説明

配線・配管材引出装置及び配線・配管材引出具

【課題】メッシュタイプの受具の引出箇所において配線・配管材の急激な屈曲を防止すべくこれを支持する配線・配管材引出具及び引出装置において、引き出される配線・配管材が前記受具の引出箇所において切断された線材の端部と接触して傷付くのを確実に防止する。
【解決手段】メッシュタイプの受具2に、受具2上に敷設されたケーブルCを引き出すために取付ける引出具11であって、受具2の底部6の下側に下方から取付けるものとし、底部6の下側と当接する当接部12と、受具2から引き出されたケーブルCを支持する支持部13とを備え、ケーブルCが、当接部12上に配置される親筋線材3の端部3aと接触しないよう、当接部12と支持部13との間に、支持部13における当接部側始端13aを当接部12より高くする段部14を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル等の配線や給水管、給湯管等の配管材が配線・配管材受具から引き出される箇所に取付けられる配線・配管材引出装置及び配線・配管材引出具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物や構内等において前記配線・配管材は前記受具に載置されて天井下や建物壁に沿って敷設されている。そして、機械や電力盤等の周辺位置において、前記受具の長手方向または幅方向の任意の位置から受具の外方に引き出され、前記機械や電力盤等に配線、配管される。ここで、受具において配線・配管材が外部に引き出される引出口には、引き出される配線・配管材が自重によって引出口で急激に下方に屈曲し、断線等を生じるのを防止して滑らかに引き出されるよう配線・配管材を下方から支持し引き出しを補助する引出具が取付けられることがある。この種の引出具として特許文献1に記載の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−199757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、受具として、複数の金属製の線材を交差部で溶接して縦横に網状に形成したいわゆるメッシュタイプのものがある。このメッシュタイプの受具においては、長手方向の端部或いは途中から配線・配管材を引き出す際に、配線・配管材がその引出箇所において切断された線材の端部と接触して傷付く恐れがあった。特に、引出箇所における線材の端部が現場等で切断されたものである場合には、線材の端部の周縁角部が仕上げられないことが多いため、配線・配管材は傷付き易かった。このことは、引出具が取付けられる特許文献1に記載のメッシュタイプの受具においても同様であった。
【0005】
そこで、本発明は、メッシュタイプの受具の引出箇所において配線・配管材の急激な屈曲を防止すべくこれを支持するものであって、引き出される配線・配管材が前記受具の引出箇所において切断された線材の端部と接触して傷付くのを確実に防止できる配線・配管材引出装置及び配線・配管材引出具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の配線・配管材引出装置は、金属製の線材を溶接して網状に形成され底部と側部とを備えた配線・配管材受具と、該受具の底部上に敷設された配線・配管材を引き出すために該受具に取付けられる配線・配管材引出具と、からなるものであって、前記受具の底部を構成すべく該受具の長手方向に延びる線材は、該底部を構成すべく該受具の幅方向に延びる線材の下側に配設されるとともに、該受具の長手方向の端部または途中の一部において、前記幅方向に延びる線材との溶接箇所と隣接する位置で切断されて除去されている。
そして、前記引出具は、前記受具の底部の下側に下方から当接する当接部と、前記受具から引き出された前記配線・配管材を支持する支持部とを備えるとともに、前記当接部と支持部との間には、該支持部における少なくとも該当接部側始端を該当接部より前記長手方向に延びる線材の外径と同一またはこれより僅かに小さい寸法分高くするための段部が形成されている。
