説明

酸素センサの製造方法

【課題】応答性に優れると共に、触媒の劣化診断をするにあたり、好適に利用できる酸素センサを製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】固体電解質体21の両面に、一対の電極としてPt被膜が被覆された酸素センサ素子11を備えた酸素センサ1の製造方法である。固体電解質体21の両面のうち、少なくとも被測定ガスに曝される側の表面に、閉気孔23aが内部に形成されたPt被膜23を被覆する工程と、被覆されたPt被膜23、24のうち少なくとも被測定ガスに曝される側に被覆されたPt被膜を、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で加熱する工程と、を少なくとも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pt被膜が被覆された酸素センサ素子を備えた酸素センサの製造方法に係り、特に、検出精度に優れた酸素センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酸素センサ(Oセンサ)は、酸素センサ素子を備えており、該酸素センサ素子は、ハウジング内に収納されている。例えば、有底円筒状(コップ状)の酸素センサ素子の場合には、酸素センサ素子は、酸素イオン伝導性を有したコップ状の固体電解質体と、該固体電解質体の内表面に設けられた内側電極と、固体電解質体の外表面に設けられた外側電極と、を備えたものが一般的に知られている。
【0003】
このような酸素センサ素子は、内側電極を大気と接触させて基準電極とする一方、外側電極を被測定ガス(排ガス)と接触させて測定電極とすることで、内燃機関の排ガス中の酸素濃度を測定するものである。
【0004】
近年、酸素センサ素子の性能を向上させるために外側電極について種々の検討がなされている。例えば、低温作動性・ガス応答性を改善するために、外側電極の電極材料結晶の平均粒径とその外側電極の膜厚を改良した酸素センサ素子が開示されている(例えば、特許文献1または2参照)。ここでは、酸素センサ素子を構成する固体電解質体は、安定化ジルコニアからなり、この固体電解質体の表面に、電極材料として白金(Pt)被膜が被覆されている。
【0005】
電極に用いられる白金被膜として、例えば、Ptサーメットからなる無孔質の被膜を、めっきにより固体電解質体の表面に被覆した酸素センサが提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、別の技術として、白金粒子を含むペーストを固体電解質体の表面に被覆して、これを熱処理した酸素センサが提案されている(例えば、特許文献4参照)。さらに、別の技術として、固体電解質体の表面に白金核を析出させ、この核に白金錯塩を含むめっき液を接触させることによりめっき被膜を被覆し、これを熱処理することにより開気孔を有する多孔質被膜とした酸素センサが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平8−20404号公報
【特許文献2】特開平1−85440号公報
【特許文献3】特開2000−105213号公報
【特許文献4】特開2002−228622号公報
【特許文献5】特開平09−264871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、酸素センサ素子の出力電圧は、ガス濃度によらずリッチ・リーンの雰囲気が切り替わるのに追従して迅速に変化することが望ましいが、上述したような従来の酸素センサ素子ではこの追従性(応答性)が十分であるとはいえない。特に、将来の排ガス規制、低燃費、および低コスト等の観点から応答性(特にリーンガスに対して)に優れた高感度・高精度の酸素センサ素子を備えた酸素センサを安定して供給することが望まれている。
【0008】
一般に、酸素センサは、被測定ガス雰囲気が変化したことを大気の酸素量を基準にして出力値として示す。ゆえに、被測定ガス側の電極を介して、固体電解質体の界面の酸素状態を速く変化させる能力が、酸素センサの出力電圧の追従性の良し悪しを決定する。ここで、高濃度ガス雰囲気下では、酸素状態が迅速に変化するため、上述した応答性は特に問題にならない。
【0009】
しかし、被測定ガスの低濃度ガス雰囲気下では、その酸素状態の変化に伴い、酸素センサ素子の反応時間が長くなる傾向にある。このため、被測定ガスの酸素濃度と酸素センサの出力電圧とに、一時的にズレが生じることがある。これにより、空燃比制御の制御性が悪くなり、この結果、内燃機関のエミッションが低下することがある。
【0010】
ところで、自動車の内燃機関の空燃比制御では、触媒の上流側に配置されたA/Fセンサの出力信号に基づき、触媒に流入する排気ガスの空燃比が目標空燃比(例えば理論空燃比)になるよう燃料噴射量がフィードバック制御されている。
【0011】
一方、酸素センサは、触媒の下流側に配置される。酸素センサは、理論空燃比(ストイキ)近傍で出力電圧が急変する特性を有しているので、酸素センサ素子の出力電圧に基づいてA/Fセンサの出力目標値を補正する制御を行い、A/Fセンサの劣化等による出力信号の誤差分を補正している。
