配線基板の製造方法
【課題】レジストの剥離を容易に行うことができる形状の配線層を容易に形成することを可能とした配線基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】絶縁層上に通電層を形成する工程と、前記通電層上にパターン用マスクを形成する工程と、前記通電層上の前記パターン用マスクで覆われていない領域に、電流方向を周期的に反転させて行うPR電解メッキ処理により導体層を形成する工程とを備え、前記PR電解メッキ処理における正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)は、1:3〜1:1であり、前記導体層は、ほぼ長方形の断面形状を有することを特徴とする。
【解決手段】絶縁層上に通電層を形成する工程と、前記通電層上にパターン用マスクを形成する工程と、前記通電層上の前記パターン用マスクで覆われていない領域に、電流方向を周期的に反転させて行うPR電解メッキ処理により導体層を形成する工程とを備え、前記PR電解メッキ処理における正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)は、1:3〜1:1であり、前記導体層は、ほぼ長方形の断面形状を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板や半導体パッケージ基板などの配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば樹脂製配線基板の表面に配線パターンを形成するには、通常、エッチングによるサブトラクティブ法が採られている。しかし、近年の配線の細線化・高密度化に伴い、電解めっきによって配線パターンを形成するセミアディティブ法による微細配線形成技術が期待されている。
【0003】
このセミアディティブ法によれば、例えば、以下のような手法で銅からなる配線層が形成される。
【0004】
即ち、まず、基板表面全面にパラジウムからなるめっき触媒核を形成する。次いで、無電解銅めっきにより、基板表面全体に無電解銅めっき層(以下シード層とする)を形成する。次に、シード層上に感光性レジストをラミネートし、露光・現像を行い、レジストパターンを形成する。
【0005】
その後、基板端に電極をつけて、露出したシード層上に電解銅めっき(硫酸銅めっき)を行い、シード層上に電解銅めっき層を形成する。次いで、感光性レジストを剥離し、クイックエッチングにより電解めっき層で覆われていないシード層を除去することにより、銅配線パターンが形成される。このような従来の配線層の形成方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
このように、従来のセミアディティブ工法においては、シード層の形成、レジストパターンの形成、及び直流(DC)電流による金属の電解めっきによって配線を形成していた。しかし、直流(DC)電流によるめっき法では、得られためっき層がレジストの側面を押し、図11に示すように、配線の断面形状が太鼓型になるという問題がある。
【0007】
配線パターンの形成後、水酸化ナトリウムを主とする剥離剤によるフォトレジストの剥離を行うが、このような太鼓型の断面形状の配線では、配線パターンが細く、かつ高密度である場合には、例えば特許文献2,3に記載されているような従来の剥離剤によっては、レジスト残渣が生じ易くなってしまう。
【0008】
このレジスト残渣の問題を解決するために、近年、水酸化ナトリウムに代わり、アミン系の剥離剤を用いてフォトレジストを剥離する方法が用いられ始め、これにより微細な配線パターンの形成が期待されている。
【0009】
この方法は、微細な配線パターンを形成する上で優れている。しかし、使用する剥離剤が従来の剥離剤に比べて5〜10倍の価格であること、剥離剤自体が危険であることなどのデメリットもあるため、従来の剥離剤でも良好な剥離性が得られる方法が求められている。
【0010】
また、例えば配線形成を行った後に、レジスト残渣をより効果的に除去するために、レジスト除去工程とその後の水洗工程において超音波を用いる方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この方法では、従来の方法より工程数が増え、製造コストが増加してしまう。
【特許文献1】特開平08−181402号公報
【特許文献2】WO01−092958号公報
【特許文献3】特開平11−214572号公報
【特許文献4】特開平05−198927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、レジスト残渣の問題を、安価な水酸化ナトリウムのような剥離剤を用い、工程数を増やすことなく解決することが求められている。
【0012】
