説明

配線検査治具及び配線検査装置

【課題】複数のプローブをそれぞれ一定以上の力で付勢する汎用的な構成を備えておりながら、プローブの撓みによる短絡を防止でき、かつ、プローブと検査対象の基板との接触圧が過度に大きくなることを防止できる配線検査治具及び配線検査装置を提供する。
【解決手段】プローブ2を検査対象の基板10に向かって一定以上の力で付勢する複数の第1付勢部311を保持した汎用の検査ヘッド部30と、複数のプローブ2の尖端を基板10の表面に案内する専用のプローブ案内部20を備える。撓みが生じ易いプローブ2(2A)と第1付勢部311との間には、第1付勢部311の強い付勢力をプローブ案内部20へ伝えつつプローブ2(2A)を第1付勢部311より弱い付勢力で付勢する中間導電部材230を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に形成された配線の検査に用いられる配線検査治具に係り、特に、基板の電極にプローブピンを接触させて配線の導通や短絡、絶縁等の電気的検査を行うために用いられる配線検査治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を実装する前のプリント基板(ベアボード)の配線に生じた断線や短絡等の欠陥を検査する基板配線検査装置が知られている(下記特許文献を参照)。基板配線検査装置は、基板の配線上のパッドにプローブを接触させて電気信号を供給し、パッド間の電気抵抗や静電容量を測定することにより配線の不良を検査する。
【0003】
基板配線検査装置において基板にプローブを接触させる方式には、大きく分けて2つの方式がある。1つはフライングプローブ方式、もう1つは治具方式と呼ばれる。フライングプローブ方式は、プローブを機械的に移動させて基板の任意の位置に接触させる方式である。治具方式は、特定の基板用に作られた治具によって多数のプローブを保持し、それらを一度に基板の配線に接触させる方式である。治具方式は、特定の基板に合うように作られた専用の治具を用いるため、フライングプローブ方式のように任意の基板の検査を行うことはできないが、プローブの移動時間が存在しないので、一般にフライングプローブ方式よりも高速に検査を行うことができる。
【0004】
この治具方式には、更に、専用治具を使用する方式とユニバーサル治具を使用する方式とがある。
【0005】
専用治具を使用する方式の場合、専用治具が複数のプローブを保持するとともに、これらのプローブを接触させるための複数の電極部を保持する。専用治具は、各プローブの一方の尖端を基板表面の所定位置に案内し、他方の尖端を所定の電極部に案内する。電極部は、プローブの尖端を受けて伸縮するバネを含んでおり、そのバネの端にケーブルが固定されている。各電極部に固定されたケーブルは、検査信号を供給する所定のポートに接続される。
【0006】
他方、ユニバーサル治具を使用する方式では、複数のプローブをユニバーサル治具が保持し、これらのプローブを接触させるための複数の電極部を汎用の検査ヘッド部が保持する。ユニバーサル治具は検査対象の基板に合わせて専用に作製されるが、汎用の検査ヘッド部は各種の基板の検査において共通に使用できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−058973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4は、検査ヘッド部502にユニバーサル治具501を装着した状態を表す図であり、検査対象の基板に対して垂直な断面を示す。
検査ヘッド部502は、通常の検査で必要とされる数よりも余裕を持たせた多数の電極部510を保持する。電極部510は、検査ヘッド部502におけるユニバーサル治具501の装着面に一定の間隔で規則的に配置されている。ユニバーサル治具501は、各プローブ(2A,2B)の一方の尖端を基板10の表面の所定位置に案内し、他方の尖端を検査ヘッド部502の所定の電極部510に案内する。検査ヘッド部502の各電極部510は、プローブ(2A,2B)の尖端を受けて伸縮するバネを含んでおり、バネの端が検査信号を供給する不図示のポートに接続される。検査ヘッド部502にユニバーサル治具501を装着し、ユニバーサル治具501から突き出たプローブ(2A,2B)の尖端を基板10の表面に押し当てることにより、基板10の配線がプローブ(2A,2B)を介して電極部502と電気的に接続される。
