配線・配管材固定具
【課題】屋根に簡単に取り付けることができる配線・配管材固定具を提供する。
【解決手段】配線・配管材固定具4は、屋根材2に取り付けられる被取付部5と、配線・配管材3を保持する保持部6とを備える。被取付部5は、屋根1の傾斜方向における下方側の屋根材201と上方側の屋根材202との重なり部分の隙間1aに外側から挿入される。この被取付部5は、被取付部本体5aと複数の爪部形成片5b、5bとを有する。これら爪部形成片5b、5bは、被取付部本体5aに、被取付部5の少なくとも挿入方向Pにずれて設けられる。そこで、爪部形成片5b、5bのうちの所要の爪部形成片5bを斜めに起こして爪部5cを形成しておき、被取付部5を前記隙間1aに外側から挿入することにより、その爪部5cが、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められる。
【解決手段】配線・配管材固定具4は、屋根材2に取り付けられる被取付部5と、配線・配管材3を保持する保持部6とを備える。被取付部5は、屋根1の傾斜方向における下方側の屋根材201と上方側の屋根材202との重なり部分の隙間1aに外側から挿入される。この被取付部5は、被取付部本体5aと複数の爪部形成片5b、5bとを有する。これら爪部形成片5b、5bは、被取付部本体5aに、被取付部5の少なくとも挿入方向Pにずれて設けられる。そこで、爪部形成片5b、5bのうちの所要の爪部形成片5bを斜めに起こして爪部5cを形成しておき、被取付部5を前記隙間1aに外側から挿入することにより、その爪部5cが、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋根の上に配線・配管材を固定するための配線・配管材固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根にパイプ(配管材)を固定する固定具として、屋根に釘で取付け固定されるパイプ止め金具があった(例えば、特許文献1参照)。このパイプ止め金具は、帯状金属板を曲げて形成されるものであって、円弧状のパイプ押え部と、釘を通す挿通孔が設けられた平坦な被取付部とを備えていた。そこで、屋根にパイプを固定するにあたっては、このパイプ止め金具の二つを向き合わせて、パイプ押え部でパイプを挟んだ状態で、釘を被取付部の挿通孔から屋根の瓦の小孔を通して下地部分に打ち込んだ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−45370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のパイプ押え金具にあっては、釘を用いるために、瓦に小孔をあけたときとか、釘を打ち込んだときに、瓦が割れないように細心の注意を払わなければならず、その作業が厄介だった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、屋根に簡単に取り付けることができる、配線・配管材固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る配線・配管材固定具は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具である。この配線・配管材固定具は、前記屋根材に取り付けられるよう、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを、備える。ここで、前記被取付部は、被取付部本体と、その被取付部本体に、前記被取付部の少なくとも挿入方向にずれて設けられる、複数の爪部形成片とを、有する。これら爪部形成片は、前記被取付部本体側に倒れた位置から、前記挿入方向とは反対の反挿入方向を向くよう斜めに起こされた位置に塑性変形可能である。そこで、前記爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こして前記爪部を形成しておき、前記被取付部を前記隙間に外側から挿入することにより、その爪部が、前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に掛け止められて、前記被取付部が前記隙間から抜け止めされる。
【0007】
この配線・配管材固定具によると、配線・配管材を屋根に固定するには、始めに、配線・配管材固定具の被取付部に備わる複数の爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こすことで、爪部を形成しておく。そして、被取付部を、下方側の屋根材と上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入する。すると、爪部は、上方側の屋根材または下方側の屋根材に掛け止められる。こうして、被取付部、ひいては配線・配管材固定具は、屋根に取り付けられる。そして、保持部で配線・配管材を保持する。このように、配線・配管材固定具を屋根に取り付けるとともに、保持部で配線・配管材を保持することで、配線・配管材は、屋根に固定される。ここで、爪部形成片は、被取付部の少なくとも挿入方向にずれて複数設けられているため、それら爪部形成片のいずれかを斜めに起こして爪部を形成し、その爪部を上方側の屋根材または下方側の屋根材に掛け止めることで、上方側の屋根材からの保持部の位置、つまりは配線・配管材の位置を調整することができる。なお、配線・配管材固定具を屋根に取り付ける作業と、保持部で配線・配管材を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具である。この配線・配管材固定具は、前記屋根材に取り付けられるよう、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを、備える。ここで、前記被取付部は、被取付部本体と、その被取付部本体に、前記被取付部の少なくとも挿入方向にずれて設けられる、複数の爪部形成片とを、有する。これら爪部形成片は、前記被取付部本体側に倒れた位置から、前記挿入方向とは反対の反挿入方向を向くよう斜めに起こされた位置に塑性変形可能である。そこで、前記爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こして前記爪部を形成しておき、前記被取付部を前記隙間に外側から挿入することにより、その爪部が、前記上方側の屋根材の前側に下方に向けて突出するように形成された前垂部に掛け止められて、前記被取付部が前記隙間から抜け止めされる。
【0009】
この配線・配管材固定具によると、配線・配管材を屋根に固定するには、始めに、配線・配管材固定具の被取付部に備わる複数の爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こすことで、爪部を形成しておく。そして、被取付部を、下方側の屋根材と上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入する。すると、爪部は、上方側の屋根材の前垂部に掛け止められる。こうして、被取付部、ひいては配線・配管材固定具は、屋根に取り付けられる。そして、保持部で配線・配管材を保持する。このように、配線・配管材固定具を屋根に取り付けるとともに、保持部で配線・配管材を保持することで、配線・配管材は、屋根に固定される。ここで、爪部形成片は、被取付部の少なくとも挿入方向にずれて複数設けられているため、その爪部形成片のいずれかを斜めに起こして爪部を形成し、その爪部を上方側の屋根材の前垂部に掛け止めることで、上方側の屋根材からの保持部の位置、つまりは配線・配管材の位置を調整することができる。なお、配線・配管材固定具を屋根に取り付ける作業と、保持部で配線・配管材を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部形成片は、前記被取付部本体から直立するよう起こされた位置に塑性変形可能であって、その直立して形成される規制部は、前記被取付部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限するように、前記上方側の屋根材の前面部と対向して、その前面部に係合可能である。これにより、複数ある爪部形成片は、そのいずれかを、斜めに起こすことで爪部として機能させることも、直立するように起こすことで規制部として機能させることもできる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具において、前記被取付部は、前記爪部形成片とは別に、前記被取付部本体側に倒れた位置から、直立するよう起こされた位置に塑性変形可能で、少なくとも前記挿入方向にずれて設けられる、複数の規制部形成片を有し、その直立して形成される規制部は、前記被取付部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限するように、前記上方側の屋根材の前面部と対向して、その前面部に係合可能である。
【0012】
