説明

配線板及びその製造方法

【課題】キャビティの底面に形成されたパッドでの電気的接続の信頼性を高める。
【解決手段】配線板100が、一側に開口するキャビティR1と、キャビティR1の底面F11のキャビティR1の壁面F12に沿って形成される溝T1と、キャビティR1の底面F11の溝T1よりも壁面F12から離れた位置に形成されるパッド101と、を有する。また、配線板100の製造方法が、パッドを含む導体層が主面上に形成された絶縁層を準備することと、絶縁層上及び導体層上に、他の絶縁層から構成されるビルドアップ部を形成することと、ビルドアップ部の上層側からレーザ光を照射することにより、ビルドアップ部の一部を分離可能にするとともに、絶縁層に溝を形成することと、ビルドアップ部の分離可能になった部分を除去することにより、絶縁層のパッド及び溝が形成された面を底面とするキャビティを形成することと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一側に開口するキャビティが形成され、キャビティの底面に複数のパッドを有する配線板及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−266196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の配線板では、絶縁層上にビルドアップ部が形成され、そのビルドアップ部にキャビティが形成されている。こうした配線板では、ビルドアップ部を形成する際、ビルドアップ部を構成する各層はプリプレグ(半硬化樹脂)の状態で積層されるため、ビルドアップ部(特に絶縁層上に直接形成される最下層)から樹脂がキャビティ側にはみ出し易い。このため、こうした配線板では、キャビティの底面における、キャビティ壁面近傍の平坦性が低くなり易い。その結果、キャビティの底面に形成されたパッドに電子部品等を電気的に接続する場合において、その電気的接続の信頼性が低下し易くなる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、キャビティの底面に形成されたパッドでの電気的接続の信頼性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る配線板は、一側に開口するキャビティと、前記キャビティの底面の前記キャビティの壁面に沿って形成される溝と、前記キャビティの底面の前記溝よりも前記壁面から離れた位置に形成されるパッドと、を有する。
【0007】
前記キャビティの底面の非溝部上に、複数の前記パッドと、該複数のパッドにそれぞれ電気的に接続される複数の導体パターンと、を有し、前記複数の導体パターンの各々が前記溝を横切る態様で形成されることにより、前記溝及び前記導体パターンが交互に配置される、ことが好ましい。
【0008】
前記溝は、前記キャビティの壁面に沿って連続的又は断続的に形成されることにより、前記キャビティの底面の一部領域を囲み、前記パッドは、前記囲まれた一部領域に配置されている、ことが好ましい。
【0009】
前記キャビティの底面の非溝部上に、ソルダーレジストを有する、ことが好ましい。
【0010】
前記パッドは、その表面に耐食層を有する、ことが好ましい。
【0011】
前記耐食層上に、半田を有する、ことが好ましい。
【0012】
前記一側における前記キャビティ外の面に、他のパッドを有し、前記他のパッドは、その表面に、前記耐食層と同一の材質からなる他の耐食層を有する、ことが好ましい。
【0013】
2層以上の絶縁層が積層されて構成される積層部を有し、前記キャビティは、前記積層部に形成され、前記キャビティの壁面は、前記積層部の側面に相当する、ことが好ましい。
【0014】
前記溝は、心材を含むリジッド基板に形成される、ことが好ましい。
【0015】
前記パッドは、電子部品又は他の配線板と電気的に接続される、ことが好ましい。
【0016】
本発明の第2の観点に係る配線板の製造方法は、パッドを含む導体層が主面上に形成された絶縁層を準備することと、前記絶縁層上及び前記導体層上に、1層又は2層以上の他の絶縁層から構成されるビルドアップ部を形成することと、前記ビルドアップ部の上層側からレーザ光を照射することにより、前記ビルドアップ部の一部を分離可能にするとともに、前記絶縁層に溝を形成することと、前記ビルドアップ部の前記分離可能になった部分を除去することにより、前記絶縁層の前記パッド及び前記溝が形成された面を底面とするキャビティを形成することと、を含む。
【0017】
前記導体層は、複数の前記パッドと、該複数のパッドにそれぞれ電気的に接続される複数の導体パターンと、を含んでおり、前記溝及び前記導体パターンが交互に配置されるように、前記溝を形成する、ことが好ましい。
【0018】
前記レーザ光の照射において、前記溝及び前記導体パターンを交互に形成すべく前記溝を断続的に形成する際には、前記溝を連続的に形成するときよりも前記レーザ光の強度を弱くする、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、キャビティの底面に形成されたパッドでの電気的接続の信頼性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る配線板の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る配線板のキャビティ及び溝の形態を示す平面図である。
【図3A】図2に示す配線板の1つのキャビティを拡大して示す平面図である。
【図3B】図3A中の接続部の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る配線板のソルダーレジストの形態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る配線板の電極を示す図である。
【図6A】本発明の実施形態に係る配線板に電子部品を実装した例を示す図である。
【図6B】図6Aに示す配線板の平面図である。
【図7A】キャビティの底面に溝が形成されない配線板に電子部品を実装する様子を示す図である。
【図7B】本発明の実施形態に係る配線板に電子部品を実装する様子を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】図8に示す製造方法において、コア基板(主面上に導体層が形成された絶縁層)を準備する工程を説明するための図である。
【図10】図8に示す製造方法において、内層ソルダーレジストを形成する工程を説明するための図である。
【図11】図8に示す製造方法において、マスクを形成する工程を説明するための図である。
【図12A】図8に示す製造方法において、ビルドアップの第1の工程を説明するための図である。
【図12B】図8に示す製造方法において、ビルドアップの第2の工程を説明するための図である。
【図13】図8に示す製造方法において、ビルドアップの第3の工程を説明するための図である。
