説明

配線用床板の製造方法

【課題】 安価に製造することができる、配線用床板の製造方法を提供する。
【解決手段】 配線用床板1は、下方に配線空間5を形成すべく下地床6から所定間隔をおいて支持部材2、2に架け渡されるように載置される。また、配線用床板1は、プラスチック素材を用いて形成される床板本体1aと、その床板本体1aの下面1bを覆う耐火性を備えた耐火覆い材1cとを有する。そして、プレス成形金型3内に、耐火覆い材1cと、前記プラスチック素材を加熱して軟化させた軟化プラスチック4とを配置し、その軟化プラスチック4を耐火覆い材1cとともにプレス成形して、配線用床板1を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配線空間を形成するための配線用床板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線空間を形成するための配線用床構造には、図9に示すものがあった(例えば、特許文献1参照)。この配線用床構造51は、基礎床面52に配置される支持部材53、53と、それら支持部材53、53の周縁に形成された支持面53a、53aに架け渡されるように載置される配線用床板54とで構成された。この配線用床板54は、耐火性および強度を確保するために、その全体が金属製であるのが一般的であった。こうして、配線用床板54の下方に、ケーブル56が収容される配線空間55が形成された。
【特許文献1】特開2000−145112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の配線用床構造51においては、配線用床板54は、その全体が金属性であったため、製造コストが高くついた。
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、安価に製造することができる、配線用床板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係る配線用床板の製造方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る配線用床板の製造方法は、下方に配線空間を形成すべく下地床から所定間隔をおいて支持部材に架け渡されるように載置される配線用床板であって、プラスチック素材を用いて形成される床板本体と、その床板本体の下面を覆う耐火性を備えた耐火覆い材とを有する配線用床板の、製造方法である。そして、プレス成形金型内に、前記耐火覆い材と、前記プラスチック素材を加熱して軟化させた軟化プラスチックとを配置し、その軟化プラスチックを前記耐火覆い材とともにプレス成形する。
【0005】
この製造方法による配線用床板は、床板本体の下面が、耐火覆い材によって覆われるため、万が一ケーブルから出火しても、床板本体に燃え移りにくい。これにより、床板本体に、安価なプラスチック素材を用いることができる。しかも、この製造方法では、軟化プラスチックを、耐火覆い材とともにプレス成形することで、耐火覆い材を、床板本体の下面を覆うように接合する工程を省略することができる。
【0006】
また、請求項2に記載の発明に係る配線用床板の製造方法は、請求項1に記載の配線用床板の製造方法において、前記プレス成形金型は、下型と上型とを備える。そして、前記プレス成形金型内に、前記耐火覆い材と、前記軟化プラスチックとを配置するにあたって、前記下型内に、前記耐火覆い材を配置し、その耐火覆い材の上に前記軟化プラスチックを載せる。
【0007】
また、請求項3に記載の発明に係る配線用床板の製造方法は、請求項1または2に記載の配線用床板の製造方法において、前記プレス成形によって、前記配線用床板の、前記支持部材に支持される床板被支持面を、凹部と凸部とが交互に連続する凹凸状に成形すべく、前記プレス成形金型の、前記床板被支持面を成形する被支持面成形部は、前記凹部を成形する凹部成形部と、前記凸部を成形する凸部成形部とが交互に連続するように形成される。
【0008】
このように、プレス成形金型の、床板被支持面を成形する被支持面成形部を、凹部成形部と凸部成形部とが交互に連続するように形成することで、配線用床板をプレス成形するとともに、その配線用床板の床板被支持面を、凹部と凸部とが交互に連続する凹凸状に成形することができる。これにより、例えば、下地床の不陸などによって、配線用床板が支持部材に対してがたつき、衝突音を発生させる場合に、床板被支持面に形成された凹部によって、そのがたつきを吸収することができ、そのがたつきによる衝突音を低減することができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明に係る配線用床板の製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線用床板の製造方法において、前記耐火覆い材は、耐火紙からなる。