更に、前記引出具は、前記段部を前記幅方向に延びる線材に沿って近接させ、前記当接部を前記長手方向に延びる線材の下側に下方から当接させて、前記支持部が前記受具の長手方向の端部または途中に配置されるように取付けられることにより、前記配線・配管材を前記当接部上に配置される長手方向に延びる線材の端部と接触させることなく該受具の端部または途中から該受具の長手方向に沿って引き出すことができるとともに、前記段部を前記受具の長手方向に延びる線材に沿って近接させ、前記当接部を前記長手方向に延びる線材の下側に下方から当接させて、前記支持部が該受具の幅方向の端部に配置されるように取付けられることにより、前記配線・配管材を該受具の長手方向における適宜位置から該受具の幅方向に沿って引き出すことができるようになっている。
ここで、線材の端部は現場等で切断して形成されるものに限られず、予め切断して形成されているものも含まれる。
【0007】
請求項2の配線・配管材引出具は、金属製の線材を溶接して網状に形成され底部と側部とを備えたいわゆるメッシュタイプ配線・配管材受具に、該受具の底部上に敷設された配線・配管材を引き出すために取付けられるものであって、前記受具の底部の下側に下方から取付けられ、前記底部の下側と当接する当接部と、前記受具から引き出された前記配線・配管材を支持する支持部とを備えている。そして、前記配線・配管材が、前記当接部上に配置される前記線材の端部と接触しないように、前記当接部と前記支持部との間に、該支持部における少なくとも前記当接部側始端を該当接部より高くする段部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の配線・配管材引出装置は、受具の底部を構成すべく該受具の長手方向に延びる線材は、前記底部を構成すべく該受具の幅方向に延びる線材の下側に配設されるとともに、該受具の長手方向の端部または途中の一部において、前記幅方向に延びる線材との溶接箇所と隣接する位置で切断されて除去されており、前記引出具の段部は、前記受具の長手方向に延びる線材の外径と同一またはこれより僅かに小さい寸法の段差により形成されている。
従って、前記引出具を、前記段部を前記幅方向に延びる線材に沿って近接させるとともに、前記当接部を前記長手方向に延びる線材の下側に下方から当接させて、前記支持部が前記受具の長手方向の端部または途中に配置されるように取付けることにより、該受具の端部または途中から引き出される配線・配管材は、前記当接部上に配置される長手方向に延びる線材の切断端部と接触することなく、該当接部上に配置される幅方向に延びる線材の上面から引出具の支持部の上面に至るように敷設されて、配線・配管材が傷付くのが確実に防止される。
また、配線・配管材を受具の側方から引き出す場合に、引出具の段部を、受具の長手方向に延びる線材に沿って当接、係止させることができるから、この段部は取付けの位置合わせ部ともなり、引出具を回り止めして受具の所定位置に安定して取付けることができる。
【0009】
請求項2の配線・配管材引出具は、引出具の当接部と支持部との間に、支持部における少なくとも当接部側始端を当接部より高くする段部が形成されているので、当接部上に配置される線材の端部は引出具の段部で覆われる。これにより、引き出される配線・配管材が線材の端部と接触するのが防止され、配線・配管材が傷付くのが確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の配線・配管材引出装置を示す斜視図である。
【図2】図1の引出装置の側面図である。
【図3】図1の引出具を示し、(a)は正面側から見た斜視図、(b)は(a)の側面図、(c)は背面側から見た斜視図である。
【図4】本発明の引出具を受具の別の箇所に取付けた状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の引出具を受具の更に別の箇所に取付けた状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の引出具を受具の更に別の箇所に取付けた状態を示し、(a)は斜視図、(b)は要部正面図である。
【図7】本発明の引出具を受具の更に別の箇所に取付けた状態を示し、(a)は斜視図、(b)は要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の配線・配管材引出具及び引出装置を図に基づいて説明する。