【0009】
ところで、治具方式において基板との接触に用いられるプローブには様々な種類のものがあり、図4の例では比較的太いプローブ2Bと細いプローブ2Aの2種類が使用されている。電極部510のバネは、プローブ両端の接触点において安定的な導通が得られるようにするため、これらのプローブ(2A,2B)を基板10の側へ一定の力で押し返す。
【0010】
ところが、ユニバーサル治具を用いる方式の場合、このバネの力がプローブの種類と関係なく一律に一定以上の大きさになる。すなわち、検査ヘッド部502は、特定の基板の検査に限定されず汎用的に用いられるため、電極部510のバネは、比較的太いプローブが使用された場合でも適度な接触圧が得られるように、全て一定以上のバネ圧を有している。
従って、どんなに細いプローブを使用する場合でも、電極部510のバネは太いプローブと同じ力でプローブを押し返すことになる。そのため、径が細いプローブほど図4に示すように撓み易くなる。プローブが大きく撓むと、隣接するプローブ同士で短絡を生じる可能性がある。
【0011】
プローブの短絡を防ぐため、表面に絶縁のコーティングを施すことが考えられるが、その場合、大きな撓みで金属疲労が生じることによりプローブの耐久性が低下するという不利益や、プローブの製作コストが高くなるという不利益が生じる。
【0012】
プローブの撓みが抑えられるように、ユニバーサル治具においてプローブを案内する中間板(505〜509:図4)を増やすことも考えられるが、その場合、撓みによって減少していたプローブの接触圧が撓みを減らすことによって増大するので、特に小径のピンの場合、接触点で基板に傷を付け易くなるという不利益が生じる。また、中間板を追加することによって部品コストが上昇するという不利益も生じる。
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のプローブをそれぞれ一定以上の力で付勢する汎用的な構成を備えておりながら、プローブの撓みによる短絡を防止でき、かつ、プローブと検査対象の基板との接触圧が過度に大きくなることを防止できる配線検査治具と、これを用いた配線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点に係る配線検査治具は、導電性を有した複数の針状のプローブと、検査用の電気信号を供給するポートにそれぞれ接続され、前記複数のプローブの一端が前記基板の表面を押すように前記複数のプローブの他端をそれぞれ付勢する、導電性を有した複数の第1付勢部と、前記複数のプローブの前記一端を前記基板の表面に案内し、前記複数のプローブの前記他端を前記複数の第1付勢部に案内する案内部と、前記プローブの前記他端の替わりに前記第1付勢部と接触し、当該第1付勢部の付勢力を当該プローブの替わりに前記案内部へ伝える少なくとも1つの導電部と、前記導電部と前記プローブの前記他端との間に介在し、前記第1付勢部より弱い力で前記プローブの前記他端を付勢する、導電性を有した少なくとも1つの第2付勢部とを有する。前記複数のプローブは、前記第1付勢部によって付勢される少なくとも1つの第1プローブと、前記第1プローブより撓み易く、前記第2付勢部によって付勢される少なくとも1つの第2プローブとを含む。
【0015】
好適に、前記第2付勢部は、一方向に伸縮する弾性部材を含んでよい。前記導電部は、前記弾性部材を収容する空間が内部に形成されてよく、一方の端部に前記空間の開口部が形成されてよく、また、他方の端部において前記第1付勢部と接触ししてよい。前記第2プローブの前記他端は、前記導電部の前記開口部を通って前記弾性部材と接触してよい。
【0016】
好適に、前記案内部は、前記第1プローブ及び前記第2プローブの前記一端が貫通する複数の孔を備え、前記基板と対面して配置される第1板状部材と、前記第1プローブ及び前記第2プローブが貫通する複数の孔を備え、前記第2プローブが貫通する前記孔の周囲に前記導電部の前記開口部の縁部が当接する第2板状部材と、前記第1プローブの前記他端が貫通する少なくとも1つの孔、及び、前記導電部の前記他方の端部が貫通する少なくとも1つの孔を備えた第3板状部材とを含んでよい。
