配電機器の可動電極
【課題】グリッド形消弧装置を備えた開閉器の可動電極において、アークによって表面が荒れたとしても、固定電極との円滑な接触を保つことができるようにする。
【解決手段】グリッド形消弧装置41を備えた開閉器の可動電極33は、グリッド形消弧装置41の電磁作用によりアークが移動される部位にメイン接触部の厚さより薄くしたアーク受け部35a,35bが形成される。
【解決手段】グリッド形消弧装置41を備えた開閉器の可動電極33は、グリッド形消弧装置41の電磁作用によりアークが移動される部位にメイン接触部の厚さより薄くしたアーク受け部35a,35bが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮断器、開閉器等の配電機器に使用する可動電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電機器としての遮断器、開閉器等は、固定電極と、該固定電極と接触することで通電する可動電極とを備えている。該可動電極は、回動可能に支持されており、投入方向への回動に伴い両電極を接触させ、開放方向への回動に伴い両電極を離間させる。これにより、配電機器としての遮断器、開閉器等は、電路の開閉を行う。そして、配電機器の可動電極が固定電極との接触状態から開放方向へ回動される際に、アークが発生するため、該アークを消弧するためのグリッド形消弧装置が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のガス開閉器は、図4に示されるように、開閉器の本体ケース10の互いに対向する両側壁に対しそれぞれ電源側ブッシング21及び負荷側ブッシング31が互いに対向するように貫通支持されている。電源側ブッシング21の内端部には棒状の固定電極22が突設されるとともに、固定電極22の先端上部には耐弧メタル23が固定されている。負荷側ブッシング31の内端部には導電棒32が突設されており、その先端部には軸61を介して可動電極33が回動可能に支持されている。可動電極33の先端下部には耐弧メタル34が固定されている。可動電極33は平行平板状の一対の接触刃からなりたっている。固定電極22の先端上部に設けられたグリッド形消弧装置41は、磁性体により板状に形成された複数のグリッドが可動電極33の移動方向に所定の間隔をおいて交互に配置されている。各グリッドは、それぞれ一対の支持部材間に配置され一括して支持されている。可動電極33には、軸62を介して操作ハンドル(図示略)に連動して駆動される作動リンク51が設けられている。作動リンク51が操作されると、可動電極33は軸61を中心に上方又は下方に回動する。これにより、可動電極33の開放操作及び投入操作が行われる。
【0004】
図5に示されるように、作動リンク51によって開放操作が始まると、可動電極33は固定電極22から離間する。このとき、固定電極22と可動電極33との間にアークが発生する。すなわち、同アークは、固定電極22の先端上部(耐弧メタル23及びその周辺)と、可動電極33の先端下部(耐弧メタル34及びその周辺)とをアーク初期発生部として発生する。そして、可動電極33が開放操作によって更に固定電極22から離間すると、図6に示されるように、グリッドに発生する電磁力(電磁作用)により、同アークはグリッド形消弧装置41の奥の方(図の左方向)、すなわち可動電極33から離間する側へ駆動される。その結果、アークは引き延ばされるとともにグリッド間に分割され、アーク電圧を高めるとともに冷却効果により消弧される。また、消弧性分解ガスによっても消弧される。
【特許文献1】実開平6−77138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示されるように、アークがグリッド形消弧装置41の奥の方(図の左方向)に駆動されると、アークの可動電極33の発生部は、図5に示されるように、先端下部から先端部に遷移する。すなわち、グリッドに発生する電磁力(電磁作用)により引き延ばされ、可動電極33のアーク発生部が、先端下部から先端部に移動する。これにより、図7に示されるように、可動電極33の先端部の黒点部は、スパッタの付着及びアーク熱による溶解により凹凸となって表面が荒れてしまう。その結果、投入時に固定電極22と円滑な接触が保てなくなるとともに、固定電極22の接触部表面を傷つけることとなる。