酸性飲料充填方法及び装置
【課題】ボトルに酸性飲料を充填するに際し、温水リンスで使用する温水の量と温水を作るための熱エネルギーを低減する。
【解決手段】加熱されたプリフォーム6からブロー成形によりボトル1を成形し、上記プリフォームに加えた熱が残留しているうちに、ボトル内面に過酸化水素が接触するように、ボトル内に過酸化水素のミスト又はガスを供給し、続いてボトル内に70℃以上の温水を0.2秒以上供給してボトル内面に温水を接触させ、しかる後にボトル内に酸性飲料を充填して密封する。
【解決手段】加熱されたプリフォーム6からブロー成形によりボトル1を成形し、上記プリフォームに加えた熱が残留しているうちに、ボトル内面に過酸化水素が接触するように、ボトル内に過酸化水素のミスト又はガスを供給し、続いてボトル内に70℃以上の温水を0.2秒以上供給してボトル内面に温水を接触させ、しかる後にボトル内に酸性飲料を充填して密封する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルの成形からボトルの殺菌を経て酸性飲料の充填に至るまでを連続的に行う飲料充填方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料充填装置として、プリフォームからブロー成形によりボトルを成形する成形部と、成形部で成形されたボトルを過酸化水素のミストで殺菌する殺菌部と、殺菌部で殺菌されたボトルをエアリンスするエアリンス部と、エアリンスされたボトルを温水で洗浄する温水リンス部と、温水リンスされたボトルに飲料を充填し密封する充填部とが連結され、成形部から殺菌部等を経て充填部へとボトルを連続走行させる走行手段が設けられ、成形部から充填部に至る箇所がチャンバーで覆われたものが知られている。この飲料充填装置によれば、ボトルが成形段階で加えられた熱を利用して過酸化水素のミストによる殺菌効果を高めることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、内容物である飲料を、pH4.6未満の酸性飲料等加熱後における芽胞菌の生育が困難な酸性飲料に限定すれば、内面を温水で加熱殺菌したボトルに無菌充填することができることが知られている。その場合のボトルの殺菌は、65℃〜100℃の温水を倒立状態にしたボトルにスプレーノズルから噴射することによって行い、その殺菌時間は3秒ないし10秒であるとされる(例えば、特許文献2参照。)。また、倒立状態のPETボトル内に内面全面が濡れるように熱水を噴射して殺菌する場合、例えば1.5リットルのボトルでは、65℃で一回につき6秒、85℃で一回につき3秒(約100ミリリットル/秒)の熱水噴射を行えば、カビ、酵母を殺菌して酸性飲料を充填することができるとされる(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−111295号公報
【特許文献2】国際公開第2008/12996号
【特許文献2】特許第2844983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、pH4.6未満の酸性飲料を充填するPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルを充填前に殺菌するには、過酸化水素ミストをボトル内に吹き込んだ後、例えば74℃の温水を3秒間ボトル内に注入する温水リンスを行っている。しかし、PETボトルが、PET使用量18.3g、容量500ccの薄肉に形成されると、上記温水リンスの条件ではボトルが収縮して商品価値を失ってしまい、ボトルの薄肉化、軽量化が困難になるという問題がある。
【0006】
また、PETボトルを例えば36,000本/時で走行させつつ上記温水リンスを行うと、温水の使用量は18〜20トン/時となり、大量の水資源を必要とする。しかも、この温水は熱交換器で滅菌する必要があるので、高エネルギーを消費することになる。
【0007】
したがって、本発明は、上記諸問題点を解消することができる酸性飲料充填方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するに当たり、図20のグラフに示すような知見を得た。
【0009】
すなわち、温水リンスの条件である74℃、3秒は、Z=5℃で同等の殺菌価を計算すると、曲線Aとなって現れる。これにより、リンス水量の削減のためリンス時間の短縮化を試みた場合、74℃×3秒と同等の殺菌価を得るには、リンス温度を高くする必要があることが分かる。
【0010】
一方、この同等の殺菌価に対するボトルの収縮量は、リンス温度が高温になってもリンス時間が短縮されると減少することが曲線Bから判明した。また、容量500ccのボトル内面全体を温水で濡らすために最低限必要なリンス時間は0.2秒であった。
【0011】
また、本発明者等の実験によれば、0.2秒のごとくリンス時間が極端に短いと、ボトルの肉厚分布により温度ムラが生じ、殺菌効果が低下するが、ボトルをそのブロー成形から殺菌を経て温水リンスに至るまで連続走行させると、リンス時間を0.2秒まで短縮しても殺菌効果の低下やバラツキの発生を抑えることができた。また、過酸化水素のミスト又はガスによる殺菌効果も向上した。
【0012】
本発明は上記知見に基づいてなされたもので、次のような構成を採用する。
【0013】
なお、図面の参照符号を括弧付きで付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
すなわち、請求項1に係る発明は、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形し、上記プリフォーム(6)に加えた熱が残留しているうちに、ボトル(1)内面に過酸化水素が接触するように、ボトル(1)内に過酸化水素のミスト(α)又はガス(β)を供給し、続いてボトル(1)内に70℃以上の温水を供給してボトル(1)内面に温水(w)を0.2秒以上接触させ、しかる後にボトル(1)内に酸性飲料(a)を充填して密封する酸性飲料充填方法を採用する。
【0015】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の酸性飲料充填方法において、上記過酸化水素がミスト(α)の場合は500ccボトル1本当たり10μL〜30μLをボトル(1)内に供給し、過酸化水素がガス(β)の場合はボトル(1)内に供給するガス流のガス濃度を1mg/L〜5mg/Lとし、温水リンスは500ccボトル1本当たり3L/min以上の上記温水(w)を0.2秒以上ボトル(1)内に供給することによって行うことも可能である。
【0016】
請求項3に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載の酸性飲料充填方法において、成形されたボトル(1)をその密封に至るまで連続走行させる走行路を設け、この走行路を各々回りにグリッパー(28等)を備えたホイール(36a等)の列によって形成し、グリッパー(28等)が各ホイール(36a等)の回りでボトル(1)の首部(1a)を把持して旋回すると共にボトル(1)を上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すようにすることも可能である。
【0017】
請求項4に記載されるように、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸性飲料充填方法において、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形する工程からボトル(1)に酸性飲料(a)を充填して密封するまでの全工程を、ボトル(1)を連続走行させながら行い、上記ボトル(1)を成形した後殺菌する前に、プリフォーム加熱時の熱が残留したボトル(1)の温度を検査し、この温度が所定値に達していないボトル(1)を排除し、所定値に達したボトル(1)に対してのみ上記殺菌及び充填を行うようにしてもよい。
【0018】
また、請求項5に係る発明は、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形する成形部(7)と、成形部(7)で成形されたボトル(1)を過酸化水素の少量のミスト(α)又は低濃度のガス(β)で殺菌する殺菌部(9)と、殺菌部(9)を経たボトル(1)を高温の温水により短時間でリンスする温水リンス部(91)と、温水リンス部を通過したボトル(1)に酸性飲料(a)を充填する充填部(10)とが連結され、上記成形部(7)から上記殺菌部(9)を経て上記充填部(10)へとボトル(1)を走行路上で連続走行させる走行手段が設けられ、上記殺菌部(9)から上記充填部(10)に至る箇所がチャンバー(9a等)で覆われた酸性飲料充填装置において、上記成形部(7)で成形されたボトル(1)について温度が所定値にあるか否か検査を行う温度検査部(46)が、上記成形部(7)と上記殺菌部(9)との間にこれらに連結されるように設けられ、この温度検査部(46)には、温度検査により不良と判断されたボトル(1)を上記走行路から排除する排除手段(53a等)と、上記温度検査部(46)内を上記成形部(7)内及び上記殺菌部(9)内よりも陽圧化する陽圧化手段(84等)とが設けられ、上記走行手段は、上記成形部(7)から上記充填部(10)へと列状に配置されたホイール(19a等)と、各ホイール(19a等)の回りでボトル(1)の首部(1a)を把持して旋回すると共にボトル(1)を上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すグリッパー(28等)とを具備し、上記グリッパー(28等)は、上記プリフォーム(6)に加えられボトル(1)に残留した熱が上記殺菌部(9)でのボトル(1)の殺菌に必要な程度まで保たれるよう走行速度が制御されるようにした酸性飲料充填装置を採用する。
【0019】
請求項6に記載されるように、請求項5に記載の酸性飲料充填装置において、上記ホイール(36a等)が所望の数の列に区分され、列ごとに別個のサーボモータ(S1等)で駆動されるものとすることができる。
【0020】
請求項7に記載されるように、請求項5に記載の酸性飲料充填装置において、上記ボトル成形部(7)側のホイール(19b)と、このホイール(19b)に隣接する下流側のホイール(36a)との間で、一方のホイールが停止した時にグリッパー(28,37)同士の干渉を防止するグリッパー干渉防止手段(42等)が設けられたものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プリフォーム(6)に加えた熱が残留しているうちにボトル(1)内に過酸化水素のミスト(α)又はガス(β)を供給し、続いてボトル(1)内に温水を供給して温水リンスを行い、しかる後にボトル(1)内に酸性飲料(a)を充填して密封するので、残留熱と過酸化水素と温水とによってボトル(1)内を殺菌することができ、従って過酸化水素の使用量を低減することができる。
【0022】
すなわち、プリフォーム(6)に加えた熱が残留しているうちにボトル(1)に過酸化水素のミスト又はガスを吹き付けるので、少量の過酸化水素によってボトル(1)を殺菌することができる。また、ボトル(1)がPET製であるときはボトル温度が低下すると過酸化水素のボトル壁への吸着量が増大するが、この吸着を防止することができる。本発明者等の実験によれば、ボトル(1)の表面に凝結する過酸化水素濃度は、ボトル(1)の温度が高いほど高濃度になる。それは過酸化水素の方が水よりも沸点が高いことに起因する。具体的にはボトル温度が50℃、65℃、80℃の場合、ボトル(1)の表面に付着する過酸化水素濃度はそれぞれ重量%で約70%、約80%、約90%となる。温度が高い上に菌体表面に付着する過酸化水素濃度が高まることから、少量の過酸化水素でボトル(1)を滅菌することができる。
【0023】
また、ボトル(1)内に高温の温水(w)を短時間供給するのみでボトル(1)内を殺菌することができるので、温水(w)の使用量を顕著に低減することができ、しかも、温水(w)の使用量が少ないことから温水(w)を滅菌するための熱エネルギー(蒸気使用量)を顕著に低減することができる。
【0024】
さらに、ボトル(1)には高温の温水(w)がごく短時間だけ接触するので、ボトル(1)の収縮量が低減し、従って、薄肉のボトル(1)を使用してもボトル(1)の変形を防止することができ、ひいてはPET等のボトル形成用材料の使用量を低減することができる。
【0025】
本発明において、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形する工程からボトル(1)に酸性飲料(a)を充填して密封するまでの全工程を、ボトル(1)を連続走行させながら行い、上記ボトル(1)を成形した後殺菌する前に、プリフォーム加熱時の熱が残留したボトル(1)の温度を検査し、この温度が所定値に達していないボトル(1)を排除し、所定値に達したボトル(1)に対してのみ上記殺菌、温水リンス及び充填を行うようにした場合は、所定の温度に達したボトル(1)のみを殺菌処理等することができる。従って、ボトル(1)を適正に殺菌することができ、品質が保証された適正な酸性飲料包装体のみを製造することができる。
【0026】
また、本発明において、ボトル(1)を、その首部(1a)をグリッパー(28等)で把持して搬送するようにした場合は、ボトル(1)同士の接触が防止される。このグリッパー(28等)による搬送方式は、従来のエアによるボトル搬送方式に比べ、成形部(7)から殺菌部(9)内に侵入するバイオバーデンが低下し、製品の無菌性保証レベル(Sterility Assurance Level:SAL)が向上する。更に、ボトル(1)の変形、傷、破損等が防止される。更に、従来、ボトルの大きさや形状を切り換える際、エア搬送路から充填部へとボトル(1)を導入するについて使用するスクリューやガイドをボトル(1)の胴部の大きさ、形状に合わせて取り替える必要があったが、この作業を無くすることができる。ボトル(1)の首部(1a)の形状、大きさはボトル本体の形状、大きさ等の如何を問わず一定であるから、グリッパーによるボトル(1)の搬送方式を採用することにより、従来必要とされたスクリューやガイドを省くことができ、また、交換作業等を解消することができる。
【0027】
本発明において、上記ホイールが所望の数の列に区分され、列ごとに別個のサーボモータ(S1等)で駆動されるものとした場合は、温度検査部(46)、殺菌部(9)、充填部(10)等の各々に属するホイールを互いに別個のサーボモータ(S1等)で駆動することで、各部を同期的に稼動させることができる。
【0028】
本発明において、ボトル(1)の温度を検出してボトル(1)の良否を判別する温度検査手段(46等)が設けられたものとした場合は、殺菌効果を高めることができる温度のボトル(1)を殺菌部に送るようにすることが可能である。
【0029】
本発明において、上記ボトル成形部(7)側のホイール(19b)と、このホイール(19b)に隣接する下流側のホイール(36a)との間で、一方のホイールが停止した時にグリッパー(28,37)同士の干渉を防止するグリッパー干渉防止手段(42等)が設けられたものとした場合は、グリッパーの損傷等を防止することができる。また、下流側のホイールの回転を続行させることで、正常に成形されたボトル(1)は殺菌部(9)、充填部(10)へと送り、ボトル(1)の無駄を防止することができる。更に、ボトル(1)が殺菌部(9)以降に滞留することなく流れることから、ボトル(1)に過酸化水素が多量に付着する等の不具合が防止される。温度検査部(46)で検査されたボトル(1)はその残熱を保った状態で殺菌部(9)に到達するので適正に殺菌され、従って、ボトル(1)の無駄が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る酸性飲料充填方法及び装置により製造された酸性飲料包装体であるボトルの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る酸性飲料充填装置の概略平面図である。
【図3A】プリフォームの酸性飲料充填装置への供給工程図である。
【図3B】成形部へのプリフォーム供給工程図である。
【図3C】プリフォーム加熱工程図である。
【図3D】ブロー成形工程図である。
【図3E】成形型からのボトル排出工程図である。
【図3F】グリッパーによるボトル首部把持工程図である。
【図3G】ボトル胴部検査工程図である。
【図3H】ボトル温度検査工程図である。
【図3I】ボトルのサポートリング検査工程図である。
【図3J】ボトルの首部天面検査工程図である。
【図3K】ボトル底部検査工程図である。
【図3L】過酸化水素の凝結ミストによるボトル殺菌工程図である。
【図3M】ボトルの温水リンス工程図である。
【図3N】酸性飲料充填工程図である。
【図3O】キャッピングによる密封工程図である。
【図4】ボトルを搬送するグリッパーをホイールと共に示す概略平面図である。
【図5】図2中、検査部の部分拡大図である。
【図6】図5中、VI−VI線矢視図である。
【図7】干渉防止手段を備えたグリッパーをホイールと共に示す概略平面図である。
【図8】不良ボトル排除手段を備えたグリッパーをホイールと共に示す概略平面図である。
【図9A】非作動時の不良ボトル排除手段を示す側面図である。
【図9B】作動時の不良ボトル排除手段を示す側面図である。
【図10】ミスト生成装置の部分切欠正面図である。
【図11】陽圧化手段を示す説明図であり、図2中、XI−XI線矢視図である。
【図12A】ボトルを上下反転させることができるグリッパーの一対の挟み片が開いた状態を示す平面図である。
【図12B】ボトルを上下反転させることができるグリッパーの一対の挟み片が閉じた状態を示す平面図である。
【図13】図12A,Bに示すグリッパーを上下反転させるためのカム装置を示す部分切欠平面図である。
【図14】図2に示す酸性飲料充填装置において代替し得る過酸化水素ガスによる殺菌装置の部分切欠正面図である。
【図15】干渉防止手段の他の例を示す図7と同様な概略平面図である。
【図16】干渉防止手段の更に他の例を示す概略立面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る酸性飲料充填装置を表す概略平面図である。
【図18】本発明の実施の形態3に係る酸性飲料充填装置を表す概略平面図である。
【図19】熱風供給装置を示す部分切欠正面図である。
【図20】温水リンス時間による殺菌価とボトル収縮量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明を実施するための形態について説明する。
【0032】
<実施の形態1>
最初に、この酸性飲料充填装置によって製造される酸性飲料包装体について説明すると、この酸性飲料包装体は、図1に示すように、容器であるボトル1と蓋であるキャップ2とを備える。符号aはボトル1内に充填された酸性飲料を示す。
【0033】
酸性飲料の酸性度は、望ましくはpH4.6未満、より望ましくはpH4未満である。pH4.6〜pH4の飲料には、例えばトマトジュース、野菜ジュースがあり、pH4.0以下の飲料には、例えばレモンティー、オレンジジュース、乳性炭酸飲料、機能性飲料、炭酸入りレモンジュース、ぶどうジュース、果汁ジュースがある。
【0034】
ボトル1の胴部は略円筒形であるが、角筒形等その他の形状であってもよい。胴部の底は底部で閉じられ、上側には円形の開口を有した首部1aが設けられる。
【0035】
ボトル1の首部1aには雄ネジ3が形成され、キャップ2には雌ネジ4が形成され、雌雄ネジ4,3の螺合によりボトル1の首部1aの開口が密封される。また、ボトル1の首部1aには、雄ネジ4の下方においてサポートリング5が形成される。後述するように、ボトル1はサポートリング5を介してグリッパーにより保持されつつ酸性飲料充填装置内を走行する。
【0036】
ボトル1は、後述するように、略試験管状のPET製プリフォーム6をブロー成形することにより形成される。ボトル1は、PET製に限らずポリプロピレン、ポリエチレン等他の樹脂を用いることも可能である。プリフォーム6は、射出成形等により成形され、略試験管状の本体とボトル1と同様な首部1aとを備える。この首部1aにはプリフォーム6の成形と同時に雄ネジ3が形成される。
【0037】
キャップ2はポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を材料にして射出成形等により形成され、キャップ2の成形と同時に雌ネジ4も形成される。
【0038】
次に、上記ボトル1に酸性飲料aを充填する酸性飲料充填装置について説明する。
【0039】
図2に示すように、この酸性飲料充填装置は、ボトル1の成形部7と、成形されたボトル1を検査する検査部8と、ボトル1の殺菌部9と、ボトル1の温水リンス部91と、飲料aをボトル1に充填し密封する充填部10とを具備する。
【0040】
ボトルの成形部7はその全体がチャンバー7aにより覆われる。成形部7のチャンバー7aには、プリフォーム6の供給口とボトル1の排出口がそれぞれ設けられる。
【0041】
成形部7のチャンバー7aの近傍にはプリフォーム供給機11が設置される。プリフォーム供給機11には、図3Aに示すプリフォーム6が多数装填される。プリフォーム供給機11は、プリフォームコンベア12によって、プリフォーム6を図3Aのごとく首部1aを上にした正立状態にして成形部7内に供給口から一個ずつ送り込むようになっている。
【0042】
プリフォーム供給機11は公知の機械であるから、その詳細については説明を省略する。
【0043】
図2に示すように、成形部7のチャンバー7a内には、上流側ホイール列と、下流側ホイール列と、上流側と下流側の両ホイール列間に設けられるターンテーブル列とが配置される。
【0044】
