説明

酸を含むオキサリプラチン製剤

経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、(i) オキサリプラチン; (ii) 水; 及び (iii) 酸を含み、この酸が安定化に寄与していて、マロン酸、乳酸またはシュウ酸でない製剤を提供する。さらに、癌治療のための医薬品の調製における製剤の使用および薬事用製剤の治療量を投与することを含む癌を処置する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオキサリプラチンを含む製剤に関連する。
【背景技術】
【0002】
オキサリプラチンは抗癌剤である。オキサリプラチン(CAS 61825-94-3)は、L-OHPとしても知られており、第三世代の白金錯体である。本明細書で使用される用語「オキサリプラチン」は、cis-オキサロト(trans-l-1,2-ジアミノシクロヘキサン)白金(II)、その光学エナンチオマーであるcis-オキサロト(trans-d-1,2-ジアミノシクロヘキサン)白金(II)およびこれらの混合物を含む。
【0003】
オキサリプラチンは現在承認され、結腸直腸癌の二次治療のため取り引きされる。オキサリプラチンは、凍結乾燥形態(20mg、50mgまたは100mgバイアル)で利用可能である。投与に先立って、凍結乾燥された粉末は、5mg/mlのオキサリプラチンを含む溶液を供給するために、注射用水または5%ブドウ糖注射用溶液を使用してもどされる。典型的には、もどされた溶液は、250〜500 mLの5%ブドウ糖注射用溶液でさらに希釈される。次いで、希釈したオキサリプラチン溶液は、2〜6時間にわたって、末梢静脈または主要な静脈のいずれかに注射される。
【0004】
凍結乾燥されたオキサリプラチンは、薬剤形態として一部不都合を有する。凍結乾燥された投薬形態の製造工程は複雑になり高価である。例えば、凍結乾燥した形態の製造中での無菌状態の破損の危険性は、溶液の場合より一般的に高い。さらに、凍結乾燥をもどす調製は、いくつかの危険性、とりわけ粉末の不完全な溶解、粉末か濾滓としての猛毒物質を扱うことによる汚染、およびもどす間と点滴バッグへの移送の間にバイアルと点滴液の両方の無菌状態を維持することといった危険性を含んでいるように、熟練と注意の両方を必要とする。したがって、凍結乾燥薬を投与するために、薬の複数の取り扱いが必要である。凍結乾燥したオキサリプラチンはまずもどされ、次いで5%グルコース溶液で希釈され、次いで、静脈注射で投与される。
【0005】
さらに、もどすことに続いて、オキサリプラチンは特に、ある種の求核性試薬を含む溶液では、不安定な傾向がある。例えば、0.9%塩化ナトリウム溶液のような塩化物イオンを含む一部のもどし溶液は、病院で一般的に使用されている。オキサリプラチンの凍結乾燥形態の場合、このようなもどし溶液の誤使用は、急激にオキサリプラチン金属複合物を分解し、NaClで沈殿(ジクロロ−ジアミノシクロヘキサン白金誘導体)を生成する深刻な結果をもたらす。
【0006】
上述した制限の結果として、いくつかの安定化水性調整済(RTU)液体オキサリプラチンの調製が提案されている:
【0007】
1.米国特許5,716,988およびオーストラリア特許731981は、pH範囲4.5〜6のオキサリプラチンの1〜5mg/mLの水溶液からなる薬事用製剤を開示する。しかしながら、次に、WO 99/43355および米国特許6,476,068は、この明細書に教示された方法にしたがって調製したオキサリプラチンの単一水溶液は安定性が不十分であることを報告する。
【0008】
2.WO 99/43355および米国特許6,306,902は、1〜7mg/mlのオキサリプラチンを含むオキサリプラチン溶液製剤、緩衝剤および薬学的に許容可能なキャリヤーを開示する。好適な緩衝剤(また単なる実施例)はそれらのシュウ酸またはアルカリ金属塩である。
【0009】
3.WO 01/15691は、1, 2-プロパンジオール、グリセロール、マルチトール、スクロースおよびイノシトールから選択される少なくとも1つのヒドロキシル化誘導体の十分な量を含む少なくとも7mg/mlのオキサリプラチンの溶液を開示する。明細書は、これらがいくつかの選択を考察した後に使用するのに数少ない適切な試薬であることを述べている。さらに、緩衝剤が使用されれば、明細書は緩衝剤がシュウ酸塩基を有するのがよいことを教示する。
【0010】
4.米国特許6,476,068は、0.1〜10mg/mlのオキサリプラチンを含むオキサリプラチン溶液製剤、モノカルボン酸の有効安定化量、乳酸および薬学的に許容可能なキャリヤーを開示する。オキサリプラチンの好適な濃度範囲は2〜5mg/mlである。
【0011】
5.米国特許出願公開公報20030109515は、マロン酸の安定化量を含むオキサリプラチン溶液製剤を開示する。実施例は、2 mg/mlのオキサリプラチン濃度を有する製剤を教示する。この出願の教示とは対照的に、また、以下に議論されるように、本発明者はマロン酸が溶液中でのオキサリプラチンを不安定化することを見出した。
【0012】
製剤のpHを調節し、かつ所望のpH範囲内で製剤を維持するために、緩衝剤は薬事用液体製剤に使用される。上述されるように、ジカルボン酸、シュウ酸およびその塩は、オキサリプラチンの緩衝剤および安定化剤として提案されている。シュウ酸イオンは加水分解によりオキサリプラチンの水溶液中で形成される。したがって、考えられる限りでは、この反応は、オキサリプラチンの溶液へのシュウ酸イオンの目的のある添加を通じて(ルシャテリエの原理を使用して)遅くなるかもしれない。しかしながら、シュウ酸は、薬事用緩衝剤として一部不都合を有する。顕著には毒性である。シュウ酸は潜在的に腎毒性で、さらに特殊取り扱い使用上の注意を必要とする。それは、医薬品でのその使用を複雑にし、制限する。
【0013】
先行技術としての緩衝剤(シュウ酸、乳酸およびマロン酸)の代わりとしてオキサリプラチン溶液と共に使用することができ、シュウ酸の使用に関連した不都合を有さない試薬が必要である。
【0014】
理想的には、代替試薬は、溶液中でオキサリプラチンを不安定にしないものである。代替試薬が、オキサリプラチンの重大な分解を最小限にし、ジアクアDACH白金およびジアクアDACH白金二量体のような望ましくない不純物の形成を制限する方法で水性製剤でのオキサリプラチンの安定性を向上させれば、特に有用である。
【0015】
さらに、水性製剤での未知の分解生産物の量を制限することが望ましい。ICH (International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use) のガイドラインで設定された閾値を越える量で存在するいかなる未知分解生成物も、同定されることが要求される。極微量の未知分解生成物も同定することを要求されるので、製剤メーカーに重大な要求を負わせる。さらに、未知分解生産物の存在は、毒性および未知の副作用の付加的な危険性がこれらの製品の存在の結果としてあってもよいことを示す。したがって、未知分解生産物の製造を避けることが製剤メーカーにとって興味がある。
【0016】
理想的には、添加の薬学的に許容可能な緩衝剤は無毒で、できるだけ小量で存在するほうがよい。さらに、製造中、最も安全で最も便利な方法で導入されたほうがよい。
【特許文献1】米国特許5,716,988
【特許文献2】オーストラリア特許731981
【特許文献3】WO 99/43355
【特許文献4】米国特許6,476,068
【特許文献5】米国特許6,306,902
【特許文献6】WO 01/15691
