説明

酸性水中油型乳化食品

【課題】冷凍耐性が向上した酸性水中油型乳化食品を提供する。
【解決手段】酸性水中油型乳化食品の水相に、非溶解状態の加熱溶解性ガム質粒子と油滴が分散している。ガム質粒子の平均粒子径は15〜200μm、油滴の平均粒子径は1〜20μm、油滴の平均粒子径とガム質粒子の平均粒子径との比は(1〜70)/100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解凍後も安定な乳化状態を有した冷凍耐性に優れた酸性水中油型乳化食品に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズや半固体状乳化ドレッシングなどの酸性水中油型乳化食品は、日常の食生活で広く親しまれている。このような酸性水中油型乳化食品の代表的な用途としてはサラダがあるが、近年、その用途が拡大され、冷凍惣菜などの冷凍食品でも利用されている。また、各家庭においても、酸性水中油型乳化食品を用いた食品を冷凍保存し、解凍あるいは温めて食することがなされている。
【0003】
このため、酸性水中油型乳化食品には、冷凍して解凍した後にも安定した乳化状態を維持すること、即ち、冷凍耐性を備えることが望まれており、冷凍耐性の向上を意図した種々の酸性水中油型乳化食品が提案されている。
【0004】
例えば、酸性水中油型乳化食品の冷凍耐性を向上させるために、脱糖処理および65℃以上の熱蔵処理が施された乾燥卵白であって、乾燥卵白水溶液(乾燥卵白1部に対し清水7部)の加熱凝固物の離水率が4%以下のものと、キサンタンガムなどのガム質を酸性水中油型乳化食品に配合することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-61号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、より一層冷凍耐性が向上した酸性水中油型乳化食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、酸性水中油型乳化食品の水相に非溶解状態のガム質粒子を分散させ、かつそのガム質粒子の粒径と水相で乳化分散している油滴の粒子径を特定の大きさにすると、意外にも油滴同士の結合を抑制することができ、冷凍耐性が顕著に向上すること、また、非溶解状態の粒子が分散しているにもかかわらず食感に影響を与えないこと、さらに、水相に非溶解状態のガム質粒子を分散させるには、ガム質粒子を加熱溶解性のガムから形成すればよいことを見いだした。
【0008】
即ち、本発明は、水相に、非溶解状態の加熱溶解性ガム質粒子と油滴が分散している酸性水中油型乳化食品であって、
ガム質粒子の平均粒子径が15〜200μm、
油滴の平均粒子径が1〜20μm、
である酸性水中油型乳化食品を提供する。
【0009】
また、この酸性水中油型乳化食品の製造方法として、加熱溶解性ガム質粒子が分散した水相の温度を、該ガム質粒子が完全には溶解しない温度以下とする酸性水中油型乳化食品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、解凍後も安定な乳化状態を有する酸性水中油型乳化食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1の水中油型乳化食品の顕微鏡写真である。
【図2】図2は、比較例2の水中油型乳化食品の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0013】
本発明において酸性水中油型乳化食品とは、食用油脂が油滴として水相中に略均一に分散して水中油型の乳化状態が形成され、pHが酸性に調整されたものである。好ましくは、常温流通を可能ならしめるため、pHは4.6以下に調整される。このような酸性水中油型乳化食品であって、粘度が30Pa・s以上に調整されたものに、マヨネーズ、マヨネーズ類、半固体状乳化ドレッシング等がある。
【0014】
本発明の酸性水中油型乳化食品では、常温において、水相に油滴が乳化分散しているだけでなく、ガム質粒子が非溶解状態で分散している。ここで、ガム質としては、酸性水中油型乳化食品の製造、保管工程において、水相で、少なくとも一部が非溶解状態で分散できるものであればよく、例えば、5℃で水と混合撹拌しても十分に溶解せず、常温よりも高い温度に加熱することにより溶解して増粘性を発揮する加熱溶解性のガム質を使用することができ、より好ましくは、その略1wt%水分散液を55℃に加熱後20℃に冷却したときの粘度が、同水分散液を90℃に加熱後20℃に冷却したときの粘度の80%未満となる粘度特性を有する加熱溶解性ガム質を使用することができる。
