説明

重付加体及び該重付加体を含有するカチオン電着塗料

本発明は、カチオン電着塗料に用いた場合に、仕上がり性、耐油ハジキ牲、耐水跡性などの塗装作業性やシーラー付着性、防食性などに優れた塗膜を与える塗料安定性が良好な添加剤として、ポリオキシアルキレン鎖を有するアミン化合物とモノエポキシシランとの、重量平均分子量が250〜10,000の範囲内にある重付加体を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリオキシアルキレン鎖を有する新規な重付加体、及び仕上り性、耐油ハジキ性、耐水跡性などの塗装作業性や上塗り塗膜との付着性などに優れた塗膜を形成しうる該重付加体を含有するカチオン電着塗料に関する。
【背景技術】
カチオン電着塗料は、主に、自動車ボディや自動車部品を始めとする幅広い用途に使用されており、従来から種々の特性を有するものが開発されている。
カチオン電着塗料に要求される性能として、仕上り性、耐油ハジキ性、耐水跡性、耐コンタミ性などの塗装作業性や、上塗り塗膜との付着性などが挙げられ、特に、複雑形状の自動車ボディをライン塗装する際には、これらの性能は重要項目である。
上記の性能を向上させるために、従来、カチオン電着塗料に表面調整剤などを添加する方法が提案されており、例えば、以下に記載する方法(1)、(2)などが採用されている。
方法(1):表面調整剤を塗料に練り込んでエマルションとする方法。例えば、表面調整剤をアミン付加エポキシ樹脂などの基体樹脂、ブロックポリイソシアネート化合物などの硬化剤、その他の添加剤とともに水性媒体中に分散させ、エマルションを作製した後、そのエマルション及び顔料分散ペーストを用いてカチオン電着塗料を作製する方法。
方法(2):エマルション及び顔料分散ペーストを用いて予めカチオン電着塗料の浴を作製し、その浴に表面調整剤を添加する方法。
上記の方法(1)は、表面調整剤を基体樹脂や硬化剤とともにエマルション化するため、エマルションの分散性が低下し、エマルション粒径が増大することから、塗料安定性を損なったり、仕上り性や防食性の低下を招くおそれがある。
他方、上記の方法(2)では、表面調整剤が、カチオン電着塗料の浴や形成される塗膜に馴染まず、フィルター濾過機やUF濾過機の閉塞などの設備不具合、シーラーの脱落、中・上塗り塗膜の剥がれやハジキなどが生ずる心配がある。
これらの問題を改善する手段として、例えば、特公平6−76568号公報には、加水分解性アルコキシシラン基を含有するエポキシ樹脂アミン付加物を水分散化することにより得られるカチオン電着性のゲル化微粒子をカチオン電着塗料に配合し、その表面調整効果により形成塗膜にハジキ防止効果を付与することが提案されている。しかしながら、このカチオン電着性のゲル化微粒子は、カチオン電着塗料に後添加した場合にはハジキ防止効果があるものの(前記の方法(2)に適用できる)、カチオン電着塗料を長期間にわたってポンプで循環又は攪拌して機械的なシェアを与え続けると、塗面の仕上り性の低下や塗料安定性を損なうなどの問題が生ずる。
また、特開2001−3005号公報には、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのアルキレン系ポリエーテルポリオールや、ビスフェノール単独もしくはビスフェノールとグリコールとを反応させてなる芳香環含有ポリエーテルポリオールなどのポリエーテルポリオールを表面調整剤として含有する、仕上り性や防食性を低下することがないカチオン電着塗料が記載されている。しかし、上記特開2001−3005号公報に記載の表面調整剤は水分散性がなく、カチオン電着塗料の浴に後添加することができず、そのため、塗膜のハジキ防止効果を改善するための微調整ができないなどの問題がある。また、多量に添加すると、形成される電着塗膜とシーラーとの間の付着性が低下したり、中・上塗り塗膜との付着性が低下することがある。
他方、特開2001−288407号公報には、カチオン電着塗料中に、疎水性のアクリル樹脂と特定の分子量分布およびHLBを有する高級アルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物を添加することにより、塗膜の油ハジキ、乾きムラおよび水跡の発生を防止することが提案されている。しかし、上記特開2001−288407号公報に記載の方法では、エマルションの成分として疎水性のアクリル樹脂又は特定の分子量分布およびHLBを有する高級アルコールのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイド付加物の2種類を加えなければならず、しかも2種類の配合比率によっては油ハジキ、乾きムラなどが生じ塗装作業性が低下することがある。
さらに、特開2002−294165号公報には、ジエポキシ化合物とアミノポリエーテルとを反応させて得られる数平均分子量が20,000〜100,000のポリエーテル鎖を有するアミノエーテル変性エポキシ樹脂を表面調整剤として電着塗料に含有させることが提案されている。この表面調整剤は、前記の方法(2)に示されるような電着塗料への後添加が可能であるものの、マイルドな塗料攪拌(例えば、ラボの缶や小スケールのタンク)では安定性が良好であるが、塗装ラインにおいてフィルター濾過機やUF濾過機などのシェアを長期にわたって受けたときには、表面調整剤の一部が凝集してフィルター濾過機やUF濾過機の閉塞、塗面にブツが付着するなどの不具合を生じることがある。
そのため、前記の方法(1)及び(2)のいずれの添加方式にも適用可能であり、かつ仕上がり性、耐油ハジキ性、耐水跡性、耐コンタミ性などの塗装作業性、上塗り塗膜との付着性、塗装ラインでの塗料安定性、硬化性、防食性などをバランスよく保持したカチオン電着塗料用の表面調整剤の開発が求められている。
【発明の開示】
本発明者らは、上記要望に応えるべく鋭意研究を重ねた結果、今回、ポリエーテルポリアミンとモノエポキシシランを反応させることにより得られる重量平均分子量が250〜10,000の範囲内にある重付加体が、表面調整剤を予め塗料に練り込んでエマルション化する方法、カチオン電着塗料の浴を作製し、その後に表面調整剤を添加する方法のいずれの添加方法にも利用可能であり、しかも、該重付加体を含むカチオン電着塗料は、仕上がり性、耐油ハジキ性、耐水跡性、耐コンタミ性などの塗装作業性、上塗り塗料との付着性、塗装ラインでの塗料安定性、硬化性、防食性などに優れた塗膜を形成することを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明は、ポリオキシアルキレン鎖を有するアミン化合物(a)とモノエポキシシラン(a)との、重量平均分子量が250〜10,000の範囲内にある重付加体(A)を提供するものである
本発明は、また、基体樹脂としてエポキシ樹脂にアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂及び硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を含有するカチオン電着塗料に、上記重付加体(A)を、基体樹脂と硬化剤の合計固形分100重量部あたり0.1〜20重量部の範囲内で配合又は添加してなるカチオン電着塗料を提供するものである。
以下、本発明の重付加体及びカチオン電着塗料についてさらに詳細に説明する。
重付加体(A):
本発明の重付加体(A)は、ポリオキシアルキレン鎖を有するアミン化合物(a)とモノエポキシシラン(a)を反応させることにより得られるものであり、250〜10,000の範囲内の重量平均分子量を有する。
ポリオキシアルキレン鎖を有するアミン化合物(a)には、1分子中にポリオキシアルキレン鎖(このポリオキシアルキレン鎖は1種のオキシアルキレン単位からなるものであってもよく、或いは2種もしくはそれ以上のオキシアルキレン単位からなるものであってもよい)と、少なくとも1個、好ましくは1〜3個のアミノ基とを有する化合物が包含され、具体的には、例えば、下記式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される化合物を挙げることができる。

