説明

酸化物超電導線材の製造方法、酸化物超電導線材の改質方法、および酸化物超電導線材

本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、酸化物超電導体の原材料粉末を金属(3)で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1〜S2)と、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で線材を熱処理する熱処理工程(S4,S6)とを備えている。熱処理工程(S4,S6)における熱処理前の昇温時には、金属(3)の0.2%耐力が熱処理時の全圧力よりも小さくなる温度から加圧が開始される。これにより、酸化物超電導結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成を抑止するとともに、熱処理時の酸素分圧制御を容易にすることにより臨界電流密度を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物超電導線材の製造方法、酸化物超電導線材の改質方法、および酸化物超電導線材に関し、特に、臨界電流密度を向上することができる酸化物超電導線材の製造方法、酸化物超電導線材の改質方法、および酸化物超電導線材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酸化物超電導線材の製造方法として、酸化物超電導体の原材料粉末を金属管に充填した後、伸線加工や圧延加工を金属管に施すことによって得られた線材を熱処理して酸化物超電導体の原材料粉末を焼結し、酸化物超電導線材を得る方法が知られている。しかしながら、上記の焼結のための熱処理工程において線材に膨れが生じることにより、得られた酸化物超電導線材の超電導特性が低下する等の問題があった。
【0003】
そこで特開平5−101723号公報(特許文献1)では、酸化物超電導体の粉末を充填してなる金属管またはその偏平体を加圧雰囲気中で加熱処理して酸化物超電導体の粉末を焼結させることを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法が提案されている。この方法によれば、加圧熱処理することによって超電導特性に優れた線材が得られると上記公報に記載されている。
【0004】
具体的には、酸化物超電導体の粉末を充填した金属管を耐熱耐圧の密閉容器内に収容し、密閉容器内の温度上昇に伴なって増大する内部の圧力の上昇によって焼結時の膨れを防止することが試みられている。このときの内部圧は、気体の状態方程式などから求めることができ、たとえば、温度900℃程度の加熱温度では約4気圧の内部圧を得ることができると上記公報に記載されている。
【0005】
また、特許第2592846号公報(特開平1−30114号公報)(特許文献2)には、熱処理時と熱処理後との少なくとも一方において、内部に酸化物超電導粉末などを充填した金属管を高圧力状態に保持することを特徴とする酸化物超電導導体の製造方法が提案されている。この方法によれば、高圧力状態に置くことによって、焼結時に生じる酸化物超電導体と金属管との界面における部分的剥離をなくすことができると上記公報に記載されている。
【0006】
具体的には、内部に酸化物超電導粉末を充填した金属管を、熱処理時と熱処理後との少なくとも一方において、500〜2000kg/cm(約50〜200MPa)の高圧力状態に保持することにより金属管を焼結体側に圧着することができる。これにより、超電導体が部分的にクエンチ現象を生じた場合に、このクエンチ現象によって発生した熱を速やかに取り去ることができる。また、これ以外に、剥離部が応力集中部になり、歪を生じることによる超電導特性の劣化を防止することもできる。
【特許文献1】特開平5−101723号公報
【特許文献2】特許第2592846号公報(特開平1−30114号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開平5−101723号公報では、密閉容器内の温度上昇に伴なって得られる内部圧は4気圧(0.4MPa)程度である。これにより、焼結時に酸化物超電導結晶間に空隙が生成され、それにより臨界電流密度が低下するという問題があった。
【0008】
また、内部圧が4気圧(0.4MPa)程度であるため、焼結時に生成する酸化物超電導線材の膨れを十分に抑制できず、それにより、臨界電流密度が低下するという問題もあった。
【0009】
また、特許第2592846号公報の方法では、加える圧力が500〜2000kg/cm(約50MPa〜200MPa)と高すぎるために熱処理時の酸素分圧制御が困難となり、臨界電流密度が低下してしまう。
【0010】
そこで、本発明の目的は、酸化物超電導結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成を抑止するとともに熱処理時の酸素分圧制御を容易にすることにより、臨界電流密度を向上することができる酸化物超電導線材の製造方法、酸化物超電導線材の改質方法、および酸化物超電導線材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程と、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で線材を熱処理する熱処理工程とを備えている。熱処理工程における熱処理前の昇温時には、金属の0.2%耐力が熱処理時の全圧力よりも小さくなる温度から加圧が開始される。
【0012】
本発明の酸化物超電導線材の改質方法は、酸化物超電導体を金属で被覆した形態を有する酸化物超電導線材を、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で熱処理する熱処理工程を備えている。熱処理工程における熱処理前の昇温時には、金属の0.2%耐力が熱処理時の全圧力よりも小さくなる温度から加圧が開始される。
【0013】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法または改質方法によれば、金属の0.2%耐力が熱処理時の加圧雰囲気の全圧力よりも小さくなっている状態で、線材に圧力が加えられる。このため、熱間加工と同様の効果により、加圧による圧縮力を受けて金属の部分が圧縮しやすくなる。したがって、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する前に線材が圧縮されるため、加圧により空隙や膨れの生成を十分抑止することができる。その結果、酸化物超電導体の焼結密度を向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【0014】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法は、酸化物超電導体の原材料粉末を銀を含む金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程と、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で線材を熱処理する熱処理工程とを備えている。熱処理工程における熱処理前の昇温時には、雰囲気の温度が400℃以上となってから加圧が開始される。
【0015】
本発明の酸化物超電導線材の改質方法は、酸化物超電導体を銀を含む金属で被覆した形態を有する酸化物超電導線材を、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で熱処理する熱処理工程を備えている。熱処理工程における熱処理前の昇温時には、雰囲気の温度が400℃以上となってから加圧が開始される。
【0016】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法または改質方法によれば、熱処理時の加圧雰囲気の全圧力と同程度にまで銀を含む金属の0.2%耐力が低下している状態で、線材に圧力が加えられる。このため、熱間加工と同様の効果により、加圧による圧縮力を受けて金属の部分が圧縮しやすくなる。したがって、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する前に線材が圧縮されるため、加圧により空隙や膨れの生成を十分抑止することができる。その結果、酸化物超電導体の焼結密度を向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【0017】
上記製造方法および改質方法において好ましくは、熱処理工程における熱処理前の昇温時には、雰囲気の温度が600℃以上となってから加圧が開始される。
【0018】
これにより、熱処理時の加圧雰囲気の全圧力の2分の1程度にまで銀を含む金属の0.2%耐力が低下している状態で、線材に圧力が加えられる。このため、加圧による圧縮力を受けて金属の部分が一層圧縮しやすくなる。その結果、酸化物超電導体の焼結密度を一層向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を一層向上することができる。
【0019】
上記製造方法および改質方法において好ましくは、加圧の速度は0.05MPa/min以上である。
【0020】
本願発明者らは、熱処理工程において、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する速度は約0.05MPa/min未満であることを見出した。したがって、熱処理前の昇温時において、0.05MPa/min以上の速度で雰囲気の全圧力が増加し続けるように制御することで、常に線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力を高く保ち続けることができる。これにより、熱処理工程前の線材がピンホールを有しているか否かにかかわらず、熱処理前の昇温時において線材に対して圧縮する力を加えることができるので、空隙や膨れの生成が抑止される。その結果、1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中での熱処理により酸化物超電導体の焼結密度を効果的に向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を効果的に向上することができる。
