説明

酸化低密度リポ蛋白および終末糖化産物の吸着剤

【課題】酸化LDLおよびAGEsを吸着除去しうる体外血液浄化用吸着剤を提供する。
【解決手段】次式:


で表される酸化低密度リポ蛋白および終末糖化産物の吸着剤が開示される。吸着剤は、ヘパリンによる吸着能阻害が低く、高密度リポ蛋白に対する吸着能が低いという利点を有し、アフェレーシス治療に用いるのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液循環治療用吸着剤に関する。より詳細には、本発明は、酸化低密度リポ蛋白および終末糖化産物に吸着能を有する吸着剤、ならびにこれを用いて酸化低密度リポ蛋白あるいは終末糖化産物が関与する疾患を治療する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の欧米化や高齢化に伴い動脈硬化症を発症する患者が増加している。低密度リポ蛋白(以下LDLと記す)や極低密度リポ蛋白(以下VLDLと記す)はコレステロールを多く含み、動脈硬化の原因となることはよく知られている。高コレステロール血症を有する患者では動脈硬化症の発症率が高いことも知られている。また、高密度リポ蛋白(以下HDLと記す)は動脈硬化の遅延因子であることが知られている。
【0003】
これら疾患の治療法は、初期段階で食事療法、薬物療法が行われているが、効果が不十分な患者には、血液を体外に導き、血液中からLDLを吸着除去する治療法が適用されている。いわゆるアフェレーシス治療のひとつである。なかでもデキストラン硫酸固定化セルロースゲルを吸着剤とし、LDLを吸着して血漿から除去する療法が広く普及し、治療効果をあげている。例えば、株式会社カネカメディックス社製リポソーバーLA−15およびリポソーバー(LA−S)は、難治性高コレステロール血症患者に対しアポリポ蛋白B含有リポ蛋白を除去することを目的として使用される(非特許文献1、2)。医療機器添付文書によれば、リポソーバーLA−15は、インビトロ試験でLDLを56%程度除去し、HDLは除去しない。また、リポソーバー(LA−S)は、インビトロ試験は前述と同じであり、臨床試験でLDLを53%、HDLを28%除去する。
【0004】
血中で体内を循環しているLDLは、体内に存在する活性酸素やラジカルにより酸化を受け、酸化LDLに変性する。酸化低密度リポ蛋白(以下酸化LDLまたはOx−LDLと記す)は、代表的な変性低密度リポ蛋白(以下変性LDLと記す)である。この酸化LDLは、LDLの一部位がアセチル化されるか、あるいはアルデヒドと反応して変性を受けたものである。動脈硬化病変では、泡沫細胞の集積が特徴的な形態として観察されるが、この泡沫細胞は、マクロファージがスカベンジャー受容体を介して変性LDLなどを貪食した細胞である(非特許文献3)。
【0005】
最近、高脂血症モデルマウスの肝臓に酸化LDL受容体の遺伝子を導入すると、血中のコレステロール、LDL及びHDLコレステロール値は保ちながら、酸化LDL値だけを3分の1程度に減少させることができ、無処置の高脂血症マウスと比較すると、動脈硬化の進行が完全に抑制されて通常のマウス程度になったという実験結果が示された(非特許文献4)。これらの結果から、LDLそのものが動脈硬化を引き起こすのではなく、酸化LDLこそが動脈硬化の真の原因であることが示唆されている。血中にある酸化LDLの酸化状態の異なる状態が明らかにされつつある(非特許文献9)。
【0006】
血液透析患者の死因の約40%は、心不全や心筋梗塞などの冠動脈疾患である(非特許文献5)。その冠動脈疾患患者では血中の酸化LDL濃度が高く、すなわち血中酸化LDL値は冠動脈疾患の進行度合いを示す良い指標となることが報告されている(非特許文献6)。したがって、体外血液浄化により血中の酸化LDL濃度を低下させることによって、冠動脈疾患への進展を抑制することが期待されるが、現在まで疾患原因である酸化LDLを選択的に低下させる方法は見出されていない。
【0007】
酸化LDLの吸着除去に関しては、たとえば、カチオン性ポリマーのポリエチレンイミンをポリスルホン中空糸膜に固定化し、酸化LDLを24%(特開2002−28461:特許文献1)、または50%(特許第4433821:特許文献2)吸着除去したとの報告がある。また、ジエチルアミノエチルデキストランをポリスルホンとポリビニルピロリドンとのブレンド支持体に固定化し、酸化LDLを72%吸着除去している(特開2002−102341:特許文献3)。
【0008】
一方、現在日本において、糖尿病患者及び糖尿病予備軍の総数は、2千万人にも達するといわれている。高血糖状態が長く続いた糖尿病患者では、血液中に増えるグルコースなどの還元糖のアルデヒド基と体内の蛋白質のアミノ基との反応(メイラード反応)により生成される終末糖化産物(Advanced Glycation End−products、以下AGEsと記す)のレベルが高いことが知られている。このAGEsが体内の様々な器官に蓄積することによって糖尿病性合併症を引き起こす。例えば、蓄積臓器が腎臓であれば糖尿病性腎症、網膜であれば糖尿病性網膜症、神経であれば糖尿病性神経障害、血管であれば動脈硬化である。さらに、AGEsは、アルツハイマー病、慢性関節リウマチ及び老化などの原因となることも報告されている(非特許文献7、非特許文献8)。
【0009】
AGEsは、多くの成分の総称であり、例えば、ペントシジン、クロスリン、CML(Nε−カルボキシメチル リジン)、ピラリン等の多種の修飾化合物が含まれる。これらのうち、特にAGE−2(グリセルアルデヒド由来AGE)およびAGE−3(グリコ−ルアルデヒド由来AGE)は、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害の原因物質であると考えられている(非特許文献8)。
【0010】
ペントシジンおよびピラリン誘導体であるAGEsの生成を抑制することが提案されている。しかし、臓器に蓄積されたAGEsを除去することはできない。したがって、体内に蓄積されたAGEsを効果的に除去する治療方法の開発が待ち望まれている。
【0011】
AGEsの吸着除去に関しては、国際公開第2007/037554(特許文献4)には、親水性メタクリレート含有共重合体樹脂がAGEsに対し吸着能があることを開示している。また、特開2003−238404(特許文献5)は、RAGE(Receptor for AGEs)の全配列もしくは部分配列を含むペプチドを固定化した再生可能な糖尿病合併症因子吸着体を開示する。これは、AGEsレセプターを水不溶担体に固定化したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−28461
【特許文献2】特許4433821
【特許文献3】特開2002−102341
【特許文献4】再公表WO2007/037554
【特許文献5】特開2003−238404
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】医療機器添付文書:リポソーバーLA−15
【非特許文献2】医療機器添付文書:リポソーバー(LA−S)