【特許文献7】米国特許出願公開公報20030109515
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン;
(ii) 水; 及び
(iii) 酸を含み、
この酸は安定化に寄与していて、マロン酸、乳酸またはシュウ酸でない製剤を提供する。
【0018】
第2の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン;
(ii) 水; 及び
(iii) 少なくとも4個の炭素原子を含む酸
を含む製剤を提供する。
【0019】
第3の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01 mMであり、かつこの酸はマロン酸、乳酸またはシュウ酸ではない製剤を提供する。
【0020】
第4の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01 mMであり、かつこのカルボン酸は式:
HO2C[C(R1)(R2)]nCO2H
(式中、n=2〜6;およびR1とR2は互いに独立して、H、OH、CO2H、ハロゲンおよびメチルからなる群から選択される)である製剤を提供する。
【0021】
第5の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 酒石酸、酒石酸の塩、酒石酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01 mMである製剤を提供する。
【0022】
第6の態様において、本発明は、癌治療のための医薬品の調製における第1から第3の態様に係る薬事用製剤の使用を提供する。
【0023】
第7の態様において、本発明は、第1から第3の態様に係る薬事用製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む癌を処置する方法を提供する。
【0024】
第8の態様において、第1から第3の態様に係る薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 溶液中に添加剤を溶解する工程;
(iii) 任意に薬学的に許容可能な塩基を用いて溶液のpHを調節する工程
を含む方法を提供する。
【0025】
第9の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) 約5mg/mlのオキサリプラチン、
(ii) 水、及び
(iii) 酒石酸および酒石酸ナトリウム塩からなる添加剤
を含み、添加剤の濃度が約0.2mMであり、かつ溶液のpHが約4.7〜約5.5である製剤を提供する。
【0026】
第10の態様において、本発明は、癌治療のための医薬品の調製における第9の態様に係る薬事用製剤の使用を提供する。
【0027】
第11の態様において、本発明は、第7の態様に係る薬事用製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む癌を処置する方法を提供する。
【0028】
第12の態様において、薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 溶液中に酒石酸を溶解する工程;
(iii) 水酸化ナトリウムを用いて、4.7〜5.5の範囲になるように溶液のpHを調節する工程
を含み、オキサリプラチンの濃度が約5mg/mlであり、かつ酒石酸の濃度が約0.2 mMである方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
第1の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン;
(ii) 水; 及び
(iii) 酸を含み、
この酸は安定化に寄与していて、マロン酸、乳酸またはシュウ酸でない製剤を提供する。
【0030】
この酸はカルボン酸が好ましく、好ましくはジカルボン酸である
【0031】
好適な実施形態において、この酸は、クエン酸、マレイン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。この酸は、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびそれらの混合物であるのが好ましく、最も好ましくは酒石酸である。
【0032】
第2の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン;
(ii) 水; 及び
(iii) 少なくとも4個の炭素原子を含む酸
を含む製剤を提供する。
【0033】
この酸はジカルボン酸であるのが好ましく、好ましくは4〜10個の炭素原子、より好ましくは4〜6個の炭素原子を含む。
【0034】
さらなる実施形態において、この酸は1個または2個のヒドロキシル基を含む。
【0035】
好適な実施形態において、酸は、クエン酸、マレイン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。この酸は、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびそれらの混合物であるのが好ましく、最も好ましくは酒石酸である。
【0036】
本発明の第1と第2の態様のさらなる好適な実施形態において、酸の濃度は少なくとも0.01 mMである。
【0037】
第3の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01 mMであり、かつこの酸はマロン酸、乳酸またはシュウ酸ではない製剤を提供する。
【0038】
好ましくは、この酸はジカルボン酸である。
【0039】
好ましくは、この酸は、クエン酸、マレイン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
第4の態様において、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01 mMであり、かつこのカルボン酸は式:
HO2C[C(R1)(R2)]nCO2H
(式中、n=2〜6;およびR1とR2は互いに独立して、H、OH、CO2H、ハロゲンおよびメチルからなる群から選択される)である製剤が提供される。
【0041】
薬学的に許容可能な酸は、グルタル酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびそれらの混合物を含む。好ましくは、薬学的に許容可能なカルボン酸は、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、薬学的に許容可能なカルボン酸は酒石酸である。
【0042】
好ましくはn=2〜4;より好ましくはn=2である。
【0043】
酒石酸(HOOCCH(OH)CH(OH)COOH)は、食品および薬事用製剤中で、酸味料、金属イオン封鎖剤、または酸化防止相乗剤として使用される。薬事用製剤中では、発泡性果粒剤、粉末、およびタブレットの酸成分として、重炭酸塩と組合わせて広範に使用される。安定剤としてのシュウ酸の使用に関連した、腎毒性などの毒性のいずれも示さない。
【0044】
コハク酸(HOOCCH2CH2COOH)は、食品添加物として使用され、また洗剤や化粧品中に使用される。動物組織、および野菜または果物の天然物に見出すことができる。
【0045】
リンゴ酸(HOOCCH(OH)CH2COOH)は、食品中に調味料剤、風味増強剤および酸味料として使用される。りんごおよび他の多くの果物で天然に見出せる。
【0046】