上流側ホイール列内の始端ホイール13aは水平ホイールであり、上記プリフォームコンベア12に接続される。この始端ホイール13aの回りには、プリフォーム6の首部1aを把持する図示しないグリッパーが一定ピッチで多数設けられる。始端ホイール13aの回転と共にこれらのグリッパーも回転し、プリフォームコンベア12から供給されるプリフォーム6をサポートリング5の近傍で掴んで次の中間ホイール13bへと搬送する。中間ホイール13bは垂直に配置され、その回りには図示しないフォークが一定ピッチで多数設けられる。この中間ホイール13bはそのフォークで始端ホイール13aのグリッパーに把持されたプリフォーム6をサポートリング5下で挟むようにしてプリフォーム6を受け取った後、上方に回転してプリフォーム6を倒立状態にする。終端ホイール13cは始端ホイール13aと同様なグリッパーを有した水平ホイールであり、中間ホイール13bによって倒立状態にされたプリフォーム6をグリッパーで把持して受け取る。
【0045】
ターンテーブル列は、環状に並べられた第一乃至第六のターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14fを有する。これらのターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14f間には無端体であるチェーン15が張られる。このチェーン15は第三のターンテーブル14cの回りで長く伸びて迂回路を形成する。このチェーン15の長く伸びた迂回路の箇所が、チャンバー7aに付設された加熱室16内を走行するようになっている。チェーン15は第一乃至第六のターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14fの回転と共に図2中矢印で示される一方向に連続走行可能である。
【0046】
チェーン15には、図3Bに示すマンドレル17が一定ピッチで多数連結される。マンドレル17はチェーン15に牽引されつつターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14f上を起立状態で走行可能である。また、マンドレル17はチェーン15上でその軸回りに自転可能に支持される。
【0047】
第一のターンテーブル14aは上流側ホイール列の終端ホイール13cに連結されており、この終端ホイール13cのグリッパーで保持された倒立状態のプリフォーム6の首部1a内に各マンドレル17が図3Bに示すように入り込んでプリフォーム6を受け取る。
【0048】
上記加熱室16内の壁面には、図3Cに示すように、ヒータ16aが設けられている。プリフォーム6を受け取ったマンドレル17は加熱室16内をヒータ16aに沿って走行し、各マンドレル17に保持されたプリフォーム6は図3Cに示すごとくヒータ16aによって加熱される。この加熱によってプリフォーム6はブロー成形可能な温度まで上昇する。また、各マンドレル17は走行中その鍔部が図示しないレールに接触することによりプリフォーム6を伴って自転し、このためプリフォーム6はその首部1aよりも下方(図3Cでは上方)が均一に加熱される。
【0049】
上記第五のターンテーブル14eの回りには、図3Dに示すようなブロー成形用金型18が一定ピッチで多数設けられる。ブロー成形用金型18は第五のターンテーブル14eの回転と共に回転可能である。
【0050】
ブロー成形用金型18は左右対称に二つ割り可能であり、第四のターンテーブル14dから加熱されたプリフォーム6が到来すると、第五のターンテーブル14eの回りで回転しつつ、図3Dに示すように、プリフォーム6をマンドレル17ごと挟み込む。マンドレル17の中心には貫通孔が形成されており、続いてこの貫通孔内にブローノズル19がプリフォーム6内へと挿入される。そして、ブローノズル19からプリフォーム6内に空気等の気体が吹き込まれることによって、金型18の内部でボトル1が成形される。
【0051】
ブロー成形用金型18は第六のターンテーブル14fに接近したところで型開きし、ボトル1を解放する。ブロー成形用金型18から解放されたボトル1は、図3Eのごとく、マンドレル17に保持された状態で第六のターンテーブル14fを経て第一のターンテーブル14aへと向かう。
【0052】
下流側ホイール列内の始端ホイール19aは、上記第一のターンテーブル14aに接続され、終端ホイール19bは成形部7のチャンバー7aの排出口に接している。
【0053】
始端ホイール19aは、第一のターンテーブル14aの回転によって図3Eのごとくマンドレル17に保持されたボトル1が到来すると、図3Fのごとく把持具98でボトルを把持してマンドレル17から抜き取り、正立状態へと上下に反転させる。
【0054】
終端ホイール19bは、図4に示すようなグリッパー28を有する。このグリッパー28はボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片28a,28bを有する。一対の挟み片28a,28bの基部はそれぞれ垂直ピンでホイール19bに回動可能に支持される。また、挟み片28a,28bの基部には垂直ピンを介して一対の噛み合う歯車30a,30bが固定される。さらに、一方の歯車30bにはレバー31を介してカムフォロア31aが連結され、他方の歯車30aはレバー32及びスプリング33を介して終端ホイール19bに連結される。このスプリング33の引張力により一対の挟み片30a,30bは開方向に常時付勢される。一方、カムフォロア31aが接するカム34が終端ホイール19bの内側において図示しないフレームに固定される。
【0055】
これにより、終端ホイール19bが回転すると、カムフォロア31aとカム34との摺接作用によって、グリッパー28は一対の挟み片28a,28bを開いて始端ホイール19aのグリッパー20からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ次の検査部8へと旋回する。グリッパー28が検査部8に到達したところで、カムフォロア31aとカム34との摺接作用によって一対の挟み片28a,28bが開き、ボトル1を検査部8側のホイール列に受け渡す。
【0056】
この終端ホイール19bのグリッパー28は、始端ホイール19aの把持具98からボトル1を受け取ると、図6に示すように、ボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下方で把持して搬送する。
【0057】
図2に示すように、ボトル1の検査部8が上記ボトル1の成形部7に連結される。この検査部8もその全体がチャンバー8aにより覆われる。図11に示すように、成形部7のチャンバー7aとの間の隔壁35には、ボトル1の通過口35aが設けられる。
【0058】
検査部8のチャンバー8a内には、図2に示すように、上記成形部7側のボトル1の走行手段である終端ホイール19bに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール36a,36b,36cで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール36a,36b,36cの回りには上記終端ホイール19bにおけるグリッパー28と同様なグリッパー28が設けられる。グリッパー28は、各ホイール36a,36b,36cの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール36aから中間ホイール36bを経て終端ホイール36cへと受け渡す。これにより、ボトル1は上記成形部7内の終端ホイール19bから検査部8内のホイール36a,36b,36cの回りの走行路上を連続走行する。グリッパー28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は宙吊り状態で走行する。図6に示すように、グリッパー28は始端ホイール36aにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも上方で把持し、中間ホイール36bにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下方で把持し、終端ホイール36cにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも上方で把持するようにして、検査部8内を上流から下流へとボトル1を搬送する。
【0059】
上記ボトル1の成形部7側の終端ホイール19bに接する上記検査部8内の始端ホイール36aには、上記ボトル成形部7側のターンテーブルやホイールが緊急停止した時に、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー28との間で干渉が生じないようにするために、グリッパー干渉防止手段が設けられている。
【0060】
グリッパー干渉防止手段を有するため、図7に示すように、検査部8内の始端ホイール36aのグリッパー37は上記グリッパー28とは異なる構造となっている。
【0061】
すなわち、図7に示すように、検査部8内の始端ホイール36aには、グリッパー37が所定のピッチで多数取り付けられ、各グリッパー37はボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片37a,37bを有し、一対の挟み片37a,37bの基部はそれぞれ垂直ピンで始端ホイール36aに回動可能に支持され、挟み片37a,37bの基部には垂直ピンを介して一対の噛み合う歯車38a,38bが固定される。
【0062】
さらに、一方の歯車38aにはレバー39を介してカムフォロア39aが連結される。レバー39のカムフォロア39aと反対側にはピン40a及び円弧状長孔40bを介して一方の挟み片37aに連結される。他方の挟み片37bは他方の歯車38bと一体であり、この挟み片37bにはピン41a及び円弧状長孔41bを介してピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが連結される。ピストン・シリンダ装置42は、始端ホイール36aに支持される。歯車38a,38bとホイール36aとの間には、図示しないトーションバネが取り付けられ、このトーションバネのねじり力によって一対の挟み片37a,37bは閉方向に常時付勢される。また、カムフォロア39aがカム43に常時押し付けられる。
【0063】
これにより、検査部8側の始端ホイール36aが回転すると、カムフォロア39aとカム43との摺接作用によって、グリッパー37は一対の挟み片37a,37bを開いて成形部7側の終端ホイール19bのグリップ28からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ旋回する。挟み片37a,37bはトーションバネのねじり力に抗して開方向に回動し、その際、各ピン40a,41aが各円弧状長孔40b,41b内を摺動する。
【0064】
ところが、成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のターンテーブル列やホイール列が緊急停止する場合がある。そのときは、図7に示すように、ピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが縮動作し、閉じ状態にあった一対の挟み片37a,37bは約180度の角度で拡開する。これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー37との間での干渉が防止される。この場合、この始端ホイール36aおよびこれに後続するホイール36b以降の列は回転し続けるので、検査部8内に導入されたボトル1は下流側へと走行し続ける。
【0065】
なお、グリッパー干渉防止手段としては、上記構成に限るものではなく、図15に示すようなグリッパー37を始端ホイール36aの半径方向で往復スライドさせるスライド機構を採用することも可能である。図15中、符号99で示すものはグリッパー37を保持する保持部材であり、この保持部材99にピストン・シリンダ装置100のピストンロッド100aが連結される。ピストン・シリンダ装置100は始端ホイール36aにその半径方向に沿うように固定される。
【0066】
成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のターンテーブル列やホイール列が緊急停止すると、図15に示すように、ピストン・シリンダ装置100のピストンロッド100aが縮動作し、グリッパー37は始端ホイール36aの半径方向外側に突出していたものが半径方向内側へと引っ込む。これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー37との間での干渉が防止される。
【0067】
なお、この図15のグリッパー干渉防止手段では、ピストンロッド100aが縮動作する際、グリッパー37の一対の挟み片37a,37bを開閉動作させるためのカム43は、例えば他のピストン・シリンダ装置の駆動でホイール36aの軸方向に移動することによって、カムフォロア39aに当たらない位置へと逃げるようになっている。
【0068】
また、グリッパー干渉防止手段としては、図16に示すように、グリッパー37をホイール36aの上下方向で回動させる回動機構とすることも可能である。グリッパー37はホイール36aに対し上下方向に回動可能にヒンジ101で連結され、ピストン・シリンダ装置102を介して始端ホイール36aと一体で回転するホイール103に連結される。
【0069】
成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のターンテーブル列やホイール列が緊急停止すると、図16に示すように、ピストン・シリンダ装置102のピストンロッド102aが伸動作し、ホイール36aの半径方向に沿って突出していたグリッパー37はヒンジ101を支点にして下方に回動する。これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー37との間での干渉が防止される。その他、図16中、符号104はホイール36a,103の旋回軸105を支持する機台を示す。
【0070】
なお、上記例ではグリッパー37が下方に回動するようにしたが、上方に回動させても干渉を防止することが可能である。
【0071】
図3G及び図5に示すように、検査部8内のチャンバー8a内で始端ホイール36aの回りの所定位置には、ボトル1の円筒形、角筒形等の胴部を撮像してボトル1の良否を判別するボトル胴部検査手段として、照明手段であるランプ44と撮像手段であるカメラ45が設けられている。ランプ44からの照射光がボトル1の胴部を透過し、カメラ45がその透過光を受けてボトル1の胴部を撮像する。このボトル1の胴部の画像は図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0072】
図3H、図3I、図3J、図3K及び図5に示すように、始端ホイール36aに隣接する中間ホイール36bに沿って、ボトル1の温度を検出してボトル1の良否を判別する温度検査手段として、温度センサ46と、ボトル1の首部1aのサポートリング5を撮像してボトル1の良否を判別するサポートリング検査手段として、照明手段のランプ47及び撮像手段のカメラ48と、ボトル1の首部1aの平坦かつ平滑であるべきリング状の天面1dを撮像してボトル1の良否を判別するボトル首部天面検査手段として、照明手段のランプ49及び撮像手段のカメラ50と、ボトル1の底部を撮像してボトル1の良否を判別するボトル底部検査手段として、照明手段のランプ51及び撮像手段のカメラ52とが、順に設けられる。
【0073】
なお、上記各種検査手段の配置順序は適宜入れ替え可能であり、位置も適宜変更可能である。また、適宜省略することも可能であり、他の検査項目のために他の検査手段を追加することも可能である。
【0074】
温度センサ46は、例えば赤外放射温度計であるが、他の温度計を使用することも可能である。この温度センサ46が、図3Hに示すように、ボトル1の首部1aにおけるサポートリング5、底部にそれぞれ対向するように設置される。
【0075】
ボトル1は、成形部7での残熱を保持しつつグリッパー28に把持されて所定の速度で始端ホイール36a、中間ホイール36bの回りを走行しながら、温度センサ46によって表面の温度を検出される。このボトル1の残熱は後にボトル1を過酸化水素で適正に殺菌するために必要なもので、温度センサ46による検出温度は50℃以上であることが望ましい。
【0076】
これら二箇所の温度センサ46により検出されたボトル1の温度のいずれかが、所定の温度に達していない場合は、そのボトル1は不良品として判断される。所定の温度は50℃〜70℃である。すなわち所定の温度に達していないボトル1は後の過酸化水素による殺菌を行っても殺菌が不十分となる可能性がある。逆にボトル1の上記二箇所の温度がいずれも上記所定の温度に達しているボトル1は、後の過酸化水素による殺菌によって十分に殺菌され得る。
【0077】
なお、温度センサ46が対向するボトル1の上記二箇所は樹脂の肉厚が大きくコールドスポットを生じやすい部分であるが、温度センサ46は上記二箇所に限られるものではなく、ボトル1の形状、大きさ、成形金型の種類等に応じて適宜増減可能である。例えば、上記二箇所のうち特にコールドスポットを生じやすいボトル1の底部に対してのみ温度センサ46を設置することも可能である。
【0078】
また、ボトル1の薄肉部分は厚肉部分に比べて温度が低下しやすく熱が逃げやすいことから、例えばボトル1の胴部の薄い箇所に対向するように温度センサ46を設けるようにしてもよい。これにより、後の殺菌に必要最小限な温度の残熱を保ったボトル1のみを殺菌部9へと搬送することができる。
【0079】
図3I及び図5に示すように、サポートリング検査手段としてのランプ47は、ボトル首部1aのサポートリング5の上方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ48はランプ47の照明光がサポートリング5の上面で反射した光を受けるように配置される。このカメラ48によってサポートリング5が撮像される。このときグリッパー28の挟み片28a,28bは、図6に示すように、サポートリング5の下方で首部を把持しているので、サポートリング5の撮影がグリッパー28の挟み片28a,28bにより妨げられることはない。このサポートリング検査手段によってサポートリング5の特に上面の状態が重点的に検査される。
【0080】
カメラ48が写したこのサポートリング5の画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。サポートリング5は酸性飲料包装体としてのボトル1の購入者等がキャップを開ける際に触れる可能性がある箇所であることから、傷や変形等の存在は好ましくない。傷や変形等がサポートリング5に許容値を超えて生じたボトル1は不良品と判断される。
【0081】
図3J及び図5に示すように、ボトル首部天面検査手段としてのランプ49は、ボトル首部1aの天面1dの上方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ50はランプ49の照明光が天面1dで反射した光を受けるように配置される。このカメラ50によって天面1dが撮像される。カメラ50が写したこの天面1dの画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。このボトル首部1aの天面1dは、キャップ2の天井(図1参照)が当たることによりボトル1内を密封する箇所であることから、平坦かつ平滑である必要がある。このため傷や変形等が天面1dに生じたボトル1は不良品と判断される。
【0082】
図3K及び図5に示すように、ボトル底部検査手段としてのランプ51は、ボトル1の底部の下方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ52はランプ51の照明光がボトル1の底部を透過した光を受けるようにボトル1の首部1aの上方に配置される。このカメラ52によってボトル1の底部が撮像される。カメラ52が写したボトル1の底部の画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0083】
なお、図示しないが検査部8内を走行するグリッパー28には、つや消し表面加工が施されている。これにより、上記各種ランプ47,49,51からの照明光がグリッパー28で反射することによる検査ミスが発生しないようにすることができる。また、検査部8のチャンバー8aには図示しない覗き窓が設けられるが、その窓にはチャンバー8a外の光がチャンバー8a内に入らないように遮光ガラスが設けられる。
【0084】
上記中間ホイール36bにその下流側から接する終端ホイール36cは、図8に示すように、上記中間ホイール36bのグリッパー28と同様なグリッパー28を有する。この終端ホイール36cが回転すると、カムフォロア31aとカム53との摺接作用によって、グリッパー28は一対の挟み片28a,28bを開いて中間ホイール36bのグリップ28からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ次の殺菌部9へと旋回する。グリップ28が殺菌部9に到達したところで、カムフォロア31aとカム53との摺接作用によって一対の挟み片28a,28bが開き、ボトル1を殺菌部9側のホイールに受け渡す。カム53は終端ホイール36cの内側の図示しない静止フレームに固定される。
【0085】
この終端ホイール36cには、検査部8での検査により不良と判断されたボトル1を走行路から排除する排除手段が設けられる。
【0086】
排除手段は、図8及び図9に示すようなグリッパー開放機構を有する。グリッパー開放機構は、上記カムフォロア31aの枢軸54に更に追加された上記カムフォロア31aと同様な形状の追加カムフォロア31bと、この追加カムフォロア31bに接する上記カム53と一部分だけ形状が相違する追加カム55をカム53の下方に有する。また、上記カム53の一部分だけ別体とされ可動化された可動カム部53aを具備する。
