説明

酵母による2−デオキシ−シロ−イノソースの合成および精製する方法並びに得られた2−デオキシ−シロ−イノソース

【課題】新規な2−デオキシ−シロ−イノソースの合成方法を提供する。
【解決手段】宿主としての酵母に、2−デオキシ−シロ−イノソースの合成に関与する酵素遺伝子からなる遺伝子発現カセットを少なくとも1種類導入して形質転換体を作製し、この形質転換体を用いて炭素源から2−デオキシ−シロ−イノソースを合成する。酵母としてキャンディダ・マルトーサ、サッカロマイセス・セレビシエ、ピキア・パストリスが好ましい。炭素源としてでんぷんや米ぬかなどが挙げられる。この2−デオキシ−シロ−イノソースを含有する培養液を、水素イオン型強酸性陽イオン交換樹脂と有機酸イオン型塩基性陰イオン交換樹脂からなる混合ベッド型カラムで処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母による2−デオキシ−シロ−イノソース(DOI; 2−deoxy−scyllo−inosose)の合成方法、これに用いる形質転換体およびこの方法により合成された2−デオキシ−シロ−イノソースに関する。詳しくは、本発明は、酵母に、2−デオキシ−シロ−イノソースの合成に関与する酵素遺伝子からなる遺伝子発現カセットを少なくとも1種類導入してなることを特徴とする形質転換体および前記形質転換体を用いて2−デオキシ−シロ−イノソースを合成する方法、この方法により合成された2−デオキシ−シロ−イノソースを培養液中から精製して回収する方法、およびこの方法により得られた2−デオキシ−シロ−イノソースに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素6員環化合物は従来石油化学の分野において、石油を原料として生産されてきた。
【0003】
一方、ブチロシン生産菌バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)において、グルコース−6−リン酸(G−6−P)を基質として、炭素6員環化合物である2−デオキシ−シロ−イノソース(2−deoxy−scyllo−inosose、以下、DOI)を合成する反応を触媒する、DOI合成酵素が見いだされた(特許文献2、図1)。
【0004】
DOI合成酵素は2−デオキシストレプタミンをアグリコンとして含有するアミノグリコシド抗生物質の生合成に関与する酵素であり、その生成物であるDOIは、医薬原料や化学工業資源として有用な物質である。DOIを化学的に合成する方法は多段階の反応と有害又は高価な金属を使用するのに対し、DOI合成酵素を用いれば、効率的に短行程でDOIを生産することができる。これまでに、DOI合成酵素を大腸菌に発現させることによって得られる組み換えDOI合成酵素を用いて、グルコース−6−リン酸から短工程でDOIを生産する方法が確立されている(特許文献2)。
【0005】
一方、酵母は増殖が速く、菌体生産性が高いことで知られていた。酵母菌体は従来単一細胞蛋白質(Single Cell Protein)として注目され、ノルマルパラフィンを炭素源とした飼料用菌体生産が研究され、調味料としてその核酸成分が利用されてきた。更に、細菌と比べて菌体と培養液との分離が容易であり、大規模での連続培養も比較的容易であった。
【0006】
酵素を用いてポリエステルを合成する方法が特許文献1に開示されている。また、精製したDOI合成酵素を用いて、グルコース−6−リン酸DOIを合成する方法が特許文献2に開示されている。この方法ではグルコース誘導体(リン酸塩)が出発原料として使用されている。
【0007】
しかしながら、DOI合成酵素を組み込んだ酵母を用いて、菌体内でD−グルコースからDOIを合成する方法は課題として提起されていなかった。
【0008】
さらに、2−デオキシ−シロ−イノソース(DOI)は、グルコースに2−デオキシ−シロ−イノソース合成酵素とヘキソキナーゼを、またはグルコース−6−リン酸に2−デオキシ−シロ−イノソース合成酵素作用させることにより一段階の酵素反応で合成できることが知られている(特許文献3、非特許文献1)。また、酵素反応液を濃縮して酢酸溶液としヨウ化水素を作用させることにより、DOIを精製することなくカテコールに変換できることも報告されている(特許文献3)。
【0009】
現在までに、酵素反応によりDOIを合成して、反応組成物のままのDOIを変換することは報告されているが、DOIそのものを精製・単離する方法は未だ報告されていない。更に、酵素反応液中より多種多量の培地成分、炭素源であるグルコースの他、ペプトンなどに由来するアミノ酸類あるいは各種の金属イオン類が含まれている本発明の微生物培養液中からDOIを精製することに関する情報は全く無い。すなわち、酵素反応液および微生物培養液からDOIを精製する報告はなく、況や工業的に応用可能な精製方法については全く確立されていないのが現状である。
【0010】
培養液中からDOIを精製するには、実験室的にはHPLCによる分取あるいは活性炭カラムクロマトグラフィーによる方法が知られている。しかし、HPLCによる分取が工業的生産には適さないことはいうまでもない。また活性炭カラムによる方法では、培地中の有機化合物をいちど活性炭に吸着させた後、アルコールなどの有機溶媒の濃度を変化させながら、吸着力の差を利用して順次溶出させることになる。したがって大量のDOIを生産する場合、培地中の大部分の有機化合物を吸着させるだけの量の活性炭が必要となり、この方法も大量精製には不向きである。そのようなことから、これまでは工業的方法でDOIを精製する適切な方法は確立されていなかった。
【特許文献1】国際公開第01/088144号パンフレット
【特許文献2】日本国特許第3122762号(特開2000−236881号公報)
【特許文献3】日本国特許第3122762号:特開2000−236881号公報
【非特許文献1】K. Kakinuma, E. Nango, F. Kudo, Y. Matsushima, and T. Eguchi, Tetrahedron Letters, 41, 1935−1938 (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、宿主としての酵母に、DOI合成酵素をコードする遺伝子からなる遺伝子発現カセットを少なくとも1種類導入した形質転換体を作製し、この形質転換体を用いてDOIを合成すればよいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
工業的方法でDOIを精製するには、例えば培養液をカラムの上部から流すと、下部から精製されたDOIが流出してくるような原理に基づく方法が好ましい。すなわち本発明の課題は、DOI以外の物質を吸着して、且つDOIは吸着されずに最初に流出してくるようなカラム基材を探索することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、DOI合成酵素をコードする遺伝子からなる遺伝子発現カセットである。
【0014】
また、酵母に、DOI合成酵素をコードする遺伝子からなる遺伝子発現カセットを少なくとも1種類導入してなることを特徴とする形質転換体である。
【0015】
また、本発明は、酵母を用いて炭素源からDOIを合成する方法において、上記の形質転換体を用いることを特徴とするDOIの合成方法である。
【0016】
さらにまた、本発明は、上記の方法により合成してなることを特徴とする2−デオキシ−シロ−イノソースである。
【0017】