クエン酸は(2-ヒドロキシ-1, 2, 3-プロパン-トリカルボン酸である)、広く植物中、および動物組織と体液中に分布される。
【0047】
マレイン酸は式HOOCCH=CHCOOHを有する。
【0048】
糖酸は式HOOC[CHOH]4COOHを有し、デンプンに由来する。
【0049】
第5の態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 酒石酸、酒石酸の塩、酒石酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01 mMである製剤を提供する。
【0050】
本発明のカルボン酸の多くは異性体として見出せる。例えば、酒石酸は多くの異性体形態を有する。本発明は、添加剤として使用されるカルボン酸の異性体のいかなるものの使用をも考慮する。例えば、カルボン酸が酒石酸である場合、酒石酸は、(+)-酒石酸、(-)-酒石酸、メソ酒石酸およびこれらの混合物からなる群を含む酒石酸のいかなる異性体から選択されてもよい。好ましくは、この酒石酸は(+)-酒石酸である。
【0051】
添加剤が、薬学的に許容可能なカルボン酸と薬学的に許容可能なカルボン酸の塩の混合物である場合、添加剤の濃度は、カルボン酸と塩の濃度の合計である。好ましくは、添加剤が薬学的に許容可能なカルボン酸と薬学的に許容可能なカルボン酸の塩の混合物である場合、塩は緩衝液を形成するようなカルボン酸の共役塩基である。
【0052】
添加剤が薬学的に許容可能なカルボン酸の塩を含む場合、この薬学的に許容可能なカルボン酸の塩は、酸性溶液への薬学的に許容可能な塩基の添加によってin situで形成されてもよい。あるいは、塩は製剤に直接加えてもよい。
【0053】
好ましくは、本発明の第1から第3の態様の製剤への添加剤の濃度は、約0.01 mM〜約2.0 mMであり、より好ましくは約0.1 mM〜約1.0 mM、さらに好ましくは約0.1 mM〜約0.6 mM、より好ましくは約0.2 mM〜約0.6 mMである。
【0054】
好ましくは、添加剤が薬学的に許容可能な酸の塩を含む場合、その塩はナトリウム塩である。
【0055】
薬学的に許容可能なカルボン酸の誘導体は、この酸のエステル、アミド、カーボネートおよびカルバメートとしてのこのような誘導体を含むが、これらに制限されない。
【0056】
本発明に係る薬事用製剤中に存在するオキサリプラチンの量は、好ましくは約15 mg/mlまで、好ましくは約7 mg/mlまでである。好ましくは、オキサリプラチンの量は、1〜5 mg/mlの範囲であり、最も好ましくは約5 mg/mlである。
【0057】
理解されるように、添加剤は、オキサリプラチンを不安定にせず、好ましくはオキサリプラチンの安定性を支援する濃度で使用されるのがよい。オキサリプラチンの所望の安定性は、薬事用製剤の企図した保存期限および投与前の取扱性に依存する。特に、安定した水性オキサリプラチン製剤は、明示された保管条件で、オキサリプラチンの効力に重大な変化がまったくないものである。「重大な変化」の判定基準は、International Conference on Harmonisatiom (ICH) Guideline: 新原薬および製品Q1A (R2)の安定性試験に定義されるとおりである。したがって、注射可能なRTUオキサリプラチン溶液の場合には、オキサリプラチンの効力は、最初の含量の少なくとも95%であるべきであり、溶液は、薬学的に許容可能な持続時間の間、透明で、無色で、析出のないままである。
【0058】
好ましくは、添加剤は、約3〜約8、より好ましくは約4〜約7、さらに好ましくは約5のpH範囲で製剤を緩衝するのに十分な濃度である。
【0059】
当業者に知られているように、緩衝系は、溶液中での酸とその共役塩基との混合物であり、この混合物は所望のレベルでpHを維持するように調製される。本明細書中で定義されるように、「緩衝剤」は、酸または塩基がその共役塩基または共役酸に関連していてもしていなくても、緩衝系の成分を形成してよい酸または塩基をそれぞれ表す。
【0060】
好ましくは、本発明の薬事用製剤は、殺菌した密封容器で提供される。例えば、Iタイプの中性ガラスおよびストッパーである。ストッパーの例は、フッ素処理されたポリマーで場合により被覆された、ハロゲン化ブチルをベースとするエラストマーで製造されたものを含む。
【0061】
本発明の第6の態様において、癌治療のための医薬品の調製における第1から第3のいずれか一つの態様の製剤の使用が提供される。
【0062】
本発明の第7の態様において、第1から第3のいずれか一つの態様に係る薬事用製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む癌を処置する方法が提供される。
【0063】
癌は、オキサリプラチンによる治療だけまたは他の化学療法剤と組み合わせて、オキサリプラチンによって処置されるあらゆる癌であってよく、結腸直腸癌を含む。
【0064】
本明細書中で使用される用語「処置する」は、他に表示されないならば、この用語を適用する病気または状態、またはこのような病気または状態の1つ以上の症状を正常に戻すこと、軽減すること、進行を抑制すること、または予防することを意味する。本明細書中で使用される用語「処置」は、「処置する」が上記で定義されたので、処置の行為を表す。
【0065】
上記の方法において、患者に投与されるオキサリプラチンの有効量は、約10 mg/m2〜約250 mg/m2、より好ましくは約30 mg/m2〜約180 mg/m2、最も好ましくは約85 mg/m2の範囲である。しかしながら、投与される治療学的用量が、処置される状態の重症度および選択される投与経路を含む適切な状況を考慮して、医師によって決定されることは理解される。したがって、上記の用量範囲は、本発明の範囲を制限するようには何ら意図されない。オキサリプラチンの投与は、典型的には投与時に当業者に知られていた最良の手法にしたがうであろう。
【0066】
本発明はまた、本発明の製剤を調製する方法を提供する。したがって、さらなる態様において、薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 溶液中に、薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を溶解する工程;
(iii) 任意に薬学的に許容可能な塩基を用いて溶液のpHを調節する工程
を含み、この酸がマロン酸、乳酸またはシュウ酸ではない方法が提供される。
【0067】
他の態様において、本発明は、薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 溶液中に、薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を溶解する工程;
(iii) 任意に薬学的に許容可能な塩基を用いて溶液のpHを調節する工程
を含み、このカルボン酸は式:
HO2C[C(R1)(R2)]nCO2H
(式中、n=2〜6;およびR1とR2は互いに独立して、H、OH、CO2H、ハロゲンおよびメチルからなる群から選択される)である方法を提供する。
【0068】
好ましくはn=2〜4であり、より好ましくは、n=2である。
【0069】
また別の態様において、本発明は、薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 溶液中に、酒石酸、酒石酸の塩、薬学的に許容可能な酒石酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を溶解する工程;