【図14】図8に示す製造方法において、外層ソルダーレジストを形成する工程を説明するための図である。
【図15A】図8に示す製造方法において、レーザ照射工程を説明するための図である。
【図15B】図8に示す製造方法において、レーザ照射工程における接続部を拡大して示す図である。
【図16】図8に示す製造方法において、レーザ照射により形成された溝を示す図である。
【図17】図8に示す製造方法において、キャビティを形成する工程を説明するための図である。
【図18】本発明の実施形態に係る配線板において、他の形状を有するキャビティを示す図である。
【図19】本発明の実施形態に係る配線板において、断続的に溝が形成された別例を示す図である。
【図20】本発明の実施形態に係る配線板において、溝がキャビティの壁面の一部のみに沿って形成されている別例を示す図である。
【図21】本発明の実施形態に係る配線板において、溝が描くリングの切れ目に相当する部位にパッドが配置されている別例を示す図である。
【図22】本発明の実施形態に係る配線板において、接続部における溝と導体パターンとの角度が鋭角又は鈍角である別例を示す図である。
【図23A】本発明の実施形態に係る配線板において、キャビティが他の深さを有する第1の別例を示す図である。
【図23B】本発明の実施形態に係る配線板において、キャビティが他の深さを有する第2の別例を示す図である。
【図24A】本発明の実施形態に係る配線板において、溝が他の断面形状を有する第1の別例を示す図である。
【図24B】本発明の実施形態に係る配線板において、溝が他の断面形状を有する第2の別例を示す図である。
【図24C】本発明の実施形態に係る配線板において、溝が他の断面形状を有する第3の別例を示す図である。
【図24D】本発明の実施形態に係る配線板において、溝が他の断面形状を有する第4の別例を示す図である。
【図25】本発明の実施形態に係る配線板において、溝が他の平面形状を有する別例を示す図である。
【図26】本発明の実施形態に係る配線板において、異なる態様で電子部品が実装された別例を示す図である。
【図27】本発明の実施形態に係る配線板において、電子部品に代わって配線板が実装されている別例を示す図である。
【図28】本発明の他の実施形態において、キャビティ底面に形成されたパッドの端子ピッチが外層に向かって広げられる配線板を示す図である。
【図29】本発明の他の実施形態において、フレックスリジッド配線板を示す図である。
【図30】本発明の他の実施形態において、片面配線板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図中、矢印Z1、Z2は、それぞれ配線板の主面(表裏面)の法線方向に相当する配線板の積層方向(又は配線板の厚み方向)を指す。一方、矢印X1、X2及びY1、Y2は、それぞれ積層方向に直交する方向(又は各層の側方)を指す。配線板の主面は、X−Y平面となる。また、配線板の側面は、X−Z平面又はY−Z平面となる。
【0022】
相反する法線方向を向いた2つの主面を、第1面(Z1側の面)、第2面(Z2側の面)という。積層方向において、コアに近い側を下層(又は内層側)、コアから遠い側を上層(又は外層側)という。また、X−Y平面において、キャビティ(より詳しくはその重心)から離れる側を外側といい、キャビティに近づく側を内側という。直上は、Z方向(Z1側又はZ2側)を意味する。
【0023】
導体層は、全面導体層である場合を除けば、導体部(以下、導体パターンという)と非導体部とで構成される。導体層は、電気回路を構成する導体パターン、例えば配線(グランドも含む)、パッド、又はランド等を含む場合もあれば、電気回路を構成しない平面状の導体パターン等を含む場合もある。また、電子部品や他の配線板を内蔵する配線板では、その電子部品の電極や他の配線板のパッドを、配線板の導体層に含ませるように配置する場合もある。パッドには、外部接続端子のほか、ビア接続端子なども含まれる。
【0024】
開口部には、孔や溝のほか、切欠や切れ目等も含まれる。孔は貫通孔に限られず、非貫通の孔も含めて、孔という。孔には、ビアホール及びスルーホールが含まれる。以下、ビアホール内(壁面又は底面)に形成される導体をビア導体といい、スルーホール内(壁面)に形成される導体をスルーホール導体という。
【0025】
めっきには、電解めっき等の湿式めっきのほか、PVD(Physical Vapor Deposition)やCVD(Chemical Vapor Deposition)等の乾式めっきも含まれる。
【0026】
「準備すること」には、材料や部品を購入して自ら製造することのほかに、完成品を購入して使用することなども含まれる。
【0027】
「囲む」には、切れ目のないリングで1つの領域を完全に閉じていること(図18参照)のほか、一部切れ目のあるリングで1つの領域を囲んでいること(図2〜図3B参照)や、破線状のリングで1つの領域を囲んでいること(図19参照)なども、含まれる。リングとは、線の両端をつないで出来る平面図形をいい、円だけでなく、多角形なども、リングに含まれる。
【0028】
本実施形態の配線板100は、プリント配線板である。配線板100は、図1に示すように、配線板10と、絶縁層20a、30a、40a、50a、60a、70aと、導体層21、31、41、51、61、71と、ビア導体22、32、42、52、62、72と、を備える。配線板10は、配線板100のコア基板となる。以下、配線板10の表裏面(2つの主面)の一方を第1面F1、他方を第2面F2という。
【0029】
配線板10は、絶縁層10aと、導体層11a、11bと、ビア導体12と、を有する。導体層11aは、絶縁層10aの第1面F1側に形成され、導体層11bは、絶縁層10aの第2面F2側に形成される。絶縁層10aには、絶縁層10aを貫通するビアホール12aが形成されている。ビア導体12は、例えば銅のめっきがビアホール12aに充填されて構成される。絶縁層10aに形成される複数のビア導体12の中には、フィルドスタックSを構成するビア導体121と、キャビティR1内のパッド101に電気的に接続されるビア導体122とが含まれる。パッド101は、ビア導体122の直上に配置され、ビア導体122と直接的に接続される。
【0030】
配線板10の第1面F1側には、ビルドアップ部30(積層部)が形成され、配線板10の第2面F2側には、ビルドアップ部20が形成される。ビルドアップ部30は、絶縁層30a、50a、70aと、導体層31、51、71と、ソルダーレジスト81と、から構成される。3層の絶縁層30a、50a、70aと3層の導体層31、51、71とは交互に積層され、最下層となる絶縁層30aは配線板10の第1面F1上に形成され、ソルダーレジスト81は第1面F1側の最外層に形成される。また、ビルドアップ部20は、絶縁層20a、40a、60aと、導体層21、41、61と、ソルダーレジスト82と、から構成される。3層の絶縁層20a、40a、60aと3層の導体層21、41、61とは交互に積層され、最下層となる絶縁層20aは配線板10の第2面F2上に形成され、ソルダーレジスト82は第2面F2側の最外層に形成される。絶縁層20a、30a、40a、50a、60a、70aはそれぞれ、層間絶縁層に相当する。ソルダーレジスト81、82の代わりにカバーレイを用いてもよい。