【0021】
上記製造方法および改質方法において好ましくは、加圧の速度は0.1MPa/min以上である。
【0022】
これにより、線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力をさらに高く保ち続けることができる。したがって、熱処理工程前の線材がピンホールを有しているか否かにかかわらず、熱処理前の昇温時において線材に対して圧縮する力をさらに大きく加えることができるので、空隙や膨れの生成が抑止される。その結果、1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中での熱処理により酸化物超電導体の焼結密度を一層効果的に向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を一層効果的に向上することができる。
【0023】
上記製造方法および改質方法において好ましくは、熱処理工程は酸素雰囲気中で行なわれ、かつ、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa以下である。
【0024】
このように酸素分圧を0.003MPa以上0.02MPa以下の範囲に保つことにより、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度を向上させることが可能となる。なお、酸素分圧が0.02MPaを超えると異相が生成し、0.003MPa未満では酸化物超電導相が生成しにくくなり臨界電流密度が低下する。
【0025】
上記製造方法において好ましくは、酸化物超電導体の原材料粉末はBi2223相を含み、熱処理工程において、300℃以上600℃以下の温度の酸素を含む雰囲気中で酸化物超電導線材がアニールされる。
【0026】
上記改質方法において好ましくは、酸化物超電導線材はBi2223相を含み、熱処理工程において、300℃以上600℃以下の温度の酸素を含む雰囲気中で酸化物超電導線材がアニールされる。
【0027】
本願発明者らは、Bi2223相を主体とする酸化物超電導体にBi2212相が含まれていることに着目し、鋭意検討した結果、酸素雰囲気中でアニールすることによりそのBi2212相の酸素含有量が変化することで、20K程度の低温における臨界電流密度が向上することを見出した。以下、20K程度の低温において臨界電流密度が向上することの原理について説明する。
【0028】
酸化物超電導線材の酸化物超電導体(酸化物超電導体フィラメント)中には、Bi2223相を主体としてBi2212相が含まれている(酸化物超電導体の100%を2223相とした線材は現状では実現されていない)。このような線材に酸素雰囲気中でアニールを施し、Bi2212相に酸素を吸収させると、下記のような性質によって線材の低温特性が向上する。
【0029】
(1)Bi2212相について
Bi2212相では、酸素雰囲気中でアニールすることにより、酸素の含有量が大きく変化する。つまり、酸素雰囲気中でアニールすることにより、(BiPb)SrCaCu8+zのzが変化し、Bi2212相の臨界温度(T)や臨界電流密度(J)が変化する。具体的には、zが大きくなると、臨界温度Tは低下する(70K〜90Kの範囲で変化する)。また、20K程度の低温での臨界電流密度Jが上がり、77K程度の高温での臨界電流密度Jが下がる。
【0030】
このような変化が生じる理由は、Bi2212相中の酸素量が増えると伝導を担うキャリア(ホール)濃度が増えることに起因している。つまり、臨界温度Tに関しては、Tが高くなる最適なホール濃度が存在するため、酸素を入れ過ぎると臨界温度Tは低下するが、臨界温度Tより十分低温での臨界電流密度Jに関しては、キャリア濃度が高いほど電気伝導が良くなるため臨界電流密度Jは向上する。また、高温での臨界電流密度Jに関しては、臨界温度T(たとえば77K:Bi2212相の臨界温度Tがそれに近くあるいはそれ以下となるため)が下がるため、臨界電流密度Jも低下することになる。
【0031】
(2)Bi2223相について
Bi2223相は、酸素を吸収したり、排出することは非常に少なく、酸素雰囲気中でアニールしても酸素含有量が変化することはほとんどない。つまり、(BiPb)SrCaCu10+zのzはほとんどゼロから変化しない。よって、酸素雰囲気中でアニールしてもBi2223相の臨界温度Tや臨界電流密度Jが変化することはない。
【0032】
上記をまとめると下の表1のようになり、その表1にあるように酸素雰囲気中でのアニールによってBi2223相の性質が変化しないのに対し、Bi2212相は酸素を含有してその性質を変化させるため、線材全体として20K程度の低温での臨界電流密度Jが向上することになる。
【0033】


【0034】
またアニール温度を300℃以上600℃以下としたことにより、Bi2212相に効果的に酸素を含有できるとともに、Bi2223相の分解を防止することができる。つまり、300℃未満では、Bi2212相への酸素の出入りが起こらず、700℃を超えると、主相であるBi2223相が分解してしまう。
【0035】
上記製造方法において好ましくは、熱処理工程の前に、線材を捩り加工する工程をさらに備えている。これにより、ツイスト線の酸化物超電導線材に膨れが生成することを抑止でき、臨界電流密度を向上できる。
【0036】
上記製造方法において好ましくは、線材を圧延加工しない。これにより、丸線の酸化物超電導線材に膨れが生成することを抑止できる。
【0037】
上記製造方法において好ましくは、酸化物超電導体の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程において、原材料粉末をセラミックで被覆したセラミック被覆ロッドを金属で被覆した形態を有する線材を作製する。これにより、セラミック被覆層を有する酸化物超電導線材に膨れが生成することを抑止できる。
【0038】
上記製造方法において好ましくは、熱処理工程の前に、線材をコイル形状に成形する工程をさらに備えている。これにより、線材の膨れを抑止しつつ、酸化物超電導線材のコイルにおける臨界電流値の劣化を効果的に抑止することができる。
【0039】
上記製造方法において好ましくは、熱処理工程における加圧を開始する前には、線材を減圧雰囲気下で保持する。
【0040】
上記改質方法において好ましくは、熱処理工程における加圧を開始する前には、酸化物超電導線材を減圧雰囲気下で保持する。
【0041】
これにより、熱処理時の加圧が開始される前の状態でも線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力が高くならないので、線材内部にガスが侵入しにくくなり、線材への膨れの発生をえさらに抑止することができる。
【0042】
本発明の酸化物超電導線材は、酸化物超電導体の焼結密度が95%以上であり、好ましくは99%以上である。
【0043】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法あるいは酸化物超電導線材の改質方法を用いれば、従来製造することのできなかった高い焼結密度の酸化物超電導体を有する酸化物超電導線材を得ることができる。そして酸化物超電導線材における酸化物超電導体の焼結密度を向上することにより、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【0044】
なお、本明細書中で「Bi2223相」とは、ビスマスと鉛とストロンチウムとカルシウムと銅とを含み、その原子比として(ビスマスと鉛):ストロンチウム:カルシウム:銅が2:2:2:3と近似して表されるBi−Sr−Ca−Cu−O系の酸化物超電導相であり、具体的には(BiPb)SrCaCu8+z超電導相のことである。
【0045】
また、「Bi2212相」とは、ビスマスと鉛とストロンチウムとカルシウムと銅とを含み、その原子比として(ビスマスと鉛):ストロンチウム:カルシウム:銅が2:2:1:2と近似して表されるBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の酸化物超電導相であり、具体的には(BiPb)2SrCaCu8+z超電導相のことである。
【発明の効果】
【0046】
本発明の酸化物超電導線材の製造方法によれば、金属の0.2%耐力が熱処理時の加圧雰囲気の全圧力よりも小さくなっている状態で、線材に圧力が加えられる。このため、熱間加工と同様の効果により、加圧による圧縮力を受けて金属の部分が圧縮しやすくなる。したがって、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する前に線材が圧縮されるため、加圧により空隙や膨れの生成を十分抑止することができる、その結果、酸化物超電導体の焼結密度を向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
[図1]酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図を示した図である。
[図2]本発明の実施の形態1における酸化物超電導線材の製造工程を示す図である。
[図3]熱間等方圧加圧法(HIP)装置の概略断面図である。
[図4](a)〜(d)酸化物超電導結晶間の空隙の挙動を段階的に示す概念図である。
[図5]加圧雰囲気の全圧力P(MPa)と線材の膨れ数(個/10m)の関係を示す図である。
[図6]窒素が約80%、酸素が約20%の割合の混合ガスについての全圧力と酸素分圧とを表した図である。
[図7]酸素分圧を一定にした場合の全圧力と酸素濃度値の関係を表した図である。
[図8]ピンホールのある酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。
