1の第1分割体と第2分割体からなる土台を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は横断面図。
【図6】図1の第1分割体と第2分割体からなる連結体を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は縦断面図。
【図7】図1の第1分割体と第2分割体とを組み合わせて形成可能な連結体を例示する概略側面図。
【図8】本発明の一実施形態における保護カバーを示し、(a)は斜視図、(b)は横断面図。
【図9】本発明の一実施形態における断面視円形状の保護管を示し、(a)は斜視図、(b)は横断面図。
【図10】保護カバーの撓み状態を説明するための概念図。
【図11】本発明の一実施形態における保護材設置構造を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は概略側面図。
【図12】保護材設置構造の別例を示し、(a)は、第2取付面の両側に第1取付面が形成されているときの概略側面図、(b)は、4Hの高さの段差部が形成されているときの概略側面図。
【図13】保護材設置構造の別例を示し、水切り構造を乗り越えるように保護カバーが取付面に設置されているときの概略側面図、
【図14】(a)〜(e)は、本発明の一変形例における段差部乗越え用スペーサの概略側面図。
【図15】本発明の一変形例における段差部乗越え用スペーサを示し、(a)は斜視図、(b)は該スペーサを積み重ねて保護管を設置した状態を示す横断面図。
【図16】先行技術の保護材設置構造を示し、(a)は継ぎ手により直状カバーが接続された保護材設置構造の概略側面図、(b)は蛇腹構造を備える保護材設置構造の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態としての配線・配管材収容用保護カバーの段差部乗越え用スペーサ100の斜視図である。図2(a)及び(b)に示すとおり、長手状のスペーサ100は平面視略矩形状及び側面視略扁平三角形状を有し、取付面に当接するための下底部101と、下底部101と対面する傾斜部102と、該傾斜部102に隣接して位置し且つ下底部101と平行な上底部103と、該下底部101から立ち上がる側壁104とからなる。上底部103は傾斜部102に対して緩やかに屈曲している。このスペーサ100は、長手方向において第1分割体110と第2分割体120とに分割され、その分割位置は、第1分割体110の後端部の高さが第2分割体の後端部の高さの略半分となる位置にある。
【0025】
図3(a)は、第1分割体110の斜視図である。図3(b)及び(c)に示すとおり、第1分割体110は、平面視略矩形状及び側面視略扁平三角形状に形成され、取付面に当接するための第1下底部111と、該第1下底部111に対面する第1傾斜部112と、該第1傾斜部112に隣接して位置する第1上底部113と、該第1下底部111から立ち上がる第1側壁114とからなる。第1傾斜部112は、第1下底部111に対して角度αで傾斜し、第1側壁114が前端部110aから後端部110bにかけて高くなるようにスロープを形成している。そして、同様に、第1上底部113が第1下底部111に対して略平行になるように、後端部110b側で第1傾斜部112と隣接して形成されている。第1上底部113は第1傾斜部112に対して緩やかに略円弧を描くように屈曲している。ここで、前端部110aから後端部110bまでの長さをL1、後端部110bの側壁部114の高さをHとして定義する。
【0026】
第1分割体110は、後端部110bに位置する係合凹部115を備え、後述するように、第1分割体110の第1係合凹部115と第2分割体120の係合凸部125aとが係合可能である。
【0027】
また、第1分割体110において、第1傾斜部112及び第1上底部113には、長手方向に沿った3本の第1凹条116aが幅方向に対して並設されている。そして、第1下底部111には、該第1凹条116aに対応するように3本の第1凸条116bが幅方向に対して並設されている。第1凸条116bは第1凹条116a及び後述の第2凹条126aの開口縁部間に摺動可能に嵌合されうる。
【0028】
図3(d)に示すとおり、第1凹条116aの開口縁部及び第1分割体110の幅方向両端には、分割体を載置するための載置部116aaが、保護材と当接すべき第1傾斜部112又は第1上底部113に対して第1下底部111側に段差を設けて形成されている(図3(a)(b)には図示せず)。側面視(図3(c)参照)において、第1上底部113が第1傾斜部112に対して緩やかに屈曲しているのに対し、この載置部116aaは前端部110aから後端110bにかけて直線的に上昇傾斜している。当該載置部116aaは、当該第1分割体110上に別の第1分割体110又は第2分割体120を積み重ねたときに、第1凸条116b及び第1側壁底端部114a(第1下底部111)、又は、第2凸条126b及び第2側壁底端部124a(第2下底部121)に対して当接可能である(図5(c)、図6参照)。
