説明

酸素インジケーター組成物および該組成物を用いてなる包装材

【課題】食品、医薬品、電子部材、電子製品等を保存するための脱酸素包装材において、包装材内が無酸素状態であるか否かを色の変化により識別し得るための酸素インジケーター組成物および該組成物を用いてなる包装材を提供する。
【解決手段】少なくとも酸化還元色素であるメチレンブルーと、還元剤であるD−グルコースと、酸価が50〜300mgKOH/gであるとともにガラス転移点が10〜70℃であるアクリル系共重合体とからなることを特徴とする酸素インジケーター組成物。
【効果】流動性やレベリング性、溶解性や版かぶり性といった印刷適性および耐ブロッキング性や接着性といった塗膜物性に優れ、安定した発色、有酸素状態→脱酸素状態および脱酸素状態→有酸素状態の変化に対する変色も極めて良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、電子部材、電子製品等を保存するための脱酸素包装材において、包装材内が無酸素状態であるか否かを色の変化により識別し得るための酸素インジケーター組成物および該組成物を用いてなる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、電子部材、電子製品等の内容物の酸化を防止し、長期間保存する方法として、ガスバリア性を有する包装材で上記内容物を包装し、不活性ガスである窒素や炭酸ガスを封入し酸素と置換させる方法や包装材内に脱酸素剤を内容物と一緒に封入することで脱酸素状態にする方法等がある。
これらの方法により内容物は酸化劣化することなく長期間保存することが可能となる。しかし、包装材の欠損やバリア性低下、窒素や炭酸ガスの封入失敗や脱酸素剤の能力低下、あるいは流通などの運搬過程における衝撃などが原因によるピンホールやシール不良などが発生した場合には、包装材内に酸素が混入し、酸化劣化による内容物の腐敗や変質が生じる恐れがあるが、酸素の混入に気づかないまま流通される場合があった。包装材内に酸素が混入したとしても、外観的にそれを検知できない場合が多かった。
【0003】
そこで、包装材の欠損、脱酸素剤の能力低下などによる酸素の混入を検知し、内容物が確実に脱酸素状態で保存されているかを確認する方法として、酸素の存在の有無により色相を変化する酸素インジケーターを含有する包装材が開発されている。酸素インジケーターの形態として広く使用されているのは錠剤型であり、直径1cm程度の大きさに打錠成形され、ポリエチレンやポリプロピレンなどの包材に微細孔を開けた状態で個包装され内容物、脱酸素剤と共にガスバリア性を有する包装材に封入されている。例えば、(a)メチレンブルー、(b)グルコース、(c)ケイ酸ナトリウム、シリカおよび水酸化ナトリウムよりなるアルカリ性剤、(d)低融点高分子よりなる結合剤、(e)有機酸コバルト、(f)水、(g)充填剤からなる錠剤型の酸素検知剤が提案され、実用化されている。しかし、錠剤型の酸素インジケーターは、(1)個々に錠剤を包装しなければならない、(2)小袋に空けた穴を通して崩壊した錠剤粉末が外部へ流出する場合がある、(3)錠剤の誤飲事故に繋がる危険性がある、(4)錠剤を包装材内に固定することが困難である、(5)錠剤が包装材内で動き、外部から目視検知しにくいなど種々の問題点を有していた。
【0004】
そのため、包装材に酸素インジケーター機能が一体となって設けられるように、酸素インジケーターを印刷により基材上に形成する包装材の開発が種々検討されている。例えば、酸化還元色素であるメチレンブルー、還元剤であるアスコルビン酸とからなる酸素インジケーター組成物が開示されているが、アスコルビン酸は、光や熱により劣化しやすいという課題があった。アスコルビン酸に耐光性や耐熱性を付与するため、ヒンダードアミン系薬剤を添加する方法が提案されているが、酸素インジケーター製造後の長期保管、流通時に安定した性能を発揮するには至っていない。
【0005】
酸化還元色素、還元剤、着色剤を基材上に固着するために用いられるバインダーとして、ポリアセタール樹脂が用いられる酸素インジケーター組成物も開示されている。しかし、印刷により酸素インジケーターを基材上に形成した場合、次工程であるラミネート加工に移るまで印刷物を巻きの状態で保管した場合において、酸素インジケーター組成物が基材の非印刷面(裏面)に移行するブロッキングのトラブルが発生する場合があった。
【0006】
還元剤としてアスコルビン酸を用いた場合、酸化還元色素の呈色反応を促進し、発色を安定させるためには酸素インジケーター組成物にグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの保湿剤を添加する必要があるが、これら保湿剤の添加はブロッキングを更に低下させる原因となっていた。
また、市販されている多くの酸素インジケーターは、着色剤として酸化還元色素であるメチレンブルー以外に、更に赤系着色剤を添加することによって、無酸素時は赤〜ピンク色、有酸素時は青〜紫色となり、酸素の存在有無をより識別しやすいように着色されている。酸素インジケーター組成物は、還元剤の酸化を促進する目的でアルカリ化剤が添加され、一般的にはpH10〜14の範囲で使用されるが、アルカリ化剤の添加により赤系着色剤の変色や退色が生じ、発色が安定しないという問題があった。

