説明

酵素による酸化還元変化化学的脱離(E−TRACE)免疫学的検定法

本発明は、試験試料中の標的検体を検出するための組成物および方法を提供する。したがって、本発明は、自己組織化単分子層(SAM)、自壊的部分(SIM)と過酸化物感受性部分(PSM)とを含む遷移金属錯体を含む共有結合された電気活性部分(EAM)であって、第1のEを有するEAM、検体を結合する捕捉結合リガンド、および自己組織化単分子層(SAM)を含む電極を含む固体支持体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年8月7日に出願された米国仮特許出願第61/232,339号の利益および優先権を主張するものであり、その開示内容全体は参照により本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、遷移金属錯体のEの変化を用いて酵素を検出するための新規な組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
電子移動反応は、光合成または酸素呼吸に及ぶ様々な生物学的変換における重要な工程である。化学系および生物系の両方における電子移動反応の研究により、少数のパラメータに関する電子移動速度を説明する大きな知識体系および強力な理論的基礎が発展した。
【0004】
タンパク質および他の生体分子中の電子トンネリングは、酸化還元中心の電子的相互作用が比較的弱い反応において起こる。半古典論的な反応では、電子移動の反応速度が、下式:
ET=(4π/hλkT)1/2(HABexp[(−ΔG+λ)2/λkT]
に従い、駆動力(−ΔG)、核再構成パラメータ(λ)、および遷移状態(HAB)における反応体と生成物との間の電子結合強度に応じて決まることが予測される。
【0005】
上式中の核再構成エネルギーλは、生成物の平衡核配置における反応体のエネルギーと定義される。極性溶媒中の電子移動反応の場合、λに対する主な寄与は、反応体の電荷分布の変化に応じた溶媒分子の再配列によって生じる。λの第2の成分は、供与体および受容体の酸化状態の変化による結合の長さおよび角度の変化によって生じる。
【0006】
先行研究では、新規なセンサーの基礎として、再構成エネルギーの変化λを使用することが記載されている。例えば、米国特許第6,013,459号、同第6,013,170号、同第6,248,229号、および同第7,267,939号を参照されたい(これらは全て、全体が参照により本明細書に援用される)。これらの方法は、一般に、酸化還元活性錯体にまたはその近くに検体を結合することを含む。酸化還元活性錯体は、少なくとも1つの溶媒が接近可能な(accesible)酸化還元活性分子と、標的検体を結合する捕捉リガンドとを含み、この錯体は電極に結合される。検体の結合の際、酸化還元活性分子の再構成エネルギーが低下して、溶媒阻害された酸化還元活性分子が形成され、溶媒阻害された酸化還元活性分子と電極との間の電子移動が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、酸化還元活性分子のEの変化に対応する溶媒の再構成エネルギーの変化を用いて標的検体を検出するための組成物および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、酸化還元活性分子のEに対応する溶媒の再構成エネルギーを用いて標的検体を検出するための組成物および方法を提供する。
【0009】
一態様において、本発明は、試験試料中の標的検体を検出するための組成物および方法を提供する。したがって、本発明は、自己組織化単分子層(self-sassembled monolayer)(SAM)、(ii)自壊的(self-immolative)部分(SIM)と過酸化物感受性部分(PSM)とを含む遷移金属錯体を含む共有結合された電気活性部分(EAM)であって、第1のE0を有するEAM、および検体を結合する捕捉結合リガンド、ならびに自己組織化単分子層(SAM)を含む電極を含む固体支持体を提供する。
【0010】
本方法は、標的検体が捕捉結合リガンドを結合して第1の錯体を形成する条件下で標的検体と固体支持体とを接触させ、標的検体を結合する可溶性捕捉リガンドと第1の錯体を接触させることによって進み、可溶性捕捉リガンドは、第2の錯体を形成するための過酸化物生成部分を含む。EAMが第2のE0を有するように、過酸化物が生成され、自壊的部分が除去される条件下で、過酸化物基質が第2の錯体に加えられる。その後、第2のE0は、前記標的の存在の指標として検出される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電気活性分子(EAM)1の構造および過酸化物によって誘発されるリガンド解離の機構。リガンド電子の変化が酸化還元電位の変化の原因である。
【図2】図1に示される本発明の実施形態のうちの1つの合成スキーム。
【図3】POMリガンドのHによって誘発される開裂の後のEAM1および対照の化合物の溶液CVデータ。自壊プロセスの後のE0の変化は331mVである。実験は、炭素作用電極、Ag/AgCl基準電極(reference electrode)、およびPt線対電極を用いて、TBAClO(150mM)の支持電解質を含むTHF中で行った。
【図4】NaHCO緩衝液(pH8.5)に溶解させた1mMの過酸化水素を用いて10分間固体インキュベートしてから、NaCO緩衝液(pH10.1;より低いピーク)で5分間洗浄する前(点線)および後のEAM1のSAMの重ねられたサイクリックボルタモグラム。支持電解質は、1MのLiClO、銀準(quasi)基準電極、白金線の対電極であった。走査速度は、10000mV/秒であった。
【図5】NaHCO緩衝液(pH8.5)に溶解させた1mMのグルコースおよび100uMのグルコースオキシダーゼを用いて10分間(固体)インキュベートしてから、NaCO緩衝液(pH10.1)で5分間洗浄する前(点線)および後のEAM1のSAMの重ねられたサイクリックボルタモグラム。支持電解質は、1MのLiClO、銀準基準電極、白金線の対電極であった。走査速度は、10000mV/秒であった。
【図6】置換キノンメチドをベースとする試料の自壊的スペーサー基。
【図7】グルコースを用いて10分間(固体)インキュベートする前(点線)および後のヒト心筋トロポニンI(10ng/mL)を用いた抗体サンドイッチ形成後のEAM1のSAMのサイクリックボルタモグラム。差込図は、−0.10Vにおけるピークの拡大図を示す。
【図8】本発明に使用される様々な自壊的部分を示す。「PSM」は「過酸化物感受性部分」を意味し、「EAM」は「電気活性部分」を意味する。図に示されるように、様々なモノマー自壊的部分(本明細書において「SIM」と呼ばれることもある)を使用することができ;図Aは、第1の種類の自壊的部分を示し、この自壊的部分は、PSMが過酸化物と接触した際に−OH基を提供し、EAMから放出されるフェノール系リンカーを生じさせる。nは1以上の整数であり得、本発明においては1〜5が特に使用される。mは少なくとも1の整数であり;当業者によって理解されるように、mは、用いられる遷移金属錯体およびEAMにおける位置の数に応じて決まり;例えば、フェロセンなどのメタロセンが用いられるとき、シクロペンタジエニル環あたり最大で5つのPSM−SIMが存在することができ、環の1つにおける位置の少なくとも1つが、電極への結合に使用される。図B、CおよびDは、SIMの多量体を示す。Xは、−NH−または−O−であり得る。
【図9】さらなる過酸化物感受性部分を示す。図Aは、PSBエーテル(パラシレタニルベンジル)部分を示し、図Bは、スルホン酸ペンタフルオロフェニル(PFPS)部分を示す。(次の)図に示されるように、EAMあたり2つ以上の自壊的部分および/またはEAMあたり2つ以上のPSM−SIMが存在することができる。ホウ素含有PSMについても同様に、EAMあたり複数のPSBエーテルまたはPFPS部分が存在することができる。
【図10】R基を有するフェロセンを示す。図示される部分は、異なる環において結合リンカーならびに自壊的部分および過酸化物感受性部分を有するが、本明細書に記載されるように、それらは同じ環の上にあり得る。さらに、R基のいずれかまたは全ては、従来の置換基(アルキル(置換されたアルキル、ヘテロアルキル、環状アルキルなどを含む)、アリール(置換されたアリールおよびヘテロアリールを含む)など)だけでなく、さらなる−SIM−PSM置換基であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
概説
本発明は、標的検体の結合の際に電気化学電位の変化が見られるように標的検体を検出する電子的方法に関する。この機構は、米国特許第7,595,153号、7,759,073号および7,713,711号、ならびに2008年10月17日に出願された米国特許出願第12/253,828号;2008年10月17日に出願された米国特許出願第12/253,875号;2010年5月7日に出願された米国仮特許出願第61/332,565号;2010年5月21日に出願された米国仮特許出願第61/347,121号;および2010年7月20日に出願された米国仮特許出願第61/366,013号に一般に記載されており、これらは全て、全体が参照により明示的に援用される。
【0013】
この検定は、電極に結合され、かつ自壊的部分を含む電気活性部分(「EAM」)の使用に依存し、自壊的部分が存在すると、EAMに第1のE0が与えられ、自壊的部分が存在しないと、不可逆的開裂の際、EAMに第2のE0が与えられる。電極は、導入されると標的検体を結合する捕捉結合リガンドも含有する。可溶性捕捉リガンドが導入され、これも標的検体を結合し、グルコースオキシダーゼ酵素などの過酸化物生成部分を含む。酸素およびペルオキシダーゼ生成部分の基質(例えば、ペルオキシダーゼ生成部分としてグルコースオキシダーゼ酵素の場合、酸素飽和緩衝液およびグルコース)を加えると、過酸化物が生成され、自壊的部分を攻撃し、自壊的部分をEAMから除去し、これによってEAMのE0の変化が生じる。この差が検出され、このような変化が生じる場合、標的検体の存在の指標となる。
【0014】
ここで、標的検体が試料中に存在するかどうかを判定するために、試料が検出電極表面に塗布され、任意選択により洗浄され、標的検体の別のエピトープを結合するオキシダーゼ酵素が結合した二次結合リガンド(例えば、抗体)が加えられ、標的とともに「サンドイッチ検定」の形式が形成される。この表面は任意選択により洗浄され、高濃度のグルコースを含有する酸素飽和緩衝液で処理される。表面に基質オキシダーゼ酵素(本明細書において「SOX」と呼ばれることもある)が存在すると、溶液中に過酸化水素が酵素生成され、これが単分子層表面に拡散し、固定化されたEAMにおいて化学的脱離(chemical elimination)反応(「自壊的」反応)を引き起こす。この不可逆的脱離反応は、例えば、遷移金属錯体の「R」基(例えば置換基)を変更することによってEAMの電子環境を変え、よってEAMの見掛けの式量電位(formal potential)を、標的の存在を示す第2のE0に変える。
【0015】
したがって、本発明は、試料中の標的検体を検出するための方法および組成物を提供する。
【0016】
標的検体
本明細書における「標的検体」または「検体」あるいは文法上の相当語句は、検出対象となる任意の分子、化合物または粒子を意味する。以下により詳細に記載されるように、標的検体は、結合リガンド(捕捉結合リガンドおよび可溶性結合リガンドの両方)に結合する。当業者によって理解されるように、本発明の方法を用いて多数の検体を検出することができ、基本的に、後述される結合リガンドが作製され得るあらゆる標的検体を本発明の方法を用いて検出することができる。
【0017】
好適な検体には、生体分子を含む有機および無機分子が含まれる。好ましい実施形態において、検体は、環境汚染物質(農薬、殺虫剤、毒素などを含む);化学物質(溶媒、ポリマー、有機材料などを含む);治療用分子(治療薬剤および乱用薬物、抗生物質などを含む);生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、脂質、炭水化物、細胞膜抗原および受容体(神経受容体、ホルモン受容体、栄養受容体、および細胞表面受容体)またはそれらのリガンドなどを含む);全細胞((病原菌などの)原核細胞、および哺乳類の腫瘍細胞を含む真核細胞を含む);ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む);ならびに胞子などであり得る。
【0018】
ある実施形態において、標的検体はタンパク質である。当業者によって理解されるように、本発明を用いて検出できる可能性のあるタンパク質標的検体が多数存在する。本明細書における「タンパク質」または文法上の相当語句は、非天然アミノ酸およびアミノ酸類似体、およびペプチド模倣構造体を含有するタンパク質を含む、タンパク質、オリゴペプチドおよびペプチド、誘導体および類似体を意味する。側鎖は、(R)または(S)配置のいずれかにあり得る。好ましい実施形態において、アミノ酸は、(S)またはL配置にある。後述されるように、タンパク質が結合リガンドとして使用されるとき、試料の汚染物質による分解を遅らせるためにタンパク質類似体を用いるのが望ましいであろう。
【0019】
好適なタンパク質標的検体には、以下に限定はされないが、(1)免疫グロブリン、特にIgE、IgGおよびIgM、ならびに特に、以下に限定はされないが、例えば、ヒトアルブミン、アポリポタンパク質(アポリポタンパク質Eを含む)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、コルチゾール、α−フェトプロテイン、チロキシン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、抗トロンビンに対する抗体、薬剤(抗てんかん薬(フェニトイン、プリミドン、カルバリエゼピン(carbariezepin)、エトスクシミド、バルプロ酸、およびフェノバルビタールを含む)、心臓作用薬(ジゴキシン、リドカイン、プロカインアミド、およびジソピラミド)、気管支拡張剤(テオフィリン)、抗生物質(クロラムフェニコール、スルホンアミド)、抗うつ剤、免疫抑制剤、乱用薬物(アンフェタミン、メタアンフェタミン、カンナビノイド、コカインおよびアヘン剤)を含む)に対する抗体、ならびに何種類ものウイルス(オルトミクソウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、レオウイルス、トガウイルス(例えば風疹ウイルス)、パルボウイルス、ポックスウイルス(例えば天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス)、エンテロウイルス(例えばポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、肝炎ウイルス(A型、B型およびC型を含む)、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス)、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、ハンタウイルス、アレナウイルス、ラブドウイルス(例えば狂犬病ウイルス)、レトロウイルス(HIV、HTLV IおよびIIを含む)、パポバウイルス(例えば乳頭腫ウイルス)、ポリオーマウイルス、およびピコルナウイルスなどを含む)に対する抗体、ならびに細菌(バシラス属(Bacillus);ビブリオ属(Vibrio)、例えばコレラ菌(V.cholerae);エシェリキア属(Escherichia)、例えば腸管毒素原性大腸菌(E.coli)、赤痢菌属(Shigella)、例えば志賀赤痢菌(S.dysenteriae);サルモネラ属(Salmonella)、例えばチフス菌(S.typhi);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、例えばヒト型結核菌(M.tuberculosis)、ハンセン菌(M.leprae);クロストリジウム属(Clostridium)、例えばボツリヌス菌(C.botulinum)、破傷風菌(C.tetani)、ディフィシル菌(C.difficile)、ウェルシュ菌(C.perfringens);コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、例えばジフテリア菌(C.diphtheriae);連鎖球菌属(Streptococcus)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae);ブドウ球菌属(Staphylococcus)、例えば黄色ブドウ球菌(S.aureus);ヘモフィルス属(Haemophilus)、例えばインフルエンザ菌(H.influenzae);ナイセリア属(Neisseria)、例えば髄膜炎菌(N.meningitidis)、淋菌(N.gonorrhoeae);エルシニア属(Yersinia)、例えばランブル鞭毛虫ペスト菌(G.lambliaY.pestis)、シュードモナス属(Pseudomonas)、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)、P.