また本発明は、上記の合成方法により得られ、かつ、2−デオキシ−シロ−イノソースを含有する培養液を、水素イオン型強酸性陽イオン交換樹脂と有機酸イオン型塩基性陰イオン交換樹脂からなる混合ベッド型カラムで処理することを特徴とする2−デオキシ−シロ−イノソースの精製法である。好ましくは前記有機酸イオン型塩基性陰イオン交換樹脂が酢酸イオン型である。また、本発明は精製された2−デオキシ−シロ−イノソースである。
【発明の効果】
【0018】
医薬品原料や化学工業原料として重要な炭素6員環化合物はこれまで、石油を原料とする石油化学によって製造されていた。しかしながら、本発明の技術を用いることにより、再生可能な植物資源(バイオマス)由来のD−グルコースを原料として炭素6員環化合物であるDOIを酵母により合成することが可能となった。また、培養液を処理して、精製されたDOIを回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明では図1に示す反応式に従ってD−グルコースからDOIが合成される。D−グルコースからグルコース−6−リン酸への変換は、菌体が保有するヘキソキナーゼによって触媒される。グルコース−6−リン酸からDOIへの変換をもたらす多段階の反応は、菌体に導入したDOI合成酵素によって触媒される。
【0020】
酵母はDOIを合成するための宿主として最も好ましいと考えられる。その理由として、以下の2点が挙げられる。
【0021】
(1)酵母と培養液との分離が容易である。
【0022】
(2)酵母を用いた大規模の連続培養も比較的容易である。
【0023】
[宿主]
使用する酵母には特に制限はなく、菌株の寄託機関(例えばIFO、ATCC等)に寄託されているアシクロコニディウム属(Aciculoconidium属)、アンブロシオザイマ属(Ambrosiozyma属),アルスロアスカス属(Arthroascus属),アルキシオザイマ属(Arxiozyma属),アシュビア属(Ashbya属),バブジェビア属(Babjevia属),ベンシングトニア属(Bensingtonia属),ボトリオアスカス属(Botryoascus属),ボトリオザイマ属(Botryozyma属),ブレッタノマイセス属(Brettanomyces属),ビュレラ属(Bullera属),ビュレロマイセス属(Bulleromyces属),キャンディダ属(Candida属)、シテロマイセス属(Citeromyces属),クラビスポラ属(Clavispora属),クリプトコッカス属(Cryptococcus属),シストフィロバシディウム属(Cystofilobasidium属),デバリオマイセス属(Debaryomyces属),デッカラ属(Dekkara属),ディポダスコプシス属(Dipodascopsis属),ディポダスカス属(Dipodascus属),エニエラ属(Eeniella属),エンドマイコプセラ属(Endomycopsella属),エレマスカス属(Eremascus属),エレモセシウム属(Eremothecium属),エリスロバシディウム属(Erythrobasidium属),フェロマイセス属(Fellomyces属),フィロバシディウム属(Filobasidium属),ガラクトマイセス属(Galactomyces属),ゲオトリクム属(Geotrichum属),ガイラーモンデラ属(Guilliermondella属),ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora属),ハンセヌラ属(Hansenula属),ハセガワエア属(Hasegawaea属),ホルターマンニア属(Holtermannia属),ホルモアスカス属(Hormoascus属),ハイフォピキア属(Hyphopichia属),イサットヘンキア属(Issatchenkia属),クロエケラ属(Kloeckera属),クロエケラスポラ属(Kloeckeraspora属),クルイベロマイセス属(Kluyveromyces属),コンドア属(Kondoa属),クライシア属(Kuraishia属),クルツマノマイセス属(Kurtzmanomyces属),ロイコスポリディウム属(Leucosporidium属),リポマイセス属(Lipomyces属),ロデロマイセス属(Lodderomyces属),マラセジア属(Malassezia属),メトシュニコウィア属(Metschnikowia属),ムラキア属(Mrakia属),マイクソザイマ属(Myxozyma属),ナドソニア属(Nadsonia属),ナカザワエア属(Nakazawaea属),ネマトスポラ属(Nematospora属),オガタエア属(Ogataea属),オースポリディウム属(Oosporidium属),パチソレン属(Pachysolen属),ファチコスポラ属(Phachytichospora属),ファフィア属(Phaffia属),ピキア属(Pichia属),ロドスポリディウム属(Rhodosporidium属),ロドトルラ属(Rhodotorula属),サッカロマイセス属(Saccharomyces属),サッカロマイコーデス属(Saccharomycodes属),サッカロマイコプシス属(Saccharomycopsis属),サイトエラ属(Saitoella属),サカグチア属(Sakaguchia属),サターノスポラ属(Saturnospora属),シゾブラストスポリオン属(Schizoblastosporion属),シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces属),シュワニオマイセス属(Schwanniomyces属),スポリディオボラス属(Sporidiobolus属),スポロボロマイセス属(Sporobolomyces属),スポロパキデミア属(Sporopachydermia属),ステファノアスカス属(Stephanoascus属),ステリグマトマイセス属(Sterigmatomyces属),ステリグマトスポリディウム属(Sterigmatosporidium属),シンビオタフリナ属(Symbiotaphrina属),シンポディオマイセス属(Sympodiomyces属),シンポディオマイコプシス属(Sympodiomycopsis属),トルラスポラ属(Torulaspora属),トリコスポリエラ属(Trichosporiella属),トリコスポロン属(Trichosporon属),トリゴノプシス属(Trigonopsis属),ツチヤエア属(Tsuchiyaea属),ウデニオマイセス属(Udeniomyces属),ワルトマイセス属(Waltomyces属),ウィカーハミア属(Wickerhamia属),ウィカーハミエラ属(Wickerhamiella属),ウィリオプシス属(Williopsis属),ヤマダザイマ属(Yamadazyma属),ヤロウィア属(Yarrowia属),ザイゴアスカス属(Zygoascus属),ザイゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces属),ザイゴウィリオプシス属(Zygowilliopsis属)又はザイゴザイマ属(Zygozyma属などの酵母を使用することができる。
【0024】
本発明の形質転換体において用いられる酵母として、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)が例示され、特にキャンディダ・マルトーサが好ましい。
【0025】
また、DOI生産のための直接の基質となるグルコース−6−リン酸の菌による分解代謝を抑制し、DOI生産能を高めるために、グルコース−6−リン酸の代謝に関わる酵素である、ホスホグルコースイソメラーゼ及びグルコネートデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子をそれぞれ単独で破壊した株、またはその両者を同時に遺伝子破壊した株を用いることが望ましい。
【0026】