[図9A]加圧雰囲気中での熱処理工程前後におけるピンホールのない酸化物超電導線材の線材厚さを示すグラフである。
[図9B]加圧雰囲気中での熱処理工程前後におけるピンホールのある酸化物超電導線材の線材厚さを示すグラフである。
[図10]本発明の実施の形態2における熱処理工程の温度および圧力と、時間との関係を示す図である。
[図11]本発明の実施の形態3における熱処理前の昇温時および熱処理時の温度、全圧力および酸素分圧と、時間との関係の一例を示す図である。
[図12]加圧を開始する温度を変えた場合の加圧速度と焼結密度との関係を示す図である。
[図13]銀の0.2%耐力の温度依存性を示す図である。
[図14]酸化物超電導体の焼結密度と酸化物超電導線材の臨界電流値との関係を示す図である。
[図15]本発明の実施の形態4における熱処理後にアニールを行なう場合の温度、全圧力および酸素分圧と、時間との関係の一例を示す図である。
[図16]アニールを行なう前と、500℃の温度でアニールを行なった後との酸化物超電導線材の各温度における臨界電流値を示す図である。
[図17]ツイスト線の酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。
[図18]ツイスト線の酸化物超電導線材の製造工程を示す図である。
[図19]多芯線を捩り加工する様子を模式的に示す部分断面斜視図である。
[図20]丸線の酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。
[図21]セラミック被覆層を有する酸化物超電導線材の構成を概念的に示す断面図である。
[図22]本発明の実施の形態6における酸化物超電導線材の製造方法の第1工程を模式的に示す図である。
[図23]本発明の実施の形態6における酸化物超電導線材の製造方法の第2工程を模式的に示す図である。
[図24]本発明の実施の形態6における酸化物超電導線材の製造方法の第3工程を模式的に示す図である。
[図25]コイル形状の酸化物超電導線材の構成を示す斜視図である。
[図26]本発明の実施の形態7における酸化物超電導線材の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b 酸化物超電導線材、2,2a〜2c 酸化物超電導体フィラメント、3,3a〜3c シース部、4 ガス導入口、5 上蓋、6 圧力容器円筒、7 断熱層、8 処理品、9 ヒータ、10 支持具、11 下蓋、12 超電導結晶、13 装置、14 ピンホール、21 セラミック被覆層、22 セラミック被覆ロッド、25 ロッド。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について、図に基づいて説明する。
【0050】
(実施の形態1)
図1は、酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。
【0051】
図1を参照して、たとえば、多芯線の酸化物超電導線材について説明する。酸化物超電導線材1は、長手方向に伸びる複数本の酸化物超電導体フィラメント2と、それらを被覆するシース部3とを有している。複数本の酸化物超電導体フィラメント2の各々の材質は、たとえばBi−Pb−Sr−Ca−Cu−O系の組成が好ましく、特に、(ビスマスと鉛):ストロンチウム:カルシウム:銅の原子比がほぼ2:2:2:3の比率で近似して表されるBi2223相を含む材質が最適である。シース部3の材質は、たとえば銀よりなっている。
【0052】
なお、上記においては多芯線について説明したが、1本の酸化物超電導体フィラメント2がシース部3により被覆される単芯線構造の酸化物超電導線材が用いられてもよい。
【0053】
次に、上記の酸化物超電導線材の製造方法について説明する。
【0054】
図2は、本発明の実施の形態1における酸化物超電導線材の製造工程を示す図である。
【0055】
図2を参照して、まず、酸化物超電導体の原材料粉末が金属管に充填される(ステップS1)。この酸化物超電導体の原材料粉末は、たとえば、Bi2223相を含む材質よりなっている。
【0056】
なお、金属管としては熱伝導率の高い銀や銀合金などを用いるのが好ましい。これにより、超電導体がクエンチ現象を部分的に生じた場合に発生した熱を金属管から速やかに取り去ることができる。
【0057】
次に、上記線材を伸線加工することにより、前駆体を芯材として銀などの金属で被覆された単芯線が形成される(ステップS1a)。次に、この単芯線が多数束ねられて、たとえば銀などの金属よりなる金属管内に嵌合される(多芯嵌合:ステップS1b)。これにより、原材料粉末を芯材として多数有する多芯構造の線材が得られる。次に、多芯構造の線材を伸線加工することによって、原材料粉末がたとえば銀などのシース部に埋め込まれた多芯線が形成される(ステップS2)。これにより、酸化物超電導線材の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する多芯線の線材が得られる。
【0058】
この線材に1次圧延が行なわれ(ステップS3)、その後に1回目の熱処理が行なわれる(ステップS4)。これらの操作により原材料粉末から酸化物超電導相が生成される。この熱処理を施された線材に2次圧延が施される(ステップS5)。これにより1回目の熱処理で生じたボイドが除去される。2次圧延された線材に2回目の熱処理が施される。(ステップS6)。2回目の熱処理で酸化物超電導相の焼結が進むと同時に酸化物超電導相の単相化が行なわれる。
【0059】
上記の製造方法により、たとえば図1に示す酸化物超電導線材を製造することができる。
【0060】
本実施の形態においては、1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかが、全圧力として1MPa以上50MPa未満の圧力を加えた加圧雰囲気中で行なわれる。
【0061】
この加圧雰囲気中における熱処理は、たとえば熱間等方圧加圧法(HIP)により行なわれる。この熱間等方圧加圧法について以下に説明する。
【0062】
図3は、熱間等方圧加圧法(HIP)装置の概略断面図である。
【0063】
図3を参照して、熱間等方圧加圧法を行なう装置13は、圧力容器円筒6と、その圧力容器円筒6の両端を密閉する上蓋5および下蓋11と、圧力容器円筒6中にガスを導入するために上蓋5に設けられたガス導入口4と、処理品8を加熱するヒータ9と、断熱層7と、処理品8を支える支持具10とにより構成されている。
【0064】
本実施の形態では、原材料粉末を金属管に充填した後に伸線・圧延した線材が、処理品8として圧力容器円筒6内で支持具10に支持される。この状態で、ガス導入口4から所定のガスが圧力容器円筒6内に導入されることで、圧力容器円筒6内は1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気とされ、その加圧雰囲気下でヒータ9により線材8が所定温度に加熱される。この熱処理は酸素雰囲気中で行なわれることが好ましく、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa以下であることが好ましい。このようにして線材8に熱間等方圧加圧による熱処理が施される。
【0065】
本実施の形態によれば、上記のように1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中で熱処理を行なうことにより、主に以下の3つの効果が得られる。
【0066】
第一に、熱処理時に酸化物超電導結晶間に生成する空隙を少なくすることができる。
【0067】
本願発明者は、1MPa以上の加圧雰囲気中で熱処理することにより、主に熱処理時に生成する酸化物超電導結晶間の空隙を、1MPa未満の場合よりも格別に少なくできることを見出した。
【0068】
図4(a)〜(d)は、酸化物超電導結晶間の空隙の挙動を段階的に示す概念図である。
【0069】
図4(a)〜(d)を参照して、加圧雰囲気中で熱処理すると、熱処理時に生成する超電導結晶12の間の接触面積が塑性流動により増加し、超電導結晶12の間に存在している数μm〜数十μmオーダーの空隙が減少する(図4(a)→図4(b))。この状態で保持すると、図4(c)のようにクリープ変形を起こし、接合界面に存在している空隙が収縮するとともに、酸化被膜などの汚染部が一部破壊・分解し、原子の拡散が生じ焼結が進行する。そして最終的に図4(d)のように超電導結晶12の間の空隙がほとんどなくなり、安定した接合界面が形成される。
【0070】
ここで、超電導線に電流を流すということは、超電導線材を構成する超電導結晶間に電流を流すことである。通常、超電導線を使用する冷媒中(たとえば液体窒素やヘリウム、または冷凍機)において、超電導状態(電気抵抗を発生しない)を維持して流すことができる電流量を制限するのは超電導状態が弱い超電導結晶間の接合部である(超電導結晶の方が結晶間の接合部より超電導性は強い)。超電導結晶間の接合部の隙間は、通常の大気焼結ではどうしても残留する。このため、超電導結晶間の隙間を減らすことにより、超電導線の性能が良くなり、臨界電流密度の低下を防止することができる。
【0071】
具体的には、Bi2223相を含む酸化物超電導線材について、大気圧中で熱処理した場合の酸化物超電導体の焼結密度は80〜90%であるのに対し、加圧雰囲気の全圧力を10MPaとして熱処理した場合の酸化物超電導体の焼結密度は93〜96%であり、酸化物超電導体結晶間に生成する空隙の減少が見られた。
【0072】
第二に、熱処理時に生成する酸化物超電導線材の膨れを防止することができる。
【0073】
本願発明者は、酸化物超電導線材を加圧雰囲気中で熱処理する際に全圧力を変えたときの熱処理後の線材に生じた膨れ数を調べた。図5は、加圧雰囲気の全圧力P(MPa)と線材の膨れ数(個/10m)の関係を示す図である。
【0074】
図5を参照して、加圧雰囲気の全圧力が0.5MPaを超えると酸化物超電導線材中の膨れが大幅に減少し、さらに1MPa以上になると、酸化物超電導線材中の膨れがほぼなくなることがわかる。このような結果が得られた理由は以下のように考えられる。