【0029】
そして、第1分割体110は、前端部110aで第1下底部111から突出する係止爪117aと、第1上底部113の前端部110a側に幅方向に沿って形成された第1係止溝117bとをさらに備える。当該係止爪117aは第1係止溝117b及び後述の第2分割体120の第2係止溝127に係合可能である。後述するように、第2分割体120上に第1分割体110を積み重ねて形成される土台130上に、第1分割体110が配置されたときに、土台130上の第1分割体110の後端部110bが、土台130を構成する第2分割体120の後端部120b上に位置し、且つ、土台130を構成する第1分割体110の第1係止溝117bに土台130上の第1分割体110の係止爪117aが係合するように(図5及び6参照)、第1係止溝117bは所定位置に形成されている。なお、第1分割体110の各部位の寸法に応じて、第1係止溝117bは、第1傾斜部112側、又は、第1傾斜部112と第1上底部113との境界に形成されてもよい。
【0030】
さらに、第1傾斜部112及び第1上底部113において、第1分割体110(又はスペーサ100)を取付面に固定するための、又は、第1分割体110と第2分割体120とを積み重ねて固定するための2つの固定孔118が高さ方向に貫通するように穿設されている。ここで、保護カバーを固定するためのビス等が貫通するために、固定孔118は凹条116aを避けるように形成されている。また、この固定孔118を介して保護材をスペーサ100上に固定することも可能である。
【0031】
図4を参照して、第2分割体120について説明する。図4(a)は第2分割体120の斜視図である。図4(b)及び(c)に示すとおり、第2分割体120は、平面視矩形状及び側面視略台形状に形成され、取付面に当接するための第2下底部121と、該第2下底部121に対面する第2傾斜部122と、該第2傾斜部122に隣接して位置する第2上底部123と、該第2下底部121から立ち上がる第2側壁124とからなる。第2傾斜部122は、第1傾斜部112と同様に角度αで傾斜し、第2側壁124が前端部120aから後端部120bにかけて高くなるようにスロープを形成している。そして、第2上底部123が第2下底部121に対して平行になるように、後端部120b側で第2傾斜部122に隣接して形成されている。第2上底部123は第2傾斜部122に対して緩やかに略円弧を描くように屈曲している。前端部120aでの第2側壁124の高さはHであり、後端部120bでの第2側壁124の高さは2Hである。また、前端部120aから後端部120bまでの長さをL2、前端部120aから第2係止溝127までの長手方向の長さをL3として定義する。なお、本実施形態では、L1とL3とはほぼ等しく、L2はL1及びL3よりも大きいが、本発明はこれに限定されない。
【0032】
第2分割体120は、前端部120aに位置する係合凸部125a、及び、後端部120bに位置する第2係合凹部125bを備える。第1分割体110の第1係合凹部115と第2分割体120の係合凸部125aとが係合することにより、第1分割体110と第2分割体120とで図1のスペーサ100を形成する。この係合凸部125aは第2係合凹部125bとも係合可能であり、後述するように、スペーサ100と土台130とを連結するか、又は、土台130同士を連結する役割を有する。
【0033】
また、第2分割体120において、第2傾斜部122及び第2上底部123には、長手方向に沿った3本の第2凹条126aが幅方向に対して並設されている。そして、第2下底部121には、該第2凹条126aに対応するように3本の第2凸条126bが幅方向に対して並設されている。第2凸条126bは第1凹条116a及び第2凹条126aの各開口縁部間に摺動可能に嵌合されうる。
【0034】
図4(d)に示すとおり、第2凹条126aの開口縁部及び第2分割体120の幅方向両端には、分割体を載置するための載置部126aaが、保護材と当接すべき第2傾斜部122又は第2上底部123に対して第2下底部121側に段差を設けて形成されている(図4(a)(b)には図示せず)。側面視(図4(c)参照)において、第2上底部123が第2傾斜部122に対して緩やかに屈曲しているのに対し、この載置部126aaは前端部120aから後端部120bにかけて直線的に上昇傾斜している。当該載置部126aaは、当該第2分割体120上に第1分割体110又は別の第2分割体120を積み重ねたときに、第1凸条116b及び第1側壁底端部114a(第1下底部111)、又は、第2凸条126b及び第2側壁底端部124a(第2下底部121)に対して当接可能である(図5(c)、図6参照)。
【0035】