【0031】
導体層71は、第1面F1側の最外の導体層となり、導体層61は、第2面F2側の最外の導体層となる。導体層71、61上にはそれぞれ、ソルダーレジスト81、82が形成される。ただし、ソルダーレジスト81、82にはそれぞれ、開口部81a、82aが形成されている。このため、導体層71の所定の部位(開口部81aに位置する部位)は、ソルダーレジスト81に覆われず露出しており、パッドP1となる。また、導体層61の所定の部位(開口部82aに位置する部位)は、パッドP2となる。パッドP1は、例えば電子部品を実装するための外部接続端子となり、パッドP2は、例えば他の配線板と電気的に接続するための外部接続端子となる。ただしこれに限られず、パッドP1、P2の用途は任意である。
【0032】
絶縁層10aは、例えばリジッド基板からなる。絶縁層10aは、例えばガラスクロス(心材)にエポキシ樹脂を含浸させたもの(以下、ガラエポという)からなる。心材は、主材料(本実施形態ではエポキシ樹脂)よりも熱膨張率の小さい材料である。心材としては、例えばガラス繊維(例えばガラス布又はガラス不織布)、アラミド繊維(例えばアラミド不織布)、又はシリカフィラー等の無機材料が好ましいと考えられる。ただし、絶縁層10aの形状や、厚さ、材料等は、基本的に任意である。例えばエポキシ樹脂に代えて、ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、イミド樹脂(ポリイミド)、フェノール樹脂、又はアリル化フェニレンエーテル樹脂(A−PPE樹脂)等を用いてもよい。絶縁層10aは、異種材料からなる複数の層から構成されていてもよい。また、絶縁層10aは、例えばフレキシブル基板からなってもよい(後述の図29参照)。
【0033】
絶縁層20a、30a、40a、50a、60a、70aはそれぞれ、例えばエポキシ樹脂からなる。本実施形態では、これら絶縁層20a等が心材を含まない樹脂からなる。ただしこれに限定されず、これら絶縁層20a等の形状や、厚さ、材料等は、基本的に任意である。例えばビルドアップ部20、30における上記絶縁層20a等が心材を含んでいてもよい。
【0034】
導体層11a、11b、21、31、41、51、61、71はそれぞれ、例えば銅箔及び銅のめっきの2層構造からなる。導体層11a(特にパッド101)、導体層71(特にパッドP1)、及び導体層61(特にパッドP2)の構造の詳細については後述する(図5参照)。しかしこれに限定されず、これら導体層11a等の材料は任意である。
【0035】
ビア導体12は、例えば銅のめっきからなる。ビア導体12の形状は、例えばZ1側に向かって拡径されるようにテーパしたテーパ円柱(円錐台)である。しかしこれに限定されず、ビア導体12の材料及び形状は任意である。
【0036】
絶縁層20a、30a、40a、50a、60a、70aにはそれぞれ、ビアホール22a、32a、42a、52a、62a、72aが形成され、これらビアホール22a等にそれぞれ、例えば銅のめっきが充填されることにより、ビア導体22、32、42、52、62、72が形成される。これらビア導体22等の形状はそれぞれ、例えば上層に向かって拡径されるようにテーパしたテーパ円柱(円錐台)である。しかしこれに限定されず、これらビア導体22等の材料や形状は任意である。
【0037】
配線板100においては、ビア導体12(特にビア導体121)、及びビア導体22、32、42、52、62、72(いずれもフィルド導体)が、配線板10の両側(第1面F1側及び第2面F2側)で積重されることにより、Z方向に沿ってフィルドスタックSが延設される。隣接するビア導体同士は密着(接触)し、互いに導通する。フィルドスタックSは、配線板100の両面の導体層、すなわち第1面F1側の導体層71と第2面F2側の導体層61とを相互に電気的に接続する。
【0038】
フィルドスタックSは、全層のフィルド導体が積重された構造、いわゆるフルスタック構造になっている。このため、配線スペースの確保が容易になり、配線パターンの設計自由度が高くなる。また、X方向又はY方向の配線を省略できるため、層間接続における配線長の短縮を図ることができる。なお、フィルドスタックSの配置や数は、任意である。例えばフィルドスタックSが複数あってもよい。
【0039】
配線板100には、配線板100を貫通するスルーホール111aが形成され、スルーホール111aの壁面に例えば銅のめっきが形成されることにより、スルーホール導体111が形成されている。
【0040】
本実施形態では、図1に示すように、ビルドアップ部30に、配線板100の一側(第1面F1側)に開口するキャビティR1が形成されている。また、図2に示すように、本実施形態の配線板100は、キャビティR1のほかにも、配線板100の一側(第1面F1側)に開口するキャビティR2及びR3を有する。キャビティR1、R2、R3の壁面F12、F22、F32は、ビルドアップ部30の側面に相当する。キャビティR1、R2、R3の形状は、略直方体である。なお、配線板100に形成されるキャビティの数は3つに限られず任意である。また、キャビティの形状も任意である(後述の図18参照)。
【0041】
キャビティR1は、孔からなる。キャビティR2は切欠からなる。キャビティR2の壁面の数は3つであり、1辺は開放されている。また、キャビティR3は、配線板100を貫通する孔(スルーホール111a)とビルドアップ部30だけを貫通する孔(図1中のキャビティR1参照)とが結合して形成される。
【0042】
キャビティR1の底面F11には、キャビティR1の壁面F12の略全部(4辺)に沿って、例えば四角リング状の溝T1が形成されている。溝T1は、後述の接続部R13(図3A及び図3B参照)を除いて、連続的に形成される。本実施形態では、溝T1の形状が、略切れ目のない四角リング状となり、パッド101は、溝T1に囲まれた底面F11の一部領域に配置される。また、キャビティR2の底面F21には、キャビティR2の壁面F22の全部(3辺)に沿って溝T2が形成されている。本実施形態では、溝T2の形状がU字状となり、パッド102は、溝T2に囲まれた底面F21の一部領域に配置される。また、キャビティR3の底面F31には、キャビティR3の壁面F32(スルーホール111aの部分を除く)に沿って溝T3が形成されている。溝T3は、スルーホール111aによって途切れている。本実施形態では、溝T3の形状が、切れ目のある四角リング状となり、パッド103は、溝T3に囲まれた底面F31の一部領域に配置される。本実施形態では、絶縁層10a(心材を含むリジッド基板)に、溝T1、T2、T3が形成される。これにより、心材がある分だけ溝T1、T2、T3の深さを調節し易くなる。また、パッドの形成や、ソルダーレジストの形成を行う上で、表面の平坦性を確保し易くなる。