【0015】
この粘度特性は、より具体的には、ガム質の水分散液を室温で0.1〜3wt%の範囲内に調製し、それを加熱撹拌下で55℃に加熱し、55℃に達温後20℃の室内に静置し、20℃に冷却されたときに測定した粘度と、加熱温度を90℃として同様に加熱冷却後に測定した粘度とから算出される。
【0016】
このような粘度特性を満たすガム質としては、加熱溶解性タマリンドシードガム(略1%分散液の大部分が溶解又はゾル化する温度(以下、溶解温度という)70〜90℃)、加熱溶解性ローカストビーンガム(溶解温度70〜80℃)及び加熱溶解性カラギーナン(カッパカラギーナン、イオタカラギーナンともに溶解温度70〜80℃)等をあげることができ、水相にはこれらの一種又は複数種を含有させることができる。なお、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等には、精製法、乾燥法等によって上述の粘度特性を示さず、常温で容易に溶解するものがあるが、そのような常温溶解性ガム質は加熱溶解性ガム質と区別される。
【0017】
本発明の酸性水中油型乳化食品の水相においては、上述の加熱溶解性ガム質の少なくとも一部が、好ましくは全てが非溶解状態で分散しているものとする。加熱溶解性ガム質粒子が非溶解状態で分散している水相を加熱すると加熱溶解性ガム質粒子は溶解し、その後に冷却すると、水相では加熱溶解性ガム質がゾルないしゲル状態となるが、このように非溶解状態の加熱溶解性ガム質粒子が消失した水相は、本発明の酸性水中油型乳化食品を構成しない。
【0018】
水相で非溶解状態で分散している加熱溶解性ガム質粒子の平均粒子径は15〜200μm、好ましくは20〜150μmである。加熱溶解性ガム質の平均粒子径は、光学顕微鏡で酸性水中油型乳化食品を観察し、酸性水中油型乳化食品中の無作為に選択した100個の加熱溶解性ガム質の粒子について粒子径を測定し、その平均値を算出して得ることができる。加熱溶解性ガム質粒子の平均粒子径がこの範囲より小さかったり、大きかったりすると冷凍耐性を十分に向上させることができず、好ましくない。なお、市販の粉末状の加熱溶解性ガム質の平均粒子径は、通常、その製造工程における粉砕工程やフルイによるろ別工程のメッシュの大きさ等に依存する。したがって、本発明において市販の加熱溶解性ガム質粒子を使用する場合には、上述の平均粒子径を有するものを適宜選択したり、フルイにより濾別して使用する。
【0019】
本発明の酸性水中油型乳化食品における加熱溶解性ガム質粒子の配合割合は、当該ガム質の種類にもよるが、0.1〜3%が好ましく、より好ましくは0.5〜2%である。加熱溶解性ガム質の配合量が少なすぎると冷凍耐性を十分に向上させることができず、反対に多すぎると酸性水中油型乳化食品に滑らかな食感を与え難くなる。
【0020】
本発明の酸性水中油型乳化食品の水相には、上述の加熱溶解性ガム質粒子を含有させる他、DE(dextrose equivalent)12以下の澱粉分解物、加工澱粉及び湿熱処理澱粉から選ばれる1種以上の澱粉処理物を溶解状態で含有させることが好ましい。これにより水相の粘度を高め、冷凍時の油脂の結晶化を抑制することができる。
【0021】
ここで、澱粉分解物とは、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、タピオカ澱粉等の澱粉類を分解して得られるデキストリン、マルトデキストリン、水飴等と称されるものである。DEは澱粉分解物における分解の程度を表す指標であり、DEの値が大きくなるにつれ分解の程度が高くなる。本発明では、分解の程度が低いDE12以下の澱粉分解物を用いることが好ましく、より好ましくは9以下の澱粉分解物を用いる。
【0022】
また、DE12以下の澱粉分解物の配合量は、上述のガム質粒子を形成する加熱溶解性ガム質の配合量や、他の澱粉処理物の配合量にもよるが、解凍後の乳化状態をより安定化させる点から0.1〜8%が好ましく、0.5〜6%がより好ましい。これに対し、配合量が多すぎると食感が重たくなる傾向があり好ましくない。
【0023】