本発明は、以上のような事情の下になされ、レジストの剥離を容易に行うことができる形状の配線層を容易に形成することを可能とした配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、絶縁層上に通電層を形成する工程と、前記通電層上にパターン用マスクを形成する工程と、前記通電層上の前記パターン用マスクで覆われていない領域に、電流方向を周期的に反転させて行うPR電解メッキ処理により導体層を形成する工程とを備え、前記PR電解メッキ処理における正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)は、1:3〜1:1であり、前記導体層は、ほぼ長方形の断面形状を有することを特徴とする配線基板の製造方法を提供する。
【0014】
以上のように構成される回路基板の製造方法において、PR電解メッキ処理における正電流の通電時間TFと逆電流の通電時間TRの比(TF/TR)は、5:1〜50:1であることが望ましい。
【0015】
本発明の配線基板の製造方法によると、導体層と前記パターン用マスクの厚さを、ほぼ同一とすることができる。また、パターン用マスクの幅を、8μm以下とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、PR電解メッキ処理における正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)を、1:3〜1:1に制御することにより、ほぼ長方形の断面形状を有する導体層を得ることができ、そのため、従来の太鼓型の断面形状の導体層の場合に比べ、例えば水酸化ナトリウム水溶液などの通常の剥離剤によっても容易にパターン用マスクを剥離することができる。
【0017】
また、30μm以下の狭いピッチでの銅配線を形成する場合に剥離液として水酸化ナトリウムを用いても、レジスト残渣の問題がなく、配線形成を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
本発明の一態様に係る配線基板の製造方法は、セミアディティブ法により配線を形成するに際し、電流の極性を反転させて電解めっきを行うPR(periodic reverse)法を用い、その電解めっき条件として、正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)を1:3〜1:1とすることを特徴とする。
【0020】
このように、IF/IRを制御して電解めっきを行うことにより、ほぼ長方形の断面形状を有する配線層を形成することができる。そして、長方形の断面形状を有する配線層を形成することにより、電解めっき後のパターン用マスク(レジストパターン)の除去を、レジスト残渣が残ることなく確実に行うことができる。従って、高価な剥離剤を用いることなく、水酸化ナトリウム等の従来用いられている通常の剥離剤によっても、何ら支障なくパターン用マスクの除去を行うことができる。
【0021】
IF/IRが上記範囲を外れ、IF/IRが1:1よりも大きくなる場合には、太鼓型ないしドーム型の断面形状の配線となり、パターン用マスクの除去が困難となり、逆に、IF/IRが1:3よりも小さくなる場合には、側面が傾斜して、台形型の断面形状の配線となる。
【0022】
PR電解メッキ処理における正電流の通電時間TFと逆電流の通電時間TRの比(TF/TR)は、5:1〜50:1であることが望ましい。TF/TRがこの範囲より大きい場合には、配線形状はドーム型となり、小さい場合には、形状は上記のいずれかをとることができるが、めっき表面にざらつきなどを生じ、使用できない。
【0023】
本発明の一態様に係る配線基板の製造方法によると、パターン用マスクの厚さが従来よりも薄くても、所定の高さの導体層を形成することができ、例えば、導体層と前記パターン用マスクの厚さを、ほぼ同一とすることができる。このようにパターン用マスクの厚さを薄くすることにより、微細な、例えば8μm以下の幅のパターン用マスクを形成することができる。
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態に係る配線基板の製造方法を工程順に示す断面図である。まず、図1(a)に示すように、回路基板(図示せず)上に形成された絶縁層1上に、めっきリードとなるシード層2を形成するとともに、フォトレジストをラミネートおよび露光・現像処理することにより、シード層2の不要部分をマスキングするレジストパターン3を形成した。
【0026】
図1(a)で用いている回路基板は一般的なもので良く、絶縁層1としては、エポキシ樹脂、BTレジン、ポリイミド樹脂など、通常用いられる材料を用いることができる。なお、本実施形態では、絶縁層1としてポリイミド樹脂を用いた。シード層2としては、絶縁層1上に直接無電解銅めっきにより1μm程度の厚みで析出させた銅を用いた。
【0027】
直流(DC)電解めっきを用いたセミアディティブ法では、一般的に15μm厚の銅めっきの層を得るために必要なフォトレジストの厚さは約25μmであるが、このレジスト厚では、フォトレジストの解像限界は10μm幅以上になってしまう。PR法を用いる本発明の方法では、15μmの銅めっきの層に対してフォトレジストの厚さを15μmまで薄くすることができ、解像限界も6μm幅まで小さくすることができるため、微細配線の形成において有利となる。
