説明

酸素吸収多層フィルム及び包装容器

【課題】 酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きを防止し、スリップ剤のブリードによるドライラミネート不良が発生しない押出ラミネートよる酸素吸収多層フィルムの製法を提供する。
【解決手段】 内面側より順に、少なくとも、熱可塑性樹脂からなるシーラント層、熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤が分散した樹脂組成物からなる酸素吸収層、及びガスバリア性物質からなるバリア層を備えた酸素吸収多層フィルムにおいて、酸素吸収層の熱可塑性樹脂がポリオレフィンであり、酸素吸収層中にスリップ剤0.08〜0.25重量%含有することを特徴とする酸素吸収多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内面側より順に、少なくとも、熱可塑性樹脂からなるシーラント層、熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤が分散した樹脂組成物からなる酸素吸収層、及びガスバリア性物質からなるバリア層を備えた酸素吸収多層フィルムにおいて、酸素吸収層の熱可塑性樹脂がポリオレフィンであり、酸素吸収層中にスリップ剤0.08〜0.25重量%含有することを特徴とする酸素吸収多層フィルムに関する。並びに本発明の酸素吸収多層フィルムからなる酸素吸収性包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存性向上や風味変化を防止する方法として、脱酸素剤を用いる包装技術があり、様々な食品で利用されている。脱酸素剤包装技術は、保存すべき食品を被包した包装容器内を脱酸素剤を用いて嫌気状態に保つことにより、酸素の存在に起因する食品の品質劣化を防止する技術である。近年、脱酸素包装技術の一つとして、熱可塑性樹脂に酸素吸収剤を配合した酸素吸収性樹脂組成物からなる酸素吸収層を配した多層材料で容器を構成し、容器のガスバリア性の向上を図ると共に、容器自体に酸素吸収機能を付与した包装容器の開発が行われている。
【0003】
これらのうち、総厚みの薄い酸素吸収性多層体、いわゆる酸素吸収性多層フィルムは、シーラント層、酸素吸収剤を分散した熱可塑性樹脂層である酸素吸収層及びガスバリア層が積層してなる多層フィルムであり、容器外部からの酸素透過を防ぐ機能に容器内の酸素を吸収する機能を付加したものとして利用され、押し出しラミネートや共押し出しラミネート、ドライラミネート等の従来公知の製造方法を利用して製造されている。具体的には、特開平9−40024号公報に開示されているように、酸素吸収層とガスバリア層間に熱可塑性樹脂層クッション層が介在する酸素吸収多層フィルムが知られている。また、特開平9−234832号公報に開示されているように、酸素吸収層とガスバリア層間に平滑化層を設けた酸素吸収多層フィルムが知られている。
【特許文献1】特開平9−40024号公報
【特許文献2】特開平9−234832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シーラント層、熱可塑性樹脂層に鉄系酸素吸収剤が分散した樹脂組成物からなる酸素吸収層を積層してなる酸素吸収多層フィルムを作製する際、ポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物を、単軸押出機、Tダイ、冷却ロールからなる押出ラミネート装置を用い、シーラント層の片面に押し出した場合、酸素吸収層表面の滑り性が不足し冷却ロールへの張り付きが発生し、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミが発生するという問題があった。
【0005】
一方、ポリオレフィン樹脂からなる酸素吸収層にスリップ剤を配合すると、酸素吸収層表面の滑り性は向上し冷却ロールへの張り付きが防止でき、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミの発生を防止できる。しかし、酸素吸収層からスリップ剤のブリードが発生し、酸素吸収層表面の濡れ性が低下しドライラミネート不良が発生するという問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の脱酸素剤包装技術の問題を解決するべく鋭意研究を行った結果、ポリオレフィン樹脂中に鉄粉系酸素吸収剤を混練し分散させた酸素吸収樹脂組成物にスリップ剤を0.08〜0.25重量%添加することにより、シーラント層、酸素吸収層を積層してなる酸素吸収多層フィルムを押出ラミネートにて作製する際、酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きを防止し、かつスリップ剤のブリードによるドライラミネート不良が発生しないことを見出し本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、内面側より順に、少なくとも、熱可塑性樹脂からなるシーラント層、熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤が分散した樹脂組成物からなる酸素吸収層、及びガスバリア性物質からなるバリア層を備えた酸素吸収多層フィルムにおいて、酸素吸収層の熱可塑性樹脂がポリオレフィンであり、酸素吸収層中にスリップ剤0.08〜0.25重量%含有することを特徴とする酸素吸収多層フィルムに関する。