前記第1付勢部は、前記第3板状部材の前記孔を貫通した前記前記第1プローブの前記他端、又は、前記第3板状部材の前記孔を貫通した前記導電部の前記他方の端部を当該孔へ押し戻す方向に付勢してよい。
【0017】
好適に、上記配線検査治具は、長さが等しい複数の前記第2プローブを有してよく、前記第1板状部材と前記第2板状部材とが平行に配置されてよい。
前記第1板状部材及び前記第2板状部材において前記複数の前記第2プローブが挿通される複数の前記孔は、前記複数の第2プローブの少なくとも一部を前記第1板状部材及び前記第2板状部材に対して互いに異なる角度をなすように案内してよい。
前記第2板状部材は、任意の一の第2プローブを付勢する一の弾性部材が収容された一の導電部の前記開口部の縁部と当接する部分に凹部を有してよい。前記凹部は、前記第1板状部材の表面から前記基板に向かって突出する長さが全ての前記第2プローブにおいて等しい所定の長さとなるように、前記一の第2プローブが前記第1板状部材及び前記第2板状部材に対してなす前記角度に応じた深さで表面から凹んでよい。
【0018】
好適に、前記第3板状部材において前記導電部の前記他方の端部が挿通される前記孔は、当該導電部に収容される前記弾性部材の伸縮方向と、当該弾性部材に接触する前記第2プローブの長手方向とが一致するように当該導電部を案内してよい。
【0019】
本発明の第2の観点に係る配線検査装置は、上記第1の観点に係る配線検査治具と、前記複数の第1付勢部にそれぞれ供給される検査用の電気信号を発生する回路と、前記複数の第1付勢部のそれぞれから入力される電気信号を測定する回路とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数のプローブをそれぞれ一定以上の力で付勢する汎用的な構成を備えておりながら、比較的撓み易いプローブについては比較的弱い力で付勢することができるため、プローブの撓みによる短絡を防止でき、かつ、プローブと検査対象の基板との接触圧が過度に大きくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る基板配線検査装置の構成の一例を示す図である。
【図2】プローブ案内部と検査ヘッド部の構成の一例を示す図である。
【図3】図2における点線の枠内を拡大した図である。
【図4】検査ヘッド部にユニバーサル治具を装着した状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る基板配線検査装置の構成の一例を示す図である。
基板配線検査装置は、検査対象の基板10に接触する複数の針状のプローブ2と、プローブ案内部20と、検査ヘッド部30と、検査部40を有する。
【0023】
複数のプローブ2とプローブ案内部20と検査ヘッド部30は、検査対象の基板10に検査用の電気信号を供給するための信号経路を形成するブロックである。図1の例において、基板配線検査装置は、このブロック(複数のプローブ2、プローブ案内部20、検査ヘッド部30)を2系統備えており、2系統の信号経路によって基板10の両面(上側と下側)の検査を同時に行う。
【0024】
検査部40は、検査ヘッド部30の複数の第1付勢部311を介して複数のプローブ2に検査信号を供給する複数のポートを備える。検査部40は、任意のポートから検査用の電気信号を供給し、2つのプローブ2に生じる電圧や電流、プローブ2の抵抗、プローブ2と基準電位との間の静電容量などを測定する。
【0025】
例えば検査部40は、図1に示すように、信号発生回路41と、測定回路42と、スキャナ回路43と、制御装置44を有する。
信号発生回路41は、検査ヘッド部30の第1付勢部311にそれぞれ供給される検査用の電気信号を発生する。
測定回路42は、検査ヘッド部30の第1付勢部311からそれぞれ入力した電気信号を測定する。例えば、測定回路42は、2つの第1付勢部311に接続された2つのポートの電圧値や電流値、交流信号の振幅等を測定する。