(式中、RはNH又はOHを表し、R及びRはそれぞれC又はCを表し、RはH、C又はCを表し、a、b及びnはそれぞれ1以上の整数であり、mは0以上の整数である)
上記式(1)で示される化合物の具体例としては、サンアミールTAP−10(重量平均分子量 約600)、サンアミールTAP−40(重量平均分子量約2,300)(以上いずれも、三洋化成社製、商品名)などが挙げられる。

(式中、R及びRはそれぞれC又はCを表し、RはH、C又はCを表し、a及びnはそれぞれ1以上の整数であり、mは0以上の整数である)
上記式(2)で示される化合物の具体例としては、サンアミールMAP−10(重量平均分子量 約600)、サンアミールMAP−20(重量平均分子量 約13,00)(三洋化成社製、商品名)などが挙げられる。

(式中、R及びRはそれぞれC又はCを表し、nは1以上の整数であり、mは0以上の整数である)
上記の式(3)で示される化合物の具体例としては、ジェファーミンD400(重量平均分子量 約400)、ジェファーミンD2000(重量平均分子量 約2,000)(以上いずれも、ハンツマン社製、商品名)などが挙げられる。

(式中、R及びRはそれぞれC又はCを表し、RはH、C又はCを表し、a、b及びnはそれぞれ1以上の整数であり、mは0以上の整数である)
モノエポキシシラン(a)には、1分子中に1個のエポキシ基と、1個の式

(ここでQ、Q及びQはそれぞれアルキル基、アルコキシ基またはアルキルカルボニルオキシ基を表し、ただしQ、Q及びQのうちの少なくとも1つはアルキル基以外の基である)
の基とを有する化合物が包含され、具体的には、例えば、下記式(5)〜(11)で示される化合物を挙げることができる。


