説明

酸化セリウム及び酸化ジルコニウムを基材とし900℃〜1000℃で安定な比表面積を有する組成物、その製造方法並びにそれらの触媒としての使用

本発明の第1の具体例に従う組成物は、本質的に酸化セリウムと酸化ジルコニウムとからなる。第2の具体例によれば、該組成物は、酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、少なくとも1種のセリウム以外の希土類金属の酸化物とを基材とする。900℃で4時間の第1焼成、次いで1000℃で10時間の第2焼成後に、その比表面積変化は、第1の具体例では20%が最大であり、そして第2の具体例では15%が最大である。本発明の組成物は、触媒として、即ち、内燃機関からの排気ガスの処理に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、900℃〜1000℃の間で安定な比表面積を有し、酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、随意として別の希土類金属の酸化物とを基材とする組成物、その製造方法及びその触媒としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、酸化ジルコニウムと酸化セリウムは、内燃機関からの排気ガスの処理(自動車用の後燃焼触媒による)用の触媒、特に「多機能」と呼ばれる触媒についての2種の特に有利な成分であるらしいことが知られている。多機能触媒とは、排気ガス中に存在する特に一酸化炭素及び炭化水素の酸化だけでなく、これらのガス中に存在する特に窒素酸化物の酸化をも実施することができるようなものを意味すると理解されている(「3方向」触媒)。
【0003】
現在利用できるこのタイプの触媒は、一般に、約900℃〜1200℃の間の温度に対して比較的高い比表面積を維持することができる。しかしながら、上記2つの温度限界間でのこの比表面積の変化は、既知の触媒の場合には非常に大幅なものであり、そしてこの温度範囲内でほんの小さな比表面積の相対的変化しか示さない製品に対する要望がある。それは、小さな変化が、触媒上に付着する貴金属の焼結を低減させ、しかして問題の温度範囲にわたってこれらの貴金属をさらに利用し易くするのを可能にするからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、このような製品を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、第1の具体例では、本発明の組成物は、本質的に酸化セリウムと酸化ジルコニウムとからなり、そしてこのものは、900℃で4時間の第1焼成、次いで1000℃で10時間の第2焼成の後に、せいぜい20%のその比表面積の変化を示すことを特徴とする。
【0006】
第2の具体例によれば、本発明の組成物は、酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、少なくとも1種のセリウム以外の希土類金属の酸化物とを基材とし、そして、900℃で4時間の第1焼成、次いで1000℃で10時間の第2焼成の後に、せいぜい15%の比表面積の変化を示すことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、次の工程:
(a)セリウム化合物と、ジルコニウム化合物と、適宜上記の希土類金属化合物とを含む混合物を形成させ、
(b)該混合物と塩基性化合物とを接触させ、それによって沈殿を得、
(c)該沈殿を水性媒体中で加熱し、
(d)前工程で得られた沈殿物にカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート型の界面活性剤を添加し、
(e)このようにして得られた沈殿物を焼成すること
を含むことを特徴とする、このような組成物の製造方法に関するものでもある。
【0008】
本発明のその他の特徴、詳細及び利点は、次の説明を読むことによって及び例示を目的とした制限されない具体例から、さらに完全に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
用語「比表面積」とは、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に記載されているブルナウアー−エメット−テラー法に基づいて設定されたASTM D 3663−78基準法に従って窒素吸着によって決定されるBET比表面積を意味するものとする。
