説明

酸素吸収体およびその製造方法ならびにそれを用いた包装材

本発明の酸素吸収体は、下記の式(1)で表される少なくとも1つの化合物と、被酸化性の重合体とを含む。
【化1】


(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RおよびRは、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。Rおよび/またはRは、それらが結合する炭素原子と炭素−炭素二重結合を形成してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収体およびその製造方法、ならびにそれを用いた包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素を吸収する方法として、鉄化合物を酸素吸収剤として樹脂中に分散させてその機能を発現させる方法が知られている(例えば、特開2002−249174号公報)。しかしながら、酸化鉄などを酸素吸収剤として使用するため、該酸素吸収剤が水に溶解して溶出するという問題があった。また、1分子の鉄化合物は1分子の酸素しか吸収しないため、十分な量の酸素を吸収するためには、多量の鉄化合物が必要であった。
【0003】
また、遷移金属化合物(触媒)と被酸化性の重合体とを含む酸素吸収性の材料も知られている。例えば、m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)を40モル%以上含有するポリアミドに対して、コバルト、鉄、マンガン等の遷移金属化合物を、金属換算で10〜100000ppm添加した組成物が開示されている(特開2002−241610号公報)。
【0004】
また、特開平5−115776号公報は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、カロテノイドなどのエチレン性不飽和炭化水素と、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、銅などの遷移金属化合物とを含む組成物を開示している。
【0005】
また、国際特許公開第WO01/90238号パンフレットは、酸素バリア性と酸素掃去性とを兼ね備えた組成物を得ることを目的として、不飽和結合を有する重合体と、遷移金属化合物と、酸素バリア性を有する重合体とを含む組成物を開示している。
【0006】
また、特開平5−156095号公報は、酸素バリア性の樹脂組成物を開示している。この組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン(炭素原子数3以上)共重合体等のポリオレフィンと、コバルト、マンガン、鉄、銅、ニッケルといった遷移金属の化合物からなる酸化触媒とを含む酸素吸収性組成物とを、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物中に分散させることによって得られる。
【0007】
被酸化性の重合体と遷移金属化合物とを含む従来の酸素吸収性材料では、重合体が酸化される際に空気中の酸素が吸収される。この際、遷移金属化合物は、重合体の酸化を促進する効果を有する。そのため、十分な酸素吸収性を発現させるためには、ある程度の量の遷移金属化合物が必要とされる。しかし、食品、飲料、医薬品、化粧品といった物品の包装材として使用する場合、安全性を考慮して遷移金属化合物の使用量を抑えることが望ましい。従って、遷移金属化合物と被酸化性の重合体とを必須の構成要素として含む従来の酸素吸収性材料では、このような相反する条件をクリアして、安全性、酸素吸収性の双方において満足できる材料を得ることは容易ではない。
【0008】
一方、酸化触媒として機能するN−ヒドロキシフタルイミドを用いて、種々のアルカン、アルケンおよび種々の高分子化合物を酸化する方法が開示されている。たとえば、種々の金属塩と共存するN−ヒドロキシイミド化合物が、空気中の酸素と反応し、アルカン、アルケン、アルコールの酸化触媒として作用することが開示されている(化学 Vol.56,No.7,18−23(2001)、および、有機合成化学協会誌 Vol.59,No.1,4−12(2001))。
【0009】
また、N−ヒドロキシイミド化合物を触媒として、酸素原子含有ガスで各種の重合体を変性する方法が開示されている(特開2000−290312号公報)。この方法によれば、重合体の主鎖を切断することなく重合体に極性基を効率よく導入でき、その結果、帯電防止性等に優れた重合体を得ることができると説明されている。
【0010】
しかしながら、これらの酸化反応は、酢酸などの極性溶媒の存在下、すなわち、酸素を積極的に吸収する溶媒の存在下で行われている。この反応は、液相−液相間または固相−液相間の酸化反応であり、遷移金属の介在、および液体内で触媒が流動することを前提としている。これに対して、酸素吸収材料は、酸素を吸収しても固体を維持することが求められる。このため、酸素吸収材料で必要とされる反応は固相−気相間の反応であるが、このような反応の可能性については、これまで、全く検討されていなかった。
【発明の開示】
【0011】
このような状況を考慮し、本発明は、十分な酸素吸収性を示し安全性の高い酸素吸収体、およびその製造方法を提供することを目的の1つとする。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の酸素吸収体は、下記の式(1)で表される少なくとも1つの化合物と、被酸化性の重合体とを含む。
【0013】
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RおよびRは、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。Rおよび/またはRは、それらが結合する炭素原子と炭素−炭素二重結合を形成してもよい。)
【0014】
本発明の酸素吸収体では、前記RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、保護基によって保護された水酸基、保護基によって保護されたメルカプト基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、保護基によって保護されたカルボキシル基、保護基によって保護されたアルデヒド基、保護基によって保護されたアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸基の金属塩、スルホン酸エステル基、式−OP(=O)(OH)で示される基、式−OP(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体、式−P(=O)(OH)で示される基、式−P(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体を表してもよい。
【0015】
本発明の酸素吸収体では、前記重合体が、第3級炭素原子を含んでもよい。
【0016】
また、本発明の酸素吸収体では、前記化合物が、N−ヒドロキシフタルイミドであってもよい。
【0017】
また、本発明の包装材は、本発明の酸素吸収体からなる部分を含む。
【0018】
また、酸素吸収体を製造するための本発明の方法は、(i)上記の式(1)で表される少なくとも1つの化合物と、被酸化性の重合体と、溶媒とを含む混合物を調製することと、(ii)前記混合物から前記溶媒を除去することとを含む。
【0019】
また、酸素吸収体を製造するための本発明の他の方法は、(i)上記の式(1)で表される少なくとも1つの化合物と溶媒とを含む混合物を被酸化性の重合体に塗布することと、(ii)前記重合体に塗布された前記混合物から前記溶媒を除去することとを含む。
【0020】