本発明の重付加体(A)は、以上に述べたポリオキシアルキレン鎖を有するアミン化合物(a)のアミノ基とモノエポキシシラン(a)のエポキシ基との間の開環付加反応により製造することができる。この開環付加反応は、通常、適当な不活性溶媒中にて、約50〜約130℃、好ましくは約70〜約110℃の範囲内の温度で、30分間〜6時間程度、好ましくは1〜3時間程度攪拌することにより実施することができる。アミン化合物(a)に対するモノエポキシシラン(a)の使用割合は、厳密に制限されるものではないが、一般には、アミン化合物(a)のアミノ基1モルあたり、モノエポキシシラン(a)を0.5〜2モル、特に0.5〜1.5モルの範囲内で使用することが好ましい。また、使用しうる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
上記のアミン化合物(a)とモノエポキシシラン(a)との反応を、出発原料として、上記式(1)の化合物と上記式(5)の化合物を用いた場合を例にとって反応式で示せば以下のとおりである。

これにより、重量平均分子量が250〜10,000、好ましくは500〜6,000、さらに好ましくは1,000〜3,000の範囲内にある重付加体(A)を製造することができる。得られる重付加体(A)の重量平均分子量が10,000を越えると、塗装ラインにおいて該重付加体に長期にわたってシェアがかかった時の安定性が低下し、逆に、重量平均分子量が250未満であると、塗面の表面調整効果が不足して塗面にハジキが発生し易くなる。他方、重付加体(A)の重量平均分子量が上記の範囲内にあると、塗装ラインにおいて該重付加体にフィルター濾過機やUF濾過機などのシェアが長期にわたってかかったときでも重付加体(A)が安定しており、フィルターやUF膜の閉塞や塗面にブツが付着するなどの不具合が生ずることがない。
カチオン電着塗料:
本発明の重付加体(A)は、以下に述べる如き基体樹脂及び硬化剤、その他の塗料用添加剤とともに分散してエマルションとした後、カチオン電着塗料とすることができる。
また、重付加体(A)を有機酸、例えば、酢酸、ギ酸又はこれらの混合物で中和し、さらに水を加えて分散することによって水分散体(A)とすることができる。この水分散体(A)は、予め調製されたカチオン電着塗料の浴に後添加することができ、例えば、塗装ラインの休憩時間、休日などに添加することが可能である。上記の有機酸は、重付加体(A)の樹脂固形分1gあたりのmgKOH換算で、10〜100、好ましくは20〜70、さらに好ましくは30〜50の範囲内で使用することができる。有機酸の使用量が樹脂固形分1gあたりのmgKOH換算で、10mgKOH/g未満では、重付加体(A)を水分散体とすることが困難であり、反対に100を越えると、添加したカチオン電着塗料の酸濃度(MEQ)が上昇するためクーロン効率が低下し、通電しても造膜しないなどの不具合や、GA材(合金化溶融亜鉛メッキ鋼板)塗装においてピンホールが発生したりするなどの問題が生じやすくなる。
本発明に従い重付加体(A)を配合し又は添加することができるカチオン電着塗料は、好ましくは、基体樹脂として用いられるカチオン性樹脂と硬化剤としてのブロック化ポリイソシアネート化合物を基本成分として含有するものである。
基体樹脂として使用されるカチオン性樹脂は、分子中にアミノ基、アンモニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基などのカチオン化可能な基を有する樹脂であり、樹脂種としては、電着塗料の基体樹脂として通常使用されているもの、例えば、エポキシ系、アクリル系、ポリブタジエン系、アルキド系、ポリエステル系などのいずれのタイプの樹脂であってもよい。特に、ポリエポキシド化合物にアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂が好適である。
上記のアミン付加エポキシ樹脂としては、例えば、(1)ポリエポキシド化合物と第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第3,984,299号明細書参照);(2)ポリエポキシド化合物とケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとの付加物(例えば、米国特許第4,017,438号明細書参照);(3)ポリエポキシド化合物とケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物とのエーテル化により得られる反応物(例えば、特開昭59−43013号公報参照)等を挙げることができる。
上記のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるポリエポキシド化合物は、1分子中にエポキシ基を1個以上、好ましくは2個以上有する化合物であり、一般に、少なくとも200、好ましくは400〜4000、さらに好ましくは800〜2500の範囲内の数平均分子量及び少なくとも160、好ましくは180〜2500、さらに好ましくは400〜1500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適しており、特に、ポリフェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるものが好ましい。
該ポリエポキシド化合物の形成のために用い得るポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−2もしくは3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等を挙げることができる。
該ポリエポキシド化合物は、ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物などと一部反応させたものであってもよく、更にまた、ε−カプロラクトンなどのカプロラクトン、アクリルモノマーなどをグラフト重合させたものであってもよい。
上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミンなどを挙げることができる。
上記(2)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミンとしては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基を有する化合物(例えば、モノメチルアミン、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなど)にケトン化合物を反応させてなるケチミン化物を挙げることができる。
上記(3)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、上記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミンのうち、第1級アミノ基とヒドロキシル基を有する化合物(例えば、モノエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミンなど)にケトン化合物を反応させてなるヒドロキシル基含有ケチミン化物を挙げることができる。
前記アミン付加エポキシ樹脂には、前記ポリエポキシド化合物、1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物にカプロラクトンを付加して得られるポリオール化合物、及びアミノ基含有化合物を反応させてなるポリオール変性アミン付加エポキシ樹脂も包含され、好適に使用することができる。
上記1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物は、一般には、62〜5,000、特に62〜1500の範囲内の数平均分子量を有し、1分子当り2〜30個、特に2〜10個の活性水素含有基を含有するものであることが好ましく、この活性水素含有基としては、例えば、水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基などを挙げることができる。