【0012】
このようなフィードバック制御の実行により、吸気の空燃比が目標空燃比(例えば理論空燃比)となるようにインジェクタからの燃料噴射量が調整され、排気ガスのエミッションが改善される。
【0013】
ここで、上述したフィードバック制御を前提として、触媒の劣化診断制御(オンボードダイアグノーシス:OBD制御)をする場合、一般的に、Cmax法や軌跡長法などの手法が利用されている。これらの手法は、空燃比と、酸素センサの出力とで描かれるヒステリシスループを利用して、触媒中の酸素吸蔵量を推定し、その結果から触媒の劣化を診断している。したがって、酸素センサの特性には、ある程度の応答時間の余裕が必要となる。
【0014】
しかしながら、上述したように、エミッションの観点では、リーン/リッチ応答速度が共に速いことが最良となるが、このような場合には、空燃比と、酸素センサの出力とで描かれる曲線は、ヒステリシスループの無いZ状のカーブとなるため、OBD制御への適用は困難となる。
【0015】
本発明は、このような観点からなされたものであり、その目的とするところは、応答性に優れると共に、触媒の劣化診断をするにあたり、好適に利用できる酸素センサの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を鑑みて、発明者は、鋭意検討を重ねた結果、排ガス規制強化の観点から、リーンガスに対する応答性(リッチガスからリーンガスへの切り替わり時の応答性)をより速くし、リッチガスに対する応答性(リーンガスからリッチガスへの切り替わり時の応答性)は従来と同等あるいは遅延させるような(応答時間が従来に比べて、ある程度緩和されるような)センサ特性を有する酸素センサが望ましいと考えた。
【0017】
そして、このようなセンサ特性を有した酸素センサを用いて、リーンガスに対する応答性を高めることにより、内燃機関のエミッションおよび低燃費を向上させ、かつ、リッチガスに対する応答性を緩和することにより、触媒の劣化診断制御を精度良く行なうことができるとの新たな知見を得た。
【0018】
本発明は、この新たな知見に基づくものであり、固体電解質体の両面に、一対の電極としてPt被膜が被覆された酸素センサ素子を備えた酸素センサの製造方法であって、前記固体電解質体の両面のうち、少なくとも被測定ガスに曝される側の表面に、閉気孔が内部に形成されるようにPt被膜を被覆する工程と、該少なくとも被測定ガスに曝される側に被覆されたPt被膜を、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で加熱する工程と、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0019】
本発明により得られる酸素センサのセンサ素子の両面には、被覆工程において、一対の電極として、Pt被膜が被覆される。そして、少なくとも、被測定ガス(排ガス)が曝される側に被覆されたPt被膜の内部には、閉気孔が形成される。次に、加熱工程において、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で、被測定ガスに曝される側に被覆されたPt被膜を加熱するので、このPt被膜の表面から閉気孔の内部に向かって酸素ガスが浸透・拡散し、その後、閉気孔の内部には、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガスが充填され、さらに、閉気孔の周りには、白金原子に酸素原子が吸着すると考えられる。
【0020】
ここで、一般的に、リッチガス(HC,H,およびCOを含む排ガス)雰囲気下では、固体電解質体とPt被膜と排ガス中の酸素とが反応する三相界面における酸素濃度が、リーンガス(NOxを含む排ガス)雰囲気下よりも低い状態となる。そして、被測定ガスである排ガスが、リッチガス雰囲気下から、リーンガス雰囲気下に切り替わったとき、三相界面における酸素濃度が上昇する。
【0021】
そこで、本実施形態では、リッチガス雰囲気からリーンガス雰囲気に切り替わったときに、Pt被膜の閉気孔の内部およびその周りには酸素が存在するため、この閉気孔からの酸素により、迅速に三相界面の酸素濃度を高めることができる。これにより、リーンガスに対する応答性(感度)を高めることができる。このような結果、リーンガスに含まれるNOxをより迅速に検出することができる。これにより、リッチガスからリーンガスへの雰囲気の変化を早期にフィードバック制御することができ、内燃機関のミッションをより高めることができる。
【0022】
一方、一般的に、リーンガス雰囲気下では、三相界面における酸素濃度が、リッチガス雰囲気下よりも高い。そして、この状態から、リーンガス雰囲気からリッチガス雰囲気に切り替わったとき、三相界面における酸素が低下する。
【0023】
そこで、本実施形態では、リーンガス雰囲気からリッチガス雰囲気に切り替わったときに、Pt被膜の閉気孔の内部およびその周りに酸素(原子または分子)が存在するため、三相界面の酸素濃度が低下する前に、Pt被膜の閉気孔の内部およびその周りの酸素濃度が低下する。さらに、電極表面で、HCが酸化される。このように、Pt被膜の閉気孔の酸素が、三相界面における反応に対して、バッファ効果を発現する(酸素を含む閉気孔がバッファ相となる)。