上記製造方法の上記式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、保護基によって保護された水酸基、保護基によって保護されたメルカプト基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、保護基によって保護されたカルボキシル基、保護基によって保護されたアルデヒド基、保護基によって保護されたアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸基の金属塩、スルホン酸エステル基、式−OP(=O)(OH)で示される基、式−OP(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体、式−P(=O)(OH)で示される基、式−P(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体であってもよい。
【0021】
本発明によれば、十分な酸素吸収を示し安全性が高い酸素吸収体(酸素吸収性組成物)が得られる。この酸素吸収体は、密閉容器内に残存する酸素を吸収する吸収体などとして使用することができる。また、この酸素吸収体は、包装材料として使用することもできる。本発明の製造方法によれば、被酸化性の重合体とN−ヒドロキシイミド化合物とが均一性よく分散した酸素吸収体を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の酸素吸収体は、上記の式(1)で表される少なくとも1つの化合物(以下、「N−ヒドロキシイミド化合物」という場合がある)と、被酸化性の重合体とを含む。
【0024】
本発明の酸素吸収体は、必須の成分として被酸化性の重合体を含む。この重合体は、式(1)で表されるN−ヒドロキシイミド化合物の存在下においてラジカル機構によって酸素と反応し得るものである限り、特に限定されない。
【0025】
被酸化性の重合体としては、例えば、炭化水素系の重合体を用いてもよい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体;ポリスチレン、ポリパラメチルスチレン等のスチレン系重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系重合体またはジエン系重合体の水素添加物を用いてもよい。また、芳香族ビニル化合物と共役ジエンの共重合体またはその水素添加物を用いてもよく、たとえば、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン−イソプレンジブロック重合体またはその水素添加物、スチレン−ブタジエンランダム共重合体またはその水素添加物、スチレン−イソプレンランダム共重合体またはその水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体またはその水素添加物等を用いてもよい。また、シクロオクテン、ノルボルネン等の環状オレフィンの開環重合体またはその水素添加物を用いてもよい。また、上記した環状オレフィンと非環状のオレフィン(エチレン、プロピレン等)との共重合体またはその水素添加物などを用いてもよい。
【0026】
こうした炭化水素系の重合体は、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アルコキシカルボニル基、水酸基、アミノ基、アミド基、メルカプト基、シアノ基などの官能基を有する、変性された重合体であってもよい。
【0027】
また、被酸化性の重合体として、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12を用いてもよい。また、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,2−ジベンジルアミン、1,3−ジベンジルアミンおよび1,4−ジベンジルアミンといったジアミン成分と、アジピン酸、テレフタル酸、ジヒドロテレフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸およびイソフタル酸といったジカルボン酸成分とによって構成される各種ポリアミドを用いてもよい。また、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、5−シクロオクテン−1,2−ジオールおよび3−シクロヘキセン−1,1−ジメタノールといったジオール成分と、アジピン酸、テレフタル酸、ジヒドロテレフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸といったジカルボン酸成分とによって構成される各種ポリエステルを用いてもよい。
【0028】
また、ポリビニルアルコール(PVA)等のポリビニルアルコール系重合体や、ポリビニルブチラール(PVB)およびポリビニルフォルマール等のポリビニルアセタール系重合体を用いてもよい。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いてもよい。また、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどのアクリル系重合体を用いてもよい。また、ポリアクリルアミドを用いてもよい。また、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−オクテン−アクリル酸共重合体といった、オレフィンと不飽和カルボン酸との共重合体を用いてもよく、それらと亜鉛、銅などの金属との塩を用いてもよい。また、ポリカーボネート系重合体;ポリアクリロニトリル;ポリアセタール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンなどを用いてもよい。また、セルロース、でんぷん、ポリ乳酸、寒天、ゼラチンなどの天然の高分子を用いてもよい。
【0029】
被酸化性の重合体としては、1種類の重合体のみを使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
被酸化性の重合体としては、酸素吸収性が良好であることから、第2級または第3級の炭素原子を有する重合体や脂肪族炭素−炭素二重結合を有する重合体が好ましい。中でも、N−ヒドロキシイミド化合物の存在下においてラジカル機構によって酸素と効率よく反応するという観点では、第3級炭素原子を有する重合体が好ましい。また、酸素の吸収速度の観点では、ラジカル反応性の高い、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する重合体の使用が特に好ましい。
【0031】
脂肪族炭素−炭素二重結合を有する被酸化性の重合体としては、例えば、ポリブタジエンやポリイソプレンなどのジエン系重合体;シクロオクテンやノルボルネン等の環状オレフィンの開環重合体;上記した環状オレフィンとエチレンやプロピレン等の非環状のオレフィンとの共重合体などの炭化水素系の重合体が挙げられる。
【0032】
第3級の炭素原子を有する被酸化性の重合体としては、第3級の炭素原子を有する炭化水素系の重合体が挙げられる。例えばポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体、ポリブタジエンやポリイソプレンなどのジエン系重合体またはその水素添加物を用いてもよい。また、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン−イソプレンジブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン−ブタジエンランダム共重合体またはその水素添加物、スチレン−イソプレンランダム共重合体またはその水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体またはその水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体またはその水素添加物といった、芳香族ビニル化合物と共役ジエンの共重合体またはその水素添加物を用いてもよい。また、シクロオクテンやノルボルネン等の環状オレフィンの開環重合体の水素添加物を用いてもよい。また、上記した環状オレフィンと、エチレンやプロピレン等の非環状オレフィンとの共重合体の水素添加物を用いてもよい。