図1及び図2において、配線・配管材の引出装置1は配線・配管材としてのケーブルCを収容している受具2と、受具2に取付けられる引出具11とで構成されている。引出具11は受具2の長手方向の端部においてケーブルCが長手方向に引き出される箇所に取付けられている。ここで、受具の長手方向とは、配線・配管材が敷設される方向であり、後述する受具の幅方向とは、長手方向と直交する方向を言う。
【0012】
前記受具2は、複数の金属製の線材を溶接により縦横に網状に組付けて形成されたいわゆるメッシュタイプの受具である。この受具2は、幅方向に所定間隔をおいて長手方向に配設された複数の断面円形状の金属製の線材からなる親筋線材3と、これと直交して長手方向に所定間隔をおいて幅方向に配設された複数の断面円形状でコ字状に屈曲形成された金属製の線材からなる子筋線材4と、子筋線材4の上端部にこれと直交して長手方向に配設された左右一対の断面略小判形状の金属製の線材からなる異形筋線材5とからなり、これらの線材の交差部分が溶接されることによって一体に組付けられている。親筋線材3は受具2の長手方向の端部において子筋線材4との溶接箇所と隣接する位置で切断されている。ここで、親筋線材3及び異形筋線材5は、請求項の「受具の長手方向に延びる線材」に相当し、子筋線材4は、請求項の「受具の幅方向に延びる線材」に相当する。
【0013】
受具2の親筋線材3は子筋線材4の下側に配設され、異形筋線材5は子筋線材4の外側に配設されている。更に、異形筋線材5は幅方向の両側面が平行面に形成されており、これにより、子筋線材4との接触面積が増し、溶接による接合強度が高められている。
【0014】
受具2は、全体として、親筋線材3及び子筋線材4が配設されてなる底部6と、底部6の両側に立設された側部7とで形成されたものでもある。底部6はケーブルCが敷設される敷設面8を形成している。受具2の長手方向の一側の端部は、内部に収容されているケーブルCが長手方向に引き出される引出口9となっている。
【0015】
一方、受具2の引出口9に取付けられた引出具11は、図3に示すように、1枚の鋼板を折曲げ加工して形成されており、受具2の底部6の下側に下方から取付けられるようになっている。引出具11は、長手方向に延びる親筋線材3が載置され当接する当接部12と、受具2から引き出されたケーブルCを下方から支持する支持部13とを備えている。更に、引出具11は、当接部12と支持部13との間には、支持部13における当接部側始端13aをこの当接部12より高くする段部14が形成されている。また、当接部12における支持部13と反対側の端部には略垂直下方に屈曲する垂直片15が一体に形成されている。そして、垂直片15の下端中央部分には回り止め突片16が同一平面上に延設されている。引出具11は、図1に示す固定金具21を使用して受具2の引出口9に着脱自在に取付けられる。なお、引出具11は、勿論この固定金具21以外の固定具を使用して取付けることもできる。
【0016】
引出具11を更に具体的に述べると、まず、当接部12は水平板状に形成され、垂直片15寄りの部分には、所定間隔をおいて複数の角孔からなる固定孔12aが設けられている。同様に、垂直片15には、所定間隔をおいて複数の角孔からなる固定孔15aが設けられている。これらの固定孔12a、15aは、これらの内部に、固定金具21に用いられるボルトを挿通し、ナットを締付けることにより引出具11を受具2に取付固定するための貫通孔である。なお、これらの固定孔12a、15aは、角孔に限られるものではない。
【0017】
ここで、固定金具21は、線材に嵌合する一対の平行する係合凹部を備え、その中間部にボルトが挿通されるボルト挿通孔22が設けられている。ボルトは丸頭角根ボルトが用いられる。丸頭角根ボルトは、図示しないが、ボルト軸の基部が角柱状に形成され、ボルト軸をボルト挿通孔22及び引出具11の固定孔12aに挿入すると、ボルト軸の基部がボルト挿通孔22に嵌合する。このため、引出具11の取付時には、丸頭角根ボルトを回り止め状態としてナットを締付けることができる。また、ボルトの頭部は丸頭であるため、引出具11の当接部12上においてケーブルCが接触により傷付くことはない。一対の平行する係合凹部はいずれか一方を任意に選択して線材に係合させることができる。
