説明

酸素含有種を除去するためのモノテルペンの選択的精製

【課題】モノテルペンから酸素含有不純物化合物を分離することにより、電子デバイスにおける多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積物のためのポロゲンとしてモノテルペンを調製する方法を提供する。
【解決手段】酸素含有不純物化合物を含む無希釈のモノテルペンを用意する工程;活性化シリカゲルの分取クロマトカラムを用意する工程;酸素含有不純物化合物を含む無希釈のモノテルペンを当該カラムと接触させる接触工程;酸素含有不純物化合物を当該カラム上に保持する工程;及び当該カラムから酸素含有不純物化合物の減少した無希釈のモノテルペンを回収する工程を含む方法によって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
集積回路に関する構成の電子材料において使用するために高純度のモノテルペン(α−テルピネン及びd−リモネン)を製造することは、エレクトロニクス製造産業の非常に高純度の要件と操作デバイスを有するのに必要な材料の電気的性質のために問題を含んでいる。例としてのα−テルピネンは、木材チップから抽出され、その最も高い純度、約90%(本明細書では%はすべてvol%である)で商業的に入手可能である。最も高い入手可能な純度で、それは依然として4つの主な不純物を含有し、ユーカリプトール(1,8−シネオール)が1〜5%に及ぶ。不純物を除去するための従来の方法、例えば、蒸留は、所望の製品及びすべての不純物の沸点が類似している(175〜176℃)ため効果的ではない。
【0002】
Scheffer,J.J.C;「Improved Gas Chromatographic Analysis of Naturally Occuring Oxygen containing Monoterpenes Following Prefractionation by Liquid−Solid Chromotography」;Chromatographia(11/1977),10(11),699−677(非特許文献1)では、キャリヤー溶媒、例えば、エタノールとペンタンをある勾配で用いて、異なる酸素化モノテルペンを不活性化シリカゲルカラムに通して分離しており、当該シリカゲルは、その不活性化状態を維持するために水を含有し、酸素化モノテルペンを異性化しない。製品は溶離溶媒から分離されなければならず、また、シリカゲルは製品を異性化しないよう不活性化されなければならない。
【0003】
英国特許第194286号明細書(特許文献1)は、精油及びテルペン炭化水素を、存在する不純物と反応する好適な材料によって処理し、次いで、「凝集剤」を添加して、最後に固体物質を除去することにより精製することを開示している。不純物に作用させるための試剤として、「活性な」ハロゲン化合物、例えば、アルカリ又はアルカリ土類の次亜塩素酸塩が挙げられ、フラー土、シリカゲル、骨炭、又は他の脱色用木炭が「凝集剤」の例として与えられ、一方で、具体的な出発材料は、コパイバ油、もみの木の球形の実、ショウガ、トショウ、コショウ、マツ、ヒマラヤスギ及びペパーミント、並びにピネン、ジペンテン、リモネン及びイソプレンである。このプロセスは、分離プロセスにおいて水を使用し、匂いの原因となる硫黄含有化合物を反応させた後、反応化合物をシリカゲルなどの材料上に凝集させ、所望のテルペンチン製品を機械的に分離する。
【特許文献1】英国特許第194286号明細書
【非特許文献1】Scheffer,J.J.C;「Improved Gas Chromatographic Analysis of Naturally Occuring Oxygen containing Monoterpenes Following Prefractionation by Liquid−Solid Chromotography」;Chromatographia(11/1977),10(11),699−677
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、酸素含有不純物化合物からモノテルペンを精製する際の従来技術の不備を、以下により詳細に記載するように、無希釈の製品を回収するのに追加の化学試薬又は溶離溶媒を使用する要件なしで、かつ電子材料の用途においてこのような酸素含有不純物化合物の特定の損害を認めることなく克服する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、モノテルペンから酸素含有不純物化合物を分離することにより、電子デバイスにおける多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積物のためのポロゲンとしてモノテルペンを調製する方法であって、