[DOI合成酵素遺伝子]
D−グルコース(glucose)からのDOIの合成に関与する酵素の遺伝子としては特に限定されないが、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)由来のDOI合成酵素の42kDaサブユニットをコードする遺伝子(btrC)を用いることができる。
【0027】
(特許文献2:日本国特許第3122762号:特開2000−236881号公報)
(Genbank AB066276)
(非特許文献2:Kudo, F., et al. J. Antibiot., vol. 52 559−571 (1999))
DOI合成酵素活性を有する酵素をコードする遺伝子であればバチルス・サーキュランス以外の生物に由来する遺伝子も利用できる。
【0028】
上記宿主酵母の中には遺伝暗号の読みとりに異常を示す場合がある。例えばキャンディダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)(Y.Kawaguchi et al,Nature 341 164−166(1989))やキャンディダ・マルトーサ(H.Sugiyama et al,Yeast 11 43−52(1995))は、遺伝暗号CTGが、ロイシンではなくセリンに翻訳される特殊な酵母である。このような酵母では、異種生物由来の遺伝子を発現させる場合、遺伝暗号の読みとりに異常が生じることから、当該酵素のアミノ酸配列の異なった酵素が合成されることがある。その結果、当該酵素の機能が十分発揮できないことがある。
【0029】
このような現象は、予め遺伝子内に含まれる遺伝暗号CTGをロイシンに対応する他の遺伝暗号(TTA,TTG,CTT,CTC,CTA)に改変した遺伝子を使用することによって避けることができる。
【0030】
また、酵母を含む生物の遺伝暗号解析の結果、遺伝暗号の使用頻度は生物によって大きく異なることが明らかになっている。すなわち、複数ある同一アミノ酸を指定する遺伝暗号のうち,使用される遺伝暗号は生物によって偏りが認められ、使用頻度の高い遺伝暗号から成る遺伝子の翻訳効率が高いことが指摘されている。例えば,DOI合成酵素をコードする遺伝子をキャンディダ・マルトーサにおいて効率よく発現させるためには、上記の遺伝暗号CTGを他のロイシン対応遺伝暗号に改変することに加えて、キャンディダ・マルトーサにおいて使用頻度の高い遺伝暗号に改変した遺伝子を使用することが好ましい。
【0031】
本発明のDOI合成酵素をコードする遺伝子は、遺伝暗号に読みとり異常を示さない酵母の場合、上記の酵素遺伝子をそのまま利用可能であるが、アミノ酸配列を変更することなく当該酵母において使用頻度の高い遺伝暗号に改変した遺伝子を利用してもよい。また、遺伝暗号に読みとり異常を示す酵母の場合、上記の酵素遺伝子のCTGコドンをTTA,TTG,CTT,CTCまたはCTAに改変した遺伝子を利用してもよい。さらに、アミノ酸配列を変更することなく当該酵母において使用頻度の高い遺伝暗号に改変した遺伝子を利用してもよい。例えば、キャンディダ・マルトーサを宿主とした場合、本発明のDOI合成酵素をコードする遺伝子として配列番号1に示される遺伝子を利用することができる。上記遺伝子の塩基配列は、本発明のDOIの合成酵素活性を有する酵素を合成する遺伝子であれば、その遺伝子の塩基配列に欠失、置換、挿入等の変異が生じていてもよい。
【0032】
[DOI合成酵素遺伝子発現ユニットの構築]
酵母における遺伝子発現のためには、当該遺伝子の5’上流にプロモーター、UAS(Upstream Activating Sequence)等のDNA配列の連結、当該遺伝子の3’下流にポリA付加シグナル、ターミネーター等のDNA配列の連結が必要である。これらのDNA配列は酵母で機能する配列であればどのような配列でも利用できる。プロモーターには構成的に発現を行うものと誘導的に発現を行うものがあるが、いずれのプロモーターを用いてもよい。また、本発明の形質転換体においては、上記プロモーター、ターミネーターは、DOIの合成に使用する微生物種において機能するものである必要がある。
【0033】
以下、本発明の形質転換体に用いられる遺伝子発現カセット構築の例として、(A)宿主としてキャンディダ・マルトーサ(Candida maltosaまたはC. maltosa)を使用する場合、(B)宿主としてサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を使用する場合について具体的に説明する。
【0034】
(A)宿主としてキャンディダ・マルトーサを使用する場合
宿主としてキャンディダ・マルトーサを使用する場合は、使用するブロモーター、ターミネーターはキャンディダ・マルトーサで機能するものでか、キャンディダ・マルトーサ由来のものであることがより好ましい。さらに好ましくは、キャンディダ・マルトーサALK遺伝子のプロモーター(Genbank D00481) (M. Takagi, et al. Agric. Biol. Chem. , vol. 5, 2217−2226 (1989))(M. Ohkuma, et al. DNA. Cell. Biol., vol.14 p163−173, (1995))、またはそのプロモーターを改良したもの(後述)およびALK遺伝子のターミネーター(配列番号6)を利用する。ALK遺伝子はアルカンの末端酸化反応を触媒するP450をコードする遺伝子であり、アルカンや脂肪酸を炭素源とする培地において誘導的に高発現し(M. Ohkuma, et al. DNA. Cell. Biol., vol.14 p163−173, (1995))、そのプロモーターは、同様の条件下において異種遺伝子を高発現させるために利用することができる。(小暮高久、酵母Candida maltosaのn−アルカン誘導型チトクロームP450遺伝子群の転写誘導機構の解析、2003年度、東京大学大学院博士論文)。プロモーターとしては、ALK遺伝子の転写誘導に関わるプロモーター上の配列(シスエレメント)を多コピー連結し、より強カな誘導性をもたらすようにした改変型プロモーターを用いることができる。本発明においては、配列番号2に示すALK1遺伝子のコアプロモーター領域(基本的な転写活性をもたらす領域)、または、配列番号3に示すALK2遺伝子のコアプロモーター領域の直上流に、配列番号4に示すALK1遺伝子プロモーター中に存在するアルカンや脂肪酸に応答した転写誘導に関与するシスエレメントを連結したもの、または、配列番号5に示すALK2遺伝子プロモーター中に存在するアルカンや脂肪酸に応答した転写誘導に関与するシスエレメントを連結したものを用いるのが好ましい。尚、連結するシスエレメントの種類やコピー数は調節可能である(小暮高久、酵母Candida maltosaのn−アルカン誘導型チトクロームP450遺伝子群の転写誘導機構の解析、2003年度、東京大学大学院博士論文)。この改変型プロモーターは、培地の炭素源の種類によらず、下流に連結した遺伝子の高発現をもたらすが、特にアルカンや脂肪酸に応答して特に強い発現をもたらす(図2)(小暮高久、酵母Candida maltosaのn−アルカン誘導型チトクロームP450遺伝子群の転写誘導機構の解析、2003年度、東京大学大学院博士論文)。
【0035】