【非特許文献3】サーキュレーション(Circulation)、2002年、第101巻、p.2889−2895
【非特許文献4】サーキュレーション(Circulation)、2008年、第118巻、p.75−83
【非特許文献5】United States Renal Data System(USRDS)、2006 Annual Data Report、Chronic kidney Disease
【非特許文献6】サーキュレーション(Circulation)、1998年、第98巻、p.1487−1494
【非特許文献7】グリコバイオロジー(Glycobiology)、2005年、第15巻、p.16R−28R
【非特許文献8】北陸大学紀要、2004年、第28号、p.33−48
【非特許文献9】臨床病理、第56回学術集会 シンポジウム8、リポ蛋白・脂質研究の最前線(3)、酸化リポ蛋白の最前線、p.622−630
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、広い範囲の異なる酸化状態の酸化LDLを吸着除去でき、かつ、AGEsをも同時に吸着除去できる、アフェレーシス治療に用いる吸着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、末端に芳香環を持つ特定のアルキルアミン化合物が酸化LDLとAGEsを同時に吸着する能力を有することを見出した。
【0016】
すなわち、本発明は、次式:
【化1】

[式中、Xは有機高分子支持体であり、n=1、2、または3である]
で表される酸化低密度リポ蛋白および終末糖化産物の吸着剤を提供する。
【0017】
別の態様においては、本発明は、次式:
【化2】

[式中、Xは有機高分子支持体であり、R1は−H、−CH3、または−C65であり、R2はH、CH3、−COCH3、または−CH2−C64Clであり、R3は−H、−CH3、−CH2CH3、−OH、−OCH3、−OCH2−C65、−C65、−COOCH3、−F、−Cl、または−Brであり、n=1、2、または3である]
で表される酸化低密度リポ蛋白および終末糖化産物の吸着剤を提供する。
【0018】
好ましくは、本発明の吸着剤は、酸化状態の異なる酸化低密度リポ蛋白に対して60%以上の吸着能をもつ。また好ましくは、本発明の吸着剤は、終末糖化産物に対して45%以上の吸着能、より好ましくは90%以上の吸着能をもつ。
【0019】
また好ましくは、本発明の吸着剤は、ヘパリンによる吸着能阻害は5%以下である。また好ましくは、本発明の吸着剤は、高密度リポ蛋白に対する吸着能が5%以下である。
【0020】
別の態様においては、本発明は、上述の本発明の吸着剤を充填した体外血液処理用デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の吸着剤は、広い酸化状態の酸化LDLの吸着能を有し、同時にAGEsの吸着能も有し、さらに、ヘパリンによる吸着能阻害を受けないことを特徴とする。この吸着剤は、脂質異常疾患患者、冠動脈疾患患者の酸化LDL、糖尿病血管合併症疾患患者、神経変性疾患患者のAGEsを効果的に吸着除去の目的のため、アフェレーシス治療に用いるのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、血中のOx-LDLと銅酸化により作製した酸化状態の異なるOx-LDLのアガロースゲル電気泳動の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の1つの態様においては、本発明の吸着剤は、末端に芳香環を有する末端アリール置換鎖状アルキルアミノ化合物が結合した高分子支持体からなる:
【化3】

[式中、Xは有機高分子支持体であり、n=1、2、または3である]。
【0024】
本発明の別の態様においては、本発明の吸着剤は、末端に複素環芳香族を有する末端複素環鎖状アルキルアミノ化合物が結合した高分子支持体からなる:
【化4】

[式中、Xは有機高分子支持体であり、R1は−H、−CH3、または−C65であり、R2はH、CH3、−COCH3、または−CH2−C64Clであり、R3は−H、−CH3、−CH2CH3、−OH、−OCH3、−OCH2−C65、−C65、−COOCH3、−F、−Cl、または−Brであり、n=1、2、または3である]。
【0025】
有機高分子支持体としては、血液透析用カラムに用いることができる任意の水不溶性高分子を用いることができ、例えば、セルロース系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、メタクリレート系ポリマーなどが挙げられる。有機高分子支持体は、アミノ基と結合しうる官能基、例えば、ヒドロキシル基やカルボキシル基を有する。有機高分子支持体は、クロマトグラフィー用樹脂として一般に市販されているものを用いることができ、その一例としては、例えば、メタアクリル系多孔質ゲルであるToyopearl AF、Toyopearl AF−Epoxy−650(東ソー株式会社製)、アガロースの多孔性ゲルであるセファロース(GEヘルスケア社製)、セルロースの多孔性ゲルであるセルファイン(チッソ株式会社製)などが挙げられる。有機高分子支持体は、中空糸膜状、線維状、スポンジ状、ビーズ状などの形状とすることができ、これをカラムに充填して、体外血液浄化デバイス(人工腎臓など)に適用することができる。
【0026】
本発明の吸着剤は、アフィニティークロマトグラフィー用の樹脂にリガンドをカップリングさせるための慣用の方法のいずれかを用いて、容易に製造することができる。エポキシ基を有する有機高分子支持体の場合には、pH9〜11のアルカリ性条件下、40℃で、フェニル−アルキルアミンまたはインドリル−アルキルアミンを反応させることにより製造することができる。アルデヒド基を有する有機高分子支持体の場合には、pH7条件下、25℃で、フェニル−アルキルアミンまたはインドリル−アルキルアミンを反応させた後、シアノ水素化ホウ素ナトリウムで還元して製造することができる。ヒドロキシル基を有する有機高分子支持体の場合には、アルカリ性条件下、エピクロルヒドリンを反応させることで、エポキシ基を有する有機高分子支持体に官能基変換でき、その後、フェニル−アルキルアミンまたはインドリル−アルキルアミンを反応させることにより製造することができる。アミノ基を有する有機高分子支持体の場合には、pH7条件下、25℃で、フェニル−アルキルアルデヒドまたはインドリル−アルキルアルデヒドを反応させた後、シアノ水素化ホウ素ナトリウムで還元して製造することができる。
【0027】
本発明の吸着剤は、弱い正電荷状態の2級アミノ基と、疎水性の芳香環とを有し、広い酸化状態の酸化LDLおよびAGEsに対して吸着能を有するという利点を有する。本発明における、広い酸化状態の酸化LDLとは、人工的にラジカル酸化で作製した変性LDLの酸化状態の異なる酸化LDL、即ち、ラジカル濃度の違いにより酸化修飾を受ける度合いの異なるLDLの群を表す。酸化LDLは、酸化を受ける前のLDLに比して、より陰性の電荷を持ち、親水性をもつ。酸化度合いが進むにつれ、陰性電荷度は強くなり、それに伴い親水性度も増す。