【0087】
可動カム部53aは、静止した上記カム53の一部分が切り取られた跡に半径方向にスライド可能に挿入される。そして、終端ホイール36cの内側において図示しないフレームに連結されたピストン・シリンダ装置56のピストンロッド56aに連結される。また、追加カム55における上記可動カム部53aに対応した部分には追加カムフォロア31bが嵌り込む凹部55aが形成される。
【0088】
その他、排除手段には、図2及び図5中、符号57で示す不良ボトル排除用の筒状のシューターが設けられる。
【0089】
上記検査部8から不良品と判断されたボトル1について不良である旨の信号が発せられると、当初図9Aに示すように伸状態にあったピストン・シリンダ装置が同図Bに示すように縮動作し、可動カム部53aをカム53の半径方向内側へと後退させる。このため、追加カムフォロア31bが追加カム55の凹部55a内に没入し、グリッパー28の一対の挟み片28a,28bが二点鎖線で示す閉じ状態から実線で示す開状態に変化し、不良品のボトル1を解放する。不良品のボトル1はグリッパー28の下方に落下し、シューター57から所定の集積部へと送られる。良品のボトル1については、可動カム部53aが図9Aの位置に保持されることから、排除手段の箇所を素通りし、殺菌部9へと向かう。
【0090】
図2に示すように、ボトル1の殺菌部9がボトル1の検査部8に連結される。この殺菌部9もその全体がチャンバー9aにより覆われる。
【0091】
殺菌部9のチャンバー9a内には、図2に示すように、上記検査部8側のボトル1の走行手段である終端ホイール36cに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール58a,58b,58cで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール58a,58b,58cの回りには、図4に示したグリッパー28と同様なグリッパー28が設けられる。
【0092】
グリッパー28は、各ホイール58a,58b,58cの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール58aから終端ホイール58cへと順に受け渡す。これにより、検査済みの良品ボトル1は上記検査部8内の終端ホイール36cから殺菌部9内の終端ホイール58bへと走行路上を連続走行する。グリッパー28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立宙吊り状態で走行する。
【0093】
殺菌部9のチャンバー9a内において始端ホイール58aに下流側から接する中間ホイール58bの回りの所定位置には、図3Lに示すように、ボトル1に殺菌剤である過酸化水素の凝結ミストαを供給する凝結ミスト供給手段としての噴霧管59が設けられる。噴霧管59はその先端のノズル孔がその直下を走行する良品ボトル1の首部1aの開口に正対しうるように定位置に固定される。
【0094】
また、図3Lに示すように、必要に応じて噴霧管59の下方のボトル走行路に沿ってトンネル60が設けられる。
【0095】
噴霧管59は、一本であっても複数本であってもよく、上記中間ホイール58bの周囲に沿って設置される。図示例では中間ホイール58bの回りに設置されるが、他のホイールの回りに設置することも可能である。
【0096】
過酸化水素の凝結ミストαは、図10に示したミスト生成装置61によって噴霧し加熱した過酸化水素を凝結させることにより生成される。
【0097】
このミスト生成装置61は、殺菌剤である過酸化水素の水溶液を滴状にして供給する二流体スプレーである過酸化水素供給部62と、この過酸化水素供給部62から供給された過酸化水素の噴霧をその沸点以上、非分解温度以下に加熱して気化させる気化部63とを備える。過酸化水素供給部62は、過酸化水素供給路62a及び圧縮空気供給路62bからそれぞれ過酸化水素の水溶液と圧縮空気を導入して過酸化水素の水溶液を気化部63内に噴霧するようになっている。気化部63は内外壁間にヒータ63aを挟み込んだパイプであり、パイプ内に吹き込まれた過酸化水素の噴霧を加熱し気化させる。気化した過酸化水素のガスは噴霧管59から、ボトル1の首部1aの開口に向かって凝結ミストαとなって噴出する。
【0098】
ボトル1は中間ホイール58bの回りをその首部1aを上に向けた状態で搬送され、その走行路の上方において噴霧管59の下端がボトル1の首部1aに向かって開口する。噴霧管59内に送られた過酸化水素の凝結ミストαは、噴霧管59の下端のノズル孔からボトル1の首部1aに向かって連続して吹き出る。そして、吹き出た過酸化水素の凝結ミストαは走行するボトル1の首部1aからボトル1内へ流入してボトル1の内面を殺菌し、他の過酸化水素の凝結ミストαはボトル1外へと流れてボトル1の外面を殺菌する。この時ボトル1はトンネル60内を走行することから、凝結ミストαはボトル1の外面にも満遍なく接触する。
【0099】
上記過酸化水素の凝結ミストαは、ボトル1の内面の全面に過酸化水素が付着するようにボトル1内に供給される。この過酸化水素凝結ミストαの供給量は、具体的には、500ccの容量のボトル1本当たり10μL〜30μLであるのが望ましい。この供給量は、従来の余熱が無い常温のボトル1に対して供給する場合の約5割程度である。
【0100】
上述した少なくとも検査部8内の始端ホイール36aから殺菌部9内の終端ホイール58cに至る部分のグリッパー28は、成形部7でのボトル成形の際にボトル1に残留した熱が殺菌部9でのボトル1の殺菌に必要な程度まで保たれるよう走行速度が制御されるようになっている。
【0101】
すなわち、図2に示すように、検査部8には検査部8内の全ホイール36a,36b,36cを動力的に連動するように駆動するサーボモータS1が設けられ、殺菌部9及び温水リンス部91にも殺菌部9及び温水リンス部91内の全ホイール58a,58b,58c,92a,92b,92cを動力的に連動するように駆動するサーボモータS2、S3が各々設けられる。これらのサーボモータS1,S2,S3の制御によってグリッパー28の走行速度が調整され、その結果、ボトル成形時にボトル1に残留した熱が殺菌部9での殺菌に必要な程度まで保たれた状態で、グリッパー28に把持されたボトル1が噴霧管59の直下に到来する。また、殺菌部9で噴霧管59から過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトル1が、速やかに温水リンス部91に到達する。
【0102】
この噴霧管59の直下でのボトル1の温度は、50℃以上に保持されていることが望ましい。50℃以上に保持されていることで、過酸化水素の凝結ミストαによる殺菌効果が適正に発揮される。ことにボトル1の首部1a、底部等の肉の厚い部分、底部等の凝結ミストαの行き届き難い部分は殺菌し難い箇所であるが、成形後間もないボトル1にあっては、そのような部分が高温状態にあるので、少量の凝結ミストαによっても高い殺菌効果を得ることができる。
【0103】
すなわち、本発明者等の実験によれば、ボトル1の表面に凝結する過酸化水素濃度は、ボトル1の温度が高いほど高濃度になる。それは過酸化水素の方が水よりも沸点が高いことに起因すると考えられる。具体的にはボトル温度が50℃、65℃、80℃の場合、ボトル1の表面に付着する過酸化水素濃度はそれぞれ重量%で約70%、約80%、約90%となる。温度が高い上に菌体の表面に付着する過酸化水素濃度が高まることから、少量の過酸化水素でボトル1を滅菌することができる。
【0104】
この酸性飲料充填装置では、検査部8内を上記成形部7内及び上記殺菌部9内よりも陽圧化するための陽圧化手段が設けられている。
【0105】
すなわち、図11に示すように、検査部8のチャンバー8aと殺菌部9のチャンバー9aとの間には雰囲気遮断チャンバー79が設けられる。成形部7のチャンバー7aと検査部8のチャンバー8aとの間には、ボトル1の通過口35aが開いた隔壁35が設けられ、この隔壁35と同様な隔壁80,81が、検査部8のチャンバー8aと雰囲気遮断チャンバー79との間、雰囲気遮断チャンバー79と殺菌部9のチャンバー9aとの間に各々設けられる。また、殺菌部9のチャンバー9aと温水リンス部91のチャンバー91aとの間にも、同様な隔壁82が噴霧管59から過酸化水素の凝結ミストαを噴霧する箇所と温水リンス部91との間を隔てるように設けられる。
【0106】
そして、検査部8のチャンバー8aには清浄化されたエアの供給手段として、チャンバー8aに給気用ダクト83が連結され、この給気用ダクト83に給気用ブロア84とフィルタ85とヒータ97とが設けられる。ヒータ97によってエアが加熱され、このエアがチャンバー8a内を走行するボトル1に接触することから、ボトル1の冷却が防止され、あるいは更に加熱される。なお、ボトル1の成形後の残熱が殺菌部9での殺菌効果に支障を来たさない程度のものであれば、このヒータ97による加熱は省略可能である。
【0107】
検査部8のチャンバー8a内にエア供給手段によって清浄なエアが吹き込まれることにより、検査部8のチャンバー8a内は大気圧よりも高い例えば3Pa程度に陽圧化される。
【0108】
雰囲気遮断チャンバー79には排気手段として、排気用ダクト86が連結され、この排気用ダクト86に排気用ブロア87とフィルタ88とが設けられる。殺菌部9のチャンバー9aにおける雰囲気遮断チャンバー79に隣接した箇所にも必要に応じて排気用のダクト89が連結され、この排気用ダクト89が上記雰囲気遮断チャンバー79に連結された排気用ダクト86に接続される。この排気手段による排気によって、雰囲気遮断チャンバー79内は大気圧と同程度の0Paに維持される。
【0109】
また、後述する充填部10のチャンバー10aには、図示しないが、清浄化されたエアの供給手段として、給気用ダクトがチャンバー10aに連結され、この給気用ダクトに給気用ブロアとフィルタとが設けられる。このエア供給手段によって、充填部10のチャンバー10a内に清浄なエアが大体20〜100Pa程度の圧力で吹き込まれる。このエアは温水リンス部91のチャンバー91a内を経て殺菌部9のチャンバー9a内へと流れ、殺菌部9のチャンバー9a内を大体10Pa程度に陽圧化した後に、殺菌部9のチャンバー9aのダクト89及び雰囲気遮断チャンバー79の排気用ダクト86からチャンバー9a,79外へと流れる。
【0110】
その他、上記成形部7のチャンバー7a内は略大気圧と同程度の0Paに維持される。また、雰囲気遮断チャンバー79と殺菌部9のチャンバー9aとの間の隔壁81におけるボトル1の通過口81aには、この通過口81aをエアカーテンで遮断するためのエアノズル90が必要に応じて設けられる。
【0111】
このような陽圧化手段により、殺菌部9のチャンバー9a内に流入した過酸化水素のミストα及びガスβはダクト89からチャンバー9a外へ排出され、また、検査部8のチャンバー8a内に流入した浄化されたエアは成形部7のチャンバー7aの方及び雰囲気遮断チャンバー79の方へと流れ、検査部8のチャンバー8a内への汚染されたエアや過酸化水素を含むエアの流入を阻止する。また、ボトル1の走行に伴って成形部7のチャンバー7aから検査部8のチャンバー8a内へとエアが引き込まれたとしても、このエアは雰囲気遮断チャンバー79からの排気によって、殺菌部9のチャンバー9a内への流入を阻止されるので、殺菌部9内の汚染が適正に防止される。
【0112】
図2に示すように、上記殺菌部9には温水リンス部91が連結される。この温水リンス部91もその全体がチャンバー91aにより覆われる。殺菌部9のチャンバー9aとの間には、図示しない隔壁が設けられ、この隔壁にボトル1の通過口が設けられる。
【0113】
温水リンス部91のチャンバー91a内には、上記殺菌部9側のボトル1の走行手段である終端ホイール58cに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール92a,92b,92cで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。
【0114】
また、始端ホイール92a及び終端ホイール92cの回りには、図4に示したグリッパー28と同様なグリッパー28が設けられる。
【0115】
大径の中間ホイール92bの回りには、図12A及び図12Bに示すようなグリッパー20が一定ピッチで多数設けられる。
【0116】
グリッパー20は、ボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片20a,20bを有する。一対の挟み片20a,20bは基部21にそれぞれ垂直ピン22で回動可能に支持され、引張スプリング23により常時閉じ方向に引っ張られる。これにより、図12Bに示すように一対の挟み片20a,20bはボトル1の首部1aを常時把持しようとする。基部21には、円柱形の垂直軸24が双方の挟み片20a,20bの根元と嵌り合った状態で中間ホイール92bの半径方向でスライドしうるように取り付けられ、この垂直軸24に連結されたカムフォロア25が同じく中間ホイール92bの半径方向にスライド可能に取り付けられる。
【0117】
中間ホイール92bの内方には、カムフォロア25の溝に係合し、所定の位置でカムフォロア25及び垂直軸24を中間ホイール92bの半径方向にスライドさせ、グリッパー20の挟み片20a,20bを開状態又は閉状態に切り換えるための図示しないカムが配置される。中間ホイール92bが回転してグリッパー20が中間ホイール92bのグリッパー28に保持されたボトル1に対向すると、このグリッパー20の挟み片20a,20bがボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下側で把持し、ボトル1を宙吊り状態にして搬送する。
【0118】
また、このグリッパー20には、図12A及び図12Bに示すように、中間ホイール92bの周方向に突出する水平枢軸26が設けられ、この水平枢軸26を介して中間ホイール92bに支持される。一方、図13に示すように、中間ホイール92bの旋回軸を中心にして円弧状に湾曲するカム27が設けられている。このカム27に各グリッパー20が接触するようになっている。中間ホイール92bの旋回によりグリッパー20がボトル1を受け取って旋回すると、カム27の案内によりグリッパー20が水平枢軸26を支点にしてボトル1ごと上下反転する。これにより、図3Mに示すようにボトル1も上下反転してその首部1aが下向きの倒立状態となる。
【0119】
ボトル1が、図3Mのように、温水リンス部91内を中間ホイール92bのグリッパー20によって倒立状態にされて走行する際、首部1aから温水ノズル93が挿入され、ボトル1内に無菌の温水wが注入される。温水wはボトル1の内面の全面に接触して加熱した後、首部1aからボトル1外に流出する。温水ノズル93としては一般的なリンサーノズルを使用することができる。このノズルから温水wをボトル1内にスプレーする。
【0120】
この場合、温水wは76℃〜80℃であり、0.2秒間〜1.0秒間のごく短時間だけボトル1の内面に接触してボトル1内面を殺菌する。ごく短時間だけボトル1内に供給するので、温水wの使用量は少なくてすみ、温水wを無菌化するための加熱装置で消費する熱エネルギー(蒸気使用量)も少なくて済む。また、ボトル1の熱による変形もごく小さくなるので、ボトル1を薄肉に形成することができ、ボトル1の材料であるPETの使用量を低減することが可能である。
【0121】
この温水wの供給によって、ボトル1内の上記過酸化水素によって損傷を受けた子嚢菌類等一部の耐熱性カビが殺菌される。また、ボトル1内に残留した余剰の過酸化水素が洗い流され、ボトル1外に排出される。
【0122】
また、上述した殺菌部9において、図3Lから明らかなように、過酸化水素がボトル1の外面にも付着するが、上記温水wがボトル1内に供給されることによって、温水wの熱がボトル1の壁を伝ってボトル1の外面に付着した過酸化水素を加熱する。このため、ボトル1の外面の殺菌効果も高められる。
【0123】
上記温水wによるボトル1内の殺菌及び洗浄後、ボトル1は中間ホイール92bのグリッパー20によって再び正立状態に戻され、終端ホイール92cのグリッパー28によって受け取られ、次の充填部10へと搬送される。
【0124】
図2に示すように、上記温水リンス部91には充填部10が連結される。
【0125】
この充填部10もその全体がチャンバー10aにより覆われる。温水リンス部91のチャンバー96aとの間には、図示しない隔壁が設けられ、この隔壁にボトル1の通過口が設けられる。
【0126】
充填部10のチャンバー10a内には、図2に示すように、上記温水リンス部91側のボトル1の走行手段である終端ホイール92cに連結されるホイール列が接続される。
【0127】
具体的には、このホイール列は六個のホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fの回りには、図4に示したグリッパー28と同様なグリッパー28が設けられる。
【0128】
充填部10のチャンバー10a内において、グリッパー28は各ホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール94aから終端ホイール94fへと順に受け渡す。これにより、ボトル1は充填部10内を始端ホイール94aから終端ホイール94fへと連続走行する。グリッパー28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立した宙吊り状態で走行する。
【0129】
充填部10のチャンバー10a内において、中間ホイール94cは大径のホイールとされ、このホイール94cの回りの所定位置に、飲料充填機が設置される。図3Nに示すように、この飲料充填機のノズル95によってボトル1内に予め殺菌処理された酸性飲料aが充填される。このノズル95はボトル1と同期的に走行するようになっており、ボトル1に伴走しながらボトル1内に一定量の酸性飲料aを充填する。
【0130】
また、飲料充填機よりも下流における中間ホイール94eの回りの所定位置には、キャッパーが設置される。図3Oに示すように、このキャッパーによってボトル1の首部1aにキャップ2が取り付けられる。これにより、ボトル1が密封される。
【0131】
この酸性飲料aが充填され、キャップ2で密封されたボトル1は、終端ホイール94fのグリッパー28から解放され、チャンバー10aの出口から飲料充填装置の外部に排出される。
【0132】
なお、飲料充填機及びキャッパーは公知の装置であるから、それらの詳細な説明は省略する。
【0133】
その他、図2に示すように、充填部10には、その内部のホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fを所定の組み合わせで動力的に連動するように駆動するサーボモータS4,S5,S6が三基設けられる。そのうちの第一のサーボモータS4は始端ホイール94aを駆動し、第二のサーボモータS5は飲料充填機の置かれる中間ホイール94cを駆動し、第三のサーボモータS6は飲料充填機の置かれる中間ホイール94cよりも下流側のホイール94d,94e,94fを駆動するようになっている。
【0134】
これにより、上記検査部8、殺菌部9、温水リンス部91、充填部10の各部におけるホイールやグリッパーの構造が互いに異なったものであっても、上記サーボモータS1,S2,S3,S4,S5,S6の制御によって、グリッパーの同期的な駆動が可能となり、ボトル1を成形部7から充填部10へと円滑に連続走行させることができる。
【0135】
なお、上記実施の形態では、成形部7は図示しない通常の電動モータにより駆動されるようになっているが、成形部7のホイールやターンテーブルもサーボモータによって駆動することも可能である。
【0136】
次に、上記酸性飲料充填装置の作用について説明する。
【0137】
(1)最初に、図3Aに示すようなプリフォーム6が用意される。プリフォーム6は図示しない射出成形によって成形された後に、この酸性飲料充填装置のプリフォーム供給機11に入れられる。
【0138】
プリフォーム供給機11のコンベア12によってプリフォーム6が成形部7内に供給される。
【0139】
(2)コンベア12によって図3Aのごとく正立状態で搬送されて来たプリフォーム6は、成形部7内において連続回転する始端ホイール13aのグリッパーに受け取られ、中間ホイール13bのグリッパーによって倒立状態とされる。
【0140】
この倒立状態のプリフォーム6は、図3Bのごとく第一のターンテーブル14aのマンドレル17にその首部1aから被せられる。
【0141】
プリフォーム6が被せられたマンドレル17は、図3Cに示すように、自転しながら加熱室16内を走行し、プリフォーム6はマンドレル17と共に自転しつつ加熱室16内を連続走行する。これにより、プリフォーム6は均一に加熱されてブロー成形可能な温度まで上昇する。
【0142】
(3)加熱されたプリフォーム6は、図3Dに示すように、ブロー成形用金型18により挟まれ、マンドレル17を貫通するブローノズル19からエアが吹き込まれる。これにより、金型18内でボトル1が成形される。
【0143】
成形されたボトル1は、金型18の型開きによって、金型18外にマンドレル17ごと取り出され、図3Eに示すように、倒立状態で第六のターンテーブル14fを経て第一のターンテーブルへ14aと向かう。
【0144】
(4)第一のターンテーブル14aにおいてマンドレル17に保持されたボトル1は、図3Fに示すように、始端ホイール19aの把持具98によって把持され、正立状態にされる。このとき把持具98はボトル1の首部1aのサポートリング5よりも上側を把持する。続いて、終端ホイール19bの図4に示すようなグリッパー28によってボトル1が受け取られる。このときグリッパー28は、図6に示すように、ボトル1の首部1aのサポートリング5よりも下側を把持する。
【0145】
