説明

酸化チタンの製造方法

【課題】殊更高価な装置を用いることなく、微粒子化が容易で可視光線の照射による光触媒活性が高い酸化チタンの製造方法を提供する。
【解決手段】チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解する工程と、前記加水分解工程により得られる加水分解物を分離する工程と、前記分離工程により得られた分離残渣を乾燥する工程と、前記乾燥残渣を焼成する工程とを含む酸化チタンの製造方法において、前記加水分解工程が、予め水性媒体中にアナターゼ型酸化チタン微粒子を分散された分散液を調製し、前記分散液に、チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解することを特徴とする酸化チタンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化チタンの製造方法に関し、詳細には、光触媒作用を示す高い比表面積を有する酸化チタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からの紫外線照射による光触媒に代えて、可視光線の照射によっても、触媒作用を示す光触媒が発見され、この光触媒の製造方法として各種提案がなされている。例えば、特許文献1には酸化チタンを水素プラズマ処理または希ガス類元素プラズマ処理することによって、光触媒を得る方法が記載されている。しかし、この方法では、真空容器を備えた高価な特定のプラズマ処理装置が必要になり、操作も煩雑になるといった問題がある。
【0003】
そのため、最近では、真空容器を備えた特定の装置を用いることなく、酸化チタン光触媒を簡易に製造する方法が提案されている。例えば、テトライソプロポキシチタンを加水分解して得られる生成物を、アンモニアガス中で熱処理した後、空気中で焼成する方法(特許文献2)、テトライソプロポキシチタンを加水分解して得られる生成物を、アンモニア水に浸漬した後、焼成する方法(特許文献3)、オキシ蓚酸チタンアンモニウムを焼成する方法(特許文献4)、水酸化チタンを硫酸アンモニア存在下で焼成する方法(特許文献5)、水酸化チタンをアンモニアガス雰囲気下で焼成する方法(特許文献6)、塩化チタン、オキシ塩化チタン、硫酸チタン、オキシ硫酸チタンのようなチタン化合物と特定量のアンモニアを混合し、得られた生成物を焼成する方法(特許文献7)等である。
【0004】
特許文献7に記載されている方法によれば、可視光線の照射に対して高い光触媒作用を示す酸化チタンが得られることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】WO00/10706号公報
【特許文献2】特開2001−278625号公報
【特許文献3】特開2001−278626号公報
【特許文献4】特開2001−278627号公報
【特許文献5】特開2001−302241号公報
【特許文献6】特開2001−354422号公報
【特許文献7】特開2002−47012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、酸化チタンを溶媒に分散させたコーティング液を用いて膜形成するとき、膜を薄くできること、また膜の機械的物性を向上させられることから、酸化チタンの微粒子化が要望されるようになっているが、上記従来技術の方法では、酸化チタンを微粒子化させることが困難であり、改良の余地がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑みて、簡便かつ安価な方法で、効率よく、微粒子化が容易で光触媒活性が高い酸化チタンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解する工程と、前記加水分解工程により得られる加水分解物を分離する工程と、前記分離工程により得られた分離残渣を乾燥する工程と、前記乾燥残渣を焼成する工程とを含む酸化チタンの製造方法において、
前記加水分解工程が、予め水性媒体中にアナターゼ型酸化チタン微粒子を分散された分散液を調製し、前記分散液に、チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の酸化チタンの製造方法は、アナターゼ型酸化チタン微粒子の平均粒子径が、200nm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の酸化チタンの製造方法は、分散液中のアナターゼ型酸化チタン微粒子の含有量が、チタン化合物(二酸化チタン換算)100重量部に対して1〜20重量部であることが好ましい。
【0011】