加工澱粉は、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、タピオカ澱粉等の澱粉に化学的処理を施したものである。本発明において加工澱粉としては、食用として供されているものを種々使用することができる。例えば、澱粉に無水酢酸と無水アジピン酸を作用させてエステル化したアセチル化アジピン酸架橋澱粉、澱粉にオキシ塩化リン又はトリメタリン酸ナトリウムを作用させ、さらに無水酢酸又は酢酸ビニルを作用させてエステル化したアセチル化リン酸架橋澱粉、澱粉に次亜塩素酸ナトリウムと無水酢酸を作用させてエステル化したアセチル化酸化澱粉、澱粉に無水オクテニルコハク酸を作用させてエステル化したオクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、澱粉に無水酢酸又は酢酸ビニルを作用させてエステル化した酢酸澱粉、澱粉に次亜塩素酸ナトリウムを作用させた酸化澱粉、澱粉にプロピレンオキシドを作用させてエーテル化したヒドロキシプロピル澱粉、澱粉にプロピレンオキシドを作用させてエーテル化し、さらにオキシ塩化リン又はトリメタリン酸ナトリウムを作用させてエステル化したヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、澱粉にオキシ塩化リン又はトリメタリン酸ナトリウムを作用させたエステル化し、さらにオルトリン酸又はそのカリウム塩、ナトリウム塩、トリポリリン酸ナトリウムを作用させエステル化したリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、澱粉にオルトリン酸又はそのカリウム塩、ナトリウム塩、トリポリリン酸ナトリウムを作用させエステル化したリン酸化澱粉、澱粉にオキシ塩化リン又はトリメタリン酸ナトリウムを作用させエステル化したリン酸架橋澱粉などが挙げられる。
【0024】
湿熱処理澱粉は、澱粉を湿熱処理したもので、例えば加熱しても糊化しない程度の水分を含む澱粉粒子を密閉容器中で相対湿度100%の条件下で約100〜125℃に加熱する方法、あるいは第1段階で澱粉を容器中に入れ密閉・減圧し、第2段階で生蒸気を容器内に導入し、加湿加熱する減圧加圧加熱法などにより得ることができる。湿熱処理澱粉としては、市販のものを使用することができる。
【0025】
上述のDE12以下の澱粉分解物、加工澱粉及び湿熱処理澱粉の中でもヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉などの加工澱粉が冷凍耐性を向上させる点で好ましい。
【0026】
また、澱粉処理物の配合量は、DE12以下の澱粉分解物、加工澱粉及び湿熱処理澱粉の合計として、0.3〜15%が好ましく、0.5〜12%がより好ましい。澱粉処理物の配合量が少なすぎると、澱粉処理物の配合による冷凍耐性の向上効果を十分に発揮させることが難しく、反対に多すぎると、食感が重たくなる。
【0027】
一方、水相に分散させる油滴は常温(15〜25℃)で液状の食用油脂から形成することが好ましい。常温で液状の食用油脂としては、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油等をあげることができる。常温で液状の食用油脂を使用することにより、パーム油等の常温で固体の食用油脂を使用する場合に比して油滴の粒子径をコントロールしやすくなる。
【0028】
本発明の酸性水中油型乳化食品における油脂の配合割合は、当該油脂の種類にもよるが、冷凍耐性を十分に向上させる点から、50%以下が好ましく、より好ましくは40%以下である。油脂の配合割合が多いほど、冷凍と解凍により油脂が分離しやすくなるためである。また、油脂の配合量が少ないと冷凍と解凍による油脂の分離は生じにくくなるが、少なすぎると酸性水中油型乳化食品のコクがなくなるため、本発明においては、油脂の配合割合は5%以上が好ましい。
【0029】
また、本発明の酸性水中油型乳化食品では、油滴の平均粒子径が1〜20μmである。ここで、油滴の平均粒子径は、光学顕微鏡で酸性水中油型乳化食品を観察し、酸性水中油型乳化食品中の無作為に選択した100個の油滴について粒子径を測定し、その平均値を算出して得ることができる。油滴の平均粒子径が20μmより大きいと油滴同士が結合しやすくなって冷凍耐性を十分に向上させることができず、好ましくない。一方、油滴の平均粒子径が1μmよりも小さいと、そのような微細な乳化状態に製造するためのコスト上昇に見合う耐冷凍性の向上効果が得られず好ましくない。
【0030】
また、本発明の酸性水中油型乳化食品では、冷凍耐性を十分に向上させる点から、油滴の平均粒子径と前述のガム質粒子の平均粒子径との比が(1〜70)/100であることが好ましく、(1〜30)/100がより好ましい。