【0028】
次に、図1(b)に示すように、レジストパターン3の開口部内にPR法による電解銅めっきにより、所望の厚さの回路配線4を形成した。なお、PR法による電解銅めっきの条件は、下記の通りである。
【0029】
正電流
電流値:2A/dm2
時間:20msec
逆電流
電流値:2A/dm2
時間:1msec
以上の条件で得られた銅めっき厚は、15μmであった。
【0030】
次いで、図1(c)に示すように、剥離液として水酸化ナトリウムを用いてレジストパターン3の剥離を行った。本実施形態の場合、配線の断面形状が長方形であるため、めっき銅の間のフォトレジスト残渣が残りにくくなるという利点がある。
【0031】
その後、クイックエッチングを行い、露出するシード層2を除去することにより、図1(d)に示すように、長方形の断面形状を有する配線回路配線4を得た。なお、クイックエッチングは、硫酸過水(硫酸と過酸化水素水との混合液)系のエッチング液を用いた。
【0032】
このように、PR法を用いて形成した回路配線4の断面形状を図2に示す。
【0033】
図2に示すように、回路配線の断面形状は長方形であり、図11に示す従来のDC法によって形成された太鼓型の断面形状の配線とは大きく異なっていることがわかる。
【0034】
第2の実施形態
次に、本発明を半導体パッケージ基板の製造に適用した第2の実施形態について説明する。
【0035】
まず、図3(a)に示すように、基材として25μm厚のポリイミド樹脂層11の両面に6μm厚の銅箔12a,12bを被覆した基材を用意した。次いで、図3(b)に示すように、この基材の一方の面に対し、レーザーを用いて穴あけ加工を行い、ビア13を形成した。その後、ビア加工において発生したスミアを除去するためデスミア処理を行った後、無電解銅めっきを行い、ビアの内側に給電層(図示せず)を形成した。
【0036】
次に、図3(c)に示すように、ビアフィリングめっきにより、ビア13の内部を銅めっきで充填して、フィルドビア14とすると共に銅箔12a,12b上にもめっきを行い、シード層12a’,12b’とした。その後、シード層12a’,12b’の上にレジスト15a,15bをラミネーターにより貼付した。そして、レジスト15a,15bに対し、露光及び現像を行い、図3(d)に示すように、レジストパターン16a,16bを形成した。
【0037】
その後、PR法により銅の電解めっきを行い、図4(a)に示すように、銅の配線層17a,17bを形成した。次いで、図4(b)に示すように、レジストパターン16a,16bを剥離し、クイックエッチングを行い、図4(c)に示すように、シード層12a’,12b’の露出する部分を除去した。
【0038】
次に、得られた構造の両面に、接着剤層18a,18bを介して、片面銅箔基材19a,19bを同時に貼り合わせ、図5(a)に示すように、4層板を形成した。片面銅箔基材19a,19bはそれぞれポリイミド樹脂層191a,191bと銅箔192a,192bを備えている。
【0039】
次いで、図5(b)に示すように、この4層板の両面に対し、レーザーを用いて穴あけ加工を行い、ビア20a,20bを形成した。
【0040】
その後、図6(a)に示すように、デスミア処理、無電解銅めっきの後、ビアフィリングめっきを行い、ビア20a,20bの内部を銅めっきで充填してフィルドビア21a,21bとすると共に銅箔192a,192b上にもめっきを行い、シード層192a’,192b’とした。その後、シード層192a’,192b’の上にレジスト(図示せず)を貼付し、露光、現像を行い、レジストパターン22a,22bを形成した。
【0041】
その後、PR法により銅の電解めっきを行い、レジストパターン22a,22bを剥離し、クイックエッチングを行って露出する銅箔を除去し、図6(b)に示すように、銅の配線層23a,23bを形成した。
【0042】
図面では省略したが、同様にして、片面銅箔基材の貼り付け、配線層の形成を繰り返し、6層や8層の多層配線基板を形成した。
【0043】
そして、図7に示すように、最外層にソルダーレジスト24a,24bを形成し、図8に示すように、その開口部にNi/金めっき層25a,25bを形成した。次いで、図9に示すように、Ni/金めっき層25bにはんだバンプ26を形成し、半導体パッケージ基板を得た。
【0044】
このような半導体パッケージ基板を用いた、電子部品の一形態の模式図を図10に示す。
【0045】
次に、本発明者らは、PR法による電解めっきにおける条件として、正電流と逆電流の比(IF/IR)及び時間の比(TF/TR)を種々変化させて、銅のめっきを行い、配線を形成した。その結果、得られた配線の断面形状は、下記表に示す通りとなった。
【表1】
【0046】
上記表から、IF/IRが1:1、TF/TRが10:1のときに、長方形の断面形状が得られることがわかる。一方、IF/IRが1:2、TF/TRが10:1では、断面形状は台形となり、IF/IRが1:5、TF/TRが10:1では、断面形状はM形となり、正電流のみを流した場合には、断面形状はドーム型となった。