【0028】
好ましくは、本発明の吸着剤は、酸化LDLに対して40%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、さらにより好ましくは80%以上の吸着能をもつ。吸着能は、サンプルを吸着剤と接触させたときに、サンプル中に含まれる酸化LDLのうち吸着剤に吸着される割合で表される。また好ましくは、本発明の吸着剤は、AGEsに対して30%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは90%以上の吸着能をもつ。
【0029】
本発明の吸着剤の有利な特徴は、体外血液浄化処理の際に血液の凝固防止のために添加されるヘパリンによる吸着能阻害が非常に低いことである。また、本発明の吸着剤は、HDLに対する吸着能が非常に低い。このことにより、血液中のHDLレベルを低下させることなく、酸化LDLを吸着除去することができる。
【実施例】
【0030】
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例における操作方法は以下の通りである。
【0031】
酸化LDLの調製法
Kalen Biomedical社製Human MultiPoint OxLDL Kit(商標)を使用し、そのプロトコルにしたがって、順次2価銅イオンによって酸化状態の異なるOx-LDL(酸化LDL)を調製した。
【0032】
LOx−LDL(低酸化LDL)の調製方法は、LDLを、必要な場合、酸化する前に予め透析して、EDTAを完全に取り除いた。このEDTA非含有LDLを、EDTA非含有PBS(以下(−)PBSと記す)で1mg/ml濃度の溶液にし、その溶液に、最終濃度が5μMになるようにCuSO4を添加した。次いで、この溶液を、37℃で2時間インキュベートし、その後、1mM EDTA(最終濃度)を添加して、酸化を停止した。この溶液を、(−)PBS(1mM KH2PO4、10mM Na2HPO4、137 mM NaCl、2.7mM KCl、pH 7.4)に対して透析した。得られた酸化LDL含有溶液を濾過滅菌し、LOx-LDL溶液とし、使用時まで4℃で保存した。
【0033】
MOx−LDL(中酸化LDL)の調製方法は、前述LOx−LDLの調製方法中のCuSO4酸化時間を4時間に変え、その他の手順はそのままとして調製した。
【0034】
HOx−LDL(高酸化LDL)の調製方法は、前述LOx−LDLの調製方法中のCuSO4酸化時間を24時間に変え、その他の手順はそのままとして調製した。
【0035】
人工的に作製された酸化LDL、アセチル化LDLあるいは糖化LDLなどの変性LDLは、正味の陰性荷電を有しているために、アガロースゲルを用いた電気泳動ではその相対移動度は上昇することが知られている。血中に存在するOx−LDLは、ラジカルで酸化状態を変化させたOx-LDLのうち、低い酸化状態のものと同等であることが、Kalen Biomedocal社製、Human MultiPoint OxLDL Kit(商標)で解る(図1)。患者血液由来のサンプル(nativeと表示)とLOxすなわちLOx-LDLは同程度の移動度であり、患者血液中に存在する酸化LDLと合成のLOx−LDLが同じ程度の酸化状態であることを意味している。
【0036】
酸化LDL吸着操作法、濃度測定法
末端アリール基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を100μl、血漿300μLを容器に入れ、例えば、濃度0.5μg/μlのLOx−LDL10μl加え、その上澄み溶液中の残存しているLOx-LDL量を基にして吸着能率を算出した。
【0037】
MOx-LDL、HOx-LDLについての測定も前述のLOx-LDLと同様に行った。
【0038】
AGEsの調製法
AGEsとしては、CircuLex社製AGE−2(Glyceraldehyde-AGE-BSA)およびAGE−3(Glycoaldehyde-AGE-BSA)を用いた。
【0039】
AGE−2吸着操作法
末端アリール基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を100μlをPBS溶液で洗浄後、濃度0.5%BSA/PBS溶液500μl添加し、37℃で1時間インキュベートした。上清を除いた後、濃度3mg/mlのAGE−2溶液を含むヒト血清250μl添加し、37℃で1時間インキュベートした。その後、3000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清中のAGE−2濃度をCircuLex社製CMLエライザキットで測定し、吸着除去率を求めた。
【0040】
AGE−3吸着操作法
96穴プレート(Nunc)に、AGE−3を、濃度0.5μg/mlにPBSで希釈した後、100μl/ウェルずつ分注し、4℃で一晩放置した。濃度0.05%Tween20入りTBSでプレートを洗浄し、濃度20%イムノブロック(DSファーマ)/PBSにて1時間ブロッキングし、さらに濃度0.05%Tween20入りTBSで洗浄した後、PBSで3倍に希釈したサンプル50μl、濃度0.2μg/mlの抗AGE−3モノクローナル抗体(Transgenic)を50μl添加し、2時間室温で放置した。濃度0.05%Tween20入りTBSにて十分に洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスモノクローナル抗体(GEヘルスケア)の2000倍希釈溶液を100μl/ウェルで添加し、さらに室温で1時間放置した。濃度0.05%Tween20入りTBSにて十分に洗浄後、HRPの発色基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB(Sigma−Aldrich)を100μl/ウェルで添加し、発色を確認後に反応停止液として濃度1N塩酸を100μl/ウェルに加え、A450における吸光度を測定し、吸着除去率を求めた。
【0041】
ヘパリン添加時の操作法
末端アリール基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を100μl、濃度0.5mg/mlBSA/PBS溶液500μlを容器に入れ、37℃1時間インキュベーションした後、上澄み溶液を除去し、0.2%NaCl水溶液で洗浄した。これに、濃度2500U/mlヘパリン溶液を300μl添加し、37℃1時間インキュベーションしたのち、その上澄み溶液の一部を、濃度0.2%NaCl水溶液で50倍希釈、および100倍希釈して、それぞれサンプル溶液とした。その各希釈サンプル溶液50μlに、濃度0.005%トルイジンブルー溶液(0.2%NaCl添加の0.01N塩酸溶液)500μl加えて、マイクロチューブミキサーで10分攪拌した後、15000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清の631nmの吸収から、ヘパリンの吸着率を求めた。
