説明

酸化触媒、フェノール類の製造方法、および過酸化水素の製造方法

【課題】フェノール類を高収率、高選択的かつ低コストで製造可能な酸化触媒、およびフェノール類の製造方法を提供する。
【解決手段】下記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩を含み、芳香族化合物を酸化してフェノール類に変換する酸化触媒。


前記化学式(I)中、R〜Rは、水素原子または任意の置換基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化触媒、フェノール類の製造方法、および過酸化水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール類は、フェノール樹脂、各種医薬品、染料、消毒剤等の各種化成品に広く用いられる重要な物質である。フェノール類の代表的な化合物であるフェノール(ヒドロキシベンゼン)は、クメン法により製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クメン法には、原料としてプロピレンを必要とする、反応が多段階である、収率が低い、副生成物のアセトンが、需要に対して過剰に供給されてしまう等の問題がある。このため、ベンゼンの直接酸化によるフェノール合成が研究されている。
【0004】
しかし、ベンゼンの直接酸化により高選択的にフェノールを合成できる酸化剤は、現在のところ、亜酸化窒素、酸素/水素混合ガス等に限られている。これらの酸化剤は、高価であり、かつ、安全性に問題がある。
【0005】
一方、安価で、かつ安全性に優れる分子状酸素によりベンゼンを直接酸化する方法がある。しかし、この方法は、逐次酸化または完全酸化が進行するため、フェノールの収率および選択性が低い。
【0006】
そこで、本発明は、フェノール類を高収率、高選択的かつ低コストで製造可能な酸化触媒、およびフェノール類の製造方法の提供を目的とする。さらに、本発明は、高収率、高選択的かつ低コストな過酸化水素の製造方法をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の酸化触媒は、下記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩を含み、芳香族化合物を酸化してフェノール類に変換することを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
前記化学式(I)中、
は、水素原子または任意の置換基であり、
〜Rは、水素原子または任意の置換基であり、
とR、RとR、RとR、RとR、またはRとRは、それらが結合している炭素原子とともに芳香環を形成しても良い。
【0010】
また、本発明によるフェノール類の製造方法は、芳香族化合物を酸化してフェノール類に変換する酸化工程を含む、フェノール類の製造方法であって、前記酸化工程において、前記本発明の酸化触媒により前記芳香族化合物を酸化することを特徴とする。
【0011】
本発明による過酸化水素の製造方法は、前記酸化工程において、水と酸素との存在下、前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換し、副生成物として過酸化水素を生成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の酸化触媒、およびフェノール類の製造方法によれば、フェノール類を高収率、高選択的かつ低コストで製造可能である。さらに、本発明の過酸化水素の製造方法によれば、過酸化水素を高収率、高選択的かつ低コストで製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例のフェノール生成反応におけるベンゼン濃度およびフェノール濃度の経時変化を例示するグラフである。
【図2】図2は、実施例において、副生成物である過酸化水素のヨードメトリーによる検出を例示するグラフである。
【図3】図3は、実施例におけるフェノール生成反応の量子収率を例示するグラフである。
【図4】図4は、シアノキノリニウム溶液にベンゼンを添加したときの蛍光消光を例示するグラフである。
【図5】図5は、図1の溶液にレーザ光照射したときのキノリニルラジカルカチオンとベンゼンラジカルカチオンの吸光度スペクトルを例示するグラフである。
【図6】図6は、実施例において、水または重水を溶媒に用いたときの、生成物であるフェノールのマススペクトルを例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0015】
[1.酸化触媒]
本発明の酸化触媒は、前記のとおり、前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩を含む。前記のように、RとR、RとR、RとR、RとR、またはRとRは、それらが結合している炭素原子とともに芳香環を形成しても良い。すなわち、前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体は、例えば、アクリジニウム誘導体、ベンゾアクリジニウム誘導体等であっても良い。