【特許文献1】特開平3−15985号公報
【特許文献2】特開2000−214152号公報
【特許文献3】特開2001−192592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術に基づく既存の酸素インジケーターでは解決し得なかった前記の欠点を解決することである。即ち、優れた耐ブロッキング性を有し、長期保管、流通時にも安定した発色を発現し、包装材の欠損、脱酸素剤の能力低下などによる包材内への酸素の混入を確実に検知し得る酸素インジケーター組成物および該組成物が印刷により基材上に形成され、酸素インジケーター機能が包装材および/または脱酸素剤と一体となった酸素インジケーターを提供することにある。


【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の如き従来の問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、少なくとも酸化還元色素であるメチレンブルー、還元剤であるD−グルコース、酸価が50〜300mgKOH/gであるとともにガラス転移点が10〜70℃であるアクリル系共重合体とからなる酸素インジケーター組成物が優れた耐ブロッキング性と長期保存性を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明の第1の発明は、少なくとも酸化還元色素であるメチレンブルー、還元剤であるD−グルコース、酸価が50〜300mgKOH/gであるとともにガラス転移点が10〜70℃であるアクリル系共重合体とからなることを特徴とする酸素インジケーター組成物である。
第2の発明は、上記酸素インジケーター組成物に、更に着色剤として不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、縮合多環系顔料の群から選択される少なくとも1種以上の赤系顔料を含有することを特徴とする酸素インジケーター組成物である。
第3の発明は、上記酸素インジケーター組成物が印刷により基材上に形成され、酸素インジケーター機能が包装材および/または脱酸素剤と一体となっていることを特徴とする酸素インジケーターである。

【発明の効果】
【0009】
本発明の酸素インジケーター組成物は、従来の酸素インジケーター組成物と比較して、流動性やレベリング性、溶解性や版かぶり性といった印刷適性および耐ブロッキング性や接着性といった塗膜物性に優れ、安定した発色、有酸素状態→脱酸素状態および脱酸素状態→有酸素状態の変化に対する変色も極めて良好である。
また、本発明のインジケーターは、酸素インジケーター組成物が印刷により基材上に形成され、酸素インジケーター機能が包装材および/または脱酸素剤と一体となっている為、現在広く実用化されている錠剤型の酸素インジケーターの(1)個々に錠剤を包装しなければならない、(2)小袋に空けた穴を通して崩壊した錠剤粉末が外部へ流出する場合がある、(3)錠剤の誤飲事故に繋がる危険性がある、(4)錠剤を包装材内に固定することが困難である、(5)錠剤が包装材内で動き、外部から目視検知しにくいなどの種々の問題点を一気に解決する事が可能となり、その工業的価値は極めて多大である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の酸素インジケーター組成物および酸素インジケーターについて詳細に説明する。本発明における酸素インジケーター組成物は、酸化還元色素、還元剤、アクリル系共重合体、アルカリ化剤、溶媒から構成され、更に酸化還元色素以外の着色剤、必要に応じて保湿剤、消泡剤や分散剤などの各種添加剤が使用される。
【0011】
本発明の酸素インジケーター組成物に用いられる酸化還元色素としては、着色力および水やアルコールに対する溶解性の観点よりメチレンブルーが使用される。メチレンブルーは無酸素下では還元剤の働きによって還元型、すなわち無色を呈し、有酸素下では酸素により酸化され、青色を呈する。
メチレンブルーの含有量は、有酸素下で十分な青色濃度を得る観点から0.001重量%以上、水やアルコールに対する溶解性の観点から10.0重量%以下の範囲が好ましく、更に0.05〜5.0重量%の範囲がより好ましい。
【0012】
本発明の酸素インジケーター組成物に用いられる還元剤としては、耐光性や耐熱性、長期保存、流通時の発色の安定性の観点よりD−グルコースが使用される。還元剤の含有量は、5.0〜60.0重量%の範囲が好ましいが、10.0〜50.0重量%の範囲とするのがより好ましい。含有量が5.0重量%未満であるとメチレンブルーを十分に還元することができず、60.0重量%を超えるとラミネート強度やブロッキングが低下するため好ましくない。
【0013】
酸化還元色素やそれ以外の着色剤、還元剤などを基材上に固着するためのバインダーとしては、アクリル系共重合体を挙げることができる。アクリル系樹脂は、アルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体またはエマルション型アクリル系共重合体を単独または併用して使用することができる。
アルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体またはエマルション型アクリル系共重合体は,従来からよく知られている塊状重合,溶液重合,乳化重合,懸濁重合などの重合法に従い製造できる。
アルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体としては、アクリル系、スチレン系、その他ラジカル重合可能なビニルモノマーから通常の方法により得られる共重合体樹脂であり、無機アルカリまたは有機アミン等で中和し、水溶化した物を用いることができる。用いられるビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル等の各種アクリル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ブチルスチレン等のスチレン等のスチレン系モノマー、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル類、マレイン酸ジエステル類、その他不飽和カルボン酸エステル等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して使用できる。
【0014】
重合開始剤としては,過酸化ベンゾイル,アゾビスイソブチロニトリル等の触媒を用いることができる。また,反応系には必要に応じてメルカプタン類等を添加することができ,これにより適宜重合度を調整することができる。
【0015】
重合反応終了後,反応系内にアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエタノール等の有機アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類等の中和剤を添加して中和させることにより,所望の水溶性樹脂とすることができる。中和剤の添加量は,樹脂中のカルボキシル基の中和率が約70〜120%となる範囲が好適である。
【0016】
次にエマルション型アクリル系共重合体としては、例えばアクリル系、スチレン系、その他の前述ビニルモノマーを通常の乳化重合により得られる樹脂を用いることが出来る。乳化重合の際に用いられる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等通常に用いられるものが使用できる。或いは界面活性剤の代わりにポリマー粒子の分散保護能を有するアルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体のような高分子活性剤の存在下、上記記載のラジカル重合可能なビニルモノマーを乳化重合することにより得ることができる。
【0017】
アルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体またはエマルション型アクリル系共重合体の酸価は、50〜300mgKOH/gの範囲であることが必要だが、100〜250mgKOH/gの範囲とするのがより好ましい。酸価が50mgKOH/g未満であるとアクリル系共重合体は水溶性に乏しく、酸素インジケーター組成物として使用した際に溶解性が不良となり、版かぶりや版詰まりといったトラブルが生じる。また樹脂の保湿効果が乏しく、発色が安定しない。酸価が300mgKOH/gを超えるとアルカリ化剤の添加によりアクリル系共重合体の増粘によって酸素インジケーター組成物の粘度が上昇、流動性が低下し、レベリング性や版かぶり性などの印刷適性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0018】
アルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体またはエマルション型アクリル系共重合体のガラス転移点は、10〜70℃の範囲であることが必要だが、20〜60℃の範囲とするのがより好ましい。ガラス転移点が10℃未満であるとブロッキングが低下し、ガラス転移点が70℃を超えると、印刷時の乾燥熱風で十分に造膜せず、基材への接着性が低下するため好ましくない。アルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体またはエマルション型アクリル系共重合体の含有量は、基材との十分な接着性を得る観点から3.0重量%以上、耐ブロッキング性や酸素インジケーター組成物の粘度の観点から30.0重量%以下の範囲が好ましく、更に5.0〜20.0重量%の範囲がより好ましい。
【0019】
更に必要に応じて、アルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体またはエマルション型アクリル系共重合体には水性樹脂を併用することもできる。併用する水性樹脂は、一般の水性インキおよび水性塗料などに使用される水溶性または水分散性樹脂であり、例えばポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタンウレア樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、シェラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル酸共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチラールなどを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