スキャナ回路43は、信号発生回路41及び測定回路42につながる信号ラインと、検査ヘッド部30の複数の第1付勢部311につながる複数のポートとの接続を切り替える。
制御装置44は、検査部40の上述した各回路の動作を制御する装置であり、例えばコンピュータを含んで構成される。
【0026】
図2は、プローブ案内部20と検査ヘッド部30の構成の一例を示す図であり、検査対象の基板10が装着される平面(基板装着面)に対して垂直な断面を表す。
プローブ案内部20は、検査対象の基板10に応じて専用に製作される治具であり、異なる基板の検査を行う場合には別の専用のプローブ案内部20が使用される。他方、検査ヘッド部30は、種々の基板の検査において共通に使用可能な汎用の治具である。
【0027】
プローブ案内部20は、複数のプローブ2(2A,2B)の一端を基板10の表面に案内し、複数のプローブ2の他端を検査ヘッド部30の後述する第1付勢部311に案内する。
【0028】
プローブ案内部20の上側の面(基板10が装着される面)において突き出したプローブ2の尖端は、基板10の表面に形成された配線と接触する。図2の例では、尖端の太さが異なる2種類のプローブ2A,2Bが示されている。比較的細いプローブ2Aは、ピッチの細かい微小な配線に使用され、比較的太いプローブ2Bは、プローブ2Aに比べて面積の広い配線に使用される。
【0029】
プローブ案内部20の下側の面(検査ヘッド部30に装着される面)において突き出したプローブ2の尖端は、検査ヘッド部30に保持された第1付勢部311と接触する。
【0030】
また、プローブ案内部20は、図2に示すように、一部のプローブ2を基板装着面に対して斜めに傾けて案内している。これは、基板10の微細でピッチが狭い配線領域において密集したプローブ同士の間隔が検査ヘッド部30の第1付勢部311に向かって広がるようにするためである。
【0031】
プローブ案内部20は、例えば図2に示すように、各プローブ2を案内する貫通孔(H11〜H19)がそれぞれ形成された複数枚の板状部材(211〜219)を有する。板状部材211が基板10と最も近い側に配置され、板状部材211から検査ヘッド部30に向かって順に板状部材212,213,214,215,216,217,218,219が配置されている。板状部材(211〜219)は、少なくとも貫通孔(H11〜H19)において絶縁性を有しており、プローブ2同士の短絡を防止する。
なお、板状部材211は、本発明における第1板状部材の一例である。
板状部材217は、本発明における第2板状部材の一例である。
板状部材219は、本発明における第3板状部材の一例である。
【0032】
板状部材211,212,213,214,215,216,217,218,219には、プローブ2をそれぞれ1本ずつ通す貫通孔H11,H12,H13,H14,H15,H16,H17,H18,H19が形成される。各プローブ2は、9枚の板状部材(212〜219)の所定位置に形成された9つの貫通孔(H11〜H19)によって案内されることにより、プローブ案内部20の両面の所定位置に尖端が突き出す。
【0033】
板状部材211と212は直接重ねて固定される。板状部材212と213の間には支柱221、板状部材213と214の間には支柱222、板状部材214と215の間には支柱223、板状部材215と216の間には支柱224、板状部材216と217の間には支柱225、板状部材217と218の間には支柱226、板状部材218と219の間には支柱227がそれぞれ設けられており、各板状部材がこれらの支柱により間隙を隔てて固定される。
【0034】
図2の例において、板状部材216と217の間には、伸縮性のあるシート部材220(例えばゴムシート)が介挿されており、これを各プローブ2が突き通っている。プローブ案内部20に各プローブ2を取り付ける際には、例えば上側の貫通孔H11から貫通孔H12,H13,H14…の順にプローブ2を挿入し、その途中でシート部材220にプローブ2を突き通す。これにより、個々のプローブ2がシート部材220に固定された状態となり、貫通孔(H11〜H19)から容易に抜け落ちなくなるため、プローブ2がプローブ案内部20から外れて落下することを防止できる。例えば図2の上下を逆さまにしてプローブ案内部20を使用しても、プローブ2が下に落ちることはない。