【0043】
溝T1は、キャビティR1の壁面F12近傍に形成され、溝T2は、キャビティR2の壁面F22近傍に形成され、溝T3は、キャビティR3の壁面F32近傍に形成される。配線板100は、キャビティR1の底面F11の、溝T1よりも壁面F12から離れた位置にパッド101を有し、キャビティR2の底面F21の、溝T2よりも壁面F22から離れた位置にパッド102を有し、キャビティR3の底面F31の、溝T3よりも壁面F32から離れた位置に、パッド103を有する。
【0044】
図3Aに、キャビティR1を拡大して示す。以下、キャビティR1の底面F11のうち、溝T1が形成された領域を溝部R11といい、それ以外の領域を非溝部R12という。溝部R11は、主にキャビティR1の外縁に配置され、非溝部R12は、主に溝部R11の内側に配置される。
【0045】
配線板100は、図3Aに示されるように、溝T1に囲まれた非溝部R12上に、パッド101を有する。パッド101は、複数のパッド101a及び複数のパッド101bを含み、配線板100は、パッド101bに電気的に接続される複数の導体パターン101cを有する。パッド101及び導体パターン101cは、導体層11aに含まれる。本実施形態では、導体パターン101cの各々が、キャビティR1内の端子(パッド101b)とキャビティR1外の他の回路とを互いに電気的に接続する配線に相当する。
【0046】
キャビティR1は、配線板100の表面から、配線板10の第1面F1まで到達する。キャビティR1の深さは、キャビティR1に収容する部品の高さに応じて決めることが好ましい。ただし、キャビティR1が浅いほど配線板100の反りを低減し易いと考えられる。
【0047】
本実施形態に係る溝T1の平面(X−Y平面)形状は、略均一な幅を有するストレート形状である。また、本実施形態に係る溝T1の断面(長手方向に直交する断面)形状は、略直角コーナーの四角形状である。すなわち、溝T1の幅は深さによらず一定である。溝T1の深さは、例えば約20μmである。また、溝T1(溝部R11)の幅D2は、例えば約100μmである。ただし、溝T1の形状及び寸法は任意である(後述の図24A〜図25参照)。
【0048】
溝T1に囲まれた非溝部R12の幅D11/幅D12はそれぞれ、キャビティR1に収容する部品の大きさに応じて決めることが好ましい。
【0049】
また、本実施形態では、導体パターン101cがそれぞれ、X方向に長いライン状に形成される。これら導体パターン101cは、互いに近い距離に略平行に形成される。これら導体パターン101cのL/S(幅/間隔)はそれぞれ、例えば約50μm/約50μmである。
【0050】
導体パターン101cの各々は、図3B(図3Aの拡大図)に示すように、非溝部R12に形成される。すなわち、導体パターン101cの各々は、キャビティR1の底面F11のうち、溝T1が形成されていない領域上に形成される。そして、X方向に長い導体パターン101cの各々が、Y方向に長い溝T1を横切る態様で形成されることにより、その横切る部分(以下、接続部R13という)においては、溝T1及び導体パターン101cが交互に配置されることになる。本実施形態では、溝T1と導体パターン101cとが、Y方向に交互に配置される。すなわち、接続部R13では、溝T1が断続的に形成される。また、接続部R13においては、溝T1と導体パターン101cとが約90°の角度をなす。ただしこれに限られず、導体パターン101cが溝T1を横切る角度は任意である(後述の図22参照)。
【0051】
本実施形態では、複数の導体パターン101cが、溝T1を隔てて配置されるため、半田ブリッジなどによる、それら導体パターン101c間のショートが生じにくくなる。その結果、配線をファイン化し易くなる。
【0052】
図1及び図4に示すように、配線板100は、各主面に形成されるソルダーレジスト81、82(外層ソルダーレジスト)に加えて、キャビティR1の底面F11の非溝部R12(接続部R13を除く)上に、ソルダーレジスト83(内層ソルダーレジスト)を有する。ソルダーレジスト83は開口部83aを有し、開口部83aでパッド101が露出する。
【0053】
本実施形態では、キャビティR1の底面F11の溝部R11、及び接続部R13の非溝部R12には、ソルダーレジストが形成されない。すなわち、図4に示すように、接続部R13の非溝部R12においては、導体パターン101cが露出している。ただし、本実施形態では、導体パターン101c間に溝T1が形成されるため(図3B参照)、溝T1によって、導体パターン101c間のショートが抑制されると考えられる。
【0054】
キャビティR1の底面に形成されたパッド101と、キャビティR1外の主面(第1面F1側の主面)に形成されたパッドP1と、反対側の主面(第2面F2側の主面)に形成されたパッドP2とはそれぞれ、図5に示すように、その表面に耐食層1013、P13、P23を有する。詳しくは、パッド101は、下層から、銅箔1011、めっき層1012、及び耐食層1013が、この順で積層された3層構造を有する。また、接続部R13の非溝部R12において露出している導体パターン101cの一部(図4参照)も、銅箔1011、めっき層1012、及び耐食層1013の3層構造を有する。パッドP1は、下層から、銅箔P11、めっき層P12、及び耐食層P13が、この順で積層された3層構造を有する。また、パッドP2は、下層から、銅箔P21、めっき層P22、及び耐食層P23が、この順で積層された3層構造を有する。耐食層1013、P13、P23は、互いに同一の材質(Ni/Au膜又は有機保護膜等)からなり、電解めっき又はOSP処理等により形成することができる。なお、導体層11a、61、71は、露出面(パッド表面等)にだけ耐食層を有していてもよいし、全体の表面に耐食層を有していてもよい。
【0055】
キャビティR1には、例えば図6Aに示すように、電極200aを有する電子部品200が収容される。また、キャビティR1内のパッド101(詳しくは図5に示す耐食層1013)上には、半田200bが形成される。そして、パッド101と電子部品200とは、半田200bを介して、互いに電気的に接続される。なお、パッド101と電気的に接続されるものは電子部品に限られず任意である(後述の図27参照)。
【0056】
電子部品200は、例えば図6Bに示すように、その側面全部(4辺とも)が溝部R11に位置するように配置される。キャビティR1の壁面F12と電子部品200との隙間D10(クリアランスの1/2)は、例えば約20mmである。ただしこれに限られず、電子部品200の配置や寸法は任意である(後述の図26参照)。
【0057】
本実施形態の配線板100によれば、隙間D10を大きくすることなく、パッド101での電気的接続の信頼性を高めることが可能になる。その結果、キャビティR1の壁面F12と電子部品200との隙間D10(又はクリアランス)を小さくし易くなる。以下、図7A及び図7Bを参照して、このことについて説明する。