【0033】
被酸化性の重合体の分子量には特に制限はないが、数平均分子量(Mn)が1,000〜1,000,000の範囲内にあることが好ましく、3,000〜500,000の範囲内にあることがより好ましく、10,000〜300,000の範囲内にあることがさらに好ましく、20,000〜200,000の範囲内にあることが特に好ましい。被酸化性の重合体は、酸素吸収体に用いられるため、酸素吸収体の成形・加工性、機械的性質およびその他の材料への分散性という観点から、その分子量は、20,000〜200,000の範囲内にあることが好ましい。
【0034】
また、本発明の酸素吸収体を構成する他の必須の成分は、上記の式(1)で示されるN−ヒドロキシイミド化合物である。
【0035】
上記の式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RおよびRは、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。Rおよび/またはRは、それらが結合する炭素原子と炭素−炭素二重結合を形成してもよい。
【0036】
好ましい一例では、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、保護基によって保護された水酸基、保護基によって保護されたメルカプト基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、保護基によって保護されたカルボキシル基、保護基によって保護されたアルデヒド基、保護基によって保護されたアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸基の金属塩、スルホン酸エステル基、式−OP(=O)(OH)で示される基、式−OP(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体、式−P(=O)(OH)で示される基、式−P(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体を表す。
【0037】
および/またはRが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。また、Rおよび/またはRが表すアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0038】
および/またはRが表すアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。Rおよび/またはRが表すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、4−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基などが挙げられる。Rおよび/またはRが表すアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基などが挙げられる。Rおよび/またはRが表すヘテロアリール基としては、例えば、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピローリル基、インドリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチオフェニル基などが挙げられる。
【0039】
なお、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基は、その炭素原子数が1〜20の範囲内であることが好ましく、1〜10の範囲内であることがより好ましい。
【0040】
上記の式(1)において、Rおよび/またはRが保護基によって保護された水酸基を表す場合、水酸基の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基等のアルキル基;ベンジル基などのアラルキル基;フェニル基等のアリール基;メトキシメチル基、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のシリル基;メタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等のスルホニル基などが挙げられる。
【0041】
保護基によって保護された水酸基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基;メトキシメチレンオキシ基、メトキシエチレンオキシ基、エトキシエチレンオキシ基等のアルキコキシアルキレンオキシ基;アセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、フェニルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニルオキシ基またはアリールオキシカルボニルオキシ基;トリメチルシロキシ基、t−ブチルジメチルシロキシ基等のシロキシ基;メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0042】
また、Rおよび/またはRが保護基によって保護されたメルカプト基を表す場合、その具体例としては、ベンジルチオ基、ジフェニルメチルチオ基、t−ブチルチオ基、2,4−ジニトロフェニルチオ基などのアルキルチオ基やアリールチオ基等が挙げられる。
【0043】
および/またはRが保護基によって保護されたカルボキシル基を表す場合、カルボキシル基の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられる。そして、保護基によって保護されたカルボキシル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、s−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0044】
および/またはRが保護基によって保護されたアルデヒド基を表す場合、その具体例としては、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等のアルキレンジオキシ基で保護された環状アセタールなどが挙げられる。
【0045】
また、Rおよび/またはRが保護基によって保護されたアミノ基を表す場合、その具体例としては、式:−NHCOOCH、−NHCOOBu、−NHCOOCHPh(Phはフェニル基を表す)で示される基などが挙げられる。
【0046】
また、Rおよび/またはRが表すジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。Rおよび/またはRが表すアミド基としては、例えば、N,N−ジメチルアミド基、ベンズアミド基、アセタミド基などが挙げられる。Rおよび/またはRが表すスルホン酸エステル基としては、例えば、スルホン酸メチル、スルホン酸エチル、スルホン酸t−ブチルなどのスルホン酸アルキルエステル;スルホン酸フェニル等のスルホン酸アリールエステル;スルホン酸エトキシエチル等のスルホン酸アルコキシアルキルエステルなどが挙げられる。
【0047】