【0010】
また、請求項5に記載の発明に係る配線用床板の製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線用床板の製造方法において、前記耐火覆い材は、金属素材を用いて形成される。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る配線用床板の製造方法によれば、床板本体を、安価なプラスチック素材を用いて形成することができ、しかも、床板本体と耐火覆い材とを接合する工程を省略することができるため、配線用床板を安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明に係る配線用床板の製造方法を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図8は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、配線用床板である。2は、配線用床板1が載置される支持部材である。3は、プレス成形金型である。4は、軟化プラスチックである。
【0013】
配線用床板1は、下方に配線空間5を形成すべく下地床6から所定間隔をおいて支持部材2、2に架け渡されるように載置される。また、配線用床板1は、プラスチック素材を用いて形成される床板本体1aと、その床板本体1aの下面1bを覆う耐火性を備えた耐火覆い材1cとを有する。そして、この配線用床板1の製造方法においては、前記プレス成形金型3内に、耐火覆い材1cと、プラスチック素材を加熱して軟化させた前記軟化プラスチック4とを配置し、その軟化プラスチック4を耐火覆い材1cとともにプレス成形する。
【0014】
ここで、前記プラスチック素材としては、例えば、各種のプラスチックが含まれるプラスチック廃棄物を粉砕した、複数種類のプラスチックが含まれる混合物を利用することができる。また、耐火覆い材1cは、例えば、耐火性を有する耐火紙からなる。
【0015】
また、プレス成形金型3は、下型3aと上型3bとを備える(図1〜図3参照)。そして、プレス成形金型3内に、耐火覆い材1cと、軟化プラスチック4とを配置するにあたって、下型3a内に、耐火覆い材1cを配置し、その耐火覆い材1cの上に軟化プラスチック4を載せる(図1、図2参照)。詳細には、下型3aの上面の略中央部には、配線用床板1の形状に刳られた、平面視が矩形(詳細には、長方形)のキャビティ3cが設けられている。そして、キャビティ3cの底面3dに、耐火覆い材1cが載置され、その耐火覆い材1cの上に軟化プラスチック4が載置される。また、上型3bの下面の略中央部には、下型3aのキャビティ3cを閉塞するようにして、軟化プラスチック4を、耐火覆い材1cとともにプレスする押し型部3iが設けられている。
【0016】
さらに、プレス成形によって、配線用床板1の、支持部材2、2に支持される床板被支持面1d、1dを、凹部1e、1eと凸部1f、1fとが交互に連続する凹凸状に成形すべく、プレス成形金型3の、床板被支持面を成形する被支持面成形部3e、3eは、凹部1e、1eを成形する凹部成形部3f、3fと、凸部1f、1fを成形する凸部成形部3g、3gとが交互に連続するように形成されている。詳細には、下型3aに設けられたキャビティ3cの底面3dの、長手方向と直交する方向の両端部分に、帯状の被支持面成形部3e、3eが設けられている。ここで、下型3aに設けられたキャビティ3cの底面3dの、被支持面成形部3e、3eを除いた中央面3hは、平坦に形成されている。そして、被支持面成形部3e、3eには、中央面3hより若干上がった凹部形成部3f、3fと、中央面3hと同一の高さを有する凸部形成部3g、3gとが、被支持面成形部3e、3eの長手方向に沿って交互に連続するように形成されている。
【0017】
そして、下型3aに設けられたキャビティ3cの底面3dに、耐火覆い材1cが載置され、その耐火覆い材1cの上に軟化プラスチック4が載置される。そして、上型3bの押し型部3iが、下型3aのキャビティ3cを閉塞するようにして、軟化プラスチック4を、耐火覆い材1cとともにプレス成形する(図3参照)。
【0018】