【0016】
前記化学式(I)において、Rは、水素原子、アルキル基、ベンジル基、カルボキシアルキル基(末端にカルボキシ基が付加したアルキル基)、アミノアルキル基(末端にアミノ基が付加したアルキル基)、カルバモイルアルキル基(末端にカルバモイル基が付加したアルキル基)、アミドアルキル基(末端にアミド基が付加したアルキル基)、またはポリエーテル鎖であることが好ましい。Rは、水素原子、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、ベンジル基、末端にカルボキシ基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にアミノ基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にカルバモイル基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、末端にアミド基が付加した炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、またはポリエチレングリコール(PEG)鎖であることがより好ましい。PEG鎖は、前記ポリエーテル鎖の一例であるが、前記ポリエーテル鎖の種類は、これに限定されず、どのようなポリエーテル鎖でも良い。Rにおいて、前記ポリエーテル鎖の重合度は特に限定されないが、例えば1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10である。前記ポリエーテル鎖がPEG鎖の場合、重合度は特に限定されないが、例えば1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜10である。
【0017】
前記化学式(I)において、R〜Rの少なくとも一つは、電子吸引基であることが好ましく、R〜Rの少なくとも一つが電子吸引基であることがより好ましい。前記電子吸引基は、例えば、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、カルバモイル基、アミド基、ハロゲン基、またはニトロ基からなる群から選択される少なくとも一つであっても良い。なお、本発明において、「アミド基」は、カルバモイル基 −CONH の水素原子1個が置換基で置換された−CONHR をいう。アミド基を構造中に含む基(アミドアルキル基等)においても同様である。前記アミド基において、Rは、任意の置換基であり、例えば、アルキル基、ベンジル基等が挙げられる。前記アミド基において、Rは、炭素数1〜6の直鎖もしくは分枝アルキル基、またはベンジル基であることが好ましい。
【0018】
前記化学式(I)において、Rが、アルキル基またはベンジル基であり、Rが、電子吸引基であり、RおよびR〜Rが、水素原子であることが好ましい。また、前記化学式(I)において、Rが、アルキル基であり、Rが、電子吸引基であり、RおよびR〜Rが、水素原子であることがより好ましい。
【0019】
前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体は、1-メチルキノリニウム、1,2-ジメチルキノリニウム、または3-シアノ-1-メチルキノリニウムであることがさらに好ましい。前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体は、下記化学式(1)で表されるキノリニウム誘導体(3-シアノ-1-メチルキノリニウム)であることが特に好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
本発明の酸化触媒において、前記キノリニウム誘導体としては、前記化学式(1)のキノリニウム誘導体以外には、例えば、下記表1に記す(2)〜(20)が挙げられる。下記表1中のR〜Rは、前記化学式(I)中のR〜Rと同じである。
【0022】
【化1】

【0023】
【表1】

【0024】
なお、前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩の製造方法は、特に制限されない。前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩は、例えば、公知の有機合成反応を参考にして適宜製造しても良い。具体的には、例えば、J. Phys. Chem. B 2003, 107, 12511-12518およびFukuzumi, S.; Ohkubo, K.; Tokuda, Y.; Suenobu, T. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 4286.に記載されているように、キノリン誘導体をヨウ化メチルおよびアセトン溶媒存在下でキノリニウムに変換し、さらに塩交換(イオン交換)して製造しても良い。また、前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩の市販品を入手可能な場合は、それを用いても良い。
【0025】