【0075】
金属管中の酸化物超電導体の粉末は通常、焼結前には理論密度の約80%の充填率であるため、粉末の隙間内にはガスが存在する。この粉末の隙間内のガスは熱処理時に高温になると体積膨張し、線材に膨れを生じさせる。しかし、本実施の形態では1MPa以上の加圧雰囲気で熱処理が行なわれるため、金属管内部の圧力よりも金属管外部の圧力を大きくできる。このため、粉末の隙間内のガスによる線材の膨れが防止されるものと考えられる。
【0076】
また、本願発明者が線材の膨れの原因をさらに検討したところ、酸化物超電導体の原材料粉末に付着している炭素(C)、水(HO)、酸素(O)などの吸着物が焼結中に気化して、この気体によって金属管内の体積が膨張して線材の膨れが発生することもわかった。しかし、この粉末の吸着物の気化による線材の膨れも、1MPa以上の加圧雰囲気で熱処理を行なうことにより、金属間の内部の圧力よりも外部の圧力を大きくできるため防止できるものと考えられる。
【0077】
以上により、1MPa以上とすることで、このような酸化物超電導体の原材料粉末の隙間に存在するガスによる膨れだけでなく、その粒子の表面に付着している吸着物の気化による膨れもほとんどなくすことができると考えられる。酸化物超電導線材の膨れは臨界電流密度を低下させる原因となるものであるので、線材の膨れを防止することで、臨界電流密度の低下を防止することができる。
【0078】
第三に、熱処理時における酸素分圧の制御を容易にすることができる。
【0079】
本願発明者は、全圧力にかかわらず、酸素分圧を0.003MPa以上0.02MPa以下に制御することにより、Bi系酸化物超電導体の2223相が安定して生成することを見出した。すなわち、酸素分圧が0.02MPaを超えるとCaPbOのような異相が生成してしまい、0.003MPa未満になるとBi2223相が生成しにくくなり、臨界電流密度が低くなる。
【0080】
図6は、窒素が約80%、酸素が約20%の割合の混合ガスについての全圧力と酸素分圧とを表した図である。図7は、酸素分圧を一定にした場合の全圧力と酸素濃度値の関係を表した図である。
【0081】
図6を参照して、たとえば、加圧雰囲気の全圧力が1気圧(0.1MPa)の大気圧である場合には、酸素分圧制御を行なわなくとも、酸素分圧が点線で示す0.2気圧(0.02MPa)のレベルと同等であるため、Bi2223相が安定して生成する。しかしながら、加圧雰囲気の全圧力が2気圧、3気圧・・・と大きくなるにつれて、酸素分圧も大きくなるため、点線で示す0.2気圧のレベルを超えてしまう。その結果Bi2223相が安定して生成しなくなる。そこで、図7に示すように混合ガス中の酸素ガスの混合割合を変えることにより酸素分圧を0.003MPa以上0.02MPa以下に制御する必要がある。なお、図7の点線は図6の点線と同様に0.2気圧(0.02MPa)のレベルを示している。
【0082】
実際の酸素分圧制御は、全圧力と酸素濃度とがモニターされることで行なわれる。すなわち、酸素分圧は全圧力の値に酸素濃度を掛けることで算出される。このため、たとえば、全圧力が50MPaのときには、0.005MPaの酸素分圧で熱処理を行なう場合、酸素濃度は0.01%となる。したがって、0.01%の酸素濃度を測定して、注入する混合ガスを制御する必要がある。しかしながら、0.01%の酸素濃度は測定誤差と同程度であるため、この酸素濃度を正確に測定し、注入する混合ガス中の酸素ガスを制御することは困難である。本実施の形態では、加圧雰囲気の全圧力を50MPa未満とすることにより、酸素濃度の測定誤差の影響を少なくし、注入する混合ガス中の酸素ガスの濃度をある程度高く保つことができるため、酸素分圧を容易に制御することが可能となる。
【0083】
なお、本実施の形態では、窒素および酸素にて加圧雰囲気が構成されている場合について示したが、希ガスおよび酸素にて加圧雰囲気が構成されていればよい。したがって、たとえばアルゴンおよび酸素にて加圧雰囲気が構成されてもよい。
【0084】
(実施の形態2)
ところで、酸化物超電導線材の原材料粉末を金属で被覆した形態を有する線材にピンホールがない場合には、上記の圧力範囲(1MPa以上50MPa未満)で熱処理すれば空隙や膨れの生成が効果的に抑止できるが、ピンホールがある場合には、上記の圧力範囲で熱処理するだけでは空隙や膨れの生成が十分に抑止できないことがわかった。
【0085】
図8は、ピンホールのある酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。図8を参照して、ピンホール14が外部から酸化物超電導体フィラメント2まで貫通するように形成されている。なお、図8の上述した以外の構成は、図1に示す構成とほぼ同じであるため、同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
図9Aは、加圧雰囲気中での熱処理工程前後におけるピンホールのない酸化物超電導線材の線材厚さを示すグラフ、図9Bは、加圧雰囲気中での熱処理工程前後におけるピンホールのある酸化物超電導線材の線材厚さを示すグラフである。図9A、図9Bの熱処理の条件は、全圧力20MPa、酸素分圧0.008MPa、雰囲気の温度825℃、熱処理時間50時間である。
【0087】
図9Aを参照して、ピンホールのない酸化物超電導線材は、熱処理後において厚さが約0.006mm〜0.01mm減少している。これは、全圧力20MPaの加圧雰囲気中で熱処理されることにより、酸化物超電導結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成が抑止されているためである。
【0088】
一方、図9Bを参照して、ピンホールのある酸化物超電導線材は、熱処理後において厚さが約0.002mm〜0.005mmしか減少せず、酸化物超電導結晶間の空隙および酸化物超電導線材の膨れの生成が十分に抑止されていない。また、線材中のピンホールがあった部分(A部分)は、熱処理前よりも熱処理後の方が厚くなっている。
【0089】
以上により、ピンホールがない場合には、上記の圧力範囲(1MPa以上50MPa未満)で熱処理すれば空隙や膨れの生成が効果的に抑止できるが、ピンホールがある場合には、上記の圧力範囲で熱処理するだけでは空隙や膨れの生成が十分に抑止できないことがわかった。
【0090】
本発明における加圧雰囲気中での熱処理においては、1MPa以上という大きな線材外部の圧力によって、熱処理時に生成する超電導結晶の塑性流動およびクリープ変形が起こるため、熱処理時に生成する酸化物超電導結晶間の空隙は抑止される。また、熱処理時に生成する酸化物超電導結晶粉末の隙間内のガスや熱処理時に生成する酸化物超電導結晶粉末に付着したガスが、熱処理時に膨張することを、金属管外部からの圧力により抑制することができるので、酸化物超電導線材の膨れの生成は抑止される。以上の結果、空隙や膨れによる臨界電流密度の低下は防止される。
【0091】
しかし、ピンホールのある線材は、上記の加圧雰囲気中での熱処理が行なわれても、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する。このため、線材内外での圧力差がなくなり、加圧雰囲気での熱処理によっても空隙や膨れの生成が十分抑止されない。その結果、臨界電流密度の低下が防止される効果が小さくなっている。
【0092】
ここで、図8を参照して、外部から酸化物超電導体フィラメント2まで貫通するようなピンホール14が生成しないように、シース部3の厚みWを大きくすることも考えられる。しかしながら、シース部3の厚みWを大きくすれば、酸化物超電導線材1における酸化物超電導体フィラメント2の割合が小さくなるので、単位面積当たり流すことのできる電流が減少してしまう。そこで本願発明者らは、鋭意検討し、次に説明する手法を用いれば、ピンホールのある線材であってもシース部3の厚みWを大きくすることなく空隙や膨れの生成が抑止され、臨界電流密度を向上することができることを見出した。
【0093】
その手法においては、1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかの熱処理工程における熱処理前の昇温時に、0.05MPa/min以上の速度で加圧される。そして、熱処理時には、雰囲気の全圧力が増加し続けるように制御される。さらに、熱処理直後の降温時には、降温による圧力の低下を補うように(圧力を追加するように)制御される。
【0094】
図10は、本発明の実施の形態2における熱処理工程の温度および圧力と、時間との関係を示す図である。
【0095】
図10を参照して、熱処理前の昇温時には、雰囲気の温度がたとえば700℃以下の場合には、気体の状態方程式にしたがって緩やかに圧力が増加される。そして、雰囲気の温度が700℃を超えるあたりで、雰囲気の圧力が10MPa程度まで増加される。このとき、雰囲気の圧力は0.05MPa/min以上の加圧速度で一気に増加される。
【0096】
ここで、本願発明者らは、ピンホールのある酸化物超電導線材を加圧雰囲気中で熱処理する際に、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する速度は約0.05MPa/min未満であることを見出した。したがって、熱処理前の昇温時において、0.05MPa/min以上の速度で雰囲気の全圧力が増加し続けるように制御することで、熱処理前の昇温時において線材内部よりも雰囲気の圧力を高く保ち続けることができる。
【0097】
その後、熱処理時において温度はたとえば830℃に保たれる。一方で雰囲気の圧力は増加され続ける。熱処理時における加圧速度はなるべく速いことが好ましいが、加圧速度があまり速すぎると全圧力が50MPaを超えてしまうので、熱処理時の全圧力が50MPaを超えないような適切な加圧速度で圧力が増加され続ける必要がある。図10においては、30MPa程度まで圧力が増加されている。これにより、熱処理時において圧力が一定に保たれる場合と比べて、線材内部の圧力と雰囲気の圧力とが等しくなる時間を時間tから時間tに遅らせることができる。このように、熱処理中において線材内部の圧力よりも雰囲気の圧力が高い状態をより長く保ち続けることができる。