酸価が50〜300mgKOH/gであるとともにガラス転移点が10〜70℃であるアクリル系共重合体の中和剤としての役割と、還元剤の酸化を促進する目的で含有されるアルカリ化剤としては、本発明酸素インジケーター組成物をアルカリ性にすることのできるものであればよい。その例としては、アンモニア、有機アミン類、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩等の水溶性化合物等が挙げられる。これらは含水物でも無水物でもよい。具体的には、例えばアンモニア、トリエチルアミン、アミノメチルプロパノール、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、リン酸カリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、リン酸カリウム等が例示できる。これらの中でもホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウムは好適に使用できる。これらはその一種を単独で用いてもよく二種以上を併用することもできる。
【0021】
アルカリ化剤は、酸素インジケーター組成物が印刷時にpH10〜14の範囲となるように添加される。しかし、高アルカリ領域で酸素インジケーター組成物が長期間貯蔵された場合、還元剤の酸化劣化が生じて十分な色調変化反応が得られない場合がある。酸素インジケーター組成物はpH7〜10の範囲となるよう調整して貯蔵し、印刷直前にpH10〜14の範囲となるよう更にアルカリ化剤を添加する方法が好ましい。
【0022】
本発明の酸素インジケーター組成物は、酸素の存在有無による色相変化をより一層明確なものとするために、酸素の存在有無に係わらず色相の変化を伴わない着色剤を併用することもできる。
併用する着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。
【0023】
有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラなどが挙げられる。染料としては、アゾ系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系などの顔料が挙げられる。これらの顔料や染料は、単独で、または色相および濃度の調整などを目的として2種以上を混合して用いることもできるが、耐光性の観点より顔料の使用が好ましい。
【0024】
市販されている多くの酸素インジケーターは、酸化還元色素としてメチレンブルーを用い、更に赤系着色剤を添加することによって、無酸素時は赤〜ピンク色、有酸素時は青〜紫色となり、酸素の存在有無をより識別しやすいように着色されている。
メチレンブルーに併用する赤系着色剤としては、C.I.Pigment Red 23、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 238等の不溶性アゾ顔料、C.I.Pigment Red 144、C.I.Pigment Red 166、C.I.Pigment Red 220、C.I.Pigment Red 211、C.I.Pigment Red 242等の縮合アゾ顔料、C.I.Pigment Red 122等の縮合多環系顔料が好適に使用できる。
メチレンブルーに併用する赤系着色剤の含有量は、無酸素下で十分な赤色濃度を得る観点から0.1重量%以上、有酸素時にはメチレンブルーの青色と混色して紫色を呈し、酸素の存在有無を識別しやすくするために5.0%重量%以下の範囲が好ましい。
C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:2、C.I.Pigment Red 57:1等のアゾレーキ顔料は、ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、珪酸ナトリウム等のアルカリ化剤の添加により着色剤の変色や退色が生じ、発色が安定しないため好ましくない。
【0025】
溶媒としては、水あるいは水混和性有機溶剤を使用することができる。水混和性有機溶剤としては,メチルアルコール,エチルアルコール,イソプロピルアルコール,N-プロピルアルコール等のアルコール類,エチレングリコール,プロピレングリコール等のグリコール類,グリセリン等の多価アルコール類、メチルセロソルブ,エチルセロソルブ,ブチルセロソルブ,プロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノエチルエーテル,ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。これらの水や水混和性有機溶剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。この中でエチレングリコール,プロピレングリコール等のグリコール類,グリセリン等の多価アルコール類は、酸素インジケーター組成物中の水分を保持し、酸化還元色素の呈色反応を促進する保湿剤としての働きがあるが、含有量が5%を超えるとブロッキングが低下する。本発明の酸素インジケーター組成物は、還元剤であるD−グルコースやバインダーであるアルカリ可溶型水溶性アクリル系共重合体またはエマルション型アクリル系共重合体も保湿剤の役割も果たすので、グリコール類や多価アルコール類等の保湿剤の含有量は5重量%以下とすることが可能である。