本発明の酸化触媒は、前記のとおり、芳香族化合物を酸化してフェノール類に変換する。例えば、前記芳香族化合物の芳香環上の水素原子を水酸基で置換して前記フェノール類に変換しても良い。より具体的には、例えば、ベンゼンからフェノール(ヒドロキシベンゼン)への変換等が挙げられる。
【0026】
本発明の酸化触媒は、光反応により前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換することが好ましい。
【0027】
なお、前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体に互変異性体または立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体および光学異性体)等の異性体が存在する場合は、いずれの異性体も本発明に用いることができる。また、前記キノリニウム誘導体の塩は、酸付加塩でも良いが、前記キノリニウム誘導体が塩基付加塩を形成し得る場合は、塩基付加塩でも良い。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記キノリニウム誘導体に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。また、置換基等に異性体が存在する場合はどの異性体でも良く、例えば、「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でも良い。
【0028】
また、前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体の吸収帯は特に限定されないが、可視光領域に吸収帯を有することが好ましい。可視光領域に吸収帯を有することで、例えば、可視光励起することが可能となり、太陽光を利用した光反応に用いることができる。
【0029】
本発明において、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-プロピル基等が挙げられ、アルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基等)においても同様である。また、ペルフルオロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-プロピル基等から誘導されるペルフルオロアルキル基が挙げられ、ペルフルオロアルキル基を構造中に含む基(ペルフルオロアルキルスルホニル基、ペルフルオロアシル基等)においても同様である。本発明において、アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、エトキシカルボニル基、等が挙げられ、アシル基を構造中に含む基(アシルオキシ基、アルカノイルオキシ基等)においても同様である。また、本発明において、アシル基の炭素数にはカルボニル炭素を含み、例えば、炭素数1のアルカノイル基(アシル基)とはホルミル基を指すものとする。さらに、本発明において、「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0030】
[2.フェノール類の製造方法]
本発明によるフェノール類の製造方法は、前記のとおり、芳香族化合物を酸化してフェノール類に変換する酸化工程を含む、フェノール類の製造方法であって、前記酸化工程において、前記本発明の酸化触媒により前記芳香族化合物を酸化することを特徴とする。
【0031】
本発明の製造方法において、フェノール類の原料となる前記芳香族化合物は、置換基を有していても良いし、有していなくても良い。前記芳香族化合物が置換基を有する場合、前記置換基は、1でも複数でもよいし、複数の場合は、1種類でも複数種類でもよい。前記置換基としては、例えば、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。前記芳香族化合物の骨格となる芳香環は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フラーレン等が挙げられる。前記芳香族化合物としては、具体的には、例えば、ベンゼン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ナフタレン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等が挙げられる。ただし、前記芳香族化合物は、これらに限定されない。
【0032】
本発明の製造方法において、例えば、前記芳香族化合物が、下記化学式(101)で表される化合物であり、前記フェノール類が、下記化学式(102)〜(105)で表されるフェノール類の少なくとも一つであっても良い。この場合において、前記フェノール類が、下記化学式(102)、(103)および(105)の少なくとも一つであっても良い。
【0033】
【化3】

【0034】
前記化学式(101)および(103)〜(105)中、Xは、水素原子、塩素または臭素であり、前記化学式(101)におけるXと、前記化学式(103)〜(105)におけるXとは、同一である。