また、Rおよび/またはRが、リン酸または亜リン酸から誘導される基のエステル誘導体を表す場合、式:−OP(=O)(OR、式:−OP(=O)(OR)OH、式:−P(=O)(OR、または式:−P(=O)(OR)OH、で示されるエステル基を用いることができる。ここで、Rには、たとえば、−CH、−C、−C1225、−C1837、−C1835、−Phといった炭化水素基を用いることができる。たとえば、−OP(=O)(OCH、−OP(=O)(OC、−OP(=O)(OC1225、−OP(=O)(OC1837、−OP(=O)(OC1835、−OP(=O)(OPh)、−OP(=O)(OC1225)OH、−OP(=O)(OC1837)OH、−OP(=O)(OC1835)OH、−P(=O)(OCH、−P(=O)(OC、−P(=O)(OC1225、−P(=O)(OC1837、−P(=O)(OC1835、−P(=O)(OPh)、−P(=O)(OC1225)OH、−P(=O)(OC1837)OH、−P(=O)(OC1835)OHなどが挙げられる。
【0048】
および/またはRは、上述した基の金属塩、具体的には、カルボキシル基、スルホン酸基、式:−OP(=O)(OH)、または式:−P(=O)(OH)で示される基の金属塩であってもよい。この場合の金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;ホウ素、アルミニウムなどの3価以上の金属などが挙げられる。
【0049】
また、Rおよび/またはRは、それらが結合している炭素原子と炭素−炭素二重結合を形成してもよい。また、RおよびRは、それらが結合している炭素原子とともに環を形成してもよい。形成される環は、芳香族性の環であってもよいし非芳香族性の環であってもよい。また、形成される環は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子といったヘテロ原子を含有していてもよい。
【0050】
およびRがそれらが結合する炭素原子とともに形成する芳香族性の環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピラジン環、ピロール環、キノリン環、フラン環、ピラン環、チオフェン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環などが挙げられる。
【0051】
また、RおよびRがそれらが結合する炭素原子とともに形成する非芳香族性の環は、例えば、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン等のシクロアルカン環や、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロオクタジエン等のシクロアルケン環であってもよい。また、2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、ノルボルナン環、ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン環、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、7−チアビシクロ[2.2.1]ヘプタン環、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン環、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン環、7−チアビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン環などの、橋頭または橋かけ構造を有する環であってもよい。また、オキシラン環、アジリジン環、チイラン環、オキソラン環、アゾリジン環、ジオキサン環、モルホリン環、オキサチオラン環等の、ヘテロ原子を含む環であってもよい。また、メチレンアセタール、エチリデンアセタール、シクロペンチリデンケタール等のジオールから誘導される、環状アセタールまたは環状ケタールであってもよい。また、カルボキシル基と水酸基とが縮合することによって形成されるラクトン;アルデヒド基と水酸基とが縮合することによって形成される環状ヘミアセタール;2つのカルボキシル基が縮合することによって形成される酸無水物;イミド環;カルボキシル基とアミノ基とが縮合することによって形成されるラクタム環であってもよい。
【0052】
および/またはRが表すアルキル基、アラルキル基、アリール基およびヘテロアリール基、およびRおよびRを含有する環は、上述した置換基を有していてもよい。具体的には、これらの基または環は、ハロゲン原子、アシル基、水酸基、保護基によって保護された水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、保護基によって保護されたカルボキシル基、保護基によって保護されたメルカプト基、保護基によって保護されたアルデヒド基、保護基によって保護されたアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸基の金属塩、スルホン酸エステル基、式:−OP(=O)(OH)で示される基、式:−OP(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体、式:−P(=O)(OH)で示される基、式:−P(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体、ニトロ基、イソシアネート基、カルボジミド基、酸無水物基、イミド基、シアノ基などの置換基を有していてもよい。
【0053】
およびRが、それらが結合している炭素原子とともに形成する環は、上記で例示した環が縮合した形態の環であってもよく、N−ヒドロキシイミド構造がさらに1個または2個形成されていてもよい。
【0054】
式(1)で示されるN−ヒドロキシイミド化合物の分子量には特に制限はないが、通常3,000程度以下、好ましくは1,000以下、より好ましくは、700以下、さらに好ましくは500以下の範囲内である。
【0055】
式(1)で示されるN−ヒドロキシイミド化合物の代表的な例としては、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタルイミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタルイミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタルイミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミドなどが挙げられる。これらの中でも、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタルイミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタルイミド、およびN−ヒドロキシテトラブロモフタルイミドが特に好ましい。
【0056】
式(1)で示されるN−ヒドロキシイミド化合物は、特開平8−38909号公報、国際公開第00/35835号パンフレット(WO00/35835)、EP1055654A1公報、特開2000−290312号公報などに記載されている。これらの化合物は、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンとを反応させ、得られた開環生成物を加熱、脱水して閉環させることによって調製できる。
【0057】
本発明の酸素吸収体におけるN−ヒドロキシイミド化合物の使用量は、特に制限されるものではないが、被酸化性の重合体に対して、通常、10ppm〜等重量の範囲内、好ましくは20ppm〜50重量%の範囲内、より好ましくは、100ppm〜20重量%の範囲内である。
【0058】