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、グリッド形消弧装置を備えた配電機器の可動電極において、アークによって表面が荒れたとしても、固定電極との円滑な接触を保つことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、グリッド形消弧装置を備えた配電機器の可動電極において、前記グリッド形消弧装置の電磁作用によりアークが遷移する部位にメイン接触部の厚さより薄くしたアーク受け部を形成したことをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、アーク受け部がアークを受け、アークによって荒らされても、アーク受け部は固定電極とのメイン接触部の厚さより薄いので、接触時に固定電極を傷つけない。また、可動電極のメイン接触部とアーク受け部とを別部位とすることにより、メイン接触部が荒れることを抑制することができる。さらに、アーク受け部が、アークを受けるため、可動電極の先端下部に耐弧メタルを設けなくてもよい。
【0009】
アーク受け部の位置としては、例えば、請求項2に記載の発明によるように、その先端部に設けてもよい。更に、請求項3に記載の発明によるように、アーク初期発生部の先端から開放方向に向かうに従い拡大して設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グリッド形消弧装置を備えた配電機器の可動電極において、アークによって先端部の表面が荒れたとしても、固定電極との円滑な接触を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図1〜3を参照して説明する。なお、グリッド形消弧装置を備えた開閉器については、先の図4〜7に示した構造と同様であるため説明を省略する。
【0012】
図1は、開閉器の電極部の平面図である。図1に示されるように、開閉器の可動電極33は、平行平板状の一対の接触刃33a,33bを備えている。固定電極22の上方には、グリッド形消弧装置41が設けられる。該グリッド形消弧装置41には、可動電極33側に凹部が二箇所設けられ、それぞれの凹部を各々の接触刃33a,33bが通過する。図2は、接触刃33aの平面図である。図2に示されるように、接触刃33aの厚みは、本実施形態においてそれぞれ5mmである。接触刃33bも同様である。
【0013】
次に、図3を参照して可動電極33について説明する。図3(a)は、右側接触刃33aの左側面図である。図3(b)は、左側接触刃33bの右側面図である。両接触刃33a,33bは、図3(a)に示されるように、右側接触刃33aの左側面には、アーク初期発生部36、すなわち接触刃33aの先端下部、の先端から可動電極33の開放方向に向かうに従い拡大するアーク受け部35aが形成されている。該アーク受け部35aは、一点鎖線部から縁部に向かうに従い、接触刃33aの厚さが徐々に薄くなるテーパ状に形成されている。最も薄い部分は3mmの厚さになっている。なお、この最も薄い部分の厚さは、要求強度に併せて適宜変更してもよく、本来の厚さより少なくとも0.5mm減ずることが望ましい。アーク受け部35aの近傍に位置する一点鎖線で囲まれた部分は、固定電極22と接触する(以下、メイン接触部37という。)。右側接触刃33aの側面には、軸61,62それぞれが挿通される軸孔61a,62aが設けられる。同様に、左側接触刃33bの右側面にはアーク受け部35bが設けられるとともに、メイン接触部37は固定電極22と接触する。また、左側接触刃33bの側面には、軸61,62それぞれが挿通される軸孔61a,62aが設けられる。これら接触刃33a,33bのアーク初期発生部36に対応する部位には、それぞれ耐弧メタル34が設けられている。
【0014】
次に、可動電極33を開放方向への回動操作について説明する。
両接触刃33a,33bの回動操作は、軸62に連結されている作動リンク51によって行われる。両接触刃33a,33bが開放方向に回動操作されると、図5に示されるように、固定電極22との接触がなくなり、開放方向に離間する。すると、固定電極22に設けられる耐弧メタル23及びその周辺部の少なくとも一方と接触刃33a,33bのアーク初期発生部36との間にアークが発生する。そして、更に開放方向に回動操作されると、図6に示されるように、固定電極22と両接触刃33a,33bとが更に離間し、グリッド形消弧装置41に発生する電磁力により、同アークはグリッド形消弧装置41の奥の方、すなわち可動電極33から離間する側へ駆動される。このため、両接触刃33a,33bのアーク発生部は、アーク初期発生部36とは異なり、先端部、すなわちアーク受け部35a,35bに遷移する。この結果、アーク受け部35a,35bの表面が荒れる。