【0010】
用語「希土類金属」とは、イットリウム及び原子番号57〜71の周期律表の元素よりなる群からなる元素を意味するものとする。
【0011】
特に示さない限り、これらの含有量は酸化物として与えられる。酸化セリウムは、酸化セリウム(IV)の形である。
【0012】
その他の記載において、特に示さない限り、与えられる値の範囲には限界値が含まれることを指摘しておく。
【0013】
本発明の組成物は、それらの成分の性質によって異なる2つの具体例を有する。第1の具体例によれば、これらの組成物は、本質的に酸化セリウム及び酸化ジルコニウムからなる。これは、該組成物が、その表面のための安定剤であることができるセリウム以外の希土類金属としての別の元素の他の酸化物を含有しないことを意味する。
【0014】
酸化セリウム及び酸化ジルコニウムの相対的な割合は幅広く変化し得る。例えば、酸化セリウム/酸化ジルコニウムの重量比は、約10/90〜約90/10、より具体的には20/80〜60/40、さらに具体的には20/80〜40/60の間で変化し得る。
【0015】
本発明の第2の具体例の場合には、これらの組成物は、酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、少なくとも1種のセリウム以外の希土類金属の酸化物とを基材とする。この場合には、これらの組成物は、それ故に少なくとも3種の酸化物、より具体的には4種の酸化物を含有する。セリウム以外の希土類金属は、特に、イットリウム、ランタン、ネオジム及びプラセオジム並びにそれらの組合せから選択できる。例えば、この第2の具体例に従う組成物として、より具体的には、酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、酸化ランタンとを基材とするもの、酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、酸化ランタンと、酸化ネオジムとを基材とするもの、及び、酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、酸化ランタンと、酸化プラセオジムとを基材とするものが挙げられる。
【0016】
また、この第2の具体例の場合には、セリウム以外の希土類金属の酸化物の含有量は、一般に、組成物全体を基準にしてせいぜい30重量%、具体的にはせいぜい20重量%である。この含有量は、より具体的には、せいぜい15%、さらに具体的にはせいぜい10%であってよい。通常、これは、少なくとも1%、より具体的には少なくとも5%でもある。この第2の具体例の場合には、酸化セリウム/酸化ジルコニウムの重量比は、特に、0.25〜4、より具体的には0.25〜2、さらに具体的には0.25〜1の間で変化し得る。
【0017】
本発明の組成物の必須の特徴は、900℃〜1000℃の間でのそれらの表面積の安定性である。この記載に関して、この安定性は、900℃で4時間の焼成後に示される比表面積(S900)と、1000℃で10時間の焼成後に示される表面積(S1000)と、1200℃で10時間の焼成後に示される表面積(S1200)との間の変化によって測定されるものであり、ここで、この変化は、%で表されるそれぞれの比(S900−S1000)/S900及び(S1000−S1200)/S1000によって表される。
【0018】
第1の具体例の場合には、900℃〜1000℃の間でのこの変化は、せいぜい20%である。第2の具体例の場合には、900℃〜1000℃の間でのこの変化は、せいぜい15%である。
【0019】
これらの変化は、さらに小さくてよい。即ち、10%以下、さらに5%以下であってよい。好ましい具体例によれば、これらの変化は、ゼロ又はほぼゼロであることができる。
【0020】
また、この安定性は、900℃〜1100℃の間でも観察され得る。即ち、900℃〜1000℃の間における上記の表面積の変化(特に、第1の具体例及び第2の具体例に従う、それぞれせいぜい20%及びせいぜい15%)が900℃/4時間〜1100℃/10時間の範囲内にも同様に当てはまる。
【0021】
また、この安定性は、さらに高い温度でも現れる。例えば、1200℃での第3焼成後に、この組成物は、1000℃での焼成後の表面積の値と1200℃での焼成後の表面積の値との間で測定される、せいぜい75%、好ましくはせいぜい60%の比表面積変化を示す。