また、請求項5に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片には、その爪部形成片を起こすための工具が差し入れられる工具挿入孔があけられている。こうして、爪部形成片に工具挿入孔があけられることから、この工具挿入孔に、ドライバー等の工具を差し入れることで、容易に爪部形成片を起こすことができる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部形成片は、前記挿入方向にずれて、三つ以上設けられ、それら爪部形成片のうちの、前記挿入方向の先端側から数えた一つ目、または、一つ目および二つ目が、予め斜めに起こされて前記爪部となっている。
【0014】
また、請求項7に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記被取付部は、板材からなり、前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片は、前記挿入方向に直交する、前記被取付部の幅方向の両端縁に設けられ、かつ、その端縁に通ずる切込みによって形成される。
【0015】
また、請求項8に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片は、前記挿入方向に直交する、前記被取付部の幅方向の中間位置に設けられる。
【0016】
また、請求項9に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記配線・配管材固定具は、前記被取付部を有するベース体と、前記保持部を有して前記ベース体に着脱可能に取付け固定される保持部材とを備える。
【0017】
また、請求項10に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項9に記載の配線・配管材固定具において、前記ベース体は、前記保持部材が取付け固定される保持部材取付部を有する。その保持部材取付部は、上方に突出形成されて、前記保持部材の基部を止めるための固着具が挿入される、固着具挿入孔を有する。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る配線・配管材固定具によれば、被取付部を屋根材の隙間に挿入することで、その被取付部に設けられた爪部により配線・配管材固定具を屋根に簡単に取り付けることができる。そして、複数ある爪部形成片のいずれかを斜めに起こして爪部を形成することで、保持部に保持される配線・配管材の、上方側の屋根材からの位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第一の実施の形態の、全体の模式図である。
【図2】同じく、図1における要部拡大図である。
【図3】同じく、ベース体の拡大斜視図である。
【図4】同じく、ベース体の拡大正面図である。
【図5】同じく、ベース体の拡大平面図である。
【図6】同じく、図5におけるA−A線による断面図である。
【図7】同じく、他の使用状態を示す図2相当図である。
【図8】同じく、さらに他の使用状態を示す図2相当図である。
【図9】同じく、規制部を形成することなく使用した状態を示す図2相当図である。
【図10】この発明の第二の実施の形態の、図2相当図である。
【図11】同じく、ベース体の拡大正面図である。
【図12】同じく、ベース体の拡大平面図である。
【図13】同じく、図12におけるB−B線による断面図である。
【図14】同じく、他の使用状態を示す図10相当図である。
【図15】この発明の他の実施の形態を示す、図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係る配線・配管材固定具を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図9は、本発明の第一の実施の形態を示す。図中符号1は、屋根を示す。2は、前記屋根1を形成する屋根材を示す。すなわち、屋根1は、その屋根1の傾斜方向における下方側の屋根材201(2)の一部に上方側の屋根材202(2)の一部が上に重なるようにして屋根材2、2が並んで形成される。3は、前記屋根1の上に配線・配管される配線・配管材(配線材または配管材)を示し、太陽光発電用の太陽電池に接続される電気ケーブル(配線材)とか、その電気ケーブルを収容保護する保護管とか、太陽光温水器に接続される通水管(配管材)とかからなる。4は、前記屋根1の上に配線・配管材3を固定するための、配線・配管材固定具を示す。
【0022】
ここで、配線・配管材固定具4は、屋根材2に取り付けられるよう、下方側の屋根材201(2)と上方側の屋根材202(2)との重なり部分の隙間1aに外側から挿入される、被取付部5と、配線・配管材3を保持する保持部6とを、備える。被取付部5は、被取付部本体5aと、その被取付部本体5aに、被取付部5の少なくとも挿入方向Pにずれて設けられる、複数の爪部形成片5b、5bとを、有する。これら爪部形成片5b、5bは、被取付部本体5a側に倒れた位置から、前記挿入方向Pとは反対の反挿入方向Qを向くように斜めに起こされた位置に塑性変形可能である。そして、その斜めに起こされて形成される爪部5cは、相対的に被取付部本体5aに向かう側に弾性的に変形可能となっている。そこで、複数ある爪部形成片5b、5bのうちの所要の爪部形成片5bを斜めに起こして爪部5cを形成しておき、被取付部5を前記隙間1aに外側から挿入することにより、その爪部5cが、上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前側である前端に下方に向けて突出するように形成された前垂部2a)に掛け止められて、被取付部5が前記隙間1aから抜け止めされる。
【0023】
ここにおいて、被取付部5における爪部形成片5bは、前記挿入方向Pにずれて、三つ以上(図示実施の形態においては、6つ)設けられ、それら爪部形成片5b、5bのうちの、前記挿入方向Pの先端側から数えた一つ目、または、一つ目および二つ目(図示実施の形態においては、一つ目および二つ目)が、予め斜めに起こされて前記爪部5cとなっている(図3、図4参照)。
【0024】
そして、被取付部5は、板材からなり、爪部形成片5b、5bの少なくとも一部の爪部形成片5b(図示実施の形態においては、全部の爪部形成片5b、5b)は、前記挿入方向Pに直交する、被取付部5の幅方向Rの両端縁に設けられ、かつ、その端縁に通ずる切込み5dによって形成されている。
【0025】
また、爪部形成片5bは、被取付部本体5aから直立するよう起こされた位置に塑性変形可能であって、その直立して形成される規制部5eは、被取付部5の、前記隙間1aに外側から挿入される挿入長さを制限するように、上方側の屋根材202の前面部としての前端面2bと対向して、その前端面2bに係合可能(当接可能)である。
【0026】
具体的には、配線・配管材固定具4は、前記被取付部5を有するベース体7と、前記保持部6を有してベース体7に着脱可能に取付け固定される保持部材8とを備える。
【0027】
ベース体7は、金属製であって、帯状の板材からなり、その長手方向の一方側(挿入方向P側)に、前記被取付部5を有し、他方側(反挿入方向Q側)に、保持部材8が取付け固定される保持部材取付部7aを有する。
【0028】
被取付部5における爪部形成片5bは、前記挿入方向Pにずれて(詳細には、挿入方向Pに並ぶようにして、つまり、ベース体7の長手方向に並ぶようにして)、複数(詳細には、六つ)設けられる。特に、図示実施の形態においては、爪部形成片5bは、二列となるように、被取付部5の幅方向Rの両端縁に設けられている。この爪部形成片5bが起こされて形成される爪部5cは、前記反挿入方向Qを向くように斜め上方に起立する。そして、この爪部5cは、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められるとともに、上方側の屋根材202の下面2cに当接する。
【0029】
また、被取付部5には、接着材充填部5fが設けられており、ベース体7、ひいては、配線・配管材固定具4を、接着材によっても、屋根材2(つまりは、屋根1)に取り付けることができる。この接着材充填部5fは、上方に膨出形成され、その内部は、接着材の充填空間5gとなって、屋根材2の上面に臨むように下方が開放するとともに、前記反挿入方向Q側が後に詳述する保持部材取付部7aの内側に連通している(図6参照)。そして、この接着材充填部5fには、上面に、充填空間5gに接着材を充填するための充填孔5hがあけられている。さらに、接着材充填部5fの上面には、充填孔5hから離れた位置に(詳細には、充填孔5hから前記反挿入方向Q側の離れた位置に)、接着材の充填状態を確認するための確認孔5iがあけられている。
【0030】
また、被取付部5には、ビスが挿通される取付孔5jが設けられており、ベース体7、ひいては、配線・配管材固定具4を、取付孔5jを挿通して屋根材2にねじ込まれるビスによっても、屋根材2(つまり、屋根1)に取り付けることができる。
【0031】
ベース体7における保持部材取付部7aは、上方に突出形成されて(図示実施の形態においては、上方に突出するよう屈曲あるいは湾曲形成されて)、保持部材8の基部8aを止めるための固着具9が挿入される、固着具挿入孔7bを有する。図示実施の形態においては、固着具9は、ビス9aからなり、固着具挿入孔7bは、そのビス9aが螺合する螺合孔からなって、保持部材8の基部8aに設けられた通孔8bに挿入されたビス9aが、固着具挿入孔7bに螺合することで、保持部材8は、ベース体7の保持部材取付部7aに取付け固定される。