【0024】
この結果、タイムラグが生じ、リッチガスに対する応答性を緩和させることができる。これにより、上述した応答性を高めたとしても、空燃比と、酸素センサの出力とで描かれるヒステリシスループが形成され、このヒステリシスループから、触媒の劣化診断(OBD)制御を精度良く行なうことができる。このようにして、触媒貴金属の劣化を適切に診断することができ、触媒貴金属のコストメリットを高めることができる。
【0025】
ここで、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下として、大気ガスよりも酸素ガスの分圧を高めたガス雰囲気、あるいは、大気ガスに、さらに酸化性の強いオゾンガスを共存させたガス雰囲気下などを挙げることができ、上述した加熱工程時に、Pt被膜の表面から閉気孔に向かって酸素を浸透・拡散することができるのであれば、そのガス雰囲気は、限定されるものではない。
【0026】
また、固体電解質体の表面に対するPt被膜の被覆方法としては、ペースト状のPt被膜を被覆する方法、PVDまたはCVDを利用してPt被膜を被覆する方法、もしくは、電解めっき、無電解めっき、または溶融めっきなどのめっきによりPt被膜を被覆する方法などの挙げることができ、固体電解質体の表面に、閉気孔が形成されたPt被膜を被覆することができるのであれば、特にその方法は限定されるものではない。
【0027】
しかしながら、より好ましい態様としては、前記被覆工程を、無電解白金めっきにより行い、該無電解白金めっきにおいてめっき液を非酸化性ガスでバブリングすることにより、前記閉気孔をPt被膜の内部に形成することがより好ましい。
【0028】
この態様によれば、たとえば、固体電解質体の形状が有底円筒状の形状など複雑な形状であっても、Pt被膜を容易に被覆することができる。さらに、非酸化性ガスでバブリングすることにより、成膜途中のPt被膜の表面に、非酸化性ガスの気泡が付着し、この状態でPt被膜が成膜されるので、Pt被膜の内部に閉気孔を容易に形成することができる。
【0029】
ここで、白金に対して酸化性を有しないガス(非酸化性ガス)としては、たとえば、水素ガス、窒素ガスなどのガス、または、ヘリウムガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを挙げることができる。なお、白金に対して酸化性を有するガスとして、酸素やオゾンを含むような酸化性ガスを用いた場合には、無電解めっきによりPt被膜を形成することができない。
【0030】
また、上述したように、閉気孔の内部に向かって酸素ガスが浸透し、その後、閉気孔の内部に、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガスを充填(封入)されるのであれば、その加熱条件は特に限定されるものではない。しかしながら、好ましい態様としては、前記加熱工程を、加熱温度1000℃〜1300℃の範囲内で、少なくとも加熱時間1時間以上の加熱条件で行う。
【0031】
この態様によれば、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で、この加熱条件で加熱する(白金被膜のエージング処理を行なう)ことにより、Pt被膜の結晶方位を(001)面に整列させることができる。
【0032】
すなわち、このようなエージング処理により、被測定ガスに曝される側の電極(Pt被膜)の結晶方位が変化し、その電極は、酸素の解離・吸着の有利な(001)面の割合が高まった電極構造となる。これにより、電極における酸素の解離・吸着がこれまでに比べて向上するので、この酸素センサ素子を内蔵した酸素センサは、排ガス中の極低濃度のリーンガスに対する反応性(感度)を向上させることができる。
【0033】
特に、無電解白金めっきにより形成されたPt被膜の結晶粒の結晶方位は、ランダムまたは[111]方向への成長が予測されるところ、このような方法でPt被膜を被覆した場合であっても、この加熱温度範囲における熱処理により、Pt被膜の結晶方位を、酸素の解離・吸着の有利な(001)面に容易に整列させることができる。
【0034】
このような結果、排ガスの雰囲気変化を早期にフィードバックでき、安定したエンジンシステム制御を実現でき、従来の酸素センサと比較して、内燃機関の低燃費および低エミッション化が可能となる。
【0035】
さらには、熱処理により電極および電極/固体電解質体の界面の構造が、なまされて、組織が安定化する。この結果、電極は活性状態で安定化する(センサ使用温度において状態変化し難くなる)ため、センサ特性の経時変化が従来のものに比べて低減される。
【0036】
ここで、加熱温度が1000℃未満の場合、または加熱時間が1時間未満の場合には、上述したPt被膜の整列される(001)面の割合が充分であると言えず、加熱温度が1300℃を超えた場合には、Pt凝集の進行により、電極の劣化を加速するおそれがある。
【0037】
より好ましい態様としては、前記加熱工程を、酸素ガスを50体積%以上含むガス雰囲気下で行なう。この態様によれば、加熱時間が1時間程度で、結晶方位が変化し、(001)面の割合が高まった電極構造を得ることができる。