酸素含有不純物化合物を含む無希釈のモノテルペンを用意する工程;
活性化シリカゲルの分取クロマトカラムを用意する工程;
酸素含有不純物化合物を含む無希釈のモノテルペンを当該カラムと接触させる接触工程;
酸素含有不純物化合物を当該カラム上に保持する工程;及び
当該カラムから酸素含有不純物化合物の減少した無希釈のモノテルペンを回収する工程
を含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、好ましくはC1016のモノテルペンを精製するために開発された新規プロセスであり、当該モノテルペンは、電子デバイス製作のための集積回路の製造に関して、酸化ケイ素前駆体、例えば、ジエトキシメチルシラン(DEMS)を用いた多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積プロセスにおけるポロゲンとして有用である。
【0007】
一般的に用いられる2つのポロゲンは、α−テルピネンとd−リモネンである。両方のポロゲン種は、天然物、それぞれ木材チップと柑橘類の皮から抽出され、様々な含量の複数の不純物を含有している。商業的に入手可能なこれら材料のグレードは、主な利用が風味及び芳香製品に関するものである場合に典型的な半導体前駆体と比べて一般にかなり劣る。α−テルピネンの純度は、市場の最も高い品質の材料に関して90〜95%を変動し、4つの主な不純物、即ち、α−フェランドレン(C1016)、d−リモネン(C1016)、パラ−シメン(C1014)及び1,8−シネオール(ユーカリプトール)又は場合により1,4−シネオールを含有する。
【0008】
本発明に関して望ましいモノテルペンは、電子デバイスの製造、例えば、集積回路の製作のための誘電体膜の堆積の際に及び成膜後処理の際にシリコンマトリックスとともに細孔発生剤として用いられ、ポロゲン成分が除去される。1,8−シネオール又は場合により1,4−シネオールを除く上に挙げたすべての不純物は、α−テルピネンの代替物として作用し、同様の細孔サイズ及び分布を維持する。
【0009】
ユーカリプトール、エーテル架橋された酸素種、C1018Oは、ポロゲン材料中の他の不純物とは構造的に異なり、不純物の様々な含量によって酸化ケイ素誘電体膜中に異なる細孔サイズ及び分布を作り出す。すべての成分は同じ沸点(175〜176℃)を有し、蒸留によって分離することができない。ミカン皮から抽出されるD−リモネンもまた、幾つかの酸素含有種、例えば、リナロール(C1018O)及びオクタナール(C816O)を含有し、これらの酸素含有種は、電子デバイス用途のためのDEMS誘電体膜堆積プロセスに関して効果を有する。不純物を除去する効果を評価するために様々な媒体を用いて試験を行った。活性化シリカゲル上に無希釈のモノテルペンの供給原料を通すことにより、明確な破過の前に、それらすべてが上記のポロゲンとして有用である他のテルペンの濃度に作用することなく、1つ又は複数の酸素含有種が選択的に保持されることを思いがけず見出した。1つ又は複数の酸素含有種の明確な破過の思いもよらない発見によって、商業規模の分離、分離の工学的なスケールアップ、及びモノテルペンの商業生産のための所望の特性が、所望のモノテルペンの過度の損失なしで提供される。さもなければ所望のモノテルペンの収量は不利に影響を受けるであろう。
【0010】
例えば、電子デバイス製作における電子材料の製造に関するDEMSを用いた化学気相成長(CVD)多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積プロセスにおいてポロゲンとして使用するための高純度モノテルペン(α−テルピネン及びd−リモネン)を製造するために、本発明者は、これらのモノテルペンを精製する方法としてクロマトグラフ精製を評価した。
【0011】
