説明

酒類含有固形食品及びその製造方法

【課題】 酒精含度が高く、且つ、口溶けのよい酒類含有固形食品を提供する。
【解決手段】 粉末酒の粉末化基材全重量に対して30重量部以上の糖アルコールを使用することにより、酒精含度が高く、且つ、口溶けのよい酒類含有固形食品を得ることができる。また、キャンディー基材の一部に、糖アルコールを使用することにより、更に口溶けを改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒精を高濃度に含み、且つ、口溶けのよい固形食品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酒類を含有した固形食品としては、ウイスキーボンボンなどの、内部に液状の酒類含有物を封入したものが市販されているが、このような食品は内部が液状である為少しでも破損すると外部に流出してしまうという重大な欠点を有している。
【0003】
また、砂糖と水飴を145℃で混練した後、ラム、ブランデーなどの酒精分を混練撹拌するキャンディー製造方法も提示されているが、酒精の沸点よりも高温である為、酒精分の揮発が大きいという欠点がある。(特許文献1)
【0004】
これらの欠点を解決するために、粉末酒を用いてキャンディーを製造する方法を本発明者等は先に発明しているが、未だ次のような欠点が存在する。すなわち、酒精含度を高くする為に、多量の粉末酒を使用した場合、粉末酒の粉末化基材として使用されているデキストリンが口溶けを阻害する。また、多量の粉末酒を混合する為にはキャンディー基材の粘性を下げる必要があり、キャンディー基材の煮詰温度を下げる、もしくは粉末酒混合時の温度を上げる必要がある。煮詰温度を下げた場合、キャンディー中の水分値が高くなり、粉末酒の皮膜が崩壊し、製造時及び保存時の酒精揮散量が多くなり、また、粉末酒混合時の温度を上げた場合、製造時の酒精揮散量が多くなるという問題がある(特許文献2,3)
【特許文献1】特開昭54−17162
【特許文献2】特公昭47−1396
【特許文献3】特公昭61−54378
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酒精含度が高く、且つ、口溶けのよい酒類含有固形食品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究の結果、粉末酒を混練して酒類含有固形食品を製造する方法において、粉末酒の粉末化基材全重量に対して30重量部以上の糖アルコールを使用することにより酒精含度が高く、且つ、口溶けのよい酒類含有固形食品が得られることを見出し、本発明に到達した。また、キャンディー基材に糖アルコールを使用することで、更に口溶けがよく、且つ、粉末酒の混合が容易になることも見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明を用いれば、酒精含度が高く、且つ、口溶けのよい酒類含有固形食品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を詳しく説明する。本発明にかかる酒類含有固形食品としては、例えば、キャンディー、グミ、マシュマロ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、アイスクリームなどが挙げられる。
【0009】
本発明に使用する粉末酒類とは、醸造酒、蒸留酒、混成酒、嗜好性飲料材料の酒精抽出液などの酒精水溶液に、粉末化基材を用い脱水乾燥して製造されるものである。粉末化基材全重量に対して30重量部以上の糖アルコールを使用することにより、口溶けのよい酒類含有固形食品を得ることができる。更に、粉末化基材全重量に対して60重量部以上の糖アルコールを使用することにより、より口溶けのよい酒類含有固形食品を得ることができる。ただし、グルコース重合度の平均値が3以下の糖アルコールでは、乾燥性が悪く乾燥時の回収率が悪くなる、粉末酒の酒精分が低くなるなどの問題が生じる為、粉末化基材として使用する糖アルコールは、グルコース重合度の平均値は4以上が望ましい。
【0010】
本発明にかかる酒類含有キャンディーを製造するには、例えば以下のようにする。水にゼリー化材・糖類などを加熱溶解し、105℃以上になるまで煮詰めた煮詰め液に乳化剤・植物油脂などを混合したキャンディー基材に対し、粉末酒を混合し、成型切断する。
【0011】
キャンディー基材に使用する糖類としては、砂糖、水飴、糖アルコール等があげらえる。特に、キャンディー基材に使用する全糖類100重量部に対して、糖アルコールを固形分比で40重量部以上含有することが口溶けの面から望ましい。
【0012】
キャンディー基材に使用する全糖類100重量部に対して、糖アルコールを固形分比で40重量部以上含有することで、キャンディー基材の粘性が低くなり、キャンディー基材の煮詰め温度を上げた場合の粉末酒の混合が容易になる。また、粉末酒混合時の温度を78℃以下に下げた場合の粉末酒の混合も容易になる。キャンディー基材への粉末酒の混合工程に於ける粉末酒の皮膜の崩壊を防ぐ為、煮詰め温度は115℃以上が好ましい。また、キャンディー基材への粉末酒の混合工程に於ける粉末酒の酒精分の揮散を防ぐ為、粉末酒混合時の温度は酒精の沸点である78℃より低いことが好ましい。
【0013】
尚、本発明により得られた含酒精キャンディーを更に製菓技術の常法によりチョコレート被覆、或いは砂糖被覆等の被覆技術手段を適用するに際しても、極めて容易に実施し得ることは当然である。
【実施例】
【0014】
次に、試験例、比較例、及び実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0015】
(試験例1)
酒精分40%W/Wのウィスキー1.3kgへ粉末化基材1kgを添加混合した溶液をスプレー乾燥により脱水乾燥して酒精分を約30%W/W含む含ウィスキー粉末A〜Kを作成した。粉末化基材は糖アルコール(BDH−1、松谷化学工業株式会社、4糖以上が90%以上)及びデキストリン(試作品名BD−1、松谷化学工業株式会社、DE6〜9、BDH−1を水素還元する前の原料デキストリン)を使用し、糖アルコール使用比率(%W/W)が0〜100%になるように調整した。
ゼラチン20gに水100gを加えて膨潤溶解させ、これに砂糖200gと水飴(日食ハイマルトースMC−55、日本食品化工株式会社製、水分25%)200gを混合し、110℃まで煮詰めた。この煮詰め液を混練機に移し入れ、乳化剤(リョートーシュガーエステルS−770、三菱化成食品株式会社製)5g、植物性油脂70gを混合したキャンディー基材537gを75℃まで冷却した後、含ウィスキー粉末A〜K250gを投入し、充分混合した後取り出して適宜裁断成型し、含ウィスキーキャンディーを得た。
【0016】
【表1】