上記1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの低分子量ポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAポリエチレングリコールエーテルなどの線状又は分岐状ポリエーテルポリオール;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの有機ジカルボン酸又はその無水物と、上記低分子量ポリオールなどの有機ジオールとを有機ジオール過剰の条件下で重縮合反応させてなるポリエステルポリオール;ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサノン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアミン化合物;ピペラジンやこれらのアミン化合物から誘導されるポリアミド、ポリアミドアミン、エポキシ化合物とのアミンアダクト、ケチミン、アルジミンなどを挙げることができる。
上記1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物に付加反応せしめられるカプロラクトンとしては、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−カプロラクトンなどが挙げられ、特にε−カプロラクトンが好適である。
上記1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物とカプロラクトンとの付加反応は、それ自体既知の方法で行うことができ、この付加反応によってポリオール化合物が得られる。
上記ポリオール変性アミン付加エポキシ樹脂の製造に用いられるアミノ基含有化合物は、樹脂中にアミノ基を導入して、該樹脂をカチオン性化するためのカチオン性付与成分であり、例えば、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個有するものを使用することができる。その具体例としては、例えば、前記(1)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用される第1級モノ−及びポリアミン、第2級モノ−及びポリアミン又は第1、2級混合ポリアミン;前記(2)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有する第2級モノ−及びポリアミン;前記(3)のアミン付加エポキシ樹脂の製造に使用されるケチミン化された第1級アミノ基を有するヒドロキシ化合物として使用可能なものを挙げることができる。
カチオン性樹脂は、一般に、数平均分子量が700〜6000、特に850〜5000、さらに特に1000〜4000の範囲内にあり、カチオン性基を樹脂1kgあたり0.5〜3当量、特に0.6〜2.5当量、さらに特に0.7〜2当量の範囲内の量で有することが好ましい。
また、カチオン性樹脂は、カチオン化可能な基としてアミノ基を有する場合には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機カルボン酸;塩酸、硫酸などの無機酸などの酸によって中和することにより水溶化ないしは水分散化することができ、他方、カチオン化可能な基としてアンモニウム塩基、スルホニウム塩基又はホスホニウム塩基などのオニウム塩基を有する場合には、中和することなく、そのまま水溶化ないしは水分散化することができる。
カチオン性樹脂は、水溶化ないしは水分散化して使用してもよいし、有機溶剤溶液として使用してもよい。カチオン性樹脂は、酸によって中和し、水性媒体中に溶解ないしは分散することによって、カチオン電着塗装可能にすることができる。
さらに、基体樹脂として、キシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂を用いることもできる。キシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂には、エポキシ当量が180〜3000のエポキシ樹脂にキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させて得られるアミノ基含有エポキシ樹脂が包含される。
上記アミノ基含有エポキシ樹脂の製造のための出発材料として用いられるエポキシ樹脂としては、前記のカチオン性樹脂について述べたものと同様のエポキシ樹脂が好適である。
キシレンホルムアルデヒド樹脂は、エポキシ樹脂の内部可塑化(変性)に役立つものであり、例えば、キシレン及びホルムアルデヒドならびにさらに場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下に縮合反応させることにより製造することができる。
上記のホルムアルデヒドとしては、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物などを例示することができる。
さらに、上記のフェノール類には2個又は3個の反応サイトを持つ1価もしくは2価のフェノール性化合物が包含され、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、パラ−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシン、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラ−フェニルフェノール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合わせて用いることができる。この中で特に、フェノール、クレゾールが好適である。
以上に述べたキシレン及びホルムアルデヒドならびにさらに場合によりフェノール類の縮合反応に使用される酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等が挙げられるが、一般的には、特に硫酸が好適である。
縮合反応は、例えば、反応系に存在するキシレン、フェノール類、水、ホルマリン等が還流する温度、通常、約80〜約100℃の温度に加熱することにより行うことができ、通常、2〜6時間程度で終了させることができる。
上記の条件下に、キシレンとホルムアルデヒド及びさらに場合によりフェノール類を酸性触媒の存在下で加熱反応させることによって、キシレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
かくして得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に、20〜50,000センチポイズ(25℃)、好ましくは25〜35,000センチポイズ(25℃)、さらに好ましくは30〜15,000センチポイズ(25℃)の範囲内の粘度を有することができ、そして一般に100〜50,000、特に150〜30,000、さらに特に200〜10,000の範囲内の水酸基当量を有していることが好ましい。
アミノ基含有化合物はエポキシ樹脂にアミノ基を導入して、該エポキシ樹脂をカチオン性化するためのカチオン性付与成分であり、前記カチオン性樹脂の製造の際に用いたものと同様のものを用いることができる。
前記エポキシ樹脂に対する上記のキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の反応は任意の順序で行うことができるが、一般には、エポキシ樹脂に対して、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を同時に反応させるのが好適である。
上記の付加反応は、通常、適当な溶媒中で、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度行うことができる。上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系;アセトン、メチルエルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
