説明

酸化マグネシウムを製造するための改良された方法

本発明は、マグネシウム塩とアルカリ/石灰との反応によってMgOを製造するための改良された方法を提供する。本発明では、粗製Mg(OH)2を直接的にか焼した後に水で処理することによって、塊を自発的に破砕させてスラリーを産生させると共に、可溶性塩を溶解させる。当該スラリーは、元来のMg(OH)2スラリーに比べて濾過および洗浄が容易であるため、精製操作を迅速化することや新鮮な水を節約することができる。本発明の方法による別の重要な効果は、ドウミキサーやこれに類似する装置を用いて得られる粘着性の反応産物またはドウ状の反応産物であっても、取り扱いが容易なことにある。なお、本発明の方法によってMgOの品質が損なわれることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗製Mg(OH)2から純粋なマグネシア(MgO)を製造することに関する。本発明は、特に、従来実施されていたMg(OH)2の念入りな洗浄をせずに、これに代えて粗製塊を軽度にか焼することで、迅速に濾過できる物質であってMgOの精製が従来よりも容易であるものを得ることによって、こうしたMgOを製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
マグネシアは、種々の産業分野に適用できる重要な化合物である。酸化マグネシウムは、価格が中程度である酸化物のなかでも融点が最も高いことから、耐火レンガやその他の資材の重要な原材料である。酸化マグネシウムは、ZrO2以外では、2000℃以上での長期間の加熱に耐性を有する唯一の材料である。
【0003】
ウルマン百科事典第6版(電子版)によると、“耐火性材料に関する、冶金炉および冶金反応炉内での作業の高温度化や出湯の短縮化に応じて増加してきた要求は、純粋で高密度なマグネシアの焼成物によってのみ充足され得るものである”とある。ここで、“混入物”がMgOと融合して低融点の共晶体(例えば、混入物がCMSである場合は1485℃でありC2Fである場合は1200℃である)を形成するものである場合には、混入が少量であっても不利益が多くなる。高温での機械的特性(例えば、強度や容積の安定性)が低下するからである。このため、良質の焼成物は、高融点ケイ酸塩相(C2Sのようなもの)の含有量が少なく、B23の含有量が少なく、ペリクレース同士が高度に直接的に接触した状態(ケイ酸塩相の中間体を介さずに接触した状態)にある。
【0004】
マグネシアのレンガは、高い蓄熱容量および高い熱伝導性を有する。こうしたレンガは、オフピーク蓄熱型ヒーターで使用されている。加熱素子によって発生した熱は、マグネシアのレンガに移動してレンガの温度を上昇させる。レンガの熱伝導性はペリクレースの含有量が多く気孔率が少ないほど増加する。レンガの比熱は、SiO2やAl23を含有しても少ししか低下しないが、CaO、Cr23およびFe23を含有すると顕著に低下する。レンガは、遊離CaOを含有しないこと(水和反応が生じる危険性があるため)、または態が異なる結晶相を有しないことが望ましい。
【0005】
苛性マグネシアは、これまではもっぱらイオン含有量が少ない潜晶質のマグネサイトから製造されていたが、現在はあらゆるタイプのマグネサイトやMg(OH)2からも得られるようになっている。苛性マグネシアにおけるMgO含有量は、約65〜99質量%の範囲にあり、99.9%に届くことすらある。マグネシアは、破砕してから使用されることが多い。反応性が極度に高い苛性マグネシアは、最大で160m2/gの表面積を有し得る。こうした産物は、燃焼温度に応じて、軽焼物(870〜1000℃)や重焼物(1550〜1650℃)と呼ばれている。軽焼苛性マグネシアは、冷水中で水和物になるし、希酸に溶解し得る。軽焼苛性マグネシアは、0.3〜0.5g/cm3のルーズ嵩密度と、10〜65m2/gの比表面積(BET)とを有する。重焼苛性マグネシアは、1.2g/cm3のルーズ嵩密度(嵩密度2g/cm3)を有する。
【0006】
MgOを加圧水和させることでMg(OH)2を形成できる。MgOは下記の式1に示す反応によって無水MgCl2に変換することもでき、当該無水MgCl2は下記の式2のように電気分解してMgとCl2に変換することができる(Electrolytic Production of Magnesium、Kh. L. Strelets著、Keter Publishing House JerusalemLtd.、1977年、第28頁)。
〔化1〕
MgO+Cl2+CO → MgCl2+CO2+70.8cal/モル (式1)
〔化2〕
MgCl2 → Mg+Cl2 (式2)
【0007】
これに代えて、MgOを熱還元してMgを得ることもできる。
【0008】
ウルマン百科事典によると、マグネサイト(MgCO3)を分解することによってマグネシアを製造できるとある。この方法の最大の欠点は、マグネサイト鉱石の不純物レベルが高いことにある。MgOの含有量が多く、CaO:SiO2質量比が2〜3であり、Fe23やAl23の含有量が少ない状態にあるマグネシア産物、とりわけ耐火性物品に適用するもの、を得るためには、最高品質のマグネサイトが必要になる。マグネシアの焼成物の特性は、低融点の鉱物が混入すると悪化する。
【0009】
ナグプール市・インド鉱山局が出版した“Magnesite-A market survey”という題名の出版物と、ナグプール市・インド鉱山局が出版したインド鉱物年鑑・第2巻・第698〜699頁の“Magnesite”とによると、マグネシアは土壌中のマグネサイトがか焼されることで形成される、とある。当該プロセスの欠点は、マグネサイト鉱石に含まれる、シリカ、酸化鉄、アルミナおよび石灰といった、シリケート、カルボネートおよび酸化物の量が、まちまちであることにある。このため、か焼の前段階で、破砕、サイズ分離、重液分離、泡沫浮遊選鉱といった種々の選鉱方法によって、採掘鉱石における石灰やシリカの含有量を減らすようにする。ここで、鉄分の含有量は磁気分離によって減少させ得るが、これは鉄分が炭酸鉄ではなく離散性の強磁性鉱物の状態にある場合に効果的であるものに過ぎない。したがって、この方法で高純度のマグネシアを製造することは難しい。
【0010】
ガス懸濁液キルン炉内で低マグネサイト鉱石から軽焼苛性マグネシアを製造する方法であるSulmag II法(W.S. Ainscow著、"Aufbereitung von Magnesit zu hochwertiger Sintermagnesia"、TIZ 110 (1986年)、no. 6、第363〜368頁。Sulmag II the Sinter Magnesite Process、Sulzer Brothers Ltd.、Winterthur、Switzerland)について言及する。この方法では、NH4Cl溶液を再利用した選択的抽出によって溶存塩化マグネシウムを取得し(式3、4)、不溶性の不純物を濾過によって全て取り除く。そして、針状のネスケホン石(MgCO3・3H2O)を反応炉内で析出させ、これを濾過する(式5)。ネスケホン石を加熱することで、高比表面積を有する苛性マグネシアが得られる。
〔化3〕
MgCO3 → MgO+CO2 (式3)
〔化4〕
2NH4Cl+MgO+H2O+混入物 → 2NH4OH+MgCl2+尾鉱 (式4)
〔化5〕
MgCl2+(NH4)2CO3+3H2O → MgCO3・3H2O↓+2NH4Cl (式5)
【0011】
上記の方法には利点は多数あるものの、マグネシアの用途の大部分を占める耐火物用途には不適と考えられている嵩密度の非常に低い産物が得られることになる。
【0012】
熱加水分解法についても言及する。まず、MgCl2に富む塩水(brine)を浄化して臭化物およびボロン痕を取り除いた後、スチールパイプを介して反応炉のスプレーノズルに送り込む。そして、外部から断熱された状態にある約600℃の円筒状の反応炉内に噴霧する。噴霧された塩水の飛沫から水が蒸発することで有孔の塩化物の外殻が形成されることになり、当該外殻が蒸気と反応することでMgOおよびHClが形成される。得られた粗製産物を水洗し撹拌槽中で水和させた後、濃縮槽中で濃縮した。得られたスラリーはそのままでは濾過が困難であるため、二段階式真空ドラムフィルターにて洗浄および脱水した。か焼産物は、通常、99.5質量%以上のMgO、1質量%未満のCaO、0.05質量%以下のSiO2、0.05質量%以下のFe23、0.005質量%以下のAl23、および0.01%以下のB23を含有しており;比表面積が2〜50m2/gであり、嵩密度のばらつきが0.8〜0.2g/cm3の範囲にある。この方法の主な欠点は、スプレーによるか焼が、エネルギーを大量に消費するものであるし、ノズルが詰まることによって問題が生じ得ることにある。この方法の別の欠点は、最初のか焼後に得たMgOが“濾過困難”とされるスラリーになることで、得られるはずの利益が大幅に減少することにある。
