説明

配線基板、ヘッドモジュール、液体吐出ヘッド、及び液体吐出装置

【課題】ラインプリンタに用いられるヘッドのように、非常に限られた狭いスペースであっても、コネクタに対する配線基板の抜き差しを容易なものとして、生産性、組立性を大幅に向上させる。
【解決手段】フレキシブル配線基板3は、可撓性を有するとともに、フレキシブル配線基板3の端部側がコネクタ4aへの挿入端子部3aとなっており、フレキシブル配線基板3の挿入端子部3aは、補強板31が取り付けられ、補強板31は、補強板31の一部のみが接着層32により挿入端子部3aに固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置等に使用して好適な配線基板、この配線基板を用いて液体を吐出するためのヘッドの一部を構成したヘッドモジュール、並びにこのヘッドモジュールを用いた液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。詳しくは、液体吐出装置の制御基板等に設けられたコネクタに対して、配線基板の抜き差しを容易にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体吐出装置の一例として、インクを吐出するためのノズルを記録紙の幅に対応する長さに配置したラインヘッド式のインクジェットプリンタが知られている。そして、このようなラインプリンタに用いられるヘッド(液体吐出ヘッド)は、例えば、複数のヘッドモジュールが組み合わされて構成されており、各ヘッドモジュールは、発熱抵抗体(エネルギー発生素子)と発熱抵抗体の周囲に液室を形成するバリア層とを備えるヘッドチップをノズルシート上に正確に配置したものである。
【0003】
このようなラインプリンタは、主走査方向のヘッドの移動手段を必要としないため、振動や騒音が低減され、印刷スピードを格段に速くすることが可能である。
しかし、その反面、ヘッドチップの数に応じて配線の本数が増大してしまうといった問題がある。配線の本数が増大すると、ヘッドにおける配線の引き回し等が複雑になり、製造工程や組立て工程における工数や手間が増加して煩雑となる。また、配線同士を誤って接続してしまう等の不具合が生じやすくなってしまう。
【0004】
そこで、各ヘッドチップからの配線数を減じて、より少ない本数の配線により外部と接続することが可能なヘッドモジュールが開示されている。すなわち、ヘッドチップからの配線を、フレキシブル配線基板によって一部共通化するようにした技術である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−34032号公報
【0005】
ここで、フレキシブル配線基板は、その一端側の電極とヘッドチップの電極とが電気的に接続され、フレキシブル配線基板の他端側が制御基板のコネクタへの挿入端子部となっている。そして、フレキシブル配線基板の挿入端子部には、コネクタに接続する場合に必要な厚さを確保するため、補強板が貼り付けられている。この補強板は、そのコネクタが推奨する厚さになるように、挿入端子部に必要最低限の面積で固着されたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のフレキシブル配線基板では、非常に限られた狭いスペースでコネクタに対する抜き差しを行う場合、フレキシブル配線基板を指でつまむことが困難なため、抜き差しを行うための特殊な工具を使用する必要がある。逆に、工具を使用せずに指で抜き差しを行おうとすると、フレキシブル配線基板を指で保持するための十分なスペースを確保しなければならない。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ラインプリンタに用いられるヘッドのように、非常に限られた狭いスペースであっても、コネクタに対する配線基板の抜き差しを容易なものとして、生産性、組立性を大幅に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の解決手段によって、上述の課題を解決する。