【0035】
検査ヘッド部30は、複数のプローブ2の一端が基板10の表面を押すように複数のプローブ2の他端をそれぞれ付勢する複数の第1付勢部311を保持する。検査ヘッド部30は、種々の基板の検査で使用できるように、通常の検査において使用されるよりも余裕を持たせた多数の第1付勢部311を保持する。そのため、図2に示すように、多数の第1付勢部311の中にはプローブ2の付勢に使用されないものが存在する。
【0036】
第1付勢部311は、導電性の材料で形成された弾性部材であり、例えば図2に示すように棒状の金属製のバネを用いて構成される。図2の例において、第1付勢部311のバネの先端には、プローブ2(若しくは後述の第2付勢部230)と接触する電極が固定される。電極の表面には、例えば、断面山形の突起が複数形成される。第1付勢部311は、それぞれ図示しない配線によって検査部40の検査用のポートに接続される。
【0037】
図2に示す検査ヘッド部30は、第1付勢部311を収容する複数の孔が一定間隔で均一に形成された2枚の板状部材301,302を有する。板状部材301,302は、面を重ねるように配置されており、両者の間には複数のバネ312が設けられている。板状部材301の上側の面にプローブ案内部20を押し付けると、バネ312の反発力によってプローブ案内部20が押し返されるため、プローブ案内部20と板状部材301とが適度な接触圧で密着する。
【0038】
この検査ヘッド部30は、上述したように種々の基板の検査において汎用的に使用されることから、各々の第1付勢部311がどの種類のプローブを付勢するかは決まっていない。従って、各々の第1付勢部311は、最も太いプローブ2を付勢する場合でも尖端部において適切な接触圧が得られるように、全てが一定以上の付勢力(バネ圧)を有している。そのため、もし図2におけるプローブ2Aのように径の細いプローブが第1付勢部311によってそのまま付勢されると、プローブ2Aに大きな撓みが生じてしまい、これが隣接する別のプローブと短絡する可能性がある。
そこで、本実施形態に係る基板配線検査装置は、図2において示すように、比較的径が細く撓み易いプローブ2Aと第1付勢部311との間に、プローブ2Aの付勢力を小さくする中間導電部材230を設けている。
【0039】
図3は、図2における点線枠Aの枠内の部分を拡大して示した図である。
中間導電部材230は、例えば図3に示すように、導電部231と第2付勢部232を含む。
導電部231は、径の細いプローブ2Aの替わりに第1付勢部311と接触し、この第1付勢部311の付勢力をプローブ2Aの替わりにプローブ案内部20へ伝える。
第2付勢部232は、導電部231とプローブ2Aとの間に介在し、第1付勢部311より弱い力でプローブ2Aを付勢する。
【0040】
第2付勢部232は、一方向に伸縮する導電性を有した弾性部材であり、例えば図3に示すように棒状の金属製のバネを用いて構成される。
導電部231の内部には、第2付勢部232のバネを収容するための筒状の空間が形成される。導電部231の一方の端部には、上記のバネ収容空間の開口部が形成され、他方の端部には、バネ収容空間を塞ぐ棒状の導体が長手方向に延びて固定される。この棒状導体の尖端が、第1付勢部311のバネに当接する。
【0041】
第2付勢部232のバネの一端は、プローブ2の尖端が適切に受け止められるように加工される。図3の例では、バネの尖端近くに細く巻かれた小径の部分があり、小径部分から尖端に向かって巻き径が徐々に広がっている。このお椀状の尖端部にプローブ2の尖端が当たると、第2付勢部232のバネはプローブ2を基板10に向かって押し返す方向に付勢する。
【0042】
導電部231の一方の端部に形成された開口部の縁は、板状部材217の貫通孔H17の周囲に当接する。貫通部H17が導電部231の開口部の縁によって囲まれているため、貫通孔H17を貫通したプローブ2Aの尖端は、導電部231の開口部を通って第2付勢部232のバネと確実に接触する。導電部231は、第2付勢部232のバネに接触するこのプローブ2Aの替わりに、板状部材218,219の貫通孔H18,H19を貫通する。板状部材219の貫通孔H19を貫通した導電部231の一端(棒状導体の尖端)は、第1付勢部311のバネと接触する。
