説明

重合体微粒子の製造方法

【課題】 比較的大きめの幅広い範囲の大きさの粒子径において、粒子径分布の単分散性に優れた重合体微粒子を、簡便にかつ安定的に製造する方法、および該方法により製造される重合体微粒子を提供する。
【解決手段】 本発明は、重合溶媒100重量部に、100重量部以下のビニル単量体A、及び前記ビニル単量体Aに対して0.01重量%以上のビニル系重合体B、を溶解してなる重合溶液中で、前記ビニル単量体Aを重合し、前記重合溶媒に不溶の重合体微粒子を生成する重合体微粒子の製造方法であって、前記ビニル系重合体Bが、その数平均分子量が3000以上であり、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が1.8未満であり、極性官能基Xを有し、かつ、特定の炭素−炭素二重結合を含有する基Zを、1つ以上の分子末端に有することを特徴とする重合体微粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子径を幅広い範囲の大きさで設定可能であり、かつ、優れた粒子径分布の単分散性を達成可能な、重合体微粒子の製造方法、及び該製造方法により製造される重合体微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体微粒子を製造する代表的な製造法のひとつとして懸濁重合法がある。これは水中で適当な分散安定剤のもとビニル単量体の液滴を形成させ、適当な油溶性開始剤を用いて重合体微粒子を合成する方法である。通常の条件下では、数百μm〜数mmの大粒径の重合体粒子が得られるが、その粒子径分布は、重合中の液滴の分裂、及び合一の確率的要素に支配されるために、非常に広くなる。種々の改良方法が提案されているが、いずれも改善は見られるものの、十分な単分散性を実現するには到っていない。
【0003】
もう一つの代表的な製造方法としては乳化重合法がある。乳化重合法では水媒体中で、疎水性単量体をとりこんだ界面活性剤ミセルに水溶性のラジカルが侵入して重合体微粒子が形成され、その粒子がさらに単量体を吸収、重合して成長する。初期の生成粒子数及び界面活性剤の供給をコントロールすることにより、単分散の粒子径分布を有する重合体微粒子を製造することができる。しかしながら、ミセルから発生する粒子数と分散安定性の限界から、得られる重合体微粒子の大きさは0.01〜1μmに限定される。従って、平均粒子径数μmの単分散粒子を製造するには、乳化重合により合成した単分散微粒子をシードとして粒子を成長させるシード乳化重合法を用いる必要がある。しかし、その粒子の成長率は低く、大きな粒子を得るためには数段連続して行う必要があり、単分散性が維持されない、コスト的に不利であるといった問題がある。
【0004】
シード乳化重合法の改良として、種粒子への単量体の吸収効率を高めることにより一段で数μmの単分散微粒子を合成する方法が提案されており、例えば、種粒子中に膨潤助剤と呼ばれる疎水性有機化合物を吸収させて種粒子の膨潤能力を増大させた後、ビニル単量体を膨潤させて重合させることにより、ミクロンサイズで単分散性の高い粒子を製造する方法が提案されている。しかしこの方法では、重合操作が煩雑であり、また膨潤時間に長時間を要するなどの問題点を有する。
【0005】
第3の方法として、分散重合法と呼ばれる方法がある。分散重合法とは、媒体に溶解した分散剤の存在下に、単量体の状態では媒体に可溶であるが、重合により生成するポリマーは、その媒体に不溶となるような単量体と溶剤の組み合わせにおいて重合を行う方法である。分散重合では、完全に均一な系から重合が開始し、生成したポリマーは溶媒に不溶なため直ちに凝集して不安定な超微粒子が生成する。超微粒子は合一により、粒子表面上の分散剤の相対密度を増加させ、安定化粒子となる。この安定化粒子を核として、粒子が成長することで単分散性に優れた重合体微粒子が得られる。分散重合は、非極性媒体中でも、極性媒体中でも実施することが可能であり、単分散性に優れた重合体微粒子を得ることができる溶媒、単量体、及び分散剤の組み合わせが多数報告されている。例えば、脂肪族炭化水素を主体とする有機溶媒中に、高分子分散安定剤によって安定に分散された重合体微粒子(いわゆる非水ポリマーディスパージョン)を製造する方法として、各種の方法が提案されている。
【0006】
これらの方法は、有機溶媒に溶媒和されずに分散重合体粒子と会合するかまたは分散重合体粒子に係留する部分となる第2のセグメントとからなる部分安定剤を用い、その存在下にまず分散重合体粒子を形成し、ついでその粒子を架橋することからなるものである。
【0007】
上記の分散安定剤の代表的な例として、12−ヒドロキシステアリン酸の自己縮合物である溶媒和成分に、メチルメタクリレートを主成分とするポリマー鎖である非溶媒和成分をグラフト重合もしくはブロック重合したものが挙げられる。
【0008】