本発明の1つである請求項1の発明は、コネクタと電気的に接続するための配線基板であって、前記配線基板は、可撓性を有するとともに、前記配線基板の端部側が前記コネクタへの挿入端子部となっており、前記配線基板の前記挿入端子部は、補強板が取り付けられ、前記補強板は、前記補強板の一部のみが前記挿入端子部に固着されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の1つである請求項6の発明は、半導体基板上に複数のエネルギー発生素子が一定間隔で略直線状に配置されるとともに、前記エネルギー発生素子が設けられた面に、前記エネルギー発生素子の周囲に液室を形成するためのバリア層及び制御基板と電気的に接続するための電極を設けたヘッドチップと、ノズルが形成されたノズルシートと、前記ヘッドチップの前記電極と前記制御基板のコネクタとを電気的に接続するための配線基板とを備え、前記エネルギー発生素子により前記液室内の液体に吐出力を与えることにより、前記液室内の液体を前記ノズルから吐出するヘッドモジュールであって、前記配線基板は、可撓性を有するとともに、前記配線基板の一端側の電極と前記ヘッドチップの前記電極とが電気的に接続され、前記配線基板の他端側が前記制御基板の前記コネクタへの挿入端子部となっており、前記配線基板の前記挿入端子部は、補強板が取り付けられ、前記補強板は、前記補強板の一部のみが前記挿入端子部に固着されていることを特徴とする。
【0009】
上記発明においては、配線基板は、可撓性を有するとともに、配線基板の端部側がコネクタへの挿入端子部となっている。そして、配線基板の挿入端子部は、補強板が取り付けられ、この補強板は、補強板の一部のみが挿入端子部に固着されている。
したがって、挿入端子部に固着されていない部分の補強板を指でつまむことが可能となるので、コネクタに対する配線基板の抜き差しが容易になる。特に、ラインプリンタに用いられるヘッドのように、非常に限られた狭いスペースであっても、コネクタに対して配線基板を容易に抜き差しすることができる。
【0010】
なお、本発明の配線基板は、以下の実施形態では、液体吐出ヘッド1におけるヘッドチップ20の電極23と制御基板4のコネクタ4aとを電気的に接続するためのフレキシブル配線基板3が相当する。また、本発明のエネルギー発生素子は、ヒータ等の発熱抵抗体(発熱素子)、ピエゾ素子等の圧電素子、MEMS等を用いることが可能であるが、以下の実施形態では、サーマル方式の発熱抵抗体22が相当する。さらにまた、実施形態では、1つのヘッドモジュール10には8つのヘッドチップ20が設けられる。そして、このヘッドモジュール10を直列に2個接続してラインヘッド(A4版の長さ)にするとともに、それを4列設けて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の4色のカラーラインヘッドである液体吐出ヘッド1を形成している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の配線基板によれば、挿入端子部に固着されていない部分の補強板を指でつまむことが可能となるので、コネクタに対する配線基板の抜き差しが容易になる。特に、ラインプリンタに用いられるヘッドのように、非常に限られた狭いスペースであっても、コネクタに対して配線基板を容易に抜き差しすることができる。そのため、生産性、組立性を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面等を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態である液体吐出ヘッド1を示す平面図であり、インクの吐出面側から見た図である。
液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置(本実施形態では、カラーラインインクジェットプリンタ)に搭載されるヘッドとして用いられるものである。図1に示すように、液体吐出ヘッド1は、ヘッドフレーム2と、フレキシブル配線基板3(本発明における配線基板に相当するもの)と、複数のヘッドモジュール10とから構成されている。ヘッドモジュール10は、図1の平面図において、長手方向に2個、直列に接続されており、その2個のヘッドモジュール10でA4横幅の長さをカバーして1色を印画するものである。そして、その直列に接続された2個のヘッドモジュール10が4列設けられ、4色(Y、M、C、及びK)の液体吐出ヘッド1を構成している。
【0013】
また、各ヘッドモジュール10内には、8個のヘッドチップ20が設けられている。図2は、1つのヘッドチップ20の周囲を示す断面図である。