【0035】
前記酸化工程における反応は、特に制限されず、例えば、光反応でも熱反応でも良いが、光反応により、前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換することが好ましい。
【0036】
また、前記酸化工程において、水と酸素との存在下、前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換することが好ましい。例えば、前記酸化工程は、前記芳香族化合物、本発明の酸化触媒、有機溶媒、水、および酸素のみを用いれば、有害物質の副生を極力抑制し、かつ低コストで行うことができる。
【0037】
また、本発明によるフェノール類の製造方法は、例えば、過酸化水素の製造方法として用いることもできる。すなわち、本発明による過酸化水素の製造方法は、前述のとおり、前記酸化工程において、水と酸素との存在下、前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換し、副生成物として過酸化水素を生成させることを特徴とする。
【0038】
過酸化水素は、工業用、試験研究用、薬用、医用等の多様な用途において重要な物質である。しかし、過酸化水素は、一般に、水素(H)と酸素(O)を原料とし、アントラセン誘導体の自動酸化反応を利用して製造されており(アントラキノン法)、製造コストが高い。しかし、本発明の過酸化水素の製造方法は、前記本発明のフェノール類の製造方法における過酸化水素の副生を利用するため、過酸化水素を低コストに得ることができる。
【0039】
本発明のフェノール類の製造方法は、前記酸化工程を含む以外は特に制限されず、どのような工程を含んでいても良いし、どのような物質を用いても良い。本発明のフェノール類の製造方法は、具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0040】
[2−1.反応系準備工程]
まず、本発明の酸化触媒と、フェノール類の原料である芳香族化合物とを含む反応系を準備する。この反応系は、酸化剤をさらに含んでいても良い。または、前記酸化工程において、前記反応系の外から酸化剤を取り込みながら酸化反応を進行させても良い。前記酸化剤は、特に制限されないが、例えば、水と酸素が挙げられる。なお、水と酸素とを用いたベンゼンの酸化反応では、後述の実施例で述べるように、H18Oを用いたところ、フェノール性水酸基中に18Oを含むフェノール(ヒドロキシベンゼン)が得られた。このことから、水と酸素とを含む反応系では、例えば下記スキーム1のように、水と酸素とがともに酸化剤として働き、芳香族化合物を酸化すると考えられる。ただし、下記スキーム1は、推定可能な機構の一例であり、本発明を何ら限定しない。
【化4】

【0041】
前記反応系は、溶媒または分散媒をさらに含むことが、反応効率の観点から好ましい。前記溶媒または分散媒と、前記芳香族化合物と、前記本発明の酸化触媒との使用量および使用量比は、特に制限されず、適宜設定すれば良い。前記芳香族化合物の使用量は、前記溶媒または分散媒1Lに対し、例えば、1.0×10-3〜1.0mol、好ましくは1.0×10-2〜0.1mol、より好ましくは1.0×10-2〜5.0×10-2molである。前記本発明の酸化触媒の使用量は、前記溶媒または分散媒1Lに対し、例えば、1.0×10-6〜0.1mol、好ましくは1.0×10-5〜5.0×10-2mol、より好ましくは1.0×10-4〜1.0×10-2molである。また、前記本発明の酸化触媒の使用量は、前記芳香族化合物1molに対し、例えば、1.0×10-4〜1.0mol、好ましくは1.0×10-3〜1.0mol、より好ましくは0.02〜0.1molである。
【0042】
前記溶媒または分散媒は、例えば、水でも良いし、有機溶媒でも良いし、水と有機溶媒との混合溶媒でも良い。前記有機溶媒としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル、ブチロニトリル、プロピオニトリル等のニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化溶媒、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)等のエーテル、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)等のアミド、DMSO(ジメチルスルホキシド)等のスルホキシド、アセトン等のケトン、メタノール、エタノール等のアルコール、等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記溶媒としては、前記本発明の酸化触媒の溶解度、励起状態の安定性等の観点から、極性の高い溶媒が好ましく、アセトニトリルが特に好ましい。また、例えば、反応基質(フェノール類の原料である前記芳香族化合物)が前記溶媒または分散媒を兼ねていても良い。
【0043】