【0026】
本発明の酸素インジケーター組成物は、その他、必要に応じて体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、硬化剤、シランカップリング剤、防錆剤、防腐剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、耐光性向上剤、芳香剤、難燃剤などの添加剤を加えることもできる。
【0027】
レベリング剤としては、アセチレンジオール、変性ポリシロキサン、フッ素系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ポリオキシレン直鎖脂肪族アルコールやポリオキシレン分岐脂肪族アルコール、非イオン性界面活性剤例えば脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、脂肪族アルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪族アミドアルキレンオキサイド付加物、ソルビトール又はソルビタンの脂肪族エステル等を挙げることができ、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。上記のうち、レベリング性および消泡性の観点よりアセチレンジオール系レベリング剤を使用することが好ましい。
【0028】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサンなどのシリコーンオイルを微粉末シリカと混合したオイルコンパウンド型消泡剤、これらのオイルコンパウンドを界面活性剤と共に水中に分散してなるエマルジョン型消泡剤、ポリエーテル系消泡剤例えばステアリルアルコール、ジプロピレングリコール、グリセリンおよびソルビタンなどの1価〜多価のアルコールにアルキレンオキシドを付加したものやアルキルフェノールにアルキレンオキシドを付加したもの、またはこれらの末端水酸基をエステル化したもの、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、高級アルコール系消泡剤、金属セッケン系消泡剤等を挙げることができ、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
耐光性向上剤としては、酢酸コバルト、安息香酸コバルト、ステアリン酸コバルト等を挙げることができ、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
本発明の酸素インジケーター組成物は、一般に使用される分散機、例えばディソルバー、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いて製造することができる。酸素インジケーター組成物中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
本発明の酸素インジケーター組成物の粘度は、顔料の沈降を防ぐ観点から10mPa・s以上、酸素インジケーター組成物製造時や印刷時の作業性や版かぶり性、レベリング性などの印刷適性の観点から1000mPa・s以下が好ましい。更に10〜500mPa・sの範囲がより好ましい。尚、本発明における粘度とは、回転粘度計(BM型粘度計、25℃下測定)を用いた方法で得られた値である。
【0031】
本発明の酸素インジケーター組成物を塗布する方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷などの印刷法や、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングなどのコーティング法が挙げられるが、グラビア印刷法またはフレキソ印刷法による塗布が好適である。
【0032】
本発明の酸素インジケーター組成物は上記印刷法により基材上に形成された後、他のフィルムや紙などと積層され、酸素インジケーター機能が一体となった包装材および/または脱酸素剤となる。
【0033】
酸素インジケーター機能が一体となった包装材において使用される基材としては、例えばポリ塩化ビニリデン(PVDC)系フィルム、ポリビニルアルコール(PVA、ビニロン)系フィルム、EVOH(エチレンとビニルアルコールの共重合体)系フィルム、MXD(メチルキシリレンジアミン)系フィルム、金属酸化物蒸着(透明蒸着)系フィルム、アクリル酸系樹脂コートフィルムなどのガスバリア性フィルムが挙げられる。
上記ガスバリア性フィルムに積層するシーラントフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリメチルペンテンなどが挙げられるが、特にガス透過性と熱接着性を有する低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好適に使用される。微細孔シーラントフィルムを使用することもできる。
【0034】