(5)検査部8の始端ホイール36aのグリッパー37が成形部7の終端ホイール19bからボトル1の首部1aのサポートリング5よりも上側を把持して受け取る。このボトル1はグリッパー37に保持されつつ旋回運動を行う。
【0146】
この旋回運動の間に、図3Gに示すように、ボトル胴部検査手段によってボトル1の胴部が検査される。この検査では、カメラ45により撮影されたボトル1の胴部の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0147】
(6)ボトル1は始端ホイール36aのグリッパー37から中間ホイール36bのグリッパー28に受け渡され、この中間ホイール36bのグリッパー28によって、図3H及び図6に示すように、首部1aのサポートリング5よりも下側が把持されて旋回運動を行う。
【0148】
この旋回運動の間に、図3Hに示すように、温度検査手段の温度センサ46によってボトル1の温度が検出される。温度センサ46による検出温度が例えば50℃に達しないときはそのボトル1は不良品と判断される。
【0149】
(7)続いて、図3Iに示すように、サポートリング検査手段によって、ボトル1のサポートリング5の表面状態が検査される。この検査では、カメラ48により撮影されたサポートリング5の上面の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。
【0150】
(8)サポートリング5の検査に続き、図3Jに示すように、ボトル首部天面検査手段によって、ボトル首部1aの天面1dの表面状態が検査される。この検査では、カメラ50により撮影されたボトル首部1aの天面1dの画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。
【0151】
(9)ボトル首部1aの天面1dの検査に続き、図3Kに示すように、ボトル底部検査手段によって、ボトル1の底部が検査される。この検査では、カメラ52により撮影されたボトル底部の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0152】
(10)上記各種検査を経たボトル1は検査部8の終端ホイール36cの図8に示したグリッパー28に保持される。各種検査手段のいずれかによって異常信号が発せられると、図9に示すように、グリッパー開放機構が作動し、グリッパー28の一対の挟み片28a,28bが二点鎖線で示す閉じ状態から実線で示す開状態に変化し、不良品のボトル1を解放する。
【0153】
これにより、ボトル1の胴部、底部、首部天面1d、サポートリング5に傷等が発生した不良品のボトル1が走行路から排除され、また、後の殺菌工程で過酸化水素によって殺菌しても十分な殺菌効果を得られない温度のボトル1も走行路から排除される。
【0154】
一方、良品のボトル1については、可動カム部53aが図9Aの位置に保持されることから、排除手段の箇所を素通りし、殺菌部9へと向かう。
【0155】
(11)良品のボトル1は検査部8の終端ホイール36cのグリッパー28から殺菌部9の始端ホイール58aのグリッパー28に受け渡され、以後下流側のホイールのグリッパー28へと受け渡されながら連続走行する。
【0156】
良品のボトル1は中間ホイール58bの回りをグリッパー28で保持されつつ走行する際、図3Lに示すように、噴霧管59の直下を通る。これにより、噴霧管59から吐出される過酸化水素の凝結ミストαがボトル1に向かって吹き付けられ、ボトル1の内面と外面が殺菌される。上述したように、適度に熱が残留した良品のボトル1のみが到来するので、これらのボトル1は過酸化水素の凝結ミストαによって適正に殺菌された後に下流側へと走行する。
【0157】
(12)図11に示すように、ボトル1が成形部7から検査部8を経て殺菌部9へと至るボトル1の走行路には陽圧化手段が設けられることによって、殺菌部9のチャンバー9a内に流入した過酸化水素のミストαの余剰分は排気用ダクト86,89からチャンバー9a外へ排出され、また、検査部8のチャンバー8a内に流入した浄化されたエアは成形部7のチャンバー7aの方及び雰囲気遮断チャンバー79の方へと流れ、検査部8のチャンバー8a内への汚染されたエアや過酸化水素を含むエアの流入を阻止する。
【0158】
また、ボトル1の走行に伴って成形部7のチャンバー7aから検査部8のチャンバー8a内へとエアが引き込まれたとしても、このエアは雰囲気遮断チャンバー79からの排気によって、殺菌部9のチャンバー9a内への流入を阻止されるので、殺菌部9内の汚染が適正に防止される。
【0159】
(13)ボトル1が検査部8を通って殺菌部9以降へと搬送されているとき、成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のホイール列が緊急停止した場合は、図7に示すように、ピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが縮動作し、閉じ状態にあった一対の挟み片37a,37bが同図に示すように約180度の角度で拡開する。
【0160】
これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー37との間での干渉が防止される。
【0161】
また、この始端ホイール36aおよびこれに後続するホイールの列は回転し続けるので、検査部8内に導入されたボトル1は下流側へと走行し続ける。したがって、正常に成形されたボトル1は検査部8での検査を受け、さらに検査部8を通過したボトル1は殺菌部9へと向かうことになり、ボトル1の無駄が防止される。また、成形部7は停止しても検査部8以降は稼動が可能であるから、ボトル1は殺菌部9以降を連続走行し続け、殺菌部9内で停止することによる過酸化水素の過剰付着や、ボトル1の冷却による殺菌不良等が防止され、適正なボトル1にのみ酸性飲料aが充填されることとなる。
【0162】
(14)殺菌部9内で過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトル1は、殺菌部9の終端ホイール58cのグリッパー28から温水リンス部91内へと送られ、温水リンス部91内のホイール92a,92b,92cの周りを上流側から下流側へと走行する。中間ホイール92bのグリッパー20によってボトル1は上下反転し、図3Mのごとく内部を無菌の温水wにより短時間内で殺菌、洗浄される。
【0163】
温水リンス後のボトル1は、グリッパー20の反転動作によって、首部1aが上を向いた正立状態に戻される。
【0164】
(15)温水リンスされたボトル1は、充填部10へと至り、ホイール94cの回りをグリッパー28により把持されつつ走行する際に、図3Nに示すように、飲料充填機のノズル95から酸性飲料aを所定量充填される。
【0165】
(16)酸性飲料aが充填されたボトル1は、ホイール94eの回りをグリッパー28に把持されて走行し、その際、図3Oに示すように、キャッパーによってその首部1aにキャップ2を被せられる。これにより、ボトル1は密封され飲料包装体とされる。
【0166】
飲料包装体となったボトル1は、この酸性飲料充填装置から外部に送り出される。
【0167】
<実施の形態2>
次に、上記ボトル1に酸性飲料aを充填する酸性飲料充填装置の実施の形態2について説明する。
【0168】
この実施の形態2では、実施の形態1における過酸化水素の凝結ミストαに代えて過酸化水素のガスβがボトル1内に供給される。
【0169】
この場合、図2中、ホイール58a,58b,58cの幾つかと噴霧管59とが、図14に示す過酸化水素ガス供給装置に置き換えられる。
【0170】
この過酸化水素ガス供給装置により、ボトル1が500cc容量である場合、このボトル1内には、過酸化水素ガス濃度が1mg/L〜5mg/Lのガス流が1秒間〜5秒間供給される。
【0171】
図14に示すように、所定の駆動源からの動力で回転するホイール58cが機台65上に起立する旋回軸66に水平に取り付けられる。ホイール58cの盤面からは支柱66aが上方に伸び、支柱66aの上端に過酸化水素のガスβの混ざった加熱空気流であるガス流が流入するマニホルド67が固定される。マニホルド67の上部中央からは旋回軸66の軸心の延長線上で導管68が上方に伸び、この導管68が機台65に連結されるチャンバー9aのフレーム部材にベアリング69を介して保持される。これにより、マニホルド67はホイール58cと一体で旋回軸66の回りを回転可能である。
【0172】
また、ホイール58cの盤面からは他の支柱70が上方に伸び、この支柱70の上部にボトル1のグリッパー28が取り付けられる。支柱70及びグリッパー28は所定のピッチでホイール58cの回りに多数配置される。多数のグリッパー28は支柱70を介してホイール58cに連結されるので、ホイール58cの回転と共に回転する。
【0173】
これらのグリッパー28は図4に示したものと同様な構造を有する。
【0174】
マニホルド67の回りからは各グリッパー28に向って過酸化水素のガスβの混ざったガス流の供給管72がそれぞれ伸び、各供給管72の先端に上記ノズル64が取り付けられる。ノズル64は上記支柱70に固定され、その先端のノズル孔がグリッパー28に保持されたボトル1の首部1aの開口に正対する。これにより、ホイール58cが回転すると、ノズル64はグリッパー28に保持されたボトル1と共に旋回軸66の回りを旋回し、過酸化水素のガスβの混ざったガス流をボトル1内に吹き込む。
【0175】
上記マニホルド67の導管68の上端には、配管74aがシール部材75を介して接続される。導管68はマニホルド67と一体で配管74aに対して回転し、シール部材75が両管68,74aの接続部からのガスβの漏れを防止する。配管74aには図10に示したミスト生成装置61が複数基取り付けられ、各ミスト生成装置61から過酸化水素の凝結ミストαが配管74a内に供給される。ミスト生成装置61の稼動する台数は、ボトル1の殺菌に必要とされるガスβの量等に応じて決定される。
【0176】
配管74aの上流側にはブロア76、ULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)フィルタ77及び電熱器78で構成される熱風供給装置が設けられる。ブロア76から引き込まれた空気がULPAフィルタ77で除菌され、電熱器78で所定温度まで加熱され、熱風γとなって配管74a内に送られる。熱風γは例えば100℃以上の温度に加熱された無菌エアである。この熱風γはミスト生成装置61から送られる過酸化水素の凝結ミストをガス化させてマニホルド67へと搬送する。この過酸化水素のガスの混ざったガス流が、各供給管72を通ってノズル64からボトル1内へと吹き出し、或いはボトル1外に流出する。
【0177】
上記配管74aからマニホルド67を経てノズル64へと至る管路はできるだけ短く形成されており、そのため過酸化水素のガスβは配管内で結露することなくガス流に乗ってボトル1に到達する。
【0178】
ノズル64からボトル1内に過酸化水素のガスβの混ざったガス流が吹き込まれると、過酸化水素のガスβがボトル1の内面の全面にムラなく接触し、ボトル1の内面を速やかに殺菌する。
【0179】
このガス流中に混入される過酸化水素のガスβの濃度は、望ましくは1mg/L(Lは混合気中の過酸化水素ガスの容積)〜10mg/L、より望ましくは2mg/L〜5mg/Lである。
【0180】
このように、ボトル1内に無菌化された熱風γと過酸化水素のガスβを供給して殺菌処理を行うことにより、ボトル1が内面から加熱され、過酸化水素の凝結ミストα及びガスβによる殺菌効果が高まる。
【0181】
なお、実施の形態2において実施の形態1と同じ部分には同じ符号を付して示し、重複した説明を省略する。
【0182】
<実施の形態3>
図17に示すように、この実施の形態3における酸性飲料充填装置では、上記実施の形態1におけるプリフォーム供給機と、ブロー成形機とが省略され、代わりに予備加熱装置296が設けられている。
【0183】
予備加熱装置296に対応する箇所には、ボトル1の搬送路となるホイール276,277,278の列が設けられる。
【0184】
これらのホイール276,277,278の列における最上流側のホイール276に、例えばエア搬送装置279が接続され、成形済みのボトル1が順に供給される。ボトル1は図4に示したグリッパー28と同様なグリッパーによってホイール276,277,278の回りを搬送される。
【0185】
これら各ホイール276,277,278の回りには、ボトル1が通過するトンネル状の箱体280が設置される。各箱体280には、図14に示したブロア76、ULPAフィルタ77及び電熱器78で構成される熱風供給装置から熱風γが供給される。各箱体280内に吹き込まれた熱風γは、箱体280内を通過するボトル1に向かって流れ、ボトル1の予備加熱を行う。この予備加熱によりボトル1は50℃以上に昇温する。
【0186】
この後、ボトル1は、殺菌処理のためボトル殺菌機210へと向かうが、その前に表面温度が所定の予備殺菌温度に到達しているか否か温度検査部238において検査される。
【0187】
温度検査部238は、実施の形態1におけるものと同様な構成であり、予備加熱装置296におけるホイール278とボトル殺菌機210のホイール227との間に介在するホイール223,224,225,226の列を具備する。予備加熱装置296で予備加熱されたボトル1は、ホイール223の回りを走行する際にその表面温度が所定の予備加熱温度に達しているか否かを判別される。所定の予備加熱温度に達していないボトル1は不良品としてホイール225から排出用コンベア295によって搬送路外に排出される。所定の予備加熱温度に達しているボトル1は良品としてホイール226の回りへと引き続き走行する。
【0188】
なお、この温度検査部238は必要に応じて設けられるもので、場合によっては省略可能である。
【0189】
温度検査を経たボトル1は、ボトル殺菌機210へと向かう。ボトル1は予備加熱されていることから、ボトル殺菌機210で供給される過酸化水素の凝結ミストによる殺菌効果が向上する。
【0190】
ボトル殺菌機210以降は実施の形態1の酸性飲料充填装置と同様な構成であるから、その詳細な説明は省略する。
【0191】
<実施の形態4>
図18に示すように、この実施の形態4では、上記実施の形態3における予備加熱装置296とは異なる構成の予備加熱装置297が設けられる。
【0192】
すなわち、実施の形態3におけるホイール277に代えて他のホイール281が設けられ、このホイールの回りに図19に示した熱風供給装置が設けられる。
【0193】
この熱風供給装置による予備加熱によりボトル1は50℃以上に昇温する。
【0194】
なお、この熱風供給装置は、図14に示したものにおいてミスト生成装置61が省略された構造であるから、同じ符号を用いて示すに止め、詳細な説明は省略する。
【0195】
この後、ボトル1は、殺菌処理のためボトル殺菌機210へと向かうが、その前に表面温度が所定の予備殺菌温度に到達しているか否か温度検査部238において検査される。
【0196】
温度検査部238は、実施の形態3におけるものと同様な構成であり、予備加熱装置297におけるホイール278とボトル殺菌機210のホイール227との間に介在するホイール223,224,225,226の列を具備する。予備加熱装置297で予備加熱されたボトル1は、ホイール223の回りを走行する際にその表面温度が所定の予備加熱温度に達しているか否かを判別される。所定の予備加熱温度に達していないボトル1は不良品としてホイール225から排出用コンベア295によって搬送路外に排出される。所定の予備加熱温度に達しているボトル1は良品としてホイール226の回りへと引き続き走行する。
【0197】
なお、この温度検査部238は必要に応じて設けられるもので、場合によっては省略可能である。
【0198】
温度検査を経たボトル1は、ボトル殺菌機210へと向かう。ボトル1は予備加熱されていることから、ボトル殺菌機210で供給される過酸化水素の凝結ミストによる殺菌効果が向上する。
【0199】
ボトル殺菌機210以降は実施の形態3の酸性飲料充填装置と同様な構成であるから、その詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0200】
従来の成形済ボトルに過酸化水素ミストを吹き付けて殺菌し、続いて温水でリンスする方式と、本発明のごとくプリフォームを流しつつボトル成形し、続いて過酸化水素ミストの吹き付けと温水リンスとによって殺菌する方式の各々について殺菌効果、温水使用量を確認した。
【0201】
殺菌対象は、重量18.3gの500mL(ミリリットル)のボトルとし、指標菌は、子のう菌類であるChaetomium globosum 胞子(耐熱性カビ)を用い、殺菌効果はLog Reduction Value(Log(付着菌数/生残菌数))で表した。
【0202】
結果は次表の通りである。
【0203】
【表1】
【0204】
上記結果から明らかなように、約80℃の温水を0.2秒間だけボトルの内面に接触させることで、ボトル内面を殺菌することができた。また、本発明者が殺菌処理後のボトルを目視で検査したところ、ボトルに変形等の発生は認めることができなかった。
【0205】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることなく種々の形態にて実施可能である。
【0206】
例えば、本発明の酸性飲料充填装置が適用される容器はPETボトルに限定されず、種々の樹脂製容器に適用することができる。また、酸性飲料も単なる液体だけでなく、粒状物、塊等を含んだものや、高粘度のものも充填可能である。ボトルの成形もインジェクションブローに限定されず、ダイレクトブロー、射出成形等各種の成形方法によって成形可能である。
【0207】
また、プリフォームやボトルを搬送する搬送手段は、上述したホイール搬送装置に限定されない。ボトルが成形された順に所定の搬送速度で搬送可能な種々の搬送装置、例えばエア搬送装置、ベルト搬送装置、バケット搬送装置を使用することができる。
【符号の説明】
【0208】
1…ボトル
6…プリフォーム
7…成形部
8…検査部
8a,9a…チャンバー
9…殺菌部
10…充填部
46…温度センサ
91…温水リンス部
a…酸性飲料
w…温水
α…過酸化水素の凝結ミスト
β…過酸化水素のガス
γ…熱風
S1…サーボモータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルの成形からボトルの殺菌を経て酸性飲料の充填に至るまでを連続的に行う飲料充填方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料充填装置として、プリフォームからブロー成形によりボトルを成形する成形部と、成形部で成形されたボトルを過酸化水素のミストで殺菌する殺菌部と、殺菌部で殺菌されたボトルをエアリンスするエアリンス部と、エアリンスされたボトルを温水で洗浄する温水リンス部と、温水リンスされたボトルに飲料を充填し密封する充填部とが連結され、成形部から殺菌部等を経て充填部へとボトルを連続走行させる走行手段が設けられ、成形部から充填部に至る箇所がチャンバーで覆われたものが知られている。この飲料充填装置によれば、ボトルが成形段階で加えられた熱を利用して過酸化水素のミストによる殺菌効果を高めることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、内容物である飲料を、pH4.6未満の酸性飲料等加熱後における芽胞菌の生育が困難な酸性飲料に限定すれば、内面を温水で加熱殺菌したボトルに無菌充填することができることが知られている。その場合のボトルの殺菌は、65℃〜100℃の温水を倒立状態にしたボトルにスプレーノズルから噴射することによって行い、その殺菌時間は3秒ないし10秒であるとされる(例えば、特許文献2参照。)。また、倒立状態のPETボトル内に内面全面が濡れるように熱水を噴射して殺菌する場合、例えば1.5リットルのボトルでは、65℃で一回につき6秒、85℃で一回につき3秒(約100ミリリットル/秒)の熱水噴射を行えば、カビ、酵母を殺菌して酸性飲料を充填することができるとされる(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−111295号公報
【特許文献2】国際公開第2008/12996号
【特許文献2】特許第2844983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、pH4.6未満の酸性飲料を充填するPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルを充填前に殺菌するには、過酸化水素ミストをボトル内に吹き込んだ後、例えば74℃の温水を3秒間ボトル内に注入する温水リンスを行っている。しかし、PETボトルが、PET使用量18.3g、容量500ccの薄肉に形成されると、上記温水リンスの条件ではボトルが収縮して商品価値を失ってしまい、ボトルの薄肉化、軽量化が困難になるという問題がある。
【0006】
また、PETボトルを例えば36,000本/時で走行させつつ上記温水リンスを行うと、温水の使用量は18〜20トン/時となり、大量の水資源を必要とする。しかも、この温水は熱交換器で滅菌する必要があるので、高エネルギーを消費することになる。
【0007】
したがって、本発明は、上記諸問題点を解消することができる酸性飲料充填方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決するに当たり、図20のグラフに示すような知見を得た。
【0009】
すなわち、温水リンスの条件である74℃、3秒は、Z=5℃で同等の殺菌価を計算すると、曲線Aとなって現れる。これにより、リンス水量の削減のためリンス時間の短縮化を試みた場合、74℃×3秒と同等の殺菌価を得るには、リンス温度を高くする必要があることが分かる。
【0010】
一方、この同等の殺菌価に対するボトルの収縮量は、リンス温度が高温になってもリンス時間が短縮されると減少することが曲線Bから判明した。また、容量500ccのボトル内面全体を温水で濡らすために最低限必要なリンス時間は0.2秒であった。
