説明

配線処理方式

【目的】配線設計後、またはプリント基板製造後に論理変更が発生し、再設計を行う場合に、電気的な特性評価が完了している既存配線パターンを極力保存し、論理変更で新規に結線した配線パターンのみ評価することで作業効率、品質の向上、設計期間、工数の低減を可能とする。
【構成】高密度プリント基板の論理品質の確認時、論理変更が発生した部分について不当な接続がある場合、エラーメッセージを出力し、その部分の既存配線パターンを自動削除する。未結線となった部分を自動配線処理する場合に、その未結線が既存配線パターンを移動せずに空きチャネルのみでパターン化が不可能と判断されたものである場合、既存配線パターンの優先順位を信号の種類や用途により決定して変更可能順序フラグを設定し、その属性に従い優先順位の低い既配線パターンから結線を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配線設計後、またはプリント基板製造後に論理変更が発生し再設計を行う場合に、電気特性の評価が完了している既存配線パターンを極力保存することが要求される配線設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の配線処理方式は、論理変更により論理と不一致になった既存配線パターンを人手にて削除するため、特に変更量が多い場合、削除工数が大となる。
【0003】また、電気特性の評価が完了している既存配線パターンを誤って削除する場合があるため、余分な配線及び、評価工数が発生する。
【0004】評価が完了している既存配線パターンを固定し、空きチャネルだけで変更分の配線を行う場合、配線に必要なチャネルを確保できず未結線が発生してしまう。
【0005】論理変更分の配線を行う際、配線チャネルを確保すべく既存配線パターンの移動を行うが電気特性の厳しいもの緩いものに関わりなく移動してしまうため、移動後の配線パターンの再評価で不具合となり再配線となる場合が発生する。
【0006】変更配線パターンのルートチェック、導体間隔チェック等は、プロッタで出力した配線パターン図を用い、変更配線パターン毎にネットリストで接続先/元の座標を調べる方法で行っているため、検索工数が大きい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術の場合、変更配線パターンは人手にて削除しているため、特に変更量が多い場合、削除工数が大となり、また評価が完了している既存配線パターンまで誤って削除してしまい再配線及び、再評価となる。
【0008】変更配線を行う際、配線チャネル確保のために、電気特性の制限が厳しく移動不可の既存配線パターンにも関わらず誤って移動してしまう場合がある。
【0009】本発明の目的は、配線設計後における論理変更で不要となった既存配線パターンの自動削除と電気特性の評価が完了している既存配線パターンを極力保存し、変更パターンのルートチェック等のチェック作業を効率良く行うことを可能とした配線処理方式を提供し、論理変更時の設計工数低減及び設計期間の短縮、また、プリント基板の品質向上を図ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の配線処理方式は、論理変更を論理情報2にフィードバックし、その後、論理情報1と一致しない配線パターンを自動削除し、削除工数及び誤削除による再配線、再評価工数を発生させない。
【0011】また、変更対象外配線パターンで電気的特性仕様の制限が厳しく移動不可なもの、なるべく移動したくないもの、移動しても良いというものにそれぞれ変更可能順序フラグをランク別に設け、この属性を論理情報2へ定義する。
【0012】この属性をもとに、自動配線処理時に変更可能順序フラグで移動しても良いランクのパターンから移動し、電気特性の厳しい配線パターンの移動を最小限に抑制しながら配線チャネルの確保を行い変更分の配線を行う。
【0013】論理変更分の配線パターン及び移動した既存配線パターンのルートチェック等を洩れなく速やかに行うために、変更及び移動した配線パターンに識別フラグを自動的に付加し、画面表示/プロッタ出力などの配線パターン図出力のときに論理変更及び、移動した配線パターンとそれ以外の配線パターンとの区別を付ける。
【0014】
【作用】本発明の配線処理方式によれば、論理変更により不要となった既存配線パターンが自動的に削除されるため、人為的な誤削除がなく、不必要な再配線及び再評価が発生しない。
【0015】また、既存配線パターンに電気的特性仕様が厳しい順に変更可能順序フラグを付加し、仕様が一番緩いランクの既存配線パターンから移動するため、高品質なプリント基板が設計できる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】図1は、配線パターン設計終了後に論理変更が発生した場合の配線処理方法の一例を示す。