本発明の酸化チタンの製造方法は、加水分解する工程が、60℃以下で行われることが好ましい。
【0012】
本発明の酸化チタンの製造方法は、チタン化合物水溶液が、過酸化水素を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の酸化チタンの製造方法は、チタン化合物が、三塩化チタン、四塩化チタン、オキシ硫酸チタン及び硫酸チタンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の酸化チタンの製造方法は、予め水性媒体中にアナターゼ型酸化チタン微粒子を分散させた分散液を調製する工程を含むことにより、酸化チタン自体の一次粒子径を小さくすることができるため、得られた酸化チタンの分散性が高く、光触媒活性の高い酸化チタンを製造することができ、有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に係る酸化チタンの製造方法は、(1)予め水性媒体中にアナターゼ型酸化チタン微粒子を分散された分散液を調製し、(2)前記分散液に、チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解する工程と、(3)前記加水分解工程により得られる加水分解物(前駆体スラリー)を分離する工程と、(4)前記分離工程により得られた分離残渣を乾燥する工程と、(5)前記乾燥残渣(酸化チタン前駆体)を焼成する工程とを含むものである。以下に、具体的な酸化チタンの製造方法を説明する。
【0017】
(1)分散液の調製工程
本発明は、予め水性媒体中にアナターゼ型酸化チタン微粒子を分散された分散液を調製する工程を含む。ここで使用するアナターゼ型酸化チタン微粒子に、特に制限は無いが、市販のアナターゼ型酸化チタンゾルを用いてもよい。前記アナターゼ型酸化チタン微粒子を使用することにより、このアナターゼ型酸化チタン微粒子を核とした酸化チタン前駆体が析出するものと推定する。
【0018】
アナターゼ型酸化チタン微粒子の平均粒子径は200nm以下が好ましく、より好ましくは、150nm以下であり、更に好ましくは100nm以下である。
【0019】
アナターゼ型酸化チタン微粒子の使用量は、チタン化合物(二酸化チタン換算)100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部であり、更に好ましくは、1〜10重量%である。1重量部未満であると、アナターゼ型酸化チタン微粒子の核の個数が少なすぎるため、効果を発揮することができず、20重量部を越えると、核の個数が多すぎるため、アナターゼ型酸化チタン微粒子の全てを前駆体が覆うことができず、前駆体の表面電荷バランスが崩れ好ましくない。
【0020】
(2)加水分解工程
前記分散液に、チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解する工程を含む。ここで使用するチタン化合物としては、例えば、三塩化チタン、四塩化チタン、塩化チタン、オキシ塩化チタン、硫酸チタン、オキシ硫酸チタンなどが挙げられ、特に好ましくは、三塩化チタン、四塩化チタン、オキシ硫酸チタン及び硫酸チタンから選択される少なくとも1種である。
【0021】
加水分解で用いられる塩基としては、アンモニア、ヒドラジン誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、モノエタノールアミン、非環式アミン化合物、環式脂肪族アミン化合物、アミノ酸が好ましく、より好ましくはアンモニア、ヒドラジン誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体であり、更に好ましくは、アンモニアである。
【0022】
チタン化合物と塩基との反応は、pH2以上が好ましく、より好ましくはpH3以上であり、pH7以下が好ましく、より好ましくはpH5以下の範囲で行うのがよい。また、チタン化合物と塩基との反応の温度は、通常通常60℃以下が好ましく、より好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下とするのがよい。
【0023】
また、チタン化合物と過酸化水素を混合したものを加水分解することにより、焼成後、分散性のよい酸化チタン光触媒体となりうる。チタン化合物と混合される過酸化水素の量は、チタン化合物のチタンに対して通常0.1モル倍以上が好ましく、より好ましくは、0.5〜5モル倍、更に好ましくは1〜2倍である。過酸化水素の量は多いほど、最終的に得られる酸化チタンの粒子径が小さくなるので好ましく、一方、過酸化水素があまり多くなると、得られる酸化チタンの光触媒活性が低下する。チタン化合物と過酸化水素との混合温度は、通常60℃以下が好ましく、より好ましくは55℃以下、更に好ましくは50℃以下とするのがよい。
