説明

酸素吸収キャップ

【課題】酸素吸収性能を持たせると共に、酸素を吸収したか否かを目視で確認することが可能な酸素吸収キャップを提供する。
【解決手段】容器本体2の口部に装着固定される酸素吸収キャップ1であって、基材樹脂を90〜99重量%、酸素欠損を有する酸化チタンを1〜10重量%含んで構成し、酸素を吸収し、変色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレッシングやたれ等の内容物を収容する容器本体の口部に装着固定される酸素吸収キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を容器本体に充填して容器本体を長時間放置すると、容器本体の内部に酸素が透過し、内容物が酸化劣化してしまう。このため、近年では、内容物の酸化劣化を防止するために酸素吸収性能を有する容器本体が開発されている。
【0003】
なお、容器本体の口部に装着固定されるキャップは、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂で成形するのが主流である。しかし、ポリオレフィン系樹脂は、酸素吸収性能がないため、キャップから容器本体への酸素侵入を防止できない。その結果、キャップから容器本体に侵入した酸素により、内容物が酸化劣化してしまう。このため、キャップにも酸素吸収性能を持たせ、キャップから容器本体への酸素侵入を防止する必要がある。
【0004】
なお、特許文献1には、酸素欠損を有する酸化チタンを添加した酸素吸収層を含んで構成する積層構成の酸素吸収性積層材料を、包装体の蓋材として使用し、酸素の吸収性能を向上させる点について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−95832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示されている酸素吸収層は、酸素吸収層に添加された酸素欠損を有する酸化チタンが酸素と結合することで酸素を吸収することになる。しかし、酸素吸収層に添加される酸素欠損を有する酸化チタンの添加量には制限があるため、酸素を吸収できる量や期間も制限されてしまうことになる。即ち、酸素吸収層の酸素吸収能力にも寿命がある。なお、上記特許文献1に開示されている蓋材は、上記の酸素吸収層を用いて構成するため、酸素を吸収することができる。しかし、上記特許文献1の蓋材は、酸素を吸収したとしても、蓋材が酸素を吸収したか否かを目視で確認することができない。その結果、特許文献1の蓋材では、蓋材の酸素吸収能力の寿命を目視で把握することができないことになる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、酸素吸収性能を持たせると共に、酸素を吸収したか否かを目視で確認することが可能な酸素吸収キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有することとする。
【0009】
本発明に係る酸素吸収キャップは、容器本体の口部に装着固定される酸素吸収キャップであって、基材樹脂を90〜99重量%、酸素欠損を有する酸化チタンを1〜10重量%含んで構成し、酸素を吸収し、変色することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸素吸収性能を持たせると共に、酸素を吸収したか否かを目視で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の容器の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態の酸素吸収キャップの上蓋を開けた状態であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<容器100の構成例>
まず、図1を参照しながら、本実施形態の容器100について説明する。
本実施形態の容器100は、酸素吸収キャップ1と、容器本体2と、を有して構成する。
【0013】
酸素吸収キャップ1は、基材樹脂と酸素欠損を有する酸化チタンとを含んで構成し、容器本体2の口部に装着固定される。
【0014】
容器本体2は、油、ドレッシング等の内容物を収容するものである。容器本体2を構成する材料は特に限定せず、公知の材料が適用可能である。また、容器本体2は、単層構造や多層構造で構成することができる。なお、容器本体2にガスバリア性を持たせる場合は、ガスバリア性樹脂で構成することが好ましい。ガスバリア性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体またはポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。
【0015】
<酸素吸収キャップ1の構成例>
次に、図2を参照しながら、本実施形態の酸素吸収キャップ1の構成例について説明する。図2は、プルオープンキャップの構成例を示す。
本実施形態の酸素吸収キャップ1は、容器本体2の口部に装着固定されるキャップ本体3と、キャップ本体3にヒンジ部3aを介して連結された上蓋4と、を有して構成する。キャップ本体3は、外筒部9と内筒部10とを含み、内筒部10の内部に容器本体2の口部を密封する天面壁5を有する。この天面壁5に注出用開口を形成するための薄肉の弱化部6が形成されている。本実施形態の酸素吸収キャップ1を図2に示すプルオープンキャップで構成した場合は、容器本体2の口部に打栓により装着固定される。その際、キャップ本体3の内筒部10は図示しない容器本体2の口部内に圧入される。
【0016】
弱化部6は、天面壁5に設けられており、天面壁5上に延在し、開口予定部7を画定している。そして、開口予定部7の表面には開口予定部7の引きちぎり手段の一例であるプルリング8がその支柱部外壁を弱化部6に連続させるように一体に設けられており、このプルリング8を引っ張り、弱化部6を引きちぎって、開口予定部7を除去することができるようになっている。
【0017】
本実施形態の酸素吸収キャップ1は、基材樹脂と、酸素欠損を有する酸化チタンと、を含んで構成する。
【0018】