【0031】
なお、ガム質粒子の粒子径や、油滴の粒子径をこのように調整する方法としては、食用油脂を乳化するときのミキサーの種類を変更したり、撹拌条件を調整したり、原料成分の添加順序を調整したりする方法等をあげることができる。
【0032】
また、本発明の酸性水中油型乳化食品には、酸性水中油型乳化食品に通常用いられている各種原料を適宜選択して含有させることができる。例えば、食酢、クエン酸、乳酸、レモン果汁などの酸味材、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖などの各種調味料、生卵黄、生卵黄に殺菌処理、冷凍処理、濾過処理、スプレードライ又はフリーズドライ等の乾燥処理、ホスフォリパーゼ又はプロテアーゼ等による酵素処理、酵母またはグルコースオキシダーゼ等による脱糖処理、超臨界二酸化炭素処理又は亜臨界二酸化炭素処理等の脱コレステロール処理、食塩又は糖類等の混合処理等の1種または2種以上の処理を施したもの、全卵、液卵白、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉などの乳化材、動植物のエキス類、からし粉、胡椒などの香辛料、並びに各種蛋白質やこれらの分解物等をあげることができる。
【0033】
本発明の酸性水中油型乳化食品は、加熱溶解性ガム質を水相又は油相に分散し、常法により水相原料と油相原料を混合乳化することにより、あるいは水相と油相を乳化混合後に加熱溶解性ガム質を混合分散させることにより、製造することができるが、その際、加熱溶解性ガム質粒子を非溶解状態で分散させている水相は、そのガム質粒子を完全には溶解しない温度以下で酸性水中油型乳化食品を製造する。即ち、加熱溶解性ガム質を、予め水相に分散させた後、その水相と油相と混合乳化しても、そのガム質を予め油相に分散させた後、その油相を水相と混合乳化しても、混合乳化後には、ガム質は水相で分散するので、水相にガム質が非溶解状態で分散している本発明の酸性水中油型乳化食品を製造するためには、水相と油相との混合前に、ガム質は、水相に分散させても油相に分散させてもよい。また、水相と油相を混合分散させた後の乳化物にガム質を添加し分散させてもよく、それによってもガム質は水相に分散する。いずれの場合においても、水相にガム質が非溶解状態で分散している状態では、その水相をガム質が完全に溶解する温度には加温しないようにする。なお、ガム質が油相に分散している状態では、その油相を加熱してもガム質は溶解もゾル化もしない。
【0034】
本発明の酸性水中油型乳化食品の製造方法としては、より具体的には、例えば、水相原料として、常温非溶解性のガム質、好ましくは前述の加熱溶解性のガム質、乳化材及び調味料を、通常60℃以上に加熱することなく均一に混合し、ミキサー等で撹拌しながら油相原料を注加して粗乳化し、次にコロイドミルなどで仕上げ乳化をした後、ボトル容器やガラス容器などに充填密封する。
【実施例】
【0035】
実施例1〜4及び比較例1〜3
(1)酸性水中油型乳化食品の製造
表1に示す配合割合で仕上がり100kgの酸性水中油型乳化食品を製した。ここで、表1のガム質の1%水分散液を55℃に加熱し、20℃まで冷却した時の粘度は、同水分散液を90℃に加熱し、20℃まで冷却した時の粘度に対し、次の割合を示した。
加熱溶解性タマリンドシードガム:10%
加熱溶解性ローカストビーンガム:70%
加熱溶解性カラギーナン:53%
なお、比較例2では、ガム質として、予め加熱溶解性タマリンドシードガムを清水に分散し、90℃で加熱溶解後、冷却したものを使用した。
【0036】
酸性水中油型乳化食品の調製方法としては、澱粉処理物又は澱粉を清水に分散させ、加熱(品温:90℃)により糊化させた後、冷却して糊化澱粉液(品温:20℃)を調製した。この糊化澱粉液とガム質と植物油以外の原料をミキサーで均一に混合し水相部を調製した。次いで、この水相部を撹拌しながら菜種サラダ油を徐々に注加して粗乳化物を製した。そして、得られた粗乳化物をコロイドミルで仕上げ乳化し、200mL容量のナイロンポリ袋に150gずつ充填密封した。
比較例3では、コロイドミルによる仕上げ乳化条件を調整し、油滴の粒子径を調整した。
【0037】
(2)評価
(1)で得た酸性水中油型乳化食品について、冷凍耐性の評価、ガム質粒子の有無の確認、ガム質粒子の平均粒子径の計測、油滴粒子の平均粒子径の計測を次のように行い、さらに、ガム質粒子の平均粒子径100に対する油滴の平均粒子径の比を算出した。これらの結果を表1に示す。
【0038】
(2-1)冷凍耐性