一方、極性溶媒中の分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン(以下、PVPという)、及びヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCという)が用いられる。例えば、特許文献1には、特定の極性溶媒中での分散重合においてPVPを分散剤として用いることにより、変動係数(以下、CV値という)7.9%のポリメタクリル酸メチル(以下、PMMA)微粒子が得られることが開示されている。PVP等の分散剤においても、重合中に単量体とのグラフト化反応により粒子表面に固定されることが、分散安定性の向上に寄与していることが知られているが、その効果は十分でなく、重合安定性や単分散性が不足する場合がある。
【0009】
そこで、グラフト化による粒子安定化効果をより積極的に利用することを目的として、マクロモノマー型の分散剤を使用することが報告されている(例えば、非特許文献1、2、3、4など参照)。さらに、特許文献2には、2つのセグメントから成るブロック又はグラフト重合体ではなく、溶媒和成分となる12−ヒドロキシステアリン酸自己縮合物の水酸基、又はカルボキシル基に、これらの基と官能性を有するエポキシ基、イソシアネート基などの官能基を有する重合性不飽和単量体を反応させて、1分子当り平均約1.0個の重合性不飽和結合を導入したマクロモノマーを分散安定剤とし、それをそのまま使用して重合体微粒子分散液を製造する方法が提案されている。
【0010】
また、脂肪族炭化水素を主体とする有機溶媒に溶解する特定の組成からなるビニル単量体の共重合体(例えば、溶解性パラメーターが9.0以下であるアクリル系共重合体等)に1分子当り平均約1.0個の重合性二重結合を導入したマクロモノマーを分散安定剤とする重合体微粒子分散液の製造方法も提案されている(例えば、特許文献3等参照)。但し、いずれも重合体微粒子の単分散性については記載されておらず、単分散性の良好な重合体微粒子を得るのに十分とはいえない。
【0011】
非特許文献1では、末端にメタクリロイル基を有するポリエチレングリコールマクロモノマーを分散剤として用いた、水/エタノール溶媒でのMMAの分散重合が報告されている。2028頁の表1に記載されているとおり、0.1〜0.2μmと粒子径の小さいPMMA粒子が得られることを報告しているが、単分散性は十分ではない。
【0012】
非特許文献2では、末端にスチリル基を有するポリオキサゾリンマクロモノマーを分散剤として用いた、水/メタノール溶媒でのMMAの分散重合が報告されている。142頁の図2、及び表1に示されるとおり、ミクロンサイズのPMMA微粒子が合成されている。限定されたマクロモノマー濃度では単分散性が良好となるが、マクロモノマー濃度の変化により、単分散性が大きく影響を受けることが報告されている。
【0013】
非特許文献3では、末端にビニルベンジル基を有するポリメタクリル酸マクロモノマーを分散剤として用いた、水/エタノール溶媒でのMMAの乳化・分散重合が報告されている。2854頁の表1に示されている通り、0.33〜3μm の粒子径を有するPMMA粒子が合成されているが、単分散性は十分でない。
【0014】
非特許文献4では、末端にビニルベンジル基を有するポリアクリル酸マクロモノマーを分散剤として用いた、水/エタノール溶媒中MMAの分散重合において、溶媒pHの影響について報告している。641頁の表1に示されている通り、pH4〜13の範囲で単分散性の良好な粒子が合成されているが、その粒子径はいずれも0.4μm以下で、ミクロンサイズのものは得られていない。
【0015】
また、特許文献4には、特定の末端構造を有する、即ち、Mを単量体単位、nを重合度、Xを極性基として、(M)nCX=CH2、で表されるマクロモノマーを分散剤に用いることで、粒子径が1〜10μmの単分散な粒子を分散重合で得られることを示している。しかしながらこのマクロモノマーは、その末端構造に由来して単独重合性、換言すれば、一般的なビニル単量体やビニル共重合体との共重合性が、上記従来のマクロモノマーに比べて極めて低く、十分な重合安定性を保てない場合があった。
【0016】
以上のように、上記従来のマクロモノマーを用いた分散重合では、幅広い粒子径範囲、かつ、優れた単分散性で、重合体微粒子を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開平4−23804号公報
【特許文献2】特開昭62−195008号公報
【特許文献3】特開昭57−177068号公報
【特許文献4】特開2004−149569号公報
【非特許文献1】J.Appl.Polym.Sci.,39.2027(1990)
【非特許文献2】Proc.Japan Acad.,67,Ser.B,140(1991)
【非特許文献3】Polymer,37,2853(1996)
【非特許文献4】Macromol.Rapid Commun.,18,639(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、従来技術が有する上記問題点を解決し、比較的大きめの幅広い範囲の大きさの粒子径において、粒子径分布の単分散性に優れた重合体微粒子を、簡便にかつ安定的に得るための製造方法および該方法により製造される重合体微粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、粒子径分布の単分散性に優れた重合体微粒子を、簡便にかつ安定的に得るための製造方法について検討を重ねた結果、ビニル単量体を、特定の分散剤の存在下、具体的には、特定の構造を有するマクロモノマーを分散剤として、前記ビニル単量体および分散剤は溶解するが、生成する重合体は実質的に溶解しない溶媒中で重合させることにより、前述の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