1;良い
2;やや良い
3;普通
4;やや悪い
5;悪い
10名の評価の平均点を四捨五入して整数で表した。
【0017】
その結果、表1に記したごとく、糖アルコールを30〜100重量部使用した含ウィスキー粉末を使用したキャンディーは口溶けが良好であった。更に糖アルコールを60〜100重量部使用した含ウィスキー粉末を使用したキャンディーは口溶けが極めて良好であった。
【0018】
(実施例1)
ゼラチン20gに水100gを加えて膨潤溶解させ、これに砂糖200gと水飴200gを混合し、110℃まで煮詰めた。この煮詰め液を混練機に移し入れ、乳化剤5g、植物性油脂70gを混合したキャンディー基材537gを75℃まで冷却した後、試験例1の含ウィスキー粉末K400gを投入し、充分混合した後取り出して適宜裁断成型し、含有酒精分12%W/Wの含ウィスキーキャンディーを得た。
【0019】
(比較例1)
ゼラチン20gに水100gを加えて膨潤溶解させ、これに砂糖200gと水飴200gを混合し、110℃まで煮詰めた。この煮詰め液を混練機に移し入れ、乳化剤5g、植物性油脂70gを混合したキャンディー基材537gを75℃まで冷却した後、試験例1の含ウィスキー粉末A400gを投入し、充分混合した後取り出して適宜裁断成型し、含有酒精分12%W/Wの含ウィスキーキャンディーを得た。
【0020】
(実施例2)
ゼラチン20gに水100gを加えて膨潤溶解させ、これに砂糖200gと糖アルコール(スイートP EM、日研化成株式会社)150gを混合し、115℃まで煮詰めた。この煮詰め液を混練機に移し入れ、乳化剤5g、植物性油脂70gを混合したキャンディー基材486gを75℃まで冷却した後、試験例1の含ウィスキー粉末K400gを投入し、充分混合した後取り出して適宜裁断成型し、含有酒精分13%W/Wの含ウィスキーキャンディーを得た。
【0021】
(比較例2)
ゼラチン20gに水100gを加えて膨潤溶解させ、これに砂糖200gと糖アルコール(スイートP EM、日研化成株式会社)150gを混合し、115℃まで煮詰めた。この煮詰め液を混練機に移し入れ、乳化剤5g、植物性油脂70gを混合したキャンディー基材486gを75℃まで冷却した後、試験例1の含ウィスキー粉末A400gを投入し、充分混合した後取り出して適宜裁断成型し、含有酒精分13%W/Wの含ウィスキーキャンディーを得た。
【0022】
(官能評価)
実施例及び比較例1、2で得られたキャンディーの口溶けを10名のパネラーによって評価した。
【0023】
【表2】