並びに本発明の酸素吸収多層フィルムからなる酸素吸収性包装容器に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸素吸収多層フィルムは、酸素吸収剤樹脂中に0.08〜0.25重量%のスリップ剤を配合することにより、酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きは発生せず、加工性は良好であり、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミの発生を防止することが可能で、かつスリップ剤のブリードによるドライラミネート不良の問題のない優れた酸素吸収性多層フィルムである。
本発明の酸素吸収性多層フィルムからなる包装容器は、長期間保存しても初期の外観、風味を保持し、各種食品、医薬品などの収納物品の長期保存を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の酸素吸収性多層フィルムを構成するシーラント層は、本発明の酸素吸収性多層フィルムを包装容器の一部または全部に利用した際にシーラントとなる部分であり、また収納物品と酸素吸収層を隔離する隔離層としての役割や、包装容器内の酸素が酸素吸収層中の酸素吸収剤に速やかに吸収されるために効率良く酸素透過する酸素透過層としての役割を有する。
【0010】
本発明の酸素吸収性多層フィルムを構成するシーラント層には前述の役割を果たすことが可能な、酸素透過性を有する熱可塑性樹脂であれば、制限することなく使用することができる。例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、メタロセン触媒によるポリプロピレン等の各種ポリプロピレン類、ポリメチルペンテン、熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらを単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0011】
これらの中でも、特に、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン類が好ましい。
【0012】
シーラント層には酸化チタン等の着色顔料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤等の添加剤、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、消臭剤等を添加しても良い。
【0013】
本発明の酸素吸収性多層フィルムを構成するシーラント層の膜厚は、10〜100μmであることが好ましく、20〜80μmであればより好ましい。シーラント層の膜厚が10μmより薄いと酸素吸収層の酸素吸収剤が表面に露出したり、ヒートシール強度が低下するため好ましくない。また、シーラント層の膜厚が100μmより厚いと、積層が困難になったり、また酸素透過性が低下してフィルムの酸素吸収性能が低下したり、さらにコストに問題があるため好ましくない。
【0014】
本発明の酸素吸収性多層フィルムを構成する酸素吸収層は、熱可塑性樹脂中に脱酸素剤を分散してなるものである。酸素吸収層は、容器内又は収納物品中に溶存する酸素を吸収する役割、また、バリア層外部から侵入する微量の酸素を吸収して容器内部への酸素透過を防ぐ役割を有する。
【0015】
本発明の酸素吸収層を構成する熱可塑性樹脂として、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレンを単独または組み合わせて使用することができる。またエチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、プロピレンポリマー、プロピレンーエチレンブロック共重合体、プロピレンーエチレンランダム共重合体、メタロセン触媒によるポリプロピレン等の各種ポリプロピレン類、ポリメチルペンテン、熱可塑性エラストマー等と組み合わせて使用することもできる。
【0016】
本発明の酸素吸収性多層フィルムを構成する酸素吸収層に分散される脱酸素剤としては、鉄粉及びハロゲン化金属からなる鉄系酸素吸収剤組成物が好ましく用いられる。鉄系酸素吸収剤組成物の主剤である鉄粉としては、酸素吸収反応を起こしうるものであれば純度等には特に制限することなく使用でき、例えば、表面の一部が既に酸化していても良く、他の金属を含有するものであっても良い。また、鉄粉は粒状のものが好ましく、例えば、還元鉄粉、噴霧鉄粉、電解鉄粉等の鉄粉、鋳鉄、鋼材等の各種鉄の粉砕物や研削品等が用いられる。その平均粒径は、取り扱い性や、酸素吸収層の膜厚を薄くすること、及びフィルム外観に現れる酸素吸収剤の凹凸をできるだけ小さくすることを考慮し、1〜100μmの範囲とすることが好ましく、特に1〜80μmの範囲とすることが好ましい。