【0015】
そして、このアーク受け部35a,35bが荒れた両接触刃33a,33bを投入方向(開放方向の逆方向)に回動操作すると、アーク受け部35a,35bは固定電極22に接触することなく、メイン接触部37が接触し、通電される。すなわち、アーク受け部35a,35bに発生するアーク発生時のスパッタの付着及びアーク熱による溶解によって生じる凹凸による表面の荒れは、同アーク受け部35a,35bがメイン接触部37よりも薄く形成されているので、表面の荒れによる凹凸が固定電極22をかじって接触部表面を荒らすことを防止できる。
【0016】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)アーク受け部35a,35bがアークを受け、アークによって荒らされても、アーク受け部35a,35bは固定電極22とのメイン接触部37の厚さより薄いので、接触時に固定電極22を傷つけない。また、可動電極33のメイン接触部37とアーク受け部35a,35bとを別部位とすることにより、メイン接触部37が荒れることを抑制することができる。
【0017】
(2)可動電極33のアーク受け部35a,35bがアークによって荒らされ、0.5mmほどの凹凸が生じたとしても、最も薄いところで3mmの厚さとしているため、固定電極22に接触することを抑制することができる。
【0018】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、接触刃33a,33bの厚みを5mmとしたが、用途に併せて適宜変更可能である。ただし、アーク受け部35a,35bの厚さは、メイン接触部37の厚さが最低1mm残るように1mm以上減じた厚さとするのが望ましい。
【0019】
・上記実施形態では図3(a),(b)に示されるように、アーク受け部35a,35bをアーク初期発生部36、すなわち接触刃33aの先端下部、の先端から可動電極33の開放方向に向かうに従い拡大するように形成したが、図8に示されるように、接触刃33aの固定電極22と接触する側面、すなわち左側面の先端部全体に設けるようにしてもよい。ただし、アーク受け部35aは、メイン接触部37を確保できる範囲で形成する(アーク受け部35bも同様。図示略。)。
【0020】
・図9に示されるように、アーク受け部35aをメイン接触部37から段差状に形成してもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。
・図10に示されるように、アーク受け部35aをメイン接触部37からその外縁に向かって連続的に厚さが減じられるように形成してもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。
【0021】
・図11に示されるように、アーク受け部35aをメイン接触部37からテーパ状に厚さを減じ、その先フラットになるように形成してもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。
【0022】
・図12に示されるように、アーク受け部35aを接触刃33aの回動中心を中心としてアーク初期発生部36の先端までの半径Rの少なくとも外側に設けられるように形成してもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。同構成によれば、可動電極33の回動に併せてアーク受け部35a,35bを形成することにより、固定電極22との接触を極力残しながら、アークを受ける部分を設けることができる。
【0023】
・上記実施形態では、接触刃33a,33bの先端下部に耐弧メタル34を設けるようにしたが耐弧メタル34を設けなくてもよい。
・図13に示されるように、アーク受け部35aを接触刃33aの両側面の先端部に形成するようにしてもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。同構成によれば、左右それぞれに専用の接触刃を設けることがなくなり、同一の接触刃で可動電極を形成することができる。
【0024】
・上記実施形態では、ガス開閉器に具体化したが、気中開閉器、遮断器等に適宜変更可能である。
次に、前記実施形態から把握できる請求項記載の発明以外の技術的思想をその効果と共に記載する。
【0025】