上記の付加反応における各反応成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、適宜変えることができるが、エポキシ樹脂、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物の3成分の合計固形分重量を基準にして以下の範囲内が適当である。すなわち、エポキシ樹脂は、一般に50〜90重量%、好ましくは50〜85重量%;キシレンホルムアルデヒド樹脂は、一般に5〜45重量%、好ましくは6〜43重量%;アミノ基含有化合物は、一般に5〜25重量%、好ましくは6〜20重量%の範囲内で用いることが好ましい。
以上に述べた基体樹脂と併用される硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物とブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物であるブロック化ポリイソシアネート化合物が硬化性、防食性などの面から好ましい。
ここで使用されるポリイソシアネート化合物としては、従来から知られているものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(通常「MDI」と呼ばれる)、クルードMDI、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイシアネート化合物の環化重合体、イソシアネートビゥレット体;これらのポリイソシアネート化合物の過剰量にエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ヒマシ油などの低分子活性水素含有化合物を反応させて得られる末端イソシアネート含有化合物などを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合わせて使用することができる。
一方、ブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温においては安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
このような要件を満たすブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物等を挙げることができる。
これらのブロック剤の他に、互いに反応性の異なる2個の水酸基を有する分子量76〜150のジオール又は分子量106〜500のカルボキシル基含有ジオールをブロック剤として用いたブロック化ポリイソシアネートも硬化剤として用いることができる。
上記ジオールは、反応性の異なる2個の水酸基、例えば、第1級水酸基と第2級水酸基、第1級水酸基と第3級水酸基、第2級水酸基と第3級水酸基との組み合わせの2個の水酸基を有し且つ76〜150の分子量を有するものであることができ、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオールなどの反応性の異なる2個の水酸基を有するジオール類を挙げることができる。
なかでもプロピレングリコールがブロック化ポリイシアネートの反応性、加熱減量の低減、塗料の貯蔵安定性などの観点から好適である。これらのジオールは、通常、反応性の高いほうの水酸基からイソシアネート基と反応しイソシアネート基をブロックする。
上記のカルボキシル基含有ジオールには、分子量106〜500のカルボキシル基含有ジオールが包含され、分子中にカルボキシル基を有することによって、低温解離性が向上し低温での硬化性を向上させることができ、特に、硬化触媒として、有機錫化合物を使用した場合に低温での硬化性を大きく向上させることができる。
カルボキシル基含有ジオールとしては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、ジメチロール吉草酸、グリセリン酸等を挙げることができる。
以上に述べた基体樹脂及び硬化剤は、一般に、両者の合計固形分を基準にして、基体樹脂は50〜95重量%、特に60〜90重量%、さらに特に65〜85重量%の範囲内、硬化剤は5〜50重量%、特に10〜40重量%、さらに特に15〜35重量%の範囲内で使用することができる。
また、カチオン電着塗料は、基体樹脂及び硬化剤を合計固形分として、10〜40重量%、特に10〜30重量%、さらに特に15〜25重量%の範囲内の濃度で含有することができる。
カチオン電着塗料は、基体樹脂及び硬化剤の基本的な2成分に加えて、必要に応じて、他の塗料用添加剤、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、有機溶剤、顔料分散剤、表面調整剤、界面活性剤、酸、触媒などを、通常使用されている量で含有することができる。
前述した本発明の重付加体(A)は、カチオン電着塗料の調製の任意の段階で、カチオン電着塗料成分に配合することができ(以下、「前添加法」という)、或いは予め調製されたカチオン電着塗料に添加することもできる(以下、「後添加法」という)。
前添加法においては、例えば、重付加体(A)を、基体樹脂、硬化剤及び場合によりその他の塗料用添加剤とともに水性媒体中に分散し、エマルションを形成せしめた後、そのエマルションと顔料分散ペーストを用いてカチオン電着塗料を調製することができる。
上記のエマルションを製造する場合、重付加体(A)、基体樹脂、硬化剤及び場合によりその他の塗料用添加剤を一緒にし、十分に混ぜ合わせて溶解ワニスを作製し、それに、水性媒体中で、ぎ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、クエン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、それらの2種もしくはそれ以上の混合物などから選ばれる中和剤を添加して水分散化し、カチオン電着塗料用エマルションとすることができる。
重付加体(A)の配合量は、固形分として、基体樹脂と硬化剤の合計固形分100重量部あたり0.1〜20重量部、特に0.5〜15重量部、さらに特に1〜10重量部の範囲内が塗料安定性などの面から好適である。
また、後添加法においては、まず、重付加体(A)に、その固形分1gあたりのmgKOH換算で、10〜100、好ましくは20〜70、さらに好ましくは30〜50の範囲内になるようにして、酢酸、ギ酸、乳酸などの有機酸を加えて、重付加体(A)を水分散化することにより、重付加体(A)の水分散体を調製する。
他方、通常の方法に従い、前記の基体樹脂、硬化剤及び場合によりその他の塗料用添加剤に中和剤を加えて水分散化することによりエマルションを製造し、それに顔料分散ペーストを加え、必要により水性媒体で希釈してカチオン電着塗料を調製する。
このようにして予め調製されたカチオン電着塗料に上記の重付加体(A)の水分散体を、固形分として、基体樹脂と硬化剤の合計固形分100重量部あたり0.1〜20重量部、特に0.5〜15重量部、さらに特に1〜10重量部の範囲内で添加することにより、本発明に従うカチオン電着塗料を得ることができる。重付加体(A)の添加は、カチオン電着塗装の段階で行なうことができる。
以上の如くして調製される本発明のカチオン電着塗料は、カチオン電着塗装によって所望の基材表面に塗装することができる。
電着塗装は、一般に、浴固形分濃度が約5〜約40重量%となるように脱イオン水などで希釈し、さらにpHが5.5〜9.0の範囲内に調整されたカチオン電着塗料浴を用い、通常、浴温15〜35℃及び負荷電圧100〜400Vの条件下で行うことができる。
本発明のカチオン電着塗料を用いて形成されるカチオン電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、硬化塗膜に基づいて10〜40μm、特に10〜25μmの範囲内が好ましい。また、塗膜の焼き付け温度は、被塗物表面で一般に約120〜約200℃、好ましくは約140〜約180℃の範囲内の温度が適しており、焼き付け時間は5〜60分、好ましくは10〜30分程度が好ましい。
重付加体(A)を含有する本発明のカチオン電着塗料は、塗面の仕上がり性、耐油ハジキ性、耐水跡性、耐コンタミ性などの塗装作業性や上塗り塗料との付着性などに優れており、特に、複雑形状の自動車ボディをライン塗装する場合には、本発明の重付加体(A)は、水分散体として、塗装ラインの稼動停止時(休み時間、勤務交代時の休憩時間、休日など)に、塗料の槽内へ直接添加することができるので、塗装作業性の改良や調整が極めて容易になる。