【0017】
鉄系酸素吸収剤の助剤であるハロゲン化金属としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物、臭化物又はヨウ化物が用いられ、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはバリウムの塩化物又はヨウ化物が好ましく用いられる。ハロゲン化金属の配合量は、鉄粉100重量部当たり0.1〜20重量部が好ましく、特に0.1〜5重量部が好ましい。
【0018】
ハロゲン化金属は、鉄粉に付着して容易に分離しないよう、予め混合して添加することが好ましい。例えば、ボールミル、スピードミル等を用いてハロゲン化金属と鉄粉を混合する方法、鉄粉表面の凹凸部にハロゲン化金属を埋め込む方法、バインダーを用いてハロゲン化金属を鉄粉表面に付着させる方法、ハロゲン化金属水溶液と鉄粉を混合した後乾燥して鉄粉表面にハロゲン化金属を付着させる方法等を採ることができる。好ましい酸素吸収剤は、鉄粉とハロゲン化金属を含む鉄粉系組成物であり、特に好ましくは、鉄粉にハロゲン化金属を付着させたハロゲン化金属被覆鉄粉組成物である。
【0019】
本発明の酸素吸収性多層フィルムを構成する酸素吸収層中における酸素吸収剤の配合量は10〜70重量%の範囲とすることが好ましく、10〜60重量%の範囲がより好ましい。酸素吸収剤の配合量が10重量%より低いと、酸素吸収能力が不十分であり好ましくなく、70重量%より高いと、酸素吸収層を製膜することが困難であるため好ましくない。
【0020】
本発明においては、酸素吸収層として、酸素吸収剤を分散し、スリップ剤を添加したポリオレフィン樹脂が使用される。スリップ剤は、酸素吸収層表面の抵抗を下げて滑り性を向上させ加工性を向上させるための添加剤であり、脂肪酸アマイド系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸金属石鹸が好ましく用いられる。エルカ酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系滑剤が特に好ましい。本発明の酸素吸収性多層フィルムを構成する酸素吸収層中におけるスリップ剤の添加量は0.08〜0.25重量%の範囲とすることが好ましく、0.10〜0.20重量%の範囲がより好ましい。スリップ剤の配合量が0.08重量%より低いと、酸素吸収層表面の滑り性が十分でなく冷却ロールへの張り付きが生じるため好ましくなく、0.25重量%より高いと、スリップ剤のブリードにより酸素吸収層表面の濡れ性が低下しドライラミネート不良が発生するため好ましくない。
【0021】
本発明におけるスリップ剤の添加方法は、制限はなく、ポリオレフィン樹脂とスリップ剤を予め混合して混練してもよく、スリップ剤が添加済のポリオレフィン樹脂を使用してもよい。また、スリップ剤マスターバッチを使用しても良い。
【0022】
本発明の酸素吸収性多層フィルムを構成する酸素吸収層の膜厚は、構成材料によらず、20〜100μmの範囲とすることが好ましく、特に好ましくは30〜80μmの範囲である。酸素吸収層の膜厚が20μmより薄いと、製膜が困難となったり、フィルム単位面積当たりの酸素吸収剤量が少なくなり、十分な酸素吸収性能が得られなくなる。また、100μmより厚いと、フィルム総厚みが厚くなり、取り扱い性に不便を生じる場合があったり、コストに問題が生じる。
【0023】
また、本発明の酸素吸収層には、必要に応じて、酸化チタン等の着色顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、安定剤等の各種添加剤、クレー、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤、消臭剤、活性炭やゼオライト等の吸着剤等を添加しても良い。
【0024】
本発明において、ガスバリア層には、包装容器とした場合に容器外部から侵入する酸素を遮断する層であり、例えば、アルミ箔等の金属箔、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロンMXD6、ポリエチレンテレフタレート等のガスバリア性樹脂、アルミニウム蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム等の蒸着フィルム等を単独又は組合せて用いることができる。
【0025】
本発明の酸素吸収多層フィルムは、順に、熱可塑性樹脂からなるシーラント層、ポリオレフィン樹脂に酸素吸収剤及びスリップ剤が配合された酸素吸収層、及びガスバリア性物質からなるバリア層の少なくとも3層からなるが、その他の層を付加することは差し支えない。
【0026】