【0042】
HDLの吸着操作法
末端アリール基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を100μl、PBS溶液で洗浄した後、血清300μlを加え、37℃で1時間緩やかに回転させインキュベーションさせ吸着させた。
【0043】
HDL濃度の測定法
前述(5)のインキュベーション後、3000rpm、5分間遠心分離を行い、上清をサンプルとし、そのHDL濃度をMedical & Biological Laboratories社製HDL and LDL/VLDL Cholesterol Quantification Kitで測定し、吸着量を求めた。
【0044】
末端芳香環アルキルアミノ化合物
[実施例1]
末端フェニル基のベンジルアミノ化合物の調製
有機高分子支持体としてToyopearl AF−Epoxy−650M(東ソー株式会社製)濃度143mg/ml水溶液を1ml、蒸留水1mlを15mlサンプル管に入れ、蒸留水で4回洗浄した。このサンプル管に、ベンジルアミン(Aldrich社製)300mg、pH11水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)水溶液2mlを入れ、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で1回、1M塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)水溶液1回、蒸留水でさらに2回洗浄した。前記洗浄後、2Mグリシン(和光純薬工業社製)水溶液10mlを加え、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で8回洗浄を繰返し、Toyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基のベンジルアミノ化合物を調製した。
【0045】
ヘパリン吸着型レジンの調製
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基のベンジルアミノ化合物の樹脂100μlに、濃度0.5mg/mlBSA/PBS水溶液500μlを加え37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清を除去し、0.2%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。濃度2500U/mlヘパリンナトリウム注(和光純薬工業社製)溶液を300μl加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。この固形部分をヘパリン吸着型レジンとした。その溶液部分の一部を、0.2%塩化ナトリウム水溶液で100倍希釈した。その100倍希釈溶液50μlに0.005%トルイジンブルー(ナカライテスク社製)溶液(0.2%塩化ナトリウム水溶液と0.01N塩酸溶液)500μlをあわせ、マイクロチューブミキサーで10分攪拌した後、15000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清中のヘパリン濃度から、レジンへのヘパリンの吸着量を求めた。
【0046】
HOx−LDLの吸着除去
上記のように調製したヘパリン吸着型レジン100μlをPBSで2回洗浄し、上清の除去後、ヒト血清300μl、KALEN Biomedical社製キットで調製したHOx−LDL30μgを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清の酸化LDL濃度を積水メディカル社製ELISAキットで測定し吸着量を求めた。
【0047】
MOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したMOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0048】
LOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したLOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0049】
HDLの吸着除去
上述のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基のベンジルアミノ化合物の樹脂100μlに、ヒト血清300μlを加え、37℃で1時間ローテーターを用いインキュベートした。その後、上清のHDL濃度を測定し吸着量を計算した。
【0050】
AGE-2の吸着除去
調製したベンジルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−2の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0051】
AGE-3の吸着除去
調製したベンジルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−3の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0052】
[実施例2]
末端フェニル基置換エチルアミノ化合物の調製
有機高分子支持体としてToyopearl AF−Epoxy−650M(東ソー株式会社製)濃度143mg/ml水溶液を1ml、蒸留水1mlを15mlサンプル管に入れ、蒸留水で4回洗浄した。このサンプル管に、2−フェニルエチルアミン(Aldrich社製)300mg、ジオキサン(和光純薬工業社製)1ml、pH11水酸化ナトリウム水溶液1mlを入れ、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で1回、1M塩化ナトリウム水溶液1回、蒸留水でさらに2回洗浄した。前記洗浄後、2Mグリシン水溶液10mlを加え、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で8回洗浄を繰返し、Toyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換エチルアミノ化合物を調製した。
【0053】
ヘパリン吸着型レジンの調製
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換エチルアミノ化合物の樹脂100μlに、濃度0.5mg/mlBSA/PBS水溶液500μlを加え37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清を除去し、0.2%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。濃度2500U/mlヘパリンナトリウム水溶液を300μl加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。この固形部分をヘパリン吸着型レジンとした。その溶液部分の一部を、0.2%塩化ナトリウム水溶液で100倍希釈した。その100倍希釈溶液50μlに0.005%トルイジンブルー溶液(0.2%塩化ナトリウム水溶液と0.01N塩酸溶液)500μlをあわせ、マイクロチューブミキサーで10分攪拌した後、15000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清中のヘパリン濃度から、レジンへのヘパリンの吸着量を求めた。