こうして、製造された配線用床板1においては、床板本体1aは、平面視が矩形(詳細には、長方形)で、その床板本体1aの下面1bの略全面を覆うように、耐火覆い材1cが、床板本体1aと一体に形成される(図4、図5参照)。さらに、配線用床板1の、支持部材2、2に支持される床板被支持面1d、1dは、凹部1e、1eと凸部1f、1fとが交互に連続する凹凸状に形成される。詳細には、床板本体1aの下面1bの、長手方向と直交する方向の両端に位置する帯状の両端部1i、1iが、その両端部1i、1iの長手方向に沿って凹部と凸部とが交互に連続する凹凸状に形成される。そして、耐火覆い材1cの、両端部1i、1iを覆う両端部覆い部1j、1jが、両端部1i、1iの凹凸状に倣って、凹凸状に形成される。すなわち、耐火覆い材1cの両端部覆い部1j、1jの下面が、支持部材2に支持される床板被支持面1d、1dとなり、凹部1e、1eと凸部1f、1fとが交互に連続する凹凸状を形成する。また、配線用床板1の下面の、床板被支持面1d、1dを除いた中央面1hは、平坦に形成される。
【0019】
そして、配線用床板1は、その下方に、ケーブル7が収容される配線空間5を形成すべく、下地床6から所定間隔をおいて前記支持部材2、2に架け渡されるように載置される(図6〜図8参照)。そして、床板本体1aの上面1gによって、新たに床面が形成される。
【0020】
次に、配線用床板1の製造方法の作用効果について説明する。この配線用床板1の製造方法による配線用床板1は、床板本体の下面が、耐火覆い材によって覆われるため、万が一ケーブル7から出火しても、床板本体1aに燃え移りにくい。これにより、床板本体1aに、安価なプラスチック素材を用いることができる。しかも、この製造方法では、軟化プラスチック4を、耐火覆い材1cとともにプレス成形することで、耐火覆い材1cを、床板本体1aの下面1bを覆うように接合する工程を省略することができる。したがって、配線用床板1を安価に製造することができる。
【0021】
また、床板本体1aの材料となる前記プラスチック素材が、各種のプラスチックが含まれるプラスチック廃棄物から得られる混合物を材料にして成形されるため、その製造コストが安価となる。そして、床板本体1aの製造コストが安価となるため、配線用床板1の製造コストを低減することができる。
【0022】
また、プレス成形金型3(詳細には、下型3aに設けられたキャビティ3cの底面3d)の、床板被支持面1d、1dを成形する被支持面成形部3e、3eを、凹部成形部3f、3fと凸部成形部3g、3gとが交互に連続するように形成することで、配線用床板1をプレス成形するとともに、その配線用床板1の床板被支持面1d、1d(詳細には、耐火覆い材1cの両端部覆い部1j、1j)を、凹部1e、1eと凸部1f、1fとが交互に連続する凹凸状に成形することができる。これにより、例えば、下地床6の不陸などによって、配線用床板1が支持部材2、2に対してがたつき、衝突音を発生させる場合に、床板被支持面1d、1d(詳細には、耐火覆い材1cの両端部覆い部1j、1j)に形成された凹部1e、1eによって、そのがたつきを吸収することができ、そのがたつきによる衝突音を低減することができる。特に、耐火覆い材1cが耐火紙からなる場合には、その耐火覆い材1c(詳細には、両端部覆い部1j、1j)が、支持部材2、2に対する配線用床板1のがたつきを吸収するため、そのがたつきによる衝突音をより低減することができる。
【0023】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、軟化プラスチック4の材料となる混合物には、複数種類のプラスチックが含まれるが、プラスチック以外の素材が含まれていても構わない。また、軟化プラスチック4は、各種のプラスチックが含まれるプラスチック廃棄物を粉砕してなる混合物を材料としていなくてもよく、プラスチックのバージン材を材料として用いたものであってもよい。
【0024】
また、下型3aのキャビティ3cは、その平面視が矩形でなくてもよい。
【0025】
また、下型3aにキャビティ3cが設けられていなくても、反対に、上型3bにキャビティが設けられていてもよい。例えば、上面が平坦に形成された下型に、耐火覆い材1cを配置し、その耐火覆い材1cの上に軟化プラスチック4を載せ、キャビティが設けられた上型を、そのキャビティを前記下型によって閉塞するように、軟化プラスチック4を耐火覆い材1cとともにプレス成形してもよい。
【0026】
また、下型3a内に、耐火覆い材1cを配置し、その耐火覆い材1cの上に軟化プラスチック4を載せなくても、反対に、下型3a内に、軟化プラスチック4を配置し、その軟化プラスチック4の上に耐火覆い材1cを載せて、その軟化プラスチック4を耐火覆い材1cとともにプレス成形してもよい。
【0027】
また、耐火覆い材1cは、耐火紙からならなくても、例えば、鉄とかアルミニウムあるいはアルミニウム合金、その他の金属素材を用いて形成されていてもよい。
【0028】
また、配線用床板1を製造するにあたって、耐火覆い材1cを、床板本体1aの下面1bの略全面を覆うように設けなくても、床板本体1aが少なくとも配線空間5に露出しないように、床板本体1aの下面1bを覆うように設ければよい。この場合、床板本体1aの下面1bの両端部1i、1iが、床板被支持面1d、1dとなる。