プチダ(P.putida);クラミジア属(Chlamydia)、例えばトラコーマクラミジア(C.trachomatis);ボルデテラ属(Bordetella)、例えば百日咳菌(B.pertussis);トレポネーマ属(Treponema)、例えば梅毒トレポネーマ(T.pallidum)などを含む該当する様々な病原性および非病原性原核生物を含む)に対する抗体を含む治療上または診断上関連する抗体;(2)酵素(および他のタンパク質)、以下に限定はされないが、クレアチンキナーゼ、乳酸脱水素酵素、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、トロポニンT、ミオグロビン、フィブリノゲン、コレステロール、トリグリセリド、トロンビン、組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)を含む心臓病の治療の指標または心臓病の治療として用いられる酵素;アミラーゼ、リパーゼ、キモトリプシンおよびトリプシンを含む膵疾患の指標物;コリンエステラーゼ、ビリルビン、およびアルカリホスファターゼを含む肝機能の酵素およびタンパク質;アルドラーゼ、前立腺酸性ホスファターゼ、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ、ならびに細菌酵素およびHIVプロテアーゼなどのウイルス酵素;(3)エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL−1〜IL−17を含む)、インスリン、インスリン様成長因子(IGF−1および−2を含む)、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子(TGF−αおよびTGF−βを含む)、ヒト成長ホルモン、トランスフェリン、上皮成長因子(EGF)、低比重リポタンパク、高比重リポタンパク、レプチン、VEGF、PDGF、毛様体神経栄養因子、プロラクチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、カルシトニン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、コルチゾール、エストラジオール、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロゲステロン、テストステロンなどのホルモンおよびサイトカイン(その多くが細胞受容体のリガンドとして働く);ならびに(4)他のタンパク質(α−フェトプロテイン、癌胎児性抗原CEAを含む)が含まれる。
【0020】
さらに、抗体が検出され得る生体分子のいずれも同様に直接検出することができ;すなわち、ウイルスまたは細菌細胞、治療薬剤、および乱用薬物などの検出を直接行うことができる。
【0021】
好適な標的検体には、以下に限定はされないが、乳癌(CA15−3、CA549、CA27.29)、ムチン様癌関連抗原(MCA)、卵巣癌(CA125)、膵臓癌(DE−PAN−2)、ならびに結腸直腸癌および膵臓癌(CA19、CA50、CA242)のマーカーを含む炭水化物が含まれる。
【0022】
トロポニンおよびHbA1cを含む標的検体は、特定の実施形態および適用例に使用される。HbA1cの場合、結合リガンドのうちの1つ、すなわち、捕捉結合リガンドまたは可溶性結合リガンドのいずれかは、ヘモグロビンの糖化形態に対する特異性を有する。すなわち、一実施形態において、捕捉結合リガンドは、いずれの形態のヘモグロビンを結合することができ;表面を洗浄した後、過酸化物生成部分を有し、糖化形態(例えばHbA1c)のみに特異性を有する可溶性結合リガンドが加えられる。あるいは、捕捉結合リガンドは他の形態のヘモグロビンよりもHb1Acに対する特異性を有し、このような特異性を有さない可溶性捕捉リガンドは表面の適切な洗浄の後に用いられ得る。この手法は、糖化形態または非糖化形態のいずれかの検出が所望される他の標的検体に使用され得る。当業者によって理解されるように、両方の形態の検出が所望される標的検体もあり、それらの実施形態において、一方または他方に特異性を有さない結合リガンドが用いられる。
【0023】
本発明において特に対象とされているのは、ブドウ球菌(Staphylococcus)エンテロトキシンB、P−セレクチン、D−ダイマー、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C反応性タンパク質、ミオグロビン、およびCK−MBの検定である。
試料
標的検体は、一般に試料中に存在する。当業者によって理解されるように、試料溶液は、以下に限定はされないが、体液(以下に限定はされないが、実質的にあらゆる生物の血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門および膣分泌物、汗および精液を含み、哺乳類の試料が好ましく、ヒトの試料が特に好ましい);環境試料(以下に限定はされないが、空気、農産物、水および土壌試料を含む);植物材料;化学兵器用剤試料;研究試料、精製試料、原試料などを含む物を多種類含んでいてもよく;当業者によって理解されるように、実質的にあらゆる実験操作を試料に対して行ってもよい。ある実施形態は、貯蔵された(例えば冷凍および/または保存された)組織または新鮮な組織に由来する標的試料を用いる。パラフィン包埋試料が多くの実施形態において特に用いられる。これらの試料は、診断および予後診断などの、試料に関連するさらなるデータの存在により非常に有用であり得るためである。本明細書に記載の固定組織およびパラフィン包埋組織試料は、貯蔵可能または保存可能な組織試料を指す。ほとんどの患者由来の病理学的試料は、組織学的分析およびその後の保管を可能にするために、通常、固定およびパラフィン包埋される。
【0024】
固体支持体
標的検体は、電極を含む固体支持体を用いて検出される。本明細書における「基質」または「固体支持体」あるいは他の文法上の相当語句は、捕捉リガンドの結合または会合に適した、分離した個々の部位を含むように修飾され得る任意の材料を意味する。好適な基質には、金などの金属表面、以下に規定されるような電極、ガラスおよび改質または機能化ガラス、ガラス繊維、テフロン(teflon)(登録商標)、セラミック、雲母、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、テフロン(Teflon)(登録商標)、ならびにそれらの誘導体などを含む)、GETEK(ポリプロピレンオキシドとガラス繊維とのブレンド)など、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、ケイ素もしくは変性ケイ素を含むシリカまたはシリカ系材料、炭素、金属、無機ガラスおよび様々な他のポリマーが含まれ、プリント回路基板(PCB)材料が特に好ましい。
【0025】
本発明のシステムは、配列形式で特に用いられ、すなわちアドレス可能な検出電極(本明細書において一般に「パッド」、「アドレス」または「ミクロ位置(micro-location)」と呼ばれる)のマトリックスが存在する。本明細書における「配列」とは、配列形式における複数の捕捉リガンドを意味し;配列のサイズは、配列の組成および最終用途に依存する。約2つの異なる捕捉基質から何千もの捕捉基質を含有する配列を作製することができる。
【0026】
好ましい実施形態において、検出電極は、基板上に形成される。さらに、本明細書における説明は、一般に金電極の使用に関するが、当業者によって理解されるように、他の電極も同様に用いることができる。基板は、本明細書および参照文献に概説される様々な材料を含み得る。
【0027】
一般に、好ましい材料は、プリント回路基板材料を含む。回路基板材料は、導電層で被覆されかつリソグラフィー技術、特にフォトリソグラフィー技術を用いて処理されて、電極および相互接続(当該技術分野で相互接続部またはリードと呼ばれることもある)のパターンが形成された絶縁基板を含むものである。絶縁基板は、必ずしもではないが、一般にポリマーである。当該技術分野で公知であるように、1つまたは複数の層を用いて、「二次元」(例えば、平面における全ての電極および相互接続部)または「三次元」(電極が1つの表面上にあり、相互接続が他方の側まで基板を通過していてもよく、または電極が複数の表面上にある)基板のいずれかを作製してもよい。三次元系は、多くの場合、ドリル加工またはエッチングの使用と、その後の銅などの金属での電気めっきに依存し、「基板貫通(through board)」相互接続部が作製されるようになっている。回路基板材料には、多くの場合、基板に既に取り付けられた銅箔などの箔が設けられ、必要に応じて(例えば相互接続部に)、例えば電気めっきによってさらなる銅が追加される。次に、銅表面は、接着層の取り付けを可能にするために、例えばエッチングによって粗面化される必要があり得る。
【0028】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、複数の電極、好ましくは金電極を含む基板を含むバイオチップ(本明細書において「チップ」と呼ばれることもある)を提供する。電極の数は、配列について概説されているとおりである。各電極は、好ましくは、本明細書に概説されるように自己組織化単分子層を含む。好ましい実施形態において、単分子層形成種の1つは、本明細書に概説されるように捕捉リガンドを含む。さらに、各電極は、一端で電極に結合され、電極を制御可能なデバイスに最終的に結合される相互接続部を有する。すなわち、各電極は独立してアドレス可能である。
【0029】
最後に、本発明の組成物は、マイクロ流体構成要素およびロボット構成要素(例えば、両方とも全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,942,771号および同第7,312,087号ならびに関連ケースを参照されたい)、ならびに信号処理技術を用いたコンピュータを含む検出システム(例えば、全体が参照により本明細書に援用される米国特許第6,740,518号を参照されたい)を含む様々なさらなる構成要素を含み得る。
【0030】
電極
本発明の固体支持体は電極を含む。本明細書における「電極」とは、電子デバイスに接続されたとき、電流または電荷を検知し、それを信号に変換することができる組成物を意味する。好ましい電極は、当該技術分野において公知であり、以下に限定はされないが、金;白金;パラジウム;ケイ素;アルミニウム;酸化白金、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化パラジウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化モリブデン(Mo2O6)、酸化タングステン(WO3)および酸化ルテニウムを含む金属酸化物電極を含む特定の金属およびそれらの酸化物;ならびに炭素(ガラス状炭素電極、黒鉛およびカーボンペーストを含む)を含む。好ましい電極には、金、ケイ素、炭素および金属酸化物電極が含まれ、金が特に好ましい。
【0031】
本明細書に記載の電極は、平面として示されているが、これは、電極の考えられる形態の1つに過ぎず、あくまでも図示を目的としたものである。電極の形態は、用いられる検出方法によって様々であろう。
【0032】
本発明の電極は、一般にバイオチップのカートリッジに組み込まれ、様々な形態を取ることができ、作用電極および基準電極、相互接続(「基板貫通」相互接続を含む)、ならびにマイクロ流体構成要素を含み得る。例えば、全体が参照により本明細書に援用される米国特許第7,312,087号を参照されたい。さらに、バイオチップは、一般に、本明細書に記載の構成要素を備えた作用電極、基準電極、および対電極/補助電極を含む。
【0033】
バイオチップのカートリッジは、生体分子の配列を含む基板を含み、様々な方法で構成され得る。例えば、チップは、試薬の導入および除去のための、入口および出口を備えた反応チャンバを含み得る。さらに、カートリッジは、試料を導入し、試薬を加え、反応を行うことができ、次いで検出のための配列を含む反応チャンバに試料を加えるように、マイクロ流体構成要素を有するキャップまたは蓋を含み得る。
【0034】
自己組織化単分子層
電極は、自己組織化単分子層(「SAM」)を含む。本明細書における「単分子層」または「自己組織化単分子層」または「SAM」とは、互いにほぼ平行に、かつ表面に対してほぼ垂直に配向される、表面に自然に化学吸着される分子の比較的整列された集合体を意味する。分子の各々は、表面に結合する官能基、および単分子層中の隣接する分子と相互作用して比較的整列された配列を形成する部分を含む。「混合された」単分子層は、少なくとも2種の異なる分子が単分子層を構成する、異種成分からなる単分子層を含む。本明細書において概説されるように、単分子層の使用により、表面への生体分子の非特異的結合の量が減少し、核酸の場合、電極からのオリゴヌクレオチドの距離の結果としてオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの効率が高まる。したがって、単分子層は、標的酵素を電極表面に近づけないようにする。さらに、単分子層は、電荷担体を電極の表面に近づけない働きをする。したがって、この層は、電極とReAMとの間、または電極と溶媒中の荷電種との間の電気的接触を防ぐのに役立つ。このような接触は、直接の「短絡」または試料中に存在し得る荷電種を介した間接的な短絡を生じ得る。したがって、単分子層は、最小限の「孔」が存在するように、電極表面上の均一層に密に詰まっているのが好ましい。ここで、単分子層は、溶媒が電極に接近するのを防ぐための物理的障壁として働く。
【0035】
ある実施形態において、単分子層は、導電性オリゴマーを含み、特に、後述のように、導電性オリゴマーは、一般にEAMを電極表面に結合するのに用いられる。本明細書における「導電性オリゴマー」とは、好ましくは直鎖状の、実質的に導電性のオリゴマーを意味し、そのある実施形態は、文献中で「分子ワイヤ」と呼ばれる。本明細書における「実質的に導電性」とは、オリゴマーが100Hzにおいて電子を移動させることができることを意味する。一般に、導電性オリゴマーは、導電性オリゴマーのモノマー単位間のように、実質的に重なっているπ軌道、すなわち共役π軌道を有するが、導電性オリゴマーは、1つ以上のシグマ(σ)結合も含み得る。さらに、導電性オリゴマーは、関連するEAM内に電子を注入するかまたは関連するEAMから電子を受容する能力によって機能的に定義され得る。さらに、導電性オリゴマーは、本明細書に記載の絶縁体より導電性である。さらに、本発明の導電性オリゴマーは、それ自体で電子を供与または受容し得る電気活性ポリマーと区別されるべきである。
【0036】
導電性オリゴマーのより詳細な説明は、全体が参照により本明細書に援用される国際公開第1999/57317号に見出される。特に、国際公開第1999/57317号の14〜21頁の構造1〜9に示される導電性オリゴマーは、本発明において使用される。ある実施形態において、導電性オリゴマーは、以下の構造を有する。
【化1】