【0032】
また、保持部材8は、金属製であって、帯状の板材からなり、その長手方向の一方側に前記保持部6を有し、他方側に前記基部8aを有する。保持部6は、逆U字状に曲げられて、その内側に配線・配管材3が保持される。つまり、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりすることで、配線・配管材3は保持される。そして、基部8aは、保持部6の逆U字状の一端から直角に折れ曲がって形成され、その板面を貫通するようにして前記通孔8bが設けられる。
【0033】
次に、この第一の実施の形態に示す配線・配管材固定具4の作用効果について説明する。この配線・配管材固定具4によると、配線・配管材3を屋根1に固定するには、始めに、配線・配管材固定具4の被取付部5に備わる複数の爪部形成片5b、5bのうちの所要の爪部形成片5bを斜めに起こすことで、爪部5cを形成しておく(図示実施の形態においては、爪部形成片5b、5bのうちの、前記挿入方向Pの先端側から数えた一つ目および二つ目が、予め斜めに起こされて爪部5cとなっているが、図1および図2に示す例では、四つ目の爪部形成片5bを斜めに起こして爪部5cを形成し、その爪部5cを、屋根材2に掛け止められる爪部とする。)。そして、被取付部5を、下方側の屋根材201(2)と上方側の屋根材202(2)との重なり部分の隙間1aに外側から挿入する。すると、爪部5cは、隙間1aで相対的に被取付部本体5aに向かう側に変形(弾性変形)しても、復帰(弾性復帰)することで、上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前垂部2a、詳しくは、前垂部2aの内側面)に掛け止められる。こうして、被取付部5、ひいては配線・配管材固定具4は、屋根1に取り付けられる。そして、保持部6で配線・配管材3を保持する。もっとも、配線・配管材固定具4を屋根1に取り付ける作業と、保持部6で配線・配管材3を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0034】
ここで、爪部形成片5bは、被取付部5の少なくとも挿入方向Pにずれて複数設けられているため、それら爪部形成片5b、5bのいずれかを斜めに起こして爪部5cを形成し、その爪部5cを上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前垂部2a)に掛け止めることで、上方側の屋根材202からの保持部6の位置、つまりは配線・配管材3の位置を調整することができる。すなわち、図2に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた四つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材2(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用い、図7に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた二つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材1(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用い、さらに、図8に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた一つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材1(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用いている。
【0035】
また、図示実施の形態では、配線・配管材固定具4は、被取付部5を有するベース体7と、保持部6を有する保持部材8とに分かれているため、ベース体7に保持部材8が取付け固定された状態で、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりする以外に、保持部材8単独の状態で、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりし、その後に、保持部材8をベース体7に取付け固定することもできる。
【0036】
このように、配線・配管材固定具4を屋根1に取り付けるとともに、保持部6で配線・配管材3を保持することで、配線・配管材3は、屋根1に固定される。そして、この配線・配管材固定具4によれば、被取付部5を屋根材201(2)、202(2)の隙間1aに挿入することで、その被取付部5に設けられた爪部5cにより配線・配管材固定具4を屋根1に簡単に取り付けることができる。そして、複数ある爪部形成片5b、5bのいずれかを斜めに起こして爪部5cを形成することで、保持部6に保持される配線・配管材3の、上方側の屋根材202からの位置を調整することができる。
【0037】
また、爪部形成片5bは、被取付部5の幅方向Rに二つが並んで設けられている。これにより、爪部5cは、被取付部5の幅方向Rに並ぶ二つが、屋根材2に掛け止められ、このため、配線・配管材固定具4は、回り難くなる。特に、図示実施の形態においては、被取付部5の幅方向Rに並ぶ二つの爪部5c、5cは、被取付部5の幅方向Rの両端縁に設けられるため、配線・配管材固定具4は、より効果的に回り難くなる。
【0038】
また、爪部形成片5bは、被取付部本体5aから直立させることで、屋根材2、2の隙間1aに外側から挿入される被取付部5の挿入長さを制限する規制部5eとなる。このため、複数ある爪部形成片5b、5bは、そのいずれかを、斜めに起こすことで爪部5cとして機能させることも、直立するように起こすことで前記規制部5eとして機能させることもできる。もっとも、図9に示すように、規制部5eを形成することなく、この配線・配管材固定具4を用いても構わない。
【0039】
また、被取付部5には、接着材充填部5fやビスが挿通される取付孔5jが設けられている。このため、この配線・配管材固定具4を、爪部5cに加えて、接着材やビスを用いることでも、屋根1に取り付けることができる。特に、爪部5cだけでは、取付けが安定しない場合に、接着材やビスを用いることで、被取付部5、ひいてはベース体7や配線・配管材固定具4を安定して屋根1に取り付けることができる。
【0040】
図10〜図14は、本発明の第二の実施の形態を示す。この実施の形態は、第一の実施の形態とは、配線・配管材固定具4の被取付部5における爪部形成片5bの位置や形状が異なるが、他はほぼ同様であり、以下に、同様の部位には同一の符号を付して、異なる部分を主に説明する。
【0041】
この配線・配管材固定具4においては、爪部形成片5bは、被取付部5の挿入方向Pにずれて、三つ以上(図示実施の形態においては、4つ)設けられ、それら爪部形成片5b、5bのうちの、前記挿入方向Pの先端側から数えた一つ目が、予め斜めに起こされて爪部5cとなっている(図11、図13参照)。そして、その一つ目の爪部形成片5bは、前記挿入方向Pに直交する、被取付部5の幅方向Rの両端縁に設けられ、かつ、その端縁に通ずる切込み5dによって形成されている。
【0042】
また、爪部形成片5b、5bの少なくとも一部の爪部形成片5b(図示実施の形態においては、前記挿入方向Pの先端側から数えた一つ目を除く爪部形成片5b)は、前記挿入方向Pに直交する、被取付部5の幅方向Rの中間位置に設けられている。この幅方向Rの中間位置に設けられる爪部形成片5bは、板材からなる被取付部5(ベース体7)における、コ字状に打ち抜かれた抜き孔5kに囲まれた部分からなる。
【0043】
そして、爪部形成片5b、5bの少なくとも一部の爪部形成片5b(図示実施の形態においては、被取付部5の幅方向Rの中間位置に設けられた爪部形成片5b)には、その爪部形成片5bを起こすための工具が差し入れられる工具挿入孔5mがあけられている。ここで、この工具挿入孔5mは、起こされない爪部形成片5bにおいては、ベース体7、ひいては、配線・配管材固定具4を屋根材2に取り付けるための取付孔5jとなる。このため、配線・配管材固定具4を、取付孔5jを挿通して屋根材2にねじ込まれるビスによっても、屋根材2(つまり、屋根1)に取り付けることができる。
【0044】
ところで、図10に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた二つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材2(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用い、図14に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた一つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材1(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用いている。なお、この図14に示す例では、規制部5eは、形成されていない。
【0045】