【0054】
HOx−LDLの吸着除去
上記のように調製したヘパリン吸着型レジン100μlをPBSで2回洗浄し、上清の除去後、ヒト血清300μl、KALEN Biomedical社製キットで調製したHOx−LDL30μgを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清の酸化LDL濃度を積水メディカル社製ELISAキットで測定し吸着量を計算した。
【0055】
MOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したMOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0056】
LOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したLOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0057】
HDLの吸着除去
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換エチルアミノ化合物の樹脂100μlに、ヒト血清300μlを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清のHDL濃度を測定し吸着量を計算した。
【0058】
AGE-2の吸着除去
調製した2−フェニルエチルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−2の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0059】
AGE-3の吸着除去
調製した2−フェニルエチルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−3の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0060】
[実施例3]
末端フェニル基置換プロピルアミノ化合物の調製
有機高分子支持体としてToyopearl AF−Epoxy−650M(東ソー株式会社製)濃度143mg/ml水溶液を1ml、蒸留水1mlを15mlサンプル管に入れ、蒸留水で4回洗浄した。このサンプル管に、3−フェニルプロピルアミン(東京化成工業社製)300mg、pH11水酸化ナトリウム水溶液1ml、ジオキサン1mlを入れ、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で1回、1M塩化ナトリウム水溶液1回、蒸留水でさらに2回洗浄した。前記洗浄後、2Mグリシン水溶液10mlを加え、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。
その後、蒸留水で8回洗浄を繰返し、Toyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換プロピルアミノ化合物を調製した。
【0061】
ヘパリン吸着型レジンの調製
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換プロピルアミノ化合物の樹脂100μlに、濃度0.5mg/mlBSA/PBS水溶液500μlを加え37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清を除去し、0.2%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。濃度2500U/mlヘパリンナトリウム水溶液を300μl加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。この固形部分をヘパリン吸着型レジンとした。その溶液部分の一部を、0.2%塩化ナトリウム水溶液で100倍希釈した。その100倍希釈溶液50μlに0.005%トルイジンブルー溶液(0.2%塩化ナトリウム水溶液と0.01N塩酸溶液)500μlをあわせ、マイクロチューブミキサーで10分攪拌した後、15000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清中のヘパリン濃度から、レジンへのヘパリンの吸着量を求めた。
【0062】
HOx−LDLの吸着除去
上記のように調製したヘパリン吸着型レジン100μlをPBSで2回洗浄し、上清の除去後、ヒト血清300μl、KALEN Biomedical社製キットで調製したHOx−LDL30μgを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清の酸化LDL濃度を積水メディカル社製ELISAキットで測定し吸着量を計算した。
【0063】
MOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したMOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0064】
LOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したLOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0065】
HDLの吸着除去
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換プロピルアミノ化合物の樹脂100μlに、ヒト血清300μlを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清のHDL濃度を測定し吸着量を計算した。
【0066】
AGE-2の吸着除去
調製した3−フェニルプロピルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−2の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0067】
AGE-3の吸着除去
調製した3−フェニルプロピルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−3の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0068】
[比較例1]
末端フェニル基置換ブチルアミノ化合物の調製