また、カチオン電着塗料中の顔料分を5重量%〜18重量%まで下げた場合には、塗料の沈降性や再分散性は向上するものの一般に塗面がハジキ易くなる傾向がみられるが、重付加体(A)は塗膜の防食性を低下させないので、カチオン電着塗料中に0.1〜20重量部の範囲内の幅広い量で添加することが可能となり、塗装作業性が大いに改良される。
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は「重量部」及び「重量%」である。
重付加体(A)の製造:
製造例1
反応容器に、「サンアミールTAP−40」(商品名、三洋化成社製、ポリエーテルアミン、重量平均分子量 約2300)1150部、「KBM−403」(商品名、信越化学社製、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、分子量 約240)240部及びエチレングリコールモノブチルエーテル345部を加え、90℃に昇温した。この温度を保ちながら3時間攪拌し、樹脂固形分80%、重量平均分子量2,800、アミン価40mgKOH/gの重付加体No.1を得た。
製造例2
反応容器に、「ジェファーミンD−2000」(商品名、ハルツマン社製、ポリエーテルアミン、重量平均分子量 約2,000)1000部、「KBM−403」240部及びエチレングリコールモノブチルエーテル220部を加え、90℃に昇温した。この温度を保ちながら3時間攪拌し、樹脂固形分80%、重量平均分子量2,500、アミン価45mgKOH/gの重付加体No.2を得た。
水分散体の製造:
製造例3
製造例1で得た重付加体No.1 1735部に、酢酸45部(樹脂固形分合計1gあたりのmgKOH換算で30に相当)及び水5170部を加えて水分散化し、固形分20%の水分散体No.1を得た。
製造例4
製造例2で得た重付加体No.2 1550部に、酢酸40部(樹脂固形分合計1gあたりのmgKOH換算で30に相当)及び水4610部を加えて水分散化し、固形分20%の水分散体No.2を得た。
製造例5
反応容器に、イソプロピルアルコール320部を入れ、攪拌しながら還流温度(約83℃)まで昇温した。これに下記のモノマー及び重合開始剤:
スチレン 272部、n−ブチルアクリレート 224部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 80部、ジメチルアミノエチルメタクリレート 144部、KBM−503(信越化学工業製、商品名、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、分子量 約250)80部、アゾビスイソブチロニトリル 24部の混合物を還流温度下(約83〜87℃)で約2時間かけて滴下した。
ついで、さらに30分間攪拌した後、アゾビスジメチロバレロニトリル8部をイソプロピルアルコール120部に溶解した溶液を約1時間かけて滴下し、約1時間攪拌後、イソプロピルアルコール320部を投入し冷却した。かくして固形分51%、アミン価64、水酸基価48、数平均分子量 約20,000のアクリル共重合体ワニスを得た。
次に、このアクリル共重合体ワニス780部に酢酸6.4部を加え、約30℃で5分間攪拌した後、脱イオン水1156部を強く攪拌しながら約30分間かけて滴下した。かくして、固形分20%の乳白色の水分散体No.3を得た。
製造例6(特開2002−294165公報の実施例1に従う)
反応容器に、ケミオールEP−400P(三洋化成工業社製のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量297)129.7部、バーサダイム216(ヘンケル白水社製のダイマー酸、酸価192)99.6部及びベンジルジメチルアミン0.6部を加え、160℃で酸価が0.5以下になるまで反応させ、エポキシ当量2300のジエポキシドを得た。
次に、この化合物に、アミン価255のアミノポリエーテル(三洋化成社製のジエチレントリアミン・プロピレンオキサイド付加物、商品名:AP−10,分子量684)41.0部を添加し80℃で4時間保温し、数平均分子量27,000の化合物を得た。
別の容器で、この化合物261.1部を、50%乳酸12.2部と脱イオン水379.1部の混合液に加えて攪拌し、さらに脱イオン水で調整し、固形分20%の水分散体No.4を得た。
製造例7(基体樹脂No.1の製造)
温度計、還流冷却器及び撹拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、50%ホルマリン240g、フェノール55g、98%工業用硫酸101g及びメタキシレン212gを仕込み、84〜88℃で4時間反応させる。反応終了後、静置して樹脂相と硫酸水相とを分離し、樹脂相を3回水洗し、20〜30mmHg/120〜130℃の条件で20分間未反応メタキシレンをストリッピングして、粘度1050センチポイズ(25℃)のキシレンホルムアルデヒド樹脂1を得た。
別のフラスコに、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、分子量350)1000g、ビスフェノールA 400g及びジメチルベンジルアミン0.2gを加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
次に、上記のキシレンホルムアルデヒド樹脂1 300g、ジエタノールアミン140g及びジエチレントリアミンのケチミン化物65gを加え、120℃で4時間反応させた後、ブチルセロソルブ420g加え、アミン価52、樹脂固形分80%のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.1を得た。
製造例8(基体樹脂No.2の製造)
PP−400(三洋化成社製、商品名、ポリプロピレングリコール、分子量400)400gにε−カプロラクトン300gを加えて、130℃まで昇温した。その後、テトラブトキシチタン0.01gを加え、170℃に昇温した。この温度を保ちながら経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のε−カプロラクトン量を追跡し、反応率が98%以上になった時点で冷却し、変性剤1を得た。
別に、エピコート828EL(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名、エポキシ樹脂エポキシ当量190、分子量350)1000gに、ビスフェノールA 400g及びジメチルベンジルアミン0.2gを加え、130℃でエポキシ当量750になるまで反応させた。
その中にノニルフェノール120gを加え、130℃でエポキシ当量が1000になるまで反応させた。次いで、変性剤1 200g、ジエタノールアミン95g及びジエチレントリアミンのケチミン化物65g加え、120℃で4時間反応させた後、ブチルセロソルブ414gを加え、アミン価40、樹脂固形分80%のノニルフェノールが付加されたポリオール変性アミノ基含有エポキシ樹脂である基体樹脂No.2を得た。
製造例9(硬化剤の製造)
コスモネートM−200(三井化学株式会社製、商品名、クルードMDI)270gにメチルイソブチルケトン46gを加え70℃に昇温した。さらにジエチレングリコールモノエチルエーテル281gをゆっくり加えた後、90℃に昇温した。
この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネートの吸収がなくなったことを確認して反応を停止させ、溶剤量を調整し、固形分90%のブロックポリイソシアネート硬化剤を得た。
製造例10(エマルションNo.1の製造)
製造例1で得た重付加体No.1 6.25部(固形分5部)、製造例7で得た基体樹脂No.1 87.5部(固形分70部)、製造例9で得た硬化剤33.3部(固形分30部)、サンニックスPP−1000 5部(注1)及び10%ギ酸8.2部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水173.8部を強く攪拌しながら約15分かけて滴下し、固形分34%のカチオン電着塗料用エマルションNo.1を得た。
製造例11〜13(エマルションNo.2〜4の製造)
表1に示す配合にて、製造例10と同様にしてカチオン電着塗料用エマルションNo.2〜4を得た。