そして、第2分割体120には、第2上底部123の前端部120a側に第1分割体110の係止爪117aと係合可能な第2係止溝127が、幅方向に沿って形成されている。後述するように、土台130を組み立てるために第2分割体120上に第1分割体110を積み重ねたときに、第1分割体110の後端部110bが第2分割体120の前端部120a上に位置し、且つ、第1分割体110の係止爪117aが第2分割体120の第2係止溝127に係合するように(図5参照)、第2係止溝127は所定位置に形成されている。なお、第1分割体110及び第2分割体120の各部位の寸法に応じて、第2係止溝127は、第2傾斜部122側、又は、第2傾斜部122と第2上底部123との境界に形成されてもよい。
【0036】
さらに、第2傾斜部122及び第2上底部123において、スペーサ100を取付面に固定するための、又は、第1分割体110と第2分割体120とを積み重ねて固定するための4つの第2固定孔128が高さ方向に貫通するように穿設されている。ここで、保護カバーを固定するためのビス等が貫通するために、固定孔128は凹条126aを避けるように形成されている。また、この固定孔128を介して保護材をスペーサ100上に固定することも可能である。後述のとおり、第1分割体110と第2分割体120とを積み重ねたときに、少なくとも1箇所において、第1固定孔118と第2固定孔128とが高さ方向に貫通するように構成されている。
【0037】
図5を参照して、第1分割体110′と第2分割体120′とを高さ方向に積み重ねて形成した土台130について説明する。図5(a)及び(b)に示すとおり、土台130は、長さL2の底面131及び上面132と、高さ2Hの側壁134とを備える略扁平直方体形状に構成されている。
【0038】
この土台130では、第2分割体120′の第2傾斜部122′及び第2上底部123′に第1分割体110′の第1下底部111′が当接し、且つ、第2分割体120′の前端部120a′上に第1分割体110′の後端部110b′が位置するように、第2分割体120′の上に第1分割体110′が積み重なっている。第1下底部111′の長さL1と、第2分割体120′の前端部120a′から第2係止溝127′までの長さL3とはほぼ等しいので、第1下底部111′は、第2分割体120′の前端部120a′から第2係止溝127′に亘って、第2傾斜面122′及び第2上底部123´の一部の上に位置している。そして、第1傾斜部112′と第1上底部113′と第2上底部123′とで底面131に対して略平行な略平面状の上面132を構成し、且つ、第1側壁114′と第2側壁124′とで高さ2Hの側壁134を長手方向に亘って構成している。
【0039】
また、上面132には、第1凹条116a′と第2凹条126a′の一部とが同一直線上に並び、凹条136を構成している。そして、第1固定孔118′と第2固定孔128′とは連続しており、上面132から底面131まで貫通する固定孔138を形成している。さらに、スペーサ100を土台130の前端部130aに連結するときにスペーサ100の後端部100bが第1分割体110′の後端部110b′に干渉して連結が妨げられないように、L1はL3よりも僅かに小さくなっており、第1分割体110′の後端部110b′は、第2分割体120′の前端部120a′よりも、長手方向において僅かに内側(後端部130b側)に位置している。
【0040】
次に土台130を組み立てる方法を説明する。まず、第1分割体110′の前端部110a′が第2分割体120′の後端部120b′側を向くように、第1分割体110′を第2傾斜部122′上に配置する。このとき、第2分割体120′の載置部126aa′に第1分割体110′の第1凸条116b′及び第1側壁底端部114a′(第1下底部111′)が当接するように、第1凸条116b′を第2凹条126a′上に嵌合させる(図5(c)参照)。そして、第1分割体110′を第2凹条126a′に沿って摺動させる。すると、係止爪117a′と第2係止溝127′とが係合し、第1分割体110′は第2分割体120′により係止され、第1分割体110′は第2分割体120′上の所定位置にて保持されて、土台130が形成される。
【0041】
図6は、土台130の前端部130a側にスペーサ100を連結させ、且つ、土台130上に第1分割体110″を配置して構成されるスペーサ連結体140を示す。図6(a)及び(b)に示すとおり、連結体140は全体形状が平面視略矩形状及び側面視略扁平三角形状であり、下底部141と、傾斜部142と、上底部143と、側壁144とからなる。この連結体140の前端部140aから後端部140bまでの下底部141の長さはL1+2L2である。また、前端部140aから後端部140bにかけて上昇傾斜するように主として傾斜部102と第1傾斜部112″とで傾斜部142が形成され、且つ、後端部140bにおいて、土台130の側壁134(高さ2H)と第1分割体110″の第1側壁114″(高さH)とで高さ3Hの側壁144が形成されている。
【0042】