被酸化性の重合体として、3級炭素原子を含む重合体、および/または、炭素−炭素二重結合を含む重合体を用いる場合には、N−ヒドロキシイミド化合物の量が少なくても、良好な酸素吸収を示す酸素吸収体が得られる。この場合、被酸化性の重合体に対するN−ヒドロキシイミド化合物の量を、5wt%以下(たとえば0.5wt%以下)とすることが可能である。N−ヒドロキシイミド化合物の量を重合体の5wt%以下(好ましくは0.5wt%以下)とすることによって、N−ヒドロキシイミド化合物のブリードアウトによる弊害を抑制できる。また、N−ヒドロキシイミド化合物の量を重合体の5wt%以下とすることによって、両者を均一に混合することが容易になる。特に、被酸化性の重合体として、炭素−炭素二重結合を含む重合体を用いる場合には、被酸化性の重合体に対するN−ヒドロキシイミド化合物の量を0.5wt%以下とすることが可能であり、包装材の材料として特に好ましい組成物が得られる。
【0059】
本発明の酸素吸収体は、被酸化性の重合体および式(1)で示されるN−ヒドロキシイミド化合物に加えて、金属化合物を含んでもよい。
【0060】
金属化合物としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ホウ素、アルミニウム、ゲルマニウム等の多価金属;マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、バナジウム、モリブデン等の遷移金属といった金属の化合物を用いることができる。具体的には、これらの金属の、ハロゲン化物、水酸化物、酸化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩を用いてもよい。また、これらの金属とカルボン酸等の有機酸との塩や、これらの金属と各種配位子との錯体を用いてもよい。これらの中でも、酸素吸収が促進されることから、5〜11族の金属の化合物が好ましい。具体的には、水酸化コバルト、酸化コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト、シュウ酸コバルト、プロピオン酸コバルト、ブタン酸コバルト、吉草酸コバルト、オクタン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ナフチル酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ビス(2,3−ブタンジオンジオキシム)ジクロロコバルト(II)、トリス(エチレンジアミン)コバルト(III)硫酸塩、ジアミントリクロロ(ジメチルアミン)コバルト(III)、2,2’−エチレンビス(ニトリロメチリジン)−ジフェノーラトコバルト(II)、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト、1,1’−ジクロロビス(シクロペンタジエニル)コバルトといったコバルト化合物を用いることができる。
【0061】
また、金属化合物として、水酸化ニッケル、酸化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、プロピオン酸ニッケル、ブタン酸ニッケル、吉草酸ニッケル、オクタン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、安息香酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、ジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、1,1’−ジクロロビス(シクロペンタジエニル)ニッケルといったニッケル化合物を用いることもできる。
【0062】
また、金属化合物として、水酸化パラジウム、酸化パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、炭酸パラジウム、ギ酸パラジウム、酢酸パラジウム、シュウ酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、ブタン酸パラジウム、吉草酸パラジウム、オクタン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、安息香酸パラジウム、ステアリン酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネートといったパラジウム化合物を用いることもできる。
【0063】
また、金属化合物として、水酸化銅、酸化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、硝酸銅、硫酸銅、リン酸銅、炭酸銅、酢酸銅、シュウ酸銅、プロピオン酸銅、ブタン酸銅、吉草酸銅、オクタン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、安息香酸銅、ステアリン酸銅といった銅化合物を用いることもできる。
【0064】
また、金属化合物として、水酸化バナジウム、酸化バナジウム、塩化バナジウム、臭化バナジウム、硝酸バナジウム、硫酸バナジウム、リン酸バナジウム、炭酸バナジウム、酢酸バナジウム、シュウ酸バナジウム、プロピオン酸バナジウム、ブタン酸バナジウム、吉草酸バナジウム、オクタン酸バナジウム、2−エチルヘキサン酸バナジウム、安息香酸バナジウム、ステアリン酸バナジウムといったバナジウム化合物を用いることもできる。
【0065】
また、金属化合物として、水酸化モリブデン、酸化モリブデン、塩化モリブデン、臭化モリブデン、硝酸モリブデン、硫酸モリブデン、リン酸モリブデン、炭酸モリブデン、酢酸モリブデン、シュウ酸モリブデン、プロピオン酸モリブデン、ブタン酸モリブデン、吉草酸モリブデン、オクタン酸モリブデン、2−エチルヘキサン酸モリブデン、安息香酸モリブデン、ステアリン酸モリブデンといったモリブデン化合物を用いることもできる。
【0066】
また、金属化合物として、水酸化マンガン、酸化マンガン、二酸化マンガン、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、リン酸マンガン、炭酸マンガン、酢酸マンガン、シュウ酸マンガン、プロピオン酸マンガン、ブタン酸マンガン、吉草酸マンガン、オクタン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸マンガン、安息香酸マンガン、ステアリン酸マンガンといったマンガン化合物を用いることもできる。
【0067】
また、金属化合物として、水酸化鉄、酸化鉄、塩化鉄、臭化鉄、硝酸鉄、硫酸鉄、リン酸鉄、炭酸鉄、酢酸鉄、シュウ酸鉄、プロピオン酸鉄、ブタン酸鉄、吉草酸鉄、オクタン酸鉄、2−エチルヘキサン酸鉄、安息香酸鉄、ステアリン酸鉄、ナフチル酸鉄、鉄アセチルアセトネート、フェロセン、1,1’−ジクロロフェロセン、カルボキシフェロセン、1,1−ジフェニルホスフィノフェロセン、フェロセニルテトラフルオロボレート、トリカルボニル(シクロオクタテトラエン)鉄、(η−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)トリカルボニル鉄といった鉄化合物を用いてもよい。
【0068】
これらの金属化合物の中でも、経済性や酸素吸収効率の観点から、各種のコバルト塩が特に好ましい。
【0069】
金属化合物の使用量は、特に制限されるものではないが、N−ヒドロキシイミド化合物1モルに対して、通常0.001〜0.1モル、好ましくは0.005モル〜0.05モルの範囲内である。
【0070】
また、本発明の酸素吸収体は、発明の効果が得られる限り、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、各種オイル、各種鉱物油、発泡剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤、難燃剤、防カビ剤、低収縮剤、増粘剤、離型剤、防曇剤、ブルーイング剤、シランカップリング剤、香料などが挙げられる。また、本発明の酸素吸収体は、必要に応じて、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、タルク、グラファイト、二酸化チタン、二硫化モリブデン、マイカ等の充填剤を含有していてもよい。