【0098】
その後、熱処理直後の降温時には、気体の状態方程式にしたがって、雰囲気の温度の低下とともに圧力も低下しようとする。このとき、降温による圧力の低下を補うように(圧力を追加するように)圧力が制御される。なお、安定した酸化物超電導相を生成するために、酸素分圧は常に0.003〜0.02MPaの範囲となるように制御される。
【0099】
この手法によれば、熱処理前の昇温時において線材内部の圧力よりも雰囲気の圧力が高くなるので、線材に対して圧縮する力を加えることができる。また、熱処理時において線材内部の圧力よりも雰囲気の圧力が高い状態をより長く保ち続けることができる。その結果、熱処理前の昇温時および昇温時において空隙や膨れの生成が抑止され、1MPa以上50MPa未満の加圧雰囲気中での熱処理により臨界電流密度の低下を効果的に抑止することができる。
【0100】
(実施の形態3)
本願発明者らは、さらに鋭意検討し、次に説明する手法を用いれば、酸化物超電導線材の臨界電流密度を一層向上することができることを見出した。
【0101】
その手法においては、図2に示す1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかの熱処理工程における熱処理前の昇温時に、雰囲気の温度が400℃以上、好ましくは600℃以上となってから加圧が開始される。また、好ましくは0.05MPa/min以上、さらに好ましくは0.1MPa/min以上の加圧速度で加圧される。
【0102】
図11は、本発明の実施の形態3における熱処理前の昇温時および熱処理時の温度、全圧力および酸素分圧と、時間との関係の一例を示す図である。
【0103】
図11を参照して、雰囲気の温度が820℃まで緩やかに上昇されている。雰囲気の圧力は、温度が600℃未満の場合には気体の状態方程式に従って緩やかに上昇している。そして、雰囲気の温度が600℃となってから加圧が開始され、約0.1MPa/minの加圧速度で約25MPaまで加圧される。なお、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa未満の範囲に保たれている。このような条件で熱処理を行なうことにより、酸化物超電導線材の臨界電流密度を一層向上することができる。本願発明者らは、上記熱処理方法の効果を確認すべく、以下の実験を行なった。
【0104】
図12は、加圧を開始する温度を変えた場合の加圧速度と焼結密度との関係を示す図である。
【0105】
図12を参照して、雰囲気の温度が30℃のときから加圧を開始した場合、加圧速度0.05MPa/min以上で酸化物超電導体フィラメント(酸化物超電導体)の焼結密度は約93%〜96%となっている。一方、雰囲気の温度が400℃となってから加圧を開始した場合、加圧速度0.05MPa/min以上で酸化物超電導体フィラメントの焼結密度はおよそ95%以上となっている。さらに、雰囲気の温度が600℃となってから加圧を開始した場合、加圧速度0.05MPa/min以上で酸化物超電導体フィラメントの焼結密度はおよそ97%以上となっており、加圧速度0.1MPa/min以上で酸化物超電導体フィラメントの焼結密度はおよそ98%以上となっておいる。さらに、雰囲気の温度が400℃となってから加圧を開始した場合、および600℃となってから加圧を開始した場合の両方の場合で、加圧速度0.15MPa/min以上で酸化物超電導体フィラメントの焼結密度はおよそ99%以上となっている。ここで、0.05MPa/min以上の加圧速度で焼結密度が向上するのは、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する速度は約0.05MPa/min未満であり、この侵入速度よりも速い速度で線材が加圧されているために、常に線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力を高く保ち続けることができるからであると考えられる。図12の結果から、雰囲気の温度が400℃以上、好ましくは600℃以上となってから加圧を開始すると、酸化物超電導体フィラメントの焼結密度が向上することがわかる。また、好ましくは加圧の速度を0.05MPa/min以上、さらに好ましくは0.1MPa/min以上とすると、酸化物超電導体フィラメントの焼結密度が一層向上することがわかる。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0106】
図13は、銀の0.2%耐力の温度依存性を示す図である。
【0107】
図13を参照して、銀の0.2%耐力は、雰囲気の温度が室温である場合には約370MPaとなっており、雰囲気の温度上昇とともに低下している。すなわち、雰囲気の温度が400℃となると0.2%耐力は約50MPaにまで低下し、雰囲気の温度が600℃となると0.2%耐力は約25MPaにまで低下している。このように、雰囲気の温度が400℃の場合には上記の加圧雰囲気の全圧力(1MPa以上50MPa未満)と同程度にまで銀の0.2%耐力が低下している。また、雰囲気の温度が600℃の場合には上記の加圧雰囲気の全圧力(1MPa以上50MPa未満)の2分の1程度にまで銀の0.2%耐力が低下している。上記の手法では、シース部の強度が加圧雰囲気の全圧力と同程度にまで低下している状態で線材に圧力を加えることになる。このため、熱間加工と同様の効果により、加圧による圧縮力を受けてシース部が圧縮しやすくなる。その結果、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する前に線材が圧縮されるため、加圧により空隙や膨れの生成を十分抑止することができ、酸化物超電導体フィラメントの焼結密度を向上することができる。なお、図13に示す0.2%耐力は、JIS(Japan Industrial Standard)に規定された引張試験を直径1.5mmの純銀線に対して行なうことにより得られた値である。
【0108】
また、図12における酸化物超電導体フィラメントの焼結密度は以下の方法により算出されている。始めに、5g(=M(g))の酸化物超電導線材が切り分けられる。次に、切り分けられた酸化物超電導線材をアルコールに浸し、アルコール中での線材の重量(W(g))を計測し、酸化物超電導線材に働く浮力が算出される。そして、既知のアルコール密度(ρ=0・789(g/cm)を用いて酸化物超電導線材の体積(V(cm))が算出される。具体的には、浮力をFとすると、以下の式(1)、(2)によりVが算出される。
【0109】
=M−W ・・・(1)
=F/ρ ・・・(2)
続いて、酸化物超電導線材を硝酸に溶解し、その溶液をICP(Inductive Coupled Plasma)発光分析することにより銀を定量し、酸化物超電導線材の重量に占める銀の割合(Y)が算出される。そして、酸化物超電導線材の重量から、酸化物超電導体フィラメント部との重量(M(g))と、シース部の重量(M(g))の重量とが以下の式(3)、(4)により算出される。
【0110】
=M×Y ・・・(3)
=M−M ・・・(4)
次に、シース部の体積(V(cm))が既知の銀比重(10.5(g/cm))より算出され、シース部の体積から酸化物超電導体フィラメントの体積(V(cm))が算出される。そして、酸化物超電導体フィラメントの体積から酸化物超電導体フィラメントの密度ρが算出される。具体的には、以下の式(5)〜(7)によりρが算出される。
【0111】
=M/10.5 ・・・(5)
=V−V ・・・(6)
ρ=M/V ・・・(7)
一方、酸化物超電導体フィラメントの理論密度は、6.35g/cmという値が採用されている。この値は以下の方法によって算出されている。すなわち、ICP発光分析およびEDX(energy dispersive X−ray spectroscopy)分析により酸化物超電導体フィラメント中のBi2223相の原子比が算出される。そして、X線回折法によりBi2223相の格子定数を求め、a軸およびc軸の値を算出する。そして、これらの値から理論密度が算出される。
【0112】
以上の方法により求められた酸化物超電導体フィラメントの密度と酸化物超電導体フィラメントの理論密度との比から、酸化物超電導体フィラメントの焼結密度が算出される。具体的には、式(8)により焼結密度が算出される。
【0113】
焼結密度(%)=(ρ/6.35)×100 ・・・(8)
図14は、酸化物超電導体フィラメントの焼結密度と酸化物超電導線材の臨界電流値との関係を示す図である。
【0114】
図14を参照して、約95%以下の焼結密度の酸化物超電導線材の臨界電流値は80A未満となっているのに対して、約95%以上の焼結密度の酸化物超電導線材の臨界電流値は主に80Aを超える範囲にある。臨界電流値は、臨界電流密度と酸化物超電導体フィラメントの断面積とを乗じた値であるので、臨界電流密度は臨界電流値に比例する。したがって、焼結密度の高い酸化物超電導線材では、臨界電流密度が向上している。これは、焼結密度の高い酸化物超電導線材は超電導フィラメントの結晶間の空隙が少ないので、超電導フィラメントに多くの電流が流れるためであると考えられる。
【0115】
以上の図12および図14に示す結果から、雰囲気の温度が400℃以上、好ましくは600℃以上となってから、好ましくは0.05MPa/min以上、さらに好ましくは0.1MPa/min以上の速度で加圧を開始すると、酸化物超電導体フィラメントの焼結密度が向上し、酸化物超電導線材の臨界電流密度が向上することがわかる。
【0116】
本実施の形態における酸化物超電導線材の製造方法によれば、熱処理時の加圧雰囲気の全圧力と同程度にまでシース部の0.2%耐力が低下している状態で、線材に圧力が加えられる。このため、熱間加工と同様の効果により、加圧による圧縮力を受けてシース部が圧縮しやすくなる。したがって、加圧している気体がピンホールから線材内部に侵入する前に線材が圧縮されるため、加圧により空隙や膨れの生成を十分抑止することができる。その結果、酸化物超電導体フィラメントの焼結密度を向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【0117】