(a)請求項1又は2に記載の配電機器の可動電極において、前記アーク受け部は、前記可動電極の回動中心を中心としてアーク初期発生部の先端までの半径Rの少なくとも外側に設けられることを特徴とする配電機器の可動電極。同構成によれば、可動電極の回動に併せてアーク受け部を形成することにより、固定電極との接触を極力残しながら、アークを受ける部分を設けることができる。
【0026】
(b)請求項1〜3のいずれか一項に記載の配電機器の可動電極において、前記アーク受け部の厚さは、前記メイン接触部の厚さが最低1mm残るように1mm以上減じた厚さとすることを特徴とする配電機器の可動電極。同構成によれば、アーク受け部にアーク荒れによる凹凸ができたとしても、凹凸を勘案した厚さとすることにより固定電極に接触することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】開閉器の電極部の平面図。
【図2】可動電極の平面図。
【図3】(a)右側接触刃の左側面図、(b)左側接触刃の右側面図。
【図4】開閉器の電極部の側面図(通電時)。
【図5】開閉器の電極部の側面図(開放時)。
【図6】開閉器の電極部の側面図(開放時)。
【図7】可動電極の斜視図。
【図8】可動電極の側面図。
【図9】可動電極の平面図。
【図10】可動電極の平面図。
【図11】可動電極の平面図。
【図12】可動電極の側面図。
【図13】可動電極の平面図。
【符号の説明】
【0028】
10…本体ケース、21…電源側ブッシング、22…固定電極、23…耐弧メタル、31…負荷側ブッシング、32…導電棒、33…可動電極、33a…右側接触刃、33b…左側接触刃、34…耐弧メタル、35a,35b…アーク受け部、36…アーク初期発生部、37…メイン接触部、41…グリッド形消弧装置、51…作動リンク、61,62…軸、R…半径。
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮断器、開閉器等の配電機器に使用する可動電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電機器としての遮断器、開閉器等は、固定電極と、該固定電極と接触することで通電する可動電極とを備えている。該可動電極は、回動可能に支持されており、投入方向への回動に伴い両電極を接触させ、開放方向への回動に伴い両電極を離間させる。これにより、配電機器としての遮断器、開閉器等は、電路の開閉を行う。そして、配電機器の可動電極が固定電極との接触状態から開放方向へ回動される際に、アークが発生するため、該アークを消弧するためのグリッド形消弧装置が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のガス開閉器は、図4に示されるように、開閉器の本体ケース10の互いに対向する両側壁に対しそれぞれ電源側ブッシング21及び負荷側ブッシング31が互いに対向するように貫通支持されている。電源側ブッシング21の内端部には棒状の固定電極22が突設されるとともに、固定電極22の先端上部には耐弧メタル23が固定されている。負荷側ブッシング31の内端部には導電棒32が突設されており、その先端部には軸61を介して可動電極33が回動可能に支持されている。可動電極33の先端下部には耐弧メタル34が固定されている。可動電極33は平行平板状の一対の接触刃からなりたっている。固定電極22の先端上部に設けられたグリッド形消弧装置41は、磁性体により板状に形成された複数のグリッドが可動電極33の移動方向に所定の間隔をおいて交互に配置されている。各グリッドは、それぞれ一対の支持部材間に配置され一括して支持されている。可動電極33には、軸62を介して操作ハンドル(図示略)に連動して駆動される作動リンク51が設けられている。作動リンク51が操作されると、可動電極33は軸61を中心に上方又は下方に回動する。これにより、可動電極33の開放操作及び投入操作が行われる。
【0004】
図5に示されるように、作動リンク51によって開放操作が始まると、可動電極33は固定電極22から離間する。このとき、固定電極22と可動電極33との間にアークが発生する。すなわち、同アークは、固定電極22の先端上部(耐弧メタル23及びその周辺)と、可動電極33の先端下部(耐弧メタル34及びその周辺)とをアーク初期発生部として発生する。そして、可動電極33が開放操作によって更に固定電極22から離間すると、図6に示されるように、グリッドに発生する電磁力(電磁作用)により、同アークはグリッド形消弧装置41の奥の方(図の左方向)、すなわち可動電極33から離間する側へ駆動される。その結果、アークは引き延ばされるとともにグリッド間に分割され、アーク電圧を高めるとともに冷却効果により消弧される。また、消弧性分解ガスによっても消弧される。