【0024】
(3)分離工程
本発明は、前記加水分解工程により得られる加水分解物(前駆体スラリー)を分離する工程を含む。分離する工程としては、例えば、加圧濾過、減圧濾過、遠心分離、デカンテーションなどで行うことができる。また、得られた固形分を洗浄する操作をあわせて行うことが好ましい。
【0025】
(4)乾燥工程
前記分離工程により得られた分離残渣を乾燥する工程を含むことができる。乾燥方法としては、特に限定されることなく、通常実施される方法を使用することができる。
【0026】
(5)焼成工程
本発明は、酸化チタン前駆体を焼成する工程を含む。ここでの酸化チタン前駆体とは、酸素含有チタン化合物(非晶質を含む)であって、250〜500℃の空気中で焼成したときに、組成式TiO2で示される酸化チタン光触媒体となり得る化合物、具体的には、例えば、チタン水酸化物、チタン過酸化物のような酸素含有無機チタン化合物である。なお、最終的に得られる酸化チタンは、高比表面積アナターゼ型酸化チタンであることが好ましい。高比表面積であれば、それだけ単位重量あたりの活性点が多く、高性能な光触媒となりうる。更に、高比表面積アナターゼ型酸化チタンであるということは、一次粒子の小さなアナターゼ型酸化チタンである。すなわち、微粒子酸化チタンである。
【0027】
チタン水酸化物の具体例としては、Ti(OH)2、Ti(OH)3、Ti(OH)4、TiO(OH)2で示されるものが挙げられる。また、チタン過酸化物としては、水酸化チタンのTi−O−H結合の一部がTi−O−O結合に代わっているもの、酸化チタンのTi−O結合の一部がTi−O−O結合に代わっているもの、またはこれらの混合物、例えば、式(1)で示されるものが挙げられる。
Ti(O2xy(OH)z (1)
[式(1)中、0<x<4、0≦y<2、0≦z<4。]
酸化チタン前駆体は、これらのうち1種であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0028】
焼成は、酸化チタン前駆体粉末の層高を8mm以下にして行うことが好ましく、より好ましくは5mm以下である。また、水蒸気分圧は15kPa以下の雰囲気中が好ましく、より好ましくは10kPa以下である。なお、焼成設備として、水蒸気分圧が15kPa以下に調節できるのであれば、特に限定されず、例えば、管状型電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉のような乾燥機を用いて、機内からガスを排出したり、またはガスを導入したりして行うことができる。
【0029】
炉内に導入するガスは、水蒸気分圧を調節したものを用いることが好ましく、例えば、空気をコンプレッサにより圧縮して、空気に含まれる水分を凝縮させ、この凝縮した水分を分離した後、減圧して得られる乾燥空気、空気を除湿機により水分を除去して得られる乾燥空気、または液体窒素を気化させた乾燥窒素なども好適に用いられる。また、水分を含まないものであれば、空気、ヘリウム、窒素などを充填した市販のボンベガスを用いることもできる。これら水蒸気分圧を調節したガスに適宜、水蒸気を添加し、所定の水蒸気分圧として炉内に導入することができる。
【0030】
また、焼成は酸化チタン前駆体粉末の層高を8mm以下で、水蒸気分圧は15kPa以下であれば、減圧下で行ってもよい。この際用いるガスとしては、空気、水素、ヘリウム、窒素、アルゴンなどを用いて減圧することができ、この際に用いる焼成炉は回分式、連続式のいずれの方式であってもよい。
【0031】
酸化チタン前駆体の焼成は、酸素含有チタン化合物をアナターゼ型酸化チタンに転移させるのに必要な温度で行うことが好ましく、このときの温度は、通常250〜500℃が好ましく、より好ましくは310〜500℃である。また、焼成時間は、用いる焼成炉の種類、焼成温度により異なるが、通常10分以上が好ましく、より好ましくは20分以上、3時間以内である。上記範囲内にあると、高比表面積かつ高活性な酸化チタンを得ることができる。なお、250℃未満であると、焼成が不十分となり、好ましくない。一方、500℃を越えて加熱したり、500℃で3時間を超えて加熱したりすると、アナターゼ型結晶が生じ難くなって好ましくない。
【0032】