すなわち本発明は、重合溶媒100重量部に、100重量部以下のビニル単量体A、及び該ビニル単量体Aに対して0.01重量%以上のビニル系重合体B、を溶解してなる重合溶液中で、前記ビニル単量体Aを重合し、前記重合溶媒に不溶の重合体微粒子を生成する重合体微粒子の製造方法であって、前記ビニル系重合体Bが、その数平均分子量が3000以上であり、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が1.8未満であり、極性官能基Xを有し、かつ、下記一般式1、及び/又は、一般式2で表される炭素−炭素二重結合を含有する基Zを、1つ以上の分子末端に有することを特徴とする重合体微粒子の製造方法に関する。
【0020】
【化2】

(式中、R1、及びR2は、水素、または、炭素数1〜20の芳香環を含んでいてもよい炭化水素基を表す。また、R3は、直接結合、又は炭素数1〜20の芳香環を含んでいてもよい炭化水素基を表す。)
好ましい実施態様は、前記ビニル系重合体Bの主鎖が、ラジカル重合、より好ましくはリビングラジカル重合、特に好ましくは原子移動ラジカル重合により製造されてなる主鎖である重合体微粒子の製造方法とすることである。
【0021】
好ましい実施態様は、前記ビニル系重合体Bの主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー、及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる1種以上のモノマーを主として重合して得られる主鎖である重合体微粒子の製造方法とすることである。
【0022】
好ましい実施態様は、前記炭素−炭素二重結合を含有する基Z中のR1が、水素、及び/又は、メチル基である重合体微粒子の製造方法とすることである。
【0023】
好ましい実施態様は、前記炭素−炭素二重結合を含有する基Z中のR2が、水素、及び/又は、メチル基である重合体微粒子の製造方法とすることである。
【0024】
好ましい実施態様は、前記重合溶媒が、親水性溶媒である重合体微粒子の製造方法
とすることである。
【0025】
好ましい実施態様は、前記ビニル系重合体Bが、構成単量体単位として疎水性単量体単位を含む重合体微粒子の製造方法とすることである。
【0026】
好ましい実施態様は、前記極性官能基Xが、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基、アセチルアセトナト基、及びメルカプト基からなる群から選ばれる1種以上である重合体微粒子の製造方法とすることである。
【0027】
好ましい実施態様は、前記極性官能基Xが、カルボキシル基であって、かつ、前記ビニル単量体A重合時に、前記カルボキシル基の少なくとも一部が、アルカリによって中和されている重合体微粒子の製造方法とすることである。
【0028】
また、本発明は、本発明の重合体微粒子の製造方法により製造された重合体微粒子に関する。
【0029】
好ましい実施態様は、体積平均粒子径が0.05〜20μm、かつ、CV値が30%以下である重合体微粒子とすることである。
【0030】
好ましい実施態様は、体積平均粒子径が1〜20μmである重合体微粒子とすることである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の重合体微粒子の製造方法によれば、比較的大きめの幅広い範囲の大きさの粒子径において、粒子径分布の単分散性に優れた重合体微粒子を、簡便にかつ安定的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の重合体微粒子について詳細に説明する。
【0033】
(重合体微粒子)
本発明の重合体微粒子は、好ましくは、数平均粒子径が0.05μm〜20μm、かつ、単分散性の指標となるCV値が30%以下と、比較的平均粒子径が大きいにも拘わらず、極めて優れた粒子径分布の単分散性を有する。より好ましくは、数平均粒子径が1〜20μmである。
【0034】
本発明においては、平均粒子径、及びCV値は、約200個の重合体微粒子について、電子顕微鏡観察により、粒子径(di)を測定し、その測定結果から、以下の数式1〜3により計算される値である。
【0035】
【数1】

但し、数式1〜3において、dnは数平均粒子径、dvは体積平均粒子径、niは粒子径がdiの微粒子の個数である。また、数式3において、σは標準偏差であり、以下の数式4で表される。
【0036】
【数2】

(用途)
