説明

酸化炭素含有ガスの利用方法

【課題】高炉ガスや転炉ガス等の酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)を効率的に利用することができる酸化炭素含有ガスの利用方法を提供する。
【解決手段】高炉ガスや転炉ガス等の酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)を回収し、回収した酸化炭素含有ガスから酸化炭素(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素)を分離し、分離した酸化炭素中の二酸化炭素を炭化水素系還元剤により還元して一酸化炭素に変換し、それらによって得られた一酸化炭素(酸化炭素含有ガスから分離した二酸化炭素を還元して得られた一酸化炭素、および、酸化炭素含有ガスから分離して得られた一酸化炭素)を高炉にて再利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)の利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の増加による地球温暖化は、国際的な問題として大きく取り上げられており、その排出量を削減することは、全世界的な課題となっている。二酸化炭素を分離・回収するために様々な技術開発(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1等)が試みられている。しかしながら、回収した二酸化炭素の利用方法については、余り有効な手段は提案されていない。
【0003】
例えば、回収した二酸化炭素を地中に埋める技術、いわゆるCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)が欧州や米国、日本などを中心に盛んに開発されている。しかし、この方法は、地中に埋めた後の安全性に関して、特に地震国である日本においては、合意が得ることが難しいばかりでなく、地球環境研究機構(RITE)の試算によれば、近海を含む日本付近での二酸化炭素の埋設可能量を排出量で除した値、すなわち寿命は、わずか50年〜100年程度であるとされている。このような状況では、循環型社会の構築はおぼつかないと言わざるを得ない。
【0004】
ちなみに、統計によれば、日本における二酸化炭素の排出量は、発電にともなう排出が約30%、鉄鋼生産にともなう排出が10%、その他、運輸部門、民生部門での排出が大きな割合を占めている。
【0005】
例えば、発電所では、石炭、石油、天然ガスの化学エネルギーを、それら化石燃料の完全酸化による二酸化炭素を発生させながら、電力エネルギーに変換しているため、二酸化炭素が排出されている。それゆえ化石燃料を使用する以上、見合う量の二酸化炭素は必然的に発生してしまう。ただし、これらは、風力発電、潮力発電などのいわゆるソフト・エネルギーの利用、バイオマス発電、原子力発電の普及により徐々に減少していくものと考えられる。
【0006】
一方、鉄鋼生産における二酸化炭素の発生は、酸化鉄である鉄鉱石の炭素(コークス)による還元およびその炭素分の除去にともなうものである。これは高炉における操業においても、転炉における操業においても同様であるといえる。このため、二酸化炭素の発生は、鉄鋼生産において不可避であると言える。
【0007】
鉄鋼業において、高炉ガスの一部を高炉に循環することが提案されている(特許文献4)。すなわち、特許文献4には、高炉ガスあるいは高炉ガスとコークス炉ガスの混合物あるいは高炉ガスから炭酸ガスを除去したガスを燃焼し、高炉シャフト部に導入する技術が示されている。高炉の温度が低下すると、水分の凝縮による炉壁の腐食など不具合な現象が生じる。そこで、特許文献4では、炉頂温度が110℃以下となった場合に、高炉ガスあるいはコークス炉ガスとの混合物あるいは炭酸ガスを除去した高炉ガスを高炉シャフト部に導入することにより、高炉操業上の不具合を抑制しようとするものである。
【0008】
ただし、高炉ガスは、不活性ガスである窒素が主成分であり、体積割合で50〜60%を占める。炭酸ガスおよび一酸化炭素は各々20〜25%程度である。特許文献4には、炭酸ガスを除去して高炉シャフト部へ戻す方法が示されているが、炭酸ガスよりも窒素を除去しなければ、その効果は小さく、さらに循環・導入された窒素分だけ、高炉ガスの窒素分が増え、高炉ガスの熱量が低下することになる。元来、高炉ガスは1000kcal/m以下の低熱量であり、他の高熱量ガスと混合することにより、燃料ガスとして利用されるのが一般的である。高炉ガスの熱量低下は、高熱量ガスの混合比率を上げる必要があるなど負の効果をもたらし、結果的には炭酸ガス排出量を増やす結果となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−137960号公報
