説明

配線検査治具

【課題】比較的簡易な構成でありながら、基板の配線に対してプローブを正確に接触させることができる配線検査治具を提供する。
【解決手段】押圧部80において基板位置決め板60の縁部を押圧しつつ、当接部90において基板位置決め板60の縁部における調整用雄ネジ91の当接位置を変位させることによって、プリント基板10の位置決め用のガイドピン61が固定された基板位置決め板60をプリント基板10の配線形成面と平行な方向に変位させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に形成された配線の検査に用いられる配線検査治具に係り、特に、基板の電極にプローブを接触させて配線の導通や短絡、絶縁等の電気的検査を行うために用いられる配線検査治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品を実装する前のプリント基板(ベアボード)の配線に生じた断線や短絡等の欠陥を検査する基板配線検査装置が知られている(下記特許文献1を参照)。基板配線検査装置は、基板の配線上のパッドにプローブを接触させて電気信号を供給し、パッド間の電気抵抗や静電容量を測定することにより配線の不良を検査する。
【0003】
プリント基板(ベアボード)を基板配線検査装置に接続して導通、短絡、絶縁等の電気的検査を行う場合、通常は、プリント基板の配線パターンに合わせて作成された専用の治具が用いられる。この治具は、プリント基板上の配線パターンに合わせて配列された複数のプローブを保持したものであり、各プローブはケーブル線や中間基板などを介して基板配線検査装置のスキャナ(入力切替器)と電気的に接続される。治具の各プローブをプリント基板の配線に接触させることで、プリント基板の配線が基板検査システムに接続される。
【0004】
上述した治具を用いて検査を行う方法では、プリント基板の配線に対して治具のプローブを正確に接触させる必要がある。通常、治具に対するプリント基板の位置合わせは、治具に立てられたガイドピンをプリント基板のガイド孔に挿入することによって行われている。更に微小な位置合わせが必要な場合は、プリント基板に予め付けられた複数の位置決めマークをカメラによって撮像し、その撮像画像に基づいてプリント基板の位置をアクチュエータにより微調整する方法などが用いられる(下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−058973号公報
【特許文献2】特開平01−184473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようにカメラを使ってアクチュエータにより微調整する方法は、構成が複雑になるためコスト高いという問題がある。また、プリント基板の製造上のばらつきによって比較的大きなズレを生じると、上述のような微調整では対応できない場合がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡易な構成でありながら、基板の配線に対してプローブを正確に接触させることができる配線検査治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る配線検査治具は、検査対象の基板の配線と電気的に接触する複数のプローブを保持した治具本体と、前記基板を位置決めする位置決め手段が固定された基板位置決め板と、前記基板位置決め板を前記治具本体に固定する固定手段と、前記固定手段によって前記基板位置決め板を治具本体に固定する前に、前記治具本体に対する前記基板位置決め板の相対的な位置を調整する位置調整手段とを有する。前記位置調整手段は、前記治具本体に固定され、前記位置決め手段によって位置決めされた前記基板の配線形成面と平行な方向へ前記基板位置決め板の縁部の少なくとも1箇所を押圧する押圧手段と、前記治具本体に固定され、前記基板位置決め板の前記縁部の少なくとも1箇所に当接して前記押圧手段の押圧力を受け止めるとともに、前記当接位置を前記配線形成面と平行な方向に変位させることが可能な当接手段とを含む。
【0009】
好適に、前記位置決め手段は、前記基板に形成された複数の孔に嵌合する複数のピンを含む。
【0010】
好適に、前記治具本体は、一方の面に前記基板が載置され、他方の面に前記基板位置決め板が当接し、前記複数のピンを通す複数のピン貫通孔を有する基板載置板を含み、前記固定手段は、前記基板位置決め板を前記基板載置板に押し付けて固定する。
【0011】