【0011】
また、本発明者等の実験によれば、0.2秒のごとくリンス時間が極端に短いと、ボトルの肉厚分布により温度ムラが生じ、殺菌効果が低下するが、ボトルをそのブロー成形から殺菌を経て温水リンスに至るまで連続走行させると、リンス時間を0.2秒まで短縮しても殺菌効果の低下やバラツキの発生を抑えることができた。また、過酸化水素のミスト又はガスによる殺菌効果も向上した。
【0012】
本発明は上記知見に基づいてなされたもので、次のような構成を採用する。
【0013】
なお、図面の参照符号を括弧付きで付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
すなわち、請求項1に係る発明は、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形し、上記プリフォーム(6)に加えた熱が残留しているうちに、ボトル(1)内面に過酸化水素が接触するように、ボトル(1)内に過酸化水素のミスト(α)又はガス(β)を供給し、続いてボトル(1)内に70℃以上の温水を供給してボトル(1)内面に温水(w)を0.2秒以上接触させ、しかる後にボトル(1)内に酸性飲料(a)を充填して密封する酸性飲料充填方法を採用する。
【0015】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載の酸性飲料充填方法において、上記過酸化水素がミスト(α)の場合は500ccボトル1本当たり10μL〜30μLをボトル(1)内に供給し、過酸化水素がガス(β)の場合はボトル(1)内に供給するガス流のガス濃度を1mg/L〜5mg/Lとし、温水リンスは500ccボトル1本当たり3L/min以上の上記温水(w)を0.2秒以上ボトル(1)内に供給することによって行うことも可能である。
【0016】
請求項3に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載の酸性飲料充填方法において、成形されたボトル(1)をその密封に至るまで連続走行させる走行路を設け、この走行路を各々回りにグリッパー(28等)を備えたホイール(36a等)の列によって形成し、グリッパー(28等)が各ホイール(36a等)の回りでボトル(1)の首部(1a)を把持して旋回すると共にボトル(1)を上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すようにすることも可能である。
【0017】
請求項4に記載されるように、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸性飲料充填方法において、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形する工程からボトル(1)に酸性飲料(a)を充填して密封するまでの全工程を、ボトル(1)を連続走行させながら行い、上記ボトル(1)を成形した後殺菌する前に、プリフォーム加熱時の熱が残留したボトル(1)の温度を検査し、この温度が所定値に達していないボトル(1)を排除し、所定値に達したボトル(1)に対してのみ上記殺菌及び充填を行うようにしてもよい。
【0018】
また、請求項5に係る発明は、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形する成形部(7)と、成形部(7)で成形されたボトル(1)を過酸化水素の少量のミスト(α)又は低濃度のガス(β)で殺菌する殺菌部(9)と、殺菌部(9)を経たボトル(1)を高温の温水により短時間でリンスする温水リンス部(91)と、温水リンス部を通過したボトル(1)に酸性飲料(a)を充填する充填部(10)とが連結され、上記成形部(7)から上記殺菌部(9)を経て上記充填部(10)へとボトル(1)を走行路上で連続走行させる走行手段が設けられ、上記殺菌部(9)から上記充填部(10)に至る箇所がチャンバー(9a等)で覆われた酸性飲料充填装置において、上記成形部(7)で成形されたボトル(1)について温度が所定値にあるか否か検査を行う温度検査部(46)が、上記成形部(7)と上記殺菌部(9)との間にこれらに連結されるように設けられ、この温度検査部(46)には、温度検査により不良と判断されたボトル(1)を上記走行路から排除する排除手段(53a等)と、上記温度検査部(46)内を上記成形部(7)内及び上記殺菌部(9)内よりも陽圧化する陽圧化手段(84等)とが設けられ、上記走行手段は、上記成形部(7)から上記充填部(10)へと列状に配置されたホイール(19a等)と、各ホイール(19a等)の回りでボトル(1)の首部(1a)を把持して旋回すると共にボトル(1)を上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すグリッパー(28等)とを具備し、上記グリッパー(28等)は、上記プリフォーム(6)に加えられボトル(1)に残留した熱が上記殺菌部(9)でのボトル(1)の殺菌に必要な程度まで保たれるよう走行速度が制御されるようにした酸性飲料充填装置を採用する。
【0019】
請求項6に記載されるように、請求項5に記載の酸性飲料充填装置において、上記ホイール(36a等)が所望の数の列に区分され、列ごとに別個のサーボモータ(S1等)で駆動されるものとすることができる。
【0020】
請求項7に記載されるように、請求項5に記載の酸性飲料充填装置において、上記ボトル成形部(7)側のホイール(19b)と、このホイール(19b)に隣接する下流側のホイール(36a)との間で、一方のホイールが停止した時にグリッパー(28,37)同士の干渉を防止するグリッパー干渉防止手段(42等)が設けられたものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、プリフォーム(6)に加えた熱が残留しているうちにボトル(1)内に過酸化水素のミスト(α)又はガス(β)を供給し、続いてボトル(1)内に温水を供給して温水リンスを行い、しかる後にボトル(1)内に酸性飲料(a)を充填して密封するので、残留熱と過酸化水素と温水とによってボトル(1)内を殺菌することができ、従って過酸化水素の使用量を低減することができる。
【0022】
すなわち、プリフォーム(6)に加えた熱が残留しているうちにボトル(1)に過酸化水素のミスト又はガスを吹き付けるので、少量の過酸化水素によってボトル(1)を殺菌することができる。また、ボトル(1)がPET製であるときはボトル温度が低下すると過酸化水素のボトル壁への吸着量が増大するが、この吸着を防止することができる。本発明者等の実験によれば、ボトル(1)の表面に凝結する過酸化水素濃度は、ボトル(1)の温度が高いほど高濃度になる。それは過酸化水素の方が水よりも沸点が高いことに起因する。具体的にはボトル温度が50℃、65℃、80℃の場合、ボトル(1)の表面に付着する過酸化水素濃度はそれぞれ重量%で約70%、約80%、約90%となる。温度が高い上に菌体表面に付着する過酸化水素濃度が高まることから、少量の過酸化水素でボトル(1)を滅菌することができる。
【0023】
また、ボトル(1)内に高温の温水(w)を短時間供給するのみでボトル(1)内を殺菌することができるので、温水(w)の使用量を顕著に低減することができ、しかも、温水(w)の使用量が少ないことから温水(w)を滅菌するための熱エネルギー(蒸気使用量)を顕著に低減することができる。
【0024】
さらに、ボトル(1)には高温の温水(w)がごく短時間だけ接触するので、ボトル(1)の収縮量が低減し、従って、薄肉のボトル(1)を使用してもボトル(1)の変形を防止することができ、ひいてはPET等のボトル形成用材料の使用量を低減することができる。
【0025】
本発明において、加熱されたプリフォーム(6)からブロー成形によりボトル(1)を成形する工程からボトル(1)に酸性飲料(a)を充填して密封するまでの全工程を、ボトル(1)を連続走行させながら行い、上記ボトル(1)を成形した後殺菌する前に、プリフォーム加熱時の熱が残留したボトル(1)の温度を検査し、この温度が所定値に達していないボトル(1)を排除し、所定値に達したボトル(1)に対してのみ上記殺菌、温水リンス及び充填を行うようにした場合は、所定の温度に達したボトル(1)のみを殺菌処理等することができる。従って、ボトル(1)を適正に殺菌することができ、品質が保証された適正な酸性飲料包装体のみを製造することができる。
【0026】
また、本発明において、ボトル(1)を、その首部(1a)をグリッパー(28等)で把持して搬送するようにした場合は、ボトル(1)同士の接触が防止される。このグリッパー(28等)による搬送方式は、従来のエアによるボトル搬送方式に比べ、成形部(7)から殺菌部(9)内に侵入するバイオバーデンが低下し、製品の無菌性保証レベル(Sterility Assurance Level:SAL)が向上する。更に、ボトル(1)の変形、傷、破損等が防止される。更に、従来、ボトルの大きさや形状を切り換える際、エア搬送路から充填部へとボトル(1)を導入するについて使用するスクリューやガイドをボトル(1)の胴部の大きさ、形状に合わせて取り替える必要があったが、この作業を無くすることができる。ボトル(1)の首部(1a)の形状、大きさはボトル本体の形状、大きさ等の如何を問わず一定であるから、グリッパーによるボトル(1)の搬送方式を採用することにより、従来必要とされたスクリューやガイドを省くことができ、また、交換作業等を解消することができる。
【0027】
本発明において、上記ホイールが所望の数の列に区分され、列ごとに別個のサーボモータ(S1等)で駆動されるものとした場合は、温度検査部(46)、殺菌部(9)、充填部(10)等の各々に属するホイールを互いに別個のサーボモータ(S1等)で駆動することで、各部を同期的に稼動させることができる。
【0028】
本発明において、ボトル(1)の温度を検出してボトル(1)の良否を判別する温度検査手段(46等)が設けられたものとした場合は、殺菌効果を高めることができる温度のボトル(1)を殺菌部に送るようにすることが可能である。
【0029】
本発明において、上記ボトル成形部(7)側のホイール(19b)と、このホイール(19b)に隣接する下流側のホイール(36a)との間で、一方のホイールが停止した時にグリッパー(28,37)同士の干渉を防止するグリッパー干渉防止手段(42等)が設けられたものとした場合は、グリッパーの損傷等を防止することができる。また、下流側のホイールの回転を続行させることで、正常に成形されたボトル(1)は殺菌部(9)、充填部(10)へと送り、ボトル(1)の無駄を防止することができる。更に、ボトル(1)が殺菌部(9)以降に滞留することなく流れることから、ボトル(1)に過酸化水素が多量に付着する等の不具合が防止される。温度検査部(46)で検査されたボトル(1)はその残熱を保った状態で殺菌部(9)に到達するので適正に殺菌され、従って、ボトル(1)の無駄が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る酸性飲料充填方法及び装置により製造された酸性飲料包装体であるボトルの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る酸性飲料充填装置の概略平面図である。
【図3A】プリフォームの酸性飲料充填装置への供給工程図である。
【図3B】成形部へのプリフォーム供給工程図である。
【図3C】プリフォーム加熱工程図である。
【図3D】ブロー成形工程図である。
【図3E】成形型からのボトル排出工程図である。
【図3F】グリッパーによるボトル首部把持工程図である。
【図3G】ボトル胴部検査工程図である。
【図3H】ボトル温度検査工程図である。
【図3I】ボトルのサポートリング検査工程図である。
【図3J】ボトルの首部天面検査工程図である。
【図3K】ボトル底部検査工程図である。
【図3L】過酸化水素の凝結ミストによるボトル殺菌工程図である。
【図3M】ボトルの温水リンス工程図である。
【図3N】酸性飲料充填工程図である。
【図3O】キャッピングによる密封工程図である。
【図4】ボトルを搬送するグリッパーをホイールと共に示す概略平面図である。
【図5】図2中、検査部の部分拡大図である。
【図6】図5中、VI−VI線矢視図である。
【図7】干渉防止手段を備えたグリッパーをホイールと共に示す概略平面図である。
【図8】不良ボトル排除手段を備えたグリッパーをホイールと共に示す概略平面図である。
【図9A】非作動時の不良ボトル排除手段を示す側面図である。
【図9B】作動時の不良ボトル排除手段を示す側面図である。
【図10】ミスト生成装置の部分切欠正面図である。
【図11】陽圧化手段を示す説明図であり、図2中、XI−XI線矢視図である。
【図12A】ボトルを上下反転させることができるグリッパーの一対の挟み片が開いた状態を示す平面図である。
【図12B】ボトルを上下反転させることができるグリッパーの一対の挟み片が閉じた状態を示す平面図である。
【図13】図12A,Bに示すグリッパーを上下反転させるためのカム装置を示す部分切欠平面図である。
【図14】図2に示す酸性飲料充填装置において代替し得る過酸化水素ガスによる殺菌装置の部分切欠正面図である。
【図15】干渉防止手段の他の例を示す図7と同様な概略平面図である。
【図16】干渉防止手段の更に他の例を示す概略立面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る酸性飲料充填装置を表す概略平面図である。
【図18】本発明の実施の形態3に係る酸性飲料充填装置を表す概略平面図である。
【図19】熱風供給装置を示す部分切欠正面図である。
【図20】温水リンス時間による殺菌価とボトル収縮量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明を実施するための形態について説明する。
【0032】
<実施の形態1>
最初に、この酸性飲料充填装置によって製造される酸性飲料包装体について説明すると、この酸性飲料包装体は、図1に示すように、容器であるボトル1と蓋であるキャップ2とを備える。符号aはボトル1内に充填された酸性飲料を示す。
【0033】
酸性飲料の酸性度は、望ましくはpH4.6未満、より望ましくはpH4未満である。pH4.6〜pH4の飲料には、例えばトマトジュース、野菜ジュースがあり、pH4.0以下の飲料には、例えばレモンティー、オレンジジュース、乳性炭酸飲料、機能性飲料、炭酸入りレモンジュース、ぶどうジュース、果汁ジュースがある。
【0034】
ボトル1の胴部は略円筒形であるが、角筒形等その他の形状であってもよい。胴部の底は底部で閉じられ、上側には円形の開口を有した首部1aが設けられる。
【0035】
ボトル1の首部1aには雄ネジ3が形成され、キャップ2には雌ネジ4が形成され、雌雄ネジ4,3の螺合によりボトル1の首部1aの開口が密封される。また、ボトル1の首部1aには、雄ネジ4の下方においてサポートリング5が形成される。後述するように、ボトル1はサポートリング5を介してグリッパーにより保持されつつ酸性飲料充填装置内を走行する。
【0036】
ボトル1は、後述するように、略試験管状のPET製プリフォーム6をブロー成形することにより形成される。ボトル1は、PET製に限らずポリプロピレン、ポリエチレン等他の樹脂を用いることも可能である。プリフォーム6は、射出成形等により成形され、略試験管状の本体とボトル1と同様な首部1aとを備える。この首部1aにはプリフォーム6の成形と同時に雄ネジ3が形成される。
【0037】
キャップ2はポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を材料にして射出成形等により形成され、キャップ2の成形と同時に雌ネジ4も形成される。
【0038】
次に、上記ボトル1に酸性飲料aを充填する酸性飲料充填装置について説明する。
【0039】
図2に示すように、この酸性飲料充填装置は、ボトル1の成形部7と、成形されたボトル1を検査する検査部8と、ボトル1の殺菌部9と、ボトル1の温水リンス部91と、飲料aをボトル1に充填し密封する充填部10とを具備する。
【0040】
ボトルの成形部7はその全体がチャンバー7aにより覆われる。成形部7のチャンバー7aには、プリフォーム6の供給口とボトル1の排出口がそれぞれ設けられる。
【0041】
成形部7のチャンバー7aの近傍にはプリフォーム供給機11が設置される。プリフォーム供給機11には、図3Aに示すプリフォーム6が多数装填される。プリフォーム供給機11は、プリフォームコンベア12によって、プリフォーム6を図3Aのごとく首部1aを上にした正立状態にして成形部7内に供給口から一個ずつ送り込むようになっている。
【0042】
プリフォーム供給機11は公知の機械であるから、その詳細については説明を省略する。
【0043】
図2に示すように、成形部7のチャンバー7a内には、上流側ホイール列と、下流側ホイール列と、上流側と下流側の両ホイール列間に設けられるターンテーブル列とが配置される。
【0044】
上流側ホイール列内の始端ホイール13aは水平ホイールであり、上記プリフォームコンベア12に接続される。この始端ホイール13aの回りには、プリフォーム6の首部1aを把持する図示しないグリッパーが一定ピッチで多数設けられる。始端ホイール13aの回転と共にこれらのグリッパーも回転し、プリフォームコンベア12から供給されるプリフォーム6をサポートリング5の近傍で掴んで次の中間ホイール13bへと搬送する。中間ホイール13bは垂直に配置され、その回りには図示しないフォークが一定ピッチで多数設けられる。この中間ホイール13bはそのフォークで始端ホイール13aのグリッパーに把持されたプリフォーム6をサポートリング5下で挟むようにしてプリフォーム6を受け取った後、上方に回転してプリフォーム6を倒立状態にする。終端ホイール13cは始端ホイール13aと同様なグリッパーを有した水平ホイールであり、中間ホイール13bによって倒立状態にされたプリフォーム6をグリッパーで把持して受け取る。
【0045】
ターンテーブル列は、環状に並べられた第一乃至第六のターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14fを有する。これらのターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14f間には無端体であるチェーン15が張られる。このチェーン15は第三のターンテーブル14cの回りで長く伸びて迂回路を形成する。このチェーン15の長く伸びた迂回路の箇所が、チャンバー7aに付設された加熱室16内を走行するようになっている。チェーン15は第一乃至第六のターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14fの回転と共に図2中矢印で示される一方向に連続走行可能である。
【0046】
チェーン15には、図3Bに示すマンドレル17が一定ピッチで多数連結される。マンドレル17はチェーン15に牽引されつつターンテーブル14a,14b,14c,14d,14e,14f上を起立状態で走行可能である。また、マンドレル17はチェーン15上でその軸回りに自転可能に支持される。
【0047】
第一のターンテーブル14aは上流側ホイール列の終端ホイール13cに連結されており、この終端ホイール13cのグリッパーで保持された倒立状態のプリフォーム6の首部1a内に各マンドレル17が図3Bに示すように入り込んでプリフォーム6を受け取る。
【0048】
上記加熱室16内の壁面には、図3Cに示すように、ヒータ16aが設けられている。プリフォーム6を受け取ったマンドレル17は加熱室16内をヒータ16aに沿って走行し、各マンドレル17に保持されたプリフォーム6は図3Cに示すごとくヒータ16aによって加熱される。この加熱によってプリフォーム6はブロー成形可能な温度まで上昇する。また、各マンドレル17は走行中その鍔部が図示しないレールに接触することによりプリフォーム6を伴って自転し、このためプリフォーム6はその首部1aよりも下方(図3Cでは上方)が均一に加熱される。
【0049】
上記第五のターンテーブル14eの回りには、図3Dに示すようなブロー成形用金型18が一定ピッチで多数設けられる。ブロー成形用金型18は第五のターンテーブル14eの回転と共に回転可能である。
【0050】
ブロー成形用金型18は左右対称に二つ割り可能であり、第四のターンテーブル14dから加熱されたプリフォーム6が到来すると、第五のターンテーブル14eの回りで回転しつつ、図3Dに示すように、プリフォーム6をマンドレル17ごと挟み込む。マンドレル17の中心には貫通孔が形成されており、続いてこの貫通孔内にブローノズル19がプリフォーム6内へと挿入される。そして、ブローノズル19からプリフォーム6内に空気等の気体が吹き込まれることによって、金型18の内部でボトル1が成形される。
【0051】
ブロー成形用金型18は第六のターンテーブル14fに接近したところで型開きし、ボトル1を解放する。ブロー成形用金型18から解放されたボトル1は、図3Eのごとく、マンドレル17に保持された状態で第六のターンテーブル14fを経て第一のターンテーブル14aへと向かう。
【0052】
下流側ホイール列内の始端ホイール19aは、上記第一のターンテーブル14aに接続され、終端ホイール19bは成形部7のチャンバー7aの排出口に接している。
【0053】
始端ホイール19aは、第一のターンテーブル14aの回転によって図3Eのごとくマンドレル17に保持されたボトル1が到来すると、図3Fのごとく把持具98でボトルを把持してマンドレル17から抜き取り、正立状態へと上下に反転させる。
【0054】