基材樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。他に、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー等の熱可塑性エラストマーを用いることも可能である。
【0019】
酸素欠損を有する酸化チタンとしては、ルチルやブルッカイト等の結晶形や非結晶、アナターゼの結晶形などを用いることが好ましい。酸素欠損を有する酸化チタンは、基材樹脂への練り込みが容易である。また、電子レンジで加熱しても、スパーク・発火のおそれがない。また、酸素を吸収すると白色化するため、インジケーター機能を有することになる。また、金属検査機に反応せず、水分が存在すると、酸素吸収が促進され、鉄系と比較して、低湿度での酸素吸収性能が高い。
【0020】
本実施形態の酸素吸収キャップ1は、基材樹脂を90〜99重量%、酸素欠損を有する酸化チタンを1〜10重量%含んで構成することが好ましい。酸化チタンが1重量%未満の場合は、酸素吸収キャップ1の酸素吸収性能が低下すると共に、酸素吸収キャップ1が酸素を吸収しても酸素吸収キャップ1が変色せず、酸素吸収キャップ1が酸素を吸収したか否かを目視で確認することができないためである。また、酸化チタンが10重量%より多いと、キャップとしての強度を維持できず、キャップの耐性が低下するためである。このため、酸素吸収キャップ1は、酸素欠損を有する酸化チタンを1〜10重量%の範囲で含んで構成することが好ましい。
【0021】
このように、本実施形態の酸素吸収キャップ1は、酸素欠損を有する酸化チタンを1〜10重量%含んで構成するため、酸素吸収キャップ1自体に酸素吸収性能を持たせ、酸素吸収キャップ1から容器本体2への酸素侵入を防止することができる。
【0022】
なお、本実施形態の容器100は、容器本体2から内容物を外部に流出させる際に、酸素吸収キャップ1の上蓋4を開き、内容物を外部に流出した後に、上蓋4を閉じることになる。このため、上蓋4を閉じると、容器本体2の中の内容物と酸素吸収キャップ1との間に、空気中の酸素が入ることになる。しかし、本実施形態の酸素吸収キャップ1は、酸素吸収性能を有するため、酸素を吸収し、内容物の酸化劣化を防止することができる。また、酸素を吸収した場合は、酸素吸収キャップ1自体が変色するため、酸素吸収キャップ1が酸素を吸収したか否かを目視で確認することができる。その結果、酸素吸収キャップ1の酸素吸収能力の寿命を目視で把握することができる。
【実施例】
【0023】
次に、本実施形態の酸素吸収キャップ1の実施例について説明する。なお、以下に示す実施例は一例であり、本実施形態の酸素吸収キャップ1は、以下の実施例に限定するものではない。
【0024】
(実施例1)
実施例1では、酸素吸収キャップ1を構成する基材樹脂としてポリエチレン(PE)を使用した。
【0025】
まず、酸素欠損を有する酸化チタン(TiOx(xは2未満の値))と低密度ポリエチレン(LDPE)で構成されたマスターバッチ(LDPEとTiOxとの混合比がLDPE:TiOx=7:3)をPEに混ぜ合わせ、PEと、LDPEと、TiOxと、の混合比が、PE:LDPE:TiOx=90:7:3となる混合樹脂を形成し、その混合樹脂を用いて図2に示す酸素吸収キャップ1を射出成形により成形した。
【0026】
上記成形した酸素欠損を有する酸化チタンを3重量%含んだ酸素吸収キャップ1の酸素吸収能力を測定すると、酸素吸収能力は、22.6cc/gであった。酸素吸収能力は、以下の方法で測定した。
【0027】
上記成形した酸素吸収キャップ1の一部を試験片とし、その試験片を260mlの瓶に水50mgと共に投入して蓋をして密閉し、55℃の環境条件で5日間放置した後に、試験片の酸素吸収性能をガスクロマトグラフィー(GC)で測定した。なお、5日間放置した試験片は、白色化し、変色した。このため、酸素吸収キャップ1が酸素を吸収したことを目視で確認することができた。
【0028】
(実施例2)
実施例2では、酸素吸収キャップ1を構成する基材樹脂としてポリプロピレン(PP)を使用した。それ以外は、実施例1と同様である。
【0029】
実施例2の酸素吸収キャップ1の酸素吸収能力を測定すると、酸素吸収能力は、実施例1と同様に、22.6cc/gであった。酸素吸収能力の測定方法は、実施例1と同様である。また、実施例2の酸素吸収キャップ1も実施例1と同様に、白色化し、変色した。このため、酸素吸収キャップ1が酸素を吸収したことを目視で確認することができた。
【0030】
なお、上述した実施形態及び実施例は、本発明の好適な実施形態及び実施例であり、上記実施形態及び実施例のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0031】
例えば、本実施形態では、酸素吸収キャップ1として、図2に示すプルオープンキャップを例に説明したが、図2に示すプルオープンキャップに限定するものではなく、開閉式でないキャップや蓋等で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
100 容器
1 酸素吸収キャップ
2 容器本体
3 キャップ本体
4 上蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着固定される酸素吸収キャップであって、
基材樹脂を90〜99重量%、酸素欠損を有する酸化チタンを1〜10重量%含んで構成し、酸素を吸収し、変色することを特徴とする酸素吸収キャップ。
【請求項2】
前記基材樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の酸素吸収キャップ。
【請求項3】
プルオープンキャップであることを特徴とする請求項1または2記載の酸素吸収キャップ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−86856(P2013−86856A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230683(P2011−230683)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】