【0058】
図7Aに、キャビティR1の底面F11に溝T1が形成されない配線板を示す。こうした配線板では、図7Aに示されるように、ビルドアップ部30を構成する樹脂がキャビティR1側にはみ出して裾部H1が形成され易い。キャビティR1の底面F11のうち、裾部H1が形成された部分は盛り上がって高くなる。以下、キャビティR1の底面F11のうち、裾部H1が形成された領域を凸部R101といい、それ以外の領域を非凸部R102という。
【0059】
裾部H1は、キャビティR1の壁面F12に沿って、不均一な高さで形成され易いため、図7Aに示す配線板では、キャビティR1の底面F11における、キャビティR1の壁面F12近傍の平坦性が低くなり易い。その結果、非凸部R102に形成された図示しないパッド(図1、図2に示すパッド101参照)に電子部品200を実装する際に電子部品200が裾部H1に当たってしまい、電子部品200と実装面(非凸部R102)との距離にばらつきが生じ、電子部品200が傾いた状態で実装される懸念がある。そしてその結果、キャビティR1の底面F11に形成されたパッドでの電気的接続の信頼性が低下し易くなる。
【0060】
こうした課題を解決するため、キャビティR1の壁面F12と電子部品200との隙間D10(又はクリアランス)を大きくすることも考えられる。しかし、隙間D10を大きくする(すなわち、キャビティR1を大きくする)と、キャビティR1外の主面の面積が小さくなり、配線を形成するためのスペースが少なくなってしまうなど、新たな課題が生じ得る。
【0061】
この点、図7Bに示す本実施形態の配線板100では、キャビティR1の底面F11に、キャビティR1の壁面F12に沿って溝T1が形成される。そして、キャビティR1の底面F11の、溝T1よりも壁面F12から離れた位置(非溝部R12)に、パッド101(図1、図2参照)が形成される。より詳しくは、キャビティR1の壁面F12近傍に溝T1が形成され、キャビティR1の壁面F12とパッド101とが、溝T1を隔てて配置される。このため、キャビティR1の壁面F12近傍に裾部H1(凸部)は形成されにくくなり、図7Bに示されるように、電子部品200と実装面(非溝部R12)との距離を均一にし易くなる。その結果、パッド101での電気的接続の信頼性を高めることが可能になる。こうした構造によれば、隙間D10を大きくする必要がないため、キャビティR1の壁面F12と電子部品200との隙間D10(又はクリアランス)を小さくし易くなる。その結果、キャビティR1外の主面に、配線を形成するためのスペースを確保し易くなる。
【0062】
上記配線板100は、例えば図8に示すような手順で製造される。
【0063】
ステップS11では、配線板10を準備する。配線板10は、絶縁層10aと、導体層11a、11bと、ビア導体12と、を有する。ビア導体12は、フィルド導体からなる。
【0064】
絶縁層10aの一側の主面には導体層11aが形成され、絶縁層10aの他側の主面には導体層11bが形成されている。ただし、導体層11aは、絶縁層10aの主面(第1面F1)の、溝部R11(図3A参照)に相当する領域上に導体パターンを有さない。その結果、溝部R11に相当する領域には、絶縁層10aが露出している。
【0065】
配線板10は、例えば両面銅張積層板を出発材料として、例えばレーザによりその積層板にビアホールを形成し、続けて、銅のパネルめっきを行った後、例えばリソグラフィ技術により両面の導体層をパターニングすることによって、形成することができる。絶縁層10aは、例えば完全に硬化したガラエポからなる。
【0066】
続けて、図8のステップS12で、例えば図10に示すように、キャビティR1の底面F11(特に非溝部R12)に相当する領域上に、パッド101のためのソルダーレジスト83(内層ソルダーレジスト)を形成する。ソルダーレジスト83は、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ロールコーティング、又はラミネート等により、形成することができる。なお、この段階では、パッド101は耐食層1013を有していない。本実施形態では、パッド101の耐食層1013を、パッドP1、P2の耐食層P13、P23と同時に形成する。これにより、製造効率が向上する。
【0067】
続けて、図8のステップS13で、例えば図11に示すように、ソルダーレジスト83上にマスク1001を形成する。マスク1001は、例えばソルダーレジスト83と略同じ外形(X−Y平面)を有する。
【0068】
続けて、図8のステップS14で、配線板10の両面にビルドアップを行った後、外層ソルダーレジストを形成する。これにより、配線板10の第1面F1上、第2面F2上にそれぞれ、ビルドアップ部30、20が形成される。
【0069】
具体的には、マスク1001を設置した後、例えば図12Aに示すように、第2面F2側から、銅箔1002、絶縁層20a、配線板10、絶縁層30a、及び銅箔1003を順に配置する。ここで、絶縁層30aはマスク1001の側方に位置し、絶縁層30aの高さがマスク1001の高さと略一致することで、両者の主面によって略平坦な面が形成される。そして、この略平坦な面上に銅箔1003が形成される。配線板10は絶縁層20a及び30aによって挟まれ、さらにこれらが、銅箔1002及び銅箔1003によって挟まれる。この段階では、絶縁層20a及び30aは、プリプレグ(半硬化状態の接着シート)となっている。ただし、プリプレグに代えて、RCF(Resin Coated copper Foil)などを用いることもできる。
【0070】
続けて、上記積層体をZ方向に加熱プレスする。すなわち、プレス及び加熱処理を同時に行う。プレス及び加熱により、プリプレグ(絶縁層20a、30a)は硬化し、部材同士は付着する。その結果、積層体は一体化する。なお、プレス及び加熱処理は、複数回に分けて行ってもよい。また、加熱処理とプレスとは別々に行ってもよいが、同時に行った方が効率は良い。加熱プレスの後、別途一体化のための加熱処理を行ってもよい。
【0071】
続けて、例えばレーザにより、絶縁層20aにビアホール22aが形成され、絶縁層30aにビアホール32aが形成される(図12B参照)。その後、必要に応じて、デスミアを行う。
【0072】
続けて、例えば銅のパネルめっきにより、銅箔1002及び1003上及びビアホール22a及び32a内にめっきを形成した後、例えばリソグラフィ技術により両面の導体層をパターニングする。これにより、図12Bに示すように、ビア導体22、32、並びに導体層21及び31が形成される。導体層31は、溝部R11に相当する領域の直上(Z方向)に導体パターンを有さない。ビア導体22、32の各々は、フィルド導体であり、ビア導体12の直上(Z方向)に積重される。
【0073】