終端ホイール19bは、図4に示すようなグリッパー28を有する。このグリッパー28はボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片28a,28bを有する。一対の挟み片28a,28bの基部はそれぞれ垂直ピンでホイール19bに回動可能に支持される。また、挟み片28a,28bの基部には垂直ピンを介して一対の噛み合う歯車30a,30bが固定される。さらに、一方の歯車30bにはレバー31を介してカムフォロア31aが連結され、他方の歯車30aはレバー32及びスプリング33を介して終端ホイール19bに連結される。このスプリング33の引張力により一対の挟み片30a,30bは開方向に常時付勢される。一方、カムフォロア31aが接するカム34が終端ホイール19bの内側において図示しないフレームに固定される。
【0055】
これにより、終端ホイール19bが回転すると、カムフォロア31aとカム34との摺接作用によって、グリッパー28は一対の挟み片28a,28bを開いて始端ホイール19aのグリッパー20からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ次の検査部8へと旋回する。グリッパー28が検査部8に到達したところで、カムフォロア31aとカム34との摺接作用によって一対の挟み片28a,28bが開き、ボトル1を検査部8側のホイール列に受け渡す。
【0056】
この終端ホイール19bのグリッパー28は、始端ホイール19aの把持具98からボトル1を受け取ると、図6に示すように、ボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下方で把持して搬送する。
【0057】
図2に示すように、ボトル1の検査部8が上記ボトル1の成形部7に連結される。この検査部8もその全体がチャンバー8aにより覆われる。図11に示すように、成形部7のチャンバー7aとの間の隔壁35には、ボトル1の通過口35aが設けられる。
【0058】
検査部8のチャンバー8a内には、図2に示すように、上記成形部7側のボトル1の走行手段である終端ホイール19bに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール36a,36b,36cで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール36a,36b,36cの回りには上記終端ホイール19bにおけるグリッパー28と同様なグリッパー28が設けられる。グリッパー28は、各ホイール36a,36b,36cの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール36aから中間ホイール36bを経て終端ホイール36cへと受け渡す。これにより、ボトル1は上記成形部7内の終端ホイール19bから検査部8内のホイール36a,36b,36cの回りの走行路上を連続走行する。グリッパー28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は宙吊り状態で走行する。図6に示すように、グリッパー28は始端ホイール36aにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも上方で把持し、中間ホイール36bにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下方で把持し、終端ホイール36cにおいてボトル1の首部1aをサポートリング5よりも上方で把持するようにして、検査部8内を上流から下流へとボトル1を搬送する。
【0059】
上記ボトル1の成形部7側の終端ホイール19bに接する上記検査部8内の始端ホイール36aには、上記ボトル成形部7側のターンテーブルやホイールが緊急停止した時に、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー28との間で干渉が生じないようにするために、グリッパー干渉防止手段が設けられている。
【0060】
グリッパー干渉防止手段を有するため、図7に示すように、検査部8内の始端ホイール36aのグリッパー37は上記グリッパー28とは異なる構造となっている。
【0061】
すなわち、図7に示すように、検査部8内の始端ホイール36aには、グリッパー37が所定のピッチで多数取り付けられ、各グリッパー37はボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片37a,37bを有し、一対の挟み片37a,37bの基部はそれぞれ垂直ピンで始端ホイール36aに回動可能に支持され、挟み片37a,37bの基部には垂直ピンを介して一対の噛み合う歯車38a,38bが固定される。
【0062】
さらに、一方の歯車38aにはレバー39を介してカムフォロア39aが連結される。レバー39のカムフォロア39aと反対側にはピン40a及び円弧状長孔40bを介して一方の挟み片37aに連結される。他方の挟み片37bは他方の歯車38bと一体であり、この挟み片37bにはピン41a及び円弧状長孔41bを介してピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが連結される。ピストン・シリンダ装置42は、始端ホイール36aに支持される。歯車38a,38bとホイール36aとの間には、図示しないトーションバネが取り付けられ、このトーションバネのねじり力によって一対の挟み片37a,37bは閉方向に常時付勢される。また、カムフォロア39aがカム43に常時押し付けられる。
【0063】
これにより、検査部8側の始端ホイール36aが回転すると、カムフォロア39aとカム43との摺接作用によって、グリッパー37は一対の挟み片37a,37bを開いて成形部7側の終端ホイール19bのグリップ28からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ旋回する。挟み片37a,37bはトーションバネのねじり力に抗して開方向に回動し、その際、各ピン40a,41aが各円弧状長孔40b,41b内を摺動する。
【0064】
ところが、成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のターンテーブル列やホイール列が緊急停止する場合がある。そのときは、図7に示すように、ピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが縮動作し、閉じ状態にあった一対の挟み片37a,37bは約180度の角度で拡開する。これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー37との間での干渉が防止される。この場合、この始端ホイール36aおよびこれに後続するホイール36b以降の列は回転し続けるので、検査部8内に導入されたボトル1は下流側へと走行し続ける。
【0065】
なお、グリッパー干渉防止手段としては、上記構成に限るものではなく、図15に示すようなグリッパー37を始端ホイール36aの半径方向で往復スライドさせるスライド機構を採用することも可能である。図15中、符号99で示すものはグリッパー37を保持する保持部材であり、この保持部材99にピストン・シリンダ装置100のピストンロッド100aが連結される。ピストン・シリンダ装置100は始端ホイール36aにその半径方向に沿うように固定される。
【0066】
成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のターンテーブル列やホイール列が緊急停止すると、図15に示すように、ピストン・シリンダ装置100のピストンロッド100aが縮動作し、グリッパー37は始端ホイール36aの半径方向外側に突出していたものが半径方向内側へと引っ込む。これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー37との間での干渉が防止される。
【0067】
なお、この図15のグリッパー干渉防止手段では、ピストンロッド100aが縮動作する際、グリッパー37の一対の挟み片37a,37bを開閉動作させるためのカム43は、例えば他のピストン・シリンダ装置の駆動でホイール36aの軸方向に移動することによって、カムフォロア39aに当たらない位置へと逃げるようになっている。
【0068】
また、グリッパー干渉防止手段としては、図16に示すように、グリッパー37をホイール36aの上下方向で回動させる回動機構とすることも可能である。グリッパー37はホイール36aに対し上下方向に回動可能にヒンジ101で連結され、ピストン・シリンダ装置102を介して始端ホイール36aと一体で回転するホイール103に連結される。
【0069】
成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のターンテーブル列やホイール列が緊急停止すると、図16に示すように、ピストン・シリンダ装置102のピストンロッド102aが伸動作し、ホイール36aの半径方向に沿って突出していたグリッパー37はヒンジ101を支点にして下方に回動する。これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー37との間での干渉が防止される。その他、図16中、符号104はホイール36a,103の旋回軸105を支持する機台を示す。
【0070】
なお、上記例ではグリッパー37が下方に回動するようにしたが、上方に回動させても干渉を防止することが可能である。
【0071】
図3G及び図5に示すように、検査部8内のチャンバー8a内で始端ホイール36aの回りの所定位置には、ボトル1の円筒形、角筒形等の胴部を撮像してボトル1の良否を判別するボトル胴部検査手段として、照明手段であるランプ44と撮像手段であるカメラ45が設けられている。ランプ44からの照射光がボトル1の胴部を透過し、カメラ45がその透過光を受けてボトル1の胴部を撮像する。このボトル1の胴部の画像は図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0072】
図3H、図3I、図3J、図3K及び図5に示すように、始端ホイール36aに隣接する中間ホイール36bに沿って、ボトル1の温度を検出してボトル1の良否を判別する温度検査手段として、温度センサ46と、ボトル1の首部1aのサポートリング5を撮像してボトル1の良否を判別するサポートリング検査手段として、照明手段のランプ47及び撮像手段のカメラ48と、ボトル1の首部1aの平坦かつ平滑であるべきリング状の天面1dを撮像してボトル1の良否を判別するボトル首部天面検査手段として、照明手段のランプ49及び撮像手段のカメラ50と、ボトル1の底部を撮像してボトル1の良否を判別するボトル底部検査手段として、照明手段のランプ51及び撮像手段のカメラ52とが、順に設けられる。
【0073】
なお、上記各種検査手段の配置順序は適宜入れ替え可能であり、位置も適宜変更可能である。また、適宜省略することも可能であり、他の検査項目のために他の検査手段を追加することも可能である。
【0074】
温度センサ46は、例えば赤外放射温度計であるが、他の温度計を使用することも可能である。この温度センサ46が、図3Hに示すように、ボトル1の首部1aにおけるサポートリング5、底部にそれぞれ対向するように設置される。
【0075】
ボトル1は、成形部7での残熱を保持しつつグリッパー28に把持されて所定の速度で始端ホイール36a、中間ホイール36bの回りを走行しながら、温度センサ46によって表面の温度を検出される。このボトル1の残熱は後にボトル1を過酸化水素で適正に殺菌するために必要なもので、温度センサ46による検出温度は50℃以上であることが望ましい。
【0076】
これら二箇所の温度センサ46により検出されたボトル1の温度のいずれかが、所定の温度に達していない場合は、そのボトル1は不良品として判断される。所定の温度は50℃〜70℃である。すなわち所定の温度に達していないボトル1は後の過酸化水素による殺菌を行っても殺菌が不十分となる可能性がある。逆にボトル1の上記二箇所の温度がいずれも上記所定の温度に達しているボトル1は、後の過酸化水素による殺菌によって十分に殺菌され得る。
【0077】
なお、温度センサ46が対向するボトル1の上記二箇所は樹脂の肉厚が大きくコールドスポットを生じやすい部分であるが、温度センサ46は上記二箇所に限られるものではなく、ボトル1の形状、大きさ、成形金型の種類等に応じて適宜増減可能である。例えば、上記二箇所のうち特にコールドスポットを生じやすいボトル1の底部に対してのみ温度センサ46を設置することも可能である。
【0078】
また、ボトル1の薄肉部分は厚肉部分に比べて温度が低下しやすく熱が逃げやすいことから、例えばボトル1の胴部の薄い箇所に対向するように温度センサ46を設けるようにしてもよい。これにより、後の殺菌に必要最小限な温度の残熱を保ったボトル1のみを殺菌部9へと搬送することができる。
【0079】
図3I及び図5に示すように、サポートリング検査手段としてのランプ47は、ボトル首部1aのサポートリング5の上方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ48はランプ47の照明光がサポートリング5の上面で反射した光を受けるように配置される。このカメラ48によってサポートリング5が撮像される。このときグリッパー28の挟み片28a,28bは、図6に示すように、サポートリング5の下方で首部を把持しているので、サポートリング5の撮影がグリッパー28の挟み片28a,28bにより妨げられることはない。このサポートリング検査手段によってサポートリング5の特に上面の状態が重点的に検査される。
【0080】
カメラ48が写したこのサポートリング5の画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。サポートリング5は酸性飲料包装体としてのボトル1の購入者等がキャップを開ける際に触れる可能性がある箇所であることから、傷や変形等の存在は好ましくない。傷や変形等がサポートリング5に許容値を超えて生じたボトル1は不良品と判断される。
【0081】
図3J及び図5に示すように、ボトル首部天面検査手段としてのランプ49は、ボトル首部1aの天面1dの上方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ50はランプ49の照明光が天面1dで反射した光を受けるように配置される。このカメラ50によって天面1dが撮像される。カメラ50が写したこの天面1dの画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。このボトル首部1aの天面1dは、キャップ2の天井(図1参照)が当たることによりボトル1内を密封する箇所であることから、平坦かつ平滑である必要がある。このため傷や変形等が天面1dに生じたボトル1は不良品と判断される。
【0082】
図3K及び図5に示すように、ボトル底部検査手段としてのランプ51は、ボトル1の底部の下方に環状に設けられる。具体的には、LEDを環状に配置することによって構成される。カメラ52はランプ51の照明光がボトル1の底部を透過した光を受けるようにボトル1の首部1aの上方に配置される。このカメラ52によってボトル1の底部が撮像される。カメラ52が写したボトル1の底部の画像は、図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0083】
なお、図示しないが検査部8内を走行するグリッパー28には、つや消し表面加工が施されている。これにより、上記各種ランプ47,49,51からの照明光がグリッパー28で反射することによる検査ミスが発生しないようにすることができる。また、検査部8のチャンバー8aには図示しない覗き窓が設けられるが、その窓にはチャンバー8a外の光がチャンバー8a内に入らないように遮光ガラスが設けられる。
【0084】
上記中間ホイール36bにその下流側から接する終端ホイール36cは、図8に示すように、上記中間ホイール36bのグリッパー28と同様なグリッパー28を有する。この終端ホイール36cが回転すると、カムフォロア31aとカム53との摺接作用によって、グリッパー28は一対の挟み片28a,28bを開いて中間ホイール36bのグリップ28からボトル1の首部1aを受け入れた後にボトル1の首部1aを挟み込み、ボトル1を宙吊り状態で保持しつつ次の殺菌部9へと旋回する。グリップ28が殺菌部9に到達したところで、カムフォロア31aとカム53との摺接作用によって一対の挟み片28a,28bが開き、ボトル1を殺菌部9側のホイールに受け渡す。カム53は終端ホイール36cの内側の図示しない静止フレームに固定される。
【0085】
この終端ホイール36cには、検査部8での検査により不良と判断されたボトル1を走行路から排除する排除手段が設けられる。
【0086】
排除手段は、図8及び図9に示すようなグリッパー開放機構を有する。グリッパー開放機構は、上記カムフォロア31aの枢軸54に更に追加された上記カムフォロア31aと同様な形状の追加カムフォロア31bと、この追加カムフォロア31bに接する上記カム53と一部分だけ形状が相違する追加カム55をカム53の下方に有する。また、上記カム53の一部分だけ別体とされ可動化された可動カム部53aを具備する。
【0087】
可動カム部53aは、静止した上記カム53の一部分が切り取られた跡に半径方向にスライド可能に挿入される。そして、終端ホイール36cの内側において図示しないフレームに連結されたピストン・シリンダ装置56のピストンロッド56aに連結される。また、追加カム55における上記可動カム部53aに対応した部分には追加カムフォロア31bが嵌り込む凹部55aが形成される。
【0088】
その他、排除手段には、図2及び図5中、符号57で示す不良ボトル排除用の筒状のシューターが設けられる。
【0089】
上記検査部8から不良品と判断されたボトル1について不良である旨の信号が発せられると、当初図9Aに示すように伸状態にあったピストン・シリンダ装置が同図Bに示すように縮動作し、可動カム部53aをカム53の半径方向内側へと後退させる。このため、追加カムフォロア31bが追加カム55の凹部55a内に没入し、グリッパー28の一対の挟み片28a,28bが二点鎖線で示す閉じ状態から実線で示す開状態に変化し、不良品のボトル1を解放する。不良品のボトル1はグリッパー28の下方に落下し、シューター57から所定の集積部へと送られる。良品のボトル1については、可動カム部53aが図9Aの位置に保持されることから、排除手段の箇所を素通りし、殺菌部9へと向かう。
【0090】
図2に示すように、ボトル1の殺菌部9がボトル1の検査部8に連結される。この殺菌部9もその全体がチャンバー9aにより覆われる。
【0091】
殺菌部9のチャンバー9a内には、図2に示すように、上記検査部8側のボトル1の走行手段である終端ホイール36cに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール58a,58b,58cで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール58a,58b,58cの回りには、図4に示したグリッパー28と同様なグリッパー28が設けられる。
【0092】
グリッパー28は、各ホイール58a,58b,58cの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール58aから終端ホイール58cへと順に受け渡す。これにより、検査済みの良品ボトル1は上記検査部8内の終端ホイール36cから殺菌部9内の終端ホイール58bへと走行路上を連続走行する。グリッパー28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立宙吊り状態で走行する。
【0093】
殺菌部9のチャンバー9a内において始端ホイール58aに下流側から接する中間ホイール58bの回りの所定位置には、図3Lに示すように、ボトル1に殺菌剤である過酸化水素の凝結ミストαを供給する凝結ミスト供給手段としての噴霧管59が設けられる。噴霧管59はその先端のノズル孔がその直下を走行する良品ボトル1の首部1aの開口に正対しうるように定位置に固定される。
【0094】
また、図3Lに示すように、必要に応じて噴霧管59の下方のボトル走行路に沿ってトンネル60が設けられる。
【0095】
噴霧管59は、一本であっても複数本であってもよく、上記中間ホイール58bの周囲に沿って設置される。図示例では中間ホイール58bの回りに設置されるが、他のホイールの回りに設置することも可能である。
【0096】
過酸化水素の凝結ミストαは、図10に示したミスト生成装置61によって噴霧し加熱した過酸化水素を凝結させることにより生成される。
【0097】
このミスト生成装置61は、殺菌剤である過酸化水素の水溶液を滴状にして供給する二流体スプレーである過酸化水素供給部62と、この過酸化水素供給部62から供給された過酸化水素の噴霧をその沸点以上、非分解温度以下に加熱して気化させる気化部63とを備える。過酸化水素供給部62は、過酸化水素供給路62a及び圧縮空気供給路62bからそれぞれ過酸化水素の水溶液と圧縮空気を導入して過酸化水素の水溶液を気化部63内に噴霧するようになっている。気化部63は内外壁間にヒータ63aを挟み込んだパイプであり、パイプ内に吹き込まれた過酸化水素の噴霧を加熱し気化させる。気化した過酸化水素のガスは噴霧管59から、ボトル1の首部1aの開口に向かって凝結ミストαとなって噴出する。
【0098】
ボトル1は中間ホイール58bの回りをその首部1aを上に向けた状態で搬送され、その走行路の上方において噴霧管59の下端がボトル1の首部1aに向かって開口する。噴霧管59内に送られた過酸化水素の凝結ミストαは、噴霧管59の下端のノズル孔からボトル1の首部1aに向かって連続して吹き出る。そして、吹き出た過酸化水素の凝結ミストαは走行するボトル1の首部1aからボトル1内へ流入してボトル1の内面を殺菌し、他の過酸化水素の凝結ミストαはボトル1外へと流れてボトル1の外面を殺菌する。この時ボトル1はトンネル60内を走行することから、凝結ミストαはボトル1の外面にも満遍なく接触する。