【0043】
第1付勢部311のバネは、貫通孔H19を貫通して接触するプローブ2Bの尖端や導電部231の一端(棒状導体の尖端)を、貫通孔H19へ押し戻す方向に付勢する。第1付勢部311から付勢力を受けると、プローブ2Bは、貫通孔H11〜H19を貫通して基板10に到達しているため基板10を押すが、導電部231は、貫通孔H17を貫通せずに板状部材217と当接しているため、板状部材217を押す。すなわち、導電部231は、第1付勢部311のバネから受けた付勢力を基板10へ伝えず、替わりに板状部材217へ伝える。これにより、導電部231は、プローブ案内部20と固定された状態になる。プローブ2Aは、プローブ案内部20と固定された状態の導電部231に収容される第2付勢部232により、第1付勢部311に比べて弱い力で付勢される。
【0044】
なお、導電部231を介して複数の第1付勢部311からの付勢力を受ける板状部材217は、付勢力に抗する相応の強度を有するように、例えば図2,図3において示すように他の板状部材に比べて厚めに形成される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る基板配線検査装置は、プローブ2を検査対象の基板10に向かって一定以上の力で付勢する複数の第1付勢部311を保持した汎用の検査ヘッド部30と、複数のプローブ2の尖端を基板10の表面に案内する専用のプローブ案内部20を備えており、撓みが生じ易いプローブ2(2A)と第1付勢部311との間には、第1付勢部311の強い付勢力をプローブ案内部20へ伝えつつプローブ2(2A)を第1付勢部311より弱い付勢力で付勢する中間導電部材230を備えている。
従って、様々な基板の検査に使用できる汎用的な検査ヘッド部30を備えておりながら、複数のプローブ2の中で撓み易いプローブ2(2A)については、汎用の第1付勢部311よりも弱い力で付勢することができる。そのため、撓み易さが異なる複数種類のプローブを使用する場合でも、プローブの撓みによる信号経路の短絡を効果的に防止することができる。また、プローブの撓みによる短絡を防止するため、絶縁コートを施したプローブを使用したり、プローブ案内用の板状部材の数を増やしたりする場合に比べて、全体のコストを抑えることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る基板配線検査装置によれば、各々のプローブに対してその種類に応じた適切な付勢力を与えることができるため、特に径の細いプローブに過度の付勢力を与えて基板の配線パッドに深い傷を付けてしまうことを防止できる。
【0047】
また、本実施形態に係る基板配線検査装置によれば、検査ヘッド部30に装着されるプローブ案内部20の下側の面に強度の弱いプローブ2(2A)が突出しておらず、その替わりに、プローブ2(2A)より太くて強度の高い導電部231が突出している。そのため、プローブ案内部20を検査ヘッド部30へ装着する際、強度の弱いプローブ2(2A)が曲がったり折れたりしてしまうことを防止できる。
【0048】
また、本実施形態に係る基板配線検査装置によれば、径の細いプローブ2(2A)の替わりに比較的径の太い導電部231が第1付勢部311のバネと接触する。プローブ2(2A)の径が非常に細い場合、プローブ案内部20と検査ヘッド部30との位置関係の微小なずれや、プローブ2(2A)の微小な曲がり具合によって、第1付勢部311のバネとその収容孔との隙間(クリアランス)にプローブ2(2A)の尖端が挟まってしまうことがあるが、導電部231の尖端はこの隙間より十分大きい適度な太さにすることができるため、そのような問題の発生を有効に防止できる。
【0049】
次に、本実施形態に係る基板配線検査装置の他の特徴について説明する。
【0050】
(1)凹部240