この第二の実施の形態に示す配線・配管材固定具4の作用効果は、第一の実施の形態に示す配線・配管材固定具4の作用効果と同様であるが、爪部形成片5bに工具挿入孔5mがあけられることから、この工具挿入孔5mに、ドライバー等の工具を差し入れることで、容易に爪部形成片5bを起こすことができ、また、これによって、爪部5cや規制部5eを容易に形成することができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、爪部5cは、上方側の屋根材202に掛け止められるものでなくとも、図15に示すように、反挿入方向Qを向くように斜めに(詳しくは、斜め下方に)起こされて、下方側の屋根材201(詳しくは、下方側の屋根材201の後面部としての後端面2d)に掛け止められてもよい。
【0047】
また、爪部形成片5bは、複数ある爪部形成片5b、5bの一部が、予め斜めに起こされて爪部5cとなっていなくとも、全ての爪部形成片5b、5bが、被取付部本体5a側に倒れた位置にあり、この配線・配管材固定具4を使用するに当たって、所要の爪部形成片5bを斜めに起こすようにしてもよい。
【0048】
また、被取付部5は、爪部形成片5bとは別に、被取付部本体5a側に倒れた位置から、直立するよう起こされた位置に塑性変形可能で、少なくとも前記挿入方向Pにずれて設けられる、複数の規制部形成片を有してもよい。ここで、その直立して形成される規制部5eは、被取付部5の、前記隙間1aに外側から挿入される挿入長さを制限するように、上方側の屋根材202の前面部としての前端面2bと対向して、その前端面2bに係合可能である。すなわち、爪部形成片5bが直立に起こされることで、規制部5eが形成されなくとも、専用の規制部形成片が直立に起こされることで、規制部5eが形成されてもよい。
【0049】
また、爪部形成片5bとか前述の規制部形成片は、被取付部本体5aから直立するよう起こされることで、規制部5eとなるが、この規制部5eと爪部5cとで、上方側の屋根材202の前垂部2aを挟持するように(爪部5cが前垂部2aに掛け止められる場合)、あるいは下方側および上方側の屋根材201、202を挟持するように(爪部5cが後面部としての後端面2dに掛け止められる場合)、上方側の屋根材202の前面部としての前端面2bと規制部5eとの間隔を詰めてもよい。また、挟持するに当たっては、規制部5eは、直立する場合に限らず、挿入方向Pを向く側に傾斜してもよい。ここにおいて、規制部5eを形成するために、爪部形成片5bとか規制部形成片を起こすのは、被取付部5を隙間1aに挿入する前でも、挿入した後でもよい。また、この爪部形成片5bとか規制部形成片を、例えば直立に起こした後に、被取付部5を隙間1aに挿入し、その後に、爪部形成片5bとか規制部形成片(規制部5e)を、挿入方向Pを向く側に傾斜させてもよい。
【0050】
また、第二の実施の形態において、爪部形成片5bに工具挿入孔5mが設けられているが、第一の実施の形態においても、爪部形成片5bに工具挿入孔5mが設けられてもよい。
【0051】
また、保持部材8は、ベース体7の保持部材取付部7aにビス9a(固着具9)を用いて取付け固定されなくとも、固着具9を用いることなく、保持部材取付部7aに嵌合したり係止されたりして取付け固定されてもよい。
【0052】
また、ベース体7と保持部材8とは、金属製でなくとも、例えば合成樹脂製であってもよい。
【0053】
また、配線・配管材固定具4は、被取付部5を有するベース体7と、保持部6を有する保持部材8とに分離されて構成されなくとも、それら被取付部5と保持部6とが一体に形成されてもよい。
【0054】
また、第一および第二の実施の形態において、爪部5cは、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められなくとも、例えば、上方側の屋根材202の下面の中間位置に設けられる突起部とか凹部に掛け止められてもよい。同様に、図15に示す実施の形態において、爪部5cは、下方側の屋根材201の後面部としての後端面2dに掛け止められなくとも、例えば、下方側の屋根材201の上面の中間位置に設けられる突起部とか凹部に掛け止められてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 屋根
1a 隙間
2 屋根材
201 下方側の屋根材
202 上方側の屋根材
2a 前垂部
2b 前端面(前面部)
3 配線・配管材
4 配線・配管材固定具
5 被取付部
5a 被取付部本体
5b 爪部形成片
5c 爪部
5d 切込み
5e 規制部
6 保持部
7 ベース体
7a 保持部材取付部
7b 固着具挿入孔
8 保持部材
8a 基部
9 固着具
P 挿入方向
Q 反挿入方向
R 幅方向
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋根の上に配線・配管材を固定するための配線・配管材固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根にパイプ(配管材)を固定する固定具として、屋根に釘で取付け固定されるパイプ止め金具があった(例えば、特許文献1参照)。このパイプ止め金具は、帯状金属板を曲げて形成されるものであって、円弧状のパイプ押え部と、釘を通す挿通孔が設けられた平坦な被取付部とを備えていた。そこで、屋根にパイプを固定するにあたっては、このパイプ止め金具の二つを向き合わせて、パイプ押え部でパイプを挟んだ状態で、釘を被取付部の挿通孔から屋根の瓦の小孔を通して下地部分に打ち込んだ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−45370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のパイプ押え金具にあっては、釘を用いるために、瓦に小孔をあけたときとか、釘を打ち込んだときに、瓦が割れないように細心の注意を払わなければならず、その作業が厄介だった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、屋根に簡単に取り付けることができる、配線・配管材固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る配線・配管材固定具は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具である。この配線・配管材固定具は、前記屋根材に取り付けられるよう、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを、備える。ここで、前記被取付部は、被取付部本体と、その被取付部本体に、前記被取付部の少なくとも挿入方向にずれて設けられる、複数の爪部形成片とを、有する。これら爪部形成片は、前記被取付部本体側に倒れた位置から、前記挿入方向とは反対の反挿入方向を向くよう斜めに起こされた位置に塑性変形可能である。そこで、前記爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こして前記爪部を形成しておき、前記被取付部を前記隙間に外側から挿入することにより、その爪部が、前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に掛け止められて、前記被取付部が前記隙間から抜け止めされる。
【0007】
この配線・配管材固定具によると、配線・配管材を屋根に固定するには、始めに、配線・配管材固定具の被取付部に備わる複数の爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こすことで、爪部を形成しておく。そして、被取付部を、下方側の屋根材と上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入する。すると、爪部は、上方側の屋根材または下方側の屋根材に掛け止められる。こうして、被取付部、ひいては配線・配管材固定具は、屋根に取り付けられる。そして、保持部で配線・配管材を保持する。このように、配線・配管材固定具を屋根に取り付けるとともに、保持部で配線・配管材を保持することで、配線・配管材は、屋根に固定される。ここで、爪部形成片は、被取付部の少なくとも挿入方向にずれて複数設けられているため、それら爪部形成片のいずれかを斜めに起こして爪部を形成し、その爪部を上方側の屋根材または下方側の屋根材に掛け止めることで、上方側の屋根材からの保持部の位置、つまりは配線・配管材の位置を調整することができる。なお、配線・配管材固定具を屋根に取り付ける作業と、保持部で配線・配管材を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具である。この配線・配管材固定具は、前記屋根材に取り付けられるよう、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを、備える。ここで、前記被取付部は、被取付部本体と、その被取付部本体に、前記被取付部の少なくとも挿入方向にずれて設けられる、複数の爪部形成片とを、有する。これら爪部形成片は、前記被取付部本体側に倒れた位置から、前記挿入方向とは反対の反挿入方向を向くよう斜めに起こされた位置に塑性変形可能である。そこで、前記爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こして前記爪部を形成しておき、前記被取付部を前記隙間に外側から挿入することにより、その爪部が、前記上方側の屋根材の前側に下方に向けて突出するように形成された前垂部に掛け止められて、前記被取付部が前記隙間から抜け止めされる。