【0099】
上記過酸化水素の凝結ミストαは、ボトル1の内面の全面に過酸化水素が付着するようにボトル1内に供給される。この過酸化水素凝結ミストαの供給量は、具体的には、500ccの容量のボトル1本当たり10μL〜30μLであるのが望ましい。この供給量は、従来の余熱が無い常温のボトル1に対して供給する場合の約5割程度である。
【0100】
上述した少なくとも検査部8内の始端ホイール36aから殺菌部9内の終端ホイール58cに至る部分のグリッパー28は、成形部7でのボトル成形の際にボトル1に残留した熱が殺菌部9でのボトル1の殺菌に必要な程度まで保たれるよう走行速度が制御されるようになっている。
【0101】
すなわち、図2に示すように、検査部8には検査部8内の全ホイール36a,36b,36cを動力的に連動するように駆動するサーボモータS1が設けられ、殺菌部9及び温水リンス部91にも殺菌部9及び温水リンス部91内の全ホイール58a,58b,58c,92a,92b,92cを動力的に連動するように駆動するサーボモータS2、S3が各々設けられる。これらのサーボモータS1,S2,S3の制御によってグリッパー28の走行速度が調整され、その結果、ボトル成形時にボトル1に残留した熱が殺菌部9での殺菌に必要な程度まで保たれた状態で、グリッパー28に把持されたボトル1が噴霧管59の直下に到来する。また、殺菌部9で噴霧管59から過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトル1が、速やかに温水リンス部91に到達する。
【0102】
この噴霧管59の直下でのボトル1の温度は、50℃以上に保持されていることが望ましい。50℃以上に保持されていることで、過酸化水素の凝結ミストαによる殺菌効果が適正に発揮される。ことにボトル1の首部1a、底部等の肉の厚い部分、底部等の凝結ミストαの行き届き難い部分は殺菌し難い箇所であるが、成形後間もないボトル1にあっては、そのような部分が高温状態にあるので、少量の凝結ミストαによっても高い殺菌効果を得ることができる。
【0103】
すなわち、本発明者等の実験によれば、ボトル1の表面に凝結する過酸化水素濃度は、ボトル1の温度が高いほど高濃度になる。それは過酸化水素の方が水よりも沸点が高いことに起因すると考えられる。具体的にはボトル温度が50℃、65℃、80℃の場合、ボトル1の表面に付着する過酸化水素濃度はそれぞれ重量%で約70%、約80%、約90%となる。温度が高い上に菌体の表面に付着する過酸化水素濃度が高まることから、少量の過酸化水素でボトル1を滅菌することができる。
【0104】
この酸性飲料充填装置では、検査部8内を上記成形部7内及び上記殺菌部9内よりも陽圧化するための陽圧化手段が設けられている。
【0105】
すなわち、図11に示すように、検査部8のチャンバー8aと殺菌部9のチャンバー9aとの間には雰囲気遮断チャンバー79が設けられる。成形部7のチャンバー7aと検査部8のチャンバー8aとの間には、ボトル1の通過口35aが開いた隔壁35が設けられ、この隔壁35と同様な隔壁80,81が、検査部8のチャンバー8aと雰囲気遮断チャンバー79との間、雰囲気遮断チャンバー79と殺菌部9のチャンバー9aとの間に各々設けられる。また、殺菌部9のチャンバー9aと温水リンス部91のチャンバー91aとの間にも、同様な隔壁82が噴霧管59から過酸化水素の凝結ミストαを噴霧する箇所と温水リンス部91との間を隔てるように設けられる。
【0106】
そして、検査部8のチャンバー8aには清浄化されたエアの供給手段として、チャンバー8aに給気用ダクト83が連結され、この給気用ダクト83に給気用ブロア84とフィルタ85とヒータ97とが設けられる。ヒータ97によってエアが加熱され、このエアがチャンバー8a内を走行するボトル1に接触することから、ボトル1の冷却が防止され、あるいは更に加熱される。なお、ボトル1の成形後の残熱が殺菌部9での殺菌効果に支障を来たさない程度のものであれば、このヒータ97による加熱は省略可能である。
【0107】
検査部8のチャンバー8a内にエア供給手段によって清浄なエアが吹き込まれることにより、検査部8のチャンバー8a内は大気圧よりも高い例えば3Pa程度に陽圧化される。
【0108】
雰囲気遮断チャンバー79には排気手段として、排気用ダクト86が連結され、この排気用ダクト86に排気用ブロア87とフィルタ88とが設けられる。殺菌部9のチャンバー9aにおける雰囲気遮断チャンバー79に隣接した箇所にも必要に応じて排気用のダクト89が連結され、この排気用ダクト89が上記雰囲気遮断チャンバー79に連結された排気用ダクト86に接続される。この排気手段による排気によって、雰囲気遮断チャンバー79内は大気圧と同程度の0Paに維持される。
【0109】
また、後述する充填部10のチャンバー10aには、図示しないが、清浄化されたエアの供給手段として、給気用ダクトがチャンバー10aに連結され、この給気用ダクトに給気用ブロアとフィルタとが設けられる。このエア供給手段によって、充填部10のチャンバー10a内に清浄なエアが大体20〜100Pa程度の圧力で吹き込まれる。このエアは温水リンス部91のチャンバー91a内を経て殺菌部9のチャンバー9a内へと流れ、殺菌部9のチャンバー9a内を大体10Pa程度に陽圧化した後に、殺菌部9のチャンバー9aのダクト89及び雰囲気遮断チャンバー79の排気用ダクト86からチャンバー9a,79外へと流れる。
【0110】
その他、上記成形部7のチャンバー7a内は略大気圧と同程度の0Paに維持される。また、雰囲気遮断チャンバー79と殺菌部9のチャンバー9aとの間の隔壁81におけるボトル1の通過口81aには、この通過口81aをエアカーテンで遮断するためのエアノズル90が必要に応じて設けられる。
【0111】
このような陽圧化手段により、殺菌部9のチャンバー9a内に流入した過酸化水素のミストα及びガスβはダクト89からチャンバー9a外へ排出され、また、検査部8のチャンバー8a内に流入した浄化されたエアは成形部7のチャンバー7aの方及び雰囲気遮断チャンバー79の方へと流れ、検査部8のチャンバー8a内への汚染されたエアや過酸化水素を含むエアの流入を阻止する。また、ボトル1の走行に伴って成形部7のチャンバー7aから検査部8のチャンバー8a内へとエアが引き込まれたとしても、このエアは雰囲気遮断チャンバー79からの排気によって、殺菌部9のチャンバー9a内への流入を阻止されるので、殺菌部9内の汚染が適正に防止される。
【0112】
図2に示すように、上記殺菌部9には温水リンス部91が連結される。この温水リンス部91もその全体がチャンバー91aにより覆われる。殺菌部9のチャンバー9aとの間には、図示しない隔壁が設けられ、この隔壁にボトル1の通過口が設けられる。
【0113】
温水リンス部91のチャンバー91a内には、上記殺菌部9側のボトル1の走行手段である終端ホイール58cに連結されるホイール列が接続される。具体的には、このホイール列は三個のホイール92a,92b,92cで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。
【0114】
また、始端ホイール92a及び終端ホイール92cの回りには、図4に示したグリッパー28と同様なグリッパー28が設けられる。
【0115】
大径の中間ホイール92bの回りには、図12A及び図12Bに示すようなグリッパー20が一定ピッチで多数設けられる。
【0116】
グリッパー20は、ボトル1の首部1aをその外側から挟む一対の挟み片20a,20bを有する。一対の挟み片20a,20bは基部21にそれぞれ垂直ピン22で回動可能に支持され、引張スプリング23により常時閉じ方向に引っ張られる。これにより、図12Bに示すように一対の挟み片20a,20bはボトル1の首部1aを常時把持しようとする。基部21には、円柱形の垂直軸24が双方の挟み片20a,20bの根元と嵌り合った状態で中間ホイール92bの半径方向でスライドしうるように取り付けられ、この垂直軸24に連結されたカムフォロア25が同じく中間ホイール92bの半径方向にスライド可能に取り付けられる。
【0117】
中間ホイール92bの内方には、カムフォロア25の溝に係合し、所定の位置でカムフォロア25及び垂直軸24を中間ホイール92bの半径方向にスライドさせ、グリッパー20の挟み片20a,20bを開状態又は閉状態に切り換えるための図示しないカムが配置される。中間ホイール92bが回転してグリッパー20が中間ホイール92bのグリッパー28に保持されたボトル1に対向すると、このグリッパー20の挟み片20a,20bがボトル1の首部1aをサポートリング5よりも下側で把持し、ボトル1を宙吊り状態にして搬送する。
【0118】
また、このグリッパー20には、図12A及び図12Bに示すように、中間ホイール92bの周方向に突出する水平枢軸26が設けられ、この水平枢軸26を介して中間ホイール92bに支持される。一方、図13に示すように、中間ホイール92bの旋回軸を中心にして円弧状に湾曲するカム27が設けられている。このカム27に各グリッパー20が接触するようになっている。中間ホイール92bの旋回によりグリッパー20がボトル1を受け取って旋回すると、カム27の案内によりグリッパー20が水平枢軸26を支点にしてボトル1ごと上下反転する。これにより、図3Mに示すようにボトル1も上下反転してその首部1aが下向きの倒立状態となる。
【0119】
ボトル1が、図3Mのように、温水リンス部91内を中間ホイール92bのグリッパー20によって倒立状態にされて走行する際、首部1aから温水ノズル93が挿入され、ボトル1内に無菌の温水wが注入される。温水wはボトル1の内面の全面に接触して加熱した後、首部1aからボトル1外に流出する。温水ノズル93としては一般的なリンサーノズルを使用することができる。このノズルから温水wをボトル1内にスプレーする。
【0120】
この場合、温水wは76℃〜80℃であり、0.2秒間〜1.0秒間のごく短時間だけボトル1の内面に接触してボトル1内面を殺菌する。ごく短時間だけボトル1内に供給するので、温水wの使用量は少なくてすみ、温水wを無菌化するための加熱装置で消費する熱エネルギー(蒸気使用量)も少なくて済む。また、ボトル1の熱による変形もごく小さくなるので、ボトル1を薄肉に形成することができ、ボトル1の材料であるPETの使用量を低減することが可能である。
【0121】
この温水wの供給によって、ボトル1内の上記過酸化水素によって損傷を受けた子嚢菌類等一部の耐熱性カビが殺菌される。また、ボトル1内に残留した余剰の過酸化水素が洗い流され、ボトル1外に排出される。
【0122】
また、上述した殺菌部9において、図3Lから明らかなように、過酸化水素がボトル1の外面にも付着するが、上記温水wがボトル1内に供給されることによって、温水wの熱がボトル1の壁を伝ってボトル1の外面に付着した過酸化水素を加熱する。このため、ボトル1の外面の殺菌効果も高められる。
【0123】
上記温水wによるボトル1内の殺菌及び洗浄後、ボトル1は中間ホイール92bのグリッパー20によって再び正立状態に戻され、終端ホイール92cのグリッパー28によって受け取られ、次の充填部10へと搬送される。
【0124】
図2に示すように、上記温水リンス部91には充填部10が連結される。
【0125】
この充填部10もその全体がチャンバー10aにより覆われる。温水リンス部91のチャンバー96aとの間には、図示しない隔壁が設けられ、この隔壁にボトル1の通過口が設けられる。
【0126】
充填部10のチャンバー10a内には、図2に示すように、上記温水リンス部91側のボトル1の走行手段である終端ホイール92cに連結されるホイール列が接続される。
【0127】
具体的には、このホイール列は六個のホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fで構成され、それらの外周にボトル1の走行路が設定される。また、各ホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fの回りには、図4に示したグリッパー28と同様なグリッパー28が設けられる。
【0128】
充填部10のチャンバー10a内において、グリッパー28は各ホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fの回りでボトル1の首部1aを把持して旋回しながら、ボトル1を始端ホイール94aから終端ホイール94fへと順に受け渡す。これにより、ボトル1は充填部10内を始端ホイール94aから終端ホイール94fへと連続走行する。グリッパー28は、走行中その挟み片28a,28bでボトル1の首部1aを把持することから、ボトル1は正立した宙吊り状態で走行する。
【0129】
充填部10のチャンバー10a内において、中間ホイール94cは大径のホイールとされ、このホイール94cの回りの所定位置に、飲料充填機が設置される。図3Nに示すように、この飲料充填機のノズル95によってボトル1内に予め殺菌処理された酸性飲料aが充填される。このノズル95はボトル1と同期的に走行するようになっており、ボトル1に伴走しながらボトル1内に一定量の酸性飲料aを充填する。
【0130】
また、飲料充填機よりも下流における中間ホイール94eの回りの所定位置には、キャッパーが設置される。図3Oに示すように、このキャッパーによってボトル1の首部1aにキャップ2が取り付けられる。これにより、ボトル1が密封される。
【0131】
この酸性飲料aが充填され、キャップ2で密封されたボトル1は、終端ホイール94fのグリッパー28から解放され、チャンバー10aの出口から飲料充填装置の外部に排出される。
【0132】
なお、飲料充填機及びキャッパーは公知の装置であるから、それらの詳細な説明は省略する。
【0133】
その他、図2に示すように、充填部10には、その内部のホイール94a,94b,94c,94d,94e,94fを所定の組み合わせで動力的に連動するように駆動するサーボモータS4,S5,S6が三基設けられる。そのうちの第一のサーボモータS4は始端ホイール94aを駆動し、第二のサーボモータS5は飲料充填機の置かれる中間ホイール94cを駆動し、第三のサーボモータS6は飲料充填機の置かれる中間ホイール94cよりも下流側のホイール94d,94e,94fを駆動するようになっている。
【0134】
これにより、上記検査部8、殺菌部9、温水リンス部91、充填部10の各部におけるホイールやグリッパーの構造が互いに異なったものであっても、上記サーボモータS1,S2,S3,S4,S5,S6の制御によって、グリッパーの同期的な駆動が可能となり、ボトル1を成形部7から充填部10へと円滑に連続走行させることができる。
【0135】
なお、上記実施の形態では、成形部7は図示しない通常の電動モータにより駆動されるようになっているが、成形部7のホイールやターンテーブルもサーボモータによって駆動することも可能である。
【0136】
次に、上記酸性飲料充填装置の作用について説明する。
【0137】
(1)最初に、図3Aに示すようなプリフォーム6が用意される。プリフォーム6は図示しない射出成形によって成形された後に、この酸性飲料充填装置のプリフォーム供給機11に入れられる。
【0138】
プリフォーム供給機11のコンベア12によってプリフォーム6が成形部7内に供給される。
【0139】
(2)コンベア12によって図3Aのごとく正立状態で搬送されて来たプリフォーム6は、成形部7内において連続回転する始端ホイール13aのグリッパーに受け取られ、中間ホイール13bのグリッパーによって倒立状態とされる。
【0140】
この倒立状態のプリフォーム6は、図3Bのごとく第一のターンテーブル14aのマンドレル17にその首部1aから被せられる。
【0141】
プリフォーム6が被せられたマンドレル17は、図3Cに示すように、自転しながら加熱室16内を走行し、プリフォーム6はマンドレル17と共に自転しつつ加熱室16内を連続走行する。これにより、プリフォーム6は均一に加熱されてブロー成形可能な温度まで上昇する。
【0142】
(3)加熱されたプリフォーム6は、図3Dに示すように、ブロー成形用金型18により挟まれ、マンドレル17を貫通するブローノズル19からエアが吹き込まれる。これにより、金型18内でボトル1が成形される。
【0143】
成形されたボトル1は、金型18の型開きによって、金型18外にマンドレル17ごと取り出され、図3Eに示すように、倒立状態で第六のターンテーブル14fを経て第一のターンテーブルへ14aと向かう。
【0144】
(4)第一のターンテーブル14aにおいてマンドレル17に保持されたボトル1は、図3Fに示すように、始端ホイール19aの把持具98によって把持され、正立状態にされる。このとき把持具98はボトル1の首部1aのサポートリング5よりも上側を把持する。続いて、終端ホイール19bの図4に示すようなグリッパー28によってボトル1が受け取られる。このときグリッパー28は、図6に示すように、ボトル1の首部1aのサポートリング5よりも下側を把持する。
【0145】
(5)検査部8の始端ホイール36aのグリッパー37が成形部7の終端ホイール19bからボトル1の首部1aのサポートリング5よりも上側を把持して受け取る。このボトル1はグリッパー37に保持されつつ旋回運動を行う。
【0146】
この旋回運動の間に、図3Gに示すように、ボトル胴部検査手段によってボトル1の胴部が検査される。この検査では、カメラ45により撮影されたボトル1の胴部の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0147】
(6)ボトル1は始端ホイール36aのグリッパー37から中間ホイール36bのグリッパー28に受け渡され、この中間ホイール36bのグリッパー28によって、図3H及び図6に示すように、首部1aのサポートリング5よりも下側が把持されて旋回運動を行う。
【0148】
この旋回運動の間に、図3Hに示すように、温度検査手段の温度センサ46によってボトル1の温度が検出される。温度センサ46による検出温度が例えば50℃に達しないときはそのボトル1は不良品と判断される。
【0149】
(7)続いて、図3Iに示すように、サポートリング検査手段によって、ボトル1のサポートリング5の表面状態が検査される。この検査では、カメラ48により撮影されたサポートリング5の上面の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。
【0150】
(8)サポートリング5の検査に続き、図3Jに示すように、ボトル首部天面検査手段によって、ボトル首部1aの天面1dの表面状態が検査される。この検査では、カメラ50により撮影されたボトル首部1aの天面1dの画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、変形等の異常の存否について判別される。
【0151】
(9)ボトル首部1aの天面1dの検査に続き、図3Kに示すように、ボトル底部検査手段によって、ボトル1の底部が検査される。この検査では、カメラ52により撮影されたボトル底部の画像が図示しない画像処理装置によって処理され、傷、異物、変色等の異常の存否について判別される。
【0152】
(10)上記各種検査を経たボトル1は検査部8の終端ホイール36cの図8に示したグリッパー28に保持される。各種検査手段のいずれかによって異常信号が発せられると、図9に示すように、グリッパー開放機構が作動し、グリッパー28の一対の挟み片28a,28bが二点鎖線で示す閉じ状態から実線で示す開状態に変化し、不良品のボトル1を解放する。
【0153】
これにより、ボトル1の胴部、底部、首部天面1d、サポートリング5に傷等が発生した不良品のボトル1が走行路から排除され、また、後の殺菌工程で過酸化水素によって殺菌しても十分な殺菌効果を得られない温度のボトル1も走行路から排除される。
【0154】
一方、良品のボトル1については、可動カム部53aが図9Aの位置に保持されることから、排除手段の箇所を素通りし、殺菌部9へと向かう。
【0155】
(11)良品のボトル1は検査部8の終端ホイール36cのグリッパー28から殺菌部9の始端ホイール58aのグリッパー28に受け渡され、以後下流側のホイールのグリッパー28へと受け渡されながら連続走行する。
【0156】
良品のボトル1は中間ホイール58bの回りをグリッパー28で保持されつつ走行する際、図3Lに示すように、噴霧管59の直下を通る。これにより、噴霧管59から吐出される過酸化水素の凝結ミストαがボトル1に向かって吹き付けられ、ボトル1の内面と外面が殺菌される。上述したように、適度に熱が残留した良品のボトル1のみが到来するので、これらのボトル1は過酸化水素の凝結ミストαによって適正に殺菌された後に下流側へと走行する。
【0157】
(12)図11に示すように、ボトル1が成形部7から検査部8を経て殺菌部9へと至るボトル1の走行路には陽圧化手段が設けられることによって、殺菌部9のチャンバー9a内に流入した過酸化水素のミストαの余剰分は排気用ダクト86,89からチャンバー9a外へ排出され、また、検査部8のチャンバー8a内に流入した浄化されたエアは成形部7のチャンバー7aの方及び雰囲気遮断チャンバー79の方へと流れ、検査部8のチャンバー8a内への汚染されたエアや過酸化水素を含むエアの流入を阻止する。
【0158】
また、ボトル1の走行に伴って成形部7のチャンバー7aから検査部8のチャンバー8a内へとエアが引き込まれたとしても、このエアは雰囲気遮断チャンバー79からの排気によって、殺菌部9のチャンバー9a内への流入を阻止されるので、殺菌部9内の汚染が適正に防止される。
【0159】
(13)ボトル1が検査部8を通って殺菌部9以降へと搬送されているとき、成形部7側で何らかの異常が発生して成形部7側のホイール列が緊急停止した場合は、図7に示すように、ピストン・シリンダ装置42のピストンロッド42aが縮動作し、閉じ状態にあった一対の挟み片37a,37bが同図に示すように約180度の角度で拡開する。
【0160】