【0018】
次に、支持部13は上側を凸にした湾曲板状に形成されており、受具2の敷設面8上のケーブルCが緩やかな弧を描いて下方に引き出されるようになっている。支持部13の曲率はケーブルCの径、剛性等を考慮して最適な弧を描いて引き出されるように設定される。支持部13の反当接部側の端部には、所定間隔をおいて複数の角孔からなる結束孔13bが設けられている。この結束孔13bは支持部13上に引き出され載置されたケーブルCのずれ、移動を防止し安定して保持すべく結束バンド、結束紐等を挿通してケーブルCを結束するための貫通孔である。
【0019】
引出具11の段部14は、支持部13における当接部側始端13aを当接部12の平面位置より高くすべく形成されており、ケーブルCの引出方向と直交する方向に直状に形成されている。段部14の垂直高さである段差は、親筋線材3の外径と同一または僅かに小さい長さに形成され、少なくともケーブルCが当接部12上に配置される親筋線材3の切断された端部3aと接触しない段差に形成されている。なお、段部14は、図3等において、傾斜面に形成しているが、垂直面に形成してもよい。ここで、「僅かに小さい」とは、後述する図6に示す受具2の側方引き出しにおける回り止め機能の必要性から、少なくとも長手方向に延びる線材の外径の半分以上であることを意味する。
【0020】
次に、このように構成された引出具11を受具2の引出口9に取付けるには、引出具11を受具2の引出口9の敷設面8に下方から近接し、固定金具21を使用して引出具11の当接部12を受具2の親筋線材3に固定する。具体的には、ボルト及びナットの図示は省略するが、固定金具21のいずれか一方の係合凹部を上方から親筋線材3に嵌着した後、ボルトを上方からボルト挿通孔22及び引出具11の当接部12の固定孔12aに挿通し、引出具11の当接部12の裏面側即ち下方からナットを締付けてボルト及びナットとで受具2の親筋線材3及び引出具11の当接部12を挟持する。なお、引出具11の取付後は、前述のように、ボルトの頭部は丸頭であるため、ケーブルCがボルトの頭部との接触によって傷付くことはない。
【0021】
このようにして引出具11を取付けると、ケーブルCの引出し部分は引出具11の支持部13上に載置されて下方に垂れ下がる。したがって、ケーブルCは支持部13の湾曲面に沿って緩やかに下降し、引出部における急激な屈曲によって断線等を生じるのが防止される。ケーブルCを支持部13上に載置した後は、図示しないが、結束バンド、結束紐等の結束部材を支持部13の結束孔13bに挿通し、ケーブルCを支持部13上に固定する。なお、図1においては、親筋線材3の端部3aを示すため、ケーブルCは親筋線材3から幅方向に離間した位置に記載してあるが、親筋線材3の端部3a上で引き出されることも当然多い。
【0022】
次に、引出具11の作用を説明する。
引出具11は、当接部12と支持部13との間に段部14が形成されているので、当接部12上に位置する親筋線材3の端部3aは、図1及び図2に示すように、引出具11の段部14が一種の壁面となってこれに覆われる。このため、引出口9から引き出されるケーブルCが親筋線材3の端部3aと接触するのが防止されるので、ケーブルCが親筋線材3の端部3aによって傷付くのが確実に防止される。ここで、親筋線材3の端部3aは現場等で切断されたものであるか予め切断して形成されているものであるかは問わない。
【0023】
また、段部14の垂直高さである段差は、親筋線材3の外径と同一または僅かに小さく形成されているから、段部14を形成する支持部13の当接部側始端13aが当接部12より高過ぎることにより、引き出されるケーブルCの先端面が段部14につかえて円滑に引き出せなくなるのを防止できる。
【0024】