【0013】
Grillらが1981年3月10日にした“Process for the Recovery of Magnesium Oxide of high Purity”という題名の米国特許第4,255,399号では、事前に精製しておいた塩化マグネシウムの塩水を熱分解することによって酸化マグネシウムを得ている。この方法では、高濃度の塩化マグネシウムを、熱反応炉内で分解し、高温ガスを用いて酸化マグネシウムおよび塩酸に変換している。この方法における問題点も、上述したものと同様である。
【0014】
2004年8月17日付けのVohraらがした米国特許第6,776,972号には、石灰石と反応させてCaCl2を調製するために、スプレー熱分解で生じたHClガスを使用すること、KClを産生し得るカーナライトの複塩を簡便に産生させる目的で、当該CaCl2を、海水/地下水の苦汁(bittern)を脱硫酸化する(desulphating)ために使用できること、が記述されている。しかし、当該方法においても、スプレーによるか焼にともなう問題がある。
【0015】
Li, Keminと Zhang, LiとWujiyan Gongyeによる“Preparation of magnesium hydroxide flame retardant by ammonia method”(第33(2)巻・第14-16頁(中国語文献)2001年、Wujiyan Gongye Bianjib; CA 135:115882; CA Section: 78 (Inorganic Chemicals and Reactions))では、K2SO4を再利用して苦汁をNH4OHと反応させ、水熱処理によってMg(OH)2を取得し、これを表面処理し、洗浄し、乾燥させ、破砕することによって、難燃剤が調製されている。難燃剤中のMg(OH)2の含有量は97%である。なお、未洗浄の粗製Mg(OH)2からMgOを製造するプロセスについては言及されていない。
【0016】
Krupp, Ralf(ドイツ国)による“Recovery of magnesium hydroxide, gypsum and other products from natural and technical brines, in particular from final lyes of potash works”(Ger. Offen. DE 10154004 A1 15 May 2003, 9pp. (ドイツ語文献); CA 138:371080)では、MgSO4およびMgCl2を含有する塩水からMg(OH)2および石膏(gypsum)を回収し、NH3またはNH4OHを用いてMgイオンを析出させている。そして、CaOを添加することによってガス状のNH3を回収し、析出ステップで再利用している。この方法では、Fe、Mn、AlおよびCaといった不純物が混入しない状態でMg(OH)2を生産することが可能になるとある。ただし、明確には記述されていないものの、純粋なMg(OH)2を調製するために、固形物の状態で洗浄することによって、付着しているNH4ClやMgCl2等を除去していることは間違いない。
【0017】
Wang, FuwenとZhang, JunとLiu, JianhuaとDong, Yijun(Shandong Haihua Group Corp., Ltd.、中華人民共和国)による“One-step process for manufacture of magnesium hydroxide”(Faming Zhuanli Shenqing Gongkai Shuomingshu CN 1332117 A 23 Jan 2002, 7pp. (中国語文献)、中華人民共和国発行)について言及する。この文献では、MgCl2および水酸化アンモニウムを含有する苦汁[モル比:MgCl2/アンモニア=1/(1.3〜2.0)]を45〜90℃で5〜30分間反応させ、濾過し、洗浄し、乾燥させ、粉砕することによって、水酸化マグネシウムの固形物を得ることが記述されている。なお、Mg(OH)2を精製する際の困難さ、さらには安価である石灰を使用する場合に比べてアンモニアを使用する場合の欠点については言及されていない。
【0018】
海水には、マグネシウムが含有されているし、実質的にシリカの混入がないという固有の利点がある。このため、海洋起源の海水/塩水/苦汁を主に用いることで、高純度のMg(OH)2を製造することができる。
【0019】
1979年に出版されたthe Proceedings of the Fifth International Symposium on Salt - Northern Ohio Geological Societyの第269〜279頁に掲載のJ.A. Fernandez-Lozanoによる“Utilization of Seawater Brines for the Production of High Purity Magnesium Oxide and Magnesium Hydroxide”という題名の論文では、MgCl2に富む海水の塩水とアンモニアとの反応によってMg(OH)2を入手でき、当該水酸化物を洗浄することによって高純度化することができ、その結果、高純度のMgOが得られることが著者によって述べられている。なお、Mg(OH)2を精製する際の困難さ、さらには安価である石灰の使用に比べたアンモニアの使用による欠点については言及されていない。
【0020】
ここで、か焼によるMg(OH)2からのMgOの製造(式6)について言及する。
〔化6〕
Mg(OH)2 → MgO+H2O (式6)
【0021】
カークオスマー工業化学百科事典・第4版・第15巻・第690頁によると、“マグネシウム塩溶液から水酸化マグネシウムを析出させ、これを回収するには、強塩基を添加する。一般に使用される強塩基としては、石灰(CaO)またはドライム(dolime)(CaO−MgO)に由来する水酸化カルシウムが挙げられる”とある。CaOの含有量の少ない産物を得ようとする場合は、水酸化ナトリウムを沈殿剤として使用する。
【0022】
“Industrial and Engineering Chemistry”の第41(12)巻の第2814-2817頁(1949年)に掲載された、Robert L. EvansとHillary W. St. Clairによる“Carbonation of Aqueous Suspensions containing Magnesium Oxides or Hydroxides”という題名の論文には、改良型パティソン法(水酸化マグネシウムを炭酸化して重炭酸マグネシウムを得る方法)が記述されている。この方法では、まず、水酸化マグネシウムの懸濁液を炭酸化することによって、重炭酸マグネシウムの準安定溶液を形成する。次に、不溶性の不純物を取り除いた後、当該溶液を加熱またはエアレーションして脱炭酸化することによって、炭酸マグネシウムを三水和物、五水和物または塩基性炭酸塩の状態で析出させる。そして、溶液を濾過して析出物を回収し、当該析出物を熱分解することによって酸化マグネシウムに変換している。この方法の主な欠点は、温度および二酸化炭素の分圧に非常に影響されることにある。重炭酸マグネシウムの準安定溶液は、温度が常温を上回るほど安定性が顕著に低下する。そして、この方法で得られるMgOは、嵩密度が低すぎて耐火物用途に不適である。
【0023】
1949年10月25日に地質学会のアパートで開催された化学工業グループの会合にてH. W. ThorpとW. C. Gilpinが読んだ論文“Chemical Engineering Problems in the Sea Water Magnesia Process”によると、海水からの水酸化マグネシウムの回収が困難である理由は、水酸化マグネシウムを、迅速に沈殿し容易に脱水できる沈殿物が生じる状態で析出させることが難しいことにある。析出物の洗浄に使用する水分量は別として、1トンのマグネシアを分離するためには300トンの水が必要になる。混入物の量を確実に最小にするには石灰を使用する必要がある;すなわち、水酸化マグネシウムを除去する前に少量の石灰を用いて海水を処理することによって、重炭酸イオンを炭酸カルシウムの状態で析出させる必要がある。
【0024】
海水や塩水からのMgOの製造についてウルマン百科事典に記述があり、1トンのMgOを製造するには、海水は470m3、現実的には600m3、必要になるとある。この方法は、水酸化マグネシウム(水への溶解度0.0009質量%)を、水酸化カルシウム(溶解度0.185質量%)の添加によって析出させることに基づくものである。