好適に、前記固定手段は、固定用雄ネジと、前記固定用雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、前記基板位置決め板を間に挟んで前記基板載置板と対面する位置に配置された固定用雌ネジ形成部材とを含む。この場合、前記基板載置板及び前記基板位置決め板は、前記固定用雄ネジを貫通するネジ貫通孔をそれぞれ有してよい。また、前記固定用雄ネジは、前記基板載置板の前記ネジ貫通孔に比べて大径の頭部を有してよい。
【0012】
好適に、上記配線検査治具は、前記固定用雄ネジの回転に応じた前記固定用雌ネジ形成部材の移動を案内するとともに、前記固定用雄ネジの回転に応じた前記固定用雌ネジ形成部材の回転を規制する回転規制手段を有する。
【0013】
好適に、前記回転規制手段は、前記治具本体に固定され、前記固定用雄ネジの回転に応じた前記固定用雌ネジ形成部の移動方向と平行に延びる少なくとも1つの案内棒を含む。この場合、前記板状部材は、前記案内棒を貫通する案内棒貫通孔、或いは、前記固定用雌ネジ形成部の縁に設けられた凹部若しくは凸部と嵌合する嵌合部を有してよい。
【0014】
好適に、前記当接手段は、調整用雄ネジと、前記調整用雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、前記治具本体に固定される調整用雌ネジ形成部材とを含み、前記調整用雄ネジを前記調整用雌ネジ形成部材に対して回転させると、前記調整用雄ネジが前記基板の配線形成面と平行な方向へ変位し、前記調整用雄ネジの一端部が前記基板位置決め板の前記縁部と当接する。
【0015】
好適に、上記配線検査治具は、前記治具本体に固定され、前記基板の配線に光線を照射する光線照射手段と、前記治具本体に固定され、前記光線照射手段により照射された前記光線が前記基板の配線において反射した光を受光する光受光手段と、前記光受光手段において受光された光の強度を検出する光検出手段とを有する。
【0016】
本発明の第2の観点に係る配線検査装置は、本発明の第1の観点に係る上記配線検査治具と、上記配線検査治具において保持された複数のプローブにそれぞれ供給される検査用の電気信号を発生する回路と、前記複数のプローブのそれぞれから入力される電気信号を測定する回路とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比較的簡易な構成でありながら、基板の配線に対してプローブを正確に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る基板配線検査装置の構成の一例を示す図である。
【図2】プリント基板が載置される面に対して垂直な方向からみた配線検査治具の一例を示す図である。
【図3】図2のA−A'線における断面を示す図である。
【図4】図2のB−B'線における断面を示す図である。
【図5】配線検査治具の内側に位置する基板位置決め板を図2と同じ方向からみた図である。
【図6】基板位置決め板の適切な調整位置を把握するための構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る基板配線検査装置の構成の一例を示す図である。
基板配線検査装置は、検査対象の基板10に接触する複数の針状のプローブ2と、プローブ2を保持する配線検査治具20と、配線検査治具20で保持された複数のプローブ2と接触する複数のバネ付き電極304を備えた検査ヘッド部30と、検査部40を有する。
【0020】
複数のプローブ2と配線検査治具20と検査ヘッド部30は、検査対象の基板10に検査用の電気信号を供給するための信号経路を形成するブロックである。図1の例において、基板配線検査装置は、このブロック(複数のプローブ2、配線検査治具20、検査ヘッド部30)を2系統備えている。基板配線検査装置は、上下の2系統の信号経路によって基板10の両面の検査を同時に行う。
【0021】
検査部40は、検査ヘッド部30のバネ付き電極304(図3,図4)を介して複数のプローブ2に検査信号を供給する複数のポートを備える。検査部40は、任意のポートから検査用の電気信号を供給し、2つのプローブ2に生じる電圧や電流、プローブ2の抵抗、プローブ2と基準電位との間の静電容量などを測定する。
【0022】
例えば検査部40は、図1に示すように、信号発生回路41と、測定回路42と、スキャナ回路43と、制御装置44を有する。
信号発生回路41は、検査ヘッド部30の複数のバネ付き電極304にそれぞれ供給される検査用の電気信号を発生する。
測定回路42は、検査ヘッド部30の各バネ付き電極304において入力される電気信号を測定する。例えば、測定回路42は、2つのバネ付き電極304に接続された2つのポートの電圧値や電流値、交流信号の振幅等を測定する。
スキャナ回路43は、信号発生回路41及び測定回路42につながる信号ラインと、検査ヘッド部30の複数のバネ付き電極304につながる複数のポートとの接続を切り替える。