ヘッドチップ20は、シリコン等からなる半導体基板21と、この半導体基板21の一方の面に析出形成された発熱抵抗体22(本発明におけるエネルギー発生素子に相当するもの)とを備えている。半導体基板21の発熱抵抗体22が形成された面と同一面側であって発熱抵抗体22が形成された縁部と反対側の縁部には、電極23が形成されている。そして、発熱抵抗体22と電極23とは、半導体基板21上に形成された導体部(図示せず)を介して接続されている。
【0014】
ヘッドチップ20の発熱抵抗体22が形成された面には、バリア層24、及びノズルシート25が積層されている。バリア層24は、インク液室(加圧室)26の側壁を形成するとともに、後述するヘッドチップ20とノズルシート25とを接着させる役目を果たすものである。バリア層24は、例えば感光性環化ゴムレジストや露光硬化型のドライフィルムレジストからなり、ヘッドチップ20の半導体基板21の発熱抵抗体22が形成された面の全体に積層された後、フォトリソプロセスによって不要な部分が除去されることにより形成されている。また、バリア層24は、発熱抵抗体22の3辺の近傍を囲むように、平面的に見たときに略凹状に形成される。
【0015】
さらにまた、ノズルシート25は、複数のノズル25aが形成されたものであり、例えば、ニッケルによる電鋳技術により形成されたものである。そして、ノズルシート25は、ノズル25aの位置が発熱抵抗体22の位置と合うように、すなわちノズル25aが発熱抵抗体22に対向するように、より具体的には、ノズル25aの中心軸と発熱抵抗体22の中心とが平面的に見たときに一致するように、バリア層24と貼り合わされている。
【0016】
インク液室26は、発熱抵抗体22を囲むように、半導体基板21とバリア層24とノズルシート25とから構成されたものであり、吐出するインクが満たされるとともに、インクの吐出時にはインクの加圧室となるものである。半導体基板21の発熱抵抗体22が形成された面がインク液室26の底壁を構成し、バリア層24の発熱抵抗体22を略凹状に囲む部分がインク液室26の側壁を構成し、ノズルシート25がインク液室26の天壁を構成している。そして、インク液室26は、図2に示すように、ヘッドチップ20と、モジュールフレーム11との間の流路27に連通している。
【0017】
上記の1個のヘッドチップ20には、通常、100個単位の発熱抵抗体22を備え、制御基板(図示せず)からの指令によってこれら発熱抵抗体22のそれぞれを一意に選択して発熱抵抗体22に対応するインク液室26内のインクを、インク液室26に対向するノズル25aから吐出させることができる。
【0018】
すなわち、インク液室26にインクが満たされた状態で、発熱抵抗体22に短時間、例えば、1〜3μsecの間パルス電流を流すことにより、発熱抵抗体22が急速に加熱される。その結果、発熱抵抗体22と接する部分に気相のインク気泡が発生し、そのインク気泡の膨張によってある体積のインクが押しのけられる(インクが沸騰する)。これによって、ノズル25aに接する部分の上記押しのけられたインクと同等の体積のインクがインク液滴としてノズル25aから吐出される。そして、この液滴が印画紙上に着弾されることで、ドット(画素)が形成される。
【0019】
続いて、ヘッドモジュール10及びヘッドモジュール10を複数用いた液体吐出ヘッド1のより詳細な構造について説明する。図3は、1つのモジュールフレーム11を示す平面図である。
モジュールフレーム11は、平面的に見たときに略長方形状に形成されるとともに、左右両端側には、略L形に切り欠かれた係合部11aを有する。
モジュールフレーム11は、例えばステンレス鋼から形成され、厚みが約0.5mm程度のものであり、本実施形態では、8箇所に、略長方形状のヘッドチップ配置孔11bが形成されている。ヘッドチップ配置孔11bは、ヘッドチップ20(図2参照)の外形よりわずかに大きな孔形を有し、ヘッドチップ20を内部に完全に配置できるようになっている。
【0020】
また、モジュールフレーム11には、図1に示すヘッドフレーム2にネジ止め固定するための2つの取付穴11dが形成されている。取付穴11dは、ヘッドフレーム2にヘッドモジュール10を取り付けるときに用いられるものである。さらにまた、各ヘッドチップ配置孔11bの外縁部の一部を囲むように、溝11c(図3(a)中、ハッチング部)が形成されている。