【0022】
本発明の組成物の比表面積は幅広く変化し得る。一般に、900℃で4時間の焼成後の比表面積は、少なくとも8m2/gである。第2の具体例に従う組成物の場合には、この表面積は、より具体的には、特に少なくとも15m2/gであることができる。本発明は、同一の時間及び温度条件下で、第1の具体例については少なくとも15m2/gまで及び第2の具体例については少なくとも35m2/gまでの範囲の表面積を有する組成物を得るのを可能にする。1000℃で10時間後に、実質的に同一の値がこれら2つの温度の間での表面積の安定性の結果として示され得る。
【0023】
1200℃で10時間の焼成後に、本発明の組成物は、少なくとも3m2/g、好ましくは少なくとも5m2/g、より具体的には少なくとも8m2/gの表面積を示す(特に、これら最後の2つの値については第2の具体例に従う組成物の場合)。
【0024】
本発明の組成物は、追加の特性として、900℃〜1000℃の間で実質的に一定のOSC(酸素貯蔵能:oxygen storage capacity)をさらに有する。例えば、1000℃で焼成された製品について、OSCの減少は、900℃で焼成された製品のOSC値に対してせいぜい20%、好ましくはせいぜい15%である。
【0025】
また、本発明の組成物は、特定の多孔度をも有する。それは、これらのものがメソ細孔、即ち、10nm〜200nmの寸法及びほぼ50nm周辺に中心分布を有する細孔を含有するためである。この細孔寸法及びこの細孔分布は、900℃で焼成され、次いで1100℃で焼成された組成物の場合には実質的に同一である。これらの寸法値は、水銀ポロシメトリー(2個の低圧ステーションと1個の高圧ステーションとを備えるミクロメリティック・オートポア9410多孔度測定器を使用して実施される分析)によって得られる。
【0026】
次に、本発明の組成物を製造する方法を説明する。
【0027】
しかして、この方法の第1工程は、水性媒体中で、ジルコニウム化合物と、セリウム化合物と、随意として上記の希土類金属との混合物を製造することからなる。
【0028】
この混合は、一般に、好ましくは水である水性媒体中で実施される。
【0029】
これらの化合物は、好ましくは可溶性の化合物である。これらのものは、特に、ジルコニウム、セリウム及び希土類金属の塩であってよい。これらの化合物は、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物及び硝酸セリウム(IV)アンモニウムから選択できる。
【0030】
例としては、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル又は塩化ジルコニルが挙げられる。最も一般的には、硝酸ジルコニルが使用される。また、特に、例えば、硝酸セリウム(IV)又は硝酸セリウム(IV)アンモニウムのようなセリウム(IV)塩が挙げられるが、これらのものがここでは特に好適である。硝酸セリウム(IV)が使用できる。少なくとも99.5%、より具体的には少なくとも99.9%の純度を有する塩を使用することが有利である。硝酸セリウム(IV)水溶液は、例えば、セリウム(III)塩、例えば硝酸セリウム(III)の溶液とアンモニア溶液とを過酸化水素の存在下に反応させることによって従来通りに製造された水和酸化セリウム(IV)に硝酸を反応させることによって得られ得る。また、特に、特許文献仏国特許第2570087号明細書に記載されるように、ここで有利な原料を構成する硝酸セリウム(III)溶液の電解酸化の方法によって得られる硝酸セリウム(IV)溶液を使用することも可能である。
【0031】
ここで、セリウム塩及びジルコニル塩の水溶液は、所定の初期自由酸性度(これは、塩基又は酸の添加によって調整できる)を有し得ることに留意すべきである。しかしながら、同様に、実際に上記所定の自由酸性度を有するセリウム及びジルコニウム塩の初期溶液並びに予めより大きい程度又はより小さい程度にまで中和された溶液を使用することも可能である。この中和は、この酸性度を制限するように、塩基性化合物を前記混合物に添加することによって実施できる。この塩基性化合物は、例えば、アンモニア溶液又はアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)水酸化物の溶液であることができるが、好ましくはアンモニア溶液である。