有機高分子支持体としてToyopearl AF−Epoxy−650M(東ソー株式会社製)濃度143mg/ml水溶液を1ml、蒸留水1mlを15mlサンプル管に入れ、蒸留水で4回洗浄した。このサンプル管に、4−フェニルブチルアミン(東京化成工業社製)300mg、pH11水酸化ナトリウム水溶液1ml、ジオキサン1mlを入れ、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で1回、1M塩化ナトリウム水溶液1回、蒸留水でさらに2回洗浄した。前記洗浄後、2Mグリシン水溶液10mlを加え、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。
その後、蒸留水で8回洗浄を繰返し、Toyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換ブチルアミノ化合物を調製した。
【0069】
ヘパリン吸着型レジンの調製
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換ブチルアミノ化合物の樹脂100μlに、濃度0.5mg/mlBSA/PBS水溶液500μlを加え37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清を除去し、0.2%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。濃度2500U/mlヘパリンナトリウム水溶液を300μl加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。この固形部分をヘパリン吸着型レジンとした。その溶液部分の一部を、0.2%塩化ナトリウム水溶液で100倍希釈した。その100倍希釈溶液50μlに0.005%トルイジンブルー溶液(0.2%塩化ナトリウム水溶液と0.01N塩酸溶液)500μlをあわせ、マイクロチューブミキサーで10分攪拌した後、15000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清中のヘパリン濃度から、レジンへのヘパリンの吸着量を求めた。
【0070】
HOx−LDLの吸着除去
上記のように調製したヘパリン吸着型レジン100μlをPBSで2回洗浄し、上清の除去後、ヒト血清300μl、KALEN Biomedical社製キットで調製したHOx−LDL30μgを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清の酸化LDL濃度を積水メディカル社製ELISAキットで測定し吸着量を計算した。
【0071】
MOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したMOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0072】
LOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したLOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0073】
HDLの吸着除去
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換ブチルアミノ化合物の樹脂100μlに、ヒト血清300μlを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清のHDL濃度を測定し吸着量を計算した。
【0074】
AGE-2の吸着除去
調製した4−フェニルブチルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−2の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0075】
AGE-3の吸着除去
調製した4−フェニルブチルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−3の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0076】
[比較例2]
末端フェニル基置換ペンチルアミノ化合物の調製
有機高分子支持体としてToyopearl AF−Epoxy−650M(東ソー株式会社製)濃度143mg/ml水溶液を1ml、蒸留水1mlを15mlサンプル管に入れ、蒸留水で4回洗浄した。このサンプル管に、5−フェニルペンチルアミン(Enamine社製)300mg、pH11水酸化ナトリウム水溶液1ml、ジオキサン1mlを入れ、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で1回、1M塩化ナトリウム水溶液1回、蒸留水でさらに2回洗浄した。前記洗浄後、2Mグリシン水溶液10mlを加え、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で8回洗浄を繰返し、Toyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換ペンチルアミノ化合物を調製した。
【0077】
ヘパリン吸着型レジンの調製
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換ペンチルアミノ化合物の樹脂100μlに、濃度0.5mg/mlBSA/PBS水溶液500μlを加え37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清を除去し、0.2%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。濃度2500U/mlヘパリンナトリウム水溶液を300μl加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。この固形部分をヘパリン吸着型レジンとした。その溶液部分の一部を、0.2%塩化ナトリウム水溶液で100倍希釈した。その100倍希釈溶液50μlに0.005%トルイジンブルー溶液(0.2%塩化ナトリウム水溶液と0.01N塩酸溶液)500μlをあわせ、マイクロチューブミキサーで10分攪拌した後、15000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清中のヘパリン濃度から、レジンへのヘパリンの吸着量を求めた。
【0078】
HOx−LDLの吸着除去
上記のように調製したヘパリン吸着型レジン100μlをPBSで2回洗浄し、上清の除去後、ヒト血清300μl、KALEN Biomedical社製キットで調製したHOx−LDL30μgを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清の酸化LDL濃度を積水メディカル社製ELISAキットで測定し吸着量を計算した。
【0079】
MOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したMOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0080】
LOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したLOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0081】
HDLの吸着除去
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端フェニル基置換ペンチルアミノ化合物の樹脂100μlに、ヒト血清300μlを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清のHDL濃度を測定し吸着量を計算した。
【0082】
AGE-2の吸着除去
調製した5−フェニルペンチルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−2の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0083】
AGE-3の吸着除去
調製した5−フェニルペンチルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−3の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0084】
【表1】

【0085】
表1中の実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2の化合物は、末端のフェニル基と固定化支持体側のアミノ基とにはさまれた炭素数がそれぞれ1、2、3、4、5の違い構造の化合物である。これらの化合物は、酸化状態の異なる酸化低密度リポ蛋白、すなわちHOx-LDL、MOx-LDL、LOx-LDLに対し60%以上の除去能を示し、AGE-2、AGE-3に対し(90)%以上の除去能を示す。さらにヘパリンによる除去能阻害を受けない。
【0086】
ところが、実施例1、実施例2、実施例3の化合物は、HDLに対しそれぞれ−11%、−10%、2%の除去能を示し吸着はしないが、一方、比較例1、比較例2の化合物は、HDLに対し、それぞれ35%、84%の除去能を示し、実施例1、実施例2よりかなりの高値を示し吸着する。
【0087】
前述の炭素数が、1、2、3である化合物の実施例1、実施例2、実施例3は、炭素数が4、5である化合物の比較例1、比較例2に比べ、酸化状態の異なる低密度リポ蛋白、および終末糖化産物に対して高い吸着除去能を示し、HDLに対して低い吸着能を示した。さらにヘパリンによる吸着能阻害を受けない。すなわち、炭素数1、2、3である末端アリール置換鎖状アルキルアミノ化合物は、優れた特性を示した。
【0088】
末端複素環アルキルアミノ化合物
[実施例4]
末端インドリル基置換エチルアミノ化合物の調製
有機高分子支持体としてToyopearl AF−Epoxy−650M(東ソー株式会社製)濃度143mg/ml水溶液を1ml、蒸留水1mlを15mlサンプル管に入れ、蒸留水で4回洗浄した。このサンプル管に、2−(3−インドリル)エチルアミン(東京化成工業社製)300mg、pH11水酸化ナトリウム水溶液1ml、ジオキサン1mlを入れ、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で1回、1M塩化ナトリウム水溶液1回、蒸留水でさらに2回洗浄した。前記洗浄後、2Mグリシン水溶液10mlを加え、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で8回洗浄を繰返し、Toyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端インドリル基置換エチルアミノ化合物を調製した。
【0089】
ヘパリン吸着型レジンの調製
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端インドリル基置換エチルアミノ化合物の樹脂100μlに、濃度0.5mg/mlBSA/PBS水溶液500μlを加え37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清を除去し、0.2%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。濃度2500U/mlヘパリンナトリウム水溶液を300μl加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。この固形部分をヘパリン吸着型レジンとした。その溶液部分の一部を、0.2%塩化ナトリウム水溶液で100倍希釈した。その100倍希釈溶液50μlに0.005%トルイジンブルー溶液(0.2%塩化ナトリウム水溶液と0.01N塩酸溶液)500μlをあわせ、マイクロチューブミキサーで10分攪拌した後、15000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清中のヘパリン濃度から、レジンへのヘパリンの吸着量を求めた。
【0090】
HOx−LDLの吸着除去
上記のように調製したヘパリン吸着型レジン100μlをPBSで2回洗浄し、上清の除去後、ヒト血清300μl、KALEN Biomedical社製キットで調製したHOx−LDL30μgを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清の酸化LDL濃度を積水メディカル社製ELISAキットで測定し吸着量を計算した。
【0091】
MOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したMOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0092】
LOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したLOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0093】
HDLの吸着除去
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端インドリル基置換エチルアミノ化合物の樹脂100μlに、ヒト血清300μlを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清のHDL濃度を測定し吸着量を計算した。
【0094】
AGE-2の吸着除去
調製した2−(3−インドリル)エチルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−2の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0095】
AGE-3の吸着除去
調製した2−(3−インドリル)エチルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−3の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0096】
[比較例3]