【0047】
なお、例1及び2の長方形及び台形の断面形状では、中央部分の膜厚が周辺部と比較して±0.5μm以内であり、例3のM形の断面形状では、中央部分の膜厚が周辺部と比較して0.5μm以上低く、例4のドーム形の断面形状では、中央部分の膜厚が周辺部と比較して0.5μm以上高い結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る配線基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る配線基板の製造方法により得た配線の断面を示す写真図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る方法により得た半導体パッケージ基板を示す断面図である。
【図11】従来の直流(DC)電流によるめっき法により得た配線の断面を示す写真図である。
【符号の説明】
【0049】
1…絶縁層、2,12a’,12b’,192a’,192b’…シード層、3,16a,16b,22a,22b…レジストパターン、4,17a,17b,23a,23b…配線層、11,191a,191b…ポリイミド樹脂層、12a,12b,192a,192b…銅箔、13,20a,20b…ビア、14,21a,21b…フィルドビア、15a,15b…レジスト、18a,18b…接着剤層、19a,19b…片面銅箔基材、24a,24b…ソルダーレジスト、25a,25b…Ni/金めっき層、26…はんだバンプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板や半導体パッケージ基板などの配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば樹脂製配線基板の表面に配線パターンを形成するには、通常、エッチングによるサブトラクティブ法が採られている。しかし、近年の配線の細線化・高密度化に伴い、電解めっきによって配線パターンを形成するセミアディティブ法による微細配線形成技術が期待されている。
【0003】
このセミアディティブ法によれば、例えば、以下のような手法で銅からなる配線層が形成される。
【0004】
即ち、まず、基板表面全面にパラジウムからなるめっき触媒核を形成する。次いで、無電解銅めっきにより、基板表面全体に無電解銅めっき層(以下シード層とする)を形成する。次に、シード層上に感光性レジストをラミネートし、露光・現像を行い、レジストパターンを形成する。
【0005】
その後、基板端に電極をつけて、露出したシード層上に電解銅めっき(硫酸銅めっき)を行い、シード層上に電解銅めっき層を形成する。次いで、感光性レジストを剥離し、クイックエッチングにより電解めっき層で覆われていないシード層を除去することにより、銅配線パターンが形成される。このような従来の配線層の形成方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
このように、従来のセミアディティブ工法においては、シード層の形成、レジストパターンの形成、及び直流(DC)電流による金属の電解めっきによって配線を形成していた。しかし、直流(DC)電流によるめっき法では、得られためっき層がレジストの側面を押し、図11に示すように、配線の断面形状が太鼓型になるという問題がある。
【0007】
配線パターンの形成後、水酸化ナトリウムを主とする剥離剤によるフォトレジストの剥離を行うが、このような太鼓型の断面形状の配線では、配線パターンが細く、かつ高密度である場合には、例えば特許文献2,3に記載されているような従来の剥離剤によっては、レジスト残渣が生じ易くなってしまう。
【0008】
このレジスト残渣の問題を解決するために、近年、水酸化ナトリウムに代わり、アミン系の剥離剤を用いてフォトレジストを剥離する方法が用いられ始め、これにより微細な配線パターンの形成が期待されている。
【0009】
この方法は、微細な配線パターンを形成する上で優れている。しかし、使用する剥離剤が従来の剥離剤に比べて5〜10倍の価格であること、剥離剤自体が危険であることなどのデメリットもあるため、従来の剥離剤でも良好な剥離性が得られる方法が求められている。
【0010】
また、例えば配線形成を行った後に、レジスト残渣をより効果的に除去するために、レジスト除去工程とその後の水洗工程において超音波を用いる方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この方法では、従来の方法より工程数が増え、製造コストが増加してしまう。
【特許文献1】特開平08−181402号公報
【特許文献2】WO01−092958号公報
【特許文献3】特開平11−214572号公報
【特許文献4】特開平05−198927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、レジスト残渣の問題を、安価な水酸化ナトリウムのような剥離剤を用い、工程数を増やすことなく解決することが求められている。