制御装置44は、検査部40の上述した各回路の動作を制御する装置であり、例えばコンピュータを含んで構成される。
【0023】
図2〜図5は、本実施形態に係る配線検査治具20の一例を示す図である。
図2は、プリント基板10が載置される面に対して垂直な方向からみた配線検査治具20の一例を示す図である。
図3,図4は、プリント基板10が載置される面に対して平行な方向からみた配線検査治具20の一例を示す図である。図3は図2のA−A'線における断面図であり、図4はB−B'線における断面図である。
図5は、プリント基板10の位置決め用のガイドピン61が固定された板状部材(基板位置決め板60)の位置を調整するための構成要素(押圧部80,当接部90)を図解した図であり、配線検査治具20の内側に位置する基板位置決め板60を図2と同じ方向からみた図である。
【0024】
配線検査治具20は、検査ヘッド部30と検査対象物のプリント基板10との間に介在し、プリント基板10の配線パターンに合わせて配列された複数の針状のプローブ2を保持する。例えば配線検査治具20は、図3に示すように、配線の幅や種類などに応じた様々な太さのプローブ2(2A,2B)を保持する。各プローブ2は、一方の端部が検査ヘッド部30のバネ付き電極304を介して検査部40に接続され、他方の端部がプリント基板10の配線に接触する。
【0025】
検査ヘッド部30は、配線検査治具20に保持された複数のプローブ2をそれぞれ基板10に向かって付勢する複数のバネ付き電極304を保持する。検査ヘッド部30は、種々の基板の検査で使用できるように、通常の検査において使用されるよりも余裕を持たせた多数のバネ付き電極304を保持する。バネ付き電極304は、例えば図3に示すように棒状の金属製のバネを用いて構成される。バネ付き電極304の先端には、プローブ2と接触する電極が固定される。バネ付き電極304は、それぞれ図示しない配線によって検査部40の検査用のポートに接続される。
【0026】
検査ヘッド部30は、バネ付き電極304を収容する複数の孔が一定間隔で均一に形成された2枚の板状部材301,302を有する。板状部材301,302は、面を重ねるように配置されており、両者の間には複数のバネ303が設けられている。板状部材301の上側の面に配線検査治具20を押し付けると、バネ303の反発力によって配線検査治具20が押し返されるため、配線検査治具20と板状部材301とが適度な接触圧で密着する。
【0027】
配線検査治具20は、それぞれの面が向かい合うように平行に配置された複数の板状部材(201〜207)と、これらを支える複数の支柱210を有する。プリント基板10が板状部材201の外側の面に載置され、板状部材207の外側の面が検査ヘッド部30に装着される。板状部材201と板状部材207の間には、板状部材202〜206が配置される。
板状部材(201〜207)と支柱210を含むブロックは、本発明における治具本体の一例である。
板状部材201は、本発明における基板載置板の一例である。
以下、板状部材201を「基板載置板201」と記す場合がある。
【0028】
図3,図4の例において、基板載置板201は、2枚の板状部材21A,21Bを貼り合わせて形成される。プリント基板10が載置される側の板状部材21Aには、この載置面より外側にネジの頭部が突出しないようにするための座グリが形成される。
【0029】
支柱210は、板状部材202〜206を貫通し、ネジ等で両端の板状部材201,207に固定される。図2における基板載置板201の四隅のネジ29は、支柱210と基板載置板201とを固定するためのものである。板状部材201〜207の各隙間には図示しないスペーサが挿入され、これにより隙間の間隔が固定される。
【0030】
板状部材201〜207は、プローブ2を挿通させるための孔をそれぞれ備える。プローブ2がこれらの孔を貫通することによって、図3に示すように、プローブ2の一端とプリント基板10の配線との接触位置、並びに、プローブ2の他端と検査ヘッド部30のバネ付き電極304との接触位置が固定される。また、配線検査治具20の中間部分におけるプローブ2の位置が固定されるため、プローブ2同士の接触が防止される。
【0031】
配線検査治具20は、プリント基板10の位置決めに用いる複数のガイドピン61(図2の例では4本)が固定された板状部材60を有する。
板状部材60は、本発明における基板位置決め板の一例である。
ガイドピン61は、本発明の位置決め手段に含まれる複数のピンの一例である。
以下、板状部材60を「基板位置決め板60」と記す場合がある。
【0032】