【特許文献2】特開2007−44677号公報
【特許文献3】特開2009−214101号公報
【特許文献4】特開2008−214735号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】小野田、日本エネルギー学会誌、88(4)278〜283(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、鉄鋼生産においては二酸化炭素の発生は不可避である。また、同時に一酸化炭素も発生し、その一酸化炭素が二酸化炭素に変化してしまう。
【0012】
このため、発生した二酸化炭素や一酸化炭素を含有する混合ガスをいかに効率的に再利用して、実質の二酸化炭素発生量を削減するかが重要な課題となる。
【0013】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)を効率的に利用することができる酸化炭素含有ガスの利用方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、鉄鋼業あるいはその他の産業等で発生した二酸化炭素を回収し、これを還元して一酸化炭素として高炉で再利用することにより、実質的な二酸化炭素の削減を果たすことが出来ることを見出した。
【0015】
すなわち、製鉄所において発生する高炉ガスや転炉ガスなどの酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)を回収し、回収した酸化炭素含有ガスから酸化炭素(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素)を分離し、分離した酸化炭素中の二酸化炭素を炭化水素系還元剤により還元して一酸化炭素に変換し、それらによって得られた一酸化炭素(酸化炭素含有ガスから分離した二酸化炭素を還元して得られた一酸化炭素、および/または、酸化炭素含有ガスから分離して得られた一酸化炭素)を高炉にて再利用することを着想した。
【0016】
上記の着想に基づいて、本発明は以下の特徴を有している。
【0017】
[1]二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を分離した後、分離した前記二酸化炭素または、前記二酸化炭素と一酸化炭素を炭化水素系還元剤と接触させて一酸化炭素と水素に転化させ、得られた一酸化炭素を高炉に導入することを特徴とする酸化炭素含有ガスの利用方法。
【0018】
[2]二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガスが、製鉄所で副生する高炉ガスであることを特徴とする前記[1]に記載の酸化炭素含有ガスの利用方法。
【0019】
[3]二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガスが、製鉄所で副生する転炉ガスであることを特徴とする前記[1]に記載の酸化炭素含有ガスの利用方法。
【0020】
[4]二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を分離する方法が、吸着分離法であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の酸化炭素含有ガスの利用方法。
【0021】
[5]炭化水素系還元剤が、メタンを主成分とするガスであることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の酸化炭素含有ガスの利用方法。
【0022】
[6]炭化水素系還元剤が、液化石油ガスを主成分とするガスであることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の酸化炭素ガス含有ガスの利用方法。
【0023】
[7]炭化水素系還元剤が、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを主成分とするガスおよび/または液であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の酸化炭素ガス含有ガスの利用方法。
【0024】
[8]分離した前記二酸化炭素または、前記二酸化炭素と一酸化炭素を炭化水素系還元剤と接触させて一酸化炭素と水素に転化させる際の熱源の一部あるいは全部として、製鉄所の排熱を用いることを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の酸化炭素ガス含有ガスの利用方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)を効率的に再利用し、実質的に二酸化炭素を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1を示す図である。