1;良い
2;やや良い
3;普通
4;やや悪い
5;悪い
10名の評価の平均点を四捨五入して整数で表した。
【0024】
キャンディー全重量に対し、粉末酒を43%W/W含有する実施例1では、口溶けが良好であり、濃厚なウィスキー感を感じた。粉末酒の粉末化基材としてデキストリンを使用した比較例1では、極めて口溶けが悪かった。
【0025】
キャンディー全重量に対し粉末酒を45%W/W含有し、キャンディー基材に使用する全糖類固形分重量の43%W/Wの糖アルコールを使用した実施例2では、口溶けが極めて良好であり、濃厚なウィスキー感を感じた。また、キャンディー基材の粘性が低く、粉末酒の混合も容易であった。粉末酒の粉末化基材としてデキストリンを使用した比較例2では、口溶けが悪かった。
【0026】
(実施例3)
ブランデー(酒精分43%W/W)8kgへ糖アルコール(エスイーP、日研化成株式会社、4糖以上が70%以上)5kg及びデキストリン(パインデックス#2、松谷化学工業株式会社、DE12)2kgを添加混合した溶液をスプレー乾燥により脱水乾燥して、酒精分30%W/Wの含ブランデー粉末9kgを得た。
糖アルコール(スイートP EM)8kgに水を加えて溶解した後、125℃まで煮詰めた。この煮詰め液を混練機に移し入れ、乳化剤0.1kg、植物性油脂1.5kgを混合したキャンディー基材を60℃まで冷却した後、含ブランデー粉末10kgを投入し、充分混合した後取り出して適宜裁断成型し、含有酒精分15%の含ブランデーキャンディーを得た。得られたキャンディーをセンターにして、これをカカオバターからなる品温30℃のチョコレート生地をスプレーし、冷風で乾燥して皮膜を生成せしめる。所望の大きさに到達した後、シェラックを用いて艶付作業を行い、チョコレートで被覆した。得られたチョコレート被覆ブランデーキャンディーは口溶けがよく、濃厚なブランデー感があった。
【0027】
(実施例4)
ラム酒(酒精分41%W/W)8kgへ糖アルコール(エスイーP、日研化成株式会社、4糖以上が70%以上)5kg及びデキストリン(パインデックス#2、松谷化学工業株式会社、DE12)2kgを添加混合した溶液をスプレー乾燥により脱水乾燥して、酒精分28%W/Wの含ラム酒粉末9kgを得た。
一方、水4.9kgを攪拌機付ジャケット式タンクに入れて加温し、これに生クリーム1.7kg、全脂練乳2kgを入れ、次いで脱脂粉乳0.5kg、砂糖0.8kg、乳化安定剤0.1kgを撹拌せしめる。このようにして得られたアイスクリームミックスをホモゲナイズした後、殺菌冷却し、3℃で5時間保冷してエージングを行う。
このアイスクリームミックスを−4〜−6℃でフリージング処理を行う。フリージングしたアイスクリームミックスに、冷蔵庫で冷却された上記含ラム酒粉末2kgを添加混合して、容器に充填し、−23℃に冷凍してハードニング処理を行い、ラム酒入りアイスクリームを製造した。得られたアイスクリームは酒精分4.5%W/Wを含有し、ラム酒の芳醇な風味のあるアイスクリームであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末化基材全重量に対して糖アルコールを30重量部以上使用した粉末酒を含有することを特徴とする酒類含有固形食品。
【請求項2】
酒類含有固形食品全重量に対して、粉末酒を40重量部以上含有することを特徴とする請求項1記載の酒類含有固形食品。
【請求項3】
キャンディー基材に使用する全糖類100重量部に対して、糖アルコールを固形分比で40重量部以上含有することを特徴とする請求項1及び2記載の酒類含有キャンディー。
【請求項4】
キャンディー基材に使用する全糖類100重量部に対して、糖アルコールを固形分比で40重量部以上含有し、115℃以上に煮詰めた後、78℃以下に冷却してから粉末酒を混合する請求項3記載の酒類含有キャンディーの製造方法。

【公開番号】特開2007−175033(P2007−175033A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−381230(P2005−381230)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(596076698)佐藤食品工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】