例えば、ガスバリア層の破損やピンホールを防ぐために、バリア層の外側に熱可塑性樹脂からなる保護層を設けることが好ましい。保護層に用いる樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、プロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体等のポリプロピレン類、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド類、さらに、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類およびこれらの組合せが挙げられる。
【0027】
本発明の、酸素吸収多層フィルムは、全体が前記酸素吸収多層フィルムからなる酸素吸収性容器として使用できるが、片面が前記酸素吸収多層フィルムで片面が一般のガスバリア性フィルムからなる容器等、ガスバリア性容器の一部に前記酸素吸収多層フィルムが使用された酸素吸収性容器としても使用できる。
【0028】
本発明の密封容器には、食品、医薬品等が制限なく収納される。例えば、果肉入りゼリー、羊羹、プリン等の菓子類、パイン、みかん、桃、あんず、なし、りんご等のフルーツ類、液体だし、マヨネーズ、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、カレー、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品や、そば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類、粉末スープ、だしの素等の粉末調味料等に代表される高水分食品、その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤等、種々の物品を収納することができ、容器外部から酸素が侵入することがなく、また容器内部の酸素は脱酸素剤組成物によって吸収されることから、物品の酸化腐食等が防止され、長期間の良好な品質保持が可能となる。
【0029】
また、本発明の密封容器を、加熱処理しても良い。加熱処理としては、80℃〜100℃のボイル処理、煮沸処理や100℃〜121℃のセミレトルト、レトルト処理等が挙げられる。さらに、本発明の密封容器を電子レンジで加熱することも可能である。
【0030】
本発明の方法が適用される物品は、必ずしも上記の食品、穀物類、医薬品等に限定されるものではなく、本発明の方法を適用して初期の目的の達成することのできる物品であればよい。
【実施例】
【0031】
本発明を実施例に沿ってさらに詳しく説明する。尚、本発明は実施例に必ずしも限定されない。
実施例1
平均粒径30μmの鉄粉1000kgを加熱ジャケット付き真空乾燥機中に投入し、10mmHgの減圧下140℃で混合しつつ、塩化カルシウム50重量%水溶液50kgを噴霧し、乾燥した後、篩い分けし粗粒を除き、平均粒径30μmの鉄系酸素吸収剤を得た。
次に、ベント付き二軸押出機を用いて、直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル(株)製、商品名PT1450)及びエルカ酸アマイドからなるスリップ剤を押出しながら、サイドフィードにて鉄系酸素吸収剤及び酸化カルシウムを供給し、ポリエチレン:鉄系酸素吸収剤:酸化カルシウム:スリップ剤=67.85:30.00:2.00:0.15重量比となるように、混練し、ストランドダイから押し出した後、冷却、ペレタイザーにてペレット化し、酸素吸収性樹脂組成物Aを得た。
【0032】
単軸押出機、Tダイ、冷却ロール、スリッター及び巻取機からなる押出ラミネート装置を用い、内面側に、繰り出される厚さ50μmのLLDPEフィルム((株)東セロ製、商品名HC)をシーラント層とし、その上に作製した前記酸素吸収樹脂組成物Aを厚さ30μmで押出ラミネートし、酸素吸収層とした。酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きは発生せず、加工性は良好であり、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミが発生しなかった。
【0033】
さらにその上に中間層として厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムをドライラミネートし、さらにその上に、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱化学興人パックス(株)製、商品名テックバリアT)をドライラミネートし積層し、酸素バリア層とした。得られた多層フィルムは、内面側より、LLDPE//酸素吸収層//ナイロン//シリカ蒸着PETの構成からなり、その酸素吸収層とナイロン間のドライラミネートは良好であった。
【0034】
前記酸素吸収多層フィルムのシーラント層面同士をヒートシールし、150mm×200mmの三方シールした酸素吸収性袋を作製した。作製した袋に、ミカン100gとシラップ液100gの混合物を密封し、95℃で40分間加熱した後、25℃下に保存した。保存30日目にみかんの色調、風味評価を行った。その結果、みかんの色調、風味が良好に保持されていた。
【0035】
実施例2
実施例1で用いたスリップ剤の添加量を変更し、ポリエチレン:鉄系酸素吸収剤:酸化カルシウム:スリップ剤=67.80:30.00:2.00:0.20重量比とした以外は実施例1と同様にして、酸素吸収性樹脂組成物Bを得た。