【0009】
この配線・配管材固定具によると、配線・配管材を屋根に固定するには、始めに、配線・配管材固定具の被取付部に備わる複数の爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こすことで、爪部を形成しておく。そして、被取付部を、下方側の屋根材と上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入する。すると、爪部は、上方側の屋根材の前垂部に掛け止められる。こうして、被取付部、ひいては配線・配管材固定具は、屋根に取り付けられる。そして、保持部で配線・配管材を保持する。このように、配線・配管材固定具を屋根に取り付けるとともに、保持部で配線・配管材を保持することで、配線・配管材は、屋根に固定される。ここで、爪部形成片は、被取付部の少なくとも挿入方向にずれて複数設けられているため、その爪部形成片のいずれかを斜めに起こして爪部を形成し、その爪部を上方側の屋根材の前垂部に掛け止めることで、上方側の屋根材からの保持部の位置、つまりは配線・配管材の位置を調整することができる。なお、配線・配管材固定具を屋根に取り付ける作業と、保持部で配線・配管材を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部形成片は、前記被取付部本体から直立するよう起こされた位置に塑性変形可能であって、その直立して形成される規制部は、前記被取付部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限するように、前記上方側の屋根材の前面部と対向して、その前面部に係合可能である。これにより、複数ある爪部形成片は、そのいずれかを、斜めに起こすことで爪部として機能させることも、直立するように起こすことで規制部として機能させることもできる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具において、前記被取付部は、前記爪部形成片とは別に、前記被取付部本体側に倒れた位置から、直立するよう起こされた位置に塑性変形可能で、少なくとも前記挿入方向にずれて設けられる、複数の規制部形成片を有し、その直立して形成される規制部は、前記被取付部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限するように、前記上方側の屋根材の前面部と対向して、その前面部に係合可能である。
【0012】
また、請求項5に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片には、その爪部形成片を起こすための工具が差し入れられる工具挿入孔があけられている。こうして、爪部形成片に工具挿入孔があけられることから、この工具挿入孔に、ドライバー等の工具を差し入れることで、容易に爪部形成片を起こすことができる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部形成片は、前記挿入方向にずれて、三つ以上設けられ、それら爪部形成片のうちの、前記挿入方向の先端側から数えた一つ目、または、一つ目および二つ目が、予め斜めに起こされて前記爪部となっている。
【0014】
また、請求項7に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記被取付部は、板材からなり、前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片は、前記挿入方向に直交する、前記被取付部の幅方向の両端縁に設けられ、かつ、その端縁に通ずる切込みによって形成される。
【0015】
また、請求項8に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片は、前記挿入方向に直交する、前記被取付部の幅方向の中間位置に設けられる。
【0016】
また、請求項9に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記配線・配管材固定具は、前記被取付部を有するベース体と、前記保持部を有して前記ベース体に着脱可能に取付け固定される保持部材とを備える。
【0017】
また、請求項10に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項9に記載の配線・配管材固定具において、前記ベース体は、前記保持部材が取付け固定される保持部材取付部を有する。その保持部材取付部は、上方に突出形成されて、前記保持部材の基部を止めるための固着具が挿入される、固着具挿入孔を有する。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る配線・配管材固定具によれば、被取付部を屋根材の隙間に挿入することで、その被取付部に設けられた爪部により配線・配管材固定具を屋根に簡単に取り付けることができる。そして、複数ある爪部形成片のいずれかを斜めに起こして爪部を形成することで、保持部に保持される配線・配管材の、上方側の屋根材からの位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の第一の実施の形態の、全体の模式図である。
【図2】同じく、図1における要部拡大図である。
【図3】同じく、ベース体の拡大斜視図である。
【図4】同じく、ベース体の拡大正面図である。
【図5】同じく、ベース体の拡大平面図である。
【図6】同じく、図5におけるA−A線による断面図である。
【図7】同じく、他の使用状態を示す図2相当図である。
【図8】同じく、さらに他の使用状態を示す図2相当図である。
【図9】同じく、規制部を形成することなく使用した状態を示す図2相当図である。
【図10】この発明の第二の実施の形態の、図2相当図である。
【図11】同じく、ベース体の拡大正面図である。
【図12】同じく、ベース体の拡大平面図である。
【図13】同じく、図12におけるB−B線による断面図である。
【図14】同じく、他の使用状態を示す図10相当図である。
【図15】この発明の他の実施の形態を示す、図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明に係る配線・配管材固定具を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1〜図9は、本発明の第一の実施の形態を示す。図中符号1は、屋根を示す。2は、前記屋根1を形成する屋根材を示す。すなわち、屋根1は、その屋根1の傾斜方向における下方側の屋根材201(2)の一部に上方側の屋根材202(2)の一部が上に重なるようにして屋根材2、2が並んで形成される。3は、前記屋根1の上に配線・配管される配線・配管材(配線材または配管材)を示し、太陽光発電用の太陽電池に接続される電気ケーブル(配線材)とか、その電気ケーブルを収容保護する保護管とか、太陽光温水器に接続される通水管(配管材)とかからなる。4は、前記屋根1の上に配線・配管材3を固定するための、配線・配管材固定具を示す。
【0022】
ここで、配線・配管材固定具4は、屋根材2に取り付けられるよう、下方側の屋根材201(2)と上方側の屋根材202(2)との重なり部分の隙間1aに外側から挿入される、被取付部5と、配線・配管材3を保持する保持部6とを、備える。被取付部5は、被取付部本体5aと、その被取付部本体5aに、被取付部5の少なくとも挿入方向Pにずれて設けられる、複数の爪部形成片5b、5bとを、有する。これら爪部形成片5b、5bは、被取付部本体5a側に倒れた位置から、前記挿入方向Pとは反対の反挿入方向Qを向くように斜めに起こされた位置に塑性変形可能である。そして、その斜めに起こされて形成される爪部5cは、相対的に被取付部本体5aに向かう側に弾性的に変形可能となっている。そこで、複数ある爪部形成片5b、5bのうちの所要の爪部形成片5bを斜めに起こして爪部5cを形成しておき、被取付部5を前記隙間1aに外側から挿入することにより、その爪部5cが、上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前側である前端に下方に向けて突出するように形成された前垂部2a)に掛け止められて、被取付部5が前記隙間1aから抜け止めされる。
【0023】
ここにおいて、被取付部5における爪部形成片5bは、前記挿入方向Pにずれて、三つ以上(図示実施の形態においては、6つ)設けられ、それら爪部形成片5b、5bのうちの、前記挿入方向Pの先端側から数えた一つ目、または、一つ目および二つ目(図示実施の形態においては、一つ目および二つ目)が、予め斜めに起こされて前記爪部5cとなっている(図3、図4参照)。
【0024】
そして、被取付部5は、板材からなり、爪部形成片5b、5bの少なくとも一部の爪部形成片5b(図示実施の形態においては、全部の爪部形成片5b、5b)は、前記挿入方向Pに直交する、被取付部5の幅方向Rの両端縁に設けられ、かつ、その端縁に通ずる切込み5dによって形成されている。