〔化7〕
Mg2++2Cl-+Ca(OH)2 → Mg(OH)2↓+Ca2++2Cl-
【0025】
この方法の主な欠点は、Mg(OH)2を洗浄するために、そして乳状石灰を産生させるために、新鮮な水(1トンのMgOあたり40m3を超えるもの)の供給が必要になることにある。そして、利用可能な高純度の石灰石またはドロマイトの鉱床が身近になければならない。さらに、これらをか焼および消和して沈殿剤であるCa(OH)2を産生させることによって、不溶性の炭酸塩、硫酸塩等を形成する成分の含有量を最小限に抑える必要がある。二酸化炭素を除去する際にも、新鮮な水が必要になる。こうした特殊な処理をしなければ、海水から得た苛性および焼成マグネシアには、通常、約0.2%のB23と、石灰石に由来する少量のCaO、SiO2、Al23およびFe23または海水中の不要物とが含まれることになる。5〜12%の過剰な石灰を析出(過剰石灰漬)に用いることで、マグネシアのB23含有量は、通常、0.05%程度にまで低下する。なお、石灰を過剰に使用すると、pHが12に増加し、ボロンの吸収が最小限に抑えられる。こうした明らかな欠点の存在をさておいたとしても、Mg(OH)2の洗浄が困難であり、過剰石灰漬に起因して問題が複雑化することについて、まったく言及がない。
【0026】
1977年7月6日刊行の“Chemistry and Industry”の第567〜572頁に掲載されたW. C. GilpinとN. Heasmanによる論文“Recovery of Magnesium Compounds from Sea Water”には、海水からマグネシアを回収する方法と、この方法における問題点と、が概説されている。この方法の欠点は、上述したものと同様である。
【0027】
従来の技術におけるMgOの製造ではMg(OH)2が中間体として用いられてきたことは明らかであり、精製によって純粋なMg(OH)2を得てから、これをか焼することによってMgOが得られていた。ところが、析出反応によって得られるMg(OH)2は、残念ながらそもそも粘着質なものであるため濾過が難しく、高純度に精製することがかなり難しい。
【発明の開示】
【0028】
発明の目的
本発明の主な目的は、粗製水酸化マグネシウムからマグネシアを製造するための改良された方法を提供することにある。この方法は、濾過済みケーキまたは未濾過のペーストの状態にある粗製水酸化マグネシウムを、軽度にか焼することによってMgOに変換した後、得られた塊を洗浄および濾過することによって、付着している不純物を除去するものであり、析出した水酸化マグネシウムを洗浄して不純物を含有しない状態にしてからか焼する従来の方法に比べて、ずっと簡便である。
【0029】
本発明の別の目的は、粗製水酸化マグネシウムを、濾過可能なスラリーの状態で産生させることにある。
【0030】
本発明の別の目的は、ペースト状態または固体状のドウ状態にあり、濾過せずにそのまま乾燥および軽微なか焼をすることが可能な水酸化マグネシウムを、得ることにある。
【0031】
本発明の別の目的は、MgCl2とアルカリとを、Mg(OH)2をシードとして用いてまたはMg(OH)2を用いないで反応させることによって、こうした粗製水酸化マグネシウムを産生させることにある。
【0032】
本発明の別の目的は、当該反応を、室温で、または反応の際に塊が適切に混合されることを確実にするために昇温した状態で、進行させることにある。
【0033】
本発明の別の目的は、公知の反応装置に代えてシグマミキサーまたはドウ混練機を用いることによって、MgCl2とアルカリとの反応を半固体状態の塊中で促進させることにある。
【0034】
本発明の別の目的は、上記の塊の濾過性を、600〜900℃で軽度にか焼して改善することにある。
【0035】
本発明の別の目的は、軽度か焼の温度領域における塩化カルシウムの相対的な熱安定性を利用して、粗製Mg(OH)2の軽度か焼を通じて、MgOとCaCl2との混合物を得ることにある。
【0036】
本発明の別の目的は、軽度か焼の過程において、付着しているMgCl2をMgOおよび気体HClへと同時に変換することにある。
【0037】
本発明の別の目的は、軽度にか焼された状態にある塊を必要量の水で処理し、塊を自発的に破砕させると共に可溶性塩を溶解させることによって、容易に濾過できるスラリーを得ることにある。
【0038】
本発明の別の目的は、軽度にか焼された状態にある塊を水で処理する間の温度上昇を50℃以下に確実に維持することによって、MgOの再水和を最小限に抑えることにある。
【0039】
本発明の別の目的は、ある程度の再水和が生じたとしても、塊の濾過性が、析出させたMg(OH)2よりも優れた状態のままにあることを証明することにある。
【0040】
本発明の別の目的は、上記のMgOが不可逆的に塩を吸蔵している如何なる状態にもないことを、MgOを洗浄することでMgOが塩を含有しない状態に容易になり得ることをもって証明することにある。
【0041】
本発明の別の目的は、上記のMgOを洗浄して塩を含有しない状態にし、適切な添加物を含有する水でさらに処理することによって、MgO中のボロン不純物を減少させることにある。
【0042】
本発明の別の目的は、粗製Mg(OH)2をまったく洗浄しないこと、または軽度にか焼された状態にある粗製MgOをごく簡単に洗浄することによって、律速操作、すなわちMg(OH)2の洗浄操作、を高速化させ、MgO製造におけるあい路を打開することにある。
【0043】
本発明の別の目的は、新鮮な水の使用量を削減することにある。
【0044】
本発明の別の目的は、石灰を用いて析出反応を進行させる場合には、濃縮液状のCaCl2を得ることにある。
【0045】
本発明の別の目的は、上記のCaCl2濃縮液を用いて苦汁を脱硫酸化することによって、MgCl2原材料が硫酸塩を確実に含有しない状態にすることにある。
【0046】
本発明の別の目的は、精製済みのMgOを、900〜1100℃で再びか焼することによってか焼済みの苛性MgOを産生させること、またはもっと高温で再びか焼することによって死焼または焼成状態にあるマグネシアを産生させることにある。
【0047】
本発明のまた別の目的は、軽度か焼済みのMgOを、洗浄し、濾過し、乾燥させた直後の状態で、例えば、焼成の前に団鉱を調製すること、乳状マグネシアを調製することといった、MgOの加水分解(洗浄時に生じることがある)をある程度は許容し得る用途に使用することにある。
【0048】
本発明のまた別の目的は、純度を損なわずにMgOを無理なく得ることにある。
【0049】
発明の要旨
本発明の目的は、Mg(OH)2からMgOを製造するための改良された方法であって、粗製Mg(OH)2の洗浄に代えて塊を軽度にか焼することで(ただし、特殊な用途では濾過する必要はある)、水酸化物をより簡便に洗浄可能であり濾過可能である酸化物へと変換することによって、従来の方法における主要な障害、すなわち不純物を含有しないMg(OH)2の精製に長時間を要すること、を克服し、これによって新鮮な水の使用量を大幅に削減でき、しかも洗浄操作を迅速化できる方法を提供することにある。軽度にか焼することで、付着しているMgCl2をMgOに変換することもできる。従来の方法においては大量の水を消費してMg(OH)2を念入りに前精製処理することで実現されていたレベルのものと同様の純度のMgOが、本発明によって得られることに基づき、MgOがNaClやCaCl2といった残留塩がMgO中に不可逆的に吸蔵された状態にはなく、こうした塩を水で容易に洗浄し除去できる状態にあることも実証される。適切な添加物を用いてさらなる洗浄を実施して、MgO中のボロン不純物を減少させることもできる。本発明によれば、CaCl2を高濃度にすることで、脱硫酸化後の蒸発に要する手間を削減できる費用対効果に優れた脱硫酸化処理が可能になる。洗浄したMgOを再びか焼すると耐火性材料が得られる。必要があれば、洗浄したMgOをそのまま使用することによって団鉱(焼成すると耐火性材料になる)を調製してもよい。部分的に加水分解された状態にあるMgOを使用して、従来の方法で実施されている加圧式加水分解法によってMg(OH)2を調製することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
すなわち、本発明は、MgOを製造するための改良された方法であって、
(i) CaCl2を用いて塩水(brine)または苦汁(bittern)を脱硫酸化する(desulphating)ステップ(i)と、
(ii) 石膏(gypsum)を分離した後の清澄済みの塩水/苦汁を蒸発させることによって、塩化ナトリウム(common salt)およびカーナライト(KCl・MgCl2・6H2O)を分離するステップ(ii)と、