また、傾斜部142には、各部材の凹条が同一直線上に並び、凹条146が形成されている。そして、図6(c)に示すとおり、各分割体を一体化するとともに、取付面に固定するために、各部材の固定孔が高さ方向に連続し、固定孔148が形成されている。
【0043】
このスペーサ連結体140を組み立てる方法を以下に説明する。まず、スペーサ100の第2係合凹部125b(図4参照)と、土台130の前端部130aから突出する係合凸部125a′(図5参照)とを係合させて、スペーサ100と土台130とを連結する。次に、土台130の上面132上に、第1分割体110″の下底部111″を当接させ、第1凸条116b″を凹条136(第2凹条126a′)上に嵌合させる(図示せず)。そして、第1分割体110″を凹条136に沿って摺動させると、係止爪117a″と第1係止溝117b′とが係合し、第1分割体110″は土台130により係止されて、第1分割体110″の後端部110b″が土台130の後端部130b上に位置するように、第1分割体110″が土台130上に配置され、スペーサ連結体140が形成される。
【0044】
上述と同様の組み立て方法によって、複数の土台130を長手方向又は高さ方向に組み合わせ、第1分割体110及び第2分割体120をさらにその上に積み重ねていくことにより、所望の高さを有するスペーサを形成することが可能である。図7に示すように、例えば、高さ4Hのスペーサを形成するには4つの第1分割体110及び4つの第2分割体120を組合せればよく、高さ5Hのスペーサを形成するには7つの第1分割体110及び6つの第2分割体120を組合せればよい。従って、本発明のスペーサは、2種類からなるものの、複数の第1分割体110と複数の第2分割体120から構成されうる。
【0045】
なお、本実施形態のスペーサ100は、ABS樹脂などの合成樹脂を用いた射出成形品であり、上記各部位は射出成形時に一体成形される。しかしながら、材料及び製法はこれに限定されない。
【0046】
図8は、本実施形態において使用される、配線・配管材収容用保護材としての保護カバー200を示す。図8(a)(b)に示すとおり、保護カバー200は、合成樹脂により断面形状が長手方向に連続する長尺直状に形成されており、その断面視は略矩形状である。そして、この保護カバー200は、長尺の配線又は配管を内部に収容可能である。
【0047】
保護カバー200は、取付面に固定するための基台201と、基台201に係合する蓋体202とを備える。基台201は、断面視略凵字形状であり、底面201aの両端から側部201bがそれぞれ立設されている。側部201bの先端には、被係合部201cが形成されている。他方、蓋体202は、断面視略∩字形状に湾曲しており、その両端には、係合部202aが形成されている。係合部202aを被係合部201cに係合させることで、基台201の開口は蓋体202によって覆われる。なお、蓋体202を幅方向に撓ませてから基台201上に配置し、弾性力で蓋体202が元に戻る力によって係合部202aで被係合部201cを挟み込んで、蓋体202を基台201に取り付けることができる。この保護カバー200では、基台201と蓋体202とはともに長手方向へ撓み性を有しており、基台201が撓んだ状態でも、係合部202aと被係合部201cとの係合は維持可能であるが、基台201の撓み量は蓋体202の撓み範囲内にある方がより好ましい。
【0048】
なお、配線・配管材収容用保護材の形状及び材質は、図8の保護カバー200に限定されない。例えば、図9に示す硬質ビニル電線管のように、断面円形状が長手方向に連続する一体型の合成樹脂性保護管200Aであってもよい。また、保護材はアルミニウムなどの金属からなるものでもよい。従って、使用者は、使用用途等に応じて任意に保護材の形状及び材質を選択可能である。
【0049】
図10に示すとおり、保護カバー200はz方向に変形して所定量撓むことが可能である。概略側面視において、一端を水平面に固定した状態で他端をz方向へ変形させたときの保護カバー200の撓み曲線の接線(接平面)と水平面との角度を撓み角θとする。撓み角θが所定の範囲(弾性変形領域)にあるときは、z方向に弾性変形した保護カバー200は、撓み状態から元の直線状態へと戻ろうとする。しかし、撓み角θがより大きくなり、弾性限界(降伏点)を越えると、保護カバー200は塑性変形して破断することになる。本発明において、保護カバーの「撓み範囲」とは、撓み角θが弾性変形領域内にあることをいう。
【0050】
例えば、図8の合成樹脂性の保護カバー200では、撓み角θが約2〜3°以下であるときが弾性変形領域であり、撓み角θが約2〜3°を越えると、保護カバー200は塑性変形して破断する。他方、図9の断面視円形状の保護管200Aでは、撓み角θが約4〜5°以下であるときが弾性変形領域であり、撓み角θが約4〜5°を越えると塑性変形して破断する。即ち、形状及び材料によって弾性変形領域の範囲は大きく変化する。従って、「撓み範囲」とは、本実施形態の保護カバー200における撓み範囲(撓み角θ)に限定されない。なお、弾性変形領域の範囲は、気温等の外部環境によっても大きく変化し、上述の値は室温下における環境を想定したものである。即ち、本発明の保護材には破壊、破断される状態を除くものが含まれる。