上記基材とシーラントを積層する方法としては、ドライラミネート法やウェットラミネート法、エクストルージョンラミネート法、ホットメルトラミネート法等、公知の積層方法が利用できる。
酸素インジケーター組成物をガスバリア性フィルムに塗布した後にシーラントフィルムと積層しても良いし、酸素インジケーター組成物をシーラントフィルムに塗布した後にガスバリア性フィルムと積層することもできる。酸素インジケーター組成物をガスバリア性フィルムとシーラントフィルムの両方に塗布する事も可能である。
上記方法によって積層された包装材に、食品、医薬品、電子部材、電子製品などの内容物とともに脱酸素剤が充填される。
【0035】
脱酸素剤の代表的な積層構成としては、例えば微細孔フィルム/撥水撥油剤コート紙/微細孔シーラントフィルム(/脱酸素剤)が挙げられる。
酸素インジケーター機能が一体となった脱酸素剤において使用される微細孔フィルムとしては、例えば二軸延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなど、ドライラミネート法やエクストルージョンラミネート法などの積層方法によって紙と接着可能なフィルムを使用する事ができる。あらかじめ微細孔加工されたフィルムを用いることもできるし、酸素インジケーター組成物を塗布した後に細孔を開ける事も可能である。
上記撥水撥油剤コート紙としては、撥水撥油剤コート剤を塗布した紙が挙げられる。微細孔シーラントフィルムとしては、熱接着性を有する低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好適に使用できる。
上記微細孔フィルムと撥水撥油剤コート紙と微細孔シーラントフィルムとを積層する方法としては、ドライラミネート法やウェットラミネート法、エクストルージョンラミネート法、ホットメルトラミネート法等の公知の積層方法が利用できる。撥水撥油剤コート紙と微細孔シーラントフィルムとを積層する場合には、接着剤やアンカーコート剤を使用せずに、熱圧着にて積層するサーマルラミネート方式を利用することも可能である。
【0036】
酸素インジケーター組成物は、上記フィルムや微細孔フィルムまたは/および撥水撥油剤コート紙にグラビア印刷、フレキソ印刷など公知の方法によって塗布される。酸素インジケーター組成物を紙に塗布した後に撥水撥油剤コート剤を塗布する事も可能である。
ガスバリア性フィルムとシーラントフィルムが積層されて形成された包装材に、食品、医薬品、電子部材、電子製品などの内容物とともに、酸素インジケーター機能が一体となった脱酸素剤が充填される。
酸素インジケーター機能は包装材および脱酸素剤の両方に付与することもできる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の部は重量部を、%は重量%を表す。
【0038】
〔製造例1〕攪拌装置、温度計、滴下装置および還流冷却管を備えた反応容器に、水300部、アニオン系活性剤(ローヌ・プーラン社製「Alipol C0436」)1部および重合開始剤として過硫酸アンモニウム塩2部を仕込み60℃に昇温後窒素ガス置換した。次に、表1中の製造例1および2に示す組成のモノマー混合物200部を2時間で滴下した。この間、反応温度は60〜75℃に保った。モノマー混合物を滴下後、75℃で2時間熟成させて固形分40%のアクリル系共重合体エマルション(a)および(b)を得た。
【0039】
〔製造例3〜9〕攪拌装置、温度計、滴下装置および還流冷却管を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール300部を仕込み83℃に昇温後窒素ガス置換し、表1中の製造例3〜9に示す組成のモノマー混合物200部および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル6部を2時間で滴下した後、83℃で4時間反応させた。次に、反応生成物中のカルボキシル基と当量のアンモニアを含有するアンモニア水600部を添加した後、イソプロピルアルコールを減圧留去させて固形分25%の水溶性アクリル系共重合体(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)を得た。
【0040】
〔実施例1〜9〕表2に示す実施例1〜9の組成の混合物をサンドミルおよびディソルバーを用いて連肉、混合し、本発明の酸素インジケーター組成物を製造した。
〔比較例1〜8〕表2に示す比較例1〜9の組成の混合物をサンドミルおよびディソルバーを用いて連肉、混合し、酸素インジケーター組成物を製造した。
【0041】
刃先の厚みが60μmのセラミックメッキドクターブレード、東洋プリプレス株式会社製のクロム硬度1050Hvの電子彫刻版(200線/inch、スタイラス角度120度)および実施例1〜9および比較例1〜9で得られた酸素インジケーター組成物を富士機械工業株式会社製グラビア印刷機にセットし、ドクター圧0.2MPa、100m/分の印刷速度で厚さ15μmのコロナ放電処理延伸ガスバリア性ナイロンフィルム(MXD系フィルム)に印刷した。
【0042】
次に、得られた印刷物を用いて、版深度85μmの腐蝕版を備えたドライラミネーターで、印刷面にエーテル系ドライラミネート接着剤を約2g/m2塗布し、直鎖状低密度ポリエチレンと貼り合わせを行なった後、40℃で2日間エージングを行ない、積層物を得た。