【0032】
最後に、出発混合物がセリウム化合物であってセリウムがCe(III)の形であるものを含有するときには、この方法中に、酸化剤、例えば過酸化水素を使用することが好ましい。この酸化剤は、工程(a)又は工程(b)中に、特に後者の工程の終了時に、反応混合物に添加することによって使用され得る。
【0033】
また、ジルコニウム又はセリウムの出発化合物としてゾルを使用することも可能である。用語「ゾル」とは、コロイド寸法、即ち、約1nm〜約500nmの寸法の細かい固体粒子からなる、ジルコニウム又はセリウム化合物を基材とする任意の系をいい、ここで、この化合物は、一般に、水性液体相の懸濁液の状態の酸化ジルコニウム若しくは酸化セリウム及び/又は水和された酸化物であり、該粒子は、随意として、例えば硝酸イオン、酢酸イオン、塩化物イオン又はアンモニウムイオンのような残余量の結合イオン又は吸収イオンをさらに含有することができるものとする。このようなゾルでは、ジルコニウム又はセリウムは、完全にコロイド状であるか、又は同時にイオン状とコロイド状であるかのいずれかであってよいことに留意すべきである。
【0034】
この混合物が最初に固体状態の化合物から得られるのか(これらのものは、その後、例えば水性原料に導入される)、又はそれともこれらの化合物の溶液から直接得られるのか(次いで、該溶液は任意の順序で混合される)は、問題とはならない。
【0035】
この方法の第2工程(b)では、該混合物と塩基性化合物とを接触させる。塩基又は塩基性化合物として、水酸化物型の物質を使用することが可能である。水酸化アルカリ金属又は水酸化アルカリ土類金属が挙げられる。また、第二、第三又は第四アミンを使用することも可能である。しかしながら、アルカリ金属又はアルカリ土類金属陽イオンによる汚染のリスクを低減させる限りにおいて、アミン及び水性アンモニアが好ましい。また、尿素も挙げられる。塩基性化合物は、一般に、水溶液の状態で使用される。
【0036】
この混合物と溶液を互いに接触させる方法、即ち、その導入の順序は重要ではない。しかしながら、この接触は、該混合物を塩基性化合物の溶液に導入することによって実施できる。
【0037】
混合物と溶液との接触又は反応、特に、混合物の塩基性化合物溶液への添加は、単一の工程で徐々に又は連続的に実施でき、そして好ましくは、撹拌しながら実行される。これは、好ましくは室温で実施される。
【0038】
この方法の次の工程(c)は、水性媒体中の沈殿物を加熱する工程である。
【0039】
この加熱は、塩基性化合物との反応後に得られた反応混合物又は沈殿物を反応混合物から分離し、随意としてそれを洗浄し、そしてそれを水に戻した後に得られた懸濁液について直接実施できる。この媒体の加熱温度は、少なくとも100℃、さらに好ましくは少なくとも130℃である。この加熱操作は、液体媒体を密閉チャンバー(オートクレーブ型の密閉反応器)に導入することによって実施できる。上に与えられた温度条件下で、且つ、水性媒体の状態で、該密閉反応器の圧力は、例示として、1bar(105Pa)〜165bar(1.65×107Pa)、好ましくは5bar(5×105Pa)〜165bar(1.65×107Pa)の間で変化し得ることが条件とされ得る。また、加熱は、ほぼ100℃の温度の開放反応器内で実施することもできる。
【0040】
加熱は、空気中又は不活性ガス雰囲気中、好ましくは窒素中のいずれかで実施できる。
【0041】
加熱の持続時間は、例えば、1〜48時間、好ましくは2〜24時間の間で幅広く変化し得る。同様に、温度の上昇速度は重要ではない。しかして、これは、媒体を、例えば30分から4時間にわたって加熱することによって、その固定された反応温度に到達させることが可能である(これらの値は、単なる表示例として与えている)。
【0042】
この加熱された媒体は、一般に、少なくとも5のpHを有する。好ましくは、このpHは、塩基性、即ち、7以上、より具体的には少なくとも8である。
【0043】
いくつかの加熱操作を実施することが可能である。例えば、加熱工程及び随意としての洗浄操作後に得られた沈殿物を水に再懸濁し、次いで、このようにして得られた媒体について別の加熱操作を実施することができる。このその他の加熱操作は、第1のものについて説明したのと同一の条件下で実施される。
【0044】