続けて、第1ビルドアップ層(絶縁層20a及び30a、導体層21及び31、ビア導体22及び32)と同様にして、図13に示すように、第2ビルドアップ層(絶縁層40a及び50a、導体層41及び51、ビア導体42及び52)、第3ビルドアップ層(絶縁層60a及び70a、導体層61及び71、ビア導体62及び72)を、順に形成する。ただし、導体層61及び71を形成するためのパネルめっきに先立って、スルーホール111aを形成する。これにより、その後のパネルめっきにより、スルーホール111aの壁面にスルーホール導体111が形成されることになる。
【0074】
なお、導体層51及び71は、溝部R11に相当する領域の直上(Z方向)に導体パターンを有さない。すなわち、この段階で、溝部R11に相当する領域の直上(Z方向)には、導体(特にレーザ光を反射し易い金属)が存在しない。また、ビア導体42、52、62、72の各々は、フィルド導体であり、ビア導体12の直上(Z方向)に積重される。これらは、フィルドスタックSを構成する。
【0075】
続けて、図14に示すように、絶縁層70a、60a上にそれぞれ、開口部81aを有するソルダーレジスト81、開口部82aを有するソルダーレジスト82を形成する。導体層71、61はそれぞれ、開口部81a、82aに位置する所定の部位(パッドP1、P2及びランド等)を除いて、ソルダーレジスト81、82で覆われる。ソルダーレジスト81及び82は、例えばスクリーン印刷、スプレーコーティング、ロールコーティング、又はラミネート等により、形成することができる。なお、この段階では、パッドP1、P2は耐食層P13、P23を有していない。
【0076】
これにより、配線板10の第1面F1上(絶縁層10a上及び導体層11a上)に、絶縁層30a、50a、70a及びソルダーレジスト81から構成されるビルドアップ部30が形成され、配線板10の第2面F2上(絶縁層10a上及び導体層11b上)に、絶縁層20a、40a、60a及びソルダーレジスト82から構成されるビルドアップ部20が形成される。
【0077】
続けて、図8のステップS15で、ビルドアップ部30の上層側から、溝部R11にレーザ光を照射する。
【0078】
具体的には、例えば図15Aに示すように、四角形を描くようにレーザ光を照射することにより、ビルドアップ部30の一部を、その周りの部分から切り取る。この際、レーザ光の照射条件(強度等)は、レーザ光が絶縁層10aに届いて所望の深さの溝T1が形成されるように調整する。レーザ光の照射角度は、例えば配線板10の第1面F1に対して略垂直の角度とする。
【0079】
レーザの照射位置を変える場合には、例えば被照射体を固定してレーザ(厳密にはその照準)を移動させること、又は、逆にレーザ(厳密にはその照準)を固定して被照射体を移動させることが好ましい。レーザを移動させる場合には、例えばガルバノミラーによりレーザを移動させることが好ましい。
【0080】
接続部R13では、図15Bに示すように、複数の導体パターン101cの各々が溝T1を横切る態様で形成され、それら溝T1及び導体パターン101cが交互に配置されるように、レーザ照射する。
【0081】
ここで、溝T1は、接続部R13を除いて連続的に形成され、しかも接続部R13においては、図15Bに示されるように、金属(本実施形態では銅)からなる導体パターン101cの間に形成される。金属はレーザ光を反射し易いことから、本実施形態では、マスクレスで、接続部R13でも止めずにレーザ照射を行って、溝T1を形成する。ただし、接続部R13において溝T1を断続的に形成する際には、溝T1を連続的に形成するとき(接続部R13以外のレーザ照射)よりもレーザ光の強度を弱くすることが好ましい。そうすることで、レーザ照射による導体パターン101cのダメージを軽減し易くなる。接続部R13にレーザ光を照射する際には、レーザ光の強度調整(パワー調整)を細かく行うことが好ましい。
【0082】
なお、本実施形態では、上記レーザ照射を、マスクレスで止めずに行うようにしているが、これに限定されない。例えば上記レーザ照射においては、照射部分のみ開口した遮光マスクを設けた状態で被照射体の全面にレーザ光を照射してもよいし、遮光マスクを用いずに、非照射部分においてはレーザ照射を止めて、照射すべき部位のみにレーザ光を照射するようにしてもよい。
【0083】
また、レーザ強度(光量)の調整は、パルス制御で行うことが好ましい。具体的には、例えばレーザ強度を変更する場合には、1ショット(1回の照射)あたりのレーザ強度は変えずに、ショット数(照射回数)を変更するようにする。すなわち、1ショットでは所望のレーザ強度が得られない場合には、同じ照射位置に、再度レーザ光を照射する。こうした制御方法によれば、照射条件を変える時間を省略できるため、スループットが向上すると考えられる。ただしこれに限られず、レーザ強度の調整方法は任意である。例えば照射位置ごとに照射条件を決め、照射回数を一定(例えば1つの照射位置につき1ショット)にしてもよい。
【0084】
上記レーザ照射により、図16に示すように、ビルドアップ部30の一部(マスク1001及びその上の部分)が分離可能になるとともに、配線板10の第1面F1(詳しくは絶縁層10aの主面)に溝T1が形成される。以下、ビルドアップ部30の分離可能になった部分を、蓋部1004という。本実施形態では、レーザを用いることで、比較的容易にビルドアップ部30を切断することが可能になる。そのため、ビルドアップ部30が厚い場合、又はビルドアップ部30が多層からなる場合などにおいても、溝T1を形成し易くなる。
【0085】
続けて、図8のステップS16で、例えば手作業で又はその他の手法で外力を加えて、図17に示すように、ビルドアップ部30の蓋部1004を除去する。これにより、絶縁層10aの、パッド101及び溝T1が形成された面(第1面F1)を底面F11とするキャビティR1が形成される。また、溝T1は、キャビティR1の壁面F12に沿って形成される。また、パッド101は、溝T1よりも壁面F12から離れた位置に配置される。
【0086】
続けて、図8のステップS17で、電解めっき又はスパッタリング等により、各露出面(パッド表面等)に、例えばNi/Au膜からなる耐食層1013、P13、P23(図5参照)を形成する。また、OSP処理を行うことにより、有機保護膜からなる耐食層1013、P13、P23を形成してもよい。これにより、図1及び図5に示したような、表面に耐食層1013を有するパッド101と、表面に耐食層P13、P23をそれぞれ有するパッドP1、P2とが、形成される。また、接続部R13の非溝部R12において露出している導体パターン101cの一部(図4参照)の表面にも、耐食層1013(図5参照)が形成される。
【0087】
以上説明した工程により、配線板100(図1、図2)が完成する。本実施形態の製造方法は、配線板100の製造に適している。こうした製造方法であれば、低コストで、良好な配線板100が得られる。
【0088】
以上、本発明の実施形態に係る配線板及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0089】
キャビティR1の形状は、略直方体に限られず、任意である。例えば図18に示すように、略円柱のキャビティR1であってもよい。