【0043】
実施例1〜9および比較例1〜8で得られた酸素インジケーター組成物を、以下の通り性能評価した。
流動性、レベリング性;回転粘度計(BM型粘度計)を用いて25℃下における酸素インジケーターの粘度を測定した。また、得られた印刷物の以下の基準で目視評価した。
○ ;酸素インジケーター組成物の粘度が10〜500mPa・sの範囲にあり、印刷物泳ぎの発生が全くなかった。
○△;酸素インジケーター組成物の粘度が10〜1000mPa・sの範囲にあり、印刷物泳ぎの発生が全くなかった。
△ ;酸素インジケーター組成物の粘度が1000mPa・sを超え、印刷物泳ぎがやや発生した。
△×;酸素インジケーター組成物の粘度が1000mPa・sを超え、印刷物泳ぎが発生した。
× ;酸素インジケーター組成物の粘度が1000mPa・sを超え、著しい印刷物泳ぎが発生した。

溶解性、版かぶり性;印刷物を黒色の紙の上に貼り、余白部分(非画線部)に付着したインキの量を以下の基準で目視評価した。
○ ;非画像部にインキの転移が全く認められなかった。
○△;非画像部にインキの転移が僅かに認められた。
△ ;非画像部の小面積にインキの転移が認められた。
△×;非画像部の大面積にインキの転移が認められた。
× ;非画像部全面にインキの転移が認められた。

耐ブロッキング性;印刷フィルムの印刷面と非印刷面とを重ね合わせ、荷重20N/cm2、40℃、相対湿度80%の条件下で24時間保存した後に、剥離させて以下の基準で評価した。
○ ;剥離抵抗がなく、インキの転移も全く認められなかった。
○△;剥離抵抗はあったが、インキの転移は全く認められなかった。
△ ;一部分に小面積のインキ取られを生じた。
△×;ブロッキングが多くの箇所で発生した。
× ;ブロッキングが全面に発生した。

接着性;ニチバン社製粘着テープ(12mm幅)を印刷面に貼りつけ親指で5回強く擦った後、粘着テープを急激に引離してインキ皮膜の剥離程度を以下の基準で評価した。
○ ;印刷直後よりインキが全く剥離しなかった。
○△;印刷直後はインキが部分的に剥離したが、印刷1日後ではインキが全く剥離しなかった。
△ ;印刷直後はインキがほとんど剥離したが、印刷1日後ではインキが剥離しなかった。
△×;印刷1日後でもインキがやや剥離した。
× ;印刷1日後でもインキが完全に剥離した。

発色、色相変化;積層物を有酸素状態にて25℃、12時間保管後の酸素インジケーター組成物の発色を確認した。その後、積層物に脱酸素剤を封入して四方シールし、脱酸素状態にて25℃、12時間保管後の酸素インジケーター組成物の発色を確認した。次に積層物を再び有酸素状態に移し、25℃、12時間保管後の酸素インジケーター組成物の発色を確認した。有酸素状態→無酸素状態→有酸素状態のサイクルを5回繰り返した。
酸素インジケーター組成物の発色を以下の基準で評価した。
○ ;有酸素状態と脱酸素状態の色相の差が極めて大きく、容易に見分ける事ができた。
○△;有酸素状態と脱酸素状態の色相の差が大きく、見分ける事ができた。
△ ;見分ける事はできたが、有酸素状態と脱酸素状態の色相の差が小さかった。
△×;有酸素状態と脱酸素状態の色相の差が小さく、見分ける事が困難であった。
× ;有酸素状態と脱酸素状態の色相の差がなく、見分ける事が全く困難であった。

酸素インジケーター組成物の発色、色相変化を以下の基準で評価した。
○ ;5サイクル終了時でも完全な色相変化が確認できた。
○△;4サイクル終了までは完全な色相変化が確認できた。
△ ;2〜3サイクル終了までは完全な色相変化が確認できた。
△×;1サイクル終了までは完全な色相変化が確認できた。
× ;全く色相変化が起こらなかった。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸化還元色素であるメチレンブルーと、還元剤であるD−グルコースと、酸価が50〜300mgKOH/gであるとともにガラス転移点が10〜70℃であるアクリル系共重合体とからなることを特徴とする酸素インジケーター組成物。
【請求項2】
請求項1記載の酸素インジケーター組成物に、更に着色剤として不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、縮合多環系顔料の群から選択される少なくとも1種以上の赤系顔料を含有することを特徴とする酸素インジケーター組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の酸素インジケーター組成物が印刷により基材上に形成され、酸素インジケーター機能が包装材および/または脱酸素剤と一体となっていることを特徴とする酸素インジケーター。





【公開番号】特開2007−333620(P2007−333620A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167144(P2006−167144)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【出願人】(595122752)株式会社博洋 (1)
【出願人】(598083245)三共ポリエチレン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】