例としてのα−テルピネンは、木材チップから抽出され、その最も高い純度、約90%で商業的に入手可能である。最も高い入手可能な純度で、それは依然として4つの主な不純物を含有し、1,8−シネオールが1〜5%に及ぶ。不純物を除去するための従来の方法、例えば、蒸留は、所望の製品及びすべての不純物の沸点が類似している(175〜176℃)ため効果的ではない。
【0012】
活性化シリカゲルを用いることにより、酸素含有不純物化合物、例えば、ユーカリプトールから酸素を含有しない種を効率的に分離することができる。例として、媒体評価試験の際、活性化シリカゲルにより、活性化シリカゲルカラムで処理されたα−テルピネンにおいて1,8−シネオールの含量を3.45%から約0.024%に低減することができた。
【0013】
この選択的な精製に関して提案されるメカニズムは、任意の特定の理論に束縛されることを望むものではないが、モノテルペン中に酸素含有不純物化合物として見出される架橋された酸素種が活性化シリカゲルの−SiOH末端基の水素結合に対して感受性が高いというものである。活性化シリカゲルはまた、蒸気蒸留から残ったモノテルペン蒸気中の自由水を除去するための高い親和性を示す。シリカゲル上の末端ヒドロキシル基は、酸素含有不純物化合物の予想外に明確な破過が活性化シリカゲルのカラムから生じる前に、酸素を含有しない所望のテルペンに比べて優先的に、極性分子、例えば、自由水及び酸素含有不純物化合物を保持する。
【0014】
酸素含有不純物化合物種を保持する力は比較的弱いので、低分子量のアルコールによって再生の際に置換することが容易であるが、精製運転の際、シリカゲル媒体からの有意な「脱着」なしで酸素含有不純物化合物を保持できるほど十分強い。
【0015】
酸素含有不純物化合物、ユーカリプトールの破過がシリカゲルカラムの流出液中に検出される場合には、シリカゲルカラムは、まず、シリカゲルカラムから液体を排出し、次いで、低分子量のアルコール、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノールを逆流方向(モノテルペンのフィード流に対して向流)に流し、結合した酸素含有不純物化合物材料を置換することによって再生される。アルコールの蒸気圧は、テルペンと比べてかなり高く、真空下で追い出すことができる。次の精製運転のために活性化シリカゲルのSi−OH末端基が高温により再活性化される。
【0016】
ユーカリプトールは、その構造的な相違のためにα−テルピネンにおいて望ましくない不純物である。電子デバイスの製作のための電子材料の製造においてDEMSから多孔質誘電体膜をプラズマ増強化学気相成長(PECVD)する際、ユーカリプトール中のエーテル酸素は切断され、ケイ素源(DEMS)と結合して強いSi−O結合を形成する。テルペンの目的は、多孔質誘電体膜における細孔発生剤としてのものであり、次いで、後処理プロセスの際に細孔が形成した後膜から除去されるべきものであるので、DEMSとユーカリプトールの間のSi−O−C結合の形成によって細孔がふさがれ、ポロゲンがシリコンマトリックスと一体化して除去することができない。これは、保持される炭素が増加し、細孔分布が変化するとともに膜の誘電率に直接的に不利に作用する。
【0017】
α−テルピネンが天然物である場合には、ユーカリプトールの含量は用いられる木材供給原料に応じて変化する。ユーカリプトールの含量が予測できないと、使用されるα−テルピネンの各バッチがユーカリプトールの含量に基づいて異なる量の「ふさがれた」細孔と変動量の炭素を含む場合に、集積回路又は電子材料の製作者のための再現性のある多孔質誘電体膜製造プロセスが妨げられる。この変動の度合いは、極めて厳しい寸法並びに前駆体材料の厳密な物理的及び電気的性質で以って操作される電子デバイス製作産業の厳しい要件にとって許容できないほど大きい。テルペンフィード中のユーカリプトールと他の酸素含有不純物化合物の含量を有意に低減することにより、整合した誘電体膜の結果とともにより定義可能な電子デバイス製作プロセスが可能となる。
【0018】