【0051】
図11は、配線・配管材収容用保護材としての保護カバー200がスペーサ100を介して高さ2Hの段差部Sを乗り越えた状態で取付面Tに設置されている、保護材設置構造10を示す。なお、この保護材設置構造10では、説明の便宜上、取付面Tが水平壁面にあるように図示され、これに基づき上下左右方向を定義して各部材について詳細に説明するが、取付面は、直立壁面にあっても、天井面にあってもかまわず、本実施形態に限定されない。
【0052】
図11に示すとおり、保護材設置構造10において、取付面Tは、第1取付面T1と、第1取付面T1に対して凸状の第2取付面T2とからなり、第1取付面T1と第2取付面T2とで高さ2Hの段差部Sを形成している。なお、第2取付面T2は、平面状の壁面に限定されずに、壁面に設置された水切り構造、雨樋、配線などの障害物等をも含んでいる。
【0053】
図11(c)は保護材設置構造10の概略側面図である。保護材設置構造10は、段差部Sに向けて(第1取付面T1から第2取付面T2に向かって)保護カバー200の撓み範囲内で上昇傾斜する傾斜部102を形成するように、スペーサ100が段差部Sに隣接する第1取付面T1に配置され、保護カバー200が傾斜部102に当接することにより、保護カバー200が撓み範囲内で撓み、段差部Sを乗り越えた状態で、第1取付面T1に取り付けられてなる。
【0054】
図11(c)に示すとおり、変形した保護カバー200の接平面は実質的に傾斜部102であるので、保護カバー200の撓み角θと傾斜部102の傾斜角αとは実質的に同じ大きさである。本実施形態では、傾斜角αを1.5°に設定しており、傾斜角αは保護カバー200の弾性変形領域内(0<α<2〜3°)にある。撓み角θが弾性変形領域を越えると、保護カバー200は塑性変形して破断するおそれがあるので、傾斜角αは弾性変形領域内にあることが好ましい。なお、傾斜角αは1.5°に限定されず、保護材の形状、材質によって任意に変更しうる。例えば、保護カバー200よりも弾性変形領域が広い図9の断面視円形状の保護管200Aを布設するときは、傾斜角αを4〜5°まで大きくすることができる。即ち、撓み角θが配線・配管材収容用保護材の撓み範囲内(弾性変形領域内)であれば、段差部Sの高さに応じて傾斜角αを任意に設定可能である。
【0055】
また、上底部103は傾斜部102に対して略円弧を形成するように緩やかに屈曲しているので、保護カバー200は傾斜部102及び上底部103に沿って略円弧を形成するように緩やかに撓んでいる。
【0056】
以下、スペーサ100及び保護カバー200を取付面Tに設置する方法について説明する。まず、スペーサ100を、傾斜部102が第1取付面T1から第2取付面T2に向けて高くなる傾斜角αのスロープを形成するように、段差部Sに隣接する位置で第1取付面T1に下底部101が当接するように配置する。このとき、固定孔118,128を介して、スペーサ100を第1取付面T1に固定する。
【0057】
次に、保護カバー200と取付面Tとの間にスペーサ100を挟み込むように、取付面Tに上方から保護カバー200を配置する。図11(c)に示すとおり、保護カバー200をスペーサ100の傾斜部102に当接させ、保護カバー200を長手方向に沿って撓ませて、段差部Sを乗り越えた状態で第1取付面T1及び第2取付面T2に固定することにより、スペーサ100を介して取付面Tに保護カバー200を設置することができる。なお、保護カバー200の固定位置はこれに限定されず、保護カバー200を第1取付面T1と第2取付面T2のいずれか一方に固定してもよく、又は、保護カバー200をスペーサ100上に固定孔118,128を介して固定してもよい。また、第1取付面T1から立ち上がる段差部Sの段差壁Swも取付面Tの一部であり、段差壁Swにスペーサ100を固定してもよい。
【0058】
以下、本発明の一実施形態のスペーサ100及び保護材設置構造10の作用効果について説明する。なお、次に説明するスペーサ100の作用効果は、第1分割体110を単独で使用する場合、及び、複数の分割体からなる連結体を使用する場合にも同様にあてはまることは言うまでもない。
【0059】
段差部乗越え用スペーサ100を第1取付面T1に配置して、該スペーサ100を介して取付面Tに保護カバー200を設置することにより、保護カバー200は、スペーサ100の傾斜部102に当接して弾性変形される。当該傾斜部102は段差部Sに向けて角度αで上昇傾斜しているので、保護カバー200が傾斜部102に沿って撓むことにより、段差部Sを乗り越えた状態で保護カバー200を取付面Tに設置することが可能である。即ち、保護カバー200を段差部S前後で切断分割して配置する必要がなく、スペーサ100を取付面Tに取り付けてその上に保護カバー200を設置するだけでよいので、先行技術と比較して、より簡易な全体構造(保護材設置構造10)で、段差部Sを有する取付面Tに保護カバー200を容易に設置することができる。即ち、保護カバー200の加工コストを削減するとともに、取付作業性を向上させることができる。