図2,図3において示すように、基板10付近で密集するプローブ2の間隔が検査ヘッド部30に向かって広がるようにするため、プローブ案内部20は、少なくとも一部のプローブ2を基板10に対して異なる角度に傾けて案内する。言い換えると、基板10に対して平行に配置された板状部材211〜219の貫通孔H11〜H19は、少なくとも一部のプローブ2を板状部材211〜219に対して互いに異なる角度をなすように案内する。
【0051】
一方、検査に使用されるプローブ2の長さは、少なくとも同じ種類のものについては、同じであることが望ましい。異なる長さのプローブ2を使用すると、プローブ2のコストが高くなるという問題や、プローブ案内部20へのプローブ2の取り付け作業が煩雑になるという問題が生じるからである。
【0052】
ところが、同一の長さのプローブ2を基板10に対して異なる角度で傾けると、その傾斜角度に応じて、プローブ案内部20の基板装着面に突出するプローブ2の長さが異なってしまう。すなわち、基板の垂直方向に対する傾斜角度が大きいほど、プローブ2の尖端の突出長が短くなる。基板10に接触するプローブ2の尖端の突出長が不揃いになると、基板10の表面におけるプローブ2の接触圧が不均一になり、一部のプローブにおいて基板表面の傷が大きくなるという問題や、十分な接触圧が得られなくなるといった問題が生じる。
【0053】
そこで、本実施形態に係る基板配線検査装置では、中間導電部材230によって付勢される全てのプローブ2(2A)が板状部材211の表面から基板10に向かってほぼ同一の長さで突出するように、中間導電部材230の導電部231と板状部材217とが当接する部分に、板状部材217の表面から凹んだ凹部240(図3)を形成する。凹部240の表面からの深さは、この凹部240に当接する導電部231に収容された第2付勢部232のバネによって付勢されるプローブ2(2A)と、基板10に平行な板状部材211〜219とのなす傾斜角度に応じて設定される。すなわち、基板の垂直方向に対するプローブ2(2A)の傾斜角度が大きくなるほど、板状部材217の表面に対して凹部240が深くなるように設定される。
【0054】
このように、本実施形態に係る基板配線検査装置によれば、中間導電部材230によって付勢される同一長の全てのプローブ2(2A)がプローブ案内部20の基板装着面に等しい長さで突出するため、プローブ2(2A)が種々の角度で基板10に対して傾いている場合でも、基板10の表面におけるプローブ2(2A)の接触圧を均一にすることができる。
【0055】
(2)第2付勢部232のバネ(弾性部材)の伸縮方向
図2,図3に示す基板配線検査装置では、第2付勢部232のバネ(弾性部材)の伸縮方向と、このバネに接触するプローブ2(2A)の長手方向とが一致するように、このバネを収容する導電部231が板状部材218,219の孔H18,H19によって案内されている。これにより、各プローブ2(2A)を付勢する第2付勢部232のバネの力が同じであれば、基板10に対する各プローブ2(2A)の傾斜角度が様々に異なっていても第2付勢部232のバネによるプローブ2(2A)の付勢力がほぼ等しくなり、基板10の表面におけるプローブ2(2A)の接触圧を均一にすることができる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0057】
上述した実施形態では径が異なる2種類のプローブを使用する例が挙げられているが、本発明の他の実施径形態では、3種類以上のプローブを使用してもよい。
【0058】
また、導電部231に収容される第2付勢部232には、付勢するプローブの種類に応じた適切な付勢力を持つものを使用してよい。従って、中間導電部材230によって付勢力を弱める必要のあるプローブが複数種類ある場合には、その種類に応じて付勢力が異なった第2付勢部232を用いてもよい。
【0059】
図2に示すプローブ案内部20,検査ヘッド部30の構成(板状部材の枚数、シート状部材有無や挿入する位置、導電部の数や形状など)は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0060】