(iii) ステップ(ii)によって得た、MgCl2に富むと共に他の塩を含有しない最終苦汁(end bittern)を回収するステップ(iii)と、
(iv) ステップ(iii)の最終苦汁をさらに蒸発させることによって、結晶質のMgCl2・6H2Oを得るステップ(iv)と、
(v) MgCl2・6H2OをMg(OH)2シードと混合した後、アルカリまたは消石灰/石灰スラリーで処理することによって、粗製Mg(OH)2ペースト/スラリーを得るステップ(v)と、
(vi) 得られたペースト/スラリーを濾過することによって粗製Mg(OH)2および塩化カルシウムを得る、または粗製Mg(OH)2ペーストを濾過せずにそのまま使用することにするステップ(vi)と、
(vii) 粗製Mg(OH)2ペーストを乾燥させた後、か焼することによって、Mg(OH)2をMgOに変換し、付着しているMgCl2をMgOおよびHClガスへと変換するステップ(vii)と、
(viii) ステップ(vii)で得たか焼済みMgO塊を水で処理することによって、当該塊を破砕し、塩化カルシウムおよび他の可溶性塩を水に溶解させてスラリーを得るステップ(viii)と、
(ix) スラリーを濾過した後、残留物を水で洗浄することによって、当該残留物を、不純物を含有しない状態にするステップ(ix)と、
(x) 残留物である主にMgOを含有するウェットケーキを乾燥させ、再びか焼することによって、所望の高純度なMgOを得るステップ(x)と、
(xi) ステップ(v)で石灰を使用する場合、ステップ(vi)およびステップ(ix)で得たCaCl2溶液である濾液を、ステップ(i)における塩水または苦汁の脱硫酸化に使用するステップ(xi)と、
を含む、方法を提供する。
【0051】
本発明の実施形態の一例は、ステップ(i)で使用する前記苦汁が、大海の塩水(ocean brine)、海の塩水(sea brine)、地下の塩水(sub-soil brine)または湖の塩水(lake brine)から得たものである。
【0052】
本発明の実施形態の別例は、硫酸塩を含有した状態にありステップ(i)で使用する苦汁を、29〜32oBe’の密度範囲に脱硫酸化するものである。
【0053】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(ii)で得たカーナライト(KCl・MgCl2・6H2O)が、太陽蒸発または強制蒸発によって32〜36oBe’の範囲に結晶化させたものであり、ステップ(iii)で得た最終苦汁が、35.5〜36.0oBe’の密度を有し、450〜460gL-1のMgCl2と、5〜10gL-1のNaClと、5〜10gL-1のKClと、5〜15gL-1のCaと、0〜5gL-1の硫酸塩と、6〜7gL-1のBr-と、0.02〜0.04%のB23とを含有した状態にある。
【0054】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(iii)で得た最終苦汁を、そのまま用いる、または好ましくは臭素を回収すると共に不純物Br-を減少させ脱臭素化済みの最終苦汁における不純物Br-量を0.5gL-1未満にするために脱臭素化するものである。
【0055】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(iii)で得た最終苦汁を、初期状態のままで、好ましくは脱臭素化した状態でありステップ(iv)における結晶化処理を経ない状態で、MgOの回収に使用するものである。
【0056】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(iii)で得た最終苦汁を、脱臭素化した状態または脱臭素化していない状態で使用し、ステップ(iv)の手順に従って、当該最終苦汁を、体積が20〜25%にまで減少するように蒸発させることによって、不純物B23を0.020〜0.015%含有し他の塩を含有しない状態にあるMgCl2・6H2Oを、60〜80%の収率で晶出させるものである。
【0057】
本発明の実施形態の別例は、硫酸マグネシウムまたは硝酸マグネシウムといった他の可溶性マグネシウム塩を、マグネシウム源として使用し得るものである。
【0058】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)で使用するアルカリを、石灰、苛性ソーダおよびアンモニアとするものである。
【0059】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)で使用する石灰が、固体またはスラリーの状態にある、生石灰、消石灰およびドライム(dolime)から選ばれるものである。
【0060】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)で使用する消石灰が、生石灰を消和させた後、サイクロニング処理および脱水して、改良型の固体状の消石灰と、生石灰の新鮮なバッチを消和させることに再利用できる石灰水と、を産生させることによって調製されたものである。
【0061】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)で使用するアルカリの化学量論的当量を、0.8〜1.0の範囲にするものである。
【0062】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)で使用するMg(OH)2シードの量が、取得済みのマグネシウム塩1モルあたり0〜10モル%の範囲にある。
【0063】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)における析出反応の温度が、20〜120℃の範囲ある。
【0064】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)における析出反応の反応時間が、均質混合状態で5〜90分間の範囲にある。
【0065】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(vi)で得たペースト塊を乾燥する操作を、公知のオーブン内で70〜120℃の温度で、または天日乾燥法によって実施するものである。
【0066】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(vii)のか焼操作を、乾燥物質の物理的形状に応じて、マッフル炉、ロータリー式か焼炉または垂直式キルン炉において、500〜1000℃、好ましくは600〜900℃、の範囲で実施するものである。
【0067】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(vii)のか焼操作によって、付着しているMgCl2を、気体HClを発生させながらMgOへと、付着しているCaCl2・2H2Oを、放熱を伴って水和するフューズドCaCl2へと変換し、粗製物の塊を粉砕するための、そしてCaCl2を迅速に可溶化するための推進力を得るものである。
【0068】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(viii)で用いる水が、使用済みのバッチから得た再利用洗液を主として含有した状態にあり、当該水の量が、MgO中の全ての可溶性塩を溶解させるために、また、温度を高めてCaCl2のような塩の溶解性を向上させる一方でMgOの加水分解を最小限に抑える目的でスラリーの温度を40〜90℃、好ましくは55〜65℃、の範囲に確実に制御するために、十分な状態にある。
【0069】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(viii)およびステップ(ix)で用いる水が、MgO中のボロン不純物を除去するための添加物を含有した状態にある、または当該添加物を含有していない状態にある。
【0070】
本発明の実施形態の別例は、MgOを軽度にか焼して濾過性を改善することによって、ステップ(ix)の洗浄操作および濾過操作が、Mg(OH)2を洗浄および濾過する場合に比べて2〜5倍に迅速化された状態にある。
【0071】
本発明の実施形態の別例は、MgOを軽度にか焼して濾過性を改善することによって、ステップ(ix)におけるか焼済み塊の精製に必要な水が、Mg(OH)2を精製する場合に比べて1/2〜1/5にまで減少した状態にある。
【0072】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(vii)で得たウェットケーキが、乳状マグネシアを製造するために有用な状態にある。