【0060】
また、先行技術では、直状の保護カバーを分割して再度連結するための継ぎ手又は蛇腹構造と保護カバー直状部との連結部分で強度が低下するおそれがあるが、本実施形態では、一体型の保護カバー200を直接取付面Tに設置できるので、保護カバー200及び保護材設置構造10の強度低下のおそれが減少する。
【0061】
さらに、スペーサ100は保護カバー200と取付面Tとの間に位置し、保護カバー200がスペーサ100を上方から覆っている(図11(b)参照)。即ち、先行技術における蛇腹構造や継ぎ手構造が外部に露出しているのに対して、スペーサ100が外部に露出する割合が少なく、段差部Sの乗越え部分における保護材設置構造10の美観を改善することができる。従って、本発明のスペーサを用いることにより、保護材布設における作業性及び保護材設置構造における美観を改善する。
【0062】
スペーサ100において、第1分割体110と第2分割体120とは高さが略半分となる位置で、長手方向に連結可能に分割されてなることにより、第1分割体110と第2分割体120とを長手方向に連結させて高さをHから2Hへと変更することができ、スペーサ全体の高さを段差部Sの高さに近づけることができる。また、第1分割体110と第2分割体120とが積み重ね可能であることにより、スペーサ全体の高さをさらに調整可能である。例えば、第1分割体110を第2分割体120に積み重ねて形成された略直方体の土台130の上に第1分割体110を配置し、且つ、実質的に連続する傾斜部142を形成するように、スペーサ100を土台130の前端部130a側に配置することにより、高さ3Hの連結体140を形成することができる(図6参照)。従って、図7に示したとおり、複数の第1分割体110及び第2分割体120を長手方向に連結しつつ積み重ねていくことにより、段差部Sの高さに応じてスペーサの高さを調整することができる。
【0063】
スペーサ100において、上底部103は、傾斜部102から後端部100b側に連続的に形成され、且つ、下底部101に対して平行に形成されていることにより、保護カバー200を設置する際、上底部103で保護カバー200の設置位置をガイドしつつ、互いに緩やかに連続する傾斜部102と上底部103とに沿って、保護カバー200を緩やかに撓ませることができる(図11(c)参照)。また、上底部103は傾斜部102に対して緩やかに屈曲し、鋭部(鋭角)を形成していないので、保護カバー200をスペーサ100上に設置するときに、保護カバー200がスペーサ100の角部に当接して破損する頻度を減少させることができる。なお、本実施形態のように上底部103が傾斜部102に対して略円弧状に屈曲している方が、保護材をより緩やかに撓ませることができるが、上底部103が傾斜部102に対して略円弧状に屈曲していなくても、傾斜部102と上底部103との屈曲角は鈍角であり、緩やかに屈曲しているので、上述と同様の効果を奏する。
【0064】
スペーサ100において、第1係合凹部115及び第2係合凹部125bがそれぞれ第1分割体110及び第2分割体120の後端部110b,120bに凹設され、係合凸部125aが第2分割体120の前端部120aに凸設されている。即ち、第1分割体110をスペーサとして使用する際、又は、連結体140をスペーサとして使用する際においても、スペーサ後端部を段差部Sの段差壁Swに当接させ、スペーサを段差Sに隣接配置することができ、且つ、スペーサを段差壁Swに固定することも可能である。即ち、スペーサ設置位置の自由度及びスペーサ配置における作業性が向上する。
【0065】
スペーサ100において、第1分割体110及び第2分割体120は、凹条116a,126aと凸条116b,126bとを備えている。この凹条116a,126aと凸条116b,126bとは嵌合して互いに摺動可能であるので、分割体を積み重ねて所定位置に移動させるときに該分割体の移動は長手方向に沿ってガイドされる。そして、分割体を長手方向に沿って移動させると、係止爪117aが係止溝117b,127に係合して、分割体は所定位置で係止される。従って、各分割体の上下関係における位置決めを容易に行うことができ、土台130及び連結体140等を迅速且つ簡単に組み立てることができる。
【0066】
スペーサ100において、各分割体110,120は載置部116aa,126aaを備えており、上底部113,123が傾斜部112,122に対して緩やかに屈曲しているのに対し、この載置部116aa,126aaは、側面視において前端部110a,120aから後端部110b,120bにかけて直線的に上昇傾斜している。即ち、分割体110,120同士を上下に積み重ねたときに、上方の分割体110,120の下底部111,121を構成する凸条116b,126b及び側壁底端部114a,124aが、下方の分割体110,120の載置部116aa,126aaに対し、前端部110a,120aから後端部110b,120bに亘って当接しているので、がたつくことのない安定した状態で分割体110,120同士を積み重ねることができる。