【0025】
また、爪部形成片5bは、被取付部本体5aから直立するよう起こされた位置に塑性変形可能であって、その直立して形成される規制部5eは、被取付部5の、前記隙間1aに外側から挿入される挿入長さを制限するように、上方側の屋根材202の前面部としての前端面2bと対向して、その前端面2bに係合可能(当接可能)である。
【0026】
具体的には、配線・配管材固定具4は、前記被取付部5を有するベース体7と、前記保持部6を有してベース体7に着脱可能に取付け固定される保持部材8とを備える。
【0027】
ベース体7は、金属製であって、帯状の板材からなり、その長手方向の一方側(挿入方向P側)に、前記被取付部5を有し、他方側(反挿入方向Q側)に、保持部材8が取付け固定される保持部材取付部7aを有する。
【0028】
被取付部5における爪部形成片5bは、前記挿入方向Pにずれて(詳細には、挿入方向Pに並ぶようにして、つまり、ベース体7の長手方向に並ぶようにして)、複数(詳細には、六つ)設けられる。特に、図示実施の形態においては、爪部形成片5bは、二列となるように、被取付部5の幅方向Rの両端縁に設けられている。この爪部形成片5bが起こされて形成される爪部5cは、前記反挿入方向Qを向くように斜め上方に起立する。そして、この爪部5cは、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められるとともに、上方側の屋根材202の下面2cに当接する。
【0029】
また、被取付部5には、接着材充填部5fが設けられており、ベース体7、ひいては、配線・配管材固定具4を、接着材によっても、屋根材2(つまりは、屋根1)に取り付けることができる。この接着材充填部5fは、上方に膨出形成され、その内部は、接着材の充填空間5gとなって、屋根材2の上面に臨むように下方が開放するとともに、前記反挿入方向Q側が後に詳述する保持部材取付部7aの内側に連通している(図6参照)。そして、この接着材充填部5fには、上面に、充填空間5gに接着材を充填するための充填孔5hがあけられている。さらに、接着材充填部5fの上面には、充填孔5hから離れた位置に(詳細には、充填孔5hから前記反挿入方向Q側の離れた位置に)、接着材の充填状態を確認するための確認孔5iがあけられている。
【0030】
また、被取付部5には、ビスが挿通される取付孔5jが設けられており、ベース体7、ひいては、配線・配管材固定具4を、取付孔5jを挿通して屋根材2にねじ込まれるビスによっても、屋根材2(つまり、屋根1)に取り付けることができる。
【0031】
ベース体7における保持部材取付部7aは、上方に突出形成されて(図示実施の形態においては、上方に突出するよう屈曲あるいは湾曲形成されて)、保持部材8の基部8aを止めるための固着具9が挿入される、固着具挿入孔7bを有する。図示実施の形態においては、固着具9は、ビス9aからなり、固着具挿入孔7bは、そのビス9aが螺合する螺合孔からなって、保持部材8の基部8aに設けられた通孔8bに挿入されたビス9aが、固着具挿入孔7bに螺合することで、保持部材8は、ベース体7の保持部材取付部7aに取付け固定される。
【0032】
また、保持部材8は、金属製であって、帯状の板材からなり、その長手方向の一方側に前記保持部6を有し、他方側に前記基部8aを有する。保持部6は、逆U字状に曲げられて、その内側に配線・配管材3が保持される。つまり、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりすることで、配線・配管材3は保持される。そして、基部8aは、保持部6の逆U字状の一端から直角に折れ曲がって形成され、その板面を貫通するようにして前記通孔8bが設けられる。
【0033】
次に、この第一の実施の形態に示す配線・配管材固定具4の作用効果について説明する。この配線・配管材固定具4によると、配線・配管材3を屋根1に固定するには、始めに、配線・配管材固定具4の被取付部5に備わる複数の爪部形成片5b、5bのうちの所要の爪部形成片5bを斜めに起こすことで、爪部5cを形成しておく(図示実施の形態においては、爪部形成片5b、5bのうちの、前記挿入方向Pの先端側から数えた一つ目および二つ目が、予め斜めに起こされて爪部5cとなっているが、図1および図2に示す例では、四つ目の爪部形成片5bを斜めに起こして爪部5cを形成し、その爪部5cを、屋根材2に掛け止められる爪部とする。)。そして、被取付部5を、下方側の屋根材201(2)と上方側の屋根材202(2)との重なり部分の隙間1aに外側から挿入する。すると、爪部5cは、隙間1aで相対的に被取付部本体5aに向かう側に変形(弾性変形)しても、復帰(弾性復帰)することで、上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前垂部2a、詳しくは、前垂部2aの内側面)に掛け止められる。こうして、被取付部5、ひいては配線・配管材固定具4は、屋根1に取り付けられる。そして、保持部6で配線・配管材3を保持する。もっとも、配線・配管材固定具4を屋根1に取り付ける作業と、保持部6で配線・配管材3を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0034】
ここで、爪部形成片5bは、被取付部5の少なくとも挿入方向Pにずれて複数設けられているため、それら爪部形成片5b、5bのいずれかを斜めに起こして爪部5cを形成し、その爪部5cを上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前垂部2a)に掛け止めることで、上方側の屋根材202からの保持部6の位置、つまりは配線・配管材3の位置を調整することができる。すなわち、図2に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた四つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材2(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用い、図7に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた二つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材1(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用い、さらに、図8に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた一つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材1(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用いている。
【0035】
また、図示実施の形態では、配線・配管材固定具4は、被取付部5を有するベース体7と、保持部6を有する保持部材8とに分かれているため、ベース体7に保持部材8が取付け固定された状態で、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりする以外に、保持部材8単独の状態で、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりし、その後に、保持部材8をベース体7に取付け固定することもできる。
【0036】
このように、配線・配管材固定具4を屋根1に取り付けるとともに、保持部6で配線・配管材3を保持することで、配線・配管材3は、屋根1に固定される。そして、この配線・配管材固定具4によれば、被取付部5を屋根材201(2)、202(2)の隙間1aに挿入することで、その被取付部5に設けられた爪部5cにより配線・配管材固定具4を屋根1に簡単に取り付けることができる。そして、複数ある爪部形成片5b、5bのいずれかを斜めに起こして爪部5cを形成することで、保持部6に保持される配線・配管材3の、上方側の屋根材202からの位置を調整することができる。
【0037】
また、爪部形成片5bは、被取付部5の幅方向Rに二つが並んで設けられている。これにより、爪部5cは、被取付部5の幅方向Rに並ぶ二つが、屋根材2に掛け止められ、このため、配線・配管材固定具4は、回り難くなる。特に、図示実施の形態においては、被取付部5の幅方向Rに並ぶ二つの爪部5c、5cは、被取付部5の幅方向Rの両端縁に設けられるため、配線・配管材固定具4は、より効果的に回り難くなる。
【0038】
また、爪部形成片5bは、被取付部本体5aから直立させることで、屋根材2、2の隙間1aに外側から挿入される被取付部5の挿入長さを制限する規制部5eとなる。このため、複数ある爪部形成片5b、5bは、そのいずれかを、斜めに起こすことで爪部5cとして機能させることも、直立するように起こすことで前記規制部5eとして機能させることもできる。もっとも、図9に示すように、規制部5eを形成することなく、この配線・配管材固定具4を用いても構わない。
【0039】