上記製造方法において好ましくは、熱処理工程における熱処理前の昇温時には、雰囲気の温度が600℃以上となってから加圧が開始される。
【0118】
これにより、熱処理時の加圧雰囲気の全圧力の2分の1程度にまでシース部の0.2%耐力が低下している状態で、線材に圧力が加えられる。このため、加圧による圧縮力を受けてシース部が一層圧縮しやすくなる。その結果、酸化物超電導線材フィラメントの焼結密度を一層向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を一層向上することができる。
【0119】
上記製造方法において好ましくは、加圧の速度は0.05MPa/min以上であり、さらに好ましくは0.1MPa/min以上である。
【0120】
これにより、酸化物超電導体フィラメントの焼結密度を一層向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を一層向上することができる。
【0121】
上記製造方法において好ましくは、熱処理工程は酸素雰囲気中で行なわれ、かつ、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa以下である。
【0122】
これにより、安定した酸化物超電導相が生成し、臨界電流密度を向上させることが可能となる。なお、酸素分圧が0.02MPaを超えると異相が生成し、0.003MPa未満では酸化物超電導相が生成しにくくなり臨界電流密度が低下する。
【0123】
なお、実施の形態1〜3においては、図2に示す1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかの熱処理工程において、所定の熱処理方法を行なうことにより臨界電流密度を向上する方法(酸化物超電導線材の製造方法)について示した。しかしながら、本発明はこのような場合の他、製造された酸化物超電導線材(すなわち、図2におけるステップS1〜ステップS6の工程終了後の酸化物超電導線材)に対して行なう熱処理工程、すなわち酸化物超電導線材の改質方法としても適用可能である。すなわち、たとえば焼結密度が95%未満の酸化物超電導線材に対して本発明の熱処理を適用することで改質が可能であるし、焼結密度が95%以上99%未満の酸化物超電導線材に対して本発明の熱処理を適用した場合にも改質の効果が得られる。このように、本発明の熱処理を酸化物超電導線材の改質方法として適用した場合でも、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【0124】
また、実施の形態1〜3においては、シース部が銀よりなる酸化物超電導線材を、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で熱処理し、熱処理工程における熱処理前の昇温時には、雰囲気の温度が400℃以上となってから加圧が開始される場合について示した。しかしながら、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、酸化物超電導体を金属で被覆した形態を有する酸化物超電導線材全般について適用可能である。この場合、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で熱処理が行なわれ、熱処理工程における熱処理前の昇温時には、少なくとも金属の0.2%耐力が熱処理時の全圧力(1MPa以上50MPa未満)よりも小さくなる温度から加圧が開始される。これにより、金属の0.2%耐力が熱処理時の加圧雰囲気の全圧力よりも小さくなっている状態で線材に圧力が加えられるので、加圧による圧縮力を受けて金属の部分が圧縮しやすくなる。したがって、上述のシース部が銀よりなる酸化物超電導線材と同様の理由により、酸化物超電導体の焼結密度を向上することができ、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【0125】
(実施の形態4)
従来、酸化物超電導線材の1つとして、ビスマス(Bi)系の酸化物超電導線材が知られている。このBi系の酸化物超電導線材は、液体窒素温度での使用が可能であり、比較的高い臨界電流密度を得ることができる。また、このBi系の酸化物超電導線材は、長尺化が比較的容易なため、超電導ケーブルやマグネットへの応用が期待されている。しかしながら、従来のBi系酸化物超電導線材は、20K程度の低温における臨界電流密度(J)が低いため、低温で高性能が必要とされる用途には適さないという問題点があった。
【0126】
そこで、本願発明者らは、実施の形態1〜3の手法に以下の手法を組み合わせることにより、20K程度の低温におけるBi系酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができることを見出した。以下、その手法について説明する。
【0127】
その手法においては、図2に示す1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかの熱処理工程において、酸素を含む雰囲気中で線材が300℃以上600℃以下の温度でアニールされる。
【0128】
図15は、本発明の実施の形態4における熱処理後にアニールを行なう場合の温度、全圧力および酸素分圧と、時間との関係の一例を示す図である。
【0129】
図15を参照して、雰囲気の温度が820℃、全圧力が25MPaの状態で酸化物超電導線材が一定時間保持された後、雰囲気の温度が降温される。このとき、雰囲気の全圧力も緩やかに減圧される。そして、雰囲気の温度が約300℃、圧力が約16MPaとなったところで一定温度に保持され、約30時間アニールされる。一定温度に保持されている間、全圧力はさらに緩やかに減圧され続ける。そして、アニール終了後に再び雰囲気の温度が降温される。なお、熱処理中の酸素分圧は約0.008MPaであり、アニール中は約0.024MPaに上昇されている。そして、アニール後には全圧力とともに減圧されている。
【0130】
本願発明者らは、上記アニールの効果を確認するために、以下の実験を行なった。
【0131】
熱処理工程においてアニールを行なった場合とアニールを行なわない場合とにおいて、20Kでの臨界電流値Iがどれだけ向上するかについて調べた。なお、アニールを行なう際には、アニール時間および酸素分圧を変化させて行なった。各試料についての、熱処理工程後における77Kでの臨界電流値I(77K)に対する22Kでの臨界電流値I(22K)の増加率の平均値を表2に示す。なお、臨界電流値は3Tの磁界中における測定値である。
【0132】

【0133】
表2を参照して、アニールを行なわない場合の22Kでの臨界電流値の増加率の平均値は、それぞれ1.6、1.7、1.5となっている。一方、アニールを行った場合の22Kでの臨界電流値の増加率の平均値は、それぞれ2.1、1.9、2となっている。したがって、アニールを行なった場合の方が、アニールを行なわない場合よりも20Kにおける臨界電流値を向上できることがわかる。
【0134】
続いて、酸素を含む雰囲気中で線材を300℃以上600℃以下の温度でアニールすることの効果を確認するために、以下の実験を行なった。
【0135】
まず、61芯を持つ多芯構造で、外径サイズが幅4.2mm、厚さ0.24mmで、銀比が1.5のテープ形状のBi系酸化物超電導線材を作製した。さらに、この酸化物超電導線材に熱処理を行ない、この熱処理においてアニールを行なった。アニールは、酸素気流中で行ない、アニール時間を20時間とし、下の表3に示すようにアニール温度を変化させて行なった。また、酸化物超電導体中のBi2212相の量も変化させた。各試料のアニール前の77Kおよび20Kでの各臨界電流値Iとアニール後の77Kおよび20Kでの各臨界電流値Iとを表3に併せて示す。
【0136】
なお、使用した線材は同一ロットから選択し、各線材中の超電導部の断面積はすべて同じとする。よって、下の表3における臨界電流値Iの大きさは臨界電流密度J(J=I/超電導部断面積)に比例する。
【0137】

【0138】
表3の結果より、酸素雰囲気中で300℃以上600℃以下の温度でアニールを行なうことにより、低温(20K)での臨界電流値I(臨界電流密度J)がアニール前よりも向上していることがわかる。また、酸化物超電導体中のBi2212相の量を5mol%以上20mol%以下とすることにより、アニール後の臨界電流値Iが530A以上となっており、臨界電流値I(臨界電流密度J)の絶対値が大きくなっていることがわかる。
【0139】
また、アニールを行なう前と、500℃の温度でアニールを行なった後との酸化物超電導線材の各温度(K)における臨界電流値Iを調べた。その結果を図16に示す。
【0140】
図16の結果より、20K程度以下から臨界電流値Iは、アニール後の試料の方がアニール前の試料よりも高くなっていることがわかる。
【0141】
本実施の形態の酸化物超電導線材の製造方法において、酸化物超電導線材はBi2223相を含み、熱処理工程において、300℃以上600℃以下の温度の酸素を含む雰囲気中で酸化物超電導線材がアニールされる。これにより、20K程度の低温における酸化物超電導線材の臨界電流密度が向上する。
【0142】
なお、本実施の形態においては、図2に示す1回目の熱処理(ステップS4)および2回目の熱処理(ステップS6)の少なくともいずれかの熱処理工程において、所定の熱処理方法を行なうことにより臨界電流密度を向上する方法について示した。しかしながら、本発明はこのような場合の他、製造された酸化物超電導線材(すなわち、図2におけるステップS1〜ステップS6の工程終了後の酸化物超電導線材)に対して行なう熱処理工程、すなわち酸化物超電導線材の改質方法としても適用可能である。本発明の熱処理を酸化物超電導線材の改質方法として用いた場合でも、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【0143】