プリント基板10を基板載置板201に載置する場合、図2〜4に示すように、プリント基板10の位置決め用の孔にガイドピン61を嵌合させる。これにより、板状部材(201〜207)に保持されたプローブ2とプリント基板10との相対的な位置関係が定まる。
【0033】
基板位置決め板60は、図3,図4に示すように、基板載置板201の内側の面(プリント基板10が載置される面と反対の面)と当接する位置に配置される。基板位置決め板60に固定された各ガイドピン61は、基板載置板201に形成されたピン貫通孔を通って、基板載置板201の外側の面(プリント基板10が載置される面)に突き出る。後述する位置調整手段によって基板位置決め板60の位置がプリント基板10の配線形成面と平行な方向に変位しても、ガイドピン61とそのピン貫通孔とが当たらないようにするため、ピン貫通孔はガイドピン61に比べて十分大きな径で形成される。
【0034】
配線検査治具20は、この基板位置決め板60を基板載置板201の内側の面に押し付けて固定するための構成要素として、固定用雄ネジ71と固定用雌ネジ形成部材70を有する。
固定用雄ネジ71及び固定用雌ネジ形成部材70を含むブロックは、本発明における固定手段の一例である。
固定用雄ネジ71は、本発明における固定用雄ネジの一例である。
固定用雌ネジ形成部材70は、本発明における固定用雌ネジ形成部材の一例である。
【0035】
固定用雌ネジ形成部材70は、図3,図4において示すように、基板位置決め板60を間に挟んで基板載置板201と対面する位置に配置される。すなわち、基板位置決め板60が固定用雌ネジ形成部材70と基板載置板201との間に挟まれる。固定用雌ネジ形成部材70の中央部には、固定用雄ネジ71と螺合する雌ネジが形成される。基板載置板201と基板位置決め板60には、固定用雄ネジ71を貫通させるためのネジ貫通孔がそれぞれ形成される。固定用雄ネジ71の先端は、基板載置板201の外側の面からネジ貫通孔を通って基板位置決め板60に到達し、固定用雌ネジ形成部材70の雌ネジと螺合する。固定用雄ネジ71の頭部は基板載置板201のネジ貫通孔にくらべて径が大きいため、ネジ貫通孔を通らず、基板載置板201の外側の面に留まる。固定用雄ネジ71を回転させて固定用雌ネジ形成部材70の雌ネジに進入させていくと、固定用雌ネジ形成部材70と基板載置板201との間隔が狭まっていき、基板位置決め板60は基板載置板201と固定用雌ネジ形成部材70の間に挟まれて固定される。
【0036】
後述する位置調整手段によって基板位置決め板60の位置がプリント基板10の配線形成面と平行な方向に変位しても、固定用雄ネジ71とこれを貫通する基板位置決め板60のネジ貫通孔とが当たらないようするため、基板位置決め板60のネジ貫通孔は固定用雄ネジ71に比べて十分大きな径で形成される。
【0037】
固定用雄ネジ71を締めて基板位置決め板60を固定する場合、固定用雄ネジ71の回転に応じて固定用雌ネジ形成部材70にも回転力が伝わる。固定用雌ネジ形成部材70が回転すると、これに当接する基板位置決め板60にも回転力が伝わってしまい、基板位置決め板60がもとの位置からずれてしまう。配線検査治具20は、このような固定用雌ネジ形成部材70の回転を規制する構成要素として、図4に示すように、複数(図の例では1つの固定用雌ネジ形成部材70に対して2本)の案内棒101を有する。
案内棒101は、本発明における案内棒の一例である。
【0038】
案内棒101は、一方の端がネジ102によって基板載置板201に固定され、他方の端が不図示のネジによって板状部材207に固定される。案内棒101は、固定用雄ネジ71の回転に応じた固定用雌ネジ形成部材70の移動方向、すなわち、板状部材201〜207の面と垂直な方向に延びて配置される。固定用雌ネジ形成部材70は、固定用雄ネジ71を通すネジ貫通孔の両側に、この案内棒101を貫通するための孔(案内棒貫通孔)を備える。2本の案内棒101が固定用雌ネジ形成部材70の案内棒貫通孔を通っているため、固定用雌ネジ形成部材70は図3の縦方向(固定用雄ネジ71の回転に応じた固定用雌ネジ形成部材70の移動方向)には動くが、固定用雄ネジ71ととも回転することはない。すなわち、固定用雄ネジ71を回転させて雌ネジに進入させる際、その回転力が固定用雌ネジ形成部材70にも伝わるが、治具本体に固定された案内棒101が固定用雌ネジ形成部材70の案内棒貫通孔を通っているため、固定用雌ネジ形成部材70の回転が規制される。固定用雌ネジ形成部材70が回転しないので、基板位置決め板60の位置ずれが防止される。
【0039】
なお、後述する位置調整手段によって基板位置決め板60の位置がプリント基板10の配線形成面と平行な方向に変位しても、案内棒101とこれを貫通する基板位置決め板60の貫通孔とが当たらないようするため、基板位置決め板60に形成される案内棒101の貫通孔は案内棒101に比べて十分大きな径で形成される。