プロモーターおよびターミネーターと構造遺伝子を連結するための制限酵素部位を作製するためには、PCR法が利用できる。なお、上記プロモーター及び/又はターミネーターのDNA配列は、キャンディダ・マルトーサで機能する配列であれば、1つ若しくは複数個の塩基が欠失、置換及び/又は付加されたDNA配列であってもよい。DOI合成酵素遺伝子としては、上述したように、バチルス・サーキュランス由来のDOI合成酵素と同一のアミノ酸配列をコードし、キャンディダ・マルトーサのコドン利用率に適合するように合成した、配列番号1に示す遺伝子を用いることが好ましい。発現ベクターとして、自立増殖可能なpUTU1(M. Ohkuma, et al; J.Biol.Chem.,vol.273,3948−3953(1998))やpBTH20A (Hikiji et al. Curr. Genet., vol. 16, 261−266 (1989)、pBTH30A(pBTH20AのHIS5遺伝子をURA3遺伝子に置換したもの((小林圭介 1996年東京大学大学院修士論文))などを用いることができる。また、キャンディダ・マルトーサ由来の自律複製配列(ARS, CEN)(Kawai S., et al., Agric. Biol. Chem., vol. 51, 1587−1591)、(Takagi M., et al., J. Bacteriol., vol. 167, 551−555) 及びアミノ酸要求性を相補する選択マーカー遺伝子 (Hikiji et al. Curr. Genet., vol. 16, 261−266 (1989)(Kawai S.,et al., Agric. Biol. Chem., vol.55,59−65(1991))、を大腸菌用のベクターに組み込んでも良い。また、遺伝子発現カセットを染色体上に組み込むこともできる。
【0036】
(B)宿主としてサッカロマイセス・セレビシエを使用する場合
宿主としてサッカロマイセス・セレビシエを使用する場合には、使用するプロモーター、ターミネーターはサッカロマイセス・セレビシエで機能するものであることが好ましく、サッカロマイセス・セレビシエ由来であることがより好ましい。なお、上記プロモーター及び/又はターミネーターのDNA配列は、サッカロマイセス・セレビシエで機能する配列であれば、1つ若しくは複個の塩基が欠失、置換及び/又は、付加されたDNA配列であってもよい。サッカロマイセス・セレビシエにおいては、自律増殖可能な、pYES2 (Invitrogen)、YEplac112、YEplac195、YEplac181などのベクター(Gietz, R. D. et al., Gene, 74 (1988) 527−534)を用いることができる。
【0037】
[酵母へのbtrC発現コンストラクトの導入]
酵母にDOI合成に関与する遺伝子発現カセット組換えベクターを導入する際には、デルベルグ法(derberg. E.M.et al., J,Bacteriol,119,1072(1974))やエレクトロポレーション法(Current Protocols in Morecular Biology、1巻、1.8.4頁、1994年)等を用いることができる。
【0038】
宿主としては、例えば、キャンディダ・マルトーサCHAU1株(S.Kawai,et al, Agric. Biol. Chem., vol.55,59−65(1991))や、CMT102株(H. Takaku, et al. J. B. C. , vol. 279, 23030−23037, 2004)を用いることができる。本菌株に上記の形質転換法を用いてDOI合成酵素遺伝子発現カセットを形質転換することができる。
【0039】
また例えば宿主としてサッカロマイセス・セレビシエW303−1A株を用いることができる。本菌株に上記の形質転換法を用いてDOI合成酵素遺伝子発現カセットを形質転換することができる。
【0040】
[DOIの合成方法(btrC発現コンストラクトを導入した組み換え酵母の培養及びDOI生成量の定量)]
本発明のDOIの製造方法は、本発明の形質転換体を培養して得られる培養物から、DOIを採取する。
【0041】
本発明の形質転換体を培養することによるDOIの製造は、次のようにして行うことができる。
【0042】
培養に用いる炭素源としては、酵母が資化できるものであればどのようなものでもよく、単糖類もしくはオリゴ糖類またはでんぷんや米ぬかや廃糖蜜などの多糖類を含む原料に由来する単糖類が挙げられ、具体的にはD−グルコースが挙げられる。また、プロモーターの発現が誘導型である場合には、適時誘導物質を添加すればよい。炭素源以外の栄養源としては、窒素源、無機塩類、その他有機栄養源を含む培地を使用できる。培養温度はその菌の生育可能な温度であればよいが、20乃至40℃であり、30℃付近がより好ましい。培養時間には特に制限はないが、1日から7日程度でよい。その後、得られた培養菌体又は培養上清液からDOIを回収すればよい。
【0043】
炭素源としては、D−グルコース、ガラクトース、マルトース、サッカロース、トレハロース等の炭化水素や油脂類や脂肪酸類さらにはn−パラフィン等を用いることができる。油脂としては、例えば、ナタネ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などがあげられる。脂肪酸としてはヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸などの飽和・不飽和脂肪酸、あるいはこれら脂肪酸のエステルや塩など脂肪酸誘導体などがあげられる。例えば、キャンディダ・マルトーサなどの培養において、炭素源として油脂を用いて培養することもできる。また、油脂を資化できないかまたは効率よく資化できない酵母では、培地中にリパーゼを添加することによって改善できる。さらに、リパーゼ遺伝子を形質転換することにより、油脂資化能を付与することもできる。また、米ぬかのような混合炭素源を含むバイオマスを利用することもできる。D−グルコースにより遺伝子発現の抑制が起こる場合には、抑制の解除された株を用いる必要がある。
【0044】
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどのアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキスなどが挙げられる。無機塩類としては、例えば、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0045】
その他の有機栄養源としては、アミノ酸類、例えば、アデニン、ヒスチジン、ロイシン、ウラシル、トリプトファンなどが挙げられる。
【0046】
本発明において、DOIの培養液からの回収は,例えば、次のような方法が使用できる。培養終了後、培養液から遠心分離器や濾過装置などで菌体を除き、培養上清液を得る。この培養上清液に対してさらに濾過処理を行い、菌体等の固形物を除き、その濾液にイオン交換樹脂を添加し、蒸留水で溶出を行う。屈折率、pH、伝導率を測定しながら不純物を含まないフラクションを分取して、その水溶液の溶媒を取り除くことでDOIを回収することができる。得られたDOIの分析は、例えば、高速液体クロマトグラフィーや核磁気共鳴法などにより行う。
【0047】
本発明のDOIの製造方法は、上述のような構成からなるので、D−グルコースからヘキソキナーゼやDOI合成酵素を介してDOIを効率良く製造できる。
【0048】
また、上述したプラスミドpCm−DOISを有するキャンディダ・マルトーサ形質転換体、pYES2−DOISを有するサッカロマイセス・セレビシエ形質転換体等を作製し、培養する方法により、D−グルコースから、グルコース−6−リン酸を経て、更にDOI合成酵素が触媒する5ステツプの反応を経て、DOIを製造することができる。
【0049】