ところで、上記実施形態においては、引出具11は受具2の長手方向の端部に取付けられたものを示したが、引出具11の取付箇所はこれに限られるものではない。例えば、図4に示すように、2本の親筋線材3は受具2の長手方向の途中において子筋線材4との溶接箇所と隣接する位置で切断されており、この切断により形成された引出口9にも同じ要領で引出具11を取付けることができる。この場合、引出具11は幅狭のものが使用され、親筋線材3の切断された端部3aは、図1に示す場合と同様に、支持具11の段部14で覆われ、引き出されるケーブルCが親筋線材3の端部3aと接触して傷付くのが防止される。また、図示しないが、受具2の敷設面8が上下2段に形成されたものであって、上段側の敷設面8の長手方向の端部或いは途中でケーブルCを引き出す箇所に取付けることもできる。或いは、上記実施形態の受具2は底部6がケーブルCの敷設面8となっているが、縦向きに設置され、側部7が敷設面8となるいわゆる縦型の受具2においてケーブルCを引き出す箇所に取付けることもできる。この縦型の受具2の場合、側部7は請求項においては「底部」に相当し、底部6は請求項においては「側部」に相当するものとなる。
【0025】
加えて、上記各実施形態では、ケーブルCを受具2の長手方向に引き出すものを示したが、引出具11は受具2の側方に引き出す場合に適用することもできる。図5はケーブルCを受具2の側方に引き出す一実施形態を示しており、受具2は、一番端の1本の親筋線材3と1本の子筋線材4が途中において溶接箇所と隣接する位置で切断され、これによって側方に開口する引出口9が形成されている。この場合、引出具11は、図示しないが、当接部12の固定孔12aを使用して固定金具21等により受具2に取付固定され、ケーブルCは、引出口9から受具2の側方に引き出される。ここで、この引出具11の段部14は、切断された子筋線材4の端部4aを覆うべく、親筋線材3と子筋線材4とを加えた線材2本分の段差を有する。なお、このことからも分かるように、本発明の引出具11は、段部14が、前述した、親筋線材3の外径と同一または僅かに小さい段差のものには限られない。この図5に示した場合は、請求項2の実施形態に該当する。
【0026】
ところで、本発明の引出具11は、段部14が親筋線材3の外径と同一または僅かに小さい段差を有するものである場合、ケーブルCを受具2の側方から引き出すべく、受具2の幅方向一番端である側部7周辺の箇所に取付けることもできる。
即ち、図6(a)に示す引出具11は、段部14が親筋線材3の外径と同一または僅かに小さい段差に形成されているから、図6(b)に示すように、支持部13の当接部側始端13aは子筋線材4における底部6と側部7との屈曲部4bと干渉しないため、受具2の幅方向一番端の箇所に支障なく自在に取付けることもできる。なお、図6では、ケーブルCの図示を省略してあり、白抜き矢印によってケーブルCの引出方向のみを示している。後述する図7(a)についても同様である。
【0027】
この場合、引出具11の段部14は、受具2の幅方向一番端の親筋線材3にその長手方向に沿って直状に当接させ係止させることができるから、取付けにおける位置合わせ部ともなり、引出具11を回り止めして受具2の所定位置に安定して取付けることができる。なお、引出具11は、その段部14を受具2の幅方向一番端の親筋線材3に長手方向に沿って当接、係止させているが、段部14を受具2の幅方向の中側の親筋線材3に長手方向に沿って当接、係止させて受具2に取付けてもよい。この引出具11は、請求項1の態様に相当するとともに、請求項2の態様にも相当する。
【0028】
次に、引出具11は、図7に示すように、受具2の異形筋線材5に取付け、ケーブルCを受具2の側方に引き出すこともできる。引出具11の取付けは、図7(a)に示すように、垂直片15の固定孔15aを使用し、固定金具21を子筋線材4の立上部に取付けて行なうことができる。この引出具11を取付けたとき、ケーブルCは、図7(b)に示すように、受具2の敷設面8から立ち上がって引出具11の当接部12上を乗り越え、受具2の側方に引き出されて支持部13上に載置され、斜め下方に垂れ下がる。なお、引出具11の取付けの際、固定金具21を取付ける直前においては、引出具11は、手で把持していないと、支持部13上に載置されたケーブルCの荷重によって異形筋線材5との当接部Pを軸に回動して受具2から落下しようとするが、垂直片15の下端中央部分の回り止め突片16が受具2の幅方向一番端の親筋線材3の側部と当接することにより、引出具11は異形筋線材5との当接部Pを軸に回動するのが阻止され、仮保持されて落下が防止される。これにより、引出具11の取付作業を円滑に行なうことができる。
【0029】