(1)で得た酸性水中油型乳化食品を、ナイロンポリ袋に充填密封したまま、−20℃の冷凍庫中で2ヵ月間保存し、その後25℃の室内で8時間以上静置し、解凍後の状態を目視観察し、油分離の有無により次の基準で冷凍耐性を評価した。
【0039】
−:油分離なし
±:表面にわずかににじむ程度の油分離が観察される
+:表面に若干の油分離が観察される
++:著しい油分離が観察される
【0040】
(2-2)ガム質粒子の観察
(1)で得た酸性水中油型乳化食品を光学顕微鏡で観察(倍率:500倍)し、ガム質粒子の有無を確認した。実施例1、比較例2の顕微鏡写真を図1、図2に示す。図1中の丸囲みはガム質粒子である。
なお、実施例1の酸性水中油型乳化食品を80℃で10分間加熱したものについても同様に顕微鏡で観察した。その結果、ガム質粒子を確認することができなかったため、非溶解状態で分散していたガム質粒子が溶解したことがわかる。
【0041】
(2-3)ガム質粒子の平均粒子径
(2-2)でガム質粒子が観察されたものについては、無作為に選択した100個のガム質の粒子について5μm目盛りのスケールで粒子径を計測し、その平均値を求めた。
【0042】
(2-4)油滴の平均粒子径
(1)で得た酸性水中油型乳化食品について光学顕微鏡で観察(倍率:2000倍)し、無作為に選択した100個の油滴について1μm目盛りのスケールで粒子径を計測し、その平均値を求めた。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から、加熱溶解性ガム質粒子が非溶解状態で分散していると(実施例1〜3)冷凍耐性が良好であること、これに対しガム質が常温溶解性である場合(比較例1)あるいはガム質が加熱溶解性であっても一旦に加熱溶解させることにより水相に非溶解状態の粒子が残存していない場合(比較例2)では冷凍耐性が劣ることがわかる。
また、実施例1〜4と比較例3から、油滴平均粒子径が1〜20μmの範囲にあり、油滴平均粒子径とガム質平均粒子径との比が(1〜70)/100の範囲にあると冷凍耐性が良好であることがわかる。
【0045】
試験例1-1〜1-4
澱粉処理物の種類が冷凍耐性に及ぼす影響を調べるため、表1に示すように、実施例1の組成に対して澱粉処理物又は澱粉の種類を異ならせた以外は実施例1と同様にして酸性水中油型乳化食品を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
表1から、加熱溶解性のガム質を使用した水相に、加工澱粉(ヒドロキシプロピル澱粉)、DE12以下の澱粉分解物、又は湿熱処理澱粉を使用する場合、馬鈴薯澱粉を使用した場合に比べて冷凍耐性が向上することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相に、非溶解状態の加熱溶解性ガム質粒子と油滴が分散している酸性水中油型乳化食品であって、
ガム質粒子の平均粒子径が15〜200μm、
油滴の平均粒子径が1〜20μm
である酸性水中油型乳化食品。
【請求項2】
油滴の平均粒子径とガム質粒子の平均粒子径との比が(1〜70)/100である請求項1記載の酸性水中油型乳化食品。
【請求項3】
水相に、DE(dextrose equivalent)12以下の澱粉分解物、加工澱粉及び湿熱処理澱粉から選ばれる1種以上の澱粉処理物を溶解状態で含有する請求項1又は2記載の酸性水中油型乳化食品。
【請求項4】
加熱溶解性ガム質が、加熱溶解性タマリンドシードガム、加熱溶解性ローカストビーンガム及び加熱溶解性カラギーナンから選ばれる請求項1〜3のいずれかに記載の酸性水中油型乳化食品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の酸性水中油型乳化食品の製造方法であって、加熱溶解性ガム質粒子が分散した水相の温度を、該ガム質粒子が完全には溶解しない温度以下とする酸性水中油型乳化食品の製造方法。
【請求項6】
加熱溶解性ガム質粒子を水相に分散した状態で60℃以上に加熱することなく製造する請求項5記載の酸性水中油型乳化食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−10619(P2012−10619A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148294(P2010−148294)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】