前記酸化剤の使用量は、特に制限されないが、前記芳香族化合物1molに対し、例えば、0.1〜100mol、好ましくは1.0〜100mol、より好ましくは10〜100molである。酸素を用いる場合、例えば、反応系準備工程において、前記溶媒または分散媒をあらかじめ酸素で飽和させても良いし、前記酸化工程を、前記溶媒または分散媒中に酸素を吹き込みながら行っても良い。前記酸化工程については、以下に詳しく述べる。
【0044】
[2−2.酸化工程]
前記酸化工程においては、前記のとおり、前記本発明の酸化触媒により、前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換する。この酸化反応は、熱反応でも光反応でも良いが、コスト、簡便性等の観点から、光反応が好ましい。例えば、前記スキーム1のように、キノリニウム誘導体(本発明の光触媒)を光励起することにより、酸化反応が進行する。前記光反応における照射光も特に限定されないが、反応のさらなる簡便性等の観点から、可視光が好ましい。より具体的には、前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体が、可視光領域に吸収帯を有し、可視光で励起可能であることが、より好ましい。照射する前記可視光の波長のうち、より好ましい波長は、前記キノリニウム誘導体が有する吸収帯によるが、例えば260〜400nmがより好ましく、290〜400nmがさらに好ましく、310〜400nmが特に好ましい。
【0045】
前記酸化工程における反応温度も特に制限されないが、例えば-100〜250℃、好ましくは0〜40℃、より好ましくは0〜30℃である。例えば、室温で可視光を照射することにより、酸化反応を進行させることも可能である。
【0046】
前記光反応には、例えば、太陽光等の自然光に含まれる可視光を利用すれば、簡便に行うことができる。また、例えば、前記自然光に代えて、またはこれに加え、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、水銀灯等の光源を適宜用いても良いし、用いなくても良い。さらに、必要波長以外の波長をカットするフィルターを適宜用いても良いし、用いなくても良い。
【0047】
また、前記酸化工程において、前記反応系のpHは、特に制限されないが、例えば1.0〜8.0、好ましくは3.0〜7.0、より好ましくは4.0〜6.0である。
【0048】
以上のようにして本発明のフェノール類の製造方法を行うことができる。なお、製造したフェノール類の単離精製方法は、特に制限されず、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー等の定法を適宜用いれば良い。また、副生成物の過酸化水素は、精製することで、さらに実用に適した純度の高い過酸化水素または過酸化水素水を得ることができる。具体的な方法としては、特に制限されないが、例えば、イオン交換水などで過酸化水素を抽出し、減圧蒸留する事で高濃度の過酸化水素水が得られる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例について説明する。しかし、以下は例示であって、本発明は、以下の実施例のみには限定されない。また、反応機構等の理論的考察は、推定可能な機構等の一例であり、本発明を限定しない。
【0050】
なお、3-シアノ-1-メチルキノリニウム過塩素酸塩(CNQuH+、前記化学式(1)で表されるキノリニウム誘導体の過塩素酸塩)は、J. Phys. Chem. B 2003, 107, 12511-12518およびFukuzumi, S.; Ohkubo, K.; Tokuda, Y.; Suenobu, T. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 4286.に記載の方法で合成した。すなわち、3-シアノ-1-メチルキノリン(1230mg, 8.0mmol)をアセトン10ml中に溶解させ、さらに、ヨウ化メチル(8ml, 56.4mmol)を加え24時間攪拌した。溶媒を除去し、メタノール900mLを加え、過塩素酸マグネシウム(5.0g, 39.7mmol)を加えて塩交換(イオン交換)し、3-シアノ-1-メチルキノリニウム過塩素酸塩(CNQuH+)を得た。得られた3-シアノ-1-メチルキノリニウム過塩素酸塩(CNQuH+)の収量は1080mgであり、3-シアノ-1-メチルキノリンからの収率は50.2%であった。以下に、この3-シアノ-1-メチルキノリニウム過塩素酸塩(CNQuH+)の機器分析データを示す。
【0051】
3-シアノ-1-メチルキノリニウム過塩素酸塩(CNQuH+);
1H NMR (CD3CN): δ 4.61(s, 3H), 8.12-8.24(m, 1H), 8.4-8.5(m, 3H), 9.46(s, 1H), 9.52(s, 1H).
元素分析値:C11H9N2O4Clに基づく計算値: C, 49.18; H, 3.38; N, 10.43. 実測値: C, 49.01;H, 3.30; N, 10.58.
【0052】
[実施例1]