【0071】
本発明の酸素吸収体を製造する場合、酸化触媒であるN−ヒドロキシイミド化合物、および必要に応じて使用される金属化合物を、被酸化性の重合体に均一に分散させることが重要である。以下に、本発明の酸素吸収体を製造する方法について、例を挙げて説明する。
【0072】
第1の方法では、式(1)で表されるN−ヒドロキシイミド化合物と被酸化性の重合体と溶媒とを含む混合物を調製し、その後、該混合物から溶媒を除去する。第1の方法では、混合物中で、被酸化性の重合体およびN−ヒドロキシイミド化合物を均一性よく溶解または分散できる。また、第1の方法では、混合物を基材に塗布したのち溶媒を除去することによって、酸素吸収体のフィルムを形成してもよい。第2の方法では、式(1)で表されるN−ヒドロキシイミド化合物と溶媒とを含む混合物を被酸化性の重合体に塗布し、その後、該重合体に塗布された混合物から溶媒を除去する。ここで、該重合体の形態は特に限定されず、たとえば該重合体からなる膜であってもよいし、該重合体を特定の形状(たとえば容器)に成形した成形体であってもよい。なお、これらの膜や成形体は、該重合体に加えて他の物質を含んでもよい。
【0073】
溶媒は、上記の方法を実施できるものである限り、特に限定はない。使用可能な溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、デカン、デカリンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)などのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類;アセトン、メチルビニルケトン、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール類;クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物類;水などが挙げられる。これらの中でも、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、およびアセトンは、酸素吸収体への残存が少なく、操作性がよいという点で好ましい。
【0074】
溶媒は、溶存酸素濃度を十分に低下させる処理を行ったうえで使用することが好ましい。たとえば、脱気や、窒素等の不活性ガスを吹き込む処理を行うことが好ましい。
【0075】
溶媒の使用量は、被酸化性の重合体とN−ヒドロキシイミド化合物とを均一に混合することが容易であることから、被酸化性の重合体に対して2〜1000倍(重量比)であることが好ましい。また、溶媒の使用量は、操作性、経済性などを考慮すれば、被酸化性の重合体に対して2.5〜200倍(重量比)であることがより好ましい。
【0076】
また、N−ヒドロキシイミド化合物は、被酸化性の重合体との混合に先立って、予め、微小な粉末の形態にしておいてもよい。
【0077】
また、N−ヒドロキシイミド化合物および/または被酸化性の重合体を、適切な溶媒に溶解して溶液を調製したのち、あるいはそれらを適切な溶媒に分散させて分散液を調製したのち、それらを混合することも好ましい。
【0078】
被酸化性の重合体とN−ヒドロキシイミド化合物との混合、および所望により行われる分散や溶解は、撹拌手段を備えた容器を用いて実施することができる。撹拌手段としては、特に限定されないが、大きな剪断力を生じさせる観点から、タービン型撹拌機、コロイドミル、ホモミキサー、ホモジナイザーが好ましい。また、分散は、可動式の撹拌装置を備えたラインミキサーを用いて実施してもよいし、「スタティックミキサー」(商品名、株式会社ノリタケ製)などの非可動式のライン式混合機を用いて実施してもよい。
【0079】
溶媒の除去は、撹拌機およびコンデンサーを備えた反応槽や、ロータリーエバポレーター等を用いて、常圧下、好ましくは減圧下で実施することができる。その際の減圧度は、使用する溶媒によって異なるが、N−ヒドロキシイミド化合物の安定性を維持するために、溶媒の除去温度が80℃以下になるように調整することが好ましく、50℃以下になるように調整することがより好ましい。
【0080】
また、被酸化性の重合体とN−ヒドロキシイミド化合物の両方が溶媒に分散している場合、溶媒の除去は、濾過や遠心分離によって実施することもできる。また、被酸化性の重合体とN−ヒドロキシイミド化合物の両方が溶液に溶解している場合、この溶液を非溶剤に添加して沈澱させる方法や晶析によって分離する方法なども採用することができる。
【0081】
N−ヒドロキシイミド化合物の溶液を被酸化性重合体に塗布する方法としては、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、スプレー法、スクリーン印刷法等の公知の手法を採用することができる。
【0082】
本発明の酸素吸収体は、被酸化性の重合体とN−ヒドロキシイミド化合物とを溶媒の不存在下で混合する、いわゆる固体混合によって調製することもできる。混合には、ブラベンダー、ジェットミル、ボールミル等の混合器を使用することができる。混合の温度は特に限定されないが、200℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。なお、混合時の温度が高い場合には、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気下で混合する等、酸素を遮断して混合することが好ましい。
【0083】
また、本発明の酸素吸収体は、被酸化性の重合体とN−ヒドロキシイミド化合物とを、超臨界状態の流体を媒介として混合することによって調製することもできる。
【0084】
超臨界状態の流体を媒介として、各種のポリマーからなる基材に、生理活性物質やモノマーなどを含浸する方法は公知である。この方法および操作の条件は、例えば、米国特許第4,598,006号明細書、米国特許第4,820,752号明細書、特表平8−506612号公報、特開平11−255925号公報などに詳細に説明されている。本発明の酸素吸収体は、このような文献に記載された条件下での操作に準じて調製することができる。
【0085】
使用可能な超臨界状態の流体としては、例えば、二酸化炭素、窒素、エタン、プロパン、シクロヘキサン、エタノール、メタノール、ヘキサン、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、水、テトラフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、テトラフルオロメチレンなどが挙げられる。
【0086】
また、所望により添加される、金属化合物や各種添加剤は、N−ヒドロキシイミド化合物の添加に先立って、被酸化性重合体に添加しておいてもよいし、N−ヒドロキシイミド化合物とともに被酸化性重合体に添加してもよい。また、被酸化性の重合体とN−ヒドロキシイミド化合物とを含む酸素吸収体を調製し、これに、金属化合物や添加剤を添加してもよい。
【0087】
金属化合物や各種添加剤は、適切な溶媒に溶解させて溶液の形態で添加してもよいし、適切な溶媒に分散させて分散液として添加してもよいし、固体混合によって添加してもよい。こうした操作は、上記したような装置を使用して、上記したのと同様の条件で実施することができる。
【0088】
本発明の酸素吸収体は、その効果が得られる限り、必要に応じて、様々な形態で使用することができる。本発明の酸素吸収体は、たとえば、ペレットや粉末状の形状で使用することができる。また、本発明の酸素吸収体は、フィルム、板、繊維、織布、不織布、チューブ、異形成形体などの各種の形状に成形して使用することもできる。
【0089】