(iii) 任意に薬学的に許容可能な塩基を用いて溶液のpHを調節する工程
を含む方法を提供する。
【0070】
pH調整は、いかなる薬学的に許容可能な塩基で行なわれてもよい。好ましくは、薬学的に許容可能な塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液である。
【0071】
さらなる態様において、本発明は、非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) 約5mg/mlのオキサリプラチン、
(ii) 水、及び
(iii) 酒石酸および酒石酸ナトリウム塩からなる添加剤
を含み、添加剤の濃度が約0.2mMであり、かつ溶液のpHが約4.7〜約5.5である製剤を提供する。
【0072】
本発明はまた、癌治療のための医薬品の調製におけるおよび患者への癌治療における本発明の製剤の使用を提供する。
【0073】
さらなる態様において、本発明は、薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 溶液中に酒石酸を溶解する工程;
(iii) 水酸化ナトリウムを用いて、4.7〜5.5の範囲になるように溶液のpHを調節する工程
を含み、オキサリプラチンの濃度が約5mg/mlであり、かつ酒石酸の濃度が約0.2 mMである方法を提供する。
【0074】
本発明の性質がより明白に理解されるために、その好ましい形態は、以下の限定されない実施例に関して記載される。
【0075】
[実施例]
オキサリプラチン製剤の安定性の測定
【0076】
ある期間にわたるオキサリプラチン製剤の安定性は、多くの補足的方法によって測定することができる。製剤の目視外観およびpHの安定性は重要な指標であり、当業者によく知られた技術によって測定することができる。
【0077】
安定性はまた、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)技術によって測定することができる。HPLCは、広く使用され、当業者によく知られた技術である。HPLCは、効力がオキサリプラチンの初期濃度の割合として定義される場合に、オキサリプラチンの効力を測定するのに使用することができる。HPLCはまた、オキサリプラチン溶液で既知および未知の分解物の相対的な比率を測定するのに使用することができる。
【0078】
オキサリプラチンの既知の分解生成物は次のものを含む:
・(trans-L-1,2ジアミノシクロヘキサン)trans-ジヒドロオキソ(オキサラト)白金(IV)。これはオキサリプラチンの酸化分解生成物である。この分解生成物は実施例で不純物Cとして指示される。
・(SP-4-2)-ジアクア-[(1R, 2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン-kN, kN’]白金、またはジアクアDACH白金。これはオキサリプラチンの加水分解分解生成物である。この分解生成物は実施例で不純物Bとして指示される。
・(SP-4-2)-ジ-μ-オキソビス[(1R, 2R)-シクロヘキサン-l, 2-ジアミン-kN, kN’]白金、またはジアクアDACH白金二量体。これは不純物Bのさらなる反応に起因する分解生成物である。この分解生成物は実施例で二量体として指示される。
【0079】
R, S-オキサリプラチンは、オキサリプラチン(つまりcis-オキサラト(trans-L-1, 2-ジアミノシクロヘキサン)白金(II))中に不純物として低濃度で見られる、オキサリプラチンの異性体形態である。
【0080】
実施例の概要
実施例1は、pH3〜7の範囲にわたり多くの試薬を使用してオキサリプラチン製剤の初期の試みを詳述するものであり、オキサリプラチンを安定させる酒石酸、マレイン酸、コハク酸およびリンゴ酸の能力をコントロールと比較した。テストされた酸のうち、酒石酸は、最も安定したオキサリプラチン溶液を生じることが分かった。そして、実施例2に報告されるように広いpHおよび濃度範囲にわたってさらに試験した。この調査は、酒石酸の利点を確認し、さらに、向上した安定性について好適な濃度範囲があることを示した。次いで、実施例3に報告されたさらなる調査では、オキサリプラチンの溶液で緩衝剤としての設定濃度(0.3 mM)で多くの他の酸を調査した。このことは、リンゴ酸およびコハク酸を含む製剤が、酒石酸製剤と比較可能な不純物濃度を有していたことを示した。先行技術の教示に反して、マロン酸製剤は、酒石酸製剤に比べて驚くべきことに許容しがたいほど高い濃度の不純物を含んでいた。クエン酸、マレイン酸および糖酸を含む溶液はまた、適度に低い不純物濃度を示した。先行技術の安定剤であるシュウ酸及び乳酸はまた、適度に低い不純物濃度を示した。これはシュウ酸の場合、ルシャテリエの原理の作用により驚くにあたらない。実施例4は、オキサリプラチンと酒石酸の水溶液の好適な製剤の詳細を提供する。
【0081】
実施例1
5mg/mlのオキサリプラチン濃度を有する注射用水(WFI)の一連のオキサリプラチン製剤の安定性を評価した。試験したオキサリプラチンの可能な緩衝剤は、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸およびマレイン酸であった。製剤のpHは値域をカバーした。
【0082】
比較例1(a)
コントロール溶液の調製
WFI(注射用水)を最終容積の所望量の約80%まで適切なガラス容器に加えて、45〜50℃に加温した。窒素で撹拌しフラッシングしながら、(最終所望容積に5mg/mLで計算した)オキサリプラチンの所望量を加えて溶かした。次いで、その溶液を所望の最終容積までWFIで増量した。
【0083】
実施例1(b)
ジカルボン酸溶液の調製
以下に記述した製剤については、WFIを所望の最終容積の約80%まで適切なガラス容器に加えて、45〜50℃に加温した。窒素で撹拌し、フラッシングしながら、オキサリプラチンの所望量を加えて溶かした。その後、完全に溶けるまで、提案した安定化ジカルボン酸またはそのアルカリ塩を、オキサリプラチン溶液に加えた。必要な場合、NaOH希釈溶液の添加を通じてpHを調節した。このように生成した溶液をWFIで最終容積まで増量した。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
種々の製剤を示すのに使用されるpH値は単なる指標であり、各溶液の正確なpHを必ずしも反映しない。正確な初期pH値は上記の表に示す。
【0088】
実施例1(c)
安定性調査
加速した安定性プロトコルに従って、製剤を12週間40℃、相対湿度75%で保管した。
【0089】
製剤の効力を12週間にわたって4週間の間隔で高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で調査した。効力はオキサリプラチンの初期濃度の割合として定義される。たいていの製剤は、12週間にわたり少なくとも95%の効力を維持した。この例外は、12週間後に41.9%の効力を有したマレイン酸pH7であった。したがって、マレイン酸は実現可能な安定剤と見なすことはできない。
【0090】
安定剤としてのリンゴ酸の使用に関して、リンゴ酸pH7の調査は、製剤内部での重大な析出および着色変化により4週間後に終了した。したがって、リンゴ酸は実現可能な安定剤と見なすことができない。以下に議論されるように、この結果は、製剤内でのリンゴ酸二ナトリウム塩の高濃度の影響であったのかもしれない。
【0091】