【0073】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(vii)で得たウェットケーキを、乾燥させることよってMgOを産生させる、または500〜2200℃の温度範囲で再びか焼することによって所望の産物を得るものである。
【0074】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)で用いるアルカリがアンモニアであり、ステップ(vii)のか焼操作で全ての不純物を除去して高純度のMgOを産生させることによって、ステップ(viii)およびステップ(ix)の操作を不要化するものである。
【0075】
本発明の実施形態の別例は、Mg(OH)2を用いてする公知の方法で得られるものと同様の純度を有するMgOが、作業の速度を向上させ、そして新鮮な水の使用量を節約した状態で、その品質を損なわずに得られるものである。
【0076】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(vii)で得た中間産物を水で洗浄し濾過することによって、ステップ(viii)および(ix)のように塩化カルシウムを除去するものである。
【0077】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(viii)および(ix)の洗浄処理前の濾過操作を、ヌッチェフィルターもしくはローターリーディスクフィルターを用いて、またはフィルタープレスによって、簡便に実施するものである。
【0078】
本発明の実施形態の別例は、濾過処理が迅速になるものである。
【0079】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(x)のか焼操作を、マッフル炉において900℃で2〜3時間かけて、好ましくは温度を段階的にランピングして、実施するものである。
【0080】
本発明の実施形態の別例は、MgOの純度が、ステップ(iii)の最終苦汁をそのままの状態で使用して当該MgOを形成した場合は98.0〜98.9%になり、ステップ(iv)の結晶化済みまたは再結晶化済みのMgCl2・6H2Oから当該MgOを形成した場合は99.1〜99.7%になるものである。
【0081】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(iii)の最終苦汁から得たMgOのB23不純物レベルが、0.10〜0.12%であり、ステップ(iv)の結晶化済みMgCl2・6H2Oから得たMgOのB23不純物レベルが、0.060〜0.080%の範囲にあり、再結晶化済みMgCl2・6H2Oから得たMgOのB23不純物レベルが、0.010〜0.015%の範囲にあるものである。
【0082】
本発明の実施形態の別例は、MgO中のB23レベルが、Mg(OH)2前駆体またはMgOそのものを適切に処理することによって、さらに低下できる状態にある。
【0083】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(v)で用いる石灰を、固体もしくは固体懸濁液の状態にある消石灰または生石灰とするものである。
【0084】
本発明の実施形態の別例は、ステップ(vi)および(ix)の溶液が、20〜30%のCaCl2を含有しており、ステップ(i)における脱硫酸化反応にそのまま使用できる状態にある、または当該溶液を濾過することによって清澄してから、および/もしくは酸を添加してMg(OH)2を再び溶解させることによって当該溶液を清澄してから、ステップ(i)を実施する、または苦汁の脱硫酸化が不要である場合は他の用途に当該溶液を使用するものである。
【0085】
本発明の進歩性は、中間体である水酸化マグネシウムを経由して塩化マグネシウムからマグネシアを製造することにおいて、当該水酸化マグネシウムを、塩化マグネシウムとアルカリまたは消石灰とを反応させて得ることにある。本発明では、濾過済みの水酸化マグネシウムケーキまたは未濾過の水酸化マグネシウムペーストを軽度にか焼してMgOに変換した後、水で洗浄し、濾過することで、MgOに付着している不純物を除去できるため、析出させた水酸化マグネシウムをか焼前に洗浄していた従来の方法に比べると、非常に簡便にマグネシアを製造できる。
【0086】
本発明の重要な特徴:
(1)Mg(OH)2からMgOを製造することにおける主要な欠点が、Mg(OH)2のコロイド性状に起因した濾過適性の低さにあること、を認識したこと。こうした濾過性の低さによって、1トンのMgOを得るために必要なMg(OH)2を精製するには時間がかかるし、大量の新鮮な水が必要になる。
【0087】
(2)目的物をMgOに定めるのであれば、Mg(OH)2前駆体を精製する必要はないこと、を認識したこと。
【0088】
(3)純粋なMgOの水性スラリーが、純粋なMg(OH)2の水性スラリーよりも濾過が容易であること、を見出したこと。
【0089】
(4)初期生成混合物の濾過は比較的容易であるものの、Mg(OH)2が塩を含有しなくなるほど濾過に時間がかかるようになること、を見出したこと。
【0090】
(5)MgOの再水和は、高温および高圧では容易に生じるものではあるが、環境条件下においては、ある程度のMg(OH)2は本発明における実施例から明らかなように間違いなく産生するものの、容易に生じるものではないこと、を利用可能な文献に基づいて結論付けたこと。そして、か焼済みのMgO塊から塩を溶出させる際に温度が上昇することを、か焼済みの塊を室温に冷却したり、適切な量の水を添加して温度上昇を最小限に抑えたりすることによって制御できる、と推察したこと。
【0091】
(6)粗製Mg(OH)2を軽度にか焼し、水で処理すると、付着しているMgCl2がMgOに変換されてMgOの産生率が増加するであろうこと、そして、上記の(3)および(5)を論拠にして、MgO中の残留塩(NaOHを用いて析出させた場合はNaClであり、石灰を用いた場合はCaCl2である)が、MgO中に吸蔵されていない限り水に溶解するであろうこと、そして当該塊をもっと容易に濾過できるようになるはずであること、を推察したこと。
【0092】
(7)上記の(6)の粗製MgOが塊状であるとしても、こうした塊は水に接触しさえすれば自発的に破砕されてスラリーを産生するはずだから、破砕処理が一切不要であろうし、MgO中の可溶性物質を洗浄除去するために必要である密接なコンタクト(intimate contact)が生じるであろう、と仮定したこと。
【0093】
(8)上記の(6)および(7)においてした仮定が正しいことを、そして粗製MgO塊は破砕処理が不要でありMg(OH)2前駆体よりも容易に精製できることを、実験により証明したこと。
【0094】
(9)か焼後に精製することの利点を活用して、添加物を含有する洗浄液を使用することによって、可溶性塩だけでなくB23も減少させたこと。
【0095】
(10)本発明を実施することによる最大の利点が、そのまま乾燥させ、か焼することができるドウ状の粗製Mg(OH)2を産生でき、これによって濾過を不要化できると共に水を節約したり処理量を増加させたりできること、を理解したこと。
【0096】
(11)固体状の消石灰(石灰スラリーをヒドロサイクロニング処理し、脱水処理することによって精製する。なお、石灰水を再利用することによって石灰スラリーをさらに調製することで、水を節約することもできる。)と、MgCl2に富む最終苦汁の高温高濃度溶液とを、ジャケット付きシグマミキサー内で混合して反応させ、Mg(OH)2を形成することによって、上記(10)の概念を提供したこと。
【0097】
(12)固体状のMgCl2・6H2Oが苦汁から晶出して純度が増加したとしても、こうした固形物は、シグマミキサー内で溶解し得るものであるし、改良型の脱水済み石灰スラリーと高温条件下で反応させることによって、か焼前にさらに乾燥させることができるドウ状の塊またはそのままの状態でか焼した後に上記の(6)および(7)で概説したような塊の精製が可能であるドウ状の塊が産生し得ること、を認識したこと。
【0098】
(13)上記の概念を、NaOHやドライムといったその他の塩基にまで拡張したこと。
【0099】
(14)Mg(OH)2シードを使用して、析出反応で生じるMg(OH)2の顆粒性を改善したこと。
【0100】
(15)本発明によれば2回目のか焼の際に実質的な強熱減量(LOI)が生じないことを、再か焼実験によって証明したこと、そして、水で精製した後に塊を再びか焼する必要はなく、これに代えて、団鉱の調製に当該塊をそのまま使用でき、その後焼成することによって、MgOの主要な用途である耐火性材料を産生させ得ることを、規定したこと。
【0101】