製造例14(顔料分散ペーストの製造)
60%の第4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂5.83部(固形分3.5部)、チタン白14.5部、カーボンブラック0.3部、体質顔料7.0部、水酸化ビスマス1.0部、有機錫1部及び脱イオン水20部を混合し、固形分55.0重量%の顔料分散ペーストを得た。
実施例及び比較例
実施例1(カチオン電着塗料No.1の製造)
カチオン電着塗料用エマルションNo.1 309部(固形分105部)に、製造例14で得た顔料分散ペースト49.6部(固形分27.3部)及び脱イオン水173.8部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料No.1を得た。
実施例2〜4及び比較例1〜4
表2に示す配合にて、実施例1と同様にしてカチオン電着塗料No.2〜No.8を得た。

試験板の作成
上記実施例及び比較例で得た各カチオン電着塗料を用い、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した150mm×70mm×0.8mmの冷延ダル鋼板及び亜鉛メッキ鋼板に電着塗装を施した。塗膜を電気熱風乾燥機中にて170℃で20分間焼き付け試験板を得た。
得られた試験板を以下の試験条件に従い試験した。その結果を表3に示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン鎖を有するアミン化合物(a)とモノエポキシシラン(a)との、重量平均分子量が250〜10,000の範囲内にある重付加体。
【請求項2】
ポリオキシアルキレン鎖を有するアミン化合物(a)が下記式(1)、(2)、(3)及び(4)