酸化分解生成物である不純物C [(trans-l-1,2ジアミノシクロヘキサン)trans-ジヒドロオキソ(オキサラト)白金(IV)]だけが、製剤中で非常に低い濃度で検出された。このことは、製剤が酸素を本質的に含まないことを示した。
【0092】
実施例1(d)
12週間でのオキサリプラチンの分解生成物の調査
コントロール、酒石酸pH3、酒石酸pH7、コハク酸pH7およびマレイン酸pH7の製剤を、オキサリプラチンの主な分解生成物[不純物B(ジアクアDACH白金)および二量体(ジアクアDACH白金二量体)]の存在について、40℃、相対湿度75%で12週間後にHPLCを使用して分析した。
【0093】
製剤のクロマトグラムを図1a〜eに示す。0.01%以上の不純物ピークを報告する。
【0094】
図1a
コントロール40℃12週間
この系は、5.945分に不純物B (ジアクア DACH白金)に対応する不純物ピークと9.897分に二量体(ジアクアDACH白金二量体)に対応するさらなるピークを表示する。さらに3つの未知の不純物ピークが存在する。1つは、3.909分に0.03%の濃度で、2つは3.026分と3.386分に0.01%の濃度で存在する。
【0095】
図1b
酒石酸pH3 40℃12週間
不純物ピークが、不純物B(ジアクアDACH白金)に指定された5.932分に存在する。また、3.906分にも不純物が存在する。二量体(ジアクアDACH白金二量体)に対応する不純物ピークは存在しない。
【0096】
図1c
酒石酸pH7 40℃12週間
この系は、5.931分に不純物B(ジアクアDACH白金)に相当する不純物ピークを表示する。3.027分、3.387分および3.906分にそれぞれ0.01、0.01および0.03%の濃度で溶出された3つの未知の不純物ピークもまた存在する。二量体(ジアクア DACH白金二量体)に対応する不純物ピークは存在しない。
【0097】
図1d
コハク酸pH7 40℃12週間
この系は、多くの未知の不純物ピークを表示する。これらは、3.075分、3.581分、4.007分、4.164分、4.368分、6.512分および7.684分に存在する。また、不純物B(ジアクアDACH白金)に相当する不純物ピークが5.956分に存在する。
【0098】
図1e
マレイン酸pH7 40℃12週間
この系は、2.587分、2.751分、2.880分、3.042分、3.378分、3.599分、3.983分、4.203分および5.339分に存在する多くの未知の不純物ピークを示す。
【0099】
酒石酸安定化製剤が、マレイン酸およびコハク酸安定化製剤よりはるかに安定していることはクロマトグラムの目視比較から明らかである。さらに、コントロール製剤のクロマトグラムとの比較において、二量体(ジアクアDACH白金二量体)の形成は酒石酸安定化製剤で抑えられる。さらに、少なくとも酒石酸pH 7製剤の場合には、主分解物である不純物B(ジアクアDACH白金)が、著しく少なく形成される。さらに、酒石酸安定化製剤はコントロール製剤ほど多くの未知の不純物ピークを表示しない。
【0100】
実施例1(e)
8週間でのオキサリプラチンの分解生成物に関する調査
コントロール、酒石酸pH 3、酒石酸pH 5および酒石酸pH7の製剤を、実施例4のHPLCプロトコルを使用してオキサリプラチンの分解生成物の存在について、40℃、相対湿度75%で8週間後に分析した。
【0101】
クロマトグラムを図2a〜eに示す。
【0102】
図2a
コントロール40℃8週間
この系は、不純物B(ジアクアDACH白金)に対応する6.304分に不純物ピークを、二量体(ジアクアDACH白金二量体)に対応する10.145分にさらなるピークを示す。未知の不純物ピークは3.913分に存在する。
【0103】
図2b
酒石酸pH 3 40℃8週間
この系は、不純物B(ジアクアDACH白金)に対応する6.306分に不純物ピークを表示する。二量体(ジアクアDACH白金二量体)の存在に対応するピークはない。未知の不純物ピークが3.916分に存在する。
【0104】
図2c
酒石酸のpH 5 40℃8週間
この系は不純物B(ジアクアDACH白金)に対応する6.306分に不純物ピークを表示する。二量体(ジアクアDACH白金二量体)の存在に対応する重要なピークはない。未知の不純物ピークが3.911分に存在する。
【0105】
図2d
酒石酸pH 7 40℃8週間
この系は、不純物B(ジアクアDACH白金)に対応する6.306分に不純物ピークを表示する。二量体(ジアクアDACH白金二量体)の存在に対応する重要なピークはない。未知の不純物ピークが3.913分に存在する。
【0106】
コントロール製剤のクロマトグラムとの比較において、二量体(ジアクアDACH白金二量体)の形成は、酒石酸安定化製剤で抑えられる。
【0107】
概要
オキサリプラチンの酒石酸安定化製剤が、マレイン酸およびコハク酸を含む製剤よりはるかに安定していることは、図1および2のクロマトグラムの目視比較から明らかである。さらに、コントロール製剤のクロマトグラムとの比較において、二量体(ジアクアDACH白金二量体)の形成は、酒石酸安定化製剤で抑えられ、ある場合には主分解物である不純物B(ジアクアDACH白金)が著しく少なく形成される。さらに、酒石酸安定化製剤は、コントロール製剤ほど多くの未知の不純物ピークを示さず、これはICHのガイドラインを満たし、未知の不純物の存在によるいかなる副作用をも最小限にするのに重要である。オキサリプラチン製剤の増大した安定性は、一連のpH値に当てはまる。
【0108】
リンゴ酸とコハク酸は、この実験の後不適当な試薬と見なされたが、その後の検査は、実施例3に詳述されたように、リンゴ酸、コハク酸およびマレイン酸がオキサリプラチンと共に使用することができることを実証した。これらの製剤が不適当だったという最初の発見の考えられる理由は、実施例1で使用したある種のコハク酸およびリンゴ酸製剤の比較的高い濃度のためである。例えば、コハク酸pH3製剤は、約1.10 mMの濃度のコハク酸を有し、コハク酸pH7製剤は6.38 mMの濃度のコハク酸二ナトリウム塩を有する。同様に、リンゴ酸pH 7製剤中のリンゴ酸二ナトリウム塩の濃度は、8.42 mMである。マレイン酸pH 7製剤中のマレイン酸の濃度は、約6.1 mMである。それに対して、この実施例の製剤の酒石酸濃度は、約0.2〜約0.3 mMの範囲である。
【0109】
実施例2
2.1 バックグラウンド
この実施例は、種々の量の酒石酸の影響およびオキサリプラチン溶液製剤の安定性に対するpHの影響をさらに調査するために実施した。酒石酸製剤を、水中でのオキサリプラチンのコントロール製剤およびシュウ酸溶液中でのオキサリプラチンの製剤と比較した(米国特許6,306,902にしたがう)。
【0110】
2.2 分析のための製剤の調製
2.2.1 製剤の混合方法
・約80%mLの所望量のWFIを2Lの撹拌槽中に加え、45〜50℃に加熱すると同時に窒素で撹拌しフラッシングする。
・オキサリプラチン(総量7.5g)を加え、溶液が透明になるまで混合する。
・WFIで容量を1500 mLに調節する。
・バルク溶液を各100 mLに分ける。100mL溶液の1つをコントロールとする。
・表5および6に詳述する製剤にしたがって必要な量の酒石酸溶液5%重量/容積またはシュウ酸およびNaOH(10N、5Nおよび/または2N)を加える。
・最終溶液にふたをし、充填まで冷蔵庫に保管する。
【0111】
2.2.2充填およびキャップ
・0.2μmのシリンジフィルターを使用して、各製剤をろ過する。
・2mLバイアルに2.0 mLの各製剤を充填し、キャップする。
【0112】
表5および6は、各々の異なる製剤に添加した試薬の量を示す。
【0113】
【表4】