【0038】
また、本願では、上述した特性を有する酸素センサをも開示する。本発明に係る酸素センサは、固体電解質体の両面に、一対の電極としてPt被膜が被覆された酸素センサ素子を備えた酸素センサであって、固体電解質体の両面のうち、少なくとも被測定ガスに曝される側の表面に形成されたPt被膜の内部には、閉気孔が形成されており、該閉気孔の内部には、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガスが充填されていることを特徴とする。
【0039】
本発明によれば、酸素センサ素子の被測定ガスに曝される側のPt被膜の内部には、閉気孔が形成され、この内部には、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガスが充填されているので、上述したように、リーンガス雰囲気下からリッチガス雰囲気下に切り替わったときに、Pt被膜の閉気孔が、三相界面における反応に対するバッファ相として作用する。この結果、リッチガスに対する応答性を緩和させて、触媒の劣化診断(OBD)制御を精度良く行なうことができる。
【0040】
一方、リッチガス雰囲気下からリーンガス雰囲気下に切り替わった場合には、リーンガスに対する応答性(感度)を高め、リッチガスからリーンガスへの雰囲気の変化を早期にフィードバック制御することができ、内燃機関のミッションをより高めることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、応答性に優れると共に、触媒の劣化診断をするにあたり、好適に利用できる酸素センサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係る酸素センサと該酸素センサに内蔵された酸素センサ素子の模式的断面図。
【図2】実施例、および比較例に係る透過型電子顕微鏡(TEM)による断面写真図であり、(a)は、実施例の断面写真図、(b)は、比較例の断面写真図。
【図3】参考例2と比較例に係る酸素センサ素子に形成された電極(Pt被膜)のEBSD解析の結果を示した図であり、(a)は参考例2、(b)は比較例の酸素センサ素子に形成された電極(Pt被膜)のEBSD解析の逆極点図。
【図4】実施例、参考例2、および比較例に係る酸素センサを実機に搭載したときのセンサ出力と排ガス量と関係を示した図。
【図5】実施例、比較例、および参考例1、2に係る酸素センサの低濃度リッチガスおよびリーンガスの応答時間の関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の本実施形態に係る酸素センサ(Oセンサ)の製造方法を実施形態について説明する。
【0044】
図1は、本実施形態に係る酸素センサと該酸素センサに内蔵された酸素センサ素子の模式的断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る酸素センサ1は、内燃機関の排気管に設置されるものであり、内燃機関の排ガス中の酸素濃度または未燃ガス濃度を検出し、該酸素濃度または未燃ガス濃度から内燃機関の燃焼室の空燃比を検出するものである。
【0045】
具体的には、酸素センサ1は、酸素センサ素子11を内蔵しており、酸素センサ素子11は、ハウジング10に挿通固定されている。酸素センサ素子11の先端側は、二重構造の被測定ガス用カバー12によって保護されている。また、被測定ガス用カバー12には、被測定ガス(排ガス)を導入する被測定ガス導入口12aが設けられている。これにより、後述する被測定ガス用カバー12内に配置される外側電極23に、被測定ガスを導入することができる。
【0046】
酸素センサ素子11は、例えば、有底円筒状(コップ状)の固体電解質体21と、該固体電解質体21の両面に一対の電極23、24とを、少なくとも備えている。酸素センサ素子11の電極は、酸素センサ1のハウジング10に取り付けたときに被測定ガス用カバー12内に位置する。
【0047】
より具体的には、ガスセンサ素子11の外表面には外側電極23となるPt被膜が被覆されており、外側電極23を覆う多孔質保護層(または拡散抵抗層)25がさらに、形成されている。
【0048】
一方、酸素センサ素子11には、大気を導入する大気室22が形成されており、固体電解質体21の内表面には、内側電極24が被覆されている。このようにして、この酸素センサ素子11は、上述した一対の電極23,24のうち外側電極23は被測定ガスに曝され、内側電極24は基準ガス(大気)に曝されるよう構成されている。
【0049】
なお、ここでは、酸素センサ素子として一般的に知られる、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を挙げることができるが、イオン伝導性を有し、耐熱性に優れた材料であれば特に限定されるものではない。さらに、後述するように、外側電極23の内部には、閉気孔23aが形成されており、閉気孔23aの内部には、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガスが充填(封入)されている。
【0050】