また、ポリエチレン:鉄系酸素吸収剤:酸化カルシウム:スリップ剤=67.90:30.00:2.00:0.10重量比とした以外は実施例1と同様にして、酸素吸収性樹脂組成物Cを得た。
【0036】
前記酸素吸収性樹脂組成物B及びCを用い、実施例1と同様にして押出ラミネートを実施した。B及びCも酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きは発生せず、加工性は良好であり、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミが発生しなかった。
また実施例1と同様にして得られた酸素吸収多層フィルムは、内面側より、LLDPE//酸素吸収層//ナイロン//シリカ蒸着PETの構成からなり、B及びCもその酸素吸収層とナイロン間のドライラミネート強度が強く、ドライラミネートは良好であった。
【0037】
実施例3
実施例1で用いたシーラントフィルムを厚さ80μmのLLDPEフィルム((株)東セロ製、商品名HC)とした以外は実施例1と同様にして、押出ラミネートを実施した。酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きは発生せず、加工性は良好であり、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミが発生しなかった。また実施例1と同様にして得られた酸素吸収多層フィルムは、内面側より、LLDPE//酸素吸収層//ナイロン//シリカ蒸着PETの構成からなり、その酸素吸収層とナイロン間のドライラミネート強度が強く、ドライラミネートは良好であった。
【0038】
比較例1
実施例1で用いたスリップ剤の添加量を変更し、ポリエチレン:鉄系酸素吸収剤:酸化カルシウム:スリップ剤=67.93:30.00:2.00:0.07重量比とした以外は実施例1と同様にして、酸素吸収性樹脂組成物Dを得た。
【0039】
前記酸素吸収性樹脂組成物Dを用い、実施例1と同様にして押出ラミネートを実施した。酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きが発生し、加工性は不良であり、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミが発生した。
【0040】
比較例2
比較例1の組成にアンチブロッキング剤(東京インキ(株)製、商品名ABT16)を添加し、ポリエチレン:鉄系酸素吸収剤:酸化カルシウム:スリップ剤:アンチブロッキング剤=62.93:30.00:2.00:0.07:5.00重量比とした以外は実施例1と同様にして、酸素吸収性樹脂組成物Eを得た。
【0041】
前記酸素吸収性樹脂組成物Eを用い、実施例1と同様にして押出ラミネートを実施した。酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きは発生し、加工性は不良であり、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミが発生した。
【0042】
比較例3
実施例1で用いたスリップ剤の添加量を変更し、ポリエチレン:鉄系酸素吸収剤:酸化カルシウム:スリップ剤=67.74:30.00:2.00:0.26重量比とした以外は実施例1と同様にして、酸素吸収性樹脂組成物Fを得た。
【0043】
前記酸素吸収性樹脂組成物Fを用い、実施例1と同様にして押出ラミネートを実施した。酸素吸収層の冷却ロールへの張り付きは発生せず、加工性は良好であり、酸素吸収多層フィルムにシワやタルミが発生しなかった。
【0044】
実施例1と同様にして得られた酸素吸収多層フィルムは、内面側より、LLDPE//酸素吸収層//ナイロン//シリカ蒸着PETの構成からなるが、その酸素吸収層とナイロン間のドライラミネート強度が低く、ドライラミネートは不良であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面側より順に、少なくとも、熱可塑性樹脂からなるシーラント層、熱可塑性樹脂に鉄系酸素吸収剤が分散した樹脂組成物からなる酸素吸収層、及びガスバリア性物質からなるバリア層を備えた酸素吸収多層フィルムにおいて、酸素吸収層の熱可塑性樹脂がポリオレフィンであり、酸素吸収層中にスリップ剤0.08〜0.25重量%含有することを特徴とする酸素吸収多層フィルム。
【請求項2】
該ポリオレフィンがポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の酸素吸収多層フィルム
【請求項3】
包装容器の一部又は全部が請求項1記載の酸素吸収多層フィルムからなる酸素吸収性包装容器。

【公開番号】特開2008−126441(P2008−126441A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311552(P2006−311552)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】