本発明の精製プロセスの好ましい実施態様は、以下のとおり図1を参照して例示される。即ち、ステンレス鋼のカラム52がDavisilシリカゲルで充填され、加熱真空サイクルのもとで再生されて表面結合水が除去される。カラム52は室温に冷却することができる。このシステムは、システムをベントするために圧力押しとして操作され、圧力降下がバルブ28で生じる。酸素含有不純物化合物を含む無希釈のモノテルペン(α−テルピネン又はd−リモネン)が、大気よりも高い圧力によって供給源容器60からカラム52中を押し上げられ、不活性なプッシュガス源66からの100psigにされる。酸素含有不純物化合物の減少したテルペン製品が、バルブ22、ライン24を介して取り出され、フィルター26を介して濾過され、流量がバルブ28、ライン30、バルブ32及び38を介して調整され、ディップチューブ44を介してテルペンを受け入れる精製テルペン製品容器40に捕集され、圧力はバルブ46を介してベントに解放される。テルペン製品は、電子デバイス製作における電子材料製造のための多孔質誘電体膜堆積プロセスにおいてポロゲンとして使用するため顧客使用容器にバルブ34を介して流し出すことができる。製造は、はかり42と圧力ゲージ50によって監視することができる。圧力はバルブ48によって部分的に調節することができる。カラム52の上部(製品又は下流端)から捕集された材料は、酸素含有不純物化合物の不純物レベルが上昇(破過)し始めるときを監視するために、サンプルバルブ34及びサンプルライン36を介して定期的にサンプリングされる。その場合には捕集が停止される。カラム52中の液体は、それが高レベルの不純物を含有する場合には、バルブ54を介し、バルブ74及びディップチューブ70を介して別のモノテルペン捕集容器68(カラムドレーン)に排出される。これは、システムを介した更なる処理のためにバルブ74を介して定期的に取り出すことができる。容器68は、必要であればバルブ72を介してベントすることができる。カラムの上部より(テルペン流の逆方向又は向流)、アルコール源容器14から無希釈のアルコールが、バルブ12を介して不活性なプッシュガス源10によってディップチューブ16及びバルブ18に投与され、それをライン20及びバルブ22を介してカラム52へテルペンの生成流に対して向流に通過させ、酸素含有不純物化合物をカラムからバルブ54、ライン76、バルブ78及びディップチューブ82を介して酸素含有不純物化合物の受け入れ容器80に移動させる。容器80は、バルブ84を介してベントすることができる。望ましい場合には、純粋なアルコールを通常の蒸留技術によってフラッシュ容器80から回収して、更なる使用のため容器14を補充することができる。アルコールの蒸気圧はテルペンと比べてかなり高いので、カラム52は、真空下で容易に再生及び加熱してアルコールを追い出すことができる。冷却後、カラム52は次の運転のために準備される。
【0019】
活性化シリカゲルは、選択種の水素結合に有効な末端ヒドロキシル基を有する。この末端基は、酸素を含有しないテルペンに比べて優先的に、極性分子、例えば、自由水及び酸素含有種を保持する。酸素含有種を保持する力は比較的弱いので、低分子量でかつより極性の高いアルコールによって再生の際に置換することが容易であるが、精製運転の際、有意な脱着なしで酸素テルペンをゲルに保持できるほど十分強い。
【0020】
シリカゲルは、表面に末端ヒドロキシル基を含有する。これらの基は親水性であり、極性分子と結合する傾向がある。この作用によって、水素結合種、酸素架橋種は、原料がカラムを通過する場合にモノテルペンから選択的に除去される。ユーカリプトールは、媒体が飽和して不純物が流出液中に破過するまで物質移動領域(シリカゲルが充填されたカラム)から除去され続ける。シリカゲルはまた、製品中のわずかな水分(蒸気蒸留からの残留物)に対しても強い親和性を有し、500ppmレベルの自由水を40ppmより低いレベルまで除去することができる。
【0021】
不純物は媒体に対して強い親和性を有するので、別の極性分子を用いて媒体から不純物が脱着される。この場合には、低分子量のアルコール、エタノール又はイソプロパノールが用いられる。その場合、この溶媒は真空及び加熱下でカラムから容易に取り除かれ、床が再生され、再び、結合していない末端ヒドロキシル基を残して、次の精製運転のために準備される。
【0022】
例えば、シリカゲルカラムを通過する、出発の割合がユーカリプトール2.36%のα−テルピネンは、その含量をガスクロマトグラフの炎イオン化検出器(FID)による検出限界よりも低いレベルまで低減することができる。927cm3のシリカゲルを充填したカラムは、回収したテルペン留分中にユーカリプトールがないα−テルピネン5kgを精製することができる。ユーカリプトール2.4%に関するフィード材料とゲルの質量比は、ユーカリプトールを0.05%未満に低減するには6.6:1であり、ユーカリプトールを0%にするには4:1である。システムを通るフィードの流量は100g/分であった。