本発明の重合体微粒子は、上述のように比較的大きな、また、幅広い範囲の粒子径において、粒子径分布の分散性に優れているため、液晶表示素子用スペーサ、液晶表示用光拡散フィルム等の光拡散剤、導電性微粒子、カラム用充填剤、診断薬用の担体、樹脂改質剤、樹脂/塗料分野における艶消し剤、化粧品用添加剤、及び電子複写機分野におけるトナー用材料等の幅広い分野に好適に用いられうる。また、上記用途に使用される微粒子を製造するためのシード粒子としても有用である。
【0037】
以下、本発明の重合体微粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0038】
(製造方法)
本発明の重合体微粒子の製造方法は、ビニル単量体を、分散剤として機能する特定のビニル系重合体の存在下、前記ビニル単量体、及び前記ビニル系重合体は溶解するが、生成する重合体は実質的に溶解しない重合溶媒中で重合させるものである。即ち、ビニル単量体A、及びビニル系重合体Bを、重合溶媒に溶解してなる重合溶液中で、前記ビニル単量体Aを重合し、前記重合溶媒に不溶の重合体微粒子を生成する重合体微粒子の製造方法である。
【0039】
つまり、本発明の重合体微粒子の製造方法は、分散重合法によるミクロンサイズの単分散重合体微粒子の製造方法である。分散重合では、ビニル単量体の反応率がなるべく低い段階で、すなわち、重合初期の早いタイミングで安定化粒子が生成すること、また、その安定化粒子の成長過程において、その安定性が重合終了まで持続すること、さらに、新粒子の発生が十分に抑制されていること、が優れた単分散性を得るためには好ましく、本発明の重合体微粒子の製造方法においては、分散剤として高い機能を有するビニル系重合体Bの存在により、これらを達成することができるので、幅広い大きさで、かつ単分散性に優れた重合体微粒子を再現性よく、安定かつ簡便に製造することができる。
【0040】
本発明の製造方法は、具体的には、例えば、反応容器に重合溶媒、分散剤として機能するビニル系重合体B、ビニル単量体Aの一部、もしくは全部、さらに適宜添加剤を仕込み、反応容器雰囲気を不活性ガスに置換した後、適当な攪拌を行いながら昇温し、温度が安定したら重合開始剤を投入して重合を行うことで実施される。先述のように、重合開始後、ビニル単量体を分割、もしくは連続で仕込むことも可能である。このとき、重合を高重合率域で行うには、通常、4〜40時間の重合時間が必要であるが、所望の粒子径や粒子径分布で重合を停止させてもよいし、重合開始剤を追加添加することにより重合速度を速めてもよい。また本発明では、あらかじめ目的の粒子径よりは小さく、かつ粒子径分布の小さい重合体微粒子の存在下に、上述の反応を行い、重合体微粒子を成長させることも含まれる。
【0041】
上記添加剤としては、分散剤、乳化剤、連鎖移動剤、架橋剤、水溶性高分子化合物、及び水難溶性物質等が挙げられる。
【0042】
(重合体微粒子の回収方法)
重合終了後の重合体微粒子は、沈降分離、遠心分離、デカンテーション等の操作により分離、乾燥して回収する方法、重合終了後に脱水、乾燥して回収する方法、酸や塩を添加して、重合体微粒子を凝集させ、得られたスラリーを脱水、乾燥する方法、あるいはスプレードライ法等により、重合体微粒子の凝集体として回収することが一般的である。
【0043】
(アルカリによる中和)
なお、本発明における分散剤であるビニル系重合体Bの極性官能基Xが、好ましくはカルボキシル基であるが、その場合には、ビニル単量体A重合時に、そのカルボキシル基の少なくとも一部が、アルカリにより中和されていることが、カルボキシル基の一部がカルボキシアニオンとなり、静電反発による粒子安定化効果も付与できるため好ましい。特に、重合体微粒子の製造において使用する溶媒が、後述する親水性有機溶媒の水溶液である場合、その効果が大きく、両者の組み合わせが特に好ましく、極めて優れた重合安定性が実現される。
【0044】
中和に用いるアルカリとしては、例えば、アンモニア、沸点が140℃ 以下の低沸点アミン化合物、水酸化ナトリウム、及び炭酸ナトリウムが挙げられる。低沸点アミン化合物としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、N−メチルモルホリン、t−ブタノールアミン、モルホリン、及びジメチルエタノールアミン等を例示できる。アルカリによるビニル系重合体Bの中和は、部分中和であっても良い。好ましい中和率は、50〜100%である。中和率100%というのはアルカリが過剰に存在する場合も含む。
【0045】
(重合溶媒)
上記重合溶媒としては、上記条件を満足するものであれば特に限定されず、使用するビニル単量体とビニル系重合体の種類、および目的とする重合体微粒子の大きさに応じて選択すればよく、疎水性有機溶媒、親水性有機溶媒、又は親水性有機溶媒の水溶液が選択できる。以降、親水性有機溶媒、及び親水性有機溶媒の水溶液を合わせて親水性溶媒ということとする。
【0046】
本発明においては、重合溶媒を親水性溶媒とすることが好ましく、後述する分散剤として機能する極性官能基Zを有するビニル系重合体Bとの組み合わせを適切なものとすることにより、重合安定性を向上することができるので、重合体微粒子の粒子径、及び粒子径分布と、重合体微粒子を構成する重合体分子の分子量と、を高度に制御できる。
【0047】