【0090】
溝T1は、例えば図18に示すように、全く切れ目がなく、連続的に形成されていてもよい。この場合、全く切れ目のないリング状の溝T1で非溝部R12が完全に閉じた領域になる。図18の例では、溝T1に囲まれた非溝部R12(底面F11の一部領域)に、パッド101が配置される。
【0091】
また、例えば図19に示すように、破線状の溝T1で非溝部R12を囲んでもよい。こうした破線状の溝T1は、例えば溝T1を形成するためのレーザ照射に先立ち、溝T1間の非溝部R12に、レーザを反射するストッパ101d(例えば金属からなる導体パターン)を設けておくことで、容易に形成することができる。ストッパ101dは、回路を構成しない導体パターンであってもよく、また、回路を構成する導体パターン(配線の一部等)であってもよい。図19の例では、非溝部R12(ストッパ101d)が破線状に形成される。また、溝T1に囲まれた非溝部R12(底面F11の一部領域)に、パッド101が配置される。
【0092】
上記実施形態では、キャビティR1の底面F11に、キャビティR1の壁面F12の略全部に沿って溝T1が形成されている(図3A参照)。しかしこれに限定されず、例えば図20に示すように、キャビティR1の壁面F12の一部(例えば2辺)のみに沿って溝T1が形成されていてもよい。こうした溝T1も、上記破線状の溝T1(図19)と同様、例えば溝T1を形成するためのレーザ照射に先立ち、溝T1を形成しない領域(非溝部R12)に、ストッパ101d(例えば金属からなる導体パターン)を設けておくことで、容易に形成することができる。
【0093】
図20に示すように、パッド101は、溝T1に囲まれた領域(図20中に破線で示す領域)の外に配置されてもよい。また、図21に示すように、溝T1が描くリングの切れ目に相当する部位に、導体パターン101cと電気的に接続されるパッド101bが配置されていてもよい。この場合、パッド101b間にソルダーレジストが形成されなくても(図4参照)、パッド101b間の溝T1によって、半田ブリッジによるショートが抑制されると考えられる。
【0094】
接続部R13における溝T1と導体パターン101cとの角度は、約90°に限られず、例えば図22に示すように、鋭角又は鈍角であってもよい。
【0095】
上記実施形態では、キャビティR1がビルドアップ部30を貫通している。しかしこれに限られず、キャビティR1は、ビルドアップ部30を貫通しない開口部であってもよい。例えば図23Aに示すように、キャビティR1の底面F11が絶縁層30aの主面になってもよいし、例えば図23Bに示すように、キャビティR1の底面F11が絶縁層50aの主面になってもよい。また、図23A又は図23Bに示すように、キャビティR1内のパッド101が、スタック構造を有するビア導体(ビア導体122、32又はビア導体122、32、52)と電気的に接続されるようにしてもよい。
【0096】
溝T1の断面(長手方向に直交する断面)形状は、略直角コーナーの四角形状に限られず任意である。例えば溝T1の断面形状は、図24Aに示すように、深くなるほど幅が小さくなる略台形であっていてもよいし、図24Bに示すように、深くなるほど幅が大きくなる略台形であっていてもよい。また、溝T1の断面形状は、図24Cに示すように、略V形状であってもよいし、図24Dに示すように、略W形状であってもよい。
【0097】
本実施形態に係る溝T1の平面(X−Y平面)形状は、略均一な幅を有するストレート形状に限られず任意である。溝T1の平面形状は、例えば図25に示すように、不均一な幅を有するストレート形状であってもよい。
【0098】
電子部品200の側面全部(4辺とも)が溝部R11に位置することは必須ではなく、例えば図26に示すように、電子部品200の側面の一部(例えば3辺)のみが溝部R11に位置していてもよい。
【0099】
パッド101と電気的に接続されるものは電子部品200(図6A)に限られず、例えば図27に示すように、他の配線板300であってもよい。図27の例では、配線板300はキャビティR1に収容され、配線板300の外部接続端子300aが、半田300bを介して、パッド101と電気的に接続される。配線板300は、例えば各導体層がファインな導体パターンを有することにより、又は導体層間の層間絶縁層が薄くなっていることにより、配線板100よりも高い密度で導体を有していることが好ましい。
【0100】
キャビティR1に収容される電子部品200等の実装方法は、半田接続に限られず任意である。例えばワイヤボンディング接続やACF(異方性導電膜)接続など、他の手法を用いてもよい。
【0101】
その他の点についても、配線板100の構成、及びその構成要素の種類、性能、寸法、材質、形状、層数、又は配置等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変更することができる。
【0102】
例えば図28に示すように、フィルドスタックSを有していない配線板であってもよい。図28の例では、ビア導体22、32、42、52、62、72が、外層に向かってパッド101の端子ピッチを広げるように配置されている。
【0103】
また、図28に示すように、ビア導体12がコンフォーマル導体からなり、その内側に絶縁体12b(例えば樹脂)が充填されてもよい。また、ビア導体12に代えて、スルーホール導体を用いてもよい。
【0104】
例えば図29に示すように、フレックスリジッド配線板であってもよい。図29の例では、絶縁層10aがフレキシブル基板からなる。
【0105】
例えば図30に示すように、コア基板(絶縁層10a)の片側のみに導体層を有する片面配線板であってもよい。
【0106】
例えばビア導体12、22、32、42、52、62、72はそれぞれ、フィルド導体に限られず、例えばコンフォーマル導体であってもよい。
【0107】
また、各導体層、ビア導体、及びスルーホール導体の材料は、上記のものに限定されず、用途等に応じて変更可能である。例えばこれらの導体材料として、銅以外の金属を用いてもよい。各絶縁層の材料も任意である。ただし、層間絶縁層を構成する樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂のほか、例えばポリイミド、BT樹脂、アリル化フェニレンエーテル樹脂(A−PPE樹脂)、アラミド樹脂などを用いることができる。また、熱可塑性樹脂としては、例えば液晶ポリマー(LCP)、PEEK樹脂、PTFE樹脂(フッ素樹脂)などを用いることができる。これらの材料は、例えば絶縁性、誘電特性、耐熱性、又は機械的特性等の観点から、必要性に応じて選ぶことが望ましい。また、上記樹脂には、添加剤として、硬化剤、安定剤、フィラーなどを含有させることができる。また、各導体層及び各絶縁層等は、異種材料からなる複数の層から構成されていてもよい。
【0108】