本実施例では、一重項励起状態が非常に高い酸化力を有する、3-シアノ-1-メチルキノリニウム過塩素酸塩(CNQuH+)を光触媒として用いるとともに、分子状酸素を酸化剤として用い、ベンゼンからフェノールへの高選択的光酸素化反応を行った。なお、3-シアノ-1-メチルキノリニウムは、前記化学式(1)で表されるキノリニウム誘導体である。
【0053】
CNQuH+過塩素酸塩(1.0mM)、ベンゼン(50mM)、水(1.0M)、およびシクロヘキサノン(5mM)を含む酸素飽和アセトニトリル溶液(アセトニトリル0.4mL)に波長λ>290nm(カットフィルター付)のキセノンランプ光を40分間照射すると、選択率100%、収率36.0%でフェノールが得られた。また、副生成物として、過酸化水素が得られた。この反応の化学量論式を、下記スキーム2に示す。なお、シクロヘキサノンは、反応物質ではなく、反応追跡(分析)のための標準物質である。
【0054】
【化5】

【0055】
前記反応は、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS)、 1H NMRにより追跡した。なお、前記のとおり、反応開始前に、あらかじめ、内部標準としてシクロヘキサノン5mMを加えておいた。図1のグラフに、その結果を示す。同図において、横軸は、反応時間(光照射時間、分)であり、縦軸は、ベンゼンおよびフェノール(ヒドロキシベンゼン)の物質量を示す。図示のとおり、反応後40分で、フェノール(ヒドロキシベンゼン)の濃度は最高値を示し、前記のとおり、収率36.0%を示した。また、フェノール(ヒドロキシベンゼン)に対するTON(触媒1モルあたり発生した、目的生成物のモル数)は、18であった。
【0056】
さらに、60分間光照射後、前記反応系をヨードメトリーにより滴定し、過酸化水素の発生を確認した。図2のグラフに、その結果を示す。同図において、横軸は、波長(nm)であり、縦軸は、吸光度を示す。なお、希釈比は、400とした。図示のとおり、I3-が観測されたことから、過酸化水素(H2O2)の生成が確認された。過酸化水素の収量および収率は、それぞれ20.8mMおよび収率は41.6%であり、過酸化水素に対するTONは20.8であった。
【0057】
次に、CNQuH+過塩素酸塩(0.01M)、ベンゼン(0.5M)、および水(3M)を含む酸素飽和アセトニトリル溶液(アセトニトリル0.4mL)に、キセノンランプ(商品名Rc5300、ウシオ電機株式会社製、波長λ=334nmの光(光子量I334nm=9.98×109einstein・s-1)を照射して反応追跡し、フェノール(ヒドロキシベンゼン)生成の量子収率を算出した。図3に、その結果を示す。同図において、横軸は、反応時間(光照射時間、秒)であり、縦軸は、フェノールの生成量(μmol)を示す。図示のとおり、光照射時間とフェノール生成量とは、比例関係を示した。また、量子収率φは、φ=5.6%と算出された。
【0058】
以下、この反応の機構等についての検証結果を示す。なお、参考として、CNQuH+の酸化還元電位および蛍光寿命と、ベンゼンの酸化電位を、下記のとおり示す。
【0059】
【化6】

【0060】
まず、ベンゼンに対し過剰量のCNQuH+過塩素酸塩(1.0×10-5mM)を含む無水アセトニトリル溶液(アセトニトリル4.0mL)に対し、ベンゼンの添加量を0〜20mMまで変化させ、CNQuH+の蛍光消失を観測した。このとき、アセトニトリルは、窒素置換により脱気し、水と酸素は添加しなかった。図4に、その結果を示す。図4(a)は、ベンゼン添加量の増加とともにシアノキノリニウムの蛍光が消光する様子を示す蛍光スペクトル図であり、横軸は、波長(nm)を示し、縦軸は、蛍光強度を示す。図4(a)の挿入図は、図1における波長400nmの蛍光強度変化を示すグラフであり、横軸は、ベンゼンの添加量(mM)を示し、縦軸は、波長400nmの蛍光強度を示す。図示のとおり、アセトニトリル中CNQuH+の波長430nmの蛍光は、ベンゼンの添加に伴い消光した。また、図4(b)に、図4(a)の蛍光スペクトルのStern-Volmerプロット結果を示す。同図において、横軸は、ベンゼンの添加量(mM)を示し、縦軸は、I0/Iを示す。なお、Iは、波長400nmにおける蛍光強度であり、I0は、ベンゼンの添加量がゼロのときのIを示す。図示のように、Stern-Volmerプロットにより、消光定数を2.0×1010M-1・s-1と決定した。
【0061】
次に、CNQuH+過塩素酸塩(0.25mM)を含む無水アセトニトリル溶液(アセトニトリル4.0mL)に対し、ベンゼンの添加量を0.01M〜1.00Mまで変化させ、355nmのレーザ光を10ナノ秒間照射して励起した。このとき、アセトニトリルは、窒素置換により脱気し、水と酸素は添加しなかった。レーザ光照射後700ns後に、吸光度を測定し、シアノキノリニルラジカルとベンゼンラジカルカチオンとの生成を観測した。図5のスペクトル図に、その結果を示す。同図において、横軸は、波長(nm)であり、縦軸は、吸光度である。図示のとおり、ベンゼンの添加によって、シアノキノリニルラジカル(波長500nm付近)とベンゼンダイマーラジカルカチオン(波長800nm付近)との吸光度がともに増大した。このことから、前記光反応においては、まず、ベンゼンから1重項励起状態のCNQuH+へ光電子移動が起こり、生成したベンゼンラジカルカチオンに水が付加する過程を経てフェノールが生成すると考えられる。