さらに好ましくは、重合溶媒を親水性有機溶媒の水溶液とすることであり、前記極性官能基Zを親水性基、特にイオン性基とすることにより、ビニル系重合体Bに高度な分散安定化効果を付与することができる。即ち、親水性有機溶媒と、水と、の混合比率を変えることにより、上述した重合溶媒とビニル系重合体Bとの組み合わせをより適切なものとすることが可能となるので、重合安定性をより向上できる。また、親水性有機溶媒の水溶液は、引火、爆発等の危険性を低減することができ、かつ環境への負荷が小さい。
【0048】
特に好ましくは、重合溶媒を低級アルコールの水溶液とすることであり、その好ましい混合比率は、重量比で、低級アルコール:水=99.5:0.5〜50:50である。低級アルコールの重量比が、99.5を超えると生成する重合体微粒子間の合着が起こることがあり、50未満では製造される微粒子が小さくなりすぎる場合がある。
【0049】
このような低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、及びイソプロピルアルコールからなる群から選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0050】
また、アルコール類、及びエーテルアルコール類以外の有機溶媒を、粒子径、粒子径分布および重合安定性のコントロールのために、生成した重合体微粒子が溶解しない範囲内で併存させることができる。
【0051】
また、上述したように、重合溶媒を混合溶媒とした場合には、重合開始時、重合途中、及び重合末期のそれぞれの時点において、混合溶媒の種類、および組成を変化させることで、生成する重合体粒子の粒子径、粒子径分布等を調節することができる。
【0052】
また、さらに、SO42-、NO3-、PO43-、Cl-、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、等の無機質イオンが重合溶媒に存在した状態で重合を行うことも、重合安定性をコントロールする観点から好ましい。
【0053】
上記疎水性有機溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類が例示でき、これらの疎水性有機溶媒は、上述した、例えば、親水性溶媒と併用する有機溶媒としても使用可能であり、そのような併用可能な有機溶媒としては、他にも、四塩化炭素、トリクロルエチレン、及びテトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素類、エチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、及びテトラビドロフラン等のエーテル類、メチラール、及びジエチルアセタール等のアセタール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサン等のケトン類、ギ酸ブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、及びセロソルブアセテート等のエステル類、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸等の酸類、ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミド等の硫黄/窒素含有有機化合物類などがあげられる。
【0054】
上記親水性有機溶媒とは、20℃における水への溶解度が2重量%以上の有機溶媒を意味し、その種類としては、アルコール類、及びエーテルアルコール類等があり、以下に例示するものを単品として、又は二種以上混合した混合溶媒として用いることができる。
【0055】
上記アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、変性エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、フルアリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等がある。
【0056】
上記エーテルアルコール類としては、チルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等がある。
【0057】
(ビニル単量体A)
本発明において使用されるビニル単量体Aとしては、上記重合溶媒に可溶であり、かつ、その重合体が上記重合溶媒に不溶となるものであれば、重合において一般的に使用される重合性単量体で構成することができ、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、酢酸ビニル、及び塩化ビニルからなる群からなる1種以上を用いることができ、さらに、アニオン性の重合性単量体、及び/又は、カチオン性の重合性単量体等の比較的極性の高いビニル単量体を少量共重合することによって、重合体微粒子の重合安定性、及び粉末化した重合体微粒子の摩擦帯電性を調節することもできる。
【0058】
(ビニル単量体Aの量)