酸素センサ1を内燃機関の排気管に取り付ける。このとき、大気に曝された内側電極24が基準電極となって、排ガスに曝された外側電極23が測定電極となって、外側電極23と内側電極24との間で、酸素濃度の差により濃淡電池が形成され、このときの電極間の電位差(電圧)を測定することにより、酸素濃度を測定することができる。
【0051】
例えば、排ガスがリッチガスに変化した場合には、排ガスと大気ガスとの酸素濃度差が大きくなり、酸素センサの出力電圧が増加する。一方、排ガスがリーンに変化した場合には、排ガスと大気ガスとの酸素濃度差が小さくなり、酸素センサの出力電圧が減少する。
【0052】
上述した酸素センサ素子11の製造方法を以下に説明する。まず、大気室22が形成された有底筒状のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなる固体電解質体21を成形する。
【0053】
次に、水素ガスなどの非酸化性ガス雰囲気下で無電解白金めっき法により、固体電解質体21の外表面に、外側電極23として、内部に閉気孔23aが形成されるようにPt被膜を被覆する(被覆工程)。
【0054】
具体的には、ジニトロジアミン白金水溶液などの白金水溶液をめっき液とし、これを所定の液温まで加熱、還元剤等の添加剤を投入し、固体電解質体および/またはこれを把持した治具を揺動させずに、固体電解質体の外側表面に白金を析出させる。その後水洗・乾燥することで、膜厚1〜2μmの外側電極(Pt被膜)23が形成される。
【0055】
ここで、閉気孔23aを形成するための方法としては、従来では、これまでに成膜時に、固体電解質体および/またはこれを把持した治具を揺動させている場合には、この揺動を行なわないようにする。さらに、閉気孔23aを形成するための別の方法としては、めっき液中へのめっきを安定化させる安定化剤を減量または投入しない。
【0056】
また、外側電極(Pt被膜)23の内部に閉気孔23aを形成する別の条件としては、従来行なわれている成膜速度よりもより速い速度で、Pt被膜を成膜する。たとえば、従来の条件にくらべて、ジニトロジアミン白金水溶液の濃度を高めたり、そのpHを調整したり、めっき液の液温を高めたりする。
【0057】
このような方法により、成膜途中において、Pt被膜の表面に発生する水素ガスが脱離せず、水素ガスが気泡として残存するので、この状態で成膜されたPt被膜には、閉気孔23a(外気と連通することがない閉空間を形成した気孔)が形成され、その後の熱処理により、閉気孔23aに大気よりも酸素ガス濃度の高いガスを充填することができる。なお、閉気孔を有する結晶粒の形成、および、発生した水素ガスによる影響で、Pt被膜の厚みは若干厚くなる傾向にある。
【0058】
また、この他にも、無電解白金めっき液を水素ガスなどの非酸化性ガスでバブリングすることにより、閉気孔23aをPt被膜の内部に形成してもよい。非酸化性ガスでバブリングすることにより、成膜途中のPt被膜の表面に、非酸化性ガスの気泡が付着し、この状態でPt被膜が成膜されるので、Pt被膜の内部に閉気孔23aを容易に形成することができる。
【0059】
ここで、非酸化性ガスに水素ガスを用いることにより、水素ガスは分子量が小さいため、閉気孔23a内の水素ガスを放出する(後述する酸素ガスを含むガスに入れ替える)ことが容易にできる。
【0060】
次に、この外側電極23を大気雰囲気下で、所定の加熱温度(焼成温度)(1000〜1200℃)で1時間加熱し、外側電極23の白金の焼成を行う。次に、この外側電極23を保護するため、スピネル(MgAl)からなる多孔質保護層をプラズマ溶射法により形成する。
【0061】
さらに、固体電解質体(素子)の内表面を無電解白金めっき法で内側電極24を形成する。なお、Pt被膜からなる内側電極24は、外側電極23の被覆時に、固体電解質体21の内表面に被覆してもよく、別途、従来の如く、PVDまたはCVDなど一般的に知られた方法によって、被覆してもよい。
【0062】
次に、外側電極23および内側電極24が形成された酸素センサ素子11を、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で(好ましくは、酸素濃度50体積%以上の雰囲気、またはオゾンガスを含む雰囲気下で)、加熱する(加熱工程)。
【0063】
これにより、加熱工程において、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で、被測定ガスに曝される側に被覆されたPt被膜を加熱するので、このPt被膜の表面から閉気孔23aの内部に向かって酸素ガスが浸透・拡散する。さらに、その後、閉気孔23aの内部には、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス(浸透・拡散されたガス)が充填され、閉気孔23aの周りには、白金原子に酸素原子が吸着すると考えられる。
【0064】
ここでは、前述した外側電極23の焼成温度よりも高い所定の加熱温度(1100〜1300℃)で1時間以上加熱する(Pt被膜をエージングする)。これにより、少なくとも外側電極23のPt被膜の結晶方位を(001)面に整列させることができる。
【0065】
このような酸素センサ素子11を、図1に示すようにハウジング10に組み込んで、被測定ガス用カバー12を取り付けることにより、酸素センサ1を得ることができる。