培養が終了した培養液中に含まれる除去すべき不純物としては、残存している炭素源としてのグルコース、各種アミノ酸あるいはペプチド類、および各種の金属イオン類がある。このうち培養条件の検討により、グルコースが完全に消費されるまで培養を続けることが可能になり、残る不純物は各種アミノ酸あるいはペプチド類、および各種の金属イオン類となった。アミノ酸類の中には、リジンやヒスチジン、トリプトファンのようにアミノ基が複数個ある塩基性アミノ酸もあれば、グルタミン酸やアスパラギン酸のようにカルボキシル基を複数個持っている酸性アミノ酸も存在する。また、金属イオンは当然カチオンであるが、同時にそのカウンターイオンとしての塩素イオンや硫酸イオンなども培地中には存在している。したがって、そのような不純物をすべて吸着させて、かつ、DOIを吸着させない基材を探索すればよいことになる。
【0050】
本発明者らは、そのような考えに基づいて基材の探索と溶出条件を検討した結果、汎用されるイオン交換樹脂、例えば、ナトリウムイオン型または水素イオン型強酸性陽イオン交換樹脂および塩素イオン型または水酸イオン型塩基性陰イオン交換樹脂を用いる方法ではDOIを収率よく精製することはできなかった。すなわち、それぞれを連結した二床式カラム、または両者を混合した混合ベッド型のカラムを用いても、その目的を達成することはできない結果となった。アミノ酸は2種類のイオン交換樹脂のどちらかに結合する。また金属イオンは陽イオン交換樹脂に結合するのに対し、DOIはイオン性の官能基を持たないために、いずれのイオン交換樹脂にも結合しない特性を持っている。従って、アミノ酸類および金属塩類はイオン交換樹脂に結合し、DOIのみが吸着せずに溶離してくると推察されるが、結果は異なっていた。DOIの回収率は50%以下となり、かつイオン交換樹脂の使用条件により大きく変動した。大量処理する工業的方法に適合するためには、回収率がより高く加えて安定した成績が必要とされる。
【0051】
本発明者らは、基材と精製条件を更に拡大して鋭意検討した結果、陰イオン交換樹脂のカウンターイオンとして有機酸イオンを用いる方法、すなわち有機酸イオン型陰イオン交換樹脂と水素イオン型陽イオン交換樹脂を用いた混合ベッド型カラムを用いることにより、DOIを効率よく精製できることを見いだした。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸などが挙げられるが、中でも酢酸が好ましく使用できる。この発明はDOIがpH8以上のアルカリ性領域で極めて分解し易く、pH3〜5の弱酸性条件下でのみ安定であるという性質を発見して初めて完成することができたものである。すなわち、DOIが酸性とアルカリ性の両領域で完全に安定であれば、汎用されている陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂を別々のカラムに重点した二床式カラムに培養液を流すという方法でも上記の不純物を除くことができたであろう。また、両領域でフルクトースと同等の安定性を有していれば、混合ベッド型カラムで精製が可能となったであろう。DOIが二床式カラムはもちろん、混合ベッド型カラムを使用しても分解が起こるほどアルカリ領域で不安定であることを見いだしたのは本発明者らが初めてである。
【0052】
この問題を解決するために、用いるイオン交換樹脂に結合するカウンターイオンの選択を検討した結果、本発明者らは陰イオン交換樹脂のカウンターイオンとして有機酸イオンを用いる方法を見いだした。これにより溶離液中には有機酸が残り、DOIの溶離画分にも混入するが、これは溶離液をpH4前後に保つのに有効である。有機酸の中でも酢酸は濃縮により除去できる長所を有している。
【0053】
これにより、H型の陽イオン交換樹脂と有機酸イオン型の陰イオン交換樹脂を混合して作成した混合ベッド型イオン交換カラムに、培養液を通過させることにより、DOIを精製できることが明らかになり、本発明が完成された。これは工業的大量生産にも十分叶う方法である。
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これら実施例により、その技術範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0055】
DOI合成酵素をコードする遺伝子
酵母キャンディダ・マルトーサは、普遍的にはロイシンに翻訳されるCTGコドンをセリンに翻訳する。このため、キャンディダ・マルトーサを宿主とする場合、発現させようとする異種遺伝子にCTGコドンが含まれるとき、その遺伝子産物の活性が失われる可能性が考えられた。また、バチルス・サーキュランスの糖質環化酵素遺伝子btrCには多数のCTGコドンが含まれていた。そこで、キャンディダ・マルトーサを宿主としてbtrC遺伝子を発現させるにあたっては、CTGコドンを、ロイシンをコードするコドンに置換した遺伝子を合成した。また、btrC遺伝子のいくつかのアミノ酸に対応するコドンは、キャンディダ・マルトーサでは稀にしか使われないものであり、そのようなコドンをそのまま使用すると、発現レベルが低下する恐れが考えられた。そこで、そのようなアミノ酸に対応するコドンは、キャンディダ・マルトーサにおけるコドン利用率に適合するように選択した。
【0056】
コドンの使用頻度はKlaus WoIf著のNonconventional Yeast in Biotechnology(Springer出版)を参考にした。具体的には、以下のように設計した。アラニンをコードするコドンは、GCTが20個、GCCが6個、GCAが4個、GCGが1個になるように設計した。グルタミンをコードするコドンは、CAAが9個、CAGが1個になるように設計した。グルタミン酸をコードするコドンは、GAAが23個、GAGが1個になるように設計した。システインをコードするコドンは、TGTが4個になるように設計した。アルギニンをコードするコドンは、AGAが12個、CGTが2個になるように設計した。グリシンをコードするコドンは、GGTが23個、GGAが3個、GGGが2個、GGCが1個になるように設計した。ロイシンをコードするコドンは、TTGが18個、TTAが13個、CTTが4個になるように設計した。バリンをコードするコドンは、GTTが16個、GTCが5個、GTGが2個、GTAが1個になるように設計した。セリンをコードするコドンは、TCTが8個、TCCが4個、AGTが4個、TCAが3個、TCGが1個、AGCが1個になるように設計した。プロリンをコードするコドンは、CCAが11個、CCTが3個になるように設計した。スレオニンをコードするコドンは、ACTが11個、ACCが5個、ACAが2個になるように設計した。また、リジン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、アスパラギン、メチオニン、トリプトファン、イソロイシンをコードするコドンは、バチルス・サーキュランスのbtrC遺伝子のコドン配列をそのまま用いた。
【0057】
このようにして糖質環化酵素btrC遺伝子全長の塩基配列を設計した。その配列を、配列番号1に示す。その配列をもとに、合成オリゴDNAとPCR法を用いてキャンディダ・マルトーサを宿主として発現させるためのbtrC遺伝子の全合成を行った。合成した遺伝子の塩基配列にエラーが入っていないことは、シーケンスを読んで確認できた。
【0058】
サッカロマイセス・セレビシエはキャンディダ・マルトーサのような遺伝暗号の読みとり異常を示さず、コドン利用率についても、それほど大きな偏りがみられない。従って、宿主としてサッカロマイセス・セレビシエを使用する場合には、バチルス・サーキュランスの糖質環化酵素の42kDaサブユニットをコードする遺伝子(btrC)
(特開2000−236881号公報)
(Genbank AB066276)
(非特許文献2:Kudo, F., et al. J. Antibiot., vol. 52 559−571 (1999))
をそのまま使用した。
【実施例2】
【0059】
糖質環化酵素遺伝子発現コンストラクトの作製