【図2】本発明の実施例2を示す図である。
【図3】本発明の実施例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態を以下に述べる。なお、以下で述べるガス濃度は体積%である。
【0028】
本発明の一実施形態は、鉄鋼業あるいはその他の産業等で発生した酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)の利用方法であり、さらに詳しくは、鉄鋼業あるいはその他の産業等で発生した酸化炭素含有ガスから酸化炭素(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素)を分離・回収し、その酸化炭素中の二酸化炭素を還元して一酸化炭素とし、得られた一酸化炭素を高炉で再利用することにより、実質的な二酸化炭素の削減を行う酸化炭素含有ガスの利用方法である。
【0029】
すなわち、本発明の一実施形態においては、製鉄過程で発生する高炉ガスや転炉ガスなどの酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)を回収し、回収した酸化炭素含有ガスから、酸化炭素の濃度(二酸化炭素と一酸化炭素の合計の濃度)が80%以上となるガスを分離し、分離したガス(二酸化炭素と一酸化炭素の合計の濃度が80%以上となるガス)中の二酸化炭素を還元剤により還元して、一酸化炭素および水素を主成分としたガスに変換し、得られた一酸化炭素と水素を高炉にて再利用する方法である。
【0030】
なお、回収した酸化炭素含有ガス中の酸化炭素の濃度が80%未満であると、その後工程である還元工程において、反応器が大きくなる、他成分の顕熱の影響が大きくなるなど経済的でない。
【0031】
本発明の一実施形態では、原料となる酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)は、製鉄過程で発生したガスに限る必要はないが、後に還元剤(炭化水素系還元剤)にて還元する工程があるため、その酸素濃度が5%以下であることが望ましい。酸素濃度が5%より高いと燃焼により消費される還元剤が多くなるからである。
【0032】
そして、原料である酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)から酸化炭素(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素)を分離・回収する方法は、様々な既知の方法が利用できる。すなわち、二酸化炭素を分離・回収した後、一酸化炭素を分離・回収する方法や、あるいはその逆に一酸化炭素を分離・回収した後、二酸化炭素を分離・回収する方法や、さらには二酸化炭素および一酸化炭素を同時に分離・回収する方法である。
【0033】
ここで、二酸化炭素を分離・回収する方法としては、例えば、活性炭やゼオライトなどに吸着させ加熱あるいは減圧により分離・回収する方法(吸着分離法)、加圧あるいは冷却により液化あるいは固化する方法、苛性ソーダ、アミンなどの塩基性水溶液に吸収し加熱あるいは減圧により分離・回収する方法、二酸化炭素分離膜により分離・回収する方法、チタン酸バリウムなどの固体炭酸ガス吸収剤に吸収させ加熱あるいは減圧により分離・回収する方法など、既知の方法のいずれをも採用することが出来る。その中でも、特に後工程への影響が少なく、技術的に確立されている吸着分離法を用いることが好ましい。
【0034】
また、一酸化炭素を分離・回収する方法としては、例えば、銅/活性炭、銅/アルミナ、銅/ゼオライトなどの一酸化炭素吸着剤に吸着させ加熱あるいは減圧により分離・回収する方法(吸着分離法)、銅を主要成分とする一酸化炭素吸収液に吸収させ加熱あるいは減圧により分離・回収する方法など、既知の方法のいずれをも採用することが出来る。その中でも、特に後工程への影響が少なく、技術的に確立されている吸着分離法を用いることが好ましい。
【0035】
さらに、上記の二酸化炭素を分離・回収する方法と一酸化炭素を分離・回収する方法とを同時あるいは複合的に実施し、二酸化炭素および一酸化炭素を同時に分離しても良い。
【0036】
次に、上記のようにして分離・回収した酸化炭素中の二酸化炭素を還元して一酸化炭素を得る方法についても、既知の方法を用いることができる。例えば、下記(1)式のようなメタンを還元剤としたドライ・リフォーミングが挙げられる。
【0037】
CO + CH → 2CO + 2H ・・・(1)
このメタンを還元剤としたドライ・リフォーミング法は、触媒を用いれば700〜900℃にて反応が進行するが、1000℃を越えるような高温では熱的に反応が進行する。高炉へガスを吹き込む場合、高温であるほど望ましく、触媒を用いる方法でも熱的に反応を進行させる方法でも、いずれでも採用することが出来、反応後冷却する必要は無く、そのまま高炉に導入することが出来ると望ましい。このように高温の反応を行うためには、外部より熱を加える必要があるが、例えば高炉スラグや転炉スラグなどの未利用の顕熱を用いることも可能であり、加熱により不必要な炭酸ガスを発生させない意味からも望ましい。