これにより、成形部7側の終端ホイール19bに取り付けられたグリッパー28と検査部8側の始端ホイール36aのグリッパー37との間での干渉が防止される。
【0161】
また、この始端ホイール36aおよびこれに後続するホイールの列は回転し続けるので、検査部8内に導入されたボトル1は下流側へと走行し続ける。したがって、正常に成形されたボトル1は検査部8での検査を受け、さらに検査部8を通過したボトル1は殺菌部9へと向かうことになり、ボトル1の無駄が防止される。また、成形部7は停止しても検査部8以降は稼動が可能であるから、ボトル1は殺菌部9以降を連続走行し続け、殺菌部9内で停止することによる過酸化水素の過剰付着や、ボトル1の冷却による殺菌不良等が防止され、適正なボトル1にのみ酸性飲料aが充填されることとなる。
【0162】
(14)殺菌部9内で過酸化水素の凝結ミストαを吹き付けられたボトル1は、殺菌部9の終端ホイール58cのグリッパー28から温水リンス部91内へと送られ、温水リンス部91内のホイール92a,92b,92cの周りを上流側から下流側へと走行する。中間ホイール92bのグリッパー20によってボトル1は上下反転し、図3Mのごとく内部を無菌の温水wにより短時間内で殺菌、洗浄される。
【0163】
温水リンス後のボトル1は、グリッパー20の反転動作によって、首部1aが上を向いた正立状態に戻される。
【0164】
(15)温水リンスされたボトル1は、充填部10へと至り、ホイール94cの回りをグリッパー28により把持されつつ走行する際に、図3Nに示すように、飲料充填機のノズル95から酸性飲料aを所定量充填される。
【0165】
(16)酸性飲料aが充填されたボトル1は、ホイール94eの回りをグリッパー28に把持されて走行し、その際、図3Oに示すように、キャッパーによってその首部1aにキャップ2を被せられる。これにより、ボトル1は密封され飲料包装体とされる。
【0166】
飲料包装体となったボトル1は、この酸性飲料充填装置から外部に送り出される。
【0167】
<実施の形態2>
次に、上記ボトル1に酸性飲料aを充填する酸性飲料充填装置の実施の形態2について説明する。
【0168】
この実施の形態2では、実施の形態1における過酸化水素の凝結ミストαに代えて過酸化水素のガスβがボトル1内に供給される。
【0169】
この場合、図2中、ホイール58a,58b,58cの幾つかと噴霧管59とが、図14に示す過酸化水素ガス供給装置に置き換えられる。
【0170】
この過酸化水素ガス供給装置により、ボトル1が500cc容量である場合、このボトル1内には、過酸化水素ガス濃度が1mg/L〜5mg/Lのガス流が1秒間〜5秒間供給される。
【0171】
図14に示すように、所定の駆動源からの動力で回転するホイール58cが機台65上に起立する旋回軸66に水平に取り付けられる。ホイール58cの盤面からは支柱66aが上方に伸び、支柱66aの上端に過酸化水素のガスβの混ざった加熱空気流であるガス流が流入するマニホルド67が固定される。マニホルド67の上部中央からは旋回軸66の軸心の延長線上で導管68が上方に伸び、この導管68が機台65に連結されるチャンバー9aのフレーム部材にベアリング69を介して保持される。これにより、マニホルド67はホイール58cと一体で旋回軸66の回りを回転可能である。
【0172】
また、ホイール58cの盤面からは他の支柱70が上方に伸び、この支柱70の上部にボトル1のグリッパー28が取り付けられる。支柱70及びグリッパー28は所定のピッチでホイール58cの回りに多数配置される。多数のグリッパー28は支柱70を介してホイール58cに連結されるので、ホイール58cの回転と共に回転する。
【0173】
これらのグリッパー28は図4に示したものと同様な構造を有する。
【0174】
マニホルド67の回りからは各グリッパー28に向って過酸化水素のガスβの混ざったガス流の供給管72がそれぞれ伸び、各供給管72の先端に上記ノズル64が取り付けられる。ノズル64は上記支柱70に固定され、その先端のノズル孔がグリッパー28に保持されたボトル1の首部1aの開口に正対する。これにより、ホイール58cが回転すると、ノズル64はグリッパー28に保持されたボトル1と共に旋回軸66の回りを旋回し、過酸化水素のガスβの混ざったガス流をボトル1内に吹き込む。
【0175】
上記マニホルド67の導管68の上端には、配管74aがシール部材75を介して接続される。導管68はマニホルド67と一体で配管74aに対して回転し、シール部材75が両管68,74aの接続部からのガスβの漏れを防止する。配管74aには図10に示したミスト生成装置61が複数基取り付けられ、各ミスト生成装置61から過酸化水素の凝結ミストαが配管74a内に供給される。ミスト生成装置61の稼動する台数は、ボトル1の殺菌に必要とされるガスβの量等に応じて決定される。
【0176】
配管74aの上流側にはブロア76、ULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)フィルタ77及び電熱器78で構成される熱風供給装置が設けられる。ブロア76から引き込まれた空気がULPAフィルタ77で除菌され、電熱器78で所定温度まで加熱され、熱風γとなって配管74a内に送られる。熱風γは例えば100℃以上の温度に加熱された無菌エアである。この熱風γはミスト生成装置61から送られる過酸化水素の凝結ミストをガス化させてマニホルド67へと搬送する。この過酸化水素のガスの混ざったガス流が、各供給管72を通ってノズル64からボトル1内へと吹き出し、或いはボトル1外に流出する。
【0177】
上記配管74aからマニホルド67を経てノズル64へと至る管路はできるだけ短く形成されており、そのため過酸化水素のガスβは配管内で結露することなくガス流に乗ってボトル1に到達する。
【0178】
ノズル64からボトル1内に過酸化水素のガスβの混ざったガス流が吹き込まれると、過酸化水素のガスβがボトル1の内面の全面にムラなく接触し、ボトル1の内面を速やかに殺菌する。
【0179】
このガス流中に混入される過酸化水素のガスβの濃度は、望ましくは1mg/L(Lは混合気中の過酸化水素ガスの容積)〜10mg/L、より望ましくは2mg/L〜5mg/Lである。
【0180】
このように、ボトル1内に無菌化された熱風γと過酸化水素のガスβを供給して殺菌処理を行うことにより、ボトル1が内面から加熱され、過酸化水素の凝結ミストα及びガスβによる殺菌効果が高まる。
【0181】
なお、実施の形態2において実施の形態1と同じ部分には同じ符号を付して示し、重複した説明を省略する。
【0182】
<実施の形態3>
図17に示すように、この実施の形態3における酸性飲料充填装置では、上記実施の形態1におけるプリフォーム供給機と、ブロー成形機とが省略され、代わりに予備加熱装置296が設けられている。
【0183】
予備加熱装置296に対応する箇所には、ボトル1の搬送路となるホイール276,277,278の列が設けられる。
【0184】
これらのホイール276,277,278の列における最上流側のホイール276に、例えばエア搬送装置279が接続され、成形済みのボトル1が順に供給される。ボトル1は図4に示したグリッパー28と同様なグリッパーによってホイール276,277,278の回りを搬送される。
【0185】
これら各ホイール276,277,278の回りには、ボトル1が通過するトンネル状の箱体280が設置される。各箱体280には、図14に示したブロア76、ULPAフィルタ77及び電熱器78で構成される熱風供給装置から熱風γが供給される。各箱体280内に吹き込まれた熱風γは、箱体280内を通過するボトル1に向かって流れ、ボトル1の予備加熱を行う。この予備加熱によりボトル1は50℃以上に昇温する。
【0186】
この後、ボトル1は、殺菌処理のためボトル殺菌機210へと向かうが、その前に表面温度が所定の予備殺菌温度に到達しているか否か温度検査部238において検査される。
【0187】
温度検査部238は、実施の形態1におけるものと同様な構成であり、予備加熱装置296におけるホイール278とボトル殺菌機210のホイール227との間に介在するホイール223,224,225,226の列を具備する。予備加熱装置296で予備加熱されたボトル1は、ホイール223の回りを走行する際にその表面温度が所定の予備加熱温度に達しているか否かを判別される。所定の予備加熱温度に達していないボトル1は不良品としてホイール225から排出用コンベア295によって搬送路外に排出される。所定の予備加熱温度に達しているボトル1は良品としてホイール226の回りへと引き続き走行する。
【0188】
なお、この温度検査部238は必要に応じて設けられるもので、場合によっては省略可能である。
【0189】
温度検査を経たボトル1は、ボトル殺菌機210へと向かう。ボトル1は予備加熱されていることから、ボトル殺菌機210で供給される過酸化水素の凝結ミストによる殺菌効果が向上する。
【0190】
ボトル殺菌機210以降は実施の形態1の酸性飲料充填装置と同様な構成であるから、その詳細な説明は省略する。
【0191】
<実施の形態4>
図18に示すように、この実施の形態4では、上記実施の形態3における予備加熱装置296とは異なる構成の予備加熱装置297が設けられる。
【0192】
すなわち、実施の形態3におけるホイール277に代えて他のホイール281が設けられ、このホイールの回りに図19に示した熱風供給装置が設けられる。
【0193】
この熱風供給装置による予備加熱によりボトル1は50℃以上に昇温する。
【0194】
なお、この熱風供給装置は、図14に示したものにおいてミスト生成装置61が省略された構造であるから、同じ符号を用いて示すに止め、詳細な説明は省略する。
【0195】
この後、ボトル1は、殺菌処理のためボトル殺菌機210へと向かうが、その前に表面温度が所定の予備殺菌温度に到達しているか否か温度検査部238において検査される。
【0196】
温度検査部238は、実施の形態3におけるものと同様な構成であり、予備加熱装置297におけるホイール278とボトル殺菌機210のホイール227との間に介在するホイール223,224,225,226の列を具備する。予備加熱装置297で予備加熱されたボトル1は、ホイール223の回りを走行する際にその表面温度が所定の予備加熱温度に達しているか否かを判別される。所定の予備加熱温度に達していないボトル1は不良品としてホイール225から排出用コンベア295によって搬送路外に排出される。所定の予備加熱温度に達しているボトル1は良品としてホイール226の回りへと引き続き走行する。
【0197】
なお、この温度検査部238は必要に応じて設けられるもので、場合によっては省略可能である。
【0198】
温度検査を経たボトル1は、ボトル殺菌機210へと向かう。ボトル1は予備加熱されていることから、ボトル殺菌機210で供給される過酸化水素の凝結ミストによる殺菌効果が向上する。
【0199】
ボトル殺菌機210以降は実施の形態3の酸性飲料充填装置と同様な構成であるから、その詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0200】
従来の成形済ボトルに過酸化水素ミストを吹き付けて殺菌し、続いて温水でリンスする方式と、本発明のごとくプリフォームを流しつつボトル成形し、続いて過酸化水素ミストの吹き付けと温水リンスとによって殺菌する方式の各々について殺菌効果、温水使用量を確認した。
【0201】
殺菌対象は、重量18.3gの500mL(ミリリットル)のボトルとし、指標菌は、子のう菌類であるChaetomium globosum 胞子(耐熱性カビ)を用い、殺菌効果はLog Reduction Value(Log(付着菌数/生残菌数))で表した。
【0202】
結果は次表の通りである。
【0203】
【表1】
【0204】
上記結果から明らかなように、約80℃の温水を0.2秒間だけボトルの内面に接触させることで、ボトル内面を殺菌することができた。また、本発明者が殺菌処理後のボトルを目視で検査したところ、ボトルに変形等の発生は認めることができなかった。
【0205】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることなく種々の形態にて実施可能である。
【0206】
例えば、本発明の酸性飲料充填装置が適用される容器はPETボトルに限定されず、種々の樹脂製容器に適用することができる。また、酸性飲料も単なる液体だけでなく、粒状物、塊等を含んだものや、高粘度のものも充填可能である。ボトルの成形もインジェクションブローに限定されず、ダイレクトブロー、射出成形等各種の成形方法によって成形可能である。
【0207】
また、プリフォームやボトルを搬送する搬送手段は、上述したホイール搬送装置に限定されない。ボトルが成形された順に所定の搬送速度で搬送可能な種々の搬送装置、例えばエア搬送装置、ベルト搬送装置、バケット搬送装置を使用することができる。
【符号の説明】
【0208】
1…ボトル
6…プリフォーム
7…成形部
8…検査部
8a,9a…チャンバー
9…殺菌部
10…充填部
46…温度センサ
91…温水リンス部
a…酸性飲料
w…温水
α…過酸化水素の凝結ミスト
β…過酸化水素のガス
γ…熱風
S1…サーボモータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されたプリフォームからブロー成形によりボトルを成形し、上記プリフォームに加えた熱が残留しているうちに、ボトル内面に過酸化水素が接触するように、ボトル内に過酸化水素のミスト又はガスを供給し、続いてボトル内に70℃以上の温水を供給してボトル内面に温水を0.2秒以上接触させ、しかる後にボトル内に酸性飲料を充填して密封することを特徴とする酸性飲料充填方法。
【請求項2】
請求項1に記載の酸性飲料充填方法において、上記過酸化水素がミストの場合は500ccボトル1本当たり10μL〜30μLをボトル内に供給し、過酸化水素がガスの場合はボトル内に供給するガス流のガス濃度を1mg/L〜5mg/Lとし、温水リンスは500ccボトル1本当たり3L/min以上の上記温水を0.2秒以上ボトル内に供給することによって行うことを特徴とする酸性飲料充填方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の酸性飲料充填方法において、成形されたボトルをその密封に至るまで連続走行させる走行路を設け、この走行路を各々が回りにグリッパーを備えたホイールの列によって形成し、グリッパーが各ホイールの回りでボトルの首部を把持して旋回すると共にボトルを上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すようしたことを特徴とする酸性飲料充填方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸性飲料充填方法において、加熱されたプリフォームからブロー成形によりボトルを成形する工程からボトルに酸性飲料を充填して密封するまでの全工程を、ボトルを連続走行させながら行い、上記ボトルを成形した後殺菌する前に、プリフォーム加熱時の熱が残留したボトルの温度を検査し、この温度が所定値に達していないボトルを排除し、所定値に達したボトルに対してのみ上記殺菌及び充填を行うようしたことを特徴とする酸性飲料充填方法。
【請求項5】
加熱されたプリフォームからブロー成形によりボトルを成形する成形部と、成形部で成形されたボトルを過酸化水素の少量のミスト又は低濃度のガスで殺菌する殺菌部と、殺菌部を経たボトルを高温の温水により短時間でリンスする温水リンス部と、温水リンス部を通過したボトルに酸性飲料を充填する充填部とが連結され、上記成形部から上記殺菌部を経て上記充填部へとボトルを走行路上で連続走行させる走行手段が設けられ、上記殺菌部から上記充填部に至る箇所がチャンバーで覆われた酸性飲料充填装置において、上記成形部で成形されたボトルについて温度が所定値にあるか否か検査を行う温度検査部が、上記成形部と上記殺菌部との間にこれらに連結されるように設けられ、この温度検査部には、温度検査により不良と判断されたボトルを上記走行路から排除する排除手段と、上記温度検査部内を上記成形部内及び上記殺菌部内よりも陽圧化する陽圧化手段とが設けられ、上記走行手段は、上記成形部から上記充填部へと列状に配置されたホイールと、各ホイールの回りでボトルの首部を把持して旋回すると共にボトルを上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すグリッパーとを具備し、上記グリッパーは、上記プリフォームに加えられボトルに残留した熱が上記殺菌部でのボトルの殺菌に必要な程度まで保たれるよう走行速度が制御されるようにしたことを特徴とする酸性飲料充填装置。
【請求項6】
請求項5に記載の酸性飲料充填装置において、上記ホイールが所望の数の列に区分され、列ごとに別個のサーボモータで駆動されるようにしたことを特徴とする酸性飲料充填装置。
【請求項7】
請求項5に記載の酸性飲料充填装置において、上記ボトル成形部側のホイールと、このホイールに隣接する下流側のホイールとの間で、一方のホイールが停止した時にグリッパー同士の干渉を防止するグリッパー干渉防止手段が設けられたことを特徴とする酸性飲料充填装置。
【請求項1】
加熱されたプリフォームからブロー成形によりボトルを成形し、上記プリフォームに加えた熱が残留しているうちに、ボトル内面に過酸化水素が接触するように、ボトル内に過酸化水素のミスト又はガスを供給し、続いてボトル内に70℃以上の温水を供給してボトル内面に温水を0.2秒以上接触させ、しかる後にボトル内に酸性飲料を充填して密封することを特徴とする酸性飲料充填方法。
【請求項2】
請求項1に記載の酸性飲料充填方法において、上記過酸化水素がミストの場合は500ccボトル1本当たり10μL〜30μLをボトル内に供給し、過酸化水素がガスの場合はボトル内に供給するガス流のガス濃度を1mg/L〜5mg/Lとし、温水リンスは500ccボトル1本当たり3L/min以上の上記温水を0.2秒以上ボトル内に供給することによって行うことを特徴とする酸性飲料充填方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の酸性飲料充填方法において、成形されたボトルをその密封に至るまで連続走行させる走行路を設け、この走行路を各々が回りにグリッパーを備えたホイールの列によって形成し、グリッパーが各ホイールの回りでボトルの首部を把持して旋回すると共にボトルを上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すようしたことを特徴とする酸性飲料充填方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の酸性飲料充填方法において、加熱されたプリフォームからブロー成形によりボトルを成形する工程からボトルに酸性飲料を充填して密封するまでの全工程を、ボトルを連続走行させながら行い、上記ボトルを成形した後殺菌する前に、プリフォーム加熱時の熱が残留したボトルの温度を検査し、この温度が所定値に達していないボトルを排除し、所定値に達したボトルに対してのみ上記殺菌及び充填を行うようしたことを特徴とする酸性飲料充填方法。
【請求項5】
加熱されたプリフォームからブロー成形によりボトルを成形する成形部と、成形部で成形されたボトルを過酸化水素の少量のミスト又は低濃度のガスで殺菌する殺菌部と、殺菌部を経たボトルを高温の温水により短時間でリンスする温水リンス部と、温水リンス部を通過したボトルに酸性飲料を充填する充填部とが連結され、上記成形部から上記殺菌部を経て上記充填部へとボトルを走行路上で連続走行させる走行手段が設けられ、上記殺菌部から上記充填部に至る箇所がチャンバーで覆われた酸性飲料充填装置において、上記成形部で成形されたボトルについて温度が所定値にあるか否か検査を行う温度検査部が、上記成形部と上記殺菌部との間にこれらに連結されるように設けられ、この温度検査部には、温度検査により不良と判断されたボトルを上記走行路から排除する排除手段と、上記温度検査部内を上記成形部内及び上記殺菌部内よりも陽圧化する陽圧化手段とが設けられ、上記走行手段は、上記成形部から上記充填部へと列状に配置されたホイールと、各ホイールの回りでボトルの首部を把持して旋回すると共にボトルを上流側ホイールから下流側のホイールへと受け渡すグリッパーとを具備し、上記グリッパーは、上記プリフォームに加えられボトルに残留した熱が上記殺菌部でのボトルの殺菌に必要な程度まで保たれるよう走行速度が制御されるようにしたことを特徴とする酸性飲料充填装置。
【請求項6】
請求項5に記載の酸性飲料充填装置において、上記ホイールが所望の数の列に区分され、列ごとに別個のサーボモータで駆動されるようにしたことを特徴とする酸性飲料充填装置。
【請求項7】
請求項5に記載の酸性飲料充填装置において、上記ボトル成形部側のホイールと、このホイールに隣接する下流側のホイールとの間で、一方のホイールが停止した時にグリッパー同士の干渉を防止するグリッパー干渉防止手段が設けられたことを特徴とする酸性飲料充填装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図3L】
【図3M】
【図3N】
【図3O】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図3K】
【図3L】
【図3M】
【図3N】
【図3O】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−178402(P2011−178402A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41417(P2010−41417)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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