【特許文献1】実開平6−77138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示されるように、アークがグリッド形消弧装置41の奥の方(図の左方向)に駆動されると、アークの可動電極33の発生部は、図5に示されるように、先端下部から先端部に遷移する。すなわち、グリッドに発生する電磁力(電磁作用)により引き延ばされ、可動電極33のアーク発生部が、先端下部から先端部に移動する。これにより、図7に示されるように、可動電極33の先端部の黒点部は、スパッタの付着及びアーク熱による溶解により凹凸となって表面が荒れてしまう。その結果、投入時に固定電極22と円滑な接触が保てなくなるとともに、固定電極22の接触部表面を傷つけることとなる。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、グリッド形消弧装置を備えた配電機器の可動電極において、アークによって表面が荒れたとしても、固定電極との円滑な接触を保つことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、グリッド形消弧装置を備えた配電機器の可動電極において、前記グリッド形消弧装置の電磁作用によりアークが遷移する部位にメイン接触部の厚さより薄くしたアーク受け部を形成したことをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、アーク受け部がアークを受け、アークによって荒らされても、アーク受け部は固定電極とのメイン接触部の厚さより薄いので、接触時に固定電極を傷つけない。また、可動電極のメイン接触部とアーク受け部とを別部位とすることにより、メイン接触部が荒れることを抑制することができる。さらに、アーク受け部が、アークを受けるため、可動電極の先端下部に耐弧メタルを設けなくてもよい。
【0009】
アーク受け部の位置としては、例えば、請求項2に記載の発明によるように、その先端部に設けてもよい。更に、請求項3に記載の発明によるように、アーク初期発生部の先端から開放方向に向かうに従い拡大して設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グリッド形消弧装置を備えた配電機器の可動電極において、アークによって先端部の表面が荒れたとしても、固定電極との円滑な接触を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図1〜3を参照して説明する。なお、グリッド形消弧装置を備えた開閉器については、先の図4〜7に示した構造と同様であるため説明を省略する。
【0012】
図1は、開閉器の電極部の平面図である。図1に示されるように、開閉器の可動電極33は、平行平板状の一対の接触刃33a,33bを備えている。固定電極22の上方には、グリッド形消弧装置41が設けられる。該グリッド形消弧装置41には、可動電極33側に凹部が二箇所設けられ、それぞれの凹部を各々の接触刃33a,33bが通過する。図2は、接触刃33aの平面図である。図2に示されるように、接触刃33aの厚みは、本実施形態においてそれぞれ5mmである。接触刃33bも同様である。
【0013】
次に、図3を参照して可動電極33について説明する。図3(a)は、右側接触刃33aの左側面図である。図3(b)は、左側接触刃33bの右側面図である。両接触刃33a,33bは、図3(a)に示されるように、右側接触刃33aの左側面には、アーク初期発生部36、すなわち接触刃33aの先端下部、の先端から可動電極33の開放方向に向かうに従い拡大するアーク受け部35aが形成されている。該アーク受け部35aは、一点鎖線部から縁部に向かうに従い、接触刃33aの厚さが徐々に薄くなるテーパ状に形成されている。最も薄い部分は3mmの厚さになっている。なお、この最も薄い部分の厚さは、要求強度に併せて適宜変更してもよく、本来の厚さより少なくとも0.5mm減ずることが望ましい。アーク受け部35aの近傍に位置する一点鎖線で囲まれた部分は、固定電極22と接触する(以下、メイン接触部37という。)。右側接触刃33aの側面には、軸61,62それぞれが挿通される軸孔61a,62aが設けられる。同様に、左側接触刃33bの右側面にはアーク受け部35bが設けられるとともに、メイン接触部37は固定電極22と接触する。また、左側接触刃33bの側面には、軸61,62それぞれが挿通される軸孔61a,62aが設けられる。これら接触刃33a,33bのアーク初期発生部36に対応する部位には、それぞれ耐弧メタル34が設けられている。