この方法の次の工程(d)において、このようにして得られた沈殿物に、カルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート型の界面活性剤から選択されるものを添加する。
【0045】
用語「カルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート型の物質」とは、鎖の末端にCH2−COOH基を有するエトキシル化又はプロポキシル化脂肪アルコールからなる物質を意味するものとする。
【0046】
これらの物質は、次式:
1−O−(CR23−CR45−O)n−CH2−COOH
(式中、R1は、飽和又は不飽和炭素鎖であってその長さが一般にせいぜい22個の炭素原子、好ましくは少なくとも12個の炭素原子であるものを表し、R2、R3、R4及びR5は同一であってよく、そして水素を表し、又は、R2はCH3基を表すことができ、そしてR3、R4及びR5は水素を表し、nは50まで、より具体的には5〜15を範囲とすることができるゼロでない整数であるが、ここで、これらの値は算入するものとする。)
に相当し得る。界面活性剤は、R1がそれぞれ飽和及び不飽和であり得る上記式の物質又は−CH2−CH2−O−及び−C(CH3)−CH2−O−基の両方を含む物質の混合物からなることができることに留意すべきである。
【0047】
また、上記のタイプのいくつかの界面活性剤を混合物として使用することが可能であることにも留意すべきである。
【0048】
界面活性剤の添加は、2つの方法で実施できる。このものを先の加熱工程から得られた沈殿物の懸濁液に直接添加することができる。また、このものを、加熱を行った媒体から固体沈殿物を任意の既知の手段によって分離した後に該沈殿物に添加してもよい。
【0049】
界面活性剤の使用量は、約30%〜200%、特に50%〜200%の間で変化し得る(これらの量は、組成物の重量に対する界面活性剤の重量によって表される)。より具体的には、この量は、50%〜150%、より具体的には50%〜100%の間であってよい。
【0050】
本発明に従う方法の最終工程では、回収された沈殿物を焼成する。この焼成は、形成された生成物の結晶化度を増大させることを可能にし、またこれは、該生成物の比表面積が低ければ低いほど使用される焼成温度は高いという事実を考慮して、本発明に従う組成物のために残されたその後の使用温度に応じて調節及び/又は選択することもできる。このような焼成は、一般には空気中で実施されるが、例えば不活性ガス又は制御された(酸化性又は還元性)雰囲気中で実施される焼成も勿論除外されない。
【0051】
実際には、焼成温度は、一般に300〜900℃の値の範囲に制限される。上記のような又は上で行った方法で得られたような本発明の組成物は粉末状であるが、これらのものは、随意として、様々な寸法の顆粒、ビーズ、円筒形又は蜂の巣形に形成できる。
【0052】
本発明の組成物は、触媒として又は触媒の担体として使用できる。従って、本発明は、本発明の組成物を含む触媒系に関するものでもある。このような系について、これらの組成物は、触媒の分野において標準的に使用されている任意の担体、即ち、特に熱不活性担体に適用できる。この担体は、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、珪酸塩、結晶質燐酸珪素アルミニウム及び結晶質燐酸アルミニウムから選択できる。
【0053】
また、これらの組成物は、触媒特性を有する洗浄コートを含み且つこれらの組成物、例えば金属又はセラミックのモノリス型の基材をベースとする触媒系で使用することもできる。この洗浄コートは、それ自体が上記のタイプの担体を含み得る。この洗浄コートは、組成物と担体とを、次いで基材上に付着し得る懸濁液を形成させるように混合させることによって得られる。
【0054】
これらの触媒系、より具体的には本発明の組成物は、非常に多数の用途を有し得る。しかして、これらのものは、例えば、炭化水素又はその他の有機化合物の脱水、水素化硫化、水素化脱硝化、脱硫化、水素化脱硫化、脱水素化ハロゲン化、改質(リフォーミング)、水蒸気改質、分解、水素化分解、水素化、脱水素化、異性化、不均化、オキシ塩素化及び脱水素環化、酸化及び/又は還元反応、クラウス反応、内燃機関の排気ガスの処理、脱加硫、メタン化反応、転化、希薄モードで作動するディーゼル又はガソリンエンジンのような内燃機関によって放出される煤煙の触媒酸化のような様々な反応の触媒作用に特によく適合するため、これらに使用できる。最後に、この触媒系及び本発明の組成物は、NOxトラップとして使用できる。