【0067】
保護材設置構造10において、保護カバー200は、取付面Tに固定される基台201と、基台201に係合する蓋体202からなり、撓んだ状態で基台201と蓋体202との係合を維持可能であることにより、蓋体202を基台201に装着した状態の保護カバー200を取付面Tに設置する際において保護カバー200を撓ませても蓋体202が外れてしまう不具合が少ない。また、保護カバー200を取付面Tに設置した後において、蓋体202を自由に着脱可能であるので、配線・配管の取り付け及び取り外しが可能であり、配線・配管のメンテナンス性及び作業の自由度が向上する。
【0068】
なお、本発明の保護材設置構造は、上述した実施形態に限られない。例えば、図12(a)に示すとおり、第2取付面T2の両側に第1取付面T1があり、2つの段差部S1及びS2を形成している場合には、段差部S1及びS2に隣接する位置に2つのスペーサ100を配置することにより、保護カバー200を段差部S1及び段差部S2を乗り越えた状態で取付面Tに設置することができる。また、保護材設置構造10はスペーサ100を配置することに限定されず、例えば、段差部Sの高さがH以下であり、第1分割体110のみで段差部Sを乗り越えることができる場合には、第1分割体110をスペーサとして配置すればよい。このとき、第2分割体120との連結手段である凸状の係合凸部125aが第2分割体120に形成され、第1分割体110には凹状の係合凹部115が形成されているため、第1分割体115の後端部110bを段差壁Swに当接させることができる。他方、図12(b)のように、段差部Sの高さが4Hのときは、第1分割体110と第2分割体120との2種類を複数個組み合わせた連結体150をスペーサとして配置すればよい。即ち、段差部Sの高さに応じて、例えば、図7のように複数の第1分割体110と複数の第2分割体120とでもってスペーサ連結体を形成して、保護材設置構造を構成することができる。
【0069】
また、前記第2取付面T2は、非平面状の障害物であってもよく、例えば、図13のような建物の壁面に設置される水切り構造Xであってもよい。このとき、段差部Sは、水切り構造Xと第1取付面T1とによって形成されている。この水切り構造Xは、その機能上、保護カバー200に当接してはならず、水切り構造Xから保護カバー200を浮かせた状態で取付面Tに設置する必要がある。図13に示すとおり、水切り構造Xの両側に、2つのスペーサ100を設置して、傾斜部102に保護カバー200を当接させて撓ませることにより、保護カバー200が水切り構造Xに当接しないように浮かせて跨ぐ状態に取付面Tに設置されている。このとき、弾性変形した保護カバー200の復元力をスペーサ100で支持しており、保護カバー200に水切り構造X側に外力が加わったとしても、各スペーサ100の上底面103が水切り構造Xの高さで保護カバー200を支持しているので、保護カバー200と水切り構造Xとが当接して、水切り構造Xが破損することを未然に防止することができる。
【0070】
そして、本発明の段差部乗越え用スペーサもまた上述の実施形態の構成に限定されない。例えば、第1分割体110の長さL1と第2分割体120の長さL2とが等しくなるように形成されてもよく、又は、L1がL2よりも大きくなるように形成されてもよい。また、第1分割体110と第2分割体120との連結手段は係合凸部と係合凹部以外の手段であってもよく、面ファスナー、両面テープ、マグネット等を連結手段として採用することも可能である。或いは、連結手段を形成せずに第1分割体110の後端部110bと第2分割体120の前端部120aとを当接させるだけの構成であってもよい。さらに、第1上底部113及び第2上底部123は、第1傾斜部112及び第2傾斜部122に対して略円弧状に屈曲せずに、角部を有するように屈曲していてもよい。
【0071】
(変形例1)
本発明の段差部乗越え用スペーサは、分割構造を有していない一体型構造であってもよく、或いは、3種以上の分割体からなってもよい。また、段差部乗越え用スペーサは、第1取付面から第2取付面へと上昇傾斜する傾斜部を備えていればよく、例えば、図14(a)のスペーサ100Aのように、上底部、係合凹部、係合凸部、凹条、凸条、係止爪、係止溝、載置部などを備えていない簡易な構成としてもよい。そして、上述の実施形態のように、傾斜部は平面状でなくてもよい。例えば、図14(b)に示すスペーサ100Bでは、傾斜部は湾曲形状である。図14(c)に示すスペーサ100Cでは、全体が側面視略円弧状に形成されている。そして、図14(d)に示すスペーサ100Dのように、傾斜部は連続平面でなくてもよく、傾斜部が階段状に傾斜していてもよい。さらに、スペーサの形状は本実施形態に限定されず、図14(e)に示すスペーサ100Eのように、保護カバー200を撓ませて段差部Sを乗り越えた状態で取付面Tに設置可能にする傾斜部を形成できれば、スペーサの全体形状は平板状であってもよい。
