説明

配電線用落下防止装置

【課題】配電線が断線した場合に感電事故を引き起こすのを防止できる配電線用落下防止装置を提供すること。
【解決手段】電柱1の間に互いに対向するように架設された2本の配電線(高圧配電線)2の間、すなわち、外側一方の配電線2aと中央の配電線2bとの間、および、外側他方の配電線2cと中央の配電線2bとの間に、配電線用落下防止装置3を介装する。
【効果】配電線用落下防止装置3により連結された2本の配電線2のうち一方の配電線2が断線した場合でも、その断線した配電線2が、配電線用落下防止装置3を介して連結された他方の配電線2により保持されるので、断線した端部が地上に落下するのを防止でき、感電事故を引き起こすのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、街中などに立設されている電柱の間に架設された配電線に適用され、配電線が断線した場合に、その断線した端部が地上に落下するのを防止するための配電線用落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、家庭や工場などに供給される電力は、変電所から、地上に所定距離ごとに立設されている電柱の間に架設された3本の配電線を用いて送られる。3本の配電線は、それぞれ碍子を用いて電柱に取り付けられ、互いに水平方向または垂直方向に一定の間隔を隔てて平行状に対向するように配置される(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−278846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の配電線の取付態様では、配電線が電柱間の途中部で断線した場合に、その断線した端部が地上に落下するおそれがある。電柱の間に架設される配電線は、鉄塔の間に架設される送電線が裸線であるため断線により自動的に送電が停止されるのとは異なり、その外周が絶縁体により被覆されているので、断線した端部が地上に落下した場合でも、配電が停止されないことがある。したがって、断線した端部が地上に落下し配電が停止されない場合には、その端部に触れると感電事故を引き起こすおそれがある。
【0004】
本発明の目的は、配電線が断線した場合に感電事故を引き起こすのを防止できる配電線用落下防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、配電線用落下防止装置であって、所定距離を隔てて設置されている電柱に互いに対向するように架設された2本の配電線を連結し、一方の配電線が断線した場合に、その配電線を他方の配電線と連結させた状態で保持することにより、断線した配電線の端部が地上に落下するのを防止することができることを特徴としている。
【0006】
このような構成によると、配電線が断線した場合でも、その断線した配電線が、配電線用落下防止装置を介して連結された他方の配電線により保持されるので、断線した端部が地上に落下するのを防止でき、感電事故を引き起こすのを防止できる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記2本の配電線にそれぞれ連結される1対の連結部と、前記1対の連結部を一定の間隔を隔てて保持するスペーサ部とを備えていることを特徴としている。
【0007】
このような構成によると、1対の連結部にそれぞれ連結される配電線をスペーサ部で一定の間隔を隔てて保持することにより、一線が断線した場合に保持して地上への垂れ下がりを防止することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記1対の連結部は、配電線を固定するためのアイボルトを有することを特徴としている。
【0008】
このような構成によると、アイボルトのリング状の頭部に工具を挿入して回転させるだけで、アイボルトを容易に回転させて、配電線を活きたままで連結部に固定することができる。これにより、間接活線工法にて容易に配電線を固定することが可能になるので、配電線による配電を停止させることなく、容易に取付作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、配電線が断線した場合に感電事故を引き起こすのを防止できる。
請求項2に記載の発明によれば、配電線の垂れ下がりを防止できる。
請求項3に記載の発明によれば、配電線に対する配電線用落下防止装置の取付作業が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、電柱1の間に架設される配電線2が、本発明の一実施形態の配電線用落下防止装置3によって支持されている構造を示す概略説明図である。
図1に示すように、街中などで一般的に見られる電柱1は、所定距離ごとに、地面から上方に向かって立設されている。変電所から家庭や工場などに供給される電力は、これらの電柱1の間に架設された3本の配電線(高圧配電線)2を用いて送られる。3本の配電線2は、それぞれ、複数本の銅線を縒ることにより軸状に形成された芯線と、この芯線の外周を軸方向全体にわたって被覆するカバーとを備えた絶縁電線である。
【0011】
各電柱1の上端部には、配電線2を支持するための支持部材4が取り付けられている。支持部材4は、電柱1同士の対向方向に対して直交する水平方向に長尺な形状を有し、この支持部材4上に、3本の配電線2が互いに水平方向に一定の間隔を空けて対向するように支持されている。