【0055】
これらの触媒反応における用途の場合には、本発明の組成物は貴金属と共に使用できるため、これらの組成物は、これらの金属のための担体として作用する。担体金属の性質及びこれらのものを担体組成物に取り入れる技術は当業者に周知である。例えば、これらの金属は、白金、ロジウム、パラジウム又はイリジウムであることができ、そしてこれらのものは、特に、含浸によって組成物に取り込まれ得る。
【0056】
上記した用途のうち、内燃機関の排気ガスの処理(自動車の後燃焼触媒作用による)は、特に有利な一つの用途を構成する。従って、本発明は、内燃機関の排気ガスの処理方法において、上記のような触媒系又は本発明に従う上記のような組成物を触媒として使用することを特徴とする、内燃機関の排気ガスの処理方法に関するものでもある。
【0057】
ここで実施例を与える。
【実施例】
【0058】
以下に与える操作方法に従って様々な組成物を製造した。
撹拌ビーカーに、硝酸ジルコニウム(80g/L)と、IIIの酸化状態の硝酸セリウム(496g/L)と、調製される様々組成物に応じて硝酸ランタン(454g/L)、硝酸ネオジム(524g/L)及び/又は硝酸プラセオジムとを導入した。次いで、これらの硝酸塩の溶液を1リットル得るように、蒸留水を添加した。
【0059】
撹拌反応器に、アンモニウム水溶液(12モル/L)と、過酸化水素(110容量)とを導入し、次いで、1リットルの総容量を得るように蒸留水を添加した。水性アンモニアの量は、沈殿すべき混合物中に存在する硝酸イオンの量の1.4倍を表す(モルで)ように算出した。過酸化水素の量は、セリウムイオンの量の6倍を表す(モルで)ように算出した。この硝酸塩の溶液を1時間にわたって一定に撹拌しつつ反応器に導入して懸濁液を得た。
【0060】
得られた懸濁液を、撹拌器を備えたステンレス鋼製オートクレーブ中に置いた。この媒体の温度を撹拌しつつ2時間にわたって150℃にまで上昇させた。
【0061】
次いで、この得られた懸濁液をブフナー漏斗上で濾過した。X重量%の酸化物を含有する沈殿物を回収した。
【0062】
U重量%の界面活性剤を含有するゲルの塊Z(g)を沈殿物の塊Y(g)に添加して均質なペーストを得た。界面活性剤は、式R−O(−CH2−CH2−O)9−CH2−COOH(式中、RはC1633パルミチン酸(飽和)型又はC1835オレイン酸(不飽和鎖)型の炭素鎖である。)のエトキシル化生成物であって825の平均分子量を有するものの混合物であった。
【0063】
次いで、得られた混合物を4時間にわたって段階的に900℃に加熱した。
【0064】
以下の表1は、様々な例についてのX、Y、Z及びUの値を与えている。
【0065】
【表1】

【0066】
以下の表2は、製造した組成物の特性を与えている。
【表2】

【0067】
例1の組成物は、1100℃での焼成後に、50nm周辺に中心分布を有する20nm〜200nmの間の寸法を有するメソ細孔を示した。
【0068】
以下の表3は、様々な例について、表面積及び様々な温度でのそれらの変化を与えている。
【0069】
【表3】

【0070】
例1の組成物は、さらに、1100℃で10分間の焼成後に20m2/gの表面積を有していた。
【0071】
また、例1の生成物の動的OSCの変化を次の方法を使用して測定した。
【0072】
30mgの生成物を、第1試料の場合には900℃で4時間、第2試料の場合には1200℃で4時間にわたって予め焼成した。この試料を、温度を350℃、400℃及び450℃に調節することができる反応器内に置いた。規定量のCO(ヘリウム中5%)及びO2(ヘリウム中2.5%)を、1Hzの頻度(1秒に対して1回の注入)及び200cm3/mの流量でこの反応器に交互に注入した。該反応器の出口でのCO及びO2の含有量を、質量分析計を使用して分析した。
【0073】
OSCを、次式:
OSC(mL.g-1.s-1)=[Δ(CO)×dCO]/(2×P)
(式中、Δ(CO)は1秒につき転化されたCOの量を表し、dCOはCOの流量を表し、Pは試料の質量を表す。)
を使用してO2のmL/グラム/秒で表した。
【0074】
以下の表4は、例1の生成物のOSC変化を与えている。