【0014】
次に、可動電極33を開放方向への回動操作について説明する。
両接触刃33a,33bの回動操作は、軸62に連結されている作動リンク51によって行われる。両接触刃33a,33bが開放方向に回動操作されると、図5に示されるように、固定電極22との接触がなくなり、開放方向に離間する。すると、固定電極22に設けられる耐弧メタル23及びその周辺部の少なくとも一方と接触刃33a,33bのアーク初期発生部36との間にアークが発生する。そして、更に開放方向に回動操作されると、図6に示されるように、固定電極22と両接触刃33a,33bとが更に離間し、グリッド形消弧装置41に発生する電磁力により、同アークはグリッド形消弧装置41の奥の方、すなわち可動電極33から離間する側へ駆動される。このため、両接触刃33a,33bのアーク発生部は、アーク初期発生部36とは異なり、先端部、すなわちアーク受け部35a,35bに遷移する。この結果、アーク受け部35a,35bの表面が荒れる。
【0015】
そして、このアーク受け部35a,35bが荒れた両接触刃33a,33bを投入方向(開放方向の逆方向)に回動操作すると、アーク受け部35a,35bは固定電極22に接触することなく、メイン接触部37が接触し、通電される。すなわち、アーク受け部35a,35bに発生するアーク発生時のスパッタの付着及びアーク熱による溶解によって生じる凹凸による表面の荒れは、同アーク受け部35a,35bがメイン接触部37よりも薄く形成されているので、表面の荒れによる凹凸が固定電極22をかじって接触部表面を荒らすことを防止できる。
【0016】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)アーク受け部35a,35bがアークを受け、アークによって荒らされても、アーク受け部35a,35bは固定電極22とのメイン接触部37の厚さより薄いので、接触時に固定電極22を傷つけない。また、可動電極33のメイン接触部37とアーク受け部35a,35bとを別部位とすることにより、メイン接触部37が荒れることを抑制することができる。
【0017】
(2)可動電極33のアーク受け部35a,35bがアークによって荒らされ、0.5mmほどの凹凸が生じたとしても、最も薄いところで3mmの厚さとしているため、固定電極22に接触することを抑制することができる。
【0018】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、接触刃33a,33bの厚みを5mmとしたが、用途に併せて適宜変更可能である。ただし、アーク受け部35a,35bの厚さは、メイン接触部37の厚さが最低1mm残るように1mm以上減じた厚さとするのが望ましい。
【0019】
・上記実施形態では図3(a),(b)に示されるように、アーク受け部35a,35bをアーク初期発生部36、すなわち接触刃33aの先端下部、の先端から可動電極33の開放方向に向かうに従い拡大するように形成したが、図8に示されるように、接触刃33aの固定電極22と接触する側面、すなわち左側面の先端部全体に設けるようにしてもよい。ただし、アーク受け部35aは、メイン接触部37を確保できる範囲で形成する(アーク受け部35bも同様。図示略。)。
【0020】
・図9に示されるように、アーク受け部35aをメイン接触部37から段差状に形成してもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。
・図10に示されるように、アーク受け部35aをメイン接触部37からその外縁に向かって連続的に厚さが減じられるように形成してもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。
【0021】
・図11に示されるように、アーク受け部35aをメイン接触部37からテーパ状に厚さを減じ、その先フラットになるように形成してもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。
【0022】
・図12に示されるように、アーク受け部35aを接触刃33aの回動中心を中心としてアーク初期発生部36の先端までの半径Rの少なくとも外側に設けられるように形成してもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。同構成によれば、可動電極33の回動に併せてアーク受け部35a,35bを形成することにより、固定電極22との接触を極力残しながら、アークを受ける部分を設けることができる。