ところで、上記各実施形態の引出具11は、当接部12の固定孔12a或いは垂直片15の固定孔15aを使用して受具2に取付けているが、他の手段で取付けてもよく、これらの固定孔は必ずしも要するものではない。
また、ケーブルCは引出具11の支持部13の結束孔13bに結束バンド等の結束部材を挿通して支持部13上に結束固定しているが、必ずしも結束を要するものではなく、結束孔13bの形成を省くこともできる。
更に、引出具11は鋼板を折り曲げ加工して形成しているが、これに限られるものではなく、例えば、合成樹脂板をシート加工して形成してもよい。
【0030】
なお、上記各実施形態では、受具2は、親筋線材3が子筋線材4の下側に配設されているが、逆に、親筋線材3が子筋線材4の上側に配設されたものであってもよい。
また、上記各実施形態では、配線・配管材としてケーブルCを示しているが、本発明の引出具11は、他の配線・配管材を使用する場合にも同様に適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 引出装置 8 敷設面
2 受具 11 引出具
3 親筋線材(長手方向に延びる線材) 12 当接部
3a、4a 端部 13 支持部
4 子筋線材(幅方向に延びる線材) 13a 当接部側始端
5 異形筋線材(長手方向に延びる線材) 14 段部
6 底部 C ケーブル
7 側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の線材を溶接して網状に形成され底部と側部とを備えた配線・配管材受具と、該受具の底部上に敷設された配線・配管材を引き出すために該受具に取付けられる配線・配管材引出具と、からなる配線・配管材引出装置であって、
前記受具の底部を構成すべく該受具の長手方向に延びる線材は、該底部を構成すべく該受具の幅方向に延びる線材の下側に配設されるとともに、該受具の長手方向の端部または途中の一部において、前記幅方向に延びる線材との溶接箇所と隣接する位置で切断されて除去され、
前記引出具は、前記受具の底部の下側に下方から当接する当接部と、前記受具から引き出された前記配線・配管材を支持する支持部とを備えるとともに、前記当接部と支持部との間には、該支持部における少なくとも該当接部側始端を該当接部より前記長手方向に延びる線材の外径と同一またはこれより僅かに小さい寸法分高くするための段部が形成され、
前記引出具は、前記段部を前記幅方向に延びる線材に沿って近接させ、前記当接部を前記長手方向に延びる線材の下側に下方から当接させて、前記支持部が前記受具の長手方向の端部または途中に配置されるように取付けられることにより、前記配線・配管材を前記当接部上に配置される長手方向に延びる線材の端部と接触させることなく該受具の端部または途中から該受具の長手方向に沿って引き出すことができるとともに、前記段部を前記受具の長手方向に延びる線材に沿って近接させ、前記当接部を前記長手方向に延びる線材の下側に下方から当接させて、前記支持部が該受具の幅方向の端部に配置されるように取付けられることにより、前記配線・配管材を該受具の長手方向における適宜位置から該受具の幅方向に沿って引き出すことができることを特徴とする配線・配管材引出装置。
【請求項2】
金属製の線材を溶接して網状に形成され底部と側部とを備えた配線・配管材受具に、該受具の底部上に敷設された配線・配管材を引き出すために取付けられる配線・配管材引出具であって、
前記受具の底部の下側に下方から取付けられ、
前記底部の下側と当接する当接部と、
前記受具から引き出された前記配線・配管材を支持する支持部とを備え、
前記配線・配管材が、前記当接部上に配置される前記線材の端部と接触しないように、前記当接部と前記支持部との間に、該支持部における少なくとも前記当接部側始端を該当接部より高くする段部が形成されたことを特徴とする配線・配管材引出具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57642(P2012−57642A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198412(P2010−198412)
【出願日】平成22年9月5日(2010.9.5)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】