焼成して得られるアナターゼ型酸化チタンには、必要に応じて、酸性金属酸化物または塩基性金属化合物を表面被覆してもよい。表面被覆する酸性金属酸化物は、ブレンステッド酸点、ルイス酸点またはそれらの両方を有するもののいずれであってもよく、例えば、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズのような金属の1元系酸化物、珪素−亜鉛、珪素−ジルコニウム、珪素−マグネシウム、珪素−カルシウム、珪素−ガリウム、珪素−アルミニウム、珪素−ランタン、珪素−チタン、チタン−亜鉛、チタン−銅、チタン−亜鉛、チタン−アルミニウム、チタン−ジルコニウム、チタン−鉛、チタン−ビスマス、チタン−鉄、亜鉛−マグネシウム、亜鉛−アルミニウム、亜鉛−ジルコニウム、亜鉛−鉛、亜鉛−アンチモンのような2種金属の複合酸化物である。また、酸点をもつ金属酸化物であれば3種以上の金属の複合酸化物で表面被覆してもよい。これらの金属酸化物の中でも、特に、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、スズのような金属の1元系酸化物が好ましい。
【0033】
表面被覆する塩基性金属化合物は、ブレンステッド塩基点、ルイス塩基点またはそれら両方を有するもののいずれであってもよく、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ランタン、水酸化セリウム、水酸化亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸亜鉛である。
【0034】
また、酸化チタンには、上述した酸性金属酸化物と塩基性金属化合物の両方を表面被覆してもよい。さらに、酸性金属酸化物で表面被覆したものと塩基性金属化合物で表面被覆したものを混合して用いてもよい。表面被覆する酸性金属酸化物または塩基性金属化合物の量は、基材である酸化チタンのチタンに対して金属元素換算で30モル%以下、好ましくは15モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。30モル%を超えると、被覆した金属酸化物が酸化チタンの活性点を覆ってしまい、光触媒活性が低下してしまい、好ましくない。また本製造方法で得られた酸化チタンは、BET比表面積が60m/g以上であることが好ましく、より好ましくは80m/g以上である。
【0035】
また、本製造法で得られる酸化チタンは、BET比表面積が70m2/g以上であることが好ましい。BET比表面積が小さいことは、一次粒子径が大きいことを示す。逆に、BET比表面積が大きいことは、一次粒子径が小さいことを示し、高活性な酸化チタン(光触媒)であると同時に、微細で分散性に優れる粒子状の酸化チタン(光触媒)となり得る。
【0036】
本発明で得られる微粒子酸化チタンは、高分子樹脂、結合剤、成形助剤、帯電防止剤、吸着剤等と混合し、成形してペレット、繊維またはシートとすることもできるが、液体中での分散性に優れることから、溶媒と混合して得られるコーティング剤として用いることが推奨される。
【0037】
本実施形態の方法により得られる高比表面酸化チタン又はこの酸化チタンを用いて調製したコーティング液から形成される膜は、可視光線(概ね波長430〜600nmの光)の照射に対して、高い光触媒活性を発現する。可視光線の照射は、通常、蛍光灯、ハロゲンランプ、ブラックライト、キセノンランプ、ネオンサイン、LED、水銀灯またはナトリウムランプ等で行うことができ、また太陽光線を用いることもできる。このようにして得られた高比表面積酸化チタン又はこの酸化チタンを用いて調製したコーティング液から形成される膜は、室外で使用される物のみならず、室内で使用される内装その他室内配置物にも広く応用できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、酸化チタンの物性測定は以下の方法で行った。
【0039】
結晶性:X線回折装置(商品名“RINT 2200HF/PCL”、理学電機社製)を用いて、X線管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:35mA、発散スリット:1度、散乱スリット:1度、受光スリット:0.300mm、サンプリング幅:0.020度、走査速度:2.00度/分の条件でX線回折スペクトルを測定し、このスペクトルから結晶性を調べた。
【0040】
BET比表面積(m2/g):自動比表面積測定装置(商品名“モノソーブ”、ユアサ アイオニクス社製)を用いて、窒素吸着法により求めた。このとき、脱離は真空下、200℃で30分間保持する条件で行い、吸着は77Kの温度条件で行った。
【0041】
<実施例1>
〔前駆体合成〕
オキシ硫酸チタン4920gをイオン交換水3280gに溶解させ、オキシ硫酸チタン水溶液を調製した。冷却下、このオキシ硫酸チタン水溶液に、31%過酸化水素水2236gを添加した。