【0029】
また、配線用床板1を製造するにあたって、床板本体1aの床板被支持面1d、1dを、その床板被支持面1d、1dの長手方向に沿って、凹部1e、1eと凸部1f、1fとが交互に連続する凹凸状に形成しなくても、凹部に対して、凸部、例えば、先細り状、錐状あるいは柱状等の凸部が点在するように形成することで、凹部と凸部とが交互に連続するように形成してもよいし、あるいは、床板被支持面1d、1dは凹凸状に形成されていなくてもよい。すなわち、下型3aに設けられたキャビティ3cの底面3dの、被支持面成形部3e、3eは、凹部形成部3f、3fと凸部形成部3g、3gとが、被支持面成形部3e、3eの長手方向に沿って交互に連続するように形成されていなくてもよい。
【0030】
また、床板本体1aと耐火覆い材1cとの付着性を増加させるために、耐火覆い材1cの、軟化プラスチック4と接する面に、接着材を、塗布とか吹き付け等により付けてもよい。
【0031】
また、配線用床板1は、図6に示すような根太材形状の支持部材2に載置されるのみならず、例えば、縦横方向に配線空間を有する、置き敷き式の配線ダクトユニット形状の支持部材等、他の形状、構造からなる支持部材に架け渡されるように載置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施の形態の、下型に、耐火覆い材と軟化プラスチックとを載置したときの、模式的な断面図である。
【図2】同じく、模式的な平面図である。
【図3】同じく、プレス成形金型を閉塞したときの、模式的な断面図である。
【図4】同じく、製造された配線用床板の、側面図である。
【図5】同じく、製造された配線用床板の、斜視図である。
【図6】同じく、製造された配線用床板を、支持部材に載置したときの、斜視図である。
【図7】同じく、図6におけるA−A線による拡大断面図である。
【図8】同じく、図6におけるB−B線による拡大断面図である。
【図9】従来の配線用床構造の、断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 配線用床板
1a 床板本体
1b 床板本体の下面
1c 耐火覆い材
1d 床板被支持面
1e 床板被支持面の凹部
1f 床板被支持面の凸部
2 支持部材
3 プレス成形金型
3a 下型
3b 上型
3e 被支持面成形部
3f 凹部成形部
3g 凸部成形部
4 軟化プラスチック
5 配線空間
6 下地床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に配線空間を形成すべく下地床から所定間隔をおいて支持部材に架け渡されるように載置される配線用床板であって、プラスチック素材を用いて形成される床板本体と、その床板本体の下面を覆う耐火性を備えた耐火覆い材とを有する配線用床板の、製造方法であって、
プレス成形金型内に、前記耐火覆い材と、前記プラスチック素材を加熱して軟化させた軟化プラスチックとを配置し、その軟化プラスチックを前記耐火覆い材とともにプレス成形することを特徴とする、配線用床板の製造方法。
【請求項2】
前記プレス成形金型は、下型と上型とを備え、
前記プレス成形金型内に、前記耐火覆い材と、前記軟化プラスチックとを配置するにあたって、前記下型内に、前記耐火覆い材を配置し、その耐火覆い材の上に前記軟化プラスチックを載せることを特徴とする、請求項1に記載の、配線用床板の製造方法。
【請求項3】
前記プレス成形によって、前記配線用床板の、前記支持部材に支持される床板被支持面を、凹部と凸部とが交互に連続する凹凸状に成形すべく、
前記プレス成形金型の、前記床板被支持面を成形する被支持面成形部は、前記凹部を成形する凹部成形部と、前記凸部を成形する凸部成形部とが交互に連続するように形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の、配線用床板の製造方法。
【請求項4】
前記耐火覆い材は、耐火紙からなることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の、配線用床板の製造方法。
【請求項5】
前記耐火覆い材は、金属素材を用いて形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の、配線用床板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−138456(P2008−138456A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326252(P2006−326252)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】