本発明において、ビニル単量体Aの使用割合は、重合溶媒100重量部を基準として、100重量部以下であり、60重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましい。重合溶媒に対するビニル単量体Aの割合が多過ぎると、生成した重合体粒子の媒体(未反応単量体を溶解した重合溶媒)による膨潤度が大きくなりすぎて、ビニル系重合体Bを含む分散剤による安定化効果に打ち勝って、重合体微粒子同士が凝集する場合があり、さらに、極端に多過ぎると、生成した重合体の媒体に対する溶解度が高くなりすぎて、粒子を形成することができず、塊状物となってしまう場合がある。ビニル単量体Aを、初期に一括して仕込み、回分重合操作により重合しても、分割仕込みにより重合しても、又は連続的に反応器に供給して半回分重合操作により重合しても良いが、重合溶媒に対するビニル単量体Aの量が多い場合には、半回分重合操作を選択することが好ましい。
【0059】
(ビニル単量体Aの例示)
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が代表的に挙げられる。ここで、本明細書において、例えば、(メタ)アクリルとは、特に断らない限り、アクリル、及び/又は、メタクリルを意味するものとする。
【0060】
上記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、及びクロロメチルスチレン等が代表的に挙げられる。
【0061】
上記シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びエタクリロニトリル等が代表的に挙げられる。
【0062】
上記アニオン性の重合性単量体としては、カルボキシル基含有単量体、酸無水物含有単量体、リン酸基含有単量体、及びスルホン酸基含有単量体等が挙げられる。
【0063】
上記カルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、及びマレイン酸モノブチル等が挙げられる。
【0064】
上記酸無水物含有単量体としては、例えば、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0065】
上記リン酸基含有単量体としては、例えば、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、及び3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0066】
上記スルホン酸基含有単量体としては、例えば、2−アクリルアミド、2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0067】
上記、カチオン性の重合性単量体としては、含窒素アルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より具体的には、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、及びジエチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0068】
(分散剤、乳化剤)
本願における分散剤とは、重合体と、重合溶媒である分散媒に対して両親媒性を有する化合物であって、その重合体との親和性を持つ成分が重合体微粒子にアンカーされ、さらに、重合体微粒子表面上の相対密度を増加させること、及び、その分散媒に親和性を持つ成分が重合体微粒子表面から分散媒相に延出して厚い溶媒和層を形成すること、により重合体微粒子を安定化する作用を有する。
【0069】
本発明では、重合体微粒子の重合溶媒中での安定性をより向上させ、粒子径分布をより狭くするために、分散剤として機能するビニル系重合体Bと併用して、公知のその他の分散剤、乳化剤、及び/又は水溶性高分子化合物、水難溶性物質が特に制限なく使用可能である。
【0070】
前記分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン等のホモポリマーがある。但し、このようなホモポリマーを分散剤として単独で使用した場合には、重合体粒子へのアンカーが不足することがあり、成長粒子の安定性が不十分となり、単分散性が得られ難かったり、凝集物が生成したりするなどの問題が起きる場合がある。
【0071】
また、前記分散剤としては、ビニル系重合体B以外の、例えば、上述した非特許文献3、4、5、及び6に開示されているような、ビニル単量体との共重合性を有するマクロモノマーがある。但し、このようなビニル系重合体B以外のマクロモノマーを分散剤として単独で使用した場合には、これら従来のマクロモノマーは、後述するビニル系重合体Bの優れた特徴を有していないので、重合体微粒子への共重合性が低い、分散保護能力が十分ではないなどの理由により、幅広い粒子径で、かつ単分散に優れた重合体微粒子を製造することが困難である場合がある。
【0072】
(ビニル系重合体B)
本発明において使用されるビニル系重合体Bは、所謂マクロモノマーであるが、更に、その、
(1)主鎖ポリマーの組成を幅広く選択でき、かつブロック構造を含め構造制御が可能であるため、カルボキシル基等の親水性基や疎水性単量体単位の導入量や導入位置を容易にコントロールできるという特徴、また