【0037】
さらに、単分子層中の導電性オリゴマーの少なくとも一部の末端は、電子的に露出される。本明細書における「電子的に露出される」とは、EAMを末端に近接して配置した際、および適切な信号を用いて開始した後、EAMの存在に依存する信号が検出され得ることを意味する。導電性オリゴマーは、末端基を有してもまたは有さなくてもよい。ここで、好ましい実施形態において、さらなる末端基は存在せず、導電性オリゴマーは、例えばアセチレン結合などの末端基で終端する。あるいは、ある実施形態において、本明細書において「Q」と示されることもある末端基が追加される。末端基は、いくつかの理由のために用いられ、例えば、EAMの検出のための導電性オリゴマーの電子利用(electronic availability)に寄与するため、または例えば非特異的結合を防ぐためなどの他の理由によりSAMの表面を変えるためなどである。例えば、標的検体がDNAまたはRNAなどの核酸である場合、該核酸を忌避するかまたは表面に位置しないようにしてハイブリダイゼーションを促進するために、末端に負荷電基が存在して負荷電表面を形成し得る。好ましい末端基には、−NH、−OH、−COOH、および−CH3などのアルキル基、および(ポリ)エチレングリコールなどの(ポリ)アルコキシドが含まれ、−OCH2CH2OH、−(OCH2CH2O)2H、−(OCH2CH2O)3H、および−(OCH2CH2O)4Hが好ましい。
【0038】
一実施形態において、導電性オリゴマーと様々な種類の末端基との混合物を使用することができる。したがって、例えば、検出を促進し得る末端基もあれば、非特異的結合を防ぎ得るものもある。
【0039】
ある実施形態において、電極は、電極表面上に好ましくは単分子層の形態で不動態化剤(passivation agent)をさらに含む。いくつかの検体の場合、電極からの結合リガンドの距離が離れると、検体結合(すなわちハイブリダイゼーション)の効率が上がり得る。さらに、単分子層の存在は、表面への非特異的結合を低減することができ、これは、本明細書において概説される末端基の使用によってさらに促進され得る。不動態化剤層は、結合リガンドおよび/または検体を電極表面に近づけないようにする。さらに、不動態化剤は、電荷担体を電極の表面に近づけない働きをする。したがって、この層は、電極と電子移動部分との間、または電極と溶媒中の荷電種との間の電気的接触を防ぐのに役立つ。このような接触は、直接の「短絡」または試料中に存在し得る荷電種を介した間接的な短絡を生じ得る。したがって、不動態化剤の単分子層は、最小限の「孔」が存在するように、電極表面上の均一層に密に詰まっているのが好ましい。あるいは、不動態化剤は、単分子層の形態でなくてもよいが、導電性オリゴマーの充填または他の特性を助けるために存在してもよい。
【0040】
したがって、不動態化剤は、溶媒が電極に接近するのを防ぐための物理的障壁として働く。したがって、不動態化剤自体は、実際に、(1)導電性分子または(2)非導電性、すなわち絶縁分子のいずれかであり得る。したがって、一実施形態において、不動態化剤は、電極への電荷の移動を妨げるかまたは低減するための末端基を有するかまたは有さない、本明細書に記載の導電性オリゴマーである。導電性であり得る他の不動態化剤には、−(CF2)n−、−(CHF)n−および−(CFR)n−のオリゴマーが含まれる。好ましい実施形態において、不動態化剤は絶縁体部分である。
【0041】
ある実施形態において、単分子層は絶縁体を含む。「絶縁体」は、好ましくは直鎖状の実質的に非導電性のオリゴマーである。本明細書における「実質的に非導電性」とは、絶縁体を通る電子移動の速度が、導電性オリゴマーを通る電子移動の速度より遅いことを意味する。言い換えると、絶縁体の電気抵抗は、導電性オリゴマーの電気抵抗より高い。しかしながら、−(CH2)16分子などの絶縁体と一般にみなされるオリゴマーであっても、遅い速度ではあるが、それでも電子を移動し得ることに留意されたい。
【0042】
ある実施形態において、絶縁体は、約10−7Ω−1cm−1以下の伝導度Sを有し、約10−8Ω−1cm−1未満が好ましい。参照により本明細書に援用されるGardner et al.、Sensors and Actuators A 51(1995)57-66。
【0043】
一般に、絶縁体は、アルキルまたはヘテロアルキルオリゴマーまたはシグマ結合を有する部分であるが、特定の絶縁体分子は、芳香族基または1つ以上の共役結合を含有していてもよい。本明細書における「ヘテロアルキル」とは、鎖内に含まれる少なくとも1つのヘテロ原子、すなわち窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素またはホウ素を有するアルキル基を意味する。あるいは、絶縁体は、電子移動を好ましくは実質的に抑制するかまたは減速する働きをする1つ以上のヘテロ原子または結合が追加された導電性オリゴマーにかなり類似してもよい。ある実施形態において、絶縁体はC6〜C16アルキルを含む。
【0044】
絶縁体を含む不動態化剤は、本明細書に定義されるR基で置換されて、電極上での部分または導電性オリゴマーの充填、絶縁体の親水性または疎水性、および絶縁体の可撓性、すなわち回転、ねじりまたは縦方向の可撓性が変更され得る。例えば、分枝状アルキル基が用いられてもよい。さらに、絶縁体を含む不動態化剤の末端は、本明細書において末端基(「TG」)と呼ばれることもある、単分子層の露出表面に影響を与えるさらなる基を含有してもよい。例えば、荷電した、中性の、または疎水性の基を付加して、試料からの非特異的結合を防ぎ、または検体などの結合の速度に影響を与え得る。例えば、末端に荷電した基を存在させて、荷電した表面を形成して、特定の標的検体の結合を促進または阻害したり、あるいは表面への配置を忌避または防止したりすることができる。
【0045】
不動態化剤の長さは必要に応じて様々であり得る。一般に、不動態化剤の長さは、上記のように導電性オリゴマーの長さと同様である。さらに、導電性オリゴマーは、基本的に不動態化剤と同じ長さかまたはそれより長く、その結果、結合リガンドが溶媒により到達しやすくなり得る。
【0046】
単分子層は、絶縁体を含む1種類の不動態化剤または異なる種類のものであり得る。
【0047】
好適な絶縁体は、当該技術分野において公知であり、以下に限定はされないが、−−(CH2)n−、−(CRH)n−、および−(CR2)n−、エチレングリコール、または酸素の代わりに他のヘテロ原子、すなわち窒素または硫黄を用いた誘導体(電極が金である場合、硫黄誘導体は好ましくない)を含む。ある実施形態において、絶縁体は、C6〜C16アルキルを含む。
【0048】
ある実施形態において、電極は金属表面であり、相互接続または電気化学を行う能力を必ずしも有する必要はない。
【0049】
電気活性部分
電極は、SAMに加えてEAMを含む。本明細書における「電気活性部分(EAM)」または「遷移金属錯体」または「酸化還元活性分子」または「電子移動部分(ETM)」とは、可逆的または半可逆的に1つ以上の電子を移動することができる金属含有化合物を意味する。電子供与体および電子受容体の容量は相対的なものであり;すなわち、特定の実験条件下で電子を失い得る分子は、異なる実験条件下で電子を受容し得ることを理解されたい。
【0050】
可能な遷移金属錯体の数は非常に多く、電子移動化合物の当業者は本発明において多数の化合物を用いることができるであろうことが理解される。本明細書における「遷移金属」とは、原子が部分的なまたは完全な電子殻を有する金属を意味する。本発明に用いるのに好適な遷移金属には、以下に限定はされないが、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、白金(Pt)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、タングステン(W)、およびイリジウム(Ir)が含まれる。すなわち、第一遷移金属、白金金属(Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPt)は、Fe、Re、W、MoおよびTcとともに、本発明に特に使用される。また、本発明に使用される金属は、ルテニウム、オスミウム、鉄、白金およびパラジウムを含む、酸化状態が変化しても配位部位の数が変化しない金属であり、オスミウム、ルテニウムおよび鉄が特に有用である。一般に、遷移金属は、TMまたはMとして本明細書(または援用される参照文献)に示される。
【0051】
遷移金属および配位リガンドは金属錯体を形成する。本明細書における「リガンド」または「配位リガンド」(本明細書または援用される参照文献の図において「L」として示されている)とは、一般に、配位共有結合を介してその電子の1つ以上を供与するか、または共有結合を介してその電子を1つ以上の中心原子またはイオンと共有する、原子、イオン、分子、または官能基を意味する。
【0052】
ある実施形態において、小さい極性リガンドが用いられ;一般に本明細書において「L」として示されている好適な小さい極性リガンドは、本明細書においてより詳細に記載されるように、2つの一般的なカテゴリーに分類される。一実施形態において、小さい極性リガンドは、劣った脱離基としてまたは優れたシグマ供与体としての特性、および金属の属性のため、金属イオンに有効に不可逆的に結合される。これらのリガンドは、「置換不活性(substitutionally inert)」と称され得る。あるいは、より詳細に後述されるように、小さい極性リガンドは、それらの優れた脱離基特性または劣ったシグマ供与体特性のために、標的検体の結合の際に検体が1つ以上の配位原子を金属に提供し、小さい極性リガンドを有効に置換し得るように、金属イオンに可逆的に結合され得る。これらのリガンドは、「置換されやすい(substitutionally labile)」と称され得る。リガンドは、高い溶媒の再構成エネルギーに寄与するため、双極子を形成するのが好ましい。
【0053】
遷移金属錯体の構造のいくつかが以下に示される:
【化2】