(実施の形態5)
実施の形態1〜4では、図1に示すように、超電導体フィラメント2が酸化物超電導線材1の長手方向に延びており、酸化物超電導線材1がテープ形状である場合の製造方法について説明した。図1に示す酸化物超電導線材は、高い臨界電流密度を有するという特徴がある。しかしながら、本発明の製造方法は、図1に示す酸化物超電導線材の製造方法の他、たとえば、ツイスト線の酸化物超電導線材の製造方法にも適用することができる。
【0144】
図17は、ツイスト線の酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。図17に示すように、ツイスト線の酸化物超電導線材1aは、長手方向に伸びる複数本の酸化物超電導体フィラメント2aと、それらを被覆するシース部3aとを有している。酸化物超電導体フィラメント2aは、酸化物超電導線材1aの長手方向に沿って螺旋状に捩れている。このツイスト線の酸化物超電導線材1aの製造方法について以下に説明する。
【0145】
図18は、ツイスト線の酸化物超電導線材の製造工程を示す図である。図18を参照して、ツイスト線の酸化物超電導線材1aの製造方法では、伸線加工により多芯線が形成され(ステップS2)た後であって1次圧延(ステップS3)の前に、丸線の状態で、たとえば捩りピッチが各々500mm,100mm,50mm,10mmになるように線材に捩り加工を施す(ステップS2a)。この捩り加工の様子を図19に示す。なお、これ以外の製造方法は実施の形態1の製造方法とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
【0146】
ツイスト線の酸化物超電導線材は、交流損失を低減できるという効果を有している。本発明をツイスト線の酸化物超電導線材の製造方法に適用することによって、ツイスト線の酸化物超電導線材に膨れが生成することを抑止でき、臨界電流密度を向上することができる。
【0147】
本願発明者らは、上記効果を確認するために試験を行なった。次に、この試験について以下に説明する。
【0148】
Bi,PbO,SrCO,CaCO,およびCuOを用いてBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.82:0.33:1.92:2.01:3.02の組成比の粉末を調整した。この粉末を750℃の温度で10時間熱処理し、その後800℃の温度で8時間熱処理した。その後、熱処理によって得られた焼結体を自動乳鉢を用いて粉砕した。次に、粉砕して得られた粉末を850℃の温度で4時間熱処理した後、熱処理によって得られた焼結体を自動乳鉢を用いて粉砕した。粉砕して得られた粉末を加熱処理した後、外径36mm、内径30mmの銀パイプに充填した(ステップS1)。次に、粉末を充填した銀パイプについて伸線加工を行ない、単芯線を得た(ステップS1a)。さらに、単芯線を61本に束ねて外形36mm、内径31mmの銀パイプに嵌合した(ステップS1b)。次に、複数の単芯線を嵌合した銀パイプを伸線し、直径1.5mmの多芯線を得た(ステップS2)。次に、この多芯線を20mm,15mm,10mm,5mmの捩りピッチで捩り加工した(ステップS2a)。その後、1次圧延(ステップS3)を行ない、厚さ0.26mm、幅3.7mm、長さ100mのテープ形状の線材を得た。次に、1回目熱処理として、この線材を温度840℃、酸素濃度8%の雰囲気で30時間熱処理した(ステップS4)。次に、2次圧延(ステップS5)を行ない、線材を8%圧下した。続いて、2回目熱処理として、この線材を温度820℃、全圧力25MPa、酸素分圧8kPaの雰囲気で50時間熱処理した(ステップS6)。2回目熱処理(ステップS6)における熱処理前の昇温時には、銀パイプの0.2%耐力が25MPaよりも小さくなる温度から加圧を開始した。以上の工程により得られたツイスト線の酸化物超電導線材1aを試料1とした。
【0149】
一方、図18におけるステップS1〜5の工程を上記と同じ条件で行ない、2回目熱処理(ステップS6)として、線材を温度820℃、大気圧、酸素分圧8kPaの雰囲気で50時間熱処理を行なうことで、比較例1となるツイスト線の酸化物超電導線材を得た。試料1と比較例1とについて、臨界電流密度を測定し、発生した膨れを調べた。その結果、比較例1の臨界電流密度は2.0kA/cmであったのに対し、試料1の臨界電流密度は2.6kA/cmとなり、約1.3倍も向上した。また、比較例1は100m当たり30個の膨れが生じたのに対し、試料1は全く膨れが生じなかった。このことから、本発明の製造方法によれば、ツイスト線の酸化物超電導線材への膨れの生成を抑止することができ、臨界電流密度を向上できることが分かる。
【0150】
また、本発明の製造方法は、たとえば丸線の酸化物超電導線材の製造方法にも適用することができる。
【0151】
図20は、丸線の酸化物超電導線材の構成を概念的に示す部分断面斜視図である。図20に示すように、丸線の酸化物超電導線材1bは、長手方向に伸びる複数本の酸化物超電導体フィラメント2bと、それらを被覆するシース部3bとを有している。酸化物超電導線材1bの断面は、真円に近い形状となっている。
【0152】
この丸線の酸化物超電導線材1bは、図2に示す酸化物超電導線材の製造方法のうち、1次圧延(ステップS3)および2次圧延(ステップS5)を行なわないことによって製造される。なお、これ以外の製造方法は実施の形態1の製造方法とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
【0153】
丸線の酸化物超電導線材は、交流損失を低減できるという効果を有している。本発明を丸線の酸化物超電導線材の製造方法に適用することによって、丸線の酸化物超電導線材に膨れが生成することを抑止でき、臨界電流密度を向上することができる。
【0154】
(実施の形態6)
実施の形態1〜4では、超電導体フィラメントが酸化物超電導線材の長手方向に延びており、酸化物超電導線材1がテープ形状である場合の製造方法について示した。また、実施の形態5では、酸化物超電導線材がツイスト線および丸線である場合の製造方法について示した。さらに、本発明の製造方法は、これらの酸化物超電導線材の製造方法の他、たとえば、セラミック被覆層を有する酸化物超電導線材の製造方法にも適用することができる。
【0155】
図21は、セラミック被覆層を有する酸化物超電導線材の構成を概念的に示す断面図である。図21に示すように、セラミック被覆層を有する酸化物超電導線材1cは、長手方向(紙面方向)に伸びる複数本の酸化物超電導体フィラメント2cと、複数本の酸化物超電導体フィラメント2cを被覆するセラミック被覆層21と、セラミック被覆層21を被覆するシース部3cとを有している。セラミック被覆層21は、たとえば金属酸化物よりなっており、酸化物超電導線材1cの運転温度において非超伝導体となる性質を有している。このセラミック被覆層21を有する酸化物超電導線材1cの製造方法について以下に説明する。
【0156】
始めに、図22に示すように、原材料粉末を成形し、原材料粉末よりなるロッド25を形成する。次に、押出加工装置などを用いて、圧縮したセラミック粉末によってロッド25の周りを被覆し、図23に示すように、ロッド25を被覆するセラミック被覆層21を有するセラミック被覆ロッド22を形成する。次に、図24に示すように、複数本のセラミック被覆ロッド22をシース部3cの嵌合する。これにより、原材料粉末を芯材として多数有する多芯構造の線材が得られる。次に、多芯構造の線材を伸線加工することによって、原材料銀シース部3cに埋め込まれた多芯線が形成される。これにより、原材料粉末をセラミックで被覆したセラミック被覆ロッドを金属で被覆した形態を有する線材が得られる。その後、図2に示すステップS3〜ステップS6の工程を行ない、図21に示す本実施の形態の酸化物超電導線材1cが完成する。
【0157】
セラミック被覆層を有する酸化物超電導線材は、交流損失を低減できるという効果を有している。セラミック被覆層を有する酸化物超電導線材の製造方法に本発明を適用することによって、セラミック被覆層を有する酸化物超電導線材に膨れが生成することを抑止でき、臨界電流密度を向上できる。
【0158】
本願発明者らは、上記効果を確認するために、本実施の形態の製造方法を用いてセラミック被覆層を有する酸化物超電導線材を作製し、臨界電流密度を測定した。その結果、2回の熱処理をいずれも大気圧中で行なった場合と比較して臨界電流密度が1.4倍に向上した。
【0159】
(実施の形態7)
酸化物超電導線材をマグネットなどに応用する場合、図25に示すように酸化物超電導線材をトラックリール状のコイル形状に巻いたものが使用されている。酸化物超電導線材をコイル形状に成形する方法として、ワインドアンドリアクトがある。
【0160】
図26は、本発明の実施の形態7における酸化物超電導線材の製造工程を示す図である。図26に示すように、ワインドアンドリアクトとは、2次圧延(ステップS5)直後に線材をコイル形状に成形し(ステップS5a)、その後、2回目の熱処理(ステップS6)を行なう方法である。
【0161】
2回目の熱処理(ステップS6)前の線材は、2回目の熱処理(ステップS6)後の完成した酸化物超電導線材よりも高い曲げ強度を有している。コイル形状への成形の際、線材には曲げの荷重が加えられるので、ワインドアンドリアクトを用いて作製された酸化物超電導線材のコイルは、酸化物超電導線材が完成した後で成形されたコイルと比較して、臨界電流値の劣化が小さいという利点がある。特に100mm以下の直径を有する酸化物超電導線材のコイルを作製する場合に、ワインドアンドリアクトを用いると臨界電流値の劣化を効果的に抑止することができる。
【0162】
一方、ワインドアンドリアクトは、2回目の熱処理(ステップS6)の際に線材に膨れが生じると、完成した酸化物超電導線材のコイルが使い物にならなくなるという欠点を有している。このため、実際には、酸化物超電導線材のコイルの製造に、ワインドアンドリアクトはあまり用いられていない。
【0163】