【0038】
このドライ・リフォーミング法においては、使用する還元剤はメタンに限る必要はなく、液化石油ガス(LPG;Liquefied Petroleum Gas)などの炭化水素、メタノール、ジメチルエーテル(DME)などのアルコール類やエーテル類、アルデヒド類、ケトン類を用いることが可能である。
【0039】
ここで、還元剤としてLPGを使用した場合の二酸化炭素の還元反応式を下記(2)式に示し、還元剤としてDMEを使用した場合の二酸化炭素の還元反応式を下記(3)式に示す。
【0040】
3CO + C → 6CO + 4H ・・・(2)
CO + (CHO → 3CO + 3H ・・・(3)
なお、上記において、酸化炭素含有ガスから酸化炭素を分離・回収し、分離・回収した酸化炭素中の二酸化炭素を還元することによって、一酸化炭素(酸化炭素含有ガスから分離して得られた一酸化炭素と、酸化炭素含有ガスから分離した二酸化炭素を還元して得られた一酸化炭素)の濃度が80%以上となるガスを得る際には、別々に分離・回収した二酸化炭素と一酸化炭素を混合した後、還元してもよいし、あるいは、二酸化炭素を還元した後、別途分離・回収してあった一酸化炭素と混合してもよい。さらには、二酸化炭素と一酸化炭素を同時に分離・回収し、それを還元してもよい。
【0041】
これらの二酸化炭素と還元剤との反応では、二酸化炭素の転化率を50%以上とする条件を設定するのが好ましく、70%以上とすることが特に好ましい。
【0042】
上記の二酸化炭素とメタン、LPG、DME等の還元剤との反応は吸熱反応である。それゆえ、これらの反応を進行させるためには、外部より熱を加える必要がある。一方、製鉄所や化学工場では、利用されていない排熱がある場合がある。そこで、本発明の一実施形態においては、これらの排熱を吸熱反応を進行させるための熱源の一部または全部として用いても良い。具体的には、製鉄所における高炉スラグや転炉スラグの顕熱、赤熱コークスの顕熱などが挙げられる。
【0043】
そして、その一酸化炭素の濃度が80%以上のガスを高炉に導入する際の位置は、高炉の羽口付近であってもよいし、高炉上部であってもよい。
【0044】
上記のようにして、この実施形態においては、酸化炭素含有ガス(二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガス)を効率的に再利用し、実質的に二酸化炭素を抑制することができる。
【0045】
なお、上記において、二酸化炭素を還元して得られた水素は、その一部または全部を高炉に導入せずに、他の用途に用いてもよい。
【0046】
また、上記において、酸化炭素含有ガスが一酸化炭素を含有していない場合は、上記に示した一酸化炭素の分離・回収は行わない。また、酸化炭素含有ガスが一酸化炭素を含有していても、その含有量が少ない等で一酸化炭素を分離・回収しない場合も同様である。
【実施例1】
【0047】
図1に本発明の実施例1(本発明例1)を示す。
【0048】
本発明例1として、図1に示すように、高炉1から発生した高炉ガス(窒素:52%、二酸化炭素:22%、一酸化炭素:23%、水素:3%)を、二酸化炭素吸着剤と一酸化炭素吸着剤とを混合した吸着剤を充填した吸着塔(PSAユニット)2において、絶対圧力200kPaにて吸着させ、これを絶対圧力7kPaにて脱着させ、二酸化炭素と一酸化炭素の合計の濃度が99%のガスを得た。そして、この二酸化炭素と一酸化炭素の混合ガスを、二酸化炭素と同量のDME(還元剤)と混合し、改質反応器3において、銅系触媒存在下、常圧、280℃にて改質反応を行ったところ、二酸化炭素の90%が転化し、改質反応による生成酸化炭素中の一酸化炭素の濃度が95%となった。全生成物中の一酸化炭素および水素の濃度は、それぞれ49%、47%となった。これを高炉の羽口にそのまま導入した。
【0049】
これにより、本発明においては、酸化炭素含有ガス(高炉ガス等)を効率的に再利用し、実質的に二酸化炭素を抑制することができることが確認された。
【実施例2】
【0050】
図2に本発明の実施例2(本発明例2)を示す。
【0051】
本発明例2として、図2に示すように、高炉1から発生した高炉ガス(窒素:52%、二酸化炭素:22%、一酸化炭素:23%、水素:3%)を、30℃に保持されたMEA(モノエタノールアミン)水溶液を入れた吸収塔4に流通させ、二酸化炭素を吸収させた。二酸化炭素を吸収させたMEA水溶液を回収塔5において100℃に加温し、二酸化炭素を放出させ、この発生ガスを冷却することにより、水を凝縮させ、二酸化炭素を回収した。二酸化炭素の純度は99%であった。この二酸化炭素とメタンを主成分とする天然ガスと混合し、900℃にてニッケル系触媒の存在下で改質反応を行った。この結果、二酸化炭素の98%が反応し、生成物中の一酸化炭素および水素の濃度は、共に49%となった。これを高炉の羽口にそのまま導入した。