【0062】
図5で推定した反応機構をさらに検証するために、CNQuH+過塩素酸塩(1.0mM)、ベンゼン(25mM)、水(1.0M)、およびシクロヘキサノン(10mM)を含む酸素飽和アセトニトリル溶液(アセトニトリル0.4mL)にλ>290nm(カットフィルター付)のキセノンランプ光を30分間照射した。なお、シクロヘキサノンは、反応物質ではなく、反応追跡(分析)のための標準物質である。水として、H216Oを用いた反応、およびH218Oを用いた反応を、前記の条件でそれぞれ個別に行い、それぞれについて、生成したフェノール(ヒドロキシベンゼン)を、質量分析した。図6に、この分析結果を示す。同図中段のグラフは、ベンゼン、フェノール(ヒドロキシベンゼン)、およびシクロヘキサノンの、ガスクロマトグラフィによる分析値(保持時間)を示すグラフである。同グラフにおいて、横軸は、保持時間(分)であり、縦軸は、ピーク強度である。また、同図上段のグラフは、H216Oを用いた反応において、生成したフェノール(ヒドロキシベンゼン)のマススペクトルを示す。同図において、横軸は、質量電荷比m/zであり、縦軸は、強度を示す。同図下段のグラフは、H218Oを用いた反応において、生成したフェノール(ヒドロキシベンゼン)のマススペクトルを示す。同図において、横軸は、質量電荷比m/zであり、縦軸は、強度を示す。図示のとおり、同図上段のグラフでは、フェノールの分子イオンピークがm/z=94であったのに対し、同図下段のグラフでは、フェノールの分子イオンピークがm/z=96であった。これらのことから、同図上段のグラフでは、フェノール性水酸基の酸素原子が16Oであり、同図下段のグラフでは、フェノール性水酸基の酸素原子が18Oであること、すなわち、フェノール性水酸基の酸素原子が水由来であることが確認された。
【0063】
なお、本実施例の反応は、より具体的には、前記スキーム1にしたがって起こっていると考えられる。ただし、前述のように、スキーム1の反応機構は、推定可能な機構の一例であり、本発明を限定しない。
【0064】
[実施例2]
ベンゼン以外に、フルオロベンゼン、クロロベンゼンおよびブロモベンゼンについても、実施例1と同様の反応を行い、フェノール類の生成を確認した。すなわち、CNQuH+過塩素酸塩(4.0mM)、芳香族化合物(50mM)、水(1.0M)、およびシクロヘキサノン(5.0 mM)を含む酸素飽和アセトニトリル溶液(アセトニトリル0.4mL)にλ>310nm(カットフィルター付)のキセノンランプ光を照射した。なお、シクロヘキサノンは、反応物質ではなく、反応追跡(分析)のための標準物質である。芳香族化合物としては、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、またはブロモベンゼンを用いた反応を、それぞれ個別に行った。各反応について、フェノール化合物への変換率、各フェノール化合物の収率、消光係数k、および量子収率φを、それぞれ、実施例1と同様にして算出した。下記表2に、その結果を示す。下記表2中、「fluorobenzene」は、原料(前記芳香族化合物)としてフルオロベンゼンを用いたことを示す。「chlorobenzene」は、原料(前記芳香族化合物)としてクロロベンゼンを用いたことを示す。「bromobenzene」は、原料(前記芳香族化合物)としてブロモベンゼンを用いたことを示す。「conversion」は、前記芳香族化合物からフェノール類への変換率を示す。「selectivity」は、各フェノール化合物の収率を示す。化学式中のXは、原料(前記芳香族化合物)と同一のハロゲン原子である。「reaction time」は、反応時間を示す。図示のとおり、いずれの原料を用いても、フェノール類が得られ、特に、クロロベンゼンを原料とした場合に、88%という高い選択性で、p-クロロヒドロキシベンゼンが得られた。
【0065】
【表2】

【0066】
以上のとおり、実施例1および2によれば、CNQuH+の光励起状態が有する強力な酸化力を利用した光触媒で、芳香族化合物と分子状酸素と水から、一段階でフェノール類を高選択的に製造することができた。
【0067】
[実施例3]
3-シアノ-1-メチルキノリニウム過塩素酸塩(CNQuH+)に代えて、1,2-ジメチル-キノリニウム(前記化学式(I)においてR=Me、R2=Me)過塩素酸塩(MeQuH+)、または1-メチルキノリニウム(前記化学式(I)においてR=Me、R=H)過塩素酸塩(QuH+)を用いることと、反応基質(フェノール類の原料である前記芳香族化合物)としてベンゼンを用いること以外は、前記実施例2(前記表2)と同様の条件で反応を行い、フェノール(ヒドロキシベンゼン)を製造した。下記表3に、その結果を示す。なお、キノリニウム誘導体(酸化触媒)であるMeQuH+およびQuH+は、CNQuH+と同様の方法で製造し、同定したものを用いた。
【0068】
[表3]
酸化触媒 フェノール収率 反応時間 量子収率
MeQuH+ 20% 6.5h 3.0%