配線板の製造工程は、図8のフローチャートに示した順序や内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に順序や内容を変更することができる。また、用途等に応じて、必要ない工程を割愛してもよい。
【0109】
例えばレーザに代えて、湿式又は乾式のエッチングで加工してもよい。エッチングで加工する場合には、予め除去したくない部分をレジスト等で保護しておくことが好ましい。
【0110】
また、各導体層の形成方法は任意である。例えばパネルめっき法、パターンめっき法、フルアディティブ法、セミアディティブ(SAP)法、サブトラクティブ法、転写法、及びテンティング法のいずれか1つ、又はこれらの2以上を任意に組み合わせた方法で、導体層を形成してもよい。
【0111】
上記実施形態や変形例等は、任意に組み合わせることができる。用途等に応じて適切な組み合わせを選ぶことが好ましい。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、「請求項」に記載されている発明や「発明を実施するための形態」に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る配線板は、携帯電話などの回路基板に適している。本発明に係る配線板の製造方法は、そうした配線板の製造に適している。
【符号の説明】
【0114】
10 配線板
10a 絶縁層
11a、11b 導体層
12 ビア導体
12a ビアホール
12b 絶縁体
20 ビルドアップ部
30 ビルドアップ部(積層部)
20a、30a、40a、50a、60a、70a 絶縁層
21、31、41、51、61、71 導体層
22、32、42、52、62、72 ビア導体
22a、32a、42a、52a、62a、72a ビアホール
81、82 ソルダーレジスト
81a、82a 開口部
83 ソルダーレジスト
83a 開口部
100 配線板
101、102、103 パッド
101a パッド
101b パッド
101c 導体パターン
101d ストッパ
111 スルーホール導体
111a スルーホール
200 電子部品
200a 電極
200b 半田
300 配線板
300a 外部接続端子
300b 半田
1001 マスク
1002、1003 銅箔
1004 蓋部
1011 銅箔
1012 層
1013 耐食層
F11、F21、F31 底面
F12、F22、F32 壁面
H1 裾部
P1、P2 パッド
P11、P21 銅箔
P12、P22 めっき層
P13、P23 耐食層
R1〜R3 キャビティ
R11 溝部
R12 非溝部
R13 接続部
R101 凸部
R102 非凸部
S フィルドスタック
T1〜T3 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側に開口するキャビティと、
前記キャビティの底面の前記キャビティの壁面に沿って形成される溝と、
前記キャビティの底面の前記溝よりも前記壁面から離れた位置に形成されるパッドと、
を有する、
ことを特徴とする配線板。
【請求項2】
前記キャビティの底面の非溝部上に、複数の前記パッドと、該複数のパッドにそれぞれ電気的に接続される複数の導体パターンと、を有し、
前記複数の導体パターンの各々が前記溝を横切る態様で形成されることにより、前記溝及び前記導体パターンが交互に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項3】
前記溝は、前記キャビティの壁面に沿って連続的又は断続的に形成されることにより、前記キャビティの底面の一部領域を囲み、
前記パッドは、前記囲まれた一部領域に配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の配線板。
【請求項4】
前記キャビティの底面の非溝部上に、ソルダーレジストを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項5】
前記パッドは、その表面に耐食層を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項6】
前記耐食層上に、半田を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の配線板。
【請求項7】
前記一側における前記キャビティ外の面に、他のパッドを有し、
前記他のパッドは、その表面に、前記耐食層と同一の材質からなる他の耐食層を有する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の配線板。
【請求項8】
2層以上の絶縁層が積層されて構成される積層部を有し、
前記キャビティは、前記積層部に形成され、
前記キャビティの壁面は、前記積層部の側面に相当する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項9】
前記溝は、心材を含むリジッド基板に形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項10】
前記パッドは、電子部品又は他の配線板と電気的に接続される、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項11】
パッドを含む導体層が主面上に形成された絶縁層を準備することと、
前記絶縁層上及び前記導体層上に、1層又は2層以上の他の絶縁層から構成されるビルドアップ部を形成することと、
前記ビルドアップ部の上層側からレーザ光を照射することにより、前記ビルドアップ部の一部を分離可能にするとともに、前記絶縁層に溝を形成することと、
前記ビルドアップ部の前記分離可能になった部分を除去することにより、前記絶縁層の前記パッド及び前記溝が形成された面を底面とするキャビティを形成することと、
を含む、
ことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項12】
前記導体層は、複数の前記パッドと、該複数のパッドにそれぞれ電気的に接続される複数の導体パターンと、を含んでおり、前記溝及び前記導体パターンが交互に配置されるように、前記溝を形成する、
ことを特徴とする請求項11に記載の配線板の製造方法。
【請求項13】
前記レーザ光の照射において、前記溝及び前記導体パターンを交互に形成すべく前記溝を断続的に形成する際には、前記溝を連続的に形成するときよりも前記レーザ光の強度を弱くする、
ことを特徴とする請求項12に記載の配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図24D】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−146983(P2012−146983A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−3528(P2012−3528)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】