【0054】
Lは、金属イオンの結合のための配位原子を提供する共リガンド(co-ligand)である。当業者によって理解されるように、共リガンドの数および性質は金属イオンの配位数に応じて決まる。単座、二座または多座の共リガンドは、任意の位置で用いられ得る。したがって、例えば、金属が6の配位数を有する場合、導電性オリゴマーの末端からのL、核酸から供与されるL、およびrは合計で6になる。したがって、金属が6の配位数を有する場合、rは、0(全ての配位原子が他の2つのリガンドによって提供される場合)〜4(全ての共リガンドが単座である場合)の範囲であり得る。したがって、一般に、rは、金属イオンの配位数および他のリガンドの選択に応じて、0〜8となる。
【0055】
一実施形態において、金属イオンは、6の配位数を有し、導電性オリゴマーに結合されたリガンドおよび核酸に結合されたリガンドは両方とも少なくとも二座であり;すなわち、rは、好ましくは0、1(すなわち、残りの共リガンドが二座である)または2(2つの単座共リガンドが用いられる)である。
【0056】
当該技術分野において理解されるように、共リガンドは、同じかまたは異なり得る。好適なリガンドは、次の2つのカテゴリーに分類される:配位原子として窒素、酸素、硫黄、炭素またはリン原子(金属イオンに応じて)を使用するリガンド(文献中でシグマ(σ)供与体と一般に呼ばれる)ならびにメタロセンリガンドなどの有機金属リガンド(文献中でパイ(π)供与体と一般に呼ばれ、本明細書においてLmと表される)。好適な窒素供与リガンドは、当該技術分野において周知であり、以下に限定はされないが、シアノ(C≡N)、NH2;NHR;NRR’;ピリジン;ピラジン;イソニコチンアミド;イミダゾール;ビピリジンおよびビピリジンの置換誘導体;テルピリジンおよび置換誘導体;フェナントロリン、特に1,10−フェナントロリン(phenと略記される)ならびに4,7−ジメチルフェナントロリンおよびジピリドール[3,2−a:2’,3’−c]フェナジン(dppzと略記される)などのフェナントロリンの置換誘導体;ジピリドフェナジン;1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(hatと略記される);9,10−フェナントレンキノンジイミン(phiと略記される);1,4,5,8−テトラアザフェナントレン(tapと略記される);1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラデカン(cyclamと略記される)およびイソシアニドを含む。縮合誘導体を含む置換誘導体が用いられてもよい。ある実施形態において、ポルフィリンおよびポルフィリンファミリーの置換誘導体が用いられてもよい。例えば、Comprehensive Coordination Chemistry、Ed. Wilkinson et al.、Pergammon Press、1987、Chapters 13.2(pp73-98)、21.1(pp.813-898)および21.3(pp915-957)を参照されたい。これらは全て、全体が参照により本明細書に援用される。
【0057】
当該技術分野において理解されるように、特に、供与体(1)および供与体(2)が、シアノ(Cが供与体(1)であり、Nが供与体(2)であり、パイ系がCN三重結合である)のようにパイ系を介して共役される場合、供与体(1)が金属に結合し、かつ供与体(2)が周囲の媒体(溶媒、タンパク質など)との相互作用に利用可能である、任意のリガンド供与体(1)−架橋−供与体(2)を本発明に使用することができる。一例は、ビピリミジンであり、これは、ビピリジンとよく似ているが、「裏側(back side)」に媒体との相互作用のためのN供与体を有する。さらなる共リガンドには、以下に限定はされないが、シアネート、イソシアネート(−N=C=O)、チオシアネート、イソニトリル、N2、O2、カルボニル、ハロゲン化物、アルコキシド、チオレート、アミド、リン化物、ならびにスルフィノ、スルホニル、スルホアミノ、およびスルファモイルなどの硫黄含有化合物が含まれる。
【0058】
ある実施形態において、複数のシアノを共リガンドとして用いて様々な金属と錯体化する。例えば、7つのシアノがRe(III)を結合し;8つがMo(IV)およびW(IV)を結合する。したがって、6つ以下のシアノおよび1つ以上のLを有するRe(III)、あるいは7つ以下のシアノおよび1つ以上のLを有するMo(IV)またはW(IV)を本発明に使用することができる。W(IV)系を有するEAMは、より不活性で、調製しやすく、より有利な還元電位であるとの理由から、他のものより特に有利である。一般に、CN/L比率が大きいと変化が大きくなる。
【0059】
炭素、酸素、硫黄およびリンを用いた好適なシグマ供与リガンドは、当該技術分野で公知である。例えば、好適なシグマ炭素供与体は、CottonおよびWilkenson、Advanced Organic Chemistry、5th Edition、John Wiley & Sons、1988(参照により本明細書に援用される;例えば38ページを参照されたい)に見出される。同様に、好適な酸素リガンドには、クラウンエーテル、水および当該技術分野で公知の他のものが含まれる。ホスフィンおよび置換ホスフィンも好適であり、CottonおよびWilkensonの38ページを参照されたい。
【0060】
酸素、硫黄、リンおよび窒素供与リガンドは、ヘテロ原子が配位原子として機能できるように結合される。
【0061】
ある実施形態において、有機金属リガンドが用いられる。酸化還元部分として使用するための純粋有機化合物、ならびに複素環式または環外置換基として供与体原子を有するδ結合有機リガンドとの様々な遷移金属配位錯体に加えて、パイ結合された有機リガンドを有する様々な遷移金属有機金属化合物が利用可能である(参照により明示的に援用されるAdvanced Inorganic Chemistry、5th Ed.、Cotton & Wilkinson、John Wiley & Sons、1988、chapter 26; Organometallics、A Concise Introduction、Elschenbroich et al.、2nd Ed.、1992、VCH;およびComprehensive Organometallic Chemistry II、A Review of the Literature 1982-1994、Abel et al.Ed、Vol. 7、chapters 7、8、9 & 11、Pergamon Pressを参照されたい)。このような有機金属リガンドには、シクロペンタジエニドイオン[C5H5(−1)]などの環状芳香族化合物ならびにビス(シクロペンタジエル)金属化合物(すなわちメタロセン)の種類を生成するインデニリド(−1)イオンなどの様々な環置換および縮環誘導体が含まれる。例えば、参照により援用されるRobins et al.、J. Am. Chem. Soc. 104:1882-1893(1982);およびGassman et al.、J. Am. Chem. Soc. 108:4228-4229(1986)を参照されたい。これらのうち、フェロセン[(C5H5)2Fe]およびその誘導体は、様々な化学的電子移動(参照により援用されるConnelly et al.、Chem. Rev. 96:877-910(1996))および電気化学的電子移動(参照により援用される、Geiger et al.、Advances in Organometallic Chemistry 23:1-93;およびGeiger et al.、Advances in Organometallic Chemistry 24:87)または「酸化還元」反応に用いられている典型例である。様々な第一系列、第二系列および第三系列遷移金属のメタロセン誘導体が、核酸のリボース環またはヌクレオシド塩基のいずれかに共有結合される酸化還元部分としての有力な候補である。他の好適である可能性のある有機金属リガンドには、ビス(アレーン)金属化合物ならびにその環置換および縮環誘導体を生成するベンゼンなどの環状アレーンが含まれ、その中でビス(ベンゼン)クロムが典型例である。アリル(−1)イオン、またはブタジエンなどの他の非環状π結合リガンドは、好適である可能性のある有機金属化合物を生成し、全てのこのようなリガンドは、他のパイ結合およびデルタ結合されたリガンドと導通して、金属−炭素結合が存在する一般的な種類の有機金属化合物を構成する。架橋有機リガンド、およびさらなる非架橋リガンドを有する、ならびに金属間結合を有するかまたは有さないこのような化合物の様々な二量体およびオリゴマーの電気化学的研究が、核酸分析における酸化還元部分の有力な候補である。
【0062】
共リガンドの1つ以上が有機金属リガンドである場合、リガンドは、一般に、有機金属リガンドの炭素原子の1つを介して結合されるが、結合は複素環式リガンドの他の原子を介していてもよい。好ましい有機金属リガンドには、置換誘導体およびメタロセノファンを含むメタロセンリガンドが含まれる(CottonおよびWilkenson(上掲)の1174ページを参照されたい)。例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルなどの、複数のメチル基を有するものが好ましいメチルシクロペンタジエニルなどのメタロセンリガンドの誘導体を用いて、メタロセンの安定性を高めることができる。好ましい実施形態において、メタロセンの2つのメタロセンリガンドのうちの1つのみが誘導体化される。
【0063】
本明細書に記載されるように、リガンドの任意の組合せを用いることができる。好ましい組合せには以下の場合が含まれる:a)全てのリガンドが窒素供与リガンドである;b)全てのリガンドが有機金属リガンドである;およびc)導電性オリゴマーの末端におけるリガンドがメタロセンリガンドであり、核酸によって提供されるリガンドが窒素供与リガンドであり、他のリガンドが、必要に応じて、窒素供与リガンドまたはメタロセンリガンド、あるいは混合物のいずれかである。
【0064】
通例、非大環状キレート剤を含むEAMは、金属イオンに結合されて、非大環状キレート化合物が形成されるが、その理由は、金属の存在により、複数のプロリガンド(proligand)が互いに結合して、複数の酸化状態が得られるためである。
【0065】
ある実施形態において、窒素供与プロリガンドが用いられる。好適な窒素供与プロリガンドが当該技術分野において周知であり、以下に限定はされないが、NH2;NHR;NRR’;ピリジン;ピラジン;イソニコチンアミド;イミダゾール;ビピリジンおよびビピリジンの置換誘導体;テルピリジンおよび置換誘導体;フェナントロリン、特に1,10−フェナントロリン(phenと略記される)ならびに4,7−ジメチルフェナントロリンおよびジピリドール[3,2−a:2’,3’−c]フェナジン(dppzと略記される)などのフェナントロリンの置換誘導体;ジピリドフェナジン;1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(hatと略記される);9,10−フェナントレンキノンジイミン(phiと略記される);1,4,5,8−テトラアザフェナントレン(tapと略記される);1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラデカン(cyclamと略記される)およびイソシアニドを含む。また、縮合誘導体を含む置換誘導体が用いられてもよい。金属イオンを配位飽和せず、別のプロリガンドの追加を必要とする大環状リガンドが、この目的では非大環状とみなされることに留意されたい。当業者によって理解されるように、いくつかの「非大環状」リガンドを共有結合して、配位飽和した化合物であるが環状骨格がない化合物を形成することができる。
【0066】
ある実施形態において、単座リガンド(例えば少なくとも1つのシアノリガンド)、二座リガンド、三座リガンド、および多座リガンドの混合物をEAMの構成に用いることができる。
【0067】
本発明において特に有用なのは、少なくとも第1の自壊的部分が結合された、メタロセン、特にフェロセンであるEAMであるが、後述されるように、ある実施形態において、2つ以上の自壊的部分が結合される。ある実施形態において、2つ以上の自壊的部分がフェロセンに結合される場合、それらは全て、シクロペンタジエニル環の1つに結合される。ある実施形態において、自壊的部分は、異なる環に結合される。ある実施形態において、1つの部位が電極への結合に用いられる限り、自壊的部分を有するシクロペンタジエニル環の1つまたは両方を飽和することができる。
【0068】
さらに、EAMは、一般に、EAMを電極に結合するのに用いられる導電性オリゴマーにEAMを結合するための結合部分を有する。一般に、必須ではないが、フェロセンなどのメタロセンの場合、自壊的部分は、シクロペンタジエニル環の1つに結合され、結合部分は、図1に一般に示されるように、他の環に結合されるが、同じ環への結合も行うことができる。当業者によって理解されるように、いずれの環においても、自壊的部分と少なくとも1つの結合リンカーとの任意の組合せを用いることができる。
【0069】
フェロセンは、自壊的部分および結合部分に加えて、少なくとも自壊的基の存在下または非存在下でE0を変化させることを含む様々な理由で追加され得るさらなる置換基を含み得る。関連の参照文献および援用される参照文献において「R」基と表されることが多い好適な置換基は、参照により本明細書に援用される、2008年10月17日に出願された米国特許出願第12/253,828号;2008年10月17日に出願された米国特許出願第12/253,875号;2010年5月7日に出願された米国仮特許出願第61/332,565号;2010年5月21日に出願された米国仮特許出願第61/347,121号;および2010年7月20日に出願された米国仮特許出願第61/366,013号に記載されている。
【0070】
後述されるものなどのある実施形態において、過酸化物感受性部分がEAMに直接結合され、過酸化物感受性部分が過酸化物に曝されるとE0を変化させる場合、EAMは、自壊的部分を含まない。以下に示されるように、一実施形態では、過酸化物感受性部分をEAM(この場合、フェロセン)に直接結合させることが可能であり、それによって、フェロセンは、ボロン酸ピナコールエステル部分が結合されると第1のE0を有し、例えば過酸化物の存在下で、ボロン酸ピナコールエステル部分が除去されると第2のE0を有するようになっている。
【化3】