(A)キャンディダ・マルトーサを宿主とする発現コンストラクトの作製
全合成したbtrC遺伝子全長をリン酸化後、pUC119ベクターのマルチクローニングサイトのHincIIサイトに挿入し、pUC−CmbtrCを構築した。次に配列番号3に示す、ALK2遺伝子のコアプロモーター領域(−189bpから−1bp、翻訳開始コドンATGのAを+1とする)を、キャンディダ・マルトーサ・ゲノムDNAを鋳型とし、プライマーA2C−Fw(5'−GCTCTAGAGTTTTTTTATTTCCGCAATAC−3')、及び、プライマーA2C−Rv(5'−TGTGAGTTAAAATGATAAATAAC−3')を用いて増幅した。PCR増幅には、耐熱性DNAポリメラーゼとしてKOD DNA polymerase(TOYOBO)を用い、94℃×30秒、52℃×30秒、68℃×1分を1サイクルとして、30サイクル行った。以下、PCR反応は同様の条件で行った。また、btrC遺伝子の5’側領域を、pUC−CmbtrCを鋳型とし、プライマーCmbtrC−Fw (5'−ATGACTACTAAACAAATTTG−3')、及び、CmbtrC−Rv2 (5'−GACCAAGTTCTTACCACTAG−3')を用いて増幅した。増幅したコアプロモーター及びCmbtrCの5'側領域のDNA断片をリン酸化後、ライゲーション反応を行った。その反応液を鋳型として、プライマーA2C−Fw(5'−GCTCTAGAGTTTTTTTATTTCCGCAATAC−3')及びプライマーCmbtrC−Rv2(5'−GACCAAGTTCTTACCACTAG−3')を用いてPCR反応を行い、ALK2遺伝子のコアプロモーターの下流側(3’側)にbtrC遺伝子の5’側領域が連結された断片を増幅した。そのDNA断片をXbaIとSpeIで消化し、pUC−btrCをXbaIとSpeIで切断して生じるベクター側断片とライゲーション反応を行って連結し、pUC−A2C−CmbtrCを構築した。また、キャンディダ・マルトーサのゲノムDNAを鋳型とし、プライマーTMN−Fw(5'−AAAACTGCAGTAGATGGATTTTTCTTTTTTATG−3')及びTMN−Rv(5'−CCCAAGCTTATGCATCTTTGGAGATTGATC−3')を用いてALK1ターミネーターをPCR増幅し、プライマー部分に付加したPstIとHindIIIサイトで切断したものを、pUC−A2C−CmbtrCのマルチクローニングサイトのPstI−HindIII部位に挿入し、pUC−A2C−CmbtrC−TMNを構築した。
【0060】
シスエレメントを多コピー連結したDNA断片は、以下のようにして作製した。pUC119のマルチクローニングサイトのPstI部位をBgl IIサイトに置換したプラスミドpUC119PB のHinc IIサイトに特定のシスエレメントに相当するDNA断片を挿入し、塩基配列を確認後、そのプラスミドをEcoRI+BglIIまたはHindIII+BamHIで切断して目的のDNA断片を含む断片をそれぞれ切り出し、それらの断片とpUC119PBをEcoRI+HindIIIで切断した断片によるライゲーション反応を行うことで、目的の配列が直列に2コピー連結された状態で挿入されたプラスミドを得た。そのプラスミドに対して同様の操作を繰り返すことで、目的の断片のコピー数を2倍ずつ増幅することことが可能である。
【0061】
ARR1−2(配列番号4)が16コピー直列に連結された断片をpUC−ARR1−2×16(小暮高久、酵母Candida maltosaのn−アルカン誘導型チトクロームP450遺伝子群の転写誘導機構の解析、2004年度、東京大学大学院博士論文)からEcoRIとBglII処理により切り出し、平滑化処理後、pUC−A2C−btrC−TMNのマルチクローニングサイトのSmaIサイトに挿入し、pUC−ARR1multi−CmbtrCを構築した。
【0062】
同様に、ACRR2−2(配列番号5)が8コピー連結された断片をpUC−ACRR2−2×8(小暮高久、n−アルカン誘導型チトクロームP450遺伝子群の転写誘導機構の解析、2004年度、東京大学大学院博士論文)からEcoRIとBglII処理により切り出し、平滑化処理後、pUC−A2C−CmbtrC−TMNのマルチクローニングサイトのSmaIサイトに挿入し、pUC−ACRR2multi−CmbtrCを構築した。
【0063】
キャンディダ・マルトーサ内での自律複製配列(ARS)とウラシル要求性を相補するマーカー遺伝子URA3を、pBTH30A(pBTH20A(Hikiji et al. Curr. Genet., vol. 16, 261−266 (1989) のHIS5遺伝子をURA3遺伝子に置換したもの(小林圭介 1996年東京大学大学院修士論文))を鋳型とし、プライマーURA/5'(5'−AAAAGTACTTACTTTTTTTTTTTAGTTTTGCG−3')とプライマーARS/3'(5'−AAAAGTACTAAGCTTATCATATATCACATAGATTATC−3')を用いてPCR増幅した。そのDNA断片をPCRプライマーに付加したSacIサイトで切断後、pUC−ARR1multi−CmbtrCのSacIサイト、または、pUC−ACRR2multi−CmbtrCのSacIサイトに挿入し、キャンディダ・マルトーサを宿主とするbtrC発現プラスミド、pCMA1−btrC(図4)及びpCMA2−btrC(図5)をそれぞれ構築した。
【0064】
pCMA1−btrCまたはpCMA2−btrCをキャンディダ・マルトーサCMT102株に、上記した形質転換法を用いて導入し、選択培地上で形質転換体を選別することにより、pCMA1−CmbtrCまたはpCMA2−CmbtrCを保有するキャンディダ・マルトーサCMT102株を作製した。
【0065】
(B)宿主としてサッカロマイセス・セレビシエを用いる場合
また、pDS4 (Kudo, F., et al. J. Antibiot., vol. 52 559−571 (1999))を鋳型とし、HindIIIサイトを付加したプライマーbtrC/Fw(5'−CCCAAGCTTATGAGAGGATCTCATCATCATCATCATCATATGACGACTAAACAAATTTG−3')及び、XbaIサイトを付加したプライマーbtrC/Rv(5'−GCTCTAGATTACAGCCCTTCCCGGATCAC−3')を用いてPCRを行い、N末端にヒスチジンタグを付加したbtrC遺伝子を増幅した。増幅したDNA断片をプライマー上にデザインしたHindIII、及びXbaIで消化後、ベクターpYES2(Invitrogen)のマルチクローニングサイトのHindIII−XbaIサイトに挿入することによって、pYES2−btrCを構築した(図6)。
【0066】
また、D−グルコースを炭素源とする培地で強い発現をもたらす、PGK1プロモーターを用いたbtrCの発現カセットを以下のようにして作製した。
【0067】
プロモーターは、サッカロマイセス・セレビシエのゲノムDNAを鋳型とし、PGK1 Fwプライマー(5'−GGAATTCACTTAAGCCACAATAGAAGC−3')とPGK1 Rvプライマー(5'−TGTTTTATATTTGTTGTAAAAAG−3')を設計し、PCR増幅した。PCRは、KOD plus ポリメラーゼ(TOYOBO)を用い、反応は、94℃で2分間を1サイクル、続いて94℃で20秒間、48℃で30秒間、68℃で1.5分間を35サイクル、さらに68℃で3分間を1サイクル、行った。PCR産物を5’−リン酸化した。次に、DOI合成酵素btrCは、btrC−Fwプライマー(5'−ATGACGACTAAACAATTTG−3')と、btrC−Rvプライマー(5'−TTACAGCCCTTCCCGGATC−3')を設計し、PCR増幅した。PCRは、KOD plus ポリメラーゼ(TOYOBO)を用い、反応は、94℃で2分間を1サイクル、続いて94℃で20秒間、50℃で30秒間、68℃で1.2分間を35サイクル、さらに68℃で3分間を1サイクル行った。PCR産物を5’−リン酸化した。リン酸化したPGK1とbtrCでライゲーション反応を行った。この反応液を鋳型とし、PCRを行った。PCRは、94℃で2分間を1サイクル、続いて94℃で20秒間、58℃で30秒間、68℃で2.45分間を35サイクル、さらに68℃で5分間を1サイクル、KOD plus ポリメラーゼ(TOYOBO)を用いて行った。PCR産物を5’−リン酸化し、YEplac112ベクターに挿入してYEp−PGK1−btrCを得た(図7)。