【0040】
また、配線検査治具20は、図2〜図5の例において、基板位置決め板60を治具本体に固定する手段としての固定用雄ネジ71及び固定用雌ネジ形成部材70を2組備えており、それぞれの固定用雌ネジ形成部材70について回転規制手段としての案内棒101を備えている。
【0041】
次に、基板位置決め板60の位置を調整する手段について説明する。
本実施形態に係る配線検査治具20は、上述した固定手段(固定用雄ネジ71,固定用雌ネジ形成部材70)によって基板位置決め板60を治具本体(板状部材201〜207等)に固定する前に、治具本体に対する基板位置決め板60の相対的な位置を調整するための構成要素として、押圧部80と当接部90を有する。
押圧部80は、本発明における押圧手段の一例である。
当接部90は、本発明における当接手段の一例である。
【0042】
図5の例において、配線検査治具20は、基板位置決め板60の縁に沿って配置された3つの押圧部80と3つの当接部90を有する。
長方形状の基板位置決め板60における2つの長辺のうち、一方の長辺の両隅において2つの押圧部80が基板位置決め板60の縁を押圧し、他方の長辺の両隅において2つの当接部90が基板位置決め板60の縁に当接する。
また、長方形状の基板位置決め板60における2つの短辺のうち、一方の短辺の中央部において1つの押圧部80が基板位置決め板60の縁を押圧し、他方の短辺の中央部において1つの当接部90が基板位置決め板60の縁に当接する。
【0043】
押圧部80は、ガイドピン61により位置決めされたプリント基板10の配線形成面と平行な方向(図3,図4における水平方向)へ、基板位置決め板60の縁部を押圧する。押圧部80は、例えば図3〜図5に示すように、基板位置決め板60の縁部を押圧する押圧ピン81と、押圧ピン81の移動を案内する押圧ピン案内部82を含む。押圧ピン案内部82は、押圧ピン81を付勢するバネ等の付勢手段を備えており、2本のネジ84によって基板載置板201に固定される。
【0044】
当接部90は、基板位置決め板60の縁部に当接して押圧部80の押圧力を受け止めるとともに、その当接位置をプリント基板10の配線形成面と平行な方向に変位させることができる。当接部90は、例えば図3〜図5に示すように、調整用雄ネジ91と、この調整用雄ネジ91に螺合する雌ネジが形成された調整用雌ネジ形成部材92を含む。調整用雌ネジ形成部材92は、2本のネジ93によって基板載置板201に固定される。
【0045】
調整用雄ネジ91を調整用雌ネジ形成部材92に対して回転させると、調整用雄ネジ91がプリント基板10の配線形成面と平行な方向へ変位し、その調整用雄ネジ91の先端部が基板位置決め板60の縁部と当接する。
【0046】
ここで、上述した構成を有する配線検査治具20においてプリント基板10の位置を微調整する方法について説明する。
【0047】
プリント基板10の位置を微調整する際には、まず、2つの固定用雄ネジ71を緩めて、基板位置決め板60の固定を解除する。
【0048】
次いで、3つの調整用雄ネジ91を適宜回転させて、プリント基板10の配線形成面と平行な方向における基板位置決め板60の位置を調整する。図5において基板位置決め板60の短辺に当接する調整用雄ネジ91を回転させることにより、基板位置決め板60を図の横方向に移動させることができる。また、図5において基板位置決め板60の長辺に当接する2つの調整用雄ネジ91を回転させることにより、基板位置決め板60を図の縦方向に移動させることができる。また、長辺に当接する2つの調整用雄ネジ91の変位量を異ならせることで、基板位置決め板60を右回転又は左回転させることができる。
【0049】
基板位置決め板60を所望の位置に変位させた後、2つの固定用雄ネジ71を締めて、基板位置決め板60を治具本体に固定する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る配線検査治具20によれば、押圧部80において基板位置決め板60の縁部を押圧しつつ、当接部90において基板位置決め板60の縁部における調整用雄ネジ91の当接位置を変位させることによって、プリント基板10の位置決め用のガイドピン61が固定された基板位置決め板60をプリント基板10の配線形成面と平行な方向に変位させることができる。これにより、撮像カメラやアクチュエータ等を必要としない簡易な構成でありながら、治具本体に対するプリント基板10の位置を細かく調整することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、2つ調整用雄ネジ91の平行な方向における変位量を異ならせることによって、縦や横への平行移動だけでなく、水平面内での回転も可能になるため、製造ばらつきに伴うプリント基板10のあらゆる種類の位置ずれに対して幅広く対応することができる。