【0023】
要約すると、モノテルペンは天然由来の製品であり、したがって、幾つかの類似した構造の不純物を含有している。例としての典型的な高純度商品市場のα−テルピネンは、90%のα−テルピネンであり、5つの不純物すべて、即ち、α−フェランドレン、パラ−シメン、d−リモネン、1,8−シネオール及び3−カレンが同じ沸点を有する。沸点が同じであるので、典型的な精製法、例えば、分別蒸留は不純物を分離するのに効果的ではない。この純度レベルは、これらの製品が主として用いられる風味及び芳香の用途に関しては十分であるが、半導体市場に関しては十分高い純度ではない。不純物を除去する他の方法は、共沸混合物の形成又は他の錯体、沈殿及び次いで更なる蒸留を必要とする。本プロセスは、溶媒なしで、また、酸素種を除去するのに沈殿、濾過及び蒸留なしで無希釈のテルペンを用いることができる。
【0024】
室温におけるテルペンのクロマトグラフィにより、酸素含有不純物化合物を液相から選択的に除去することができる。本発明は、最終製品に対する有意な純度の改善を可能とし、典型的なα−テルピネンの純度がカラム精製後に97%を超え、他の不純物が類似のポロゲン・プレースホルダーとして作用する。本プロセスの利点は、キャリヤー溶媒の使用又は逆位相溶媒の必要なしでモノテルペンが無希釈で精製されるということである。酸素含有不純物化合物を除去することにより、ポロゲンがプラズマ堆積プロセスの際にシリコンマトリックス中に混入される可能性が有意に低減され、ふさがれた細孔の数と伴出される炭素の量が低減される。
【0025】
図2のグラフは、製品テルペンの出発の割合に対して最小の変化で以って、ユーカリプトールの酸素含有不純物化合物を劇的に選択的に除去することにおいて本発明の予想外の結果を示している。このグラフはユーカリプトールの明確な破過を示し、それによって本発明の分離プロセスの操作が便利でかつ商業的規模で操作可能なものになり、所望のモノテルペンの製造はシリカゲルのカラム充填物によって影響されず、一方で、酸素含有不純物化合物は、アルコールによるカラムの再生時間までシリカゲルのカラム充填物によって効果的に束縛される。従来技術では、集積回路の多孔質酸化ケイ素誘電体膜における細孔形成剤などの電子材料用途の厳しい要件のためのモノテルペンの十分な規模の商業生産に関して非常に高い純度、操作の容易さ、及び容易に計画される再生を提供するために、酸素含有不純物化合物、例えば、ユーカリプトールから酸素を含有しない製品のモノテルペンを有意に区別して通過させることを示唆も報告もしていない。ここでは、均一な細孔サイズ分布及び細孔密度の均一性が、集積回路用途のための誘電体膜の成功にとって重要である。
【0026】
図3は1つの精製試験の結果を詳述している。95.7%の出発純度を有するα−テルピネンが、不活性ガス圧力7psig及び流量100g/分によって再生カラムに通された。先の試験材料の初期流出液がフィルターから出て、最初の0.1kgが捕集された後、プロセスが安定化している。α−テルピネンの純度は、フィード流からユーカリプトールを除去するとともに上昇する。全体的なα−テルピネンの純度は98.1%まで上昇した。さらに、図2の場合と同様に、意外にも、ユーカリプトールの破過が明確であり、それにより、明確な破過が生じるまでユーカリプトールによる純度の低下なくシリカゲルクロマトカラムの十分な使用にわたって、モノテルペン、例えば、α−テルピネンを精製する商業的な規模での正確な処理が可能となる。ユーカリプトールの破過が検出されると、プロセスは停止される。ユーカリプトールが2.35%の処理フィード材料とシリカゲルの質量比はこの試験に関して5.15:1であった。カラムは927cm3のシリカゲルを含有している。シリカゲルは、カラム内に合計600,000m2の表面積で以って480m2/gの表面積を有する。他の監視された不純物は、初期プロセスの開始の際に同様の安定化プロセスを受け、次いで、クロマトグラフ試験を通してフィードのレベルを維持している。
【0027】
本発明は1つ又は複数の好ましい実施態様に関して記載されたが、本発明の完全な範囲は特許請求の範囲によって確認されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】シリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて酸素含有不純物化合物のモノテルペンを精製するための、本発明の好ましい実施態様の概略のプロセスフローダイアグラムである。