【0021】
そして、図3(b)に示すように、ヘッドチップ配置孔11bの周囲と溝11cとで囲まれた領域に、接着剤14が塗布(印刷)され、図3(c)に示すように、ノズルシート25がモジュールフレーム11に貼着されている。なお、接着剤14の領域は、ノズルシート25が貼着されたときにノズルシート25の外縁部とほぼ一致する大きさとなっており、ノズルシート25の貼着に余分な接着剤14は、溝11c内に入り込み、溝11cによって吸収される。
【0022】
また、ノズルシート25によって、ヘッドチップ配置孔11bの領域の一部が覆われるように貼着されている。さらにまた、ノズルシート25は、モジュールフレーム11に支持されるための必要最小限の大きさに形成されており、ノズルシート25がヘッドチップ配置孔11c上に貼着されたときは、ノズルシート25は、ヘッドチップ配置孔11b及び接着剤14の塗布範囲にのみ存在する大きさに形成されている。すなわち、ノズルシート25は、ヘッドチップ配置孔11bの領域の必要な一部を覆うとともに、最小限の接着面積を有するように、必要最小限の大きさに形成されている。
【0023】
なお、ノズル25aは、図2に示す1つのヘッドチップ20における発熱抵抗体22の数に対向する数の貫通穴を一方向に整列させたものであり、インクの吐出面(ノズルシート25の外表面)に近づくに従って開口径が次第に小さくなるようにテーパーが付いた孔である。
【0024】
また、各ヘッドチップ配置孔11b内に位置するノズル25a列のノズル25a間ピッチは、ヘッドチップ20の発熱抵抗体22の配列ピッチと同一(解像度が600dpiのヘッドモジュール10を形成する場合には、約42.3μm)となるように形成されている。
【0025】
さらにまた、図3において、各ヘッドチップ配置孔11b内のノズル25a列は、各ヘッドチップ配置孔11b内のノズル25a列を結ぶライン(各ノズル25aの中心を通るライン)を考えたときに、そのラインがモジュールフレーム11の長手方向に平行に引いたモジュールフレーム11の中心線側に形成されている。また、各ヘッドチップ配置孔11bを左側から順に、「N1」、「N2」、「N3」、・・、「N8」番目とすると、「N1」番目と「N3」、「N5」及び「N7」番目のヘッドチップ配置孔11b内のノズル25a列は、上記中心線に平行な一直線上に整列するように形成されている。「N2」、「N4」、「N6」及び「N8」番目の関係も同様である。
【0026】
したがって、隣接するヘッドチップ配置孔11b内のノズル25a列、例えば「N1」番目と「N2」番目のヘッドチップ配置孔11b内のノズル25a列は、上記中心線に対して平行な2直線上に整列している。
なお、本実施形態では、1つのモジュールフレーム11に対して8つのヘッドチップ配置孔11bが形成されているが、これより多い又は少ないヘッドチップ配置孔11bが形成されたときであっても、上記関係は満たされる。
【0027】
そして、各ヘッドチップ配置孔11b内に、図2に示すように、バリア層24を積層したヘッドチップ20が配置・固定されている。この場合、ヘッドチップ20の発熱抵抗体22の真下に、ノズル25aが位置するように、例えば±1μm程度の精度で配置・固定されている。
【0028】
このように、バリア層24が形成されたヘッドチップ20がヘッドチップ配置孔11b内に配置され、ノズルシート25とヘッドチップ20とが接着されることにより、ノズルシート25のヘッドチップ20側の面と、バリア層24と、ヘッドチップ20の発熱抵抗体22が形成された面とによって、上記のようなインク液室26が形成されることとなる。
【0029】
さらにまた、ヘッドチップ20がノズルシート25に貼着された状態で、ヘッドチップ20の電極23は、ノズルシート25により隠蔽されることなく、外部に露出している。そして、ヘッドチップ20側に設けられた電極23と、フレキシブル配線基板3とが接合(電気的接続)されている。図4は、フレキシブル配線基板3を接合した状態のヘッドモジュール10を示す平面図であり、インクの吐出面側から見た図である。なお、図4中、前面側(インクの吐出面側)がノズルシート25の貼着面側であるが、図面の理解しやすさのために、反対側の面から貼着したヘッドチップ20を、実線(ハッチング部)で図示している。
【0030】