成形には、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形、パウダースラッシュ成形、湿式紡糸、溶融紡糸などの任意の成形法を利用することができる。なお、押出成形、射出成形、溶融紡糸といった、溶融を伴う成形法を利用する場合、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガスを利用して、酸素を遮断した条件下で成形を行うことが好ましい。
【0090】
また、ペレットや粉末の形状に形成された酸素吸収体は、必要に応じて、水中または不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
【0091】
また、本発明の酸素吸収体は、各種の他の材料(例えば、合成樹脂、ゴム、金属、木材、セラミック、紙および布帛など)と組み合わせて複合物品(積層構造体や複合構造体など)の形態で使用してもよい。
【0092】
上記の他の材料の具体例としては、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリオレフィン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン/無水マレイン酸共重合体(SMA樹脂)、ゴム強化ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリデン系重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリフッ化ビニリデンフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの各種の合成樹脂を用いることができる。また、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリルゴムなどの各種の合成ゴムを用いることもできる。また、鉄、アルミニウム、銅などの金属;ステンレスなどの合金、ブリキやトタンなどの各種金属板などを用いることもできる。
【0093】
複合物品の製造には、二色成形やコアバッグ成形などの従来から公知の成形法を利用することができる。
【0094】
また、本発明の酸素吸収体を適切な溶媒に溶解または分散させた液体を、各種基材に塗布し、自然乾燥や加熱強制乾燥等によって溶媒を除去して複合物品を作製してもよい。基材には、たとえば、紙、ポリエチレンのフィルム、ポリプロピレンのシート、ポリエステル繊維やポリアミド繊維からなる布帛などを用いることができる。液体の塗布は、たとえば、スプレーガン等による噴霧や、グラビアローラーによる塗布で実施することができる。基材が織布や不織布の場合、本発明の酸素吸収体を適切な溶媒に溶解させた溶液を、該基材に含浸させ、必要に応じて非溶剤を用いて凝固させ、シート状の複合物品を作製してもよい。
【0095】
本発明の酸素吸収体は、良好な酸素吸収性を有し、安全性も高いことから、例えば、加圧密閉装置;ボトル、レトルトパウチ等の各種食品容器;各種食品包装材料、農業用包装材、医療用包装材;ガソリンタンク、化粧品容器、キャップライナー、ホース、チューブ;O−リング、パッキン、ガスケット等のシール材などの各種用途において、酸素吸収の目的で使用することができる。また、本発明の酸素吸収体を用いてシートや粉末を形成し、酸素吸収剤として使用することもできる。
【0096】
本発明の包装材は、本発明の酸素吸収体からなる部分を含む。本発明の包装材は、キャップやボトルの形状であってもよい。また、本発明の包装材は、上述したような他の材料からなる層と、本発明の酸素吸収体からなる層とが積層された多層膜であってもよい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されない。
【0098】
<実施例1>
ポリプロピレン(ジェイアロマーPL500A(商品名)、日本ポリオレフィン株式会社製)3gをキシレン100mlに溶解した後、N−ヒドロキシフタルイミド15mgを加えて50℃で十分に混合した。得られた溶液をガラス板に塗布した後、減圧下でキシレンを留去し、フィルムを得た。
【0099】
得られたフィルム〔サイズ:30mm×50mm×0.1mm(厚さ)〕を23℃、50%RHの条件下で1週間空気に晒した後、赤外吸収スペクトルで分析した。その結果、新たなピークとして、3200cm−1付近にヒドロキシル基に対応する特性吸収が認められた。この結果から、ポリプロピレンが空気中の酸素と反応して酸素を吸収していることが分かった。
【0100】
<実施例2>
ポリプロピレン(ジェイアロマーPL500A(商品名)、日本ポリオレフィン株式会社製)70gとN−ヒドロキシフタルイミド0.35gとを、ブラベンダーを用いて窒素雰囲気下、180℃で十分に混合した。得られた混合物1gを内容積が250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素が12.3cc減少したことが確認された。
【0101】
<比較例1>
実施例2とは異なり、N−ヒドロキシフタルイミドを添加せず、ポリプロピレン(ジェイアロマーPL500A(商品名)、日本ポリオレフィン株式会社製)1gのみを内容積250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素の減少が認められなかった。
【0102】
<実施例3>
ポリプロピレン(ジェイアロマーPL500A(商品名)、日本ポリオレフィン株式会社製)70gと、N−ヒドロキシフタルイミド0.35gと、ステアリン酸コバルト0.59gとをブラベンダーを用いて窒素雰囲気下、180℃で十分に混合(固体混合)した。得られた混合物1gを内容積が250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素が17.2cc減少したことが確認された。
【0103】
<実施例4>
プロピレンのホモポリマーを主成分とする市販の二軸延伸フィルムを用意した。次に、メタノール45gにN−ヒドロキシフタルイミド0.05gを加え、窒素雰囲気下において室温で均一に溶解させた。得られた溶液を、上記フィルム上にバーコーターによって塗布したのち、真空乾燥機で溶媒を除去した。このようにして、N−ヒドロキシフタルイミドをフィルム内に浸透させ、酸素吸収体のフィルム(厚さ約10μm)を得た。得られたフィルム1gを、内容積250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素が3.1cc減少したことが確認された。
【0104】
<実施例5>
ポリブタジエン(B−2000(商品名)、日本石油化学株式会社製)70gに、N−ヒドロキシフタルイミド0.35gを加えてブラベンダーを用いて窒素雰囲気下、180℃で十分に混合した。得られた混合物1gを内容積が250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素が33.8cc減少したことが確認された。
【0105】
<実施例6>
ポリオクテニレン(ベステナマー(商品名)、株式会社デグッサ製)70gにN−ヒドロキシフタルイミド0.35gを加えてブラベンダーを用いて窒素雰囲気下、180℃で十分に混合した。得られた混合物1gを内容積が250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素が16.9cc減少したことが確認された。
【0106】
<実施例7>
スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体(ハイブラー(商品名)、株式会社クラレ製)70gにN−ヒドロキシフタルイミド0.35gを加えてブラベンダーを用いて窒素雰囲気下、180℃で十分に混合した。得られた混合物1gを内容積が250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素が26.1cc減少したことが確認された。