(16)精製済みの塊をそのまま用いて、従来の加圧水和処理によって乳状マグネシアを製造し得ることについても、推察したこと。
【0102】
(17)安価な石灰を用いてMg(OH)2を析出させることで製法の費用対効果を高めようとする場合、副産物であるCaCl2を用いて苦汁を脱硫酸化(マグネシアへの石膏の混入を防止するために必要な措置)することによって、さらなる費用対効果の向上が可能であること、を認識したこと。
【0103】
(18)Mg(OH)2をか焼して粗製MgOを産出させることで、精製過程において濃縮液状のCaCl2が得られ、脱硫酸化後の蒸発に要する手間を削減できるため、脱硫酸化工程の費用対効果がさらに向上すること、を認識したこと。
【0104】
次の実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0105】
実施例1
比重が1.324でありCa含有量が0.504%(w/v)でありMg含有量が11.50%でありSO4含有量が不検出レベル(ND)でありNa含有量が0.41%でありK含有量が0.4%でありB23含有量が0.032%である1リットル(L)の最終苦汁(4.79モルのMgCl2)を、強制蒸発法によって部分的に蒸発させ、体積を800ミリリットル(mL)に減少させた。得られた塊を、室温に冷却した後、濾過することによって、Ca含有量が0.22%でありMg含有量が11.17%でありB23含有量が0.0147%である619.7gの結晶質の塩化マグネシウムと、比重が1.338でありB23含有量が0.0657%である370mLの濾液とを得た。100gの固形物である産物(0.465モルのMgCl2)をNaOH溶液(50mLの水中に純度98%のNaOH37gを含有するもの)に添加し、撹拌しながら混合した。温度を88℃に上昇させ、半固体状の軟度にした。全部で182.7gある反応塊のうちの147gを、さらなる処理に使用した。147gのうちの100gを、そのままの状態で、600℃でか焼して41.28gのか焼済み塊を得た後、50mLの水で処理した。当該処理によって、塊が破砕され、5分以内に均質なスラリーが自発的に産生した。スラリーを、直径2.5”のブフナー漏斗で濾過した。その後、塊を洗浄および濾過するサイクルを3回(50mLで2回、75mLで1回)実施した。なお、真ん中のサイクルは、ボロン不純物を減少させるために1%の添加物を加えて実施した。全濾液の体積は213mLであり、全てを濾過するために要した時間は25〜30分間であった。得られたウェットケーキ23.64gを110℃のオーブン内で乾燥させて14.15gの乾燥物の塊を取得し、さらにマッフル炉内において900℃でか焼することによって、純度99.43%である9.67gのMgO(すなわち、31.7%の強熱減量である)を産生させた(図1Aの粉末XRDを参照のこと)。残部の反応塊47gを50mLの水中に分散させた状態で濾過した。洗浄および濾過のサイクルを3回(25mLで3回)実施し、全部で137mLの濾液を産生させた。なお、全てを濾過するために要した時間は90〜100分間であった。得られたウェットケーキ19.14gを110℃のオーブン内で乾燥させて6.92gの乾燥物の塊を産生させ、さらにマッフル炉内において900℃でか焼することによって、純度96.15%である4.59gのMgO(強熱減量は33.7%)を産生させた(図1Bの粉末XRDを参照のこと)。当該実施例では、どちらの場合もブフナー漏斗を使用したものの、塊を一度か焼した後に洗浄した場合には、スラリーの濾過に要する時間が1/3〜1/4になることを観察できた。全反応塊の2/3をこうして処理した、すなわち濾床の厚さを2倍にしたと共に洗浄用の水分量を2倍にして処理したことから、濾過処理が実際に迅速化したことはさらに明白である。さらに、当該実施例により、本発明の方法によって高純度のMgOが産生することが分かった。
【0106】
実施例2
純度が99%である25gのAR gradeのMgCl2・6H2O(0.122モル)と、9.5gの消石灰(0.122モル)[Ca(OH)2含有量95%]とを念入りに混合することによって、湿式のペースト状の固形物の塊34gを形成し、さらに100〜110℃で2時間乾燥することによって、28.31gの乾燥物の塊を産生させた。強熱減量は16.73%であった。乾燥物の塊を600℃で2時間かけてか焼し、その後15.87gのか焼済み材料を回収した(強熱減量は43.94%)。か焼済みの塊を3回続けて水で洗浄し、最大量の塩化カルシウムを回収すると共に産物を精製した。25mLでの1回目の洗浄時のCaCl2濃度は40.8%であり、期待量の75.4%である10.2gのCaCl2(0.092モル)が回収された(消石灰に基づく期待量は13.54g;0.122モルである)。全部で0.2Lの洗浄用水を使用して洗浄操作を実施し、全部で11.8gのCaCl2(0.106モル;収率87.1%)を回収した。実施例1と同様、Mg(OH)2を精製する従来の方法に比べて、濾過が非常に容易であった。洗浄済みのウェットケーキを900℃で2時間かけてか焼し、MgO含有率が98.80%でありCaO含有率が1.53%である3.89gのか焼済み酸化マグネシウム(0.095モル;単離収率77.9%)を得た。当該実施例は、600℃でか焼して得た産物中間体を洗浄することによって、産物の品質が低下せずに、洗浄操作および濾過操作が促進されることを示すものである。さらに、当該実施例は、脱硫酸化処理に有用であり脱硫酸化後の蒸発に要する手間を削減できる高濃度のCaCl2が得られることを示すものである。
【0107】
実施例3
実施例1で使用した0.10Lの最終苦汁(0.479モルのMgCl2)と、純度95%(w/w)である30g(Mg(OH)2を形成するために化学量論的に必要な量の80.3%)の消石灰[0.385モルのCa(OH)2]とを、撹拌しながら混合した。得られたスラリーをゆっくりと真空濾過した。95.12gのウェットケーキと、CaCl2含有量が30.06%[CaCl2は全部で13.53g(0.122モル)]でありMg含有量が2.94%である45mLの濾液が回収された。添加した消石灰に基づき全量が42.73gと予測されるCaCl2(0.385モル)のうちの31.6%が、当該濾過によって得られた。ウェットケーキを600℃で3時間かけてか焼して、46.1gのか焼済み材料を得た。このか焼済み材料は、70mLの水中で容易に破砕するものであった。CaCl2濃度35%である62mLの濾液と、期待量の50.9%である全量で21.73gのCaCl2(0.196モル)とが得られた。さらに、濃度1%の添加物を含有する50mL(全部で150mL)の洗浄液を用いてする3回の洗浄を実施し、産物中のボロン不純物を最小限に抑えた。全部で4.7gのCaCl2(0.042モルのCaCl2)を含有する濾液144mLを得た。最終的に回収されたCaCl2は39.96g(0.36モル)であり、期待量の93.5%であった。各洗浄時の濾過は容易であった。40.5gの洗浄済みのウェットケーキを100〜110℃で2時間かけてオーブン内で乾燥させ、16.88gの乾燥材料を得た。この乾燥材料を900℃で2時間かけてか焼し、燃焼損失が19.43%でありMgO含有量が96.65%でありCaOが2.04%でありB23換算したボロン含有量が0.0312%である13.60gのか焼済みMgO(0.329モル)を得た。消石灰に対するMgOの収率は85.45%であった。当該実施例は、途中でか焼するためのケーキを得る濾過ステップを追加することによって、最終苦汁を使用してMgOを製造できることを示すものである。産物中のボロン量は、追加で洗浄することによって減少させ得る。
【0108】
実施例4
実施例1の組成を有する2.0Lの最終苦汁(9.58モルのMgCl2)を150℃まで加熱して水分を蒸発させ、体積を1.2Lに減少させた。高温状態にある苦汁をシグマミキサーに導入し、Ca(OH)2含有量が89.9%(w/w)である0.725kgの市販の消石灰を添加し、30分間かけて十分に混合することによって、ペースト状の塊を形成した。質量損失がないと仮定した場合に全部で2.573kgあるペースト状の塊のうちの0.305kgを、オーブン内において110℃で乾燥させて0.27kgの乾燥材料を取得し、これを600℃で2時間かけてか焼することによって0.215kgのか焼済み塊を産生させた。か焼済み材料を室温に冷却し、0.15Lの水で処理した後、別途用意した0.75Lの水でさらに洗浄した。ウェットケーキを乾燥させ、900℃でか焼することによって、MgO含有量が93.95%でありCaOが2.488%でありCl含有量が1.768%でありB23換算したボロン含有量が0.107%である61.27gのか焼済みMgO(1.44モル)を得た。
【0109】
実施例5