【0071】
自壊的部分
後述されるように、本発明のEAMは、自壊的部分が存在する場合、EAMが第1のE0を有し、自壊的部分が除去された場合、第2のE0を有するように、EAMに共有結合された少なくとも1つの自壊的部分を含む。
【0072】
用語「自壊的スペーサー」は、2つの化学部分を共有結合して通常は安定した3分子にすることができる二官能性の化学部分を指す。自壊的スペーサーは、第1の部分への結合が開裂される場合、第2の部分から自然に分離することができる。本発明において、自壊的スペーサーは、過酸化物感受性部分、例えばホウ素部分を、EAMに連結する。図1に一般に示されるように、過酸化物に曝されると、ホウ素部分は外れて、スペーサーは分解される。一般的に言えば、不可逆的な反復的な結合再構成反応が電子供与アルコール官能基(すなわちキノンメチドモチーフ)によって開始される任意のスペーサーは、酸化条件下でアルコール生成を引き起こす部分として働くホウ素基を有するように構成され得る。あるいは、ホウ素部分は、遷移金属のプロキレート剤(pro-chelator)であるリガンド中の潜在フェノール酸素を覆うことができる。酸化の際、リガンドは変換され、SAM中でEAMの形成を開始する。例えば、試料キレート性リガンドは、鉄を結合するサリチルアルデヒドイソニコチノイルヒドラゾンである。
【0073】
当業者によって理解されるように、様々な自壊的部分が、様々なEAMおよび過酸化物感受性部分とともに用いられてもよい。自壊的リンカーは、米国特許出願公開第20090041791号;同第20100145036号および米国特許第7,705,045号および同第7,223,837号を含むいくつかの参照文献に記載されており、特に自壊的スペーサーの開示について、これらは全て、全体が参照により明示的に援用される。
【0074】
本発明に特に有用ないくつかの自壊的リンカーが図6に示される。自壊的スペーサーは、1つのモノマー単位あるいは同じモノマーを有するポリマー(ホモポリマー)または異なるモノマーを有するポリマー(ヘテロポリマー)のいずれかを含み得る。あるいは、自壊的スペーサーは、先行出願である「Electrochemical Assay for the Detection of Enzymes」、米国特許出願第12/253,828号、PCT/US2008/080363号(参照により本明細書に援用される)に記載される化学的性質に類似の開裂の後にEAMの環境を変えるSAMにおいてEAMに隣接する基であり得る。
【0075】
過酸化物感受性部分
自壊的スペーサーは、本発明の過酸化物感受性部分(PSM、本明細書においてPOMと呼ばれることもある)とEAMとを結合する。一般に、過酸化物感受性部分は、図1に示されるように、ホウ素を含有するものである。
【0076】
例えば、本明細書の図は、フェロセン誘導体の使用を示し、ここで、過酸化物は、p−置換ボロン酸ピナコールエステルを含むカルバミン酸ベンジルからアミンへの変化を引き起こす。この自己脱離(self-eliminating)基は、過酸化水素の存在下でアミン官能化されたフルオロフォアを生成することが既に記述されている(両方とも参照により援用される、Sella, E.; Shabat, D. Self-immolative dendritic probe for the direct detection of triacetone triperoxide. Chem. Commun. 2008、5701-5703;およびLo, L.-CI; Chu, C.-Y. Development of highly selective and sensitive probes for hydrogen peroxide. Chem. Commun. 2003、2728-2729)。他のこのような基(ホウ酸アリールエステルおよびアリールボロン酸)もSellaおよびLoに記載されている。さらに、フェロセニルアミンが、それらの対応するカルバメート誘導体と比較してより低い電位(約150mV)で酸化還元挙動を示すことが知られている(参照により本明細書に援用されるSagi et al.、Amperometric Assay for Aldolase Activity; Antibody-Catalyzed Ferrocenylamine Formation. Anal. Chem. 2006、78、1459-1461を参照されたい)。
【0077】
捕捉結合リガンドおよび可溶性結合リガンド
SAMおよびEAMに加えて、電極は捕捉結合リガンドを含む。本明細書における「結合リガンド」または「結合種」とは、標的検体の存在を調べるのに用いられ、標的検体に結合する化合物を意味する。一般に、本明細書に記載の実施形態のほとんどでは、標的検体の1分子あたり用いられる少なくとも2つの結合リガンド;すなわち、検出表面に結合される「捕捉」または「アンカー」結合リガンド、および標的検体に独立して結合し、直接または間接的にSOXなどの少なくとも1つの標識を含む可溶性結合リガンドがある。本明細書における「捕捉結合リガンド」とは、標的検体を結合する電極表面に結合される標的検体を結合する結合リガンドを意味する。本明細書における「可溶性結合リガンド」とは、捕捉結合リガンドと異なる部位において標的検体を結合する溶液中の結合リガンドを意味する。
【0078】
当業者によって理解されるように、結合リガンドの組成は、標的検体の組成に応じて決まる。様々な検体のための結合リガンドは公知であり、または公知の技術を用いて容易に分かる。例えば、検体がタンパク質である場合、結合リガンドは、タンパク質(特に抗体またはその断片(FAbなど)を含む)または小分子を含む。
【0079】
一般に、抗体は、捕捉結合リガンドおよび可溶性結合リガンドの両方として有用である。
【0080】
可溶性結合リガンドは、過酸化物を生成する酵素などの過酸化物生成部分も含む。グルコースオキシダーゼ、アシルCoAオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼなどを含む様々なこのような酵素が公知である。様々な好適なオキシダーゼ酵素が、当該技術分野において公知である(例えば、以下に限定はされないが、グルコースオキシダーゼ、D−アミノ酸オキシダーゼ(DAAO)およびコリンオキシダーゼを含むEC1.1.3.4として分類される任意のグルコースオキシダーゼ酵素)。以下に限定はされないが、アスペルギルス(Aspergillus)種(例えば黒色アスペルギルス(A. niger))、ペニシリウム(Penicillium)種、ストレプトミセス(Streptomyces)種、マウスなどを含む、細菌、真菌および動物(哺乳類を含む)を含む様々な生物に由来するグルコースオキシダーゼ酵素が周知である。EC1.3.3.6として分類されるアシルCoAオキシダーゼも有用である。
【0081】
あるいは、可溶性結合リガンドは、次に基質との反応によって過酸化物を生成する可溶性アポ−オキシダーゼ酵素(すなわち、アポ−DAAOに結合するFADに変換されるFADP)のリン酸化前駆体からの必要な補助因子の生成を触媒する、アルカリホスファターゼ(AP)などの酵素を含有し得る。この手法は、アポ酵素、リン酸化補助因子、およびオキシダーゼ酵素基質の濃度が表面固定された標的に対して高い場合、標的結合事象のカスケード増幅を可能にする。
【0082】
一般に、捕捉結合リガンドは、検出のために、検出表面への標的検体の結合を可能にする。一実施形態において、結合は特異的であり、結合リガンドは結合対の一部である。本明細書における「特異的に結合する」とは、試験試料中の検体と他の成分もしくは汚染物質とを区別するのに十分な特異性でリガンドが検体を結合することを意味する。結合は、非特異的結合を除去するための洗浄工程を含む、検定の条件下で検体が結合したままであることが可能なほど十分である必要がある。ある実施形態において、例えば、特定の生体分子の検出の際、結合リガンドに対する検体の結合定数は、少なくとも約10−4〜10−9−1であり、少なくとも約10−5〜10−9が好ましく、少なくとも約10−7〜10−9−1が特に好ましい。
【0083】
様々な検体に対する結合リガンドが公知であり、または公知の技術を用いて容易に分かる。例えば、検体が一本鎖核酸である場合、結合リガンドは、一般に、実質的に相補的な核酸である。あるいは、参照により本明細書に援用される、米国特許第5,270,163号、同第5,475,096号、同第5,567,588号、同第5,595,877号、同第5,637,459号、同第5,683,867号、同第5,705,337号、および関連特許に一般に記載されるように、核酸「アプタマー」は、実質的にあらゆる標的検体に結合するために開発することができる。同様に、検体は核酸結合タンパク質であってもよく、捕捉結合リガンドは一本鎖または二本鎖核酸のいずれかであり;あるいは、検体が一本鎖または二本鎖核酸である場合、結合リガンドは核酸結合タンパク質であってもよい。検体がタンパク質である場合、結合リガンドは、上述したように、タンパク質(特に、抗体またはその断片(FAbなど)を含む)、小分子、またはアプタマーを含む。好ましい結合リガンドタンパク質は、抗体およびペプチドを含む。当業者によって理解されるように、好ましくは特異的に会合する任意の2つの分子を、検体または結合リガンドのいずれかとして用いることができる。好適な検体/結合リガンド対には、以下に限定はされないが、抗体/抗原、受容体/リガンド、タンパク質/核酸;核酸/核酸、酵素/基質および/または阻害剤、炭水化物(糖タンパク質および糖脂質を含む)/レクチン、炭水化物および他の結合パートナー、タンパク質/タンパク質;およびタンパク質/小分子が含まれる。これらは、野生型または誘導体配列であってもよい。
【0084】
捕捉結合リガンド(例えば、捕捉抗体)は、(通常、結合リンカーを介して)電極に共有結合されるか、あるいは、例えば、ビオチン/ストレプトアビジン反応(例えば、SAMの表面上のビオチン、抗体などのストレプトアビジン共役捕捉リガンド、または逆もまた同様)を用いた結合;核酸反応(例えば、捕捉リガンドは核酸(「Watson」)を有し得、表面は相補的核酸(「Crick」を有し得る))を介した結合、抗体のFc断片に対するタンパク質G結合を用いた結合などで、共有結合ではないが強固に結合され得る。
【0085】
また、本明細書に記載される本発明は、違法な爆発性の過酸化アセトン(TATP)用のセンサーとして用いることもできることにも留意されたい。
【0086】
アンカー基
本発明は、電極表面上にEAM(導電性オリゴマーを用いて電極表面に任意選択により結合される)、SAM、および捕捉結合リガンドを含む化合物を提供する。一般に、ある実施形態において、これらの部分は、アンカー基を用いて電極に結合される。本明細書における「アンカー」または「アンカー基」とは、本発明の化合物を電極に結合する化学基を意味する。
【0087】
当業者によって理解されるように、アンカー基の組成は、アンカー基が結合される表面の組成に応じて決まる。金電極の場合、ピリジニルアンカー基およびチオール系アンカー基の両方が特に使用される。
【0088】
導電性オリゴマーの共有結合は、用いられる電極および導電性オリゴマーに応じて、様々な方法で行われ得る。一般に、構造1において「A」として以下に示されるようないくつかの種類のリンカーが用いられ、ここで、Xは導電性オリゴマーであり、斜線の面は電極である:
【化4】

【0089】
この実施形態において、Aはリンカーまたは原子である。「A」の選択は、一つには、電極の特性に応じて決まる。したがって、例えば、金電極が用いられる場合、Aは硫黄部分であり得る。あるいは、金属酸化物電極が用いられる場合、Aは、酸化物の酸素に結合されたケイ素(シラン)部分であり得る(例えば、両方とも参照により明示的に援用される、Chen et al.、Langmuir 10:3332-3337(1994); Lenhard et al.、J. Electroanal. Chem. 78:195-201(1977)を参照されたい)。炭素系電極が用いられる場合、Aはアミノ部分であり得る(好ましくは第1級アミンである。例えばDeinhammer et al.、Langmuir 10:1306-1313(1994)を参照されたい)。したがって、好ましいA部分には、以下に限定はされないが、シラン部分、硫黄部分(アルキル硫黄部分を含む)、およびアミノ部分が含まれる。
【0090】
ある実施形態において、電極は炭素電極、すなわちガラス状炭素電極であり、結合はアミン基の窒素を介する。代表的な構造は、全体について、ただし、特に本明細書に記載される構造および様々なアンカー基の説明および付随する文章について参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20080248592号の構造15に示されている。ここでもまた、さらなる原子、すなわちリンカーおよび/または末端基が存在し得る。
【0091】
上記のように参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20080248592号の構造16において、酸素原子は、金属酸化物電極の酸化物由来のものである。Si原子は、他の原子も含有してもよく、すなわち置換基を含有するケイ素部分であってもよい。他の電極へのSAMの他の結合は、当該技術分野において公知であり;酸化インジウムスズ電極への結合については、例えば、Napier et al.、Langmuir、1997を参照されたい。また、酸化インジウムスズ電極へのホスフェートの化学吸着については、1998年5月4〜5日のCHI会議においてH.Holden Thorpeによって言及された。
【0092】
好ましい一実施形態において、酸化インジウムスズ(ITO)が電極として用いられ、アンカー基がホスホネート含有種である。
【0093】
1).硫黄アンカー基
単一部分として構造1に示されるが、導電性オリゴマーは、2つ以上の「A」部分で電極に結合されてもよく;「A」部分は同じであってもまたは異なっていてもよい。したがって、例えば、電極が金電極であり、「A」が硫黄原子または部分である場合、以下の構造2、3および4に一般に示されるように、複数の硫黄原子が、導電性オリゴマーを電極に結合するのに用いられてもよい。当業者によって理解されるように、他のこのような構造を構成することができる。構造2、3および4において、A部分は単なる硫黄原子であるが、置換硫黄部分も用いられてもよい。
【0094】
したがって、例えば、以下の構造6に一般に示されるように、電極が金電極であり、「A」が硫黄原子または部分である場合、以下の構造2、3および4に一般に示されるように、複数の硫黄原子が、導電性オリゴマーを電極に結合するのに用いられてもよい。当業者によって理解されるように、他のこのような構造を構成することができる。構造2、3および4において、A部分は単なる硫黄原子であるが、置換硫黄部分も用いられてもよい。
【化5】

【0095】
構造4と同様に、電極に結合された3つの硫黄部分を有する単一の炭素原子で終端する導電性オリゴマーを有することが可能であり得ることにも留意されたい。
【0096】
別の態様において、本発明は、共役チオールを含むアンカーを提供する。共役チオールアンカーを有するいくつかの例示的な錯体が図10に示される。ある実施形態において、アンカーは、アルキルチオール基を含む。例の一部が、図10Aおよび4Bに示される。図10Bに示される2種の化合物はそれぞれ、カルベンおよび4−ピリジルアラニンをベースとしている。
【0097】
別の態様において、本発明は、金電極などの電極における検体検出のための電気活性部分の構成でアンカー基として働く共役多脚型(multipodal)チオ含有化合物を提供する。すなわち、スペーサー基(種を形成するEAM、ReAMC、または「空いた」単分子層に結合され得る)が、2つ以上の硫黄原子を用いて結合される。本明細書に記載されるように、これらの多脚型アンカー基は、直鎖状または環状であり得る。
【0098】
ある実施形態において、アンカー基は「二脚型(bipodal)」であり、金表面に結合する2つの硫黄原子を含有し、直鎖状であるが、場合によっては、他の多脚型(例えば「三脚型(tripodal)」)を有する系を含むことが可能であり得る。このような多脚型アンカー基は、向上した安定性を示し、および/または立体要求的頭基(sterically demanding headgroup)を有するチオール含有アンカーからSAMを調製するためのより大きなフットプリント(footprint)を可能にする。
【0099】
ある実施形態において、アンカーは、環状ジスルフィド(「二脚」)を含むが、場合によっては、他の多脚型(例えば「三脚型」)を有する環系アンカー基を含むことが可能であり得る。環の原子の数は、例えば5〜10個と様々であることができ、後述されるように、多環状アンカー基も含む。
【0100】
ある実施形態において、アンカー基は、以下に示されるように、尖端の窒素原子および分子内のジスルフィド結合を有する7員環である[1,2,5]−ジチアゼパン単位を含む:
【化6】

【0101】
構造(IIIa)において、環の炭素原子がさらに置換され得ることにも留意されたい。当業者によって理解されるように、他の員環も含まれる。さらに、他の環状アルカン(環状ヘテロアルカンを含む)または芳香環構造で置換された上に示される[1,2,5]−ジチアゼパンなどの環状ヘテロアルカンを含み得る多環状環構造を用いることができる。
【0102】
ある実施形態において、アンカー基およびスペーサーの部分は、以下に示される構造を有する。
【化7】