【0023】
・上記実施形態では、接触刃33a,33bの先端下部に耐弧メタル34を設けるようにしたが耐弧メタル34を設けなくてもよい。
・図13に示されるように、アーク受け部35aを接触刃33aの両側面の先端部に形成するようにしてもよい(アーク受け部35bも同様。図示略。)。同構成によれば、左右それぞれに専用の接触刃を設けることがなくなり、同一の接触刃で可動電極を形成することができる。
【0024】
・上記実施形態では、ガス開閉器に具体化したが、気中開閉器、遮断器等に適宜変更可能である。
次に、前記実施形態から把握できる請求項記載の発明以外の技術的思想をその効果と共に記載する。
【0025】
(a)請求項1又は2に記載の配電機器の可動電極において、前記アーク受け部は、前記可動電極の回動中心を中心としてアーク初期発生部の先端までの半径Rの少なくとも外側に設けられることを特徴とする配電機器の可動電極。同構成によれば、可動電極の回動に併せてアーク受け部を形成することにより、固定電極との接触を極力残しながら、アークを受ける部分を設けることができる。
【0026】
(b)請求項1〜3のいずれか一項に記載の配電機器の可動電極において、前記アーク受け部の厚さは、前記メイン接触部の厚さが最低1mm残るように1mm以上減じた厚さとすることを特徴とする配電機器の可動電極。同構成によれば、アーク受け部にアーク荒れによる凹凸ができたとしても、凹凸を勘案した厚さとすることにより固定電極に接触することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】開閉器の電極部の平面図。
【図2】可動電極の平面図。
【図3】(a)右側接触刃の左側面図、(b)左側接触刃の右側面図。
【図4】開閉器の電極部の側面図(通電時)。
【図5】開閉器の電極部の側面図(開放時)。
【図6】開閉器の電極部の側面図(開放時)。
【図7】可動電極の斜視図。
【図8】可動電極の側面図。
【図9】可動電極の平面図。
【図10】可動電極の平面図。
【図11】可動電極の平面図。
【図12】可動電極の側面図。
【図13】可動電極の平面図。
【符号の説明】
【0028】
10…本体ケース、21…電源側ブッシング、22…固定電極、23…耐弧メタル、31…負荷側ブッシング、32…導電棒、33…可動電極、33a…右側接触刃、33b…左側接触刃、34…耐弧メタル、35a,35b…アーク受け部、36…アーク初期発生部、37…メイン接触部、41…グリッド形消弧装置、51…作動リンク、61,62…軸、R…半径。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッド形消弧装置を備えた配電機器の可動電極において、
前記グリッド形消弧装置の電磁作用によりアークが遷移する部位にメイン接触部の厚さより薄くしたアーク受け部を形成したことを特徴とする配電機器の可動電極。
【請求項2】
請求項1に記載の配電機器の可動電極において、
前記アーク受け部は、その先端部に設けられることを特徴とする配電機器の可動電極。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配電機器の可動電極において、
前記アーク受け部は、アーク初期発生部の先端から開放方向に向かうに従い拡大して設けられることを特徴とする配電機器の可動電極。
【請求項1】
グリッド形消弧装置を備えた配電機器の可動電極において、
前記グリッド形消弧装置の電磁作用によりアークが遷移する部位にメイン接触部の厚さより薄くしたアーク受け部を形成したことを特徴とする配電機器の可動電極。
【請求項2】
請求項1に記載の配電機器の可動電極において、
前記アーク受け部は、その先端部に設けられることを特徴とする配電機器の可動電極。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配電機器の可動電極において、
前記アーク受け部は、アーク初期発生部の先端から開放方向に向かうに従い拡大して設けられることを特徴とする配電機器の可動電極。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−71540(P2008−71540A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247198(P2006−247198)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]