また、被取付部5には、接着材充填部5fやビスが挿通される取付孔5jが設けられている。このため、この配線・配管材固定具4を、爪部5cに加えて、接着材やビスを用いることでも、屋根1に取り付けることができる。特に、爪部5cだけでは、取付けが安定しない場合に、接着材やビスを用いることで、被取付部5、ひいてはベース体7や配線・配管材固定具4を安定して屋根1に取り付けることができる。
【0040】
図10〜図14は、本発明の第二の実施の形態を示す。この実施の形態は、第一の実施の形態とは、配線・配管材固定具4の被取付部5における爪部形成片5bの位置や形状が異なるが、他はほぼ同様であり、以下に、同様の部位には同一の符号を付して、異なる部分を主に説明する。
【0041】
この配線・配管材固定具4においては、爪部形成片5bは、被取付部5の挿入方向Pにずれて、三つ以上(図示実施の形態においては、4つ)設けられ、それら爪部形成片5b、5bのうちの、前記挿入方向Pの先端側から数えた一つ目が、予め斜めに起こされて爪部5cとなっている(図11、図13参照)。そして、その一つ目の爪部形成片5bは、前記挿入方向Pに直交する、被取付部5の幅方向Rの両端縁に設けられ、かつ、その端縁に通ずる切込み5dによって形成されている。
【0042】
また、爪部形成片5b、5bの少なくとも一部の爪部形成片5b(図示実施の形態においては、前記挿入方向Pの先端側から数えた一つ目を除く爪部形成片5b)は、前記挿入方向Pに直交する、被取付部5の幅方向Rの中間位置に設けられている。この幅方向Rの中間位置に設けられる爪部形成片5bは、板材からなる被取付部5(ベース体7)における、コ字状に打ち抜かれた抜き孔5kに囲まれた部分からなる。
【0043】
そして、爪部形成片5b、5bの少なくとも一部の爪部形成片5b(図示実施の形態においては、被取付部5の幅方向Rの中間位置に設けられた爪部形成片5b)には、その爪部形成片5bを起こすための工具が差し入れられる工具挿入孔5mがあけられている。ここで、この工具挿入孔5mは、起こされない爪部形成片5bにおいては、ベース体7、ひいては、配線・配管材固定具4を屋根材2に取り付けるための取付孔5jとなる。このため、配線・配管材固定具4を、取付孔5jを挿通して屋根材2にねじ込まれるビスによっても、屋根材2(つまり、屋根1)に取り付けることができる。
【0044】
ところで、図10に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた二つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材2(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用い、図14に示す例では、挿入方向Pの先端側から数えた一つ目の爪部形成片5bが起こされた爪部5cを、屋根材1(詳細には、前垂部2a)に掛け止められる爪部5cとして用いている。なお、この図14に示す例では、規制部5eは、形成されていない。
【0045】
この第二の実施の形態に示す配線・配管材固定具4の作用効果は、第一の実施の形態に示す配線・配管材固定具4の作用効果と同様であるが、爪部形成片5bに工具挿入孔5mがあけられることから、この工具挿入孔5mに、ドライバー等の工具を差し入れることで、容易に爪部形成片5bを起こすことができ、また、これによって、爪部5cや規制部5eを容易に形成することができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、爪部5cは、上方側の屋根材202に掛け止められるものでなくとも、図15に示すように、反挿入方向Qを向くように斜めに(詳しくは、斜め下方に)起こされて、下方側の屋根材201(詳しくは、下方側の屋根材201の後面部としての後端面2d)に掛け止められてもよい。
【0047】
また、爪部形成片5bは、複数ある爪部形成片5b、5bの一部が、予め斜めに起こされて爪部5cとなっていなくとも、全ての爪部形成片5b、5bが、被取付部本体5a側に倒れた位置にあり、この配線・配管材固定具4を使用するに当たって、所要の爪部形成片5bを斜めに起こすようにしてもよい。
【0048】
また、被取付部5は、爪部形成片5bとは別に、被取付部本体5a側に倒れた位置から、直立するよう起こされた位置に塑性変形可能で、少なくとも前記挿入方向Pにずれて設けられる、複数の規制部形成片を有してもよい。ここで、その直立して形成される規制部5eは、被取付部5の、前記隙間1aに外側から挿入される挿入長さを制限するように、上方側の屋根材202の前面部としての前端面2bと対向して、その前端面2bに係合可能である。すなわち、爪部形成片5bが直立に起こされることで、規制部5eが形成されなくとも、専用の規制部形成片が直立に起こされることで、規制部5eが形成されてもよい。
【0049】
また、爪部形成片5bとか前述の規制部形成片は、被取付部本体5aから直立するよう起こされることで、規制部5eとなるが、この規制部5eと爪部5cとで、上方側の屋根材202の前垂部2aを挟持するように(爪部5cが前垂部2aに掛け止められる場合)、あるいは下方側および上方側の屋根材201、202を挟持するように(爪部5cが後面部としての後端面2dに掛け止められる場合)、上方側の屋根材202の前面部としての前端面2bと規制部5eとの間隔を詰めてもよい。また、挟持するに当たっては、規制部5eは、直立する場合に限らず、挿入方向Pを向く側に傾斜してもよい。ここにおいて、規制部5eを形成するために、爪部形成片5bとか規制部形成片を起こすのは、被取付部5を隙間1aに挿入する前でも、挿入した後でもよい。また、この爪部形成片5bとか規制部形成片を、例えば直立に起こした後に、被取付部5を隙間1aに挿入し、その後に、爪部形成片5bとか規制部形成片(規制部5e)を、挿入方向Pを向く側に傾斜させてもよい。
【0050】
また、第二の実施の形態において、爪部形成片5bに工具挿入孔5mが設けられているが、第一の実施の形態においても、爪部形成片5bに工具挿入孔5mが設けられてもよい。
【0051】
また、保持部材8は、ベース体7の保持部材取付部7aにビス9a(固着具9)を用いて取付け固定されなくとも、固着具9を用いることなく、保持部材取付部7aに嵌合したり係止されたりして取付け固定されてもよい。
【0052】
また、ベース体7と保持部材8とは、金属製でなくとも、例えば合成樹脂製であってもよい。
【0053】
また、配線・配管材固定具4は、被取付部5を有するベース体7と、保持部6を有する保持部材8とに分離されて構成されなくとも、それら被取付部5と保持部6とが一体に形成されてもよい。
【0054】
また、第一および第二の実施の形態において、爪部5cは、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められなくとも、例えば、上方側の屋根材202の下面の中間位置に設けられる突起部とか凹部に掛け止められてもよい。同様に、図15に示す実施の形態において、爪部5cは、下方側の屋根材201の後面部としての後端面2dに掛け止められなくとも、例えば、下方側の屋根材201の上面の中間位置に設けられる突起部とか凹部に掛け止められてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 屋根
1a 隙間
2 屋根材
201 下方側の屋根材
202 上方側の屋根材
2a 前垂部
2b 前端面(前面部)
3 配線・配管材
4 配線・配管材固定具
5 被取付部
5a 被取付部本体
5b 爪部形成片
5c 爪部
5d 切込み
5e 規制部
6 保持部
7 ベース体
7a 保持部材取付部
7b 固着具挿入孔
8 保持部材
8a 基部
9 固着具
P 挿入方向
Q 反挿入方向
R 幅方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具であって、
前記屋根材に取り付けられるよう、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを、備え、
前記被取付部は、被取付部本体と、その被取付部本体に、前記被取付部の少なくとも挿入方向にずれて設けられる、複数の爪部形成片とを、有し、
前記爪部形成片は、前記被取付部本体側に倒れた位置から、前記挿入方向とは反対の反挿入方向を向くよう斜めに起こされた位置に塑性変形可能であって、
前記爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こして前記爪部を形成しておき、前記被取付部を前記隙間に外側から挿入することにより、その爪部が、前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に掛け止められて、前記被取付部が前記隙間から抜け止めされることを特徴とする、配線・配管材固定具。
【請求項2】
屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具であって、
前記屋根材に取り付けられるよう、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを、備え、
前記被取付部は、被取付部本体と、その被取付部本体に、前記被取付部の少なくとも挿入方向にずれて設けられる、複数の爪部形成片とを、有し、
前記爪部形成片は、前記被取付部本体側に倒れた位置から、前記挿入方向とは反対の反挿入方向を向くよう斜めに起こされた位置に塑性変形可能であって、