【0107】
<実施例8>
水(30wt%)とメタノール(70wt%)との混合溶液45gと、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVAL(商品名)、株式会社クラレ製)5gとをビーカーに採取し、よく撹拌しながら80℃まで加熱し、10wt%濃度のEVAL溶液を作製した。この溶液に、N−ヒドロキシフタルイミド0.05gを加え、窒素雰囲気下において室温で均一に溶解させた。得られた溶液を、コロナ処理を施した市販のPETフィルム上にバーコーターで塗布したのち、真空乾燥機で溶媒を除去した。このようにして、酸素吸収体のフィルム(厚さ約10μm)を得た。得られたフィルム1gを、内容積250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素が1.2cc減少したことが確認された。
【0108】
<実施例9>
水分離器および温度計を装着した内容積300mlの3口フラスコに、トルエン100g、5−シクロオクテン−1,2−ジオール14.2g(0.1モル)、4,5−ジヒドロテトラヒドロフタル酸17.0g(0.1モル)、およびp−トルエンスルホン酸0.01gを投入した。これらを、生成する水を除去しながら、120℃で6時間反応させた。水1.9gが分離された時点で反応を停止し、反応生成物を室温まで冷却した。次に、反応生成物を水100mlで3回洗浄した後、減圧下でトルエンを留去して、炭素−炭素二重結合を含有する不飽和ポリエステル(分子量:約1500)を31.1g得た。
【0109】
この不飽和ポリエステル1gにN−ヒドロキシフタルイミド5mgを加えて室温にて十分に混合し、酸素吸収体を調製した。得られた酸素吸収体を内容積250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素が5.8cc減少したことが確認された。
【0110】
<実施例10>
5−シクロオクテン−1,2−ジオール14.2g(0.1モル)に代えて、3−シクロヘキセン−1,1−ジメタノール14.2g(0.1モル)を使用したことを除いて実施例9と同様の操作を行い、炭素−炭素二重結合を含有する不飽和ポリエステル(分子量:約1500)を32.7g得た。
【0111】
この不飽和ポリエステル1gにN−ヒドロキシフタルイミド5mgを加えて室温にて十分に混合し、酸素吸収体を調製した。得られた酸素吸収体を内容積250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日で酸素が5.4cc減少したことが確認された。
【0112】
<比較例2>
N−ヒドロキシフタルイミドを添加することなく、5−シクロオクテン−1,2−ジオールおよび4,5−ジヒドロテトラヒドロフタル酸のみを原料として、実施例9と同様の操作を行い、不飽和ポリエステル(分子量:約1500)を得た。この不飽和ポリエステルのみを、内容積250mlの密閉容器内に移した。この容器を23℃で保存し、容器内の酸素の量をガスクロマトグラフィーで定量したところ、25日間で酸素の減少が認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の酸素吸収体は、十分な酸素吸収性を示し、かつ安全性が高いため、各種容器、各種包装材料、シール材などの各種用途において酸素吸収の目的で使用できる。本発明によって提供される酸素吸収体は、密閉容器内に残存する酸素を吸収する吸収体などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される少なくとも1つの化合物と、被酸化性の重合体とを含む酸素吸収体。
【化2】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RおよびRは、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。Rおよび/またはRは、それらが結合する炭素原子と炭素−炭素二重結合を形成してもよい。)
【請求項2】
前記RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、保護基によって保護された水酸基、保護基によって保護されたメルカプト基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、保護基によって保護されたカルボキシル基、保護基によって保護されたアルデヒド基、保護基によって保護されたアミノ基、ジアルキルアミノ基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸基の金属塩、スルホン酸エステル基、式−OP(=O)(OH)で示される基、式−OP(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体、式−P(=O)(OH)で示される基、式−P(=O)(OH)で示される基の金属塩またはエステル誘導体を表す請求項1に記載の酸素吸収体。
【請求項3】
前記重合体が、第3級炭素原子を含む請求項1に記載の酸素吸収体。
【請求項4】
前記化合物が、N−ヒドロキシフタルイミドである請求項1に記載の酸素吸収体。
【請求項5】
請求項1に記載の酸素吸収体からなる部分を含む包装材。
【請求項6】
(i)下記の式(1)で表される少なくとも1つの化合物と、被酸化性の重合体と、溶媒とを含む混合物を調製することと、
(ii)前記混合物から前記溶媒を除去することとを含む酸素吸収体の製造方法。
【化3】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RおよびRは、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。Rおよび/またはRは、それらが結合する炭素原子と炭素−炭素二重結合を形成してもよい。)
【請求項7】
(i)下記の式(1)で表される少なくとも1つの化合物と溶媒とを含む混合物を被酸化性の重合体に塗布することと、
(ii)前記重合体に塗布された前記混合物から前記溶媒を除去することとを含む酸素吸収体の製造方法。
【化4】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RおよびRは、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。Rおよび/またはRは、それらが結合する炭素原子と炭素−炭素二重結合を形成してもよい。)
【請求項8】
前記RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、水酸基、保護基によって保護された水酸基、保護基によって保護されたメルカプト基、カルボキシル基、カルボキシル基の金属塩、保護基によって保護されたカルボキシル基、保護基によって保護されたアルデヒド基、ジアルキルアミノ基、保護基によって保護されたアミノ基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸基の金属塩、スルホン酸エステル基、式−OP(=O)(OH)で示される基またはその金属塩もしくはエステル誘導体、式−P(=O)(OH)で示される基またはその金属塩もしくはエステル誘導体を表す請求項6または7に記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/010101
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512018(P2005−512018)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010402
【国際出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】