【0114】
注:酒石酸の分子量=150.09
A=0.0045%(0.3 mM)で酒石酸を含む製剤
B=0.009%(0.6 mM)で酒石酸を含む製剤
C=0.045%(3 mM)で酒石酸を含む製剤
D=0.1%(6.7 mM) で酒石酸を含む製剤
E=0.003%(0.2 mM) で酒石酸を含む製剤
【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
注:最初の検査において、pH 3の酒石酸製剤はpH 3.78で処方した。
【0118】
2.3 最初の時点での安定性測定
最初の時点で、すべてのオキサリプラチン製剤は、溶液中に肉眼で見える粒子が存在しない、透明で無色の溶液であった。溶液の外観を表7に示す。製剤のpHの測定結果もまた表7に示す。
【0119】
【表7】

【0120】
N=溶液中に肉眼で見える粒子が存在しない、透明で無色の溶液
【0121】
2. 4 安定性測定
次いで、製剤を25℃と40℃で保管した。
【0122】
製剤の外観を、初期、4週および8週の時点で評価した。各製剤は透明で無色のままであった。
【0123】
製剤のpHを、表8に示した25℃で、表9に示した40℃で、初期、4週および8週の時点で測定した。
【0124】
【表8】

【0125】
【表9】

【0126】
2.4.1 効力評価
製剤A4、A5、A7、B7、C7、E4、E7、シュウ酸およびコントロールを25℃および40℃で保存し、12週間後にHPLCで効力について分析した。表10は、25℃について効力評価から決定した不純物プロファイルを報告する。表11は、40℃について効力評価から決定した不純物プロファイルを報告する。
【0127】
【表10】

【0128】
【表11】

【0129】
2.4.2 不純物B分析
25℃で保存された製剤の不純物Bの濃度を、A4、A5、A7、B7、C7、E4、E7、シュウ酸およびコントロールについて12週間後にHPLCで分析した。表12は、25℃について不純物B分析から決定した不純物プロファイルを報告する。40℃で保存された製剤の不純物Bの濃度は、8週間後にHPLCで分析した。表13は、不純物B分析から決定した不純物プロファイルを報告する。
【0130】
【表12】

【0131】
【表13】

【0132】
2.5 9か月での安定性測定
製剤A4.0、A5.0、A7.0、E4.0およびE7.0を9か月間25℃および40℃で保管し、次いで、pHと不純物について分析した。
【0133】
2.5.1 結果および議論
2.5.1.1 外観結果
外観は、ほとんどの製剤(表14)では肉眼で見える粉粒体が存在しない、透明で無色であった。
【0134】
【表14】

【0135】
N=溶液中に粉粒体が存在しない、透明で無色の溶液
N+=溶液中にわずかに粒子が存在する、透明で無色の溶液
N++=溶液中に一部黒色粒子が存在する、透明で無色の溶液
N/t=未検査
【0136】
2.5.1.2 不純物B分析
25℃および40℃両方で9か月の時点でのコントロール、A4、A5、E4およびE7の製剤中の不純物Bおよび二量体濃度を、HPLCを使用して評価した。結果を、表15および16にそれぞれ示す。
【0137】
分析から、製剤A4、A5、E4およびE7は25℃でコントロールより少ない不純物総量を含んでいた。40℃で、製剤A4、A5およびE4はコントロールより少ない不純物総量を含んでいた。すべての場合で、二量体不純物はコントロールに対して抑えられ、また確かに製剤A5、A7およびE4で検出されなかった。
【0138】
【表15】