【0066】
ここで、一般的に、リッチガス(HC,H,およびCOを含む排ガス)雰囲気下では、固体電解質体21と外側電極(Pt被膜)23と排ガス中の酸素とが反応する三相界面における酸素濃度が、リーンガス(NOxを含む排ガス)雰囲気下よりも低い状態となる。そして、リッチガス雰囲気下から、リーンガス雰囲気下に切り替わったとき、三相界面における酸素濃度が上昇する。
【0067】
本実施形態では、リーンガス雰囲気からリッチガス雰囲気に切り替わったときに、外側電極(Pt被膜)23の閉気孔23aの内部およびその周りに酸素(原子または分子)が存在するため、三相界面の酸素濃度が低下する前に、閉気孔23aの内部およびその周りの酸素が低下する。すなわち、酸素を含む閉気孔23aが、三相界面の反応に対するバッファ相として作用する。この結果、リッチガスに対する応答性を緩和させて、触媒の劣化診断(OBD)制御を精度良く行なうことができる。これにより、触媒貴金属の劣化を適切に診断することができ、触媒貴金属のコストメリットを高めることができる。
【0068】
一方、リッチガスからリーンガスに切り替わった場合には、外側電極(Pt被膜)23の閉気孔23aの内部およびその周りに酸素を有するため、より迅速に、三相界面の酸素ガスの濃度を高めることができる。これにより、リーンガスに対する応答性(感度)を高めることができる。このような結果、リーンガスに含まれるNOxをより迅速に検出することができる。これにより、リッチガスからリーンガスへの雰囲気の変化を早期にフィードバック制御することができ、内燃機関のミッションをより高めることができる。
【0069】
さらに、無電解めっきによって、イットリア安定化ジルコニアなどの多結晶セラミックスへ外側電極(Pt被膜)23を被覆した場合、Pt被膜の結晶粒の結晶方位はランダムまたは[111]方向への成長が予測される。しかしながら、上述した加熱温度の範囲内において、外側電極(Pt被膜)23を加熱するので、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で高温熱処理される。この結果、外側電極(Pt被膜)23の結晶方位が変化し、酸素の解離・吸着の有利な(001)面の割合が高まった電極構造となる。
【0070】
また、無電解白金めっきにより形成された外側電極(Pt被膜)23は、微細なPt粒子群により形成されるため、上述したエージング処理条件で溶融し、その後、再結晶化するので、Pt被膜の結晶方位を(001)面に整列させ易い。
【0071】
このようにして得られた酸素センサは、排ガス中の極低濃度のリーンガスに対する反応性(感度)をさらに向上させることができるので、排ガス中の雰囲気変化を早期にフィードバックでき、安定したエンジンシステム制御を実現できる。これにより、従来の酸素センサと比較して内燃機関の低燃費および低エミッション化が可能となる。
【0072】
また外側電極(Pt被膜)23のエージングにより、外側電極23および外側電極23/固体電解質体21の界面の構造がなまされ組織が安定化する。この結果、外側電極23は活性状態で安定化する(センサ使用温度において状態変化し難くなる)ため、センサ特性の経時変化が従来のものに比べて低減される。
【実施例】
【0073】
(実施例)
以下に示すようにして、酸素センサを製作した。具体的には、有底筒状のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)(酸化イットリウム5mol%)からなる固体電解質体を成形した。次に、固体電解質体の外表面に無電解白金めっきにより、Pt被膜からなる外側電極を被覆した。具体的には、ジニトロジアミン白金の水溶液(2g/l)をめっき液とし、めっき液を50℃まで加熱した。次に、めっき液に、還元剤として、80質量%ヒドラジン水溶液4g/l、安定化剤、アンモニア水pH11〜12の範囲に調整し、固体電解質体を把持した治具を揺動させずに、固体電解質体の外側表面に白金を析出させた。なお、ここでは、治具を揺動させなかった。その後、水洗・乾燥することで、膜厚2μmの外側電極(Pt被膜)を形成した。この外側電極を大気雰囲気下で、1000℃で1時間、ヒータで加熱し、Ptの焼成を行った。
【0074】
さらに、この外側電極に、スピネル(MgAl)からなる多孔質保護層をプラズマ溶射法により、厚さ200μm形成した。さらに、外側電極の形成と同じ方法(無電解白金めっき法)で、固体電解質体(素子)の内表面に内側電極を形成した。
【0075】
外側電極および内側電極が形成された酸素センサ素子を窒素ガスに酸素濃度50体積%を混合したガス(大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス)雰囲気下で、加熱温度1100℃で1時間、ヒータで加熱した(エージング処理をした)。このようにして得られた酸素センサ素子をハウジングに組み込み、酸素センサを得た。
【0076】
(比較例)
実施例と同じように、酸素センサを作製した。実施例と相違する点は、外側電極を被覆時に、揺動速度(1〜2回/秒)となるように固体電解質体を把持した治具を揺動した点と、外側電極および内側電極が形成された酸素センサ素子に対して上述したエージング処理を行っていない点である。