【0052】
更に、本実施形態によれば、固定用雌ネジ形成部材70に案内棒101を挿通させることによって、固定用雄ネジ71の回転に伴う固定用雌ネジ形成部材70の移動を案内しつつ、固定用雌ネジ形成部材70の回転を規制することができる。従って、固定用雄ネジ71を締めて基板位置決め板60を治具本体の基板載置板201に固定する際に、基板位置決め板60が調整位置からずれる(回転する)ことを効果的に防止できる。
【0053】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば次に述べるような種々のバリエーションを含んでいる。
【0054】
上述した実施形態における押圧部80,当接部90の数や配置は一例であり、本発明はこれに限定されない。すなわち、押圧部80,当接部90の数は2個以下でも4個以上でもよく、各押圧部80による押圧位置や各当接部90による当接位置は基板位置決め板60の外形に応じて任意に選択した位置でよい。また、押圧部80と当接部90の数が異なっていてもよい。
【0055】
上述した実施形態では、押圧部80の押圧ピン81が基板位置決め板60の縁部を直接押圧しているが、本発明の他の実施形態では、押圧ピン81が適当な中間部材を介して基板位置決め板60の縁部を押圧してもよい。同様に、上述した実施形態では、当接部90の調整用雄ネジ91が基板位置決め板60の縁部に直接当接しているが、本発明の他の実施形態では、調整用雄ネジ91が適当な中間部材を介して基板位置決め板60の縁部と当接してもよい。
【0056】
上述した実施形態では、基板位置決め板60の縁部との当接位置が変位する機構としてネジ(調整用雄ネジ91)を用いる例を挙げているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明の他の実施形態では、微小な変位量を調整可能な他の種々の機構を採用してよい。
また、例えばマイクロメータなど、回転角に応じた直線方向の変位量を読み取ることができる機構を当接手段として用いることにより、基板位置決め板60の調整後の位置を数値的に把握できるようにしてもよい。
【0057】
上述した実施形態では、固定手段として固定用雄ネジ71と固定用雌ネジ形成部材70を例に挙げているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、例えば基板位置決め板60と基板載置板201の縁をバイス等の器具で挟んで固定してもよい。
【0058】
上述した実施形態では、固定用雌ネジ形成部材70の回転を防止するために案内棒101を固定用雌ネジ形成部材70に挿通させているが、本発明はこれに限定されない。本発明の他の実施形態では、固定用雌ネジ形成部材70の縁に任意形状の凹部又は凸部を設けるとともに、これに適合した形状を持つ嵌合部を案内棒101に設け、固定用雌ネジ形成部材70の凹部又は凸部を案内棒101の嵌合部に嵌め合わせた状態で、固定用雌ネジ形成部材70を案内棒101に沿ってスライドさせるようにしてもよい。この場合も、固定用雄ネジ71の変位方向に沿った固定用雌ネジ形成部材70の移動を案内しつつ、固定用雌ネジ形成部材70の回転を規制することができる。
【0059】
上述した実施形態では、位置決め手段として複数のガイドピン61が設けられているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、基板載置板201におけるプリント基板10の載置位置(特に平面上の位置)を固定する他の種々の機構をガイドピンの替わりに設けて良い。
【0060】
上述した実施形態では、基板位置決め板60の位置の調整を行う場合、例えば、位置調整用に準備されたプリント基板10の配線に対してプローブ2を実際に当てて、プローブ2の尖端が当たることにより生じる打痕の位置を観察することにより、基板位置決め板6
0を変位させるべき方向とその量が把握される。しかしながら、この方法では、適切な位置に調整されるまで何度もプローブ2を当てて打痕の位置を観察する必要があり、作業の工程が多くなるとともに、位置調整用に余分なプリント基板10が必要となる。
そこで、本発明の他の実施形態では、プローブ2を実際に当てることなく基板位置決め板60の適切な調整位置を把握できる手段を設けてよい。
【0061】
図6は、基板位置決め板60の適切な調整位置を把握するための構成の一例を示す図である。