【0072】
(変形例2)
図15(a)に、断面視円形状の保護管200Aと、該保護管200Aを設置するためのスペーサ100Fとを示す。前端部100Faから後端部100Fbへと傾斜しつつ、保護管200Aがスペーサ100F上で幅方向に移動しないように断面視(図15(b)参照)において湾曲する湾曲傾斜面102Fを有する。また、図15(b)に示すとおり、上述の実施形態と同様に、このスペーサ100Fを長手方向に摺動可能に積み重ねることも可能である。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0074】
10 保護材設置構造
100 段差部乗越え用スペーサ
101 下底部
102 傾斜部
103 上底部
110 第1分割体
120 第2分割体
130 土台
140 連結体
200 保護カバー(配線・配管収容用保護材)
200A 保護管(配線・配管収容用保護材)
T 取付面
S 段差部
α 傾斜角
θ 撓み角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が長手方向に連続する長尺直状であり長手方向に撓み性を有する配線・配管材収容用保護材を、段差部を有する取付面に、前記段差部を乗り越えた状態で設置するために、前記取付面に配置される段差部乗越え用スペーサであって、
前記取付面に配置されたときに前記段差部に向けて前端部側から後端部側に上昇傾斜する傾斜部を備え、
前記保護材が前記取付面に設置された際に、前記傾斜部は、前記保護材に当接して、前記保護材が前記段差部を乗り越えるように前記保護材を撓み範囲内で撓ませることを特徴とする段差部乗越え用スペーサ。
【請求項2】
前記段差部の高さにあわせて高さ調整すべく、連結可能な複数の分割体から構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の段差部乗越え用スペーサ。
【請求項3】
前記複数の分割体は、長手方向に連結可能に形成され、長手方向に連結することにより連続する傾斜部を形成する第1分割体と第2分割体とからなり、前記第1分割体と前記第2分割体とは高さが略半分となる位置で分割されてなり、前記第1分割体と前記第2分割体とは積み重ね可能に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の段差部乗越え用スペーサ。
【請求項4】
前記取付面に当接するための下底部と、前記後端部側で前記傾斜部に隣接するとともに前記下底部に対して略平行な上底部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の段差部乗越え用スペーサ。
【請求項5】
断面形状が長手方向に連続する長尺直状であり長手方向に撓み性を有する配線・配管材収容用保護材を、段差部を有する取付面に、前記段差部を乗り越えた状態で設置する保護材設置構造であって、
前記段差部に向けて前記保護材の撓み範囲内で上昇傾斜する傾斜部を形成するように、請求項1から4のいずれかのスペーサが前記取付面に配置され、
前記保護材が前記傾斜部に当接することにより、前記保護材が撓み範囲内で撓んで前記段差部を乗り越えた状態で前記取付面に取り付けられてなることを特徴とする保護材設置構造。
【請求項6】
前記保護材は、前記取付面に固定される基台と該基台に係合する蓋体とからなり、撓んだ状態においても、前記基台と前記蓋体との係合が維持可能に形成されることを特徴とする請求項5に記載の保護材設置構造。
【請求項7】
断面形状が長手方向に連続する長尺直状であり長手方向に撓み性を有する配線・配管材収容用保護材を、段差部を有する取付面に、前記段差部を乗り越えた状態で設置する方法であって、
前記段差部に向けて前記保護材の撓み範囲内で上昇傾斜する傾斜部を形成するように、請求項1から4のいずれかのスペーサを前記取付面に配置するステップと、
前記保護材を前記傾斜部に当接させることにより、前記保護材を撓み範囲内で撓ませて前記段差部を乗り越えた状態で前記取付面に取り付けるステップと、を含むことを特徴とする、段差部を乗越えて配線・配管材収容用保護材を取付面に設置する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−13139(P2012−13139A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149538(P2010−149538)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】