支持部材4には、その長手方向に沿って一定間隔毎に、各配電線2を支持部材に固定するための碍子5が取り付けられている。各碍子5は、絶縁材料により形成され、配電線2を絶縁状態で支持して電柱1に取り付けることができる。
【0012】
互いに対向する配電線2の間、すなわち、外側一方の配電線2aと中央の配電線2bとの間、および、外側他方の配電線2cと中央の配電線2bとの間には、それらの2本の配電線を連結し、配電線2a,2b,2cが断線した場合に、その断線した配電線2a,2b,2cの端部が地上に落下するのを防止するための配電線用落下防止装置3が介装されている。
【0013】
より具体的には、外側一方の配電線2aと中央の配電線2bとの間、および、外側他方の配電線2cと中央の配電線2bとの間には、それぞれ複数(たとえば、3つずつ)の配電線用落下防止装置3が、配電線2a,2b,2cが架設されている高さよりも短い所定間隔毎に介装されている。外側一方の配電線2aと中央の配電線2bとの間に介装された配電線用落下防止装置3、および、外側他方の配電線2cと中央の配電線2bとの間に介装された配電線用落下防止装置3は、互いに近接配置されている。
【0014】
ただし、外側一方の配電線2aと中央の配電線2bとの間に介装される配電線用落下防止装置3、および、外側他方の配電線2cと中央の配電線2bとの間に介装される配電線用落下防止装置3は、互いに近接配置されるような構成に限らず、外側一方の配電線2aと中央の配電線2bとの間に介装される各配電線用落下防止装置3の中間部に、外側他方の配電線2cと中央の配電線2bとの間に介装される配電線用落下防止装置3が位置するような構成であってもよい。
【0015】
図2は、配電線用落下防止装置3の側面図である。図3は、配電線用落下防止装置3の要部側面図である。
図2および図3において、この配電線用落下防止装置3は、対向する2本の配電線2にそれぞれ連結される1対の連結部6と、これらの1対の連結部6を一定の間隔を隔てて保持するスペーサ部7とを備えている。
【0016】
スペーサ部7は、一直線上に軸状に延びる芯材8と、この芯材8の外周を軸方向全体にわたって被覆する被覆部9とを備えている。芯材8は、たとえばFRP(組織強化プラスチック)により形成され、被覆部9は、たとえばシリコーンゴムにより形成されている。芯材8と被覆部9とは、それらの当接面にシリコーン系の接着剤が塗布されることにより接着されている。スペーサ部7(被覆部9)の外径は、たとえば12mm程度である。
【0017】
連結部6は、スペーサ部7の端部を受け入れる支持部10と、この支持部10との間に配電線2を挟持するための押え部11とを備えている。支持部10および押え部11は、たとえばエポキシ樹脂により形成されている。
支持部10は、その長手方向内側(スペーサ部7側)が、スペーサ部7の端部を挿入固定できるような有底円筒形状に形成されており、その長手方向外側(スペーサ部7と反対側)が、スペーサ部7の挿入方向に沿って長尺形状を有している。この支持部10の長手方向内側にスペーサ部7の端部が挿入された状態で、支持部10の長手方向内側が接着剤などを用いて固定されることにより、スペーサ部7の端部が支持部10の長手方向内側に固定されている。これにより、スペーサ部7は、芯材8および被覆部9が固定された状態で支持部10の長手方向内側により支持される。
【0018】
支持部10の長手方向外側の上面には、配電線2の下方側半分を受けるための挟持面12が形成されている。この挟持面12は、支持部10の長手方向に直交する水平方向に延びる軸線を中心に、略半円弧状に形成されている。スペーサ部7の両端部に固定されている各支持部10に形成された挟持面12の軸線間距離は、たとえば750mmであって、電柱1に互いに対向するように架設される配電線2間の距離と略一致している。
【0019】
押え部11は、支持部10の長手方向外側の上方に対向するように配置されている。押え部11は、支持部10の長手方向と同一方向に長尺形状を有している。押え部11の長手方向内側(スペーサ部7側)の下面には、支持部10に形成された挟持面12に対向する位置に、配電線2の上方側半分を受けるための挟持面13が形成されている。この挟持面13は、押え部11の長手方向に直交する水平方向に延びる軸線を中心に、略半円弧状に形成されている。
【0020】
支持部10の長手方向外側端部には、上下方向に沿って貫通する貫通孔14が形成されている。また、押え部11の長手方向外側端部には、支持部10に形成された貫通孔14に対向する位置に、上下方向に沿って貫通する貫通孔15が形成されている。これらの貫通孔14,15には、下方からアイボルト16が挿入されている。
アイボルト16は、たとえば軟鋼により形成され、リング状(円環状)に形成された頭部17と、この頭部の外周面の一部から径方向に突出する軸部18とが一体的に形成された形状を有している。軸部18の外周面には、ねじ山(図示せず)が形成されている。アイボルト16は、その軸部18が支持部10の貫通孔14に下方から挿入されて当該貫通孔14を貫通し、さらに押え部11の貫通孔15を貫通した状態で、先端(上方)からナット19が捩じ込まれる。これにより、支持部10と押え部11とがアイボルト16を介して連結される。
【0021】