【0018】図2は、信号毎に変更可能順序フラグのランク付けを行い設定した論理情報2の状況と、自動配線時の配線パターン画面表示の一例を示す。
【0019】図3は、結線後の画面表示またはプロッタ出力の一例を示す。
【0020】たとえば、プリント基板上に図示しない所望の回路構造などが形成された且つ、ディレイ,タイミングなどの電気的な評価が終了した既存配線パターンなどからなる高密度プリント基板がある。
【0021】特に図示しないが、プリント基板の表面には電子部品や診断用プロービングパットなどが多数搭載されている。さらに、プリント基板の論理検証や実機テスト等で論理不良の有無により、論理品質の確認を行う。
【0022】また、論理情報1(1−1)の論理不良箇所を修正し、論理変更(1−2)を行う。
【0023】更に、論理変更終了後論理情報1を更新し、論理変更を取り込んだ論理情報2(1−3)と既存配線パターン(1−4)をマ−ジし、論理的な接続チェック(1−5)を行う。
【0024】この時、論理変更が発生した部分について不当な接続があるという旨のエラーメッセージ(1−6)を出力すると同時に、それに関する既存配線パターンが自動削除(1−7)され、論理変更部分が未結線状態となる。また、論理変更対象外の既存配線パターンは、自動配線(1−9)時にパターン移動対象外とするため、自動的に固定(1−8)される。
【0025】論理変更により、未結線となった信号を自動配線処理する場合に既存配線パターンを移動せずに空きチャネルのみでパターン化する様にルートを選択する。
【0026】空きチャネルのみでのパターン化が不可と判断された未結線の場合、既存配線パターンの移動を考慮しなくてはならない。この場合、パターン移動が可である既存配線パターンや、不可配線パターンなどの優先順位が信号の種類や用途により決定出来るため、各信号毎に変更可能順序フラグ(2−1)を設定し、その属性に従い優先順位の低い既配線パターンから移動していき、結線出来ない場合は優先順位を順次上げて結線(2−2)を行う。
【0027】また、変更可能順序フラグの設定は、論理情報2へ行い、新規に結線した配線パターンへの属性設定も、論理情報2より自動的に付加する。
【0028】結線終了後、画面表示/プロッタ出力時に、新規配線パターンおよび既存配線パターンの移動されたパターンと、固定された既存配線パターンとを区別して確認したい場合、各々配線パターン属性が新規または引き直したパターンか、既存配線パターンかを認識することで自動的に設定し、色分け(3−1)表示を可能とする。
【0029】これにより区別が明確になり、新規または移動したパターンの特性確認などが容易となる。
【0030】
【発明の効果】以上説明した配線処理方式には、配線設計後に論理の変更が発生し、再設計を行う際に電気的な特性評価が完了している既存配線パターンを極力保存することが容易に可能となり、再設計時の設計工数/期間短縮及びプリント基板の品質向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】配線パターン設計終了後に論理変更が発生した場合の配線処理方法の一例を示す。
【図2】信号毎に変更可能順序フラグのランク付けを行い設定した論理情報2の状況と、自動配線時の配線パターン画面表示の一例を示す。
【図3】結線後の画面表示またはプロッタ出力の一例を示す。
【符号の説明】
1−1…論理情報1、
1−2…論理変更、
1−3…論理情報2、
1−4…既存配線パターン、
1−5…接続チェック、
1−6…エラーメッセージ出力、
1−7…既存配線パターン自動削除、
1−8…論理変更対象外の既配線パターン自動固定、
1−9…自動配線、
2−1…変更可能順序フラグ、
2−2…結線例、
3−1…色分け。

【特許請求の範囲】
【請求項1】プリント基板製造後に論理変更が発生して再設計を行う場合で論理情報を修正し、それを基にパターン情報の更新処理を行う場合に既存配線パターンを極力保存する様に配線ルートを決定する手法において、論理情報不一致部分のパターンを削除したのちに空きチャネルを使用して配線する場合、(1)空きチャネルのみで配線出来無い場合を考慮した変更対象の既存配線パターンに変更可能順序フラグを設定する部分と、(2)変更可能順序フラグの低い既存配線パターンより順番に該当パターンを削除し、空きチャネルを増加させ対象パターンを結線する。
(3)削除ネットについて順次(2)項を繰り返し結線を行う。
(4)既存パターン変更時は、変更パターンに識別フラグを設定し、画面表示/プロッタ製画時に色分け表示を行うことを特徴とする配線処理方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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