フレキシブル配線基板3は、銅箔をポリイミド等で両面側から挟み込んだ、いわゆるサンドイッチ構造をなすものであり、可撓性を有している。そして、1つのヘッドモジュール10に対し、2枚のフレキシブル配線基板3が取り付けられている。ここで、ヘッドチップ20は、4個ずつ2列に並んで配置されているが、各列で1枚のフレキシブル配線基板3が取り付けられ、各フレキシブル配線基板3に形成された配線パターンの一端側がヘッドチップ20の電極23(図2参照)に接合されている。
【0031】
ヘッドチップ20の電極23と、フレキシブル配線基板3とは、図2に示すように、異方性導電膜28を介して接続されている(ACF接続)。そして、ヘッドチップ20とモジュールフレーム11との間の隙間(流路27の反対側)には、エポキシ樹脂等の樹脂29が設けられ、異方性導電膜28を封止している。これは、ヘッドモジュール10の使用時には、ヘッドチップ20の周囲(図2中、上側)がインクで浸される構造であることから、活電部にインクが侵入してショートしないようにしたものである。また、ノズルシート25の外縁とフレキシブル配線基板3の外縁とは、近接するように取り付けられているが、その隙間は、ノズルシート25側から設けられた樹脂30によって封止されている。
【0032】
一方、各フレキシブル配線基板3の他端側は、後述する制御基板4のコネクタ4aに対する挿入端子部3aとなっており、この挿入端子部3aには、絶縁性物質からなる補強板31が固着されている。図5は、フレキシブル配線基板3の挿入端子部3aを示す平面図及び断面図である。
【0033】
補強板31は、接着層32を介して、補強板31の一部のみが間隔を持って挿入端子部3aに固着されている。そのため、フレキシブル配線基板3の挿入端子部3aは、補強板31及び接着層32により、コネクタ4aに接続するための必要な厚さが確保されることとなる。また、補強板31は絶縁性物質からなるので、フレキシブル配線基板3に形成された配線パターンがショートすることはない。
【0034】
ここで、フレキシブル配線基板3の挿入端子部3aをコネクタ4aに接続するには、挿入端子部3aに固着されていない部分の補強板31を指でつまんでコネクタ4aに差し込めば良い。すなわち、補強板31は、図5(a)に示すように、補強板31の一端と挿入端子部3aの先端とが一致するように取り付けられるとともに、補強板31の一端側のみが接着層32で挿入端子部3aに固着され、補強板31の他端側は固着されていない。また、補強板31は、接着層32を介して挿入端子部3aと間隔を持って固着されている。さらにまた、フレキシブル配線基板3は、可撓性を有している。そのため、補強板31の固着されていない他端側は、図5(b)に示すように、フレキシブル配線基板3との間隔を広げて、容易に指でつまむことができる。そして、そのまま補強板31を矢印のように押し込めば、コネクタ4aに簡単に差し込むことができ、接続が完了する。
【0035】
したがって、本実施形態のフレキシブル配線基板3は、補強板31のフレキシブル配線基板3と固着されていない部分を持つことにより、フレキシブル配線基板3の挿入端子部3aをコネクタ4aに簡単に差し込むことができる。逆に、挿入端子部3aを取り外す場合にも、同じ部分を持って簡単に抜き出すことができる。
【0036】
また、補強板31の両側面には、半円形状の切込み部31aが形成されている。この切込み部31aは、補強板31及びフレキシブル配線基板3の挿入端子部3aをコネクタ4aにしっかりと差し込むと、コネクタ4aからちょうど露出する位置にある。そのため、切込み部31aによって挿入端子部3aのコネクタ4aへの挿入位置が確認可能であり、切込み部31aがコネクタ4aからちょうど露出する位置まで補強板31を差し込むことにより、挿入端子部3aがコネクタ4aの所定の位置まで確実に挿入されたかを目視で確認でき、誤装着が防止される。さらにまた、挿入端子部3aをコネクタ4aから抜き出す際には、切込み部31aを指の引っ掛かりとすることができるので、抜き差しの取扱い性が向上する。
【0037】
このように、ヘッドチップ20には、コネクタ4aに対する挿入端子部3aに補強板31が取り付けられたフレキシブル配線基板3が接合(電気的接続)される。そして、ヘッドチップ20の上部を覆うように、バッファタンク12が接着される。図6は、バッファタンク12を接合した状態のヘッドモジュール10を示す平面図であり、図4と反対側の面から見た図である。