(2)分子量、分子量分布等の厳密な構造制御が可能であるため、所望の物性の均一性に優れた材料が得られるという特徴、さらに、
(3)末端不飽和基の構造の選択自由度が高く、反応性が高い不飽和基とすることができ、かつ、主鎖ポリマーへの導入率を極めて高くすることが可能であるため、ビニル系単量体Aおよび/または重合体微粒子への共重合性が高いものが得られるという特徴、
を活かしたものである。
【0073】
その結果、このようなビニル系重合体Bは、重合体微粒子へ十分アンカーすることが可能であり、また、分散保護能力も高くすることが可能であり、さらに、均一な分散性機能を発揮することが可能であることから、優れた分散剤としての機能を有し、幅広い粒子径で、かつ、単分散に優れた重合体微粒子を、簡便に、かつ、安定的に得るための分散剤となる。付け加えて、本発明に係るビニル系重合体Bは、反応性の高い官能基を持ったマクロモノマーなので、より少ない量のマクロモノマーで効率よく重合体微粒子を得ることが可能である。
【0074】
このような本発明において使用されるビニル系重合体Bは、前記重合溶媒に可溶であり、かつ、下記の条件により特定されるものであり、重合体微粒子生成時の重合安定性に重要な役割を果たすことで、重合体微粒子の粒子径、及び粒子径分布の制御に寄与するものである。
【0075】
即ち、本発明において使用されるビニル系重合体Bは、その数平均分子量が3000以上であり、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が1.8未満であり、極性官能基Xを有し、かつ、特定構造の炭素−炭素二重結合を含有する基Zを、1つ以上の分子末端に有する。
【0076】
(ビニル系重合体Bの使用量)
本発明において、ビニル系重合体Bの使用割合は、ビニル単量体A100重量部に対して、0.01重量部以上、即ち、ビニル単量体Aに対して0.01重量%以上であることが、その分散剤としての機能を発揮させるためには必要であり、100重量部以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。上記ビニル系重合体Bの使用量が、0.01重量部未満では、分散剤としての機能を充分に果たすことができない場合があり、100重量部を超えると、重合系の粘度が高くなったり、粒子径が小さくなりすぎたりすることがある。上述したように、本発明に係るビニル系重合体Bは、反応性の高い官能基を持ったマクロモノマーなので、少ない量のマクロモノマーで効率よく重合体微粒子を得ることが可能であることを特徴としており、一般にコスト高になるこのようなマクロモノマー即ち本発明に係るビニル系重合体Bを、0.1〜2.3重量部とすることができる。
【0077】
(数平均分子量、及び分子量分布)
本発明で用いられるビニル系重合体Bの数平均分子量は、分散剤としての機能を発揮させる為に3000以上でことを要し、また、重合溶媒への溶解性を十分に確保する観点からは1,000,000以下とすることが好ましく、重合安定化能力の面から5000〜500000がさらに好ましく、7000〜100000が特に好ましい。
【0078】
また、本発明で用いられるビニル系重合体Bの分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比は、重合体微粒子の生成条件を各生成箇所で均一にするために、1.8未満とすることが重要であり、好ましくは1.7未満であり、より好ましくは1.5未満であり、さらに好ましくは1.3未満である。本発明でのGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0079】
(極性官能基X)
本発明で用いられるビニル系重合体Bは、特に重合体微粒子の製造において使用される溶媒が上述の親水性溶媒である場合、より有効な溶媒和層を形成するために、極性官能基Xを有することが好ましい。
【0080】
前記極性官能基Xとしては、特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基、アセチルアセトナト基、及びメルカプト基等からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、より好ましくは、カルボキシル基である。
【0081】
前記極性官能基Xのビニル系重合体Bの含有量は、要求される特性、すなわち必要な重合安定化能力に応じて適宜、決定することができ、特に限定されないが、ビニル系重合体Bの主鎖を構成するモノマー由来の構成単位のうち、極性官能基Xを持っている構成単位の割合が1〜100mol%であることが好ましく、2〜90mol%であることがより好ましく、5〜80mol%であることがさらに好ましく、10〜70mol%であることが特に好ましい。また、ビニル系重合体B一分子当たり少なくとも0.8個以上含まれることが好ましい。
【0082】
前記極性官能基Xのビニル系重合体B中の位置は、特に限定されないが、分子末端にあってもよいし、分子鎖中にあってもよい。分子末端にある場合は、炭素−炭素二重結合を含有する基Zと反対の末端に配置されるほうがより好ましい。分子鎖中にある場合は、ランダム状に配置されていてもよいし、ブロック状またはグラディエント状に配置されていてもよい。