2,2A,2B…プローブ、10…検査対象の基板、20…プローブ案内部、30…検査ヘッド部、40…検査部、41…信号発生回路、42…測定回路、43…スキャナ回路、44…制御装置、211〜219,301,302…板状部材、220…シート部材、221〜227…支柱、230…中間導電部材、231…導電部、232…第2付勢部、240…凹部、311…第1付勢部、H11〜H19…貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有した複数の針状のプローブと、
検査用の電気信号を供給するポートにそれぞれ接続され、前記複数のプローブの一端が前記基板の表面を押すように前記複数のプローブの他端をそれぞれ付勢する、導電性を有した複数の第1付勢部と、
前記複数のプローブの前記一端を前記基板の表面に案内し、前記複数のプローブの前記他端を前記複数の第1付勢部に案内する案内部と、
前記プローブの前記他端の替わりに前記第1付勢部と接触し、当該第1付勢部の付勢力を当該プローブの替わりに前記案内部へ伝える少なくとも1つの導電部と、
前記導電部と前記プローブの前記他端との間に介在し、前記第1付勢部より弱い力で前記プローブの前記他端を付勢する、導電性を有した少なくとも1つの第2付勢部と、
を有し、
前記複数のプローブは、
前記第1付勢部によって付勢される少なくとも1つの第1プローブと、
前記第1プローブより撓み易く、前記第2付勢部によって付勢される少なくとも1つの第2プローブと、
を含む、
配線検査治具。
【請求項2】
前記第2付勢部は、一方向に伸縮する弾性部材を含み、
前記導電部は、前記弾性部材を収容する空間が内部に形成され、一方の端部に前記空間の開口部が形成され、他方の端部において前記第1付勢部と接触し、
前記第2プローブの前記他端が前記導電部の前記開口部を通って前記弾性部材と接触する、
請求項1に記載の配線検査治具。
【請求項3】
前記案内部は、
前記第1プローブ及び前記第2プローブの前記一端が貫通する複数の孔を備え、前記基板と対面して配置される第1板状部材と、
前記第1プローブ及び前記第2プローブが貫通する複数の孔を備え、前記第2プローブが貫通する前記孔の周囲に前記導電部の前記開口部の縁部が当接する第2板状部材と、
前記第1プローブの前記他端が貫通する少なくとも1つの孔、及び、前記導電部の前記他方の端部が貫通する少なくとも1つの孔を備えた第3板状部材と、
を含み、
前記第1付勢部は、前記第3板状部材の前記孔を貫通した前記前記第1プローブの前記他端、又は、前記第3板状部材の前記孔を貫通した前記導電部の前記他方の端部を当該孔へ押し戻す方向に付勢する、
請求項2に記載の配線検査治具。
【請求項4】
長さが等しい複数の前記第2プローブを有し、
前記第1板状部材と前記第2板状部材とが平行に配置されており、
前記第1板状部材及び前記第2板状部材において前記複数の前記第2プローブが挿通される複数の前記孔は、前記複数の第2プローブの少なくとも一部を前記第1板状部材及び前記第2板状部材に対して互いに異なる角度をなすように案内し、
前記第2板状部材は、前記第1板状部材の表面から前記基板に向かって突出する長さが全ての前記第2プローブにおいて等しい所定の長さとなるように、任意の一の第2プローブを付勢する一の弾性部材が収容された一の導電部の前記開口部の縁部と当接する部分に、前記一の第2プローブが前記第1板状部材及び前記第2板状部材に対してなす前記角度に応じた深さで表面から凹んだ凹部を有する、
請求項3に記載の配線検査治具。
【請求項5】
前記第3板状部材において前記導電部の前記他方の端部が挿通される前記孔は、当該導電部に収容される前記弾性部材の伸縮方向と、当該弾性部材に接触する前記第2プローブの長手方向とが一致するように当該導電部を案内する、
請求項4に記載の配線検査治具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の配線検査治具と、
前記複数の第1付勢部にそれぞれ供給される検査用の電気信号を発生する回路と、
前記複数の第1付勢部のそれぞれから入力される電気信号を測定する回路と、
を備える配線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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