【0052】
これにより、本発明においては、酸化炭素含有ガス(高炉ガス等)を効率的に再利用し、実質的に二酸化炭素を抑制することができることが確認された。
【実施例3】
【0053】
図3に本発明の実施例3(本発明例3)を示す。
【0054】
本発明例3として、図3に示すように、前述の本発明例1における改質反応器3の熱源として、高温の高炉スラグ10を用いた。その他は本発明例1と同様の方法で行った。高温の高炉スラグ10は、スラグ顕熱回収装置6において、熱媒を加熱し、さらにジメチルエーテル9を加熱して、低温の高炉スラグ11となる。スラグ顕熱回収装置6にて加熱されたジメチルエーテル9は、改質反応器3に送られる。一方、加熱された熱媒は、熱媒循環ライン7によって改質反応器3に送られ、炭酸ガスとジメチルエーテルが一酸化炭素と水素に改質される吸熱反応へ反応熱を供給することによって冷却され、熱媒循環ポンプ8によって再度スラグ顕熱回収装置6に送られる。
【0055】
そして、本発明例1と同じ条件にて試験を行ったところ、二酸化炭素の88%が転化し、改質反応による生成酸化炭素中の一酸化炭素の濃度が93%となった。全生成物中の一酸化炭素および水素の濃度は、それぞれ48%、46%となった。これを高炉の羽口にそのまま導入した。
【0056】
これにより、本発明においては、酸化炭素含有ガス(高炉ガス等)を効率的に再利用し、実質的に二酸化炭素を抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0057】
1 高炉
2 PSAユニット
3 改質反応器
4 吸収塔
5 回収塔
6 スラグ顕熱回収装置
7 熱媒循環ライン
8 熱媒循環ポンプ
9 ジメチルエーテル
10 高炉スラグ(高温)
11 高炉スラグ(低温)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を分離した後、分離した前記二酸化炭素または、前記二酸化炭素と一酸化炭素を炭化水素系還元剤と接触させて一酸化炭素と水素に転化させ、得られた一酸化炭素を高炉に導入することを特徴とする酸化炭素含有ガスの利用方法。
【請求項2】
二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガスが、製鉄所で副生する高炉ガスであることを特徴とする請求項1に記載の酸化炭素含有ガスの利用方法。
【請求項3】
二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガスが、製鉄所で副生する転炉ガスであることを特徴とする請求項1に記載の酸化炭素含有ガスの利用方法。
【請求項4】
二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素または、二酸化炭素と一酸化炭素を分離する方法が、吸着分離法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化炭素含有ガスの利用方法。
【請求項5】
炭化水素系還元剤が、メタンを主成分とするガスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化炭素含有ガスの利用方法。
【請求項6】
炭化水素系還元剤が、液化石油ガスを主成分とするガスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化炭素ガス含有ガスの利用方法。
【請求項7】
炭化水素系還元剤が、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを主成分とするガスおよび/または液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化炭素ガス含有ガスの利用方法。
【請求項8】
分離した前記二酸化炭素または、前記二酸化炭素と一酸化炭素を炭化水素系還元剤と接触させて一酸化炭素と水素に転化させる際の熱源の一部あるいは全部として、製鉄所の排熱を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の酸化炭素ガス含有ガスの利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−202271(P2011−202271A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17404(P2011−17404)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】