【0139】
【表16】

【0140】
2.6 概要
スクリーニング調査は、酒石酸が一連の濃度でオキサリプラチンに適切な安定化剤であることを示した。酒石酸がオキサリプラチンを安定させる能力に関して、0.6 mM(製剤B)で製剤はまた一部の安定化効果を実証したけれども、0.2 mMおよび0.3 mM(各々製剤EおよびA)の濃度の方が好ましい。
【0141】
実施例3
実施例1に示したように、製剤スクリーニング調査はオキサリプラチン溶液での酒石酸の存在がコントロール溶液に比べて不純物の形成を抑え、その結果製剤を安定化させることができることを示した。実施例2で議論された調査は、製剤での酒石酸の総濃度が安定化効果を与える際に重要であることを示した。他のカルボン酸が同じ安定化効果を有するかもしれない可能性はあった。この調査は、オキサリプラチン溶液について設定濃度(0.3 mM)での一連のカルボン酸(酒石酸以外)のスクリーニングを含む。製剤を5週間40℃で保管し、次いで、安定性について評価した。製剤の効能を0.3 mMの酒石酸を含むオキサリプラチンの溶液と比較した。
【0142】
3.1 実験
以下の酸を調査で使用した:
酒石酸 マレイン酸
乳酸 D-糖酸
無水クエン酸 コハク酸
マロン酸 シュウ酸
リンゴ酸
【0143】
3.1.1 1%酸性溶液を製造する方法
酸をそれぞれ、100mLメスフラスコに別々に量った。その溶液を酸が完全に溶けた後に最終容積まで増量した。
【0144】
3.1.2 オキサリプラチン製剤の調製
WFIの所望量の約80%mLを清潔なガラスビーカーに加え、窒素で撹拌し、フラッシングしながら、WFIを50℃〜55℃に加熱した。次いで、オキサリプラチンをビーカーに加え、透明な溶液が得られるまで混合した(オキサリプラチンの完全溶解を達成するために約50分を要した)。次いで、その溶液をWFIで容積まで増量した。バルク溶液を100 mL量に分け、必要とされる量の酸溶液を表20にしたがってそれぞれの100mL量に加えた。次いで、溶液中の溶存酸素含有量が0.05 ppm未満になるまで、それぞれの製剤を窒素でフラッシングした。
【0145】
3.1.1.3 充填およびキャップ
0.2μmのシリンジフィルターを使用して、各製剤をろ過した。次いで、5mlの溶液を10mLバイアルに入れ、各製剤についてキャップし、密閉した。
【0146】
3.1.2 処方詳細
表19、20および21に、各製剤に必要とされた処方詳細およびオキサリプラチンと賦形剤の量を示す。
【0147】
【表17】

【0148】
【表18】

【0149】
【表19】

【0150】
* 糖酸を0.3mMの酸濃度を得るために100mLバルク溶液に粉末で添加した。
【0151】
3.2 40℃、5週間での安定性評価
様々なカルボン酸を含むオキサリプラチン溶液を調製し、また安定性評価のために40℃、75%で保存した。製剤を5週間の時点で評価し、その結果を下記に報告する。
【0152】
3.2.1 結果および議論
3.2.1.1 pHおよび外観
実施例3の製剤のpHと外観の結果を、表22に示す。
【0153】
【表20】

【0154】
N=肉眼で見える粒子が存在しない、透明で無色の溶液
N+=わずかに黒色粒子が存在する、透明で無色の溶液
N++=多くの白色粒子が存在する、透明で無色の溶液
N/t=未検査
【0155】
3.2.1.2 効力と不純物の結果
実施例3の製剤の効力を40℃で5週間後にHPLCで測定した(表23)。各々の製剤は、95%以上の効力を維持した。
【0156】
【表21】

【0157】
実施例3の製剤をまた、40℃で5週間後に不純物Bと二量体の存在についてHPLCで分析した。表24はこの分析の結果を報告する。
【0158】
【表22】

【0159】
表25は、5週時点でHPLCで行なったHPLCによる効力の分析から得られた不純物プロファイルを示す。
【0160】
【表23】

【0161】
効力についてのHPLC分析からの実施例3の製剤の不純物総濃度と40℃、5週間後の不純物BについてのHPLC分析を表26に示す。
【0162】
【表24】