115gL-1のMgを含有する10Lの最終苦汁を蒸発させ、冷却することによって、7kgの固形物の塊を得た。0.329kgのMgを含有するこの固形物の塊2kg(1.285kgのMgCl2)を0.7Lの水に添加した状態で150℃に加熱して高温の溶液を得た後、当該溶液をリボンブレンダーに注入した。0.972kg(Mg(OH)2を形成するために化学量論的に必要な量の94%)の粉状消石灰(生石灰を破砕した後にヒドロサイクロニング処理して調製したもの)をリボンブレンダーに投入し、内容物を念入りに混合した。混合開始から約30分後、反応完了を意味するpH8〜9程度になったことから、混合処理を中止し、ペースト状の塊を得た。質量損失がないと仮定した場合に全部で3.672kgあるペースト状の塊のうちの1kgを、110℃で2時間かけて電気オーブン内で乾燥させ、0.845kgの乾燥物の塊を得た。当該物質を塊の状態で600℃で2時間かけて電気マッフル炉内でか焼し、0.481kgの固形物を得た(MgOとCaCl2の期待量の総和は0.52kgである)。か焼済みの塊0.24kgを室温に冷却した後、室温の水0.45Lに添加した。これによりか焼済みの固形物塊が破砕して温暖な(50℃)スラリーが産生した。スラリーは、ブフナー漏斗で容易に濾過でき、これにより29.4%のCaCl2を含有する0.275Lの濾液が得られた。ウェットケーキを0.300Lの水で続けて3回洗浄したところ、いずれの回も容易に濾過できた。最後の洗浄水は1.2%のCaCl2を含有していた。その後、ケーキを乾燥させ、900℃で再びか焼することによって、MgO含有量が95.14%(図2の粉末XRDを参照のこと)でありCaOが1.435%でありClが0.477%である0.068kgのMgOを産生させた。洗浄液は、1kgのMgOあたり6〜8Lの新鮮な水を使用することによって、費用対効果に優れた苦汁の脱硫酸化に有用である高濃度(20〜40%)にCaCl2の濃度を調節した状態で再利用することができる。
【0110】
実施例6
実施例5で使用した最終苦汁1Lを加熱して水分を蒸発させた。体積が800mLになった段階で加熱を中止し、溶液を室温に冷却することによって、587gの固体状のMgCl2・6H2Oと、36.7oBe’の苦汁362mLとを得た。固形物200g(0.954モルのMg)を115℃に加熱して塊を液化させ、撹拌しながらこれに3gのMg(OH)2シードを添加した後、AR gradeの石灰ケーキ[60.5mLの水に60.51g(0.817モル)]を小分けにして3分間以上かけて添加した。石灰を添加した後の温度が100℃と測定され、混合物の流動性がかなり高い状態になった段階で、加熱を中止した。得られた塊を、当該塊が室温になりペースト状になるまで、さらに15〜20分間撹拌した。当該ペースト状の塊(303.7g;pH約8)をオーブンにおいて150℃で乾燥させた後、600℃でか焼した(図3Aの粉末XRDを参照のこと)。か焼済みの塊(126g)を空気冷却して室温にした後、200mLの水に接触させることによって、温度を64℃に上昇させた(この温度上昇は主にフューズドCaCl2の水和および溶解に起因するものであることが、純粋なフューズドCaCl2を用いた別の実験によって実証されている)。スラリーは、容易に濾過できるものであり、当該濾過によって32.3%のCaCl2を含有するCaCl2溶液が産生した。また、残留物も50x2mLの脱イオン水で容易に洗浄できるものであり、洗浄後に110℃で乾燥させ(図3Bの粉末XRDを参照のこと)、得られた塊の一部を900℃でか焼した(図3Cの粉末XRDを参照のこと)。11.0gの乾燥物の塊から、純度が99.13%(CaO不純物の含有量がたったの0.66%)である10.8gのか焼済み塊が得られた。図3Bおよび図3Cの粉末XRDプロファイルが実質的に同一であることから、得られた塊は、水で洗浄して精製した後においても主にMgOで構成された状態にあり、強熱減量(LOI)が低く抑えられた状態(1.8%)にあることが分かった。
【0111】
以上の実施例から、従来の技術では不可能であったことに本発明を適用できること、とりわけ最も高い濃度で原材料を使用する半固体状の反応塊に本発明を適用できることが分かる。本発明によれば、MgOの品質を損なわずに、濾過性を改善できることや水を節約できるという利点もある。実施例5および6からは、岩石のごとき塊が、破砕処理や撹拌処理を実施しなくても若干量の水に接触させることで容易に破砕および分散することも分かる。さらに、実施例6からは、Mg(OH)2を600℃でか焼すると、濾過性が良好なMgOだけでなく、容易に水溶するフューズド塩化カルシウムや高濃度のCaCl2水溶液も産生されることも分かる。また、実施例6からは、石灰を用いて形成したか焼済みの粗製MgOが、水を使用した精製過程でほとんど影響を受けないこと、そしてMg(OH)2にほとんど転換されないことも分かる。また、実施例6からは、本発明の方法によれば、結晶MgCl2・6H2Oと改良済みの安価な石灰とを用いて、99%超える純度のMgOが得られることも分かる。
【0112】
本発明による効果
本発明による主な効果は、Mg(OH)2を精製する長時間のプロセスを不要化できることにある。
【0113】
本発明による別の効果は、ペースト状またはドウ状の反応生成塊であっても処理できることにある。
【0114】
本発明による別の重要な効果は、新鮮な水を節約できることにある。
【0115】
本発明によるさらに別の効果は、廃棄物の産生を最小限に抑えたことにある。
【0116】
本発明によるさらに別の重要な効果は、さらに高い濃度の反応生成物を使用することによって処理量を増加させたこと、そして律速段階、すなわちMg(OH)2の精製、を迅速化させたことにある。
【0117】
本発明によるさらに別の効果は、か焼済みのMgO塊が自発的に破砕することから、破砕処理が不要になることにある。
【0118】
本発明によるさらに別の効果は、粗製MgO中のCaCl2が、水に容易に溶解して濃度が35〜40%(w/v)であるCaCl2溶液を産生させるフューズドCaCl2の状態にあり、これによって水を節約でき、苦汁を脱硫酸化するコストも低下できることにある。
【0119】
本発明によるさらに別の効果は、品質を損なわずにMgOを無理なく得ることにある。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1A】図1Aは、本発明の方法によって製造した実施例1のMgO(純度99.43%)の粉末XRDについて示す図である。
【図1B】図1Bは、従来法によって製造した実施例1のMgO(純度96.15%)の粉末XRDについて示す図である。
【図2】図2は、実施例5のMgO(純度95.14%)の粉末XRDについて示す図である。
【図3】図3は、(A)実施例6の粗製MgO(600℃で1回目のか焼をした後のもの)の粉末XRD、(B)水で洗浄した後に110℃で乾燥させて得た精製済み産物の粉末XRD、(C)900℃で再びか焼して得た純度99.13%の精製済みMgOの粉末XRDについて示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgOを製造するための改良された方法であって、
(i) CaCl2を用いて塩水(brine)または苦汁(bittern)を脱硫酸化する(desulphating)ステップ(i)と、
(ii) 石膏(gypsum)を分離した後の清澄済みの塩水/苦汁を蒸発させることによって、塩化ナトリウム(common salt)およびカーナライト(KCl・MgCl2・6H2O)を分離するステップ(ii)と、
(iii) 前記ステップ(ii)によって得た、MgCl2に富むと共に他の塩を含有しない最終苦汁(end bittern)を回収するステップ(iii)と、
(iv) 前記ステップ(iii)の前記最終苦汁をさらに蒸発させることによって、結晶質のMgCl2・6H2Oを得るステップ(iv)と、
(v) 前記MgCl2・6H2OをMg(OH)2シードと混合した後、アルカリまたは消石灰/石灰スラリーで処理することによって、粗製Mg(OH)2ペースト/スラリーを得るステップ(v)と、
(vi) 得られたペースト/スラリーを濾過することによって粗製Mg(OH)2および塩化カルシウムを得る、または前記粗製Mg(OH)2ペーストを濾過せずにそのまま使用することにするステップ(vi)と、
(vii) 前記粗製Mg(OH)2ペーストを乾燥させた後、か焼することによって、Mg(OH)2をMgOに変換し、付着しているMgCl2をMgOおよびHClガスへと変換するステップ(vii)と、
(viii) 前記ステップ(vii)で得たか焼済みMgO塊を水で処理することによって、当該塊を破砕し、塩化カルシウムおよび他の可溶性塩を水に溶解させてスラリーを得るステップ(viii)と、