【0012】
本発明は、以上のような事情の下になされ、レジストの剥離を容易に行うことができる形状の配線層を容易に形成することを可能とした配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、絶縁層上に通電層を形成する工程と、前記通電層上にパターン用マスクを形成する工程と、前記通電層上の前記パターン用マスクで覆われていない領域に、電流方向を周期的に反転させて行うPR電解メッキ処理により導体層を形成する工程とを備え、前記PR電解メッキ処理における正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)は、1:3〜1:1であり、前記導体層は、ほぼ長方形の断面形状を有することを特徴とする配線基板の製造方法を提供する。
【0014】
以上のように構成される回路基板の製造方法において、PR電解メッキ処理における正電流の通電時間TFと逆電流の通電時間TRの比(TF/TR)は、5:1〜50:1であることが望ましい。
【0015】
本発明の配線基板の製造方法によると、導体層と前記パターン用マスクの厚さを、ほぼ同一とすることができる。また、パターン用マスクの幅を、8μm以下とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、PR電解メッキ処理における正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)を、1:3〜1:1に制御することにより、ほぼ長方形の断面形状を有する導体層を得ることができ、そのため、従来の太鼓型の断面形状の導体層の場合に比べ、例えば水酸化ナトリウム水溶液などの通常の剥離剤によっても容易にパターン用マスクを剥離することができる。
【0017】
また、30μm以下の狭いピッチでの銅配線を形成する場合に剥離液として水酸化ナトリウムを用いても、レジスト残渣の問題がなく、配線形成を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
本発明の一態様に係る配線基板の製造方法は、セミアディティブ法により配線を形成するに際し、電流の極性を反転させて電解めっきを行うPR(periodic reverse)法を用い、その電解めっき条件として、正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)を1:3〜1:1とすることを特徴とする。
【0020】
このように、IF/IRを制御して電解めっきを行うことにより、ほぼ長方形の断面形状を有する配線層を形成することができる。そして、長方形の断面形状を有する配線層を形成することにより、電解めっき後のパターン用マスク(レジストパターン)の除去を、レジスト残渣が残ることなく確実に行うことができる。従って、高価な剥離剤を用いることなく、水酸化ナトリウム等の従来用いられている通常の剥離剤によっても、何ら支障なくパターン用マスクの除去を行うことができる。
【0021】
IF/IRが上記範囲を外れ、IF/IRが1:1よりも大きくなる場合には、太鼓型ないしドーム型の断面形状の配線となり、パターン用マスクの除去が困難となり、逆に、IF/IRが1:3よりも小さくなる場合には、側面が傾斜して、台形型の断面形状の配線となる。
【0022】
PR電解メッキ処理における正電流の通電時間TFと逆電流の通電時間TRの比(TF/TR)は、5:1〜50:1であることが望ましい。TF/TRがこの範囲より大きい場合には、配線形状はドーム型となり、小さい場合には、形状は上記のいずれかをとることができるが、めっき表面にざらつきなどを生じ、使用できない。
【0023】
本発明の一態様に係る配線基板の製造方法によると、パターン用マスクの厚さが従来よりも薄くても、所定の高さの導体層を形成することができ、例えば、導体層と前記パターン用マスクの厚さを、ほぼ同一とすることができる。このようにパターン用マスクの厚さを薄くすることにより、微細な、例えば8μm以下の幅のパターン用マスクを形成することができる。
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態に係る配線基板の製造方法を工程順に示す断面図である。まず、図1(a)に示すように、回路基板(図示せず)上に形成された絶縁層1上に、めっきリードとなるシード層2を形成するとともに、フォトレジストをラミネートおよび露光・現像処理することにより、シード層2の不要部分をマスキングするレジストパターン3を形成した。
【0026】
図1(a)で用いている回路基板は一般的なもので良く、絶縁層1としては、エポキシ樹脂、BTレジン、ポリイミド樹脂など、通常用いられる材料を用いることができる。なお、本実施形態では、絶縁層1としてポリイミド樹脂を用いた。シード層2としては、絶縁層1上に直接無電解銅めっきにより1μm程度の厚みで析出させた銅を用いた。
【0027】