【0077】
(参考例1)
実施例と同じように、酸素センサを作製した。実施例と相違する点は、外側電極および内側電極が形成された酸素センサ素子に対して上述したエージング処理を行っていない点である。参考例1の場合には、外側電極を被覆時に、固体電解質体を把持した治具を揺動していない。
【0078】
(参考例2)
実施例と同じように、酸素センサを作製した。実施例と相違する点は、外側電極を被覆時に、揺動速度(1〜2回/秒)となるように固体電解質体を把持した治具を揺動した点である。参考例2の場合には、外側電極および内側電極が形成された酸素センサ素子に対して上述したエージング処理を行なっている。
【0079】
<Pt被膜の断面観察>
透過型電子顕微鏡(TEM)によるにより、実施例、および比較例に係る外側電極(Pt被膜)の断面を観察した。図2は、その断面の写真図であり、(a)は、実施例の断面写真図、(b)は、比較例の断面写真図である。
【0080】
<Pt被膜の方位の測定>
電子後方散乱回折像解析(EBSD法)により、参考例2の外側電極のPt被膜、および比較例の外側電極のPt被膜に電子線を照射し、この時に発生する電子後方散乱回折パターンを捕らえ、これにより、電子線の照射領域の結晶方位を測定した。図3は、参考例2と比較例に係る酸素センサ素子に形成された電極(Pt被膜)のEBSD解析の結果を示した図であり、(a)は参考例2、(b)は比較例の酸素センサ素子に形成された電極(Pt被膜)のEBSD解析の逆極点図である。
【0081】
<性能評価1>
実施例、参考例2、および比較例に係る酸素センサを内燃機関(実機)の搭載し、A/F14.6(ストイキ)近傍でガス環境がリッチからリーンになるよう実機ベンチを徐変(スイープ)制御し、Nox濃度と、そのときの各酸素センサの出力とを測定した。この結果を図4に示す。
【0082】
<性能評価2>
実施例、比較例、および参考例1、2に係る酸素センサを内燃機関(実機)の搭載し、A/F14.6(ストイキ)近傍でガス環境がリッチからリーンになるよう実機を徐変(スイープ)制御し、リッチからリーンに変わる過渡期における、低濃度状態のリッチガスとなる時間(低濃度リーンガス応答時間)を測定した。
【0083】
一方、A/F14.6(ストイキ)近傍でガス環境がリーンからリッチになるよう、実機を徐変(スイープ)制御し、リーンからリッチに変わる過渡期における、低濃度状態のリッチガスとなる時間(低濃度リッチガス応答時間)を測定した。
【0084】
この結果を図5に示す。図5は、実施例、比較例、および参考例1、2に係る酸素センサの低濃度リッチガスおよび低濃度リーンガスの応答時間の関係を示した図である。
【0085】
[結果1および考察1]
図2(a)に示すように、実施例の外側電極に相当する実施例のPt被膜には、複数の閉気孔が形成されており、図2(b)に示すように、比較例の外側電極に相当するPt被膜には、閉気孔が形成されていなかった。
【0086】
実施例の場合には、被覆工程において、固体電解質体を揺動させずに、外側表面に白金を析出させたので、Pt被膜には、複数の閉気孔が形成されたと考えられる。さらに、実施例の場合には、加熱工程において、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で、被測定ガスに曝される側に被覆されたPt被膜を加熱するので、このPt被膜の表面から閉気孔の内部に向かって酸素ガスが浸透・拡散し、その後、閉気孔の内部には、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガスが充填され、さらに、閉気孔の周りには、白金原子に酸素原子が、吸着すると考えられる。
【0087】
また、同様に、参考例1に係る白金被膜(外部電極)にも、閉気孔が形成されたと考えられる。しかし、参考例1の場合には、高酸素濃度雰囲気下で熱処理を行なっていないため、この閉気孔には、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガスは充填されていないと考えられる。また、参考例2に係る白金被膜(外部電極)には、閉気孔は形成されていないと考えられる。
【0088】
[結果2および考察2]
図3(a),(b)のA部に示すように、参考例2の酸素センサのPt被膜(図3(a))は、比較例のもの(図3(b))に比べて、Pt被膜の(001)面の割合が高かった。また、比較例の酸素センサのPt被膜は、参考例2のPt被膜に比べて、図3(b)のB部に示すように(111)面の割合が高かった。
【0089】
Ptのようなf.c.c.の結晶構造となる金属は(111)面の表面エネルギーが低く、[111]方向に成長することが予測される。従って、比較例の酸素センサの電極のように、もともと[111]方向あるいはランダムにPt粒子が成長していたが、参考例2の如く、酸素ガスに曝されたPt粒子の結晶方位は、酸素の解離・吸着にエネルギー的に有利な(001)面の割合が高まるように変化し、これにより、図3(a)に示すように、逆極点図に示すような電極構造となったと推測される。
【0090】