(ix) 前記スラリーを濾過した後、残留物を水で洗浄することによって、当該残留物を、不純物を含有しない状態にするステップ(ix)と、
(x) 残留物である主にMgOを含有するウェットケーキを乾燥させ、再びか焼することによって、所望の高純度なMgOを得るステップ(x)と、
(xi) 前記ステップ(v)で石灰を使用する場合、前記ステップ(vi)およびステップ(ix)で得たCaCl2溶液である濾液を、前記ステップ(i)における塩水または苦汁の脱硫酸化に使用するステップ(xi)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップ(i)で使用する前記苦汁が、大海の塩水(ocean brine)、海の塩水(sea brine)、地下の塩水(sub-soil brine)または湖の塩水(lake brine)から得たものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硫酸塩を含有した状態にあり前記ステップ(i)で使用する前記苦汁を、29〜32oBe’の密度範囲に脱硫酸化する、請求項1〜2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(ii)で得た前記カーナライト(KCl・MgCl2・6H2O)が、太陽蒸発または強制蒸発によって32〜36oBe’の範囲に結晶化させたものであり、前記ステップ(iii)で得た前記最終苦汁が、35.5〜36.0oBe’の密度を有し、450〜460gL-1のMgCl2と、5〜10gL-1のNaClと、5〜10gL-1のKClと、5〜15gL-1のCaと、0〜5gL-1の硫酸塩と、6〜7gL-1のBr-と、0.02〜0.04%のB23とを含有した状態にある、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(iii)で得た前記最終苦汁を、そのまま用いる、または好ましくは臭素を回収すると共に不純物Br-を減少させ脱臭素化済みの最終苦汁における不純物Br-量を0.5gL-1未満にするために脱臭素化する、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(iii)で得た前記最終苦汁を、前記ステップ(iv)で蒸発させて体積を20〜25%にまで減少させることによって、60〜80%の収率でMgCl2・6H2Oを晶出させる、請求項1〜5に記載の方法。
【請求項7】
硫酸マグネシウムまたは硝酸マグネシウムといった他の可溶性マグネシウム塩を、マグネシウム源として使用し得る、請求項1〜6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(v)で使用する前記アルカリが、石灰、苛性ソーダおよびアンモニアである、請求項1〜7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(v)で使用する前記石灰が、固体またはスラリーの状態にある、生石灰、消石灰およびドライム(dolime)から選ばれる、請求項1〜8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(v)で使用する前記消石灰が、生石灰を消和させた後、サイクロニング処理および脱水して、改良型の固体状の消石灰と、生石灰の新鮮なバッチを消和させることに再利用できる石灰水と、を産生させることによって調製されたものである、請求項1〜9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(v)で使用する前記アルカリの化学量論的当量が、0.8〜1.0の範囲にある、請求項1〜10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(v)で使用する前記Mg(OH)2シードの量が、取得済みのマグネシウム塩1モルあたり0〜10モル%の範囲にある、請求項1〜11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(v)における析出反応の温度が、20〜120℃の範囲にある、請求項1〜12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(v)における析出反応の反応時間が、均質混合状態で5〜90分間の範囲にある、請求項1〜13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(vi)で得たペースト塊を乾燥する操作を、公知のオーブン内で70〜120℃の温度で、または天日乾燥法によって実施する、請求項1〜14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ(vii)のか焼操作を、乾燥物質の物理的形状に応じて、マッフル炉、ロータリー式か焼炉または垂直式キルン炉において、500〜1000℃、好ましくは600〜900℃、の範囲で実施する、請求項1〜15に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(vii)のか焼操作によって、付着しているMgCl2を、気体HClを発生させながらMgOへと、付着しているCaCl2・2H2Oを、放熱を伴って水和するフューズドCaCl2へと変換し、粗製物の塊を粉砕するための、そしてCaCl2を迅速に可溶化するための推進力を得る、請求項1〜16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(viii)で用いる前記水が、使用済みのバッチから得た再利用洗液を主として含有した状態にあり、当該水の量が、前記MgO中の全ての可溶性塩を溶解させるために、また、温度を高めてCaCl2のような塩の溶解性を向上させる一方でMgOの加水分解を最小限に抑える目的で前記スラリーの温度を40〜90℃、好ましくは55〜65℃、の範囲に確実に制御するために、十分な状態にある、請求項1〜17に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップ(viii)およびステップ(ix)で用いる前記水が、MgO中のボロン不純物を除去するための添加物を含有した状態にある、または当該添加物を含有していない状態にある、請求項1〜18に記載の方法。
【請求項20】
MgOを軽度にか焼して濾過性を改善することによって、前記ステップ(ix)の洗浄操作および濾過操作が、Mg(OH)2を洗浄および濾過する場合に比べて2〜5倍に迅速化された状態にある、請求項1〜19に記載の方法。
【請求項21】
MgOを軽度にか焼して濾過性を改善することによって、前記ステップ(ix)におけるか焼済み塊の精製に必要な水が、Mg(OH)2を精製する場合に比べて1/2〜1/5にまで減少した状態にある、請求項1〜20に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップ(vii)で得た前記ウェットケーキが、乳状マグネシアを製造するために有用である、請求項1〜21に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップ(vii)で得た前記ウェットケーキを、乾燥させることよってMgOを産生させる、または500〜2200℃の温度範囲で再びか焼することによって所望の産物を得る、請求項1〜22に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(v)で用いる前記アルカリがアンモニアであり、前記ステップ(vii)のか焼操作で全ての不純物を除去して高純度のMgOを産生させることによって、前記ステップ(viii)およびステップ(ix)の操作を不要化する、請求項1〜23に記載の方法。
【請求項25】
Mg(OH)2を用いてする公知の方法で得られるものと同様の純度を有するMgOが、作業の速度を向上させ、そして新鮮な水の使用量を節約した状態で、その品質を損なわずに得られる、請求項1〜21に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−525252(P2009−525252A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552901(P2008−552901)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000627
【国際公開番号】WO2007/088407
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】