【図2】酸素を含有しないモノテルペンの定常状態通過とは対照的に、明確な最終の破過までシリカゲルカラムによって効果的に滞留されるユーカリプトールの運転1及び2を示すシリカゲル充填カラム52の下流端での破過曲線を示すグラフである。
【図3】ユーカリプトール不純物の除去とともに、α−テルピネン製品流における純度の改善を示すシステムの1つの特有の運転に関する活性化シリカゲルカラム52の下流端での製品溶出を示すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
10、66 プッシュガス源
14 アルコール源容器
26 フィルター
40 精製テルペン製品容器
52 カラム
60 供給源容器
68 モノテルペン捕集容器
80 受け入れ容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノテルペンから酸素含有不純物化合物を分離することにより、電子デバイスにおける多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積物のためのポロゲンとしてモノテルペンを調製する方法であって、
酸素含有不純物化合物を含む無希釈のモノテルペンを用意する工程;
活性化シリカゲルの分取クロマトカラムを用意する工程;
酸素含有不純物化合物を含む無希釈のモノテルペンを当該カラムと接触させる接触工程;
酸素含有不純物化合物を当該カラム上に保持する工程;及び
当該カラムから酸素含有不純物化合物の減少した無希釈のモノテルペンを回収する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記酸素含有不純物化合物がもはや前記カラム上に保持されない場合に前記接触工程が停止される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カラムが、当該カラムを前記酸素含有不純物化合物のための溶媒であるアルコールと接触させて当該酸素含有不純物化合物を除去することにより再生される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モノテルペンが、α−テルピネン、d−リモネン、α−フェランドレン、パラ−シメン及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸素含有不純物化合物が、1,8−シネオール、1,4−シネオール、リナロール、オクタナール、水及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触工程が、周囲温度及び0〜100psigの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カラムから回収されたモノテルペンが、10ppm以下の酸素含有不純物化合物の含有量と40ppm以下の水分含有量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アルコールが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記モノテルペンがα−テルピネンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記酸素含有不純物化合物が1,8−シネオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
モノテルペンから酸素含有不純物化合物を分離することにより、電子デバイスにおける多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積物のためのポロゲンとしてモノテルペンを調製する方法であって、
α−テルピネン、d−リモネン、α−フェランドレン、パラ−シメン及びそれらの混合物からなる群より選択され、1,8−シネオール、1,4−シネオール、リナロール、オクタナール、水及びそれらの混合物からなる群より選択される酸素含有不純物化合物をさらに含む無希釈のモノテルペンを用意する工程;
活性化シリカゲルの分取クロマトカラムを用意する工程;
酸素含有不純物化合物を含む無希釈のモノテルペンを当該カラムと接触させる接触工程;