【0163】
3.3 概要
リンゴ酸とコハク酸を含む製剤は、酒石酸製剤に匹敵した不純物濃度を示した。先行技術の教示に反して、マロン酸製剤は、酒石酸製剤に比べて驚くほど許容できないほどの高濃度の不純物を含んでいた。クエン酸、マレイン酸および糖酸を含む溶液はまた、適度に低い不純物濃度を示し、オキサリプラチンに適切な緩衝剤であると考えられる。先行技術の安定剤であるシュウ酸と乳酸はまた、適度に低い不純物濃度を示した。これはシュウ酸の場合にはルシャテリエの原理の作用により驚くほどではない。
【0164】
実施例4
以下の製剤を規定の試験の目的のため調製した:
オキサリプラチン 5mg
酒石酸 0.03mg
NaOH(およそpH 5に調節する)
WFI 1 mL必要量
【0165】
pHはNaOHを使用して、4.7〜5.5の範囲でpH 5に調節する。酒石酸の濃度は約0.2 mMである。
【0166】
この明細書にわたって、単語「comprise」、または「comprises」もしくは「comprising」などの語尾変化は、規定された元素、整数または工程、または元素群、整数群または工程群を包含するが、いかなる他の元素、整数または工程、または元素群、整数群または工程群をも排除するものではないことを意味すると理解される。
【0167】
文献、行為、物質、装置、品物、または本明細書に含まれているその他のどのような議論も、もっぱら本発明の文脈を提示する目的のためである。これらの問題のいかなるものまたはすべてが先行技術基準の一部を形成する、あるいはこの出願の各請求項の優先日前にオーストラリアに存在した本発明に適切な技術分野での共通の一般知識であったということを容認することはできない。
【0168】
広く記述されるように本発明の範囲の精神から外れることなく、特定の実施形態で示されるような本発明への多数の変更および/または改良がなされるかもしれないことは当業者により評価される。したがって、本実施形態は例証としておよび限定的でないとしてすべての点を考慮される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1a】図1aは、12週間40℃で保管されたオキサリプラチン水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。
【図1b】図1bは、12週間40℃で保管されたオキサリプラチンおよび酒石酸の水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。
【図1c】図1cは、12週間40℃で保管されたオキサリプラチン、酒石酸および酒石酸ナトリウムの水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。
【図1d】図1dは、12週間40℃で保管されたオキサリプラチンおよびコハク酸二ナトリウム塩の水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。
【図1e】図1eは、12週間40℃で保管されたオキサリプラチン、マレイン酸および水酸化ナトリウムの水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。
【図2a】図2aは、8週間40℃で保管されたオキサリプラチン水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。
【図2b】図2bは、8週間40℃で保管されたオキサリプラチンおよび酒石酸の水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。
【図2c】図2cは、8週間40℃で保管されたオキサリプラチン、酒石酸および酒石酸ナトリウムの水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。
【図2d】図2dは、8週間40℃で保管され、図2cの溶液よりも酒石酸に対する酒石酸塩の比率が大きい、オキサリプラチン、酒石酸および酒石酸ナトリウムの水溶液の安定性を示すクロマトグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン;
(ii) 水; 及び
(iii) 酸を含み、
この酸が安定化に寄与していて、マロン酸、乳酸またはシュウ酸でない製剤。
【請求項2】
前記酸がカルボン酸である、請求項1記載の製剤。
【請求項3】
前記酸がジカルボン酸である、請求項1または2記載の製剤。
【請求項4】
前記酸が、クエン酸、マレイン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記酸が、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記酸が酒石酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記酸の濃度が少なくとも0.01mMである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン;
(ii) 水; 及び
(iii) 少なくとも4個の炭素原子を含む酸
を含む製剤。
【請求項9】
前記酸がジカルボン酸である、請求項8記載の製剤。
【請求項10】
前記酸が4〜10個の炭素原子を含む、請求項8または9記載の製剤。
【請求項11】
前記酸が4〜6個の炭素原子を含む、請求項8〜10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
前記酸が1または2個のヒドロキシル基を含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記酸が、クエン酸、マレイン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8〜11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記酸が、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8〜13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
前記酸が酒石酸である、請求項8〜14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
前記酸の濃度が少なくとも0.01mMである、請求項8〜15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01mMであり、かつこの酸がマロン酸、乳酸またはシュウ酸ではない製剤。
【請求項18】
前記酸がジカルボン酸である、請求項17記載の製剤。
【請求項19】
前記酸が、クエン酸、マレイン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17記載の製剤。
【請求項20】
非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01mMであり、かつこのカルボン酸が式:
HO2C[C(R1)(R2)]nCO2H
(式中、n=2〜6;およびR1とR2は互いに独立して、H、OH、CO2H、ハロゲンおよびメチルからなる群から選択される)である製剤。
【請求項21】
n=2〜4である、請求項20記載の製剤。
【請求項22】
前記酸が、クエン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項20記載の製剤。
【請求項23】
前記カルボン酸が、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項17〜22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
薬学的に許容可能なカルボン酸が酒石酸である、請求項17〜23のいずれか一項に記載の薬事用液体製剤。
【請求項25】
非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) オキサリプラチン、
(ii) 水; 及び
(iii) 酒石酸、酒石酸の塩、酒石酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤;
を含み、この添加剤の濃度が少なくとも0.01mMである製剤。
【請求項26】
前記添加剤の濃度が約0.01mM〜約2.0mMである、請求項17〜25のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項27】
前記添加剤の濃度が約0.1mM〜約1.0mMである、請求項17〜26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
前記添加剤の濃度が約0.1mM〜約0.6mMである、請求項17〜27のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項29】
前記添加剤の濃度が約0.2mM〜約0.6mMである、請求項17〜28のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項30】
前記添加剤が、薬学的に許容可能な酸の塩を含み、この塩がナトリウム塩である、請求項17〜29のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項31】
オキサリプラチンの濃度が約15mg/mlまでである、請求項1〜30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
オキサリプラチンの濃度が約7mg/mlまでである、請求項1〜31のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項33】
前記製剤のpHが約3〜約7の範囲である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項34】
癌治療のための医薬品の調製における、請求項1〜33のいずれか一項に記載の薬事用製剤の使用。
【請求項35】
請求項1〜33のいずれか一項に記載の薬事用製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む癌を処置する方法。
【請求項36】
薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 前記溶液中に、薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を溶解する工程;
(iii) 任意に薬学的に許容可能な塩基を用いて前記溶液のpHを調節する工程
を含み、この酸がマロン酸、乳酸またはシュウ酸ではない方法。
【請求項37】
前記酸がジカルボン酸である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記酸が、クエン酸、マレイン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項36記載の方法。
【請求項39】
薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 前記溶液中に、薬学的に許容可能なカルボン酸、薬学的に許容可能なカルボン酸の塩、薬学的に許容可能なカルボン酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を溶解する工程;
(iii) 任意に薬学的に許容可能な塩基を用いて前記溶液のpHを調節する工程
を含み、このカルボン酸が式:
HO2C[C(R1)(R2)]nCO2H
(式中、n=2〜6;およびR1とR2は互いに独立して、H、OH、CO2H、ハロゲンおよびメチルからなる群から選択される)である方法。
【請求項40】
n=2〜4である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記酸が、クエン酸、糖酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項39記載の方法。。
【請求項42】
前記カルボン酸が、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項36〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 前記溶液中に、酒石酸、酒石酸の塩、薬学的に許容可能な酒石酸の薬学的に許容可能な誘導体およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を溶解する工程;
(iii) 任意に薬学的に許容可能な塩基を用いて前記溶液のpHを調節する工程
を含む方法。
【請求項44】
前記添加剤の濃度が約0.01mM〜約2.0mMである、請求項36〜43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記添加剤の濃度が約0.1mM〜約1.0mMである、請求項36〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記添加剤の濃度が約0.1mM〜約0.6mMである、請求項36〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記添加剤の濃度が約0.2mM〜約0.6mMである、請求項36〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記添加剤が、薬学的に許容可能な酸の塩を含み、この塩がナトリウム塩である、請求項36〜47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
オキサリプラチンの濃度が約15mg/mlまでである、請求項36〜48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
オキサリプラチンの濃度が約7mg/mlまでである、請求項36〜49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
オキサリプラチンの濃度が約5mg/mlである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記薬学的に許容可能な塩基が水酸化ナトリウムである、請求項36〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記製剤のpHが約3〜7の範囲に調整される、請求項36〜52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
非経口的投与のためのオキサリプラチンの薬事用液体製剤であって、
(i) 約5mg/mlのオキサリプラチン、
(ii) 水、及び
(iii) 酒石酸および酒石酸ナトリウム塩からなる添加剤
を含み、前記添加剤の濃度が約0.2mMであり、かつ溶液のpHが約4.7〜約5.5である製剤。
【請求項55】
癌治療のための医薬品の調製における請求項54記載の薬事用製剤の使用。
【請求項56】
請求項54記載の薬事用製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む癌を処置する方法。
【請求項57】
薬事用製剤の調製方法であって、
(i) 溶液を生成するために水にオキサリプラチンを溶解する工程;
(ii) 前記溶液中に酒石酸を溶解する工程;
(iii) 水酸化ナトリウムを用いて、4.7〜5.5の範囲になるように前記溶液のpHを調節する工程
を含み、オキサリプラチンの濃度が約5mg/mlであり、かつ酒石酸の濃度が約0.2mMである方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【公表番号】特表2007−504098(P2007−504098A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524178(P2006−524178)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001168
【国際公開番号】WO2005/020980
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506068324)メイン・ファーマ・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】