【0075】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に酸化セリウム及び酸化ジルコニウムからなる組成物において、900℃で4時間の第1焼成、次いで1000℃で10時間の第2焼成の後に、せいぜい20%の比表面積の変化を示すことを特徴とする、本質的に酸化セリウム及び酸化ジルコニウムからなる組成物。
【請求項2】
900℃で4時間の第1焼成、次いで1100℃で10時間の第2焼成の後に、せいぜい20%の比表面積の変化を示すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、少なくとも1種のセリウム以外の希土類金属の酸化物とを基材とする組成物において、900℃で4時間の第1焼成、次いで1000℃で10時間の第2焼成の後に、せいぜい15%の比表面積の変化を示すことを特徴とする、酸化セリウムと、酸化ジルコニウムと、少なくとも1種のセリウム以外の希土類金属の酸化物を基材とする組成物。
【請求項4】
900℃で4時間の第1焼成、次いで1100℃で10時間の第2焼成の後に、せいぜい20%の比表面積の変化を示すことを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記2回の焼成後に、せいぜい10%の比表面積の変化を示すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記2回の焼成後に、せいぜい5%の比表面積の変化を示すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
1200℃での第3焼成後に、1000℃で10時間の焼成後の表面積と1200℃で10時間の焼成後の表面積との間で測定される、せいぜい75%、好ましくはせいぜい60%の比表面積変化を示すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
ランタン、ネオジム及びプラセオジムから選択される、少なくとも1種のセリウム以外の希土類金属の酸化物を含むことを特徴とする、請求項3〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
1000℃での焼成後に、少なくとも8m2/g、より具体的には少なくとも15m2/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
セリウム以外の希土類金属の酸化物の含有量がせいぜい20重量%であることを特徴とする、請求項3〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
次の工程:
(a)セリウム化合物と、ジルコニウム化合物と、適宜前記希土類金属化合物とを含む混合物を形成させ、
(b)該混合物と塩基性化合物とを接触させ、それによって沈殿物を得、
(c)該沈殿物を水性媒体中で加熱し、
(d)前工程で得られた沈殿物にカルボキシメチル化脂肪アルコールエトキシレート型の界面活性剤を添加し、
(e)このようにして得られた沈殿物を焼成すること
を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物の製造方法。
【請求項12】
前記混合物と塩基性化合物とを、該混合物を溶液状の塩基性化合物に導入することによって接触させることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
沈殿物を少なくとも100℃の温度に加熱することを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする触媒系。
【請求項15】
内燃機関の排気ガスを処理する方法において、請求項14に記載の触媒系又は請求項1〜10のいずれかに記載の組成物を触媒として使用することを特徴とする、内燃機関の排気ガスを処理する方法。


【公表番号】特表2006−516524(P2006−516524A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518438(P2005−518438)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000649
【国際公開番号】WO2004/085314
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503124252)ロディア エレクトロニクス アンド カタリシス (13)
【Fターム(参考)】