直流(DC)電解めっきを用いたセミアディティブ法では、一般的に15μm厚の銅めっきの層を得るために必要なフォトレジストの厚さは約25μmであるが、このレジスト厚では、フォトレジストの解像限界は10μm幅以上になってしまう。PR法を用いる本発明の方法では、15μmの銅めっきの層に対してフォトレジストの厚さを15μmまで薄くすることができ、解像限界も6μm幅まで小さくすることができるため、微細配線の形成において有利となる。
【0028】
次に、図1(b)に示すように、レジストパターン3の開口部内にPR法による電解銅めっきにより、所望の厚さの回路配線4を形成した。なお、PR法による電解銅めっきの条件は、下記の通りである。
【0029】
正電流
電流値:2A/dm2
時間:20msec
逆電流
電流値:2A/dm2
時間:1msec
以上の条件で得られた銅めっき厚は、15μmであった。
【0030】
次いで、図1(c)に示すように、剥離液として水酸化ナトリウムを用いてレジストパターン3の剥離を行った。本実施形態の場合、配線の断面形状が長方形であるため、めっき銅の間のフォトレジスト残渣が残りにくくなるという利点がある。
【0031】
その後、クイックエッチングを行い、露出するシード層2を除去することにより、図1(d)に示すように、長方形の断面形状を有する配線回路配線4を得た。なお、クイックエッチングは、硫酸過水(硫酸と過酸化水素水との混合液)系のエッチング液を用いた。
【0032】
このように、PR法を用いて形成した回路配線4の断面形状を図2に示す。
【0033】
図2に示すように、回路配線の断面形状は長方形であり、図11に示す従来のDC法によって形成された太鼓型の断面形状の配線とは大きく異なっていることがわかる。
【0034】
第2の実施形態
次に、本発明を半導体パッケージ基板の製造に適用した第2の実施形態について説明する。
【0035】
まず、図3(a)に示すように、基材として25μm厚のポリイミド樹脂層11の両面に6μm厚の銅箔12a,12bを被覆した基材を用意した。次いで、図3(b)に示すように、この基材の一方の面に対し、レーザーを用いて穴あけ加工を行い、ビア13を形成した。その後、ビア加工において発生したスミアを除去するためデスミア処理を行った後、無電解銅めっきを行い、ビアの内側に給電層(図示せず)を形成した。
【0036】
次に、図3(c)に示すように、ビアフィリングめっきにより、ビア13の内部を銅めっきで充填して、フィルドビア14とすると共に銅箔12a,12b上にもめっきを行い、シード層12a’,12b’とした。その後、シード層12a’,12b’の上にレジスト15a,15bをラミネーターにより貼付した。そして、レジスト15a,15bに対し、露光及び現像を行い、図3(d)に示すように、レジストパターン16a,16bを形成した。
【0037】
その後、PR法により銅の電解めっきを行い、図4(a)に示すように、銅の配線層17a,17bを形成した。次いで、図4(b)に示すように、レジストパターン16a,16bを剥離し、クイックエッチングを行い、図4(c)に示すように、シード層12a’,12b’の露出する部分を除去した。
【0038】
次に、得られた構造の両面に、接着剤層18a,18bを介して、片面銅箔基材19a,19bを同時に貼り合わせ、図5(a)に示すように、4層板を形成した。片面銅箔基材19a,19bはそれぞれポリイミド樹脂層191a,191bと銅箔192a,192bを備えている。
【0039】
次いで、図5(b)に示すように、この4層板の両面に対し、レーザーを用いて穴あけ加工を行い、ビア20a,20bを形成した。
【0040】
その後、図6(a)に示すように、デスミア処理、無電解銅めっきの後、ビアフィリングめっきを行い、ビア20a,20bの内部を銅めっきで充填してフィルドビア21a,21bとすると共に銅箔192a,192b上にもめっきを行い、シード層192a’,192b’とした。その後、シード層192a’,192b’の上にレジスト(図示せず)を貼付し、露光、現像を行い、レジストパターン22a,22bを形成した。
【0041】
その後、PR法により銅の電解めっきを行い、レジストパターン22a,22bを剥離し、クイックエッチングを行って露出する銅箔を除去し、図6(b)に示すように、銅の配線層23a,23bを形成した。
【0042】
図面では省略したが、同様にして、片面銅箔基材の貼り付け、配線層の形成を繰り返し、6層や8層の多層配線基板を形成した。
【0043】
そして、図7に示すように、最外層にソルダーレジスト24a,24bを形成し、図8に示すように、その開口部にNi/金めっき層25a,25bを形成した。次いで、図9に示すように、Ni/金めっき層25bにはんだバンプ26を形成し、半導体パッケージ基板を得た。
【0044】
このような半導体パッケージ基板を用いた、電子部品の一形態の模式図を図10に示す。
【0045】
次に、本発明者らは、PR法による電解めっきにおける条件として、正電流と逆電流の比(IF/IR)及び時間の比(TF/TR)を種々変化させて、銅のめっきを行い、配線を形成した。その結果、得られた配線の断面形状は、下記表に示す通りとなった。