バッファタンク12は、インクを一時貯留するためのタンクであり、1つのヘッドモジュール10に対して1つ設けられる。
【0038】
バッファタンク12は、平面図で見たときに、モジュールフレーム11とほぼ同等の形状をなしている。そして、図2に示すように、バッファタンク12の下面側(モジュールフレーム11との接着面側)が開口されるとともに、側壁及び天壁が同一厚みに形成され、断面が略逆凹形となるように形成されている。したがって、バッファタンク12の内部には、空洞となったインク流路(図2中、網点部)が形成されることとなる。
【0039】
バッファタンク12がモジュールフレーム11上に取り付けられると、全てのヘッドチップ配置孔11b(図3参照)を覆うようになる。また、図2に示すように、バッファタンク12内と、各ヘッドチップ20のインク液室26とは、モジュールフレーム11とヘッドチップ20との間の流路27を介して連通する。これにより、バッファタンク12は、ヘッドモジュール10における全てのヘッドチップ20に共通するインク流路を形成し、インク液室26に供給するインクを一時貯留する。なお、バッファタンク12は、本実施形態では特に、モジュールフレーム11を固定するための剛性のある支持部材ともなっている。
【0040】
さらに、このようなヘッドモジュール10を複数用いて、1つの液体吐出ヘッド1が形成される。すなわち、図1に示すように、剛性のあるヘッドフレーム2には、ヘッドモジュール配置孔2aが形成されており、このヘッドモジュール配置孔2a内に、本実施形態では8つのヘッドモジュール10を並べて配置している(2つのヘッドモジュール10を直列に接続するとともに、その直列に接続されたヘッドモジュール10を4段に並べている)。
【0041】
また、各ヘッドモジュール10は、ネジ5によってヘッドフレーム2にネジ止めされ、位置決めされている。図7は、全てのヘッドモジュール10を収容した状態のヘッドフレーム2を示す平面図であり、図1と反対側の面から見た図である。
図7に示すように、図1と反対側の面では、8つのヘッドモジュール10の各バッファタンク12が見えている。そして、バッファタンク12の天壁には、インク供給孔12aが形成されており、このインク供給孔12aを介してインクタンク(図示せず)からバッファタンク12内にインクが供給される。また、1つのヘッドモジュール10に対して2つのフレキシブル配線基板3及び補強板31(図2中、ハッチング部)が、紙面に対して垂直に延びている。
【0042】
バッファタンク12の天壁側には、全てのバッファタンク12を覆うように制御基板4が配置される。図8は、制御基板4を示す平面図である。
制御基板4は、インクの吐出等を制御するためのものであり、制御基板4上には、各種コンデンサの他、フレキシブル配線基板3と接続するためのコネクタ4aが設けられている。また、このコネクタ4aの近傍には、フレキシブル配線基板3及び補強板31を通す切欠き部4bが形成されている。さらにまた、インク供給孔12a(図6参照)と対向する部分に、開口部4c及び接続口部4dが形成されている。
【0043】
コネクタ4a及び切欠き部4bは、図4に示す1つのヘッドモジュール10の2枚のフレキシブル配線基板3に対応して2つずつ形成され、合計では、2個直列×4段のヘッドモジュール10に対応してそれぞれ16個ある。また、開口部4cは、4段のヘッドモジュール10に対応して4つ形成されている。さらにまた、接続口部4dは、4段のヘッドモジュール10の両端に対応して、8つ形成されている。
【0044】
この制御基板4は、ネジ穴4eにより、図7に示す状態のヘッドフレーム2のネジ穴2bとネジ止めされる。図9は、制御基板4を取り付けた状態の液体吐出ヘッド1を示す平面図であり、図1と反対側の面から見た図である。
図9に示すように、制御基板4は、ネジ6によってヘッドフレーム2にネジ止めされる。この際、可撓性のあるフレキシブル配線基板3及び補強板31は、切欠き部4bを通って制御基板4の下側から上側に抜け、制御基板4のコネクタ4aに接続される。したがって、各ヘッドモジュール10(図1参照)は、フレキシブル配線基板3を介して、背後にある制御基板4と電気的に接続されることとなる。
【0045】