酸素含有不純物化合物を当該カラム上に保持する工程;
当該カラムから酸素含有不純物化合物の減少した無希釈のモノテルペンを回収する工程;
酸素含有不純物化合物がもはや当該カラム上に保持されない場合に当該接触工程を停止する工程;並びに
当該カラムを酸素含有不純物化合物のための溶媒であるアルコールと接触させ、当該カラムからアルコールと保持された酸素含有不純物化合物の混合物を回収して酸素含有不純物化合物を除去することにより当該カラムを再生する工程
を含む、方法。
【請求項12】
モノテルペンから酸素含有不純物化合物を分離することにより、電子デバイスにおける多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積物のためのポロゲンとしてモノテルペンを調製する方法であって、
α−テルピネン、d−リモネン、α−フェランドレン、パラ−シメン及びそれらの混合物からなる群より選択され、1,8−シネオール、1,4−シネオール、リナロール、オクタナール、水及びそれらの混合物からなる群より選択される酸素含有不純物化合物をモノテルペン源容器中にさらに含む無希釈のモノテルペンを用意する工程;
当該モノテルペン源容器に接続された活性化シリカゲルの分取クロマトカラムを用意する工程;
不活性な加圧ガスを用いて当該モノテルペン源容器からモノテルペンを投与して当該カラムに無希釈のモノテルペンを接触させる接触工程;
酸素含有不純物化合物を当該カラム上に保持する工程;
当該カラムから酸素含有不純物化合物の減少した無希釈のモノテルペンを回収し、回収した無希釈のモノテルペンをモノテルペン製品容器に貯蔵する工程;
酸素含有不純物化合物がもはや当該カラム上に保持されない場合に当該接触工程を停止する工程;
当該カラム上に含まれるモノテルペンを除去し、それをモノテルペン捕集容器に貯蔵する工程;並びに
アルコール源容器からアルコールを投与し、アルコールと当該カラムを接触させ、アルコールと当該カラムに保持された酸素含有不純物化合物の混合物を当該カラムから回収し、それを酸素含有不純物化合物の受け入れ容器に貯蔵して酸素含有不純物化合物を除去することにより当該カラムを再生する工程
を含む、方法。
【請求項13】
α−テルピネンから1,8−シネオールを分離することにより、電子デバイスにおける多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積物のためのポロゲンとしてα−テルピネンを調製する方法であって、
1,8−シネオールを含有する無希釈のα−テルピネンを用意する工程;
活性化シリカゲルの分取クロマトカラムを用意する工程;
1,8−シネオールを含有する無希釈のモノテルペンを当該カラムと接触させる接触工程;
1,8−シネオールを当該カラム上に保持する工程;
当該カラムから1,8−シネオールの減少した無希釈のα−テルピネンを回収する工程;
1,8−シネオールがもはや当該カラム上に保持されない場合に当該接触工程を停止する工程;及び
当該カラムをアルコールと接触させ、アルコールと1,8−シネオールの混合物を当該カラムから回収して1,8−シネオールを除去することにより当該カラムを再生する工程
を含む、方法。
【請求項14】
モノテルペンから酸素含有不純物化合物を分離することにより、電子デバイスにおける多孔質酸化ケイ素誘電体膜堆積物のためのポロゲンとしてモノテルペンを調製する装置であって、
モノテルペン源容器と;
当該モノテルペン源容器に連結された活性化シリカゲルの分取クロマトカラムと;
当該活性化シリカゲルの分取クロマトカラムに連結されたモノテルペン源容器と;
当該活性化シリカゲルの分取クロマトカラムに連結されたモノテルペン製品容器と;
当該活性化シリカゲルの分取クロマトカラムに連結されたモノテルペン捕集容器と;
当該カラムに連結された酸素含有不純物化合物の受け入れ容器と
を含む、装置。
【請求項15】
前記連結がバルブである、請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−137754(P2006−137754A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−324645(P2005−324645)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【Fターム(参考)】