(式中、RはNH又はOHを表し、R及びRはそれぞれC又はCを表し、RはH、C又はCを表し、a、b及びnはそれぞれ1以上の整数であり、mは0以上の整数である)

(式中、R及びRはそれぞれC又はCを表し、RはH、C又はCを表し、a及びnはそれぞれ1以上の整数であり、mは0以上の整数である)

(式中、R及びRはそれぞれC又はCを表し、nは1以上の整数であり、mは0以上の整数である)

(式中、R及びRはそれぞれC又はCを表し、RはH、C又はCを表し、a、b及びnはそれぞれ1以上の整数であり、mは0以上の整数である)
で示される化合物よりなる群から選ばれる請求の範囲第1項に記載の重付加体。
【請求項3】
モノエポキシシラン(a)が下記式(5)〜(11)


で示される化合物よりなる群から選ばれる請求の範囲第1項に記載の重付加体。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン鎖を有するアミン化合物(a)のアミノ基1モルあたり、モノエポキシシラン(a)を0.5〜2モルの範囲内で開環付加反応させることにより得られる請求の範囲第1項に記載の重付加体。
【請求項5】
1,000〜3,000の範囲内の重量平均分子量を有する請求の範囲第1項に記載の重付加体。
【請求項6】
基体樹脂としてエポキシ樹脂にアミノ基含有化合物を付加反応させて得られるアミン付加エポキシ樹脂又はキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂及び硬化剤としてブロック化ポリイソシアネート化合物を含有するカチオン電着塗料に、その調製の任意の段階で、請求の範囲第1〜5項のいずれか1項に記載の重付加体を、基体樹脂と硬化剤の合計固形分100重量部あたり0.1〜20重量部配合してなるカチオン電着塗料。
【請求項7】
請求の範囲第1〜5項のいずれか1項に記載の重付加体に、固形分1g当りのmgKOH換算で10〜100となるように有機酸を加え、水分散化してなる水分散体を、予め調製されたカチオン電着塗料に、基体樹脂と硬化剤の合計固形分100重量部あたり0.1〜20重量部添加してなるカチオン電着塗料。
【請求項8】
請求の範囲第6又は7項に記載のカチオン電着塗料を用いて電着塗装された塗装物品。

【国際公開番号】WO2004/090055
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505206(P2005−505206)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004500
【国際出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】