ここで、各フレキシブル配線基板3の挿入端子部3aには、一部のみが固着された補強板31が取り付けられているので、補強板31の固着されていない部分を指でつまむことにより、制御基板4上の非常に限られた狭いスペースにある16個のコネクタ4aに各フレキシブル配線基板3をそれぞれ容易に抜き差しすることができる。また、補強板31の切込み部31aの位置を確認することにより、フレキシブル配線基板3がコネクタ4aに正しく装着されたかどうかを目視で確認することができ、誤装着が防止される。さらにまた、切込み部31aが引っ掛かりとなり、抜き差しの際の取扱い性も向上する。
【0046】
さらに、制御基板4の各開口部4c及び各接続口部4dにより、図7に示すバッファタンク12の全てのインク供給孔12aは、制御基板4により隠蔽されることなく、外部に露出する。そのため、制御基板4の外部からバッファタンク12の各段ごとにそれぞれU字管13の両端部及びインク供給管14の端部を差し込めば、各段のバッファタンク12にインクが供給されるようになる。そして、直列に接続された2つのバッファタンク12を1段として、A4対応のラインヘッドが形成され、直列に並ぶ2つのバッファタンク12を4段に並べることにより、Y、M、C、及びKの4色(カラー)対応のカラーラインヘッドが形成されることとなる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、例えば以下のような種々の変形等が可能である。すなわち、本実施形態においては、フレキシブル配線基板3を液体吐出ヘッド1に適用しているが、これに限らず、各種のコネクタに対する接続に適用することができる。また、補強板31は、接着層32を介して挿入端子部3aと間隔を持って固着しているが、これに限定されるものではない。さらにまた、切込み部31aに限らず、溝・穴・段差・凹凸形状等を形成して指の引っ掛かりとしても良い。さらに、補強板31は、絶縁性物質以外から形成されたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態である液体吐出ヘッドを示す平面図であり、インクの吐出面側から見た図である。
【図2】1つのヘッドチップの周囲を示す断面図である。
【図3】1つのモジュールフレームを示す平面図である。
【図4】フレキシブル配線基板を接合した状態のヘッドモジュールを示す平面図であり、インクの吐出面側から見た図である。
【図5】フレキシブル配線基板の挿入端子部を示す平面図及び断面図である。
【図6】バッファタンクを接合した状態のヘッドモジュールを示す平面図であり、図4と反対側の面から見た図である。
【図7】全てのヘッドモジュールを収容した状態のヘッドフレームを示す平面図であり、図1と反対側の面から見た図である。
【図8】制御基板を示す平面図である。
【図9】制御基板を取り付けた状態の液体吐出ヘッドを示す平面図であり、図1と反対側の面から見た図である。
【符号の説明】
【0049】
1 液体吐出ヘッド
3 フレキシブル配線基板(配線基板)
3a 挿入端子部
4 制御基板
4a コネクタ
10 ヘッドモジュール
20 ヘッドチップ
21 半導体基板
22 発熱抵抗体(エネルギー発生素子)
23 電極
24 バリア層
25 ノズルシート
25a ノズル
26 インク液室(液室)
31 補強板
31a 切込み部
32 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタと電気的に接続するための配線基板であって、
前記配線基板は、可撓性を有するとともに、前記配線基板の端部側が前記コネクタへの挿入端子部となっており、
前記配線基板の前記挿入端子部は、補強板が取り付けられ、
前記補強板は、前記補強板の一部のみが前記挿入端子部に固着されている
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記補強板は、前記補強板の一端と前記挿入端子部の先端とが一致するように取り付けられるとともに、前記補強板の一端側のみが前記挿入端子部に固着され、前記補強板の他端側が固着されていない
ことを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記補強板は、接着層を介して前記挿入端子部と間隔を持って固着されている
ことを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板において、
前記補強板は、前記挿入端子部の前記コネクタへの挿入位置を確認可能な切込み部を有する