【0103】
本明細書における「R」基は、EAMの遷移金属成分の末端配位リガンドを有する共役オリゴフェニルエチレン単位を含む任意の置換基であり得る。
【0104】
アンカーは、二脚型中間体(I)(式III(式中、R=1)の化合物)から合成され、これは、参照により本明細書に援用されるLi et al.、Org. Lett. 4:3631-3634(2002)に記載されている。参照により本明細書に援用されるWei et al、J. Org、Chem. 69:1461-1469(2004)も参照されたい。
【0105】
硫黄原子の数は、本明細書において概説されるように様々であることができ、特定の実施形態では、スペーサー当たり1つ、2つ、および3つを用いる。
【0106】
当業者によって理解されるように、本発明の組成物は、以下にならびに2008年10月17日に出願された米国特許出願第12/253,828号;2008年10月17日に出願された米国特許出願第12/253,875号;2010年5月7日に出願された米国仮特許出願第61/332,565号;2010年5月21日に出願された米国仮特許出願第61/347,121号;2010年7月20日に出願された米国仮特許出願第61/366,013号に概説されるものを含む様々な方法で作製することができる。ある実施形態において、組成物は、米国特許第6,013,459号、同第6,248,229号、同第7,018,523号、同第7,267,939号、米国特許出願第09/096593号および米国仮特許出願第60/980,733号、および2008年8月7日に出願された米国仮特許出願第61/087,102号に開示される方法にしたがって作製され、これらは全て、全体があらゆる目的のために本明細書に援用される。
【0107】
適用例
本発明のシステムは、本明細書において概説されるように、様々な標的検体の検出に使用される。ある実施形態において、試験試料中に含まれる標的検体は、PSM−SIM−EAM混合物、捕捉結合リガンド、および任意選択によりSAMを有する電極に添加される。この添加後、任意選択による洗浄工程および可溶性結合リガンドの添加が続くが、当業者によって理解されるように、これらの添加は、同時に行うことができ、または溶液結合リガンドは、チップに加える前に標的検体を含有する試料に添加することができる。表面はここでも任意選択により洗浄され、過酸化物感受性部分用の基質、例えばグルコースが、存在する場合、過酸化物が生成され、SIMが開裂される条件下で加えられる。これらの条件は、一般に生理学的条件である。一般に、様々な濃度に対する反応の差を得るために、複数の検定の混合が異なる濃度で並行して行われる。通常、これらの濃度の1つが、陰性対照として、すなわち、0の濃度または検出のレベル未満の濃度で使用される。さらに、任意の種類の他の試薬が、スクリーニング検定に含まれ得る。これらには、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、最適な結合を促進し、および/または非特異的なまたはバックグラウンド相互作用を低減するのに用いられ得る洗浄剤などのような試薬が含まれる。また、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などの、検定の効率を他の方法で高める試薬が用いられ得る。成分の混合物は、必要な結合を提供する任意の順序で加えられ得る。
【0108】
ペルオキシダーゼの生成により、錯体のPGM−SIM成分が減少し、EAMのE0が変化する。ある実施形態において、EAMのE0は、約20mV、30mV、40mV、50mV、75mV、80mV、90mV〜100mVだけ変化し、ある実施形態では、200、300または500mVの変化が得られる。ある実施形態において、EAMのE0の変化は減少である。ある実施形態において、EAMのE0の変化は増加である。
【0109】
溶媒の再構成エネルギーの判定は、当業者によって認識されるように行われるであろう。簡潔に、Marcus理論で概説されるように、電子移動速度(kET)は、いくつかの異なる駆動力(または自由エネルギー、ΔG)で判定され;速度が自由エネルギーと等しくなるポイントがλである。これは、ほとんどの場合、溶媒の再構成エネルギーに相当するものとして扱うことができる。参照により本明細書に援用されるGray et al. Ann. Rev. Biochem. 65:537(1996)を参照されたい。
【0110】
標的検体の存在を示す溶媒阻害された酸化還元活性分子は、電子移動を開始し、溶媒阻害された酸化還元活性分子と電極との間の電子移動の信号特性を検出することによって検出される。
【0111】
電子移動は、一般に、電子的に、好ましくは電圧を用いて開始される。変性された核酸プローブを含む試料に電位が印加される。印加された電位の正確な制御および変化は、定電位電解装置ならびに3つの電極系(1つの基準電極、1つの試料電極および1つの対電極)または2つの電極系(1つの試料電極および1つの対電極)のいずれかによって行うことができる。これにより、一つには酸化還元活性分子の選択によって決まり、一つには用いられる導電性オリゴマーによって決まる、系のピーク電子移動電位に印加された電位を適合させることができる。
【0112】
好ましくは、開始および検出は、溶媒接近可能な酸化還元活性分子の溶媒再構成エネルギーと溶媒阻害された酸化還元活性分子の溶媒再構成エネルギーとの相対的差異を最大にするように選択される。
【0113】
検出
酸化還元活性分子と電極との間の電子移動は、以下に限定はされないが、好ましくは、電流測定、ボルタンメトリー、静電容量およびインピーダンスを含む電子検出を用いた様々な方法で検出することができる。これらの方法は、ACまたはDC電流に基づいた時間または周波数に依存する方法、パルス法、ロックイン技術(lock in technique)、および(高域、低域、帯域)フィルタリングを含む。ある実施形態において、必要なのは電子移動検出のみであり;他の実施形態において、電子移動の速度が測定され得る。
【0114】
ある実施形態において、電流測定、ボルタンメトリー、静電容量、およびインピーダンスを含む電子検出が用いられる。好適な技術には、以下に限定はされないが、電解重量法;電量分析(定電位電量分析および定電流電量分析を含む);ボルタンメトリー(サイクリックボルタンメトリー、パルスボルタンメトリー(通常のパルスボルタンメトリー、矩形波ボルタンメトリー、示差パルスボルタンメトリー、オスターヤング(Osteryoung)矩形波ボルタンメトリー、および定電量パルス法);ストリッピング分析(陽極ストリッピング分析、陰極ストリッピング分析、矩形波ストリッピングボルタンメトリー);コンダクタンス測定(電解コンダクタンス、直接分析);時間依存電気化学分析(クロノアンペロメトリー、クロノポテンショメトリー、サイクリッククロノポテンショメトリーならびに電流測定、ACポログラフィ(polography)、クロノガルバメトリー、およびクロノ電量分析);ACインピーダンス測定;静電容量測定;ACボルタンメトリー、および光電気化学が含まれる。
【0115】
ある実施形態において、電子移動のモニタリングは、電流測定検出によって行われる。この検出方法は、試験試料における本発明の組成物を含有する電極と補助(対)電極との間に(別個の基準電極と比較して)電位を印加することを含む。異なる効率の電子移動が、標的検体の存在下または非存在下で誘発される。
【0116】
電子移動を測定するデバイスは、高感度の電流検出を含み、電位を制御する手段、通常は定電位電解装置を含む。この電圧は、酸化還元活性分子の電位に関して最適化される。
【0117】
ある実施形態において、別の電子検出形態が用いられる。例えば、電位差計による(または電解電量計による)測定が、非ファラデー(非正味電流フロー)プロセスを含み、従来、pHおよびその他のイオン検出器で用いられる。同様のセンサーを用いて、酸化還元活性分子と電極との間の電子移動をモニタリングする。さらに、絶縁体の他の特性(抵抗など)および導体の他の特性(導電性、インピーダンスおよび静電容量など)を用いて、酸化還元活性分子と電極との間の電子移動をモニタリングし得る。最後に、電流(電子移動など)を生成するシステムも小さい磁場を生成し、これはある実施形態においてモニタリングされ得る。
【0118】
ある実施形態において、標的を加える前に有機溶媒中でシステムを動作させることによって、電極における溶媒接近可能な酸化還元活性分子の量を測定するように、システムは較正されてもよい。これは、センサーまたはシステムの内部制御として機能するために極めて重要である。これにより、類似しているが異なる制御システムに依存せずに、標的を加える前に、検出に用いられる同じ分子の事前測定を行うことができる。したがって、検出に用いられる実際の分子を実験の前に定量化することができる。水を用いずに、すなわちアセトニトリルなどの有機溶媒中でシステムを動作させることによって、水を排除し、溶媒再構成効果を実質的になくす。これにより、電極の表面にある実際の分子数の定量化が可能になる。次に、試料が加えられ、出力信号が決定され、結合/非結合分子の比率が決定され得る。これは、先行技術の方法に勝る大きな利点である。
【0119】
本発明の組成物に見られる速い速度の電子移動の1つの利点は、時間分解能が、電子電流に基づくモニターの信号対雑音比の結果を大幅に向上することができることであることを理解されたい。本発明の速い速度の電子移動により、電子移動の開始と完了との間の高信号および定型化された遅延がもたらされる。電子移動のパルス開始および検出の「ロックイン」増幅の使用などによって特定の遅延の信号を増幅させることにより、信号対雑音比の桁違いの向上を得ることができる。
【0120】
ある実施形態において、電子移動は、直流(DC)技術を用いて開始され、検出される。上述したように、酸化還元活性分子のE0は、標的検体の結合時の溶媒の再構成エネルギーの変化の結果として変化し得る。したがって、溶媒接近可能な酸化還元活性分子のE0および溶媒阻害された分子のE0で行われる測定によって、検体の検出が可能になる。当業者によって理解されるように、いくつかの好適な方法を用いて、電子移動を検出することができる。
【0121】
ある実施形態において、電子移動は、交流電流(AC)方法を用いて開始される。電極と第2の電子移動部分との間の電子移動を開始するために、好ましくは少なくとも試料電極(本発明の錯体を含有する)および対電極を介して、システムに第1の入力電気信号が加えられる。基準電極および作用電極に電圧を加えて、3つの電極系も用いることができる。この実施形態において、第1の入力信号は、少なくともAC成分を含む。AC成分は、様々な振幅および周波数を有し得る。一般に、本発明の方法で使用するためのAC振幅は、約1mV〜約1.1Vの範囲であり、約10mV〜約800mVが好ましく、約10mV〜約500mVが特に好ましい。AC周波数は、約0.01Hz〜約10MHzの範囲であり、約1Hz〜約1MHzが好ましく、約1Hz〜約100kHzが特に好ましい。
【0122】
ある実施形態において、第1の入力信号は、DC成分およびAC成分を含む。すなわち、試料電極と対電極との間のDCオフセット電圧は、第2の電子移動部分の電気化学電位によって掃引される。掃引(sweep)は、システムの最大応答が見られるDC電圧を識別するのに用いられる。これは、一般に、酸化還元活性分子の電気化学電位かまたはそれに近いものである。この電圧が決定されると、掃引または1つ以上の均一なDCオフセット電圧のいずれかを使用することができる。約1V〜約+1.1VのDCオフセット電圧が好ましく、約500mV〜約+800mVが特に好ましく、約300mV〜約500mVが特に好ましい。DCオフセット電圧に加えて、様々な振幅および周波数のAC信号成分が加えられる。酸化還元活性分子が、AC摂動に応答するのに十分に低い溶媒の再構成エネルギーを有する場合、電極と酸化還元活性分子との間の電子移動により、AC電流が生成される。
【0123】
ある実施形態において、AC振幅は様々に変化する。理論に制約されるものではないが、振幅が増大すると駆動力が増大するようである。したがって、振幅が高いほど、過電圧が高くなり、電子移動の速度が速くなる。したがって、一般に、同じシステムで、任意の1つの周波数でより高い過電圧を使用することによってその周波数での向上された応答(すなわちより高い出力信号)が得られる。したがって、システムの電子移動の速度を上げるために高い周波数で振幅を増大させることができ、その結果、感度が上がる。さらに、上述したように、電子移動の速度に基づいて溶媒接近可能な酸化還元活性分子と溶媒阻害された酸化還元活性分子とを区別することが可能であり得、これを用いて、周波数または過電圧に基づいてこれら2つを区別することができる。
【0124】
ある実施形態において、システムの測定は、少なくとも2つの別個の振幅または過電圧で行われ、複数の振幅での測定が好ましい。上述したように、振幅の変化による応答の変化は、システムの識別、較正および定量化の基礎となり得る。
【0125】
ある実施形態において、AC周波数は様々に変化する。異なる周波数では、異なる分子が異なる方法で応答する。当業者によって理解されるように、増大すると、一般に出力電流が増大する。しかしながら、電極と酸化還元活性分子との間を電子が移動する速度より周波数が高い場合、周波数が高くなると、出力信号の損失または減少につながる。ある時点で、周波数は、溶媒阻害された酸化還元活性分子さえも通る電子移動の速度より高くなり、出力信号も下がる。
【0126】
さらに、AC技術の使用により、共有結合された核酸以外の部分による、任意の1つの周波数におけるバックグラウンド信号の大幅な低減、すなわち不要な信号の「ロックアウト(locking out)」または「フィルタリング」が可能になる。すなわち、溶液中の電荷担体または酸化還元活性分子の周波数応答は、その拡散係数によって制限される。したがって、高い周波数では、電荷担体は、電極にその電荷を伝達するほど十分速くは拡散せず、および/または電荷移動速度は十分速くなくてもよい。これは、不動態化層単分子層を用いないかまたは部分的なまたは不十分な単分子層を有する、すなわち溶媒が電極に接近可能なである実施形態において特に重要である。上記のように、DC技術では、電極が溶媒に接近可能なである「孔」の存在により、溶媒電荷担体がシステムを「短絡」させることがある。しかしながら、本発明のAC技術を用いて、単分子層の存在の有無にかかわらず、溶液中の1つ以上の電荷担体の周波数応答を防ぐ1つ以上の周波数を選択することができる。これは、血液などの多くの体液が電流測定検出方法を妨げ得るかなりの量の酸化還元活性分子を含有するため、特に重要である。
【0127】
ある実施形態において、システムの測定は、少なくとも2つの別個の周波数で行われ、複数の周波数での測定が好ましい。複数の周波数には走査が含まれる。好ましい実施形態において、周波数応答は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも約5つ、より好ましくは少なくとも約10の周波数で測定される。
【0128】
信号処理
電子移動を開始するために入力信号を送信した後、出力信号が受信または検出される。出力信号の存在および大きさは、入力信号の過電圧/振幅;入力AC信号の周波数;介在媒体の組成、すなわち、電子移動部分間のインピーダンス;DCオフセット;システムの環境;および溶媒に応じて決まる。所与の入力信号では、出力信号の存在および大きさは、一般に、金属イオンの酸化状態を変化させるのに必要な溶媒の再構成エネルギーに応じて決まる。したがって、AC成分およびDCオフセットを含む入力信号の送信の際、溶媒の再構成エネルギーが十分低く、周波数が範囲内にあり、振幅が十分である場合、電子が電極と酸化還元活性分子との間で移動され、出力信号が得られる。
【0129】
ある実施形態において、出力信号はAC電流を含む。上記のように、出力電流の大きさは、いくつかのパラメータに応じて決まる。これらのパラメータを変更することによって、システムをいくつかの方法で最適化することができる。
【0130】
一般に、本発明において生成されるAC電流は、約1フェムトアンペア〜約1ミリアンペアの範囲であり、約50フェムトアンペア〜約100マイクロアンペアの電流が好ましく、約1ピコアンペア〜約1マイクロアンペアが特に好ましい。
【0131】
装置
本発明は、AC検出方法を用いて検体を検出するための装置をさらに提供する。本装置は、少なくとも第1の測定電極すなわち試料電極、および第2の測定電極すなわち対電極を有する試験チャンバを含む。3つの電極系も有用である。第1および第2の測定電極は、液体試験試料が存在すると、2つの電極が電気接触し得るように、試験試料受け入れ領域と接触している。
【0132】
さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるように、第1の測定電極は、スペーサーを介して、好ましくは導電性オリゴマーを介して共有結合された酸化還元活性錯体を含む。あるいは、第1の測定電極は、共有結合された酸化還元活性分子および結合リガンドを含む。
【0133】
本装置は、試験チャンバ;すなわち、測定電極に電気的に接続された電源をさらに含む。好ましくは、電源は、必要に応じて、ACおよびDC電圧を供給することができる。
【0134】
一実施形態において、本装置は、入力信号および出力信号を比較することができるプロセッサをさらに含む。プロセッサは、電極に連結され、出力信号を受信するように構成され、よって標的検体の存在を検出する。
【実施例】
【0135】
実施例1:
一般的な方法および材料
特に断りのない限り、標準的なSchlenk技術を用いて乾燥アルゴン雰囲気下で全ての合成操作を行った。反応媒体のために、Glass Contours(Laguna Beach、CA)から入手されるDow-Grubbs溶媒系を介して中性アルミナ上で溶媒を乾燥させた。これらの溶媒を、使用する前にアルゴンで脱酸素化した。EMDが予め被覆されたアルミニウム板(シリカゲル60、F254、EMD Chemicals,Inc.、Gibbstown、NJ)を用いたTLCによって反応をモニタリングした。以下の方法、すなわち、ヨウ素蒸気、紫外線への暴露、またはリンモリブデン酸による染色とその後の加熱のうちの1つによって複数の領域を視覚化した。実験室空気の陽圧下でフラッシュクロマトグラフィーをシリカ上で行った(シリカゲル60粒径:40〜63μm;Sorbent Technologies、Atlanta、GA)。H NMRおよびプロトンデカップリング(proton-decoupled)13C NMRスペクトルを、Bruker Avance III分光計(Hについて499.37MHz、13Cについて125.58MHz)において記録し、Bruker TOPSPIN 2.1ソフトウェアを用いて処理した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)または大気圧光イオン化(APPI)方法を用いて、Agilent 6210飛行時間(TOF)LC/MS機器を用いて、高分解能質量分析(HRMS)を得た。
【0136】
クロロホルム−dをCambridge Isotope Laboratoriesから購入した。化合物2およびp−ピナコールボレートベンジルアルコールを、既に記載されているように合成した(両方とも参照により明示的に援用される、Bertin, P. A.; Meade, T. J. Tetrahedron Lett. 2009、50、5409-5412; Sella, E.; Shabat, D. Chem. Commun. 2008、5701-5703)。全ての他の試薬を商業的供給元から購入し、特に断りのない限りさらに精製せずに使用した。
【0137】
化合物3
化合物2(0.500g、1.2mmol)およびトリエチルアミン(0.25mL、1.8mmol)をTHF(15mL)に溶解させた溶液に、DPPA(0.285mL、1.32mmol)を加えた。反応物を室温で1.5時間攪拌し、減圧下で濃縮した。粗残渣をカラムクロマトグラフィー(MeOH:EtOAc:DCM、0.5:1.5:8)によって精製して、赤色/オレンジ色の固体(0.460g、1.04mmol、87%)として表題化合物を得た。1H NMR、13C{1H}NMR、およびHRMSは、表題化合物と一致していた。
【0138】
化合物4
化合物3(0.460g、1.04mmol)をトルエン(20mL)に溶解させた溶液をArで激しく脱気し、1.5時間にわたって100℃まで加熱した。p−ピナコールボレートベンジルアルコール(0.268g、1.14mmol)およびDBTL(0.018mL、0.03mmol)を加え、反応物をさらに2時間100℃に保った。反応物を減圧下で濃縮し、粗残渣をカラムクロマトグラフィー(Et2O:EtOAc:DCM、1:2:2)によって精製して、薄いオレンジ色の固体(0.480g、0.741mmol、71%)として表題化合物を得た。1H NMR、13C{1H}NMR、およびHRMSは、表題化合物と一致していた。
【0139】
化合物5
化合物4(0.135g、0.209mmol)をDCM(5mL)に溶解させた溶液を氷浴中で冷却した。TFA:DCM(1:1v/v、5mL)を5分間かけて滴下添加した。15分後、氷浴を取り除き、反応物を室温まで温めた。45分後、揮発性物質を真空除去して、褐色/オレンジ色の固体(定量)として表題化合物のTFA塩を得た。1H NMR、13C{1H}NMR、およびHRMSは、表題化合物と一致していた。
【0140】
化合物1
11−メルカプトウンデカン酸(0.045g、0.206mmol)およびHATU(0.078g、0.206mmol)をDCM:DMF(1:1v/v、5mL)に溶解させた溶液に、化合物5(0.105g、0.159mmol)およびDIPEA(0.083mL、0.477mmol)を加えた。反応物を室温で2時間攪拌した。反応混合物をEtOAc(150mL)中に希釈し、塩水(3×50mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過し、濃縮して粗残渣にし、この粗残渣をカラムクロマトグラフィー(MeOH:EtOAc:DCM、0.5:1.5:8)によって精製して、黄色の固体(0.035g、0.047mmol、30%)として表題化合物を得た。1H NMR、13C{1H}NMR、およびHRMSは、表題化合物と一致していた。
【0141】
電気化学
作用電極としてのSAM変性金、Ag/AgCl線基準電極、および白金線対電極(Bioanalytical Systems)の3つの電極系を用いて、0.15Mのn−Bu4NClO4支持電解質(0.5mL)を含むTHF中でCHIモデル660A電気化学分析器(CHI Instruments Inc.)を用いてサイクリックボルタンメトリーを行った。化合物4を過酸化水素で処理することによってモデル化合物(未加工)を調製した。結果は図3に示される。
【0142】
実施例2:H2O2の存在によるE0の変化:
C6希釈剤で希釈されたPB25_49におけるHの研究;NaCO緩衝液(pH10.1)中での5分間および10分間のインキュベーション
A.目的
この研究の目的は、pH10.1で洗浄され、pH8.5でインキュベートされたEAM1の希釈されたSAM(PB25_49)における5分間および10分間のHのインキュベーション時間の効果を試験することであった。Hは、EAM上のフェロセンを新たな電位で現れ得る新たな誘導体に分解するであろう。
【0143】
【表1】