前記爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こして前記爪部を形成しておき、前記被取付部を前記隙間に外側から挿入することにより、その爪部が、前記上方側の屋根材の前側に下方に向けて突出するように形成された前垂部に掛け止められて、前記被取付部が前記隙間から抜け止めされることを特徴とする、配線・配管材固定具。
【請求項3】
前記爪部形成片は、前記被取付部本体から直立するよう起こされた位置に塑性変形可能であって、その直立して形成される規制部は、前記被取付部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限するように、前記上方側の屋根材の前面部と対向して、その前面部に係合可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具。
【請求項4】
前記被取付部は、前記爪部形成片とは別に、前記被取付部本体側に倒れた位置から、直立するよう起こされた位置に塑性変形可能で、少なくとも前記挿入方向にずれて設けられる、複数の規制部形成片を有し、その直立して形成される規制部は、前記被取付部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限するように、前記上方側の屋根材の前面部と対向して、その前面部に係合可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具。
【請求項5】
前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片には、その爪部形成片を起こすための工具が差し入れられる工具挿入孔があけられていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項6】
前記爪部形成片は、前記挿入方向にずれて、三つ以上設けられ、それら爪部形成片のうちの、前記挿入方向の先端側から数えた一つ目、または、一つ目および二つ目が、予め斜めに起こされて前記爪部となっていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項7】
前記被取付部は、板材からなり、
前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片は、前記挿入方向に直交する、前記被取付部の幅方向の両端縁に設けられ、かつ、その端縁に通ずる切込みによって形成されることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項8】
前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片は、前記挿入方向に直交する、前記被取付部の幅方向の中間位置に設けられることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項9】
前記配線・配管材固定具は、前記被取付部を有するベース体と、前記保持部を有して前記ベース体に着脱可能に取付け固定される保持部材とを備えることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項10】
前記ベース体は、前記保持部材が取付け固定される保持部材取付部を有し、
前記保持部材取付部は、上方に突出形成されて、前記保持部材の基部を止めるための固着具が挿入される、固着具挿入孔を有することを特徴とする、請求項9に記載の配線・配管材固定具。
【請求項1】
屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具であって、
前記屋根材に取り付けられるよう、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを、備え、
前記被取付部は、被取付部本体と、その被取付部本体に、前記被取付部の少なくとも挿入方向にずれて設けられる、複数の爪部形成片とを、有し、
前記爪部形成片は、前記被取付部本体側に倒れた位置から、前記挿入方向とは反対の反挿入方向を向くよう斜めに起こされた位置に塑性変形可能であって、
前記爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こして前記爪部を形成しておき、前記被取付部を前記隙間に外側から挿入することにより、その爪部が、前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に掛け止められて、前記被取付部が前記隙間から抜け止めされることを特徴とする、配線・配管材固定具。
【請求項2】
屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具であって、
前記屋根材に取り付けられるよう、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを、備え、
前記被取付部は、被取付部本体と、その被取付部本体に、前記被取付部の少なくとも挿入方向にずれて設けられる、複数の爪部形成片とを、有し、
前記爪部形成片は、前記被取付部本体側に倒れた位置から、前記挿入方向とは反対の反挿入方向を向くよう斜めに起こされた位置に塑性変形可能であって、
前記爪部形成片のうちの所要の爪部形成片を斜めに起こして前記爪部を形成しておき、前記被取付部を前記隙間に外側から挿入することにより、その爪部が、前記上方側の屋根材の前側に下方に向けて突出するように形成された前垂部に掛け止められて、前記被取付部が前記隙間から抜け止めされることを特徴とする、配線・配管材固定具。
【請求項3】
前記爪部形成片は、前記被取付部本体から直立するよう起こされた位置に塑性変形可能であって、その直立して形成される規制部は、前記被取付部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限するように、前記上方側の屋根材の前面部と対向して、その前面部に係合可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具。
【請求項4】
前記被取付部は、前記爪部形成片とは別に、前記被取付部本体側に倒れた位置から、直立するよう起こされた位置に塑性変形可能で、少なくとも前記挿入方向にずれて設けられる、複数の規制部形成片を有し、その直立して形成される規制部は、前記被取付部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限するように、前記上方側の屋根材の前面部と対向して、その前面部に係合可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具。
【請求項5】
前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片には、その爪部形成片を起こすための工具が差し入れられる工具挿入孔があけられていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項6】
前記爪部形成片は、前記挿入方向にずれて、三つ以上設けられ、それら爪部形成片のうちの、前記挿入方向の先端側から数えた一つ目、または、一つ目および二つ目が、予め斜めに起こされて前記爪部となっていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項7】
前記被取付部は、板材からなり、
前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片は、前記挿入方向に直交する、前記被取付部の幅方向の両端縁に設けられ、かつ、その端縁に通ずる切込みによって形成されることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項8】
前記爪部形成片の少なくとも一部の爪部形成片は、前記挿入方向に直交する、前記被取付部の幅方向の中間位置に設けられることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項9】
前記配線・配管材固定具は、前記被取付部を有するベース体と、前記保持部を有して前記ベース体に着脱可能に取付け固定される保持部材とを備えることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項10】
前記ベース体は、前記保持部材が取付け固定される保持部材取付部を有し、
前記保持部材取付部は、上方に突出形成されて、前記保持部材の基部を止めるための固着具が挿入される、固着具挿入孔を有することを特徴とする、請求項9に記載の配線・配管材固定具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−32634(P2013−32634A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168639(P2011−168639)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
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