図6の例に示す配線検査治具20は、光源部51と、光源部51において発生したレーザ等の光線をプリント基板10の配線11に向けて先端部から照射する光ファイバFB1と、光ファイバFB1の先端部から照射された光線が配線11において反射した光を先端部において受光する複数の光ファイバFB2と、光ファイバFB2において受光された光の強度を検出する光検出部52と有する。
光ファイバFB1は、本発明における光線照射手段の一例である。
光ファイバFB2は、本発明における光受光手段の一例である。
光検出部42は、本発明における光検出手段の一例である。
【0062】
配線検査治具20は、図6に示す光線照射用の構成要素(光ファイバFB1,FB2、光検出部52)を複数セット有する。例えば、プリント基板11は、対角の2つの位置に位置調整用の配線11を備えており、配線検査治具20は、それぞれの配線11に対して図6に示す光線照射用の構成要素を備える。光源部51は、光線を照射する複数の光ファイバFB1に1つずつ設けてもよいし、1つの光源部51の光線を複数の光ファイバFB1に分配してもよい。
【0063】
光ファイバFB1と光ファイバFB2は、例えば1本のケーブルに束ねられており、適当な被覆材料によって被覆される。このケーブルにおいて、光線照射用の光ファイバFB1が中心に配置され、その周囲に複数(例えば6本)の光ファイバFB2が配置される。光ファイバFB1,光ファイバFB2を束ねたケーブルは、基板載置板201に固定される。
【0064】
光検出部52は、複数の光ファイバFB2において受光した光の強度をそれぞれ検出して出力するとともに、各光ファイバFB2の光強度を加算した全体の光強度を出力する。
【0065】
光検出部52の出力は、例えばデジタルデータとしてコンピュータに随時取り込まれて、ディスプレイ上にその光強度を示す情報が表示される。ディスプレイ上には、各光ファイバFB2の光強度とそれらを加算した全体の光強度が、例えばバーグラフや色の濃淡などによって視覚的に表示される。
【0066】
プリント基板10の配線11は、例えば光ファイバFB1から照射される光線のスポット径と同程度の大きさの円形状を有している。光ファイバFB1の光線の中心が配線11の中心と一致している場合、配線11から反射されて各光ファイバFB2の先端部に受光される光の強度の合計が最大となり、また、各光ファイバFB2に受光される光の強度がほぼ等しくなる。
一方、光ファイバFB1の光線の中心が配線11の中心からずれている場合、そのずれの方向に応じて各光ファイバFB2の光強度がばらつく。すなわち、配線11の中心から比較的近い位置にある光ファイバFB2の光強度が相対的に大きくなり、配線11の中心から比較的遠い位置にある光ファイバFB2の光強度が相対的に小さくなる。
【0067】
基板載置板201には、図6に示すように光ファイバFB1,FB2を束ねたケーブルが複数箇所に固定されており、プリント基板10上の複数の位置に形成された配線11に対して光線が照射される。作業者は、この複数の位置において合計の光強度がそれぞれ最大となり、かつ、各光ファイバFB2の光強度がほぼ等しくなるように、ディスプレイ上で視覚的に表された光検強度の情報を見ながら基板位置決め板60の位置を調整する。
【0068】
このように、プリント基板10上の複数の位置における反射光の強度に応じて基板載置板201の位置を調整する方法によれば、打痕の位置を観察する方法に比べてより簡単に基板載置板201の位置を調整することができる。
【0069】
また、本発明の他の実施形態では、上述のようにして基板配線からの反射光の強度を検出する替わりに、プリント基板10の位置合わせ用の目印をカメラで撮影してディスプレイに表示してもよい。例えば、プリント基板10に形成された複数の位置合わせ用目印と対応する基板載置板201の複数の箇所に光ファイバの先端を固定し、各光ファイバの他方の先端をカメラに装着して、各位置合わせ用目印の映像をディスプレイに表示させる。作業者は、ディスプレイに映し出される位置合わせ用の目印を見ながら、それぞれがディスプレイ上の所定の領域に位置するように基板位置決め板60の位置を調整する。このような方法でも、打痕の位置を観察する方法に比べて簡単に基板載置板201の位置を調整できる。
【0070】
なお、上述した実施形態では、検査対象としてプリント基板を例に挙げているが、本発明はこれに限定されない。例えば、半導体パッケージ、ICサブストレート、ICプローブヘッド、液晶モジュール、プラズマディスプレイの電極板、ガラス基板、電子部品実装用のフィルムキャリアなど、配線が形成され得る種々の基板の配線検査用治具に本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