【0144】
EAM1の構造:
【化8】

【0145】
C.手順
1日目:
チップの洗浄および組み立て
13個(検定のために12個および内部基準試験のために1個)の未加工のチップを以下のとおりに洗浄した:
インサート付きのガラスジャーにチップを入れた。
0.2%のTWEEN溶液中で5分間超音波処理した。
超純水およびエタノールですすいでから、アルゴンで乾燥させた。
プラズマ洗浄装置で10分間洗浄した。
エタノールですすぎ、アルゴンで乾燥させた。
金属基材、ガスケット、およびPDMSスタンプを以下のとおりに洗浄した:
ハンドソープで手洗いした。
エタノールですすぎ、空気乾燥させた。
金属基材の中央の両面テープ上にチップを、チップの上にPDMSスタンプを、PDMSスタンプの上にガスケットを設置することによってチップを組み立て、バインダークリップで全て一緒に留めた。
【0146】
実験のストックの調製
EAMアリコート中に以下のものを組み合わせることによってEAMストックを調製した:
【0147】
【表2】

【0148】
SAM溶液の調製
別個のガラスバイアル中に以下のものを組み合わせることによってSAM溶液を調製した:
【0149】
【表3】

【0150】
SAMのインキュベーション
チップ1〜12に、500μLの上で調製したSAM溶液を加えた後、一晩インキュベートした。
【0151】
全てのチップを、エタノールを含むプラスチック容器に入れ、パラフィルムで密封した(エタノールの蒸発およびチップの乾燥を防ぐため)。この設備をアルミニウム箔で覆った。
【0152】
2日目:
内部基準測定:
1,1’−フェロセンジメタノールの1mMの溶液を、1MのLiClO溶液中で調製した。1.3mgの1,1’−フェロセンジメタノールを、5mLの1MのLiClOと組み合わせた。MW1,1’−フェロセンジメタノール=246.09である。
【0153】
500uLの1mMの1,1’−フェロセンジメタノール溶液を清浄なチップに加えた。準1基準電極および白金対電極を系に加え、CVを記録した。
【0154】
チップにおける適切なSAM形成を検査するための初期試験:
一晩インキュベートした後、チップをインキュベーション容器から取り出した。SAM析出溶液をバイアル中に収集し、乾燥させて、将来の使用のためにリサイクルされたEAMを得た。
【0155】
一晩インキュベートした後、チップ1〜12を、以下に示される工程にしたがうことによって洗浄した:
エタノールで8回
超純水で4回
試験緩衝液、1MのLiClOで2回。
500uLの1MのLiClOを、チップ1、3、5、6、7、9、11、および12に加え、次にチップを配電箱につないだ。
【0156】
基準電極および対電極をEC系に加えた。CHI 650Cからの白色のダブルクリップを基準電極(準1)に、緑色のクリップを作用電極に、赤色のクリップを対電極(予め火炎処理し、EtOHおよび水ですすいだ白金線)に接続した。
【0157】
CHI 650C系を用いて、全てのチップを試験した。試験ごとに、以下の6つのファイルを用いた:10000mV/秒、100mV/秒、10000mV/秒の長さ、多重CV(20サイクル)およびACV(順方向および逆方向)。
【0158】
この実験において全てのチップを試験するのにマルチプレクサを用いた。
【0159】
初期試験の後、チップ1〜5および7〜11を以下のとおりに洗浄した:
超純水で8回
100mMのNaCO(pH10.1)で2回
チップ6および12を以下のとおりに洗浄した:
超純水で8回
100mMのNaHCO(pH8.5)で2回。
【0160】
様々な濃度の過酸化水素の調製:
使用の直前に、100mMのNaCO緩衝液(pH10.1)に溶解させた様々な濃度のH溶液を作製した。Hの元のストックは1Mであり、57uLの50%のHを943uLの超純水と組み合わせることによって作製した。このストックを4℃の冷蔵庫に一晩入れたままにして、変旋光を生じさせた。それから、以下に示されるように希釈物を作製した:
【0161】
【表4】

【0162】
チップへの様々な濃度のH2O2の添加および試験:
作製した過酸化水素溶液をよくボルテックスした。
【0163】
500uLのそれぞれの過酸化水素溶液を各チップ(1〜12)に加え、溶液を十分に混合した。間の4:30、2:30、および0:30の時間にピペットチップで溶液を混合しながら5分間、ならびに間の7:30、5:00、および2:30の時間にピペットチップで溶液を混合しながら10分間、室温でインキュベーションを行った。
【0164】
それぞれのH2O2のインキュベーションの後、チップを以下のとおりに洗浄した:
超純水で8回
100mMのNaCO(pH10.1)または100mMのNaHCO(pH8.5)で2回。
各ウェルを500uLのそれぞれの緩衝液で5分間インキュベートした。チップを緩衝液でインキュベートした後、チップを以下のとおりに洗浄した:
超純水で8回
1MのLiClOで2回。
【0165】
工程VI d、eおよびfに示される全てのチップを試験するのに配電箱を用いた。
【0166】
試験の後、チップを洗浄し、エタノールおよび水で清浄にしてから分解した。
【0167】
【表5】

【0168】
C6希釈剤で希釈されたPB25_49におけるHの研究;100uMのグルコースオキシダーゼ(GO)を含むNaHCO緩衝液(pH8.5)中での5分間および10分間のインキュベーション(07/08/10)
目的
この研究の目的は、pH10.1で洗浄され、pH8.5でインキュベートされたPB25_49の希釈されたSAMにおける5分間および10分間のグルコースのインキュベーション時間の効果を試験することであった。グルコースオキシダーゼを100uMでこれらのチップに加えて、EAMにおいて、フェロセンを新たな電位で現れ得る新たな誘導体に分解するであろうHを生成した。
【0169】
【表6】

【0170】
EAM構造が以下に示される:
【化9】

【0171】
手順
1日目:06/16/10
チップの洗浄および組み立て
11個(検定のために10個および内部基準試験のために1個)の未加工チップを以下のとおりに洗浄した:
インサート付きのガラスジャーにチップを入れた。
0.2%のTWEEN溶液中で5分間超音波処理した。
超純水およびエタノールですすいでから、アルゴンで乾燥させた。
プラズマ洗浄装置で10分間洗浄した。
エタノールですすぎ、アルゴンで乾燥させた。
金属基材、ガスケット、およびPDMSスタンプを以下のとおりに洗浄した:
ハンドソープで手洗いした。
エタノールですすぎ、空気乾燥させた。
金属基材の中央の両面テープ上にチップを、チップの上にPDMSスタンプを、PDMSスタンプの上にガスケットを設置することによってチップを組み立て、バインダークリップで全て一緒に留めた。
【0172】
実験のストックの調製
EAMアリコート中に以下のものを組み合わせることによってEAMストックを調製した:
【0173】
【表7】