【表1】
【0046】
上記表から、IF/IRが1:1、TF/TRが10:1のときに、長方形の断面形状が得られることがわかる。一方、IF/IRが1:2、TF/TRが10:1では、断面形状は台形となり、IF/IRが1:5、TF/TRが10:1では、断面形状はM形となり、正電流のみを流した場合には、断面形状はドーム型となった。
【0047】
なお、例1及び2の長方形及び台形の断面形状では、中央部分の膜厚が周辺部と比較して±0.5μm以内であり、例3のM形の断面形状では、中央部分の膜厚が周辺部と比較して0.5μm以上低く、例4のドーム形の断面形状では、中央部分の膜厚が周辺部と比較して0.5μm以上高い結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る配線基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る配線基板の製造方法により得た配線の断面を示す写真図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る半導体パッケージ基板の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る方法により得た半導体パッケージ基板を示す断面図である。
【図11】従来の直流(DC)電流によるめっき法により得た配線の断面を示す写真図である。
【符号の説明】
【0049】
1…絶縁層、2,12a’,12b’,192a’,192b’…シード層、3,16a,16b,22a,22b…レジストパターン、4,17a,17b,23a,23b…配線層、11,191a,191b…ポリイミド樹脂層、12a,12b,192a,192b…銅箔、13,20a,20b…ビア、14,21a,21b…フィルドビア、15a,15b…レジスト、18a,18b…接着剤層、19a,19b…片面銅箔基材、24a,24b…ソルダーレジスト、25a,25b…Ni/金めっき層、26…はんだバンプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上に通電層を形成する工程と、
前記通電層上にパターン用マスクを形成する工程と、
前記通電層上の前記パターン用マスクで覆われていない領域に、電流方向を周期的に反転させて行うPR電解メッキ処理により導体層を形成する工程と
を備え、
前記PR電解メッキ処理における正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)は、1:3〜1:1であり、前記導体層は、ほぼ長方形の断面形状を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記PR電解メッキ処理における正電流の通電時間TFと逆電流の通電時間TRの比(TF/TR)は、5:1〜50:1であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記導体層と前記パターン用マスクの厚さは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記パターン用マスクの幅は、8μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【請求項1】
絶縁層上に通電層を形成する工程と、
前記通電層上にパターン用マスクを形成する工程と、
前記通電層上の前記パターン用マスクで覆われていない領域に、電流方向を周期的に反転させて行うPR電解メッキ処理により導体層を形成する工程と
を備え、
前記PR電解メッキ処理における正電流IFと逆電流IRの電流比(IF/IR)は、1:3〜1:1であり、前記導体層は、ほぼ長方形の断面形状を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記PR電解メッキ処理における正電流の通電時間TFと逆電流の通電時間TRの比(TF/TR)は、5:1〜50:1であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記導体層と前記パターン用マスクの厚さは、ほぼ同一であることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記パターン用マスクの幅は、8μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−335803(P2007−335803A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168758(P2006−168758)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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