2,2A,2B…プローブ、10…基板、11…基板位置調整用の配線、20…配線検査治具、30…検査ヘッド部、40…検査部、41…信号発生回路、42…測定回路、43…スキャナ回路、44…制御装置、51…光源部、52…光検出部、60…基板位置決め板、61…ガイドピン、70…固定用雌ネジ形成部材、71…固定用雄ネジ、80…押圧部、81…押圧ピン、82…押圧ピン案内部、90…当接部、91…調節用雄ネジ、92…調節用雌ネジ形成部材、101…案内棒、201…基板載置板、201A,201B,201〜207,301,302…板状部材、210…支柱、303…バネ、304…バネ付き電極、29,84,93,102…ネジ、FB1,FB2…光ファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の基板の配線と電気的に接触する複数のプローブを保持した治具本体と、
前記基板を位置決めする位置決め手段が固定された基板位置決め板と、
前記基板位置決め板を前記治具本体に固定する固定手段と、
前記固定手段によって前記基板位置決め板を治具本体に固定する前に、前記治具本体に対する前記基板位置決め板の相対的な位置を調整する位置調整手段と、
を有し、
前記位置調整手段は、
前記治具本体に固定され、前記位置決め手段によって位置決めされた前記基板の配線形成面と平行な方向へ前記基板位置決め板の縁部の少なくとも1箇所を押圧する押圧手段と、
前記治具本体に固定され、前記基板位置決め板の前記縁部の少なくとも1箇所に当接して前記押圧手段の押圧力を受け止めるとともに、前記当接位置を前記配線形成面と平行な方向に変位させることが可能な当接手段と、
を含む、
配線検査治具。
【請求項2】
前記位置決め手段は、前記基板に形成された複数の孔に嵌合する複数のピンを含む、
請求項1に記載の配線検査治具。
【請求項3】
前記治具本体は、一方の面に前記基板が載置され、他方の面に前記基板位置決め板が当接し、前記複数のピンを通す複数のピン貫通孔を有する基板載置板を含み、
前記固定手段は、前記基板位置決め板を前記基板載置板に押し付けて固定する、
請求項2に記載の配線検査治具。
【請求項4】
前記固定手段は、
固定用雄ネジと、
前記固定用雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、前記基板位置決め板を間に挟んで前記基板載置板と対面する位置に配置された固定用雌ネジ形成部材と、
を含み、
前記基板載置板及び前記基板位置決め板は、前記固定用雄ネジを貫通するネジ貫通孔をそれぞれ有し、
前記固定用雄ネジは、前記基板載置板の前記ネジ貫通孔に比べて大径の頭部を有する、
請求項3に記載の配線検査治具。
【請求項5】
前記固定用雄ネジの回転に応じた前記固定用雌ネジ形成部材の移動を案内するとともに、前記固定用雄ネジの回転に応じた前記固定用雌ネジ形成部材の回転を規制する回転規制手段を有する、
請求項4に記載の配線検査治具。
【請求項6】
前記回転規制手段は、前記治具本体に固定され、前記固定用雄ネジの回転に応じた前記固定用雌ネジ形成部の移動方向と平行に延びる少なくとも1つの案内棒を含み、
前記板状部材は、
前記案内棒を貫通する案内棒貫通孔を有する、
又は、
前記固定用雌ネジ形成部の縁に設けられた凹部若しくは凸部と嵌合する嵌合部を有する、
請求項5に記載の配線検査治具。
【請求項7】
前記当接手段は、
調整用雄ネジと、
前記調整用雄ネジと螺合する雌ネジが形成され、前記治具本体に固定される調整用雌ネジ形成部材と、
を含み、
前記調整用雄ネジを前記調整用雌ネジ形成部材に対して回転させると、前記調整用雄ネジが前記基板の配線形成面と平行な方向へ変位し、前記調整用雄ネジの一端部が前記基板位置決め板の前記縁部と当接する、
請求項1乃至6の何れか一項に記載の配線検査治具。
【請求項8】
前記治具本体に固定され、前記基板の配線に光線を照射する光線照射手段と、
前記治具本体に固定され、前記光線照射手段により照射された前記光線が前記基板の配線において反射した光を受光する光受光手段と、
前記光受光手段において受光された光の強度を検出する光検出手段と
を有する請求項1乃至7の何れか一項に記載の配線検査治具。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の配線検査治具と、
前記配線検査治具において保持された複数のプローブにそれぞれ供給される検査用の電気信号を発生する回路と、
前記複数のプローブのそれぞれから入力される電気信号を測定する回路と、
を備える配線検査装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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