【0174】
SAM溶液の調製
別個のガラスバイアル中に以下のものを組み合わせることによってSAM溶液を調製した:
【0175】
【表8】

【0176】
SAMのインキュベーション
チップ1〜10に、500μLの上で調製したSAM溶液を加えた後、一晩インキュベートした。
【0177】
全てのチップを、エタノールを含むプラスチック容器に入れ、パラフィルムで密封した(エタノールの蒸発およびチップの乾燥を防ぐため)。この設備をアルミニウム箔で覆った。
【0178】
2日目:06/17/10
内部基準(reference)測定:
1,1’−フェロセンジメタノールの1mMの溶液を、1MのLiClO溶液中で調製した。1.3mgの1,1’−フェロセンジメタノールを、5mlの1MのLiClOと組み合わせた。MW1,1’−フェロセンジメタノール=246.09である。
【0179】
500uLの1mMの1,1’−フェロセンジメタノール溶液を清浄なチップに加えた。準1基準電極および白金対電極を系に加え、CVを記録した。
【0180】
チップにおける適切なSAM形成を検査するための初期試験:
一晩インキュベートした後、チップをインキュベーション容器から取り出した。SAM析出溶液をバイアル中に収集し、乾燥させて、将来の使用のためにリサイクルされたEAMを得た。
【0181】
一晩インキュベートした後、チップ1〜10を、以下に示される工程にしたがうことによって洗浄した:
エタノールで8回
超純水で4回
試験緩衝液、1MのLiClOで2回。
500uLの1MのLiClOを、チップ1、3、5、6、8、および10に加え、次にチップを配電箱につないだ。
【0182】
基準電極および対電極をEC系に加えた。CHI 650Cからの白色のダブルクリップを基準電極(準1)に、緑色のクリップを作用電極に、赤色のクリップを対電極(予め火炎処理し、EtOHおよび水ですすいだ白金線)に接続した。
【0183】
CHI 650C系を用いて、全てのチップを試験した。試験ごとに、以下の6つのファイルを用いた:10000mV/秒、100mV/秒、10000mV/秒の長さ、多重CV(20サイクル)およびACV(順方向および逆方向)。
【0184】
この実験において全てのチップを試験するのにマルチプレクサを用いた。
【0185】
初期試験の後、チップ1〜10を以下のとおりに洗浄した:
超純水で8回
100mMのNaHCOで2回。
【0186】
様々な濃度のグルコースの調製:
使用の直前に、12.8mgのGOを800uLのNaHCO3緩衝液と組み合わせることによって、GOの100uMのストックを作製した。
【0187】
使用の直前に100mMのNaHCO緩衝液(pH8.5)に溶解させた様々な濃度のグルコース溶液を作製した。グルコースの元のストックは1Mであり、0.99gのグルコースを5mLの超純水と組み合わせることによって作製した。このストックを4℃の冷蔵庫に一晩入れたままにして、変旋光を生じさせた。それから、以下に示されるように希釈物を作製した:
【0188】
【表9】

【0189】
チップへの様々な濃度のグルコースの添加および試験:
作製したグルコース溶液をよくボルテックスし、450uLをそれぞれのチップに加えた。
【0190】
50uLの100uMのグルコースオキシダーゼを各チップ(1〜10)に加え、溶液を十分に混合した。間の4:30、2:30、および0:30の時間にピペットチップで溶液を混合しながら5分間、ならびに間の7:30、5:00、および2:30の時間にピペットチップで溶液を混合しながら10分間、室温でインキュベーションを行った。
【0191】
それぞれのグルコースのインキュベーションの後、チップを以下のとおりに洗浄した:
超純水で8回
NaCO(pH10.1)で2回。
【0192】
各ウェルを、500uLのNaCO(pH10.1)緩衝液で5分間インキュベートした。
【0193】
チップを緩衝液でインキュベートした後、チップを以下のとおりに洗浄した:
超純水で8回
1MのLiClOで2回。
工程VI d、eおよびfに示される全てのチップを試験するのに配電箱を用いた。試験の後、チップを洗浄し、エタノールおよび水で清浄にしてから分解した。
【0194】
【表10】

【0195】
実施例XX
研究:トロポニンを用いた未加工チップにおけるPB25_49の試験
A.目的
この研究の目的は、トロポニン抗体サンドイッチの作製、および二次抗体Gox標識によるH2O2生成をもたらすグルコースの添加の後の未加工チップにおけるEAM PB25_49の電気化学を測定することであった。
【0196】
【表11】

【0197】
C.手順
1日目:
SAM溶液の調製
ストック材料を対応する溶媒および添加剤と組み合わせることによって、以下の実験ストックを調製した。
EAM:1回分が0.5mgのPB25_49アリコート
500uLのEtOHを加えた。
(HO−C11−S):1mg/mLのストックを予め作製した。
(C11−S):1mg/mLのストックを予め作製した。
HS−C16−COOH:500uL〜0.5mgのアリコートを加えた。
20mLのガラスバイアル中で以下のものを組み合わせることによって、SAM溶液を調製した:
PB25_49:最終濃度が0.1mMとなるような411uLの1.34mMのES(推定されるストック濃度)
(OH−C11−S):最終濃度が0.5mMとなるような1.118mLの2.46mMのES
(C11−S):最終濃度が0.5mMとなるような1.030mLの2.67mM
HS−C16−COOH:最終濃度が0.001mMとなるような0.002mLの3.47mMのES
EtOH:全体積が5.5mLとなるような2.940mL。
【0198】
SAMの析出
全てのチップについて、SAMを析出させるために以下の手順を行った。内側に面して露出された金表面を有する穴付きの顕微鏡スライドジャーにチップを入れた。チップが完全に沈められるまで、予め作製された0.2%のTween 20をジャーに加えた。超音波処理の後、チップを超純水で十分にすすいだ。各チップをEtOHですすぎ、アルゴンガスで乾燥させた。チップを「低」プラズマ設定で10分間プラズマ洗浄した。プラズマ洗浄の後、チップを再度EtOHですすぎ、アルゴンで乾燥させた。補助部分(基板、ガスケット、タブ)をハンドソープでこすることによって手洗いし、脱イオン水および超純水ですすぎ、EtOHですすぎ、空気乾燥させた。チップを組み立て、次にEtOHで漏れを試験して、ガスケットが十分な密封を確実に形成するようにした。上のように調製した500uLの析出溶液を、各チップのタブに加えた。密封した、覆われたガラス容器でチップを一晩インキュベートした。
【0199】
2日目:
適切なSAMの形成を確認するための初期試験
一晩インキュベートした後、チップを容器から取り出した。
チップを以下のとおりに洗浄した:
エタノールで2回
超純水で6回
LiClOで2回。
500uLの試験溶液(上の表を参照のこと)を各タブに加えた。
電極(上の表を参照のこと)をCHI系(使用する前に、Pt対電極をプロパントーチで洗浄し、EtOHですすいだ)に接続した。
全てのチップについて:
10000mV/秒のCV、100mV/秒のCVでの試験の際に決定された範囲の間でサイクリックボルタンメトリーを行った。
【0200】
EDC、NHSの活性化
さらなる溶液を加える前に、チップを超純水で4回洗浄した。
1000ulのEDCを1000uLのNHSに加えた。
200uLのこの混合溶液を4つのチップに加えた。
30分間インキュベートした。注記:全てのインキュベーションを空のピペットチップ容器中で行い、光への暴露を最小限に抑えるために箔で覆った。インキュベーションの後、超純水で4回洗浄した。
【0201】
ストレプトアビジン
200uLのストレプトアビジン溶液を加えた。
1時間インキュベートした。
PBSで4回、LiClO4で1回洗浄した。
チップ3〜6を、3.5.1として試験した。
注記:試験したチップのみをLiClO4で洗浄した。試験した全てのチップをPBSで4回再度洗浄した。これは以下の全ての工程に当てはまる。
【0202】
【表12】

【0203】
エタノールアミンキャッピング
200uLのエタノールアミンを各チップに加えた。
15分間インキュベートした。
PBSで4回洗浄した。
BSAブロッキング
0.1%のBSAを加えた。
10分間インキュベートした。
PBSで4回、LiClO4で1回洗浄した。
チップ3〜6を3.5.1として試験した。
【0204】
Goxおよび一次抗体の添加
Gox−ビオチンストックの濃度は1mg/mLであるため、4uLのGox−ビオチンストックを396uLのPBSに加えた。
200uLの10ug/mLのGox−ビオチンをチップ#1および2に加えた。
1時間インキュベートした。
mAb 19C7−ビオチンのストックは1.7mg/mLであるため、17ug/mLの濃度になるように8uLを792uLのPBSに加えた。
100uLの抗体−ビオチンを#3〜10に加えた。
両方の溶液を45分間インキュベートさせておいた。
チップ3〜6をPBSで4回、LiClO4で1回洗浄し、試験した。
【0205】
トロポニンおよび二次抗体のインキュベーション
トロポニンアリコート(1mg/mL)を−20Cの冷凍庫から取り、解凍した。1uLを9uLのPBSに加え、100ug/mLを得た。注記:この希釈は、尿素/トリス緩衝液中で行った。1uLの100ug/mLを48uLのPBSに加えた。
mAb16A11−Goxを冷蔵庫から取り出した(1.7mg/mL)。
1uLのmAb16A11−GoxをPBS/トロポニン溶液に加え、ボルテックスした。この溶液を30分間インキュベートした。
【0206】
Gox−ビオチン試験
チップ#1、#2をPBSで4回、LiClO4で1回洗浄し、試験した。
試験の後、それらをPBSで4回洗浄した。
20uLの1M〜9980uLのNaHCO3(pH8.5)を取り込むことによって、2mMのグルコース溶液を調製した。
500uLの2mMのグルコースを両方のチップに加え、10分間インキュベートした。
次に、#1、2をPBSで4回、LiClO4で1回洗浄し、試験した。
チップをPBSで4回洗浄した。
チップを100mMのH2O2で2分間インキュベートし、次に洗浄し、試験した。
【0207】
トロポニンおよび二次抗体の添加
チップ3〜10をPBSで4回洗浄した。
トロポニンおよびmAb16A11−Goxの50uLのインキュベート物を、PBS中で1.2mLになるまで希釈した。
溶液をボルテックスした。
150uLのこの溶液をチップ3〜10に加え、30分間インキュベートした。
【0208】
トロポニンおよび二次抗体の試験
チップ3〜10をPBSで4回洗浄した。
チップ5〜8をLiClO4で1回洗浄し、試験した。
チップ5〜8をPBSで4回洗浄した。
500uLの100mMのH2O2を、#6〜7に2分間加えた。インキュベーションの後、それらをPBSで4回、LiClO4で1回洗浄し、試験した。
2mMのグルコースをチップ9、10に加え、20分間インキュベートした。インキュベーションの後、それらをPBSで4回、LiClO4で1回洗浄し、試験した。
【0209】
単分子層の調製
金蒸着電極を、0.2%のTween 20溶液中での5分間の超音波処理によって清浄にし、エタノールで洗浄してから、10分間のプラズマイオン化を行った。次に、電極をエタノールで洗浄してから、析出溶液に曝した。析出溶液は、化合物1(0.1mM)、ジヒドロキシジスルフィド(0.5mM(C6−S)2)およびジヒドロキシ−ジヘキシル−ジスルフィド(0.5mM(HO−C6−S)2)および16−メルカプトヘキサデカン酸(0.01mM)から構成されていた。析出溶液を金電極上で一晩、約18時間インキュベートした。次に、析出溶液を除去し、電極をエタノールで洗浄した後、水で洗浄した。1/1体積/体積のNHS(0.1M)およびEDC(0.4M)を用いてMHAを30分間活性化した。この活性化の後、電極を水で洗浄し、10mMの酢酸ナトリウム(pH5.7)に溶解させたストレプトアビジン(0.05mg/mL)を用いて1時間インキュベートした。検定の残りの工程のために各工程間で電極をPBSで洗浄した。未反応のMHA部位をキャッピングするためにエタノールアミン(0.1mMのNaHCO3)を15分間加えた。非特異的結合を低減するためにPBS緩衝液に溶解させたBSA(0.1重量%)を10分間加えた。一次抗体(mAb−19c7−ビオチン、HyTest)を17ug/mLの濃度で加え、45分間インキュベートした。この時間の間、二次抗体(34ug/mL、mAb−16A11−GOx、Hytest)をヒト心筋トロポニンI(2ug/mL)でインキュベートした。次に、二次抗体−トロポニン錯体を該当する濃度で電極に加え、30分間インキュベートした。この時点で、完全な「サンドイッチ」を単分子層のMHA上に作り上げる。次に、グルコース(2mM)を10分間インキュベートし、溶液を除去し、電極をPBSで洗浄し、LiClO4(1M)中でのサイクリックボルタモグラムを記録した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験試料中の標的検体を検出するための方法であって:
(a)(i)自己組織化単分子層(SAM)と;
(ii)自壊的部分と過酸化物感受性部分(PSM)とを含む遷移金属錯体を含む共有結合された電気活性部分(EAM)であって、第1のEを有するEAMと、
(iii)前記検体を結合する捕捉結合リガンドと
を含む電極を含む固体支持体を提供する工程と;
(b)前記標的検体が前記捕捉結合リガンドを結合して第1の錯体を形成する条件下で、前記標的検体と前記固体支持体とを接触させる工程と;
(c)前記標的検体を結合する可溶性捕捉リガンドと前記第1の錯体を接触させる工程であって、前記可溶性捕捉リガンドが、第2の錯体を形成するための過酸化物生成部分を含む工程と;
(d)前記EAMが第2のEを有するように、過酸化物が生成され、前記自壊的部分が除去される条件下で、過酸化物基質を前記第2の錯体に加える工程と;
(e)前記標的の存在の指標としての前記第2のEを検出する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記工程(b)の前に、洗浄工程が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(c)の前に、洗浄工程が行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(b)および(c)が同時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記過酸化物生成部分がグルコースオキシダーゼ酵素である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固体支持体が電極の配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属が、鉄、ルテニウムおよびオスミウムからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記EAMがフェロセンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(a)(i)自己組織化単分子層(SAM)と;
(ii)自壊的部分と過酸化物感受性部分(PSM)とを含む遷移金属錯体を含む共有結合された電気活性部分(EAM)であって、前記自壊的部分が前記EAMに共有結合される場合、第1のEを有し、前記自壊的部分が存在しない場合、第2のEを有する、EAMと;
(iii)前記検体を結合する捕捉結合リガンドと
を含む電極と;
(b)前記標的検体を結合する可溶性捕捉リガンドであって、過酸化物生成部分を含む可溶性捕捉リガンドと
を含む固体支持体を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−501922(P2013−501922A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523997(P2012−523997)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/044918
【国際公開番号】WO2011/034668
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(510108607)オームクス コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】