押え部11に形成された貫通孔15の上部は、ナット19を収容するための収容凹部20を構成している。この収容凹部20は、ナット19の外周面に対応する形状を有していて、収容凹部20内に収容されているナット19は、収容凹部20の内壁面によって回転が規制される。したがって、アイボルト16を取り付ける際には、ナット19を収容凹部20に収容した状態で、軸部18を支持部10の貫通孔14および押え部11の貫通孔15に貫通させるようにして、収容凹部20に収容されているナット19に締め付けることにより、ナット19を回転しないように工具などで保持したりすることなく容易に取り付けることができる。
【0022】
支持部10および押え部11には、長手方向に直交する水平方向の両側に、上下方向に延びるガイドピン23が挿入されている。各ガイドピン23は、押え部11に遊嵌された状態で支持部10に固定されている。これらのガイドピン23により、アイボルト16を締め付ける際に押え部11が回転するのを防止することができる。
アイボルト16の軸部18をナット19に対して締め付けていくと、支持部10と押え部11との間隔が次第に狭くなる。したがって、支持部10の挟持面12と押え部11の挟持面13との間に、支持部10(または押え部11)の長手方向に直交する水平方向に沿って配電線2を配置し、アイボルト16を締め付ければ、これらの挟持面12,13の間に形成される円筒空間内に配電線2を挟持することができる。
【0023】
押え部11の下面の外方側端部には、下方に向かって突出する位置決め突起21が形成されている。支持部10の上面の外方側端部には、位置決め突起21に対向する位置に、この位置決め突起21に対応する形状の位置決め凹部22が形成されている。アイボルト16を締め付けて挟持面12,13間に配電線2を挟持した状態では、押え部11の位置決め突起21が支持部10の位置決め凹部22内に入り込んで、相対変位が規制されるようになっている。この状態では、配電線2が断線し押え部11が連動して回転しそうになったときでも、位置決め突起21が位置決め凹部22内で係止されることにより回転が規制される。
【0024】
この実施形態では、配電線用落下防止装置3により連結された2本の配電線2のうち一方の配電線2が断線した場合でも、その断線した配電線2が、配電線用落下防止装置3を介して連結された他方の配電線2により保持されるので、断線した端部が地上に落下するのを防止でき、感電事故を引き起こすのを防止できる。
また、アイボルト16のリング状の頭部17に工具を挿入して回転させるだけで、アイボルト16を容易に回転させて、配電線2を活きたままで連結部6に固定することができる。これにより、間接活線工法にて容易に配電線2を固定することが可能になるので、配電線2による配電を停止させることなく、容易に取付作業を行うことができる。
【0025】
さらに、スペーサ部7の芯材8および被覆部9を支持部10で固定することにより、芯材8を被覆部9で頑丈に覆うことができるので、耐候性を向上できる。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、たとえば、スペーサ部7の両端部に固定されている各支持部10に形成された挟持面12の軸線間距離は、750mmに限らず、電柱1の間に互いに対向するように架設される配電線2間の距離に応じて、350mm、450mm、550mm、650mmといった寸法を採用できる。
【0026】
配電線用落下防止装置3は、支持部10が下方に位置し、押え部11が上方に位置するような姿勢で、配電線2を挟持するような構成に限らず、支持部10が上方に位置し、押え部11が下方に位置するような姿勢で、配電線2を挟持するように取り付けられてもよい。
また、配電線用落下防止装置3は、水平方向に対向するように配置された配電線2を連結するために水平方向に沿って取り付けられるような構成に限らず、垂直方向に対向するように配置された配電線(垂直配電線)を連結するために垂直方向に沿って取り付けられるような構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電柱の間に架設される配電線の配電線用落下防止装置による支持構造を示す概略説明図である。
【図2】図1に示す配電線用落下防止装置の側面図である。
【図3】図1に示す配電線用落下防止装置の要部側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 電柱
2 配電線
3 配電線用落下防止装置
6 連結部
7 スペーサ部
8 芯材
9 被覆部
10 支持部
16 アイボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定距離を隔てて設置されている電柱に互いに対向するように架設された2本の配電線を連結し、一方の配電線が断線した場合に、その配電線を他方の配電線と連結させた状態で保持することにより、断線した配電線の端部が地上に落下するのを防止することができることを特徴とする、配電線用落下防止装置。
【請求項2】
前記2本の配電線にそれぞれ連結される1対の連結部と、
前記1対の連結部を一定の間隔を隔てて保持するスペーサ部とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の配電線用落下防止装置。
【請求項3】
前記1対の連結部は、配電線を固定するためのアイボルトを有することを特徴とする、請求項2に記載の配電線用落下防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate