説明

配膳車

【課題】収容室内の温度が高温になった場合であっても、この収容室を開閉する扉の温度上昇を抑制することができる配膳車を提供する。
【解決手段】食品を収容する収容室1と、収容室1内を加熱する加熱手段とを備える。前記収容室1を開閉する扉5を具備する。この扉5の外装6の、少なくとも前記扉5を閉じた状態で収容室1に面する領域を、断熱素材7で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院、養護施設、宿泊施設等における食事の提供にあたり、冷凍又は冷蔵されていた食品を収容した状態で加熱することで暖かい食事を提供することができる配膳車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院等の施設における食事の提供にあたり、食材の調達、調理、保存、配膳を全て施設内において行うと、施設内において相応の設備、スペース、人員を確保する必要がある。このため、効率化の観点から、近年、食材の調達及び調理を外部委託するケースが増えてきている。この場合、外部の業者から提供された冷凍又は冷蔵された調理済み食品を施設内で加熱して、暖かい食事を提供する必要が生じる。また、施設内で調理を行う場合であっても、調理済みの食品を一旦冷凍又は冷蔵しておき、これを食事時に加熱して、暖かい食事を提供するような場合もある。
【0003】
このような場合、例えば特許文献1に記載されているような、食品を収容する収容室と、この収容室内の食品を加熱する加熱手段とを備えた配膳車を用いれば、冷凍又は冷蔵された調理済み食品を施設内で加熱して、暖かい食事を配膳することができる。
【特許文献1】特開2003−339454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように食品を収容室内で加熱する場合には、収容室内は相当の高温となるため、収容室を開閉するための扉が高温となり、扉を開閉する場合などに扉に触れた場合に火傷を負う危険性がある。この扉の断熱性を向上するために扉の内部に断熱材を充填することも考えられるが、その場合でも収容室内の熱が扉の外装を介して扉の表面に伝達されしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、収容室内の温度が高温になった場合であっても、この収容室を開閉する扉の温度上昇を抑制することができる配膳車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、食品を収容する収容室1と、収容室1内を加熱する加熱手段とを備える配膳車Aにおいて、前記収容室1を開閉する扉5を具備し、この扉5の外装6の、少なくとも前記扉5を閉じた状態で収容室1に面する領域を、断熱素材7で形成して成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記断熱素材7が、フェノール樹脂であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、上記扉5の内部に断熱材2が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、収容室1内の熱が扉5の外面を外装6を介して伝達することを抑制することができ、扉5を閉じた状態でこの扉5の外面が高温に加熱されることを防止することができて、特に収容室1を高温に加熱する場合でも扉5に身体が触れることによって火傷を負うなどの事故を防止することができる。また、このとき扉5の外装6自体が断熱素材7にて形成されていることから、扉5に断熱素材7を積層して接合する場合よりも扉5の厚みを小さくすることができ、また重量も軽減することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、断熱素材7からなる外装6の剛性を維持することができ、扉5の剛性を維持することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、扉5の断熱性を更に向上することができて、パネル3の外面が高温になることを更に抑制することができ、またこのとき断熱材2bの耐熱性が低い場合であっても、この断熱材2bへの熱の伝達量が外装6の断熱素材7によって低減されることで断熱材2bの劣化による収縮を抑制することができ、扉5の剛性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0013】
図2,3に示す配膳車Aは小さな操作力で動かせるように、電動アシスト機能を備えるものであり、本体部Bと、この本体部Bとは別体に形成された間仕切り部Cとから構成されている。
【0014】
本体部Bは車輪13を取り付け周囲をバンパー14で囲った基部15と、両側の側面が開口部16となった箱状の筐体4と、この筐体4に両側の開口部16を除いて外装されるプラスチック成形品の外装パネル17とで形成してあり、筐体4は基部15の上に固定してある。図2,3において18は車輪13を駆動するモータ等を操作するスイッチや、保温室8内の加熱温度や保冷室9内の冷却温度をコントロールするスイッチなど各種のスイッチ19を設けた操作パネル、21は配膳車Aの走行方向をコントロールするためのハンドル、22は折りたたみ式の作業台である。
【0015】
筐体4には図4にも示すように、温風ダクト23が収容室1の内部の中央部を横切るように取付けられ、これにより筐体4内は前半分の前部室24と後半分の後部室25に仕切られている。この温風ダクト23の内部には、ヒーター等の加熱手段(図示省略)にて加熱された空気が流通し、この温風ダクト23の両面にそれぞれ設けられた温風吹出口20から収容室1内に吹き出すようになっている。また、筐体4内の前後の壁面には冷風ダクト26が設けられ、冷却用熱交換器(図示せず)にて冷却された冷風が、この冷風ダクト26の収容室1側の面に設けられた冷風吹出口27から収容室1内に吹き出すようになっている。
【0016】
筐体4の開口部16には、前部室24を開閉する扉5と後部室25を開閉する扉5とがそれぞれ設けられている。各扉5は開口部16の前後の両端縁で枢設してある。各扉5は二枚のパネル36をその端縁部同士で枢結して折りたたみ可能に形成されている。
【0017】
この収容室1の前部室24と後部室25に、それぞれトレー12を支持する間仕切り部Cが収容される。この間仕切り部Cは、図5に示すように、間仕切り10と、この間仕切り10を支持する台車28にて構成されている。
【0018】
間仕切り10は支柱29に支持される共にこの支柱29の両側に突出する上下複数本の間仕切りユニット11を設けて上下複数連ねることで構成されている。各間仕切りユニット11には両側に受け板30が取り付けられており、またこの間仕切りユニット11の下端にはシャッター部材31が下方に弾性付勢された状態で上下動自在に設けられている。
【0019】
台車28はフレーム材にて形成されており、間仕切り10の両側方にそれぞれ配置される複数の側部フレーム32を有し、この各側部フレーム32に間仕切り10に向けて突出する複数の支持フレーム33が突設されている。各支持フレーム33は間仕切りユニット11の側面に連結され、これにより間仕切り10を支持している。この台車28の下部には車輪34が設けられ、これにより間仕切り部Cが本体部Bとは独立して走行可能に形成されている。
【0020】
この間仕切り部Cは、筐体4の開口部16から収容室1の前部室24及び後部室25にそれぞれ収容される。このとき間仕切り10が前部室24及び後部室25をそれぞれ前後に仕切るように配置される。これにより、前部室24及び後部室25は、それぞれ前後に仕切られ、この仕切られた一方の空間が温風吹出口20が設けられた保温室8、他方の空間が冷風吹出口27が設けられた保冷室9となる。
【0021】
間仕切り部Cの間仕切り10には、食品が載置された複数のトレー12が支持される。このときトレー12は、上下の間仕切りユニット11の間にシャッター部材31を押し上げながらトレー12の中央部を差し込むと共にトレー12の一側部と他側部をそれぞれ受け板30の上に載置することで、間仕切り10に支持される。また間仕切り10に支持されたトレー12を引き出すことでトレー12を取り外すことができる。トレー12を間仕切り10に支持し、或いは間仕切り10から取り外す作業は、間仕切り部Cが収容室1内に収容された状態で扉5を開けて開口部16を介して行うほか、間仕切り部Cを収容室1から取り出した状態で行うこともできる。トレー12が支持された間仕切り部Cを収容室1内に収容すると、トレー12の一側部は保温室8に、他側部は保冷室9に配置されるため、トレー12の一側部に保温を必要とする食品を載せ、他側部に保冷を必要とする食品を載せると、食品の保温及び保冷を行うことができる。
【0022】
また、この配膳車Aでは、収容室1内の保温室8に収容された食品の高温加熱も行うことができる。このとき、例えば保温室8に吹き出される温風を加熱するためのヒーター等の加熱手段の出力を変更可能に形成し、保温室8内を保温時には例えば60〜80℃の温度、高温加熱時には例えば100〜130℃に加熱するするように形成することができる。このようにすると、冷凍又は冷蔵された食品を収容室1の保温室8内に収容した状態でこの食品が適温になるまで保温室8内を高温加熱し、その後、保温を行うことで保温室8内の食品を適温に保つことができる。
【0023】
このような配膳車Aにおいて、本発明では図1に示すように、扉5を断熱性を有するパネル36にて構成する。これにより保温室8内の加熱効率や保冷室9内の冷却効率を向上すると共に収容室1の外側が加熱されたり冷却されたりすることを防止することができる。
【0024】
このパネル3は中空状の外装6の内部の中空部に断熱材2を充填して構成される。中空部に充填される断熱材2としては適宜のものが用いられるが、例えばウレタン系発泡体を用いることができる。
【0025】
また、パネル36の外装6のうち、扉5を閉じた状態で収容室1内に面する部分は断熱素材7にて形成する。断熱素材7としては十分な断熱性能を有する適宜のものを用いることができるが、高い断熱性能とある程度の剛性とを兼ね備えるものを用いることが好ましく、また収容室1内が100℃以上の高温となった場合にも耐えられるように耐熱性が高いものであることが好ましいものであり、例えばフェノール樹脂(ベークライト)等を挙げることができる。また、外装6の他の部分は適宜の材質で形成することができるが、ステンレス等の剛性の高い材質にて形成することでパネル36全体の剛性を確保することが好ましい。
【0026】
このようなパネル36としては適宜の手法で製造されたものを用いることができる。その一例について説明する。まず一面が開口すると共に注入口が形成されたステンレス製等の箱状体の開口を、断熱素材7にて形成された板材で閉塞し、この板材と箱状体とを接合する。次いで前記注入口からウレタン系の発泡性樹脂組成物を注入し、内部で発泡させてウレタン系発泡体を形成する。最後に注入口を塞いでパネル36を得ることができる。
【0027】
このようなパネル36で扉5を形成すると、パネル36の内部を介した熱の伝達が断熱材2にて抑制されるだけでなく、上記断熱素材7を設けることによって収容室1内の熱がパネル36の外面を外装6を介して伝達することも抑制される。このため、扉5を閉じた状態で扉5の外面が高温に加熱されることを防止することができ、特に収容室1における保温室8を100℃以上の高温に加熱する場合でも扉5に身体が触れることによって火傷を負うなどの事故を防止することができる。
【0028】
また、パネル36の内部へ伝達される熱がまず断熱素材7にて形成される外装6にて遮蔽されるため、内部の断熱材2への熱の伝達量が低減される。このため、断熱材2として耐熱温度が100〜110℃程度のウレタン系発泡体等を用いる場合であっても、断熱材2が高温により劣化して収縮することを抑制することができ、特に保温室8を100℃以上の高温に加熱する場合であっても、扉5の構成するパネル36内に空隙が生じることによる扉5の剛性の低下を防止することもできる。
【0029】
また、断熱素材7にてパネル36の外装6を形成することで、パネル36に断熱素材7を積層して接合する場合よりもパネル36の厚みを小さくすることができ、また重量も軽減することができる。
【0030】
断熱素材7の厚みはその材質に応じ、熱の移動を十分に抑制することができると共にある程度の剛性を確保することができるように設定することが好ましく、具体的には2〜10mmの範囲に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明における扉を構成するパネルの一例を示す概略の断面図である。
【図2】配膳車の全体構成を示す斜視図である。
【図3】同上の側面図である。
【図4】筐体の概略構成の一例を示すものであり、(a)は側面図、(b)は断面図である。
【図5】間仕切り部の構成の一例を示すものであり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【符号の説明】
【0032】
A 配膳車
1 収容室
2 断熱材
5 扉
6 外装
7 断熱素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容する収容室と、収容室内を加熱する加熱手段とを備える配膳車において、前記収容室を開閉する扉を具備し、この扉の外装の、少なくとも前記扉を閉じた状態で収容室に面する領域を、断熱素材で形成して成ることを特徴とする配膳車。
【請求項2】
上記断熱素材が、フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の配膳車。
【請求項3】
上記扉の内部に断熱材が充填されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配膳車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−289815(P2008−289815A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141124(P2007−141124)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】