【0042】
pH電極と、このpH電極に接続され、25重量%アンモニア水を供給して、pHを一定に調整する機構を有するpHコントローラーとを備えた反応容器に、イオン交換水2410g及び13.8重量%酸化チタンゾル(分散粒径60nm)590gを入れた。この時添加した酸化チタンゾルは、酸化チタン換算で、合成して得られる酸化チタンに対して5重量%であった。pHコントローラーのpH設定を4とした。また、アンモニア水を供給するときの速度は、50.1ml/分に設定した。この反応容器では、容器内の液のpHが設定値より低くなると、アンモニア水が供給されはじめ、pHが設定値になるまで前記速度にて連続供給される。この反応容器に、内容物を145rpmで攪拌しながら、上記で得られたオキシ硫酸チタン含有混合溶液を51.8ml/分で添加し、pHコントローラーにより反応容器に供給されるアンモニア水と反応させて、生成物を得た。このときの反応温度は、ほぼ30℃一定であった。得られた生成物を攪拌しながら1時間保持し、ついで25重量%アンモニア水を供給して、スラリーを得た。反応容器に供給されたアンモニア水の合計量は5550gであった。このスラリーを濾過し、そのまま引き続いてリンス洗浄し、固形物(ケーキ)を得た。これを乾燥して、酸化チタン前駆体粉末を得た。
【0043】
〔焼成〕
得られた酸化チタン前駆体粉末を、前駆体粉末層高6mm、370℃の乾燥空気雰囲気下で1時間焼成を行った後、室温まで冷却して、粒子状酸化チタン(光触媒)を得た。この酸化チタンは、主結晶相がアナターゼであり、BET比表面積は145m2 /gであった。
【0044】
<比較例1>
〔前駆体合成〕
実施例1において、反応容器に酸化チタンゾルを添加せずに、イオン交換水添加量を3000gとした以外は、実施例1と同様の方法で前駆体を合成した。
【0045】
〔焼成〕
実施例1で得られた前駆体粉末を前駆体粉末層高6mm、370℃乾燥空気雰囲気下で1時間焼成を行った後、室温まで冷却して、粒子状酸化チタン(光触媒)を得た。この酸化チタンは、主結晶相がアナターゼであり、BET比表面積は45m2 /gであった。
【0046】
【表1】

【0047】
以上のように、実施例では、BET比表面積は145m2 /gであり、BET比表面積が大きいため、酸化チタン(光触媒)の一次粒子径が小さいことがわかり、高活性な光触媒であると同時に、微細で分散性に優れる粒子状の酸化チタン(光触媒)であることが確認できた。一方、比較例はBET比表面積が小さく、一次粒子径が大きいことがわかり、光触媒活性が実施例1より劣り、分散性にも問題を生じるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解する工程と、
前記加水分解工程により得られる加水分解物を分離する工程と、前記分離工程により得られた分離残渣を乾燥する工程と、前記乾燥残渣を焼成する工程とを含む酸化チタンの製造方法において、
前記加水分解工程が、予め水性媒体中にアナターゼ型酸化チタン微粒子を分散された分散液を調製し、前記分散液に、チタン化合物水溶液と塩基を混合・反応させてチタン化合物を加水分解することを特徴とする酸化チタンの製造方法。
【請求項2】
前記アナターゼ型酸化チタン微粒子の平均粒子径が、200nm以下である請求項1記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項3】
前記分散液中のアナターゼ型酸化チタン微粒子の含有量が、チタン化合物(二酸化チタン換算)100重量部に対して1〜20重量部である請求項1又は2記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項4】
前記加水分解する工程が、60℃以下で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項5】
前記チタン化合物水溶液が、過酸化水素を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項6】
前記チタン化合物が、三塩化チタン、四塩化チタン、オキシ硫酸チタン及び硫酸チタンから選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の酸化チタンの製造方法。

【公開番号】特開2009−120422(P2009−120422A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294481(P2007−294481)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】