ことを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板において、
前記補強板は、絶縁性物質からなる
ことを特徴とする配線基板。
【請求項6】
半導体基板上に複数のエネルギー発生素子が一定間隔で略直線状に配置されるとともに、前記エネルギー発生素子が設けられた面に、前記エネルギー発生素子の周囲に液室を形成するためのバリア層及び制御基板と電気的に接続するための電極を設けたヘッドチップと、
ノズルが形成されたノズルシートと、
前記ヘッドチップの前記電極と前記制御基板のコネクタとを電気的に接続するための配線基板と
を備え、
前記エネルギー発生素子により前記液室内の液体に吐出力を与えることにより、前記液室内の液体を前記ノズルから吐出するヘッドモジュールであって、
前記配線基板は、可撓性を有するとともに、前記配線基板の一端側の電極と前記ヘッドチップの前記電極とが電気的に接続され、前記配線基板の他端側が前記制御基板の前記コネクタへの挿入端子部となっており、
前記配線基板の前記挿入端子部は、補強板が取り付けられ、
前記補強板は、前記補強板の一部のみが前記挿入端子部に固着されている
ことを特徴とするヘッドモジュール。
【請求項7】
複数のヘッドモジュールと、
複数の前記ヘッドモジュールを収容したヘッドモジュール配置孔が形成されたヘッドフレームと、
前記ヘッドモジュールと電気的に接続するためのコネクタを設けた制御基板と
を備えるとともに、
前記ヘッドモジュールは、
半導体基板上に複数のエネルギー発生素子が一定間隔で略直線状に配置されるとともに、前記エネルギー発生素子が設けられた面に、前記エネルギー発生素子の周囲に液室を形成するためのバリア層及び前記制御基板と電気的に接続するための電極を設けたヘッドチップと、
ノズルが形成されたノズルシートと、
前記ヘッドチップの前記電極と前記制御基板の前記コネクタとを電気的に接続するための配線基板と
を備え、
前記エネルギー発生素子により前記液室内の液体に吐出力を与えることにより、前記液室内の液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、
前記配線基板は、可撓性を有するとともに、前記配線基板の一端側の電極と前記ヘッドチップの前記電極とが電気的に接続され、前記配線基板の他端側が前記制御基板の前記コネクタへの挿入端子部となっており、
前記配線基板の前記挿入端子部は、補強板が取り付けられ、
前記補強板は、前記補強板の一部のみが前記挿入端子部に固着されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
複数のヘッドモジュールと、
複数の前記ヘッドモジュールを収容したヘッドモジュール配置孔が形成されたヘッドフレームと、
前記ヘッドモジュールと電気的に接続するためのコネクタを設けた制御基板と
を備えるとともに、
前記ヘッドモジュールは、
半導体基板上に複数のエネルギー発生素子が一定間隔で略直線状に配置されるとともに、前記エネルギー発生素子が設けられた面に、前記エネルギー発生素子の周囲に液室を形成するためのバリア層及び前記制御基板と電気的に接続するための電極を設けたヘッドチップと、
ノズルが形成されたノズルシートと、
前記ヘッドチップの前記電極と前記制御基板の前記コネクタとを電気的に接続するための配線基板と
を備え、
前記エネルギー発生素子により前記液室内の液体に吐出力を与えることにより、前記液室内の液体を前記ノズルから吐出する液体吐出装置であって、
前記配線基板は、可撓性を有するとともに、前記配線基板の一端側の電極と前記ヘッドチップの前記電極とが電気的に接続され、前記配線基板の他端側が前記制御基板の前記コネクタへの挿入端子部となっており、
前記配線基板の前記挿入端子部は、補強板が取り付けられ、
前記補強板は、前記補強板の一部のみが前記挿入端子部に固着されている
ことを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−38489(P2007−38489A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224222(P2005−224222)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】