末端ピリジル基置換プロピルアミノ化合物の調製
有機高分子支持体としてToyopearl AF−Epoxy−650M(東ソー株式会社製)濃度143mg/ml水溶液を1ml、蒸留水1mlを15mlサンプル管に入れ、蒸留水で4回洗浄した。このサンプル管に、3−(4−ピリジル)プロピルアミン(Key Organics社製)300mg、pH11水酸化ナトリウム水溶液1ml、ジオキサン1mlを入れ、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で1回、1M塩化ナトリウム水溶液1回、蒸留水でさらに2回洗浄した。前記洗浄後、2Mグリシン水溶液10mlを加え、45℃恒温槽内で約15時間ローテーターを用い攪拌した。その後、蒸留水で8回洗浄を繰返し、Toyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端ピリジル基置換プロピルアミノ化合物を調製した。
【0097】
ヘパリン吸着型レジンの調製
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端ピリジル基置換プロピルアミノ化合物の樹脂100μlに、濃度0.5mg/mlBSA/PBS水溶液500μlを加え37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清を除去し、0.2%塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。濃度2500U/mlヘパリンナトリウム水溶液を300μl加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。この固形部分をヘパリン吸着型レジンとした。その溶液部分の一部を、0.2%塩化ナトリウム水溶液で100倍希釈した。その100倍希釈溶液50μlに0.005%トルイジンブルー溶液(0.2%塩化ナトリウム水溶液と0.01N塩酸溶液)500μlをあわせ、マイクロチューブミキサーで10分攪拌した後、15000rpmで5分間遠心分離操作を行い、上清中のヘパリン濃度から、レジンへのヘパリンの吸着量を求めた。
【0098】
HOx−LDLの吸着除去
上記のように調製したヘパリン吸着型レジン100μlをPBSで2回洗浄し、上清の除去後、ヒト血清300μl、KALEN Biomedical社製キットで調製したHOx−LDL30μgを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清の酸化LDL濃度を積水メディカル社製ELISAキットで測定し吸着量を計算した。
【0099】
MOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したMOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0100】
LOx−LDLの吸着除去
上述のHOx-LDLを、KALEN Biomedical社製キットで調製したLOx−LDLに変えて同様の操作方法で行った。
【0101】
HDLの吸着除去
上記のように調製したToyopearl AF−Epoxy−650Mを支持体に用いた末端ピリジル基置換プロピルアミノ化合物の樹脂100μlに、ヒト血清300μlを加え、37℃で1時間ローテーターを用い攪拌した。その後、上清のHDL濃度を測定し吸着量を計算した。
【0102】
AGE-2の吸着除去
調製した3−(4−ピリジル)プロピルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−2の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0103】
AGE-3の吸着除去
調製した3−(4−ピリジル)プロピルアミノ基を付けたToyopearl AF−Epoxy−650樹脂を用いて、前述のAGE−3の吸着操作法から吸着除去率を求めた。
【0104】
【表2】

【0105】
表2中の実施例4は、前述表1中の実施例2の末端フェニル基がインドール基に変わった複素環化合物である。この化合物は、ヘパリンによる除去能阻害を示さず、HDLに対しても、−2%の除去能を示した。広い酸化状態、即ちHOx−LDL、MOx−LDL、LOx−LDLに対して95%以上の除去能を示す。
【0106】
一方、表1中の実施例3の末端フェニル基がピリジル基に変わった複素環化合物である表2中の比較例3は、HDLに対しほとんど除去能を示さないが、著しいヘパリンによる除去能阻害(73%)を示した。低い酸化状態のLOx−LDLに対して44%の除去能を示した。
【0107】
即ち、末端芳香環がインドール環である場合には、ヘパリンによる除去能阻害は受けないが、末端芳香環がピリジンのような強い塩基性芳香環の場合には、著しいヘパリンによる除去能阻害を受けた。
【0108】
このように、末端複素環アルキルアミノ化合物、特にインドール環の場合は、広い酸化状態のOx−LDLを吸着除去能を持ち、ヘパリンによる除去能阻害を受けず、HDLに対しても吸着能を示さない優れた特長を持つ化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式:
【化5】

[式中、Xは有機高分子支持体であり、n=1、2、または3である]
で表される酸化低密度リポ蛋白および終末糖化産物の吸着剤。
【請求項2】
次式:
【化6】

[式中、Xは有機高分子支持体であり、R1は−H、−CH3、または−C65であり、R2はH、CH3、−COCH3、または−CH2−C64Clであり、R3は−H、−CH3、−CH2CH3、−OH、−OCH3、−OCH2−C65、−C65、−COOCH3、−F、−Cl、または−Brであり、n=1、2、または3である]
で表される酸化低密度リポ蛋白および終末糖化産物の吸着剤。
【請求項3】
酸化状態の異なる酸化低密度リポ蛋白に対して60%以上の吸着能をもつ、請求項1または2に記載の吸着剤。
【請求項4】
終末糖化産物に対して45%以上の吸着能をもつ、請求項1または2に記載の吸着剤。
【請求項5】
終末糖化産物に対して90%以上の吸着能をもつ、請求項1または2に記載の吸着剤。
【請求項6】
ヘパリンによる吸着能阻害は5%以下である、請求項1または2に記載の吸着剤。
【請求項7】
高密度リポ蛋白に対する吸着能が5%以下である、請求項1または2に記載の吸着剤。
【請求項8】
請求項1−7のいずれかに記載の吸着剤を充填した体外血液処理用デバイス。

【図1】
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【公開番号】特開2013−17536(P2013−17536A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151250(P2011−151250)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(508311396)株式会社ファルミット (5)
【Fターム(参考)】