【0068】
pYES2−btrCをサッカロマイセス・セレビシエW303−1A株に上記形質転換法により導入し、選択培地上で形質転換体を選別することにより、pYES2−btrCを保有するW303−1A株を作製した。YEp−PGK1−btrCをサッカロマイセス・セレビシエW303−1A株に上記形質転換法により導入し、選択培地上で形質転換体を選別することにより、YEp−PGK1−btrCを保有するW303−1A株を作製した。
【実施例3】
【0069】
キャンディダ・マルトーサ形質転換体におけるDOI合成酵素の発現の確認(図8)
pCMA1−btrCを導入したキャンディダ・マルトーサ形質転換体を8 mlのグルコース培地またはアルカン培地で、30℃で、2日間培養を行った。菌体を遠心により回収し、フレンチプレスにより細胞を破砕した。菌体抽出液を12%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動させ、クマシー染色によりバンドを検出した。また、抗btrC抗体を用いたウェスタン解析により、キャンディダ・マルトーサ形質転換体におけるbtrCの発現を確認した(図8)。その結果、pCMA1−btrCを導入したキャンディダ・マルトーサ形質転換体に特異的にbtrCが発現していることが確認された(図8)。
【実施例4】
【0070】
キャンディダ・マルトーサ形質転換体を用いるDOIの合成−1
プラスミドpCMA1−DOISを有するキャンディダ・マルトーサ形質転換体を5mlのアルカン培地(2%ドデカン、0.17% Yeast nitrogen base、0.5%硫酸アンモニウム)入り試験管に接種して、これを培養温度30℃で、3日間培養した。続いて、菌体を遠心分離により回収し、グルコース培地(1%D−グルコース、0.17% Yeast nitrogen base、0.5%硫酸アンモニウム)に菌体を移してさらに30℃で24時間培養を行った。培養上清液をpH3に調整した調整上清液400μlとHPLC用メタノール400μlを混合し、さらに10mg/ml O−(4−Nitrobenzyl)hydrolamine hydrochloride(ACROS社)ピリジン溶液を80μl添加して、温度60℃で1時間のオキシム化反応を行った。
【0071】
この反応液を、Speep Vac System(Thermo社ISS110)を用いて乾燥させた後、再度HPLC用メタノール50μlを加え、超音波によって溶解させた。この溶液を高速液体クロマトグラフィーによって分析した。
【0072】
高速液体クロマトグラフィーではSHIMADZU社LC−10AT、カラムとしてはPhrnomenex社Luna 5u C18(カラム長150mm、カラム内径4.6mm)を用い、溶離液として20%メタノールを用い、262nmにおける紫外線吸収を測定した。DOIのO−(4−ニトロベンジル)オキシム誘導体の量を、標準曲線法により定量した。
【0073】
得られたチャートを図9に示す。化学的に合成したDOIオキシム体の標品のチャートと比較した結果、DOIのオキシム体に相当するピークが形質転換体の培養上清から検出されたことから、酵母キャンディダ・マルトーサの形質転換体を用いて、D−グルコースからDOIを合成できることが判明した。
【実施例5】
【0074】
キャンディダ・マルトーサ形質転換体を用いるDOIの合成−2
米ぬか培地の作製は以下のようにして行った。重量にして20%の米ぬかをオートクレーブで処理した後、耐熱性α−アミラーゼ(アミラーゼAD「アマノ」1)を0.3%濃度加え、70℃で一晩反応させた。その後、pH5に調整し、耐熱性グルコアミラーゼ(グルクザイムAF6)を0.1%加え、58℃で一晩放置した。反応液を遠心分離し、上清を米ぬか培地として使用した。
【0075】
プラスミドpCMA1−DOISを有するキャンディダ・マルトーサ形質転換体を米ぬか培地に植菌し、30℃で2日間培養した。その培養上清を実施例4に記述した方法と同様に処理し、HPLCによる分析を行った。その結果、図9に示すチャートと同様のチャートが得られ、DOIのオキシム体に相当するピークが検出されたことから、DOIが生成していることが示された。
【実施例6】
【0076】
サッカロマイセス・セレビシエ形質転換体を用いるDOIの合成
プラスミドpYES2−DOISを有するサッカロマイセス・セレビシエW303−1A株を次のように培養した。前培養にはグルコース培地(1%D−グルコース、0.17% Yeast nitrogen base、0.5%硫酸アンモニウム)を使用した。また、誘導培地としてはガラクトース培地(2%ガラクトース、0.17% Yeast nitrogen base、0.5%硫酸アンモニウム)を使用した。DOI合成培地としては、SD培地(2%D−グルコース、0.17% Yeast nitrogen base、0.5%硫酸アンモニウム)を使用した。
【0077】
形質転換株はグルコース寒天培地ストックから菌体を3mlのグルコース培地が入った試験管に接種して、これを培養温度30℃で、1昼夜前培養した。前培養菌体を1%濃度で、ガラクトース培地に植菌し、24時間、30℃で培養を行った。その菌体を遠心分離により回収し、続いてDOI合成培地に移して、さらに24時間、30℃で培養を行った。
【0078】
培養上清液をpH3に調整した調整上清液400μlとHPLC用メタノール400μlを混合し、さらに10mg/ml 塩酸O−(4−Nitrobenzyl)hydroxylamine(ACROS社)のピリジン溶液を80μl添加して、反応温度60℃で1時間のオキシム化反応を行った。DOIのオキシム体の構造を図に示す。この反応液を、Speep Vac System(Thermo社ISS110)を用いて乾燥させた後、再度HPLC用メタノール50μlを加え、超音波によって溶解させた。
【0079】
この溶液を高速液体クロマトグラフィーによって分析した。高速液体クロマトグラフィーではSHIMADZU社LC−10AT、カラムとしてはPhrnomenex社Luna 5u C18(カラム長150mm、カラム内径4.6mm)を用いた。
【0080】
得られたチャートを図10に示す。DOIのオキシム体に相当するピークが検出されたことから、酵母サッカロマイセス・セレビシエの形質転換体を用いて、D−グルコースからDOIを合成できることが判明した。
【実施例7】
【0081】
キャンディダ・マルトーサ形質転換体を用いるDOIの合成−1
実施例4と同様にして、プラスミドpCMA1−DOISを有するキャンディダ・マルトーサ形質転換体を5mlのアルカン培地(2%ドデカン、0.17% Yeast nitrogen base、0.5%硫酸アンモニウム)入り試験管に接種して、これを培養温度30℃で、3日間培養した。続いて、菌体を遠心分離により回収し、グルコース培地(1%D−グルコース、0.17% Yeast nitrogen base、0.5%硫酸アンモニウム)に菌体を移してさらに30℃で24時間培養を行った。
【0082】