QuH+ 20% 0.5h 7.0%
【0069】
以上のとおり、実施例3においては、キノリニウム誘導体として、CNQuH+に代えてMeQuH+またはQuH+を用いても、芳香族化合物と分子状酸素と水から、一段階でフェノール類を高選択的に製造できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明した通り、本発明の酸化触媒、およびフェノール類の製造方法によれば、フェノール類を高収率、高選択的かつ低コストで製造可能である。さらに、本発明の過酸化水素の製造方法によれば、過酸化水素を高収率、高選択的かつ低コストで製造可能である。本発明は、フェノールまたは過酸化水素の製造を必要とするあらゆる分野に適用可能であるため、その適用範囲はきわめて広い。さらに、本発明の製造方法は、反応条件等の適宜な設定により、小規模反応から大規模反応まで広く適用可能であるため、工業プラント、実験室レベルでの有機合成、精密合成等、広範な分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化触媒であって、
下記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体、その互変異性体もしくは立体異性体、またはそれらの塩を含み、芳香族化合物を酸化してフェノール類に変換することを特徴とする酸化触媒。
【化1】

前記化学式(I)中、
は、水素原子または任意の置換基であり、
〜Rは、水素原子または任意の置換基であり、
とR、RとR、RとR、RとR、またはRとRは、それらが結合している炭素原子とともに芳香環を形成しても良い。
【請求項2】
〜Rの少なくとも一つが電子吸引基である請求項1記載の酸化触媒。
【請求項3】
〜Rの少なくとも一つが電子吸引基である請求項2記載の酸化触媒。
【請求項4】
が、アルキル基またはベンジル基であり、
が、電子吸引基であり、
およびR〜Rが、水素原子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項5】
前記電子吸引基が、シアノ基、カルボキシ基、スルホ基、カルバモイル基、アミド基、ハロゲン基、またはニトロ基からなる群から選択される少なくとも一つである請求項2から4のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項6】
前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体が、1-メチルキノリニウム、1,2-ジメチルキノリニウム、または3-シアノ-1-メチルキノリニウムである請求項1記載の酸化触媒。
【請求項7】
前記化学式(I)で表されるキノリニウム誘導体が、下記化学式(1)で表されるキノリニウム誘導体である請求項1記載の酸化触媒。
【化2】

【請求項8】
前記芳香族化合物の芳香環上の水素原子を水酸基で置換して前記フェノール類に変換する請求項1から7のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項9】
光反応により前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換する、請求項1から8のいずれか一項に記載の酸化触媒。
【請求項10】
芳香族化合物を酸化してフェノール類に変換する酸化工程を含む、フェノール類の製造方法であって、
前記酸化工程において、請求項1から9のいずれか一項に記載の酸化触媒により前記芳香族化合物を酸化することを特徴とする製造方法。
【請求項11】
前記芳香族化合物が、下記化学式(101)で表される化合物であり、前記フェノール類が、下記化学式(102)〜(105)で表されるフェノール類の少なくとも一つである請求項10記載の製造方法。
【化3】

前記化学式(101)および(103)〜(105)中、Xは、水素原子、塩素または臭素であり、前記化学式(101)におけるXと、前記化学式(103)〜(105)におけるXとは、同一である。
【請求項12】
前記酸化工程において、光反応により、前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換する、請求項10または11記載の製造方法。
【請求項13】
前記酸化工程において、水と酸素との存在下、前記芳香族化合物を酸化して前記フェノール類に変換する、請求項10から12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
過酸化水素の製造方法であって、請求項13記載の前記酸化工程において、副生成物として過酸化水素を生成させることを特徴とする製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−189224(P2011−189224A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55157(P2010−55157)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】