しかし、2回目の熱処理(ステップS6)の際に本発明の熱処理方法を適用することにより、線材の膨れを抑止しつつ、ワインドアンドリアクトを用いて酸化物超電導線材のコイルを作製することができる。これにより、コイル形状に成形した場合の臨界電流値の劣化を効果的に抑止することができる。なお、これ以外の酸化物超電導線材の製造方法は、図2に示す実施の形態1の酸化物超電導線材の製造方法と同じなので、その説明を省略する。
【0164】
(実施の形態8)
実施の形態1では、図11に示すように、熱処理時の加圧が開始される前(図11中A)における雰囲気中の圧力を、気体の状態方程式に従って大気圧から緩やかに上昇させる場合について示した。しかし、本願発明者らは、熱処理時の加圧が開始される前(図11中A)に減圧雰囲気下で線材を保持することにより、線材に発生する膨れをさらに低減できることを見出した。この理由について以下に説明する。
【0165】
実施の形態1で述べたように、線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力が高くなると雰囲気中の気体はピンホールから線材内部に侵入する。そこで、熱処理時の加圧が開始される前に線材を減圧雰囲気下で保持することにより、線材内部の圧力よりも雰囲気中の圧力が高くならないようにする。これにより、熱処理時の加圧が開始される前の状態でも線材内部にガスが侵入しにくくなり、線材への膨れの発生をえさらに抑止することができる。
【0166】
本願発明者らは、熱処理時の加圧が開始される前に減圧雰囲気下で線材を保持することの効果を調べた。具体的には、熱処理時の加圧が開始される前の圧力をそれぞれ約0.1MPa(大気圧)および10Paとして、酸化物超電導線材を作製した。そして、液体窒素を1MPaに加圧して充填した容器の中にこれらの酸化物超電導線材を浸漬し、24時間放置した。その後、それぞれの酸化物超電導線材に生じた膨れの個数を調べた。その結果、熱処理時の加圧が開始される前の圧力を約0.1MPa(大気圧)とした酸化物超電導線材には、1000m当たり1個の膨れが生じた。これに対して、熱処理時の加圧が開始される前の圧力を約10Paとした酸化物超電導線材には、全く膨れは見られなかった。このことから、熱処理時の加圧が開始される前に減圧雰囲気下で線材を保持することで、酸化物超電導線材の膨れをさらに抑止できることが分かる。
【0167】
なお、本実施の形態においては、酸化物超電導線材の製造方法として、熱処理時の加圧が開始される前に線材を減圧雰囲気下で保持する場合について示した。しかしながら、本発明はこのような場合の他、製造された酸化物超電導線材に対して行なう熱処理工程、すなわち酸化物超電導線材の改質方法としても適用可能である。本発明の熱処理を酸化物超電導線材の改質方法として適用した場合でも、酸化物超電導線材の臨界電流密度を向上することができる。
【0168】
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものと意図される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物超電導体の原材料粉末を金属(3)で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1〜S2)と、
熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で前記線材を熱処理する熱処理工程(S4,S6)とを備え、
前記熱処理工程(S4,S6)における熱処理前の昇温時には、前記金属(3)の0.2%耐力が前記熱処理時の前記全圧力よりも小さくなる温度から加圧を開始することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項2】
前記加圧の速度は0.05MPa/min以上であることを特徴とする、請求の範囲第1項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項3】
前記加圧の速度は0.1MPa/min以上であることを特徴とする、請求の範囲第2項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理工程(S4,S6)は酸素雰囲気中で行なわれ、かつ、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa以下であることを特徴とする、請求の範囲第1項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項5】
前記酸化物超電導体の前記原材料粉末はBi2223相を含み、
前記熱処理工程(S4,S6)において、300℃以上600℃以下の温度の酸素を含む雰囲気中で前記線材をアニールすることを特徴とする、請求の範囲第1項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理工程(S4,S6)の前に、前記線材を捩り加工する工程(S2a)をさらに備える、請求の範囲第1項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項7】
前記線材を圧延加工しない、請求の範囲第1項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項8】
前記線材を作製する工程(S1〜S2)において、前記原材料粉末(25)をセラミック(21)で被覆したセラミック被覆ロッド(22)を前記金属(3c)で被覆した形態を有する線材を作製する、請求の範囲第1項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理工程(S4,S6)の前に、前記線材をコイル形状に成形する工程(S5a)をさらに備える、請求の範囲第1項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理工程(S4,S6)における前記加圧を開始する前には、前記線材を減圧雰囲気下で保持する、請求の範囲第1項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項11】
酸化物超電導体の原材料粉末を銀を含む金属で被覆した形態を有する線材を作製する工程(S1〜S2)と、
熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で前記線材を熱処理する熱処理工程(S4,S6)とを備え、
前記熱処理工程(S4,S6)における熱処理前の昇温時には、前記雰囲気の温度が400℃以上となってから加圧を開始することを特徴とする、酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項12】
前記熱処理工程(S4,S6)における前記熱処理前の昇温時には、前記雰囲気の温度が600℃以上となってから前記加圧を開始することを特徴とする、請求の範囲第11項記載の酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項13】
酸化物超電導体(2)を金属(3)で被覆した形態を有する酸化物超電導線材(1)を、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で熱処理する熱処理工程(S4,S6)を備え、
前記熱処理工程(S4,S6)における熱処理前の昇温時には、前記金属の0.2%耐力が前記熱処理時の前記全圧力よりも小さくなる温度から加圧を開始することを特徴とする、酸化物超電導線材の改質方法。
【請求項14】
前記加圧の速度は0.05MPa/min以上であることを特徴とする、請求の範囲第13項記載の酸化物超電導線材の改質方法。
【請求項15】
前記加圧の速度は0.1MPa/min以上であることを特徴とする、請求の範囲第14項記載の酸化物超電導線材の改質方法。
【請求項16】
前記熱処理工程(S4,S6)は酸素雰囲気中で行なわれ、かつ、酸素分圧は0.003MPa以上0.02MPa以下であることを特徴とする、請求の範囲第13項記載の酸化物超電導線材の改質方法。
【請求項17】
前記酸化物超電導線材(1)はBi2223相を含み、
前記熱処理工程(S4,S6)において、300℃以上600℃以下の温度の酸素を含む雰囲気中で前記酸化物超電導線材(1)をアニールすることを特徴とする、請求の範囲第13項記載の酸化物超電導線材の改質方法。
【請求項18】
前記熱処理工程(S4,S6)における前記加圧を開始する前には、前記酸化物超電導線材(1)を減圧雰囲気下で保持する、請求の範囲第13項記載の酸化物超電導線材の改質方法。
【請求項19】
酸化物超電導体(2)を銀を含む金属(3)で被覆した形態を有する酸化物超電導線材(1)を、熱処理時の全圧力が1MPa以上50MPa未満である加圧雰囲気中で熱処理する熱処理工程(S4,S6)を備え、
前記熱処理工程(S4,S6)における熱処理前の昇温時には、前記雰囲気の温度が400℃以上となってから加圧を開始することを特徴とする、酸化物超電導線材の改質方法。
【請求項20】
前記熱処理工程(S4,S6)における前記熱処理前の昇温時には、前記雰囲気の温度が600℃以上となってから前記加圧を開始することを特徴とする、請求の範囲第19項記載の酸化物超電導線材の改質方法。
【請求項21】
酸化物超電導体(2)の焼結密度が95%以上であることを特徴とする、酸化物超電導線材(1)。
【請求項22】
前記酸化物超電導体(2)の前記焼結密度が99%以上であることを特徴とする、請求の範囲第21項記載の酸化物超電導線材(1)。

【国際公開番号】WO2005/022563
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513411(P2005−513411)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011133
【国際出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】