アンバーライトIR120とアンバーライトIRA410の混合ベッド型樹脂を用いる方法
型のアンバーライトIR120と酢酸型のアンバーライトIRA410を各200mlずつ混合した後、カラム(φ5cm×25cm)に充填した。これにpH2.96に調整した、上記の培養液100ml(1.4gのDOIを含む)を添加した後、蒸留水を流速2ml/minで流すことにより溶離を行った。6mlずつのフラクションを集め、得られたフラクションについて1本おきにpHおよび伝導度を測定した。また、3本おきにDOIの定量も行った。DOIの定量は、O−(4−nitrobenzyl)oximeに誘導した後、HPLCで面積を測定した後、検量線より計算した。このときの結果を図11に示す。また、フラクションを4つのブロックに分けて集めて凍結乾燥した後、それぞれのブロック中のDOIの純度および量を測定した。結果を表1に示す。得られた精製DOIのC−13NMRスペクトルを図12に示す。C−13NMRスペクトルは、重水に溶解した試料をBruker社のDPX−250NMR装置(C−13核は67.5MHzで共鳴)を用いて測定した。
【実施例8】
【0083】
アンバーライトIR200とアンバーライトIRA410の混合ベッド型樹脂を用いる方法
型のアンバーライトIR200と酢酸型のアンバーライトIRA410を各200mlずつ混合した後、カラム(φ5cm×25cm)に充填した。これにpH2.97に調整した、実施例7の培養液50ml(562mgのDOIを含む)を添加した後、蒸留水を流速2ml/minで流すことにより溶出を行った。6mlずつのフラクションを集め、得られたフラクションについて1本おきにpHおよび伝導度を測定した。また、3本おきにDOIの定量も行った。このときの結果を図13に示す。また、フラクションを4つのブロックに分けて集めて凍結乾燥した後、それぞれのブロック中のDOIの純度および量を測定した。結果を表2に示す。得られた精製DOIのC−13NMRスペクトルを図14に示す。DOIの定量方法およびC−13NMRスペクトルの測定方法は実施例8と同様にして行った。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
[微生物の受領番号]
本発明において使用される微生物の受領番号として以下のように付与されている。
受領機関名 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
受領日 平成17年3月18日
受領番号 FERM AP−20463
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明により、従来の石油由来の化学物質に代わり、再生可能な資源である、でんぷんなどのバイオマス由来の原料を用いて、発酵法により、様々な炭素6員環化合物の製造のための出発原料となる高純度DOIを製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】D−グルコースからDOIが生成する反応経路及びDOI合成酵素が触媒する反応を示す図である。
【図2】ALK遺伝子由来のシスエレメントの連結によるプロモーター活性の増強効果を示す図である。
【図3】pCMA1−btrC及びpCMA2−btrCの構築の流れを示す図である。
【図4】pCMA1−btrCの構造を示す図である。
【図5】pCMA2−btrCの構造を示す図である。
【図6】pYES2−btrCの構造を示す図である。
【図7】Yep−PGK−btrCの構造を示す図である。
【図8】pCMA1−btrCを導入したキャンディダ・マルトーサ形質転換株におけるbtrCの発現A:SDS−PAGE(クマシー染色)、B:抗btrC抗体によるウェスタン解析を示す図である。
【図9】宿主としてキャンディダ・マルトーサを用いた場合の培養上清のオキシム化反応物のHPLCチャートである。
【図10】宿主としてサッカロマイセス・セレビシエを用いた場合の培養上清のオキシム化反応物のHPLCチャートである。
【図11】実施例7の方法で培養液をイオン交換樹脂に流して得られたフラクションのpH、伝導度、DOI濃度をプロットした図である。
【図12】実施例7の方法で精製して得られたDOIのC−13NMRスペクトルである。
【図13】実施例8の方法で培養液をイオン交換樹脂に流して得られたフラクションのpH、伝導度、DOI濃度をプロットした図である。
【図14】実施例8の方法で精製して得られたDOIのC−13NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−デオキシ−シロ−イノソースの合成に関与する酵素遺伝子からなる遺伝子発現カセットであることを特徴とする遺伝子発現カセット。
【請求項2】
前記遺伝子発現カセットが、pCMA1−btrC、pCMA2−btrC、pYES2−btrCまたはYEp−PGK−btrCのいずれかから選ばれる請求項1に記載の遺伝子発現カセット。
【請求項3】
酵母に、2−デオキシ−シロ−イノソースの合成に関与する酵素遺伝子からなる遺伝子発現カセットを少なくとも1種類導入してなることを特徴とする形質転換体。
【請求項4】
前記形質転換体が、pCMA1−btrCを含む酵母キャンディダ・マルトーサ、pCMA2−btrCを含む酵母キャンディダ・マルトーサ、pYES2−btrCを含む酵母サッカロマイセス・セレビシエ、またはYEp−PGK−btrCを含む酵母サッカロマイセス・セレビシエのいずれかから選ばれる請求項3に記載の形質転換体。
【請求項5】
前記酵母がキャンディダ・マルトーサ、サッカロマイセス・セレビシエまたはピキア・パストリスのいずれかから選択される請求項3に記載の形質転換体。
【請求項6】
酵母を用いて炭素源から2−デオキシ−シロ−イノソースを合成する方法において、請求項3に記載の形質転換体を用いることを特徴とする2−デオキシ−シロ−イノソースの合成方法。
【請求項7】
前記酵母がキャンディダ・マルトーサ、サッカロマイセス・セレビシエまたはピキア・パストリスのいずれかから選択される請求項6に記載の2−デオキシ−シロ−イノソースの合成方法。
【請求項8】
前記炭素源が単糖類もしくはオリゴ糖類または多糖類を含む原料に由来する単糖類のいずれかから選択される請求項6乃至7のいずれかから選択される2−デオキシ−シロ−イノソースの合成方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかの方法により合成してなることを特徴とする2−デオキシ−シロ−イノソース。
【請求項10】
請求項6の合成方法により得られ、かつ、2−デオキシ−シロ−イノソースを含有する培養液を、水素イオン型強酸性陽イオン交換樹脂と有機酸イオン型塩基性陰イオン交換樹脂からなる混合ベッド型カラムで処理することを特徴とする2−デオキシ−シロ−イノソースの精製法。
【請求項11】
前記有機酸イオン型塩基性陰イオン交換樹脂が酢酸イオン型である請求項10に記載の2−デオキシ−シロ−イノソースの精製法。
【請求項12】
請求項9乃至10のいずれかの方法により精製されてなることを特徴とする2−デオキシ−シロ−イノソース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−262846(P2006−262846A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88892(P2005−88892)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(503143286)新潟バイオリサーチパーク株式会社 (6)
【出願人】(505079648)学校法人新潟科学技術学園  (2)
【Fターム(参考)】