そして、同様の加熱条件でエージング処理を行なった実施例のものも同様に、Pt被膜の(001)面の割合が高まっていると考えられる。また、Pt被膜のエージング時の加熱温度では、オゾンガスが酸素ガスに分解されることから、例えば、オゾンガスの分解時に大気ガスよりも高い酸素ガス濃度となるように、エージング前にオゾンガスを導入しても、実施例の如き結果となることが想定される。
【0091】
[結果3および考察3]
図4に示すように、NOxの変化に対して、実施例、参考例2、比較例の順に酸素センサの応答性が高くなった。この結果から、加熱工程(エージング処理)によりPt被膜(外側電極)の結晶方位が(001)に配列されたことがその一因で、実施例および参考例2の酸素センサは、比較例のものに比べて、NOxの変化に対して酸素センサの応答性が高くなったと考えられる。
【0092】
さらに、実施例のPt被膜(外側電極)に、その内部に酸素を含む閉気孔を形成したことにより、実施例の酸素センサは、参考例2のものに比べて、NOxの変化に対して酸素センサの応答性が高くなったと考えられる。
【0093】
[結果4および考察4]
図5に示すように、実施例の酸素センサは、比較例、参考例1、および参考例2のものに比べて、リッチガス応答時間が同等または遅くなり、リーンガス応答時間が向上した。参考例1の酸素センサは、比較例のものに比べて、リーンガス応答時間が向上した。
【0094】
考察3に示したように、実施例のPt被膜(外側電極)に、その内部に酸素を含む閉気孔を形成したことにより、実施例の酸素センサは、参考例2のものに比べて、リッチガスからリーンガスへの雰囲気の変化に対する酸素センサの応答性が高くなり、さらに、図5から、リーンガスからリッチガスへの雰囲気の変化に対する酸素センサの応答性を緩やかにすることができる。
【0095】
そして、比較例と参考例1との結果からしても、内部に酸素を含まない閉気孔を形成した場合であっても、リッチガスからリーンガスへの雰囲気の変化に対する酸素センサの応答性が高くなることは明らかである。従って、内部に酸素を含む閉気孔を設けた場合には、たとえ、Pt被膜(外側電極)にエージング処理を行なわなかったとしても、比較例の酸素センサよりも、リッチガスからリーンガスへの雰囲気の変化に対する応答性が高め、さらに、リーンガスからリッチガスへの雰囲気の変化に対する酸素センサの応答性を緩慢にすることができると考えられる。
【0096】
そして、実施例および参考例2の如く、エージング処理を行なうことにより、Pt被膜は、酸素の解離・吸着にエネルギー的に有利な(001)面の割合が高まるように変化するので、リッチガスからリーンガスへの雰囲気の変化に対する応答性が高めることができると考えられる。
【0097】
以上、本発明の実施の形態を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1…酸素センサ,11…酸素センサ素子,12…被測定ガス用カバー,12a…被測定ガス導入口,21…固体電解質体,22…大気室,23…外側電極(Pt被膜)23a:閉気孔,24…内側電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質体の両面に、一対の電極としてPt被膜が被覆された酸素センサ素子を備えた酸素センサの製造方法であって、
前記固体電解質体の両面のうち、少なくとも被測定ガスに曝される側の表面に、閉気孔が内部に形成されるようにPt被膜を被覆する工程と、
該少なくとも被測定ガスに曝される側に被覆されたPt被膜を、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガス雰囲気下で加熱する工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする酸素センサの製造方法。
【請求項2】
前記被覆工程を、無電解白金めっきにより行い、
該無電解白金めっきにおいてめっき液を非酸化性ガスでバブリングすることにより、前記閉気孔をPt被膜の内部に形成することを特徴とする請求項1のいずれかに記載の酸素センサの製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程を、加熱温度1000℃〜1300℃の範囲内で、少なくとも加熱時間1時間以上の加熱条件で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の酸素センサの製造方法。
【請求項4】
固体電解質体の両面に、一対の電極としてPt被膜が被覆された酸素センサ素子を備えた酸素センサであって、
前記固体電解質体の両面のうち、少なくとも被測定ガスに曝される側の表面に形成されたPt被膜の内部には、閉気孔が形成されており、
該閉気孔の内部には、大気ガスよりも酸素ガス濃度が高いガスが充填されていることを特徴とする酸素センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36929(P2013−36929A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175060(P2011−175060)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】