【0083】
(炭素−炭素二重結合を含有する基Z)
本発明で用いられるビニル系重合体Bが分子末端に有する炭素−炭素二重結合を含有する基Zは、特に限定されないが、一般式1で表される基が好ましい。この中でも、R1が水素またはメチル基であるものがビニル単量体と高い共重合性を有するため、特に好ましい。
【0084】
【化3】

(式中、R1は水素、または炭素数1〜20の芳香環を含んでいてもよい炭化水素基を表す。)
また本発明で用いられるビニル系重合体Bの末端の炭素−炭素二重結合を含有する基Zは、一般式2で表される基も好適に用いることができる。この中でも、R2が水素またはメチル基であるものがビニル単量体と高い共重合性を有するため、特に好ましい。またR3は直鎖状でもよいし、分岐していてもよい。また環構造を有していてもよいし、芳香環を含んでいてもよいが、ビニル単量体との共重合性の面から、直鎖状が好ましい。
【0085】
【化4】

(式中、R2は水素、または炭素数1〜20の芳香環を含んでいてもよい炭化水素基を表す。またR3は直接結合または炭素数1〜20の芳香環を含んでいてもよい炭化水素基を表す。)
前記炭素−炭素二重結合を含有する基Zを有することにより、ビニル系重合体Bは、ラジカル共重合性を有し、重合体微粒子の製造において、ビニル単量体Aと共重合可能であり、共重合した場合には、ビニル単量体Aとグラフト、及び/又は、ブロック共重合体を生成する。また、前記炭素−炭素二重結合を含有する基Zを、分子末端に有することにより、ビニル系重合体Bが重合体微粒子表面から溶媒に対して広がりやすいため、重合安定性を高めることができる。
【0086】
これらのことにより、本発明のビニル系重合体Bは、極めて優れた分散剤としての性能を発揮し得るのである。
【0087】
このような分子末端に存在する炭素−炭素二重結合を含有する基Zは、重合安定化能力の面から、ビニル系重合体B一分子当たりの平均個数で、0.5〜10個のものが好適に用いられる。この平均個数は、より好ましくは0.5〜1.5個、更に好ましくは0.6〜1.4個、特に好ましくは0.7〜1.3個である。
【0088】
(ビニル系重合体B主鎖)
本発明で用いられるビニル系重合体Bの主鎖は、ビニル系重合体Bが重合溶媒に対して溶解するようにモノマー組成が選定されている必要があり、その形状としては、直鎖状でもよいし、枝分かれがあってもよい。
【0089】
(ビニル系重合体B主鎖の合成方法)
本発明で用いられるビニル系重合体Bの主鎖を構築するための重合方法は、特に限定されないが、ラジカル重合が好ましく、リビングラジカル重合がより好ましく、原子移動ラジカル重合が特に好ましく、最も好ましいのは、触媒として銅を中心金属とする遷移金属触媒を用いた原子移動ラジカル重合である。
【0090】
ラジカル重合は一般に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御が難しいとされる。しかしリビングラジカル重合や原子移動ラジカル重合は、ラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
【0091】
従って、上述した重合法で重合した主鎖を有するビニル系重合体Bは、分子量分布が狭く、粘度が低く、また、特定の官能基を有するモノマーを、ビニル系重合体Bのほぼ任意の位置に導入することができるため、重合溶媒、ビニル単量体A、及び重合体微粒子との組み合わせをより適切なものとすることが可能となり、さらに、特定の官能基を末端に導入することが可能であるので、重合安定性をより向上できる。
【0092】
なお、リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明におけるリビング重合の定義も擬リビング重合を含むものである。このリビング重合法、特に原子移動ラジカル重合法は、例えば、Matyjaszewskiらによる、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁、サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報、若しくはWO97/18247号公報、又はSawamotoらによる、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開2000−44626号公報、若しくは特開2000−191728号公報等に記載されている方法を用いることができる。
【0093】
(ビニル系重合体Bの主鎖)
本発明で用いられるビニル系重合体Bの主鎖を構成するビニル系モノマーとしては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、例示するならば、(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン系モノマー、フッ素含有ビニルモノマー、ケイ素含有ビニル系モノマー、マレイミド系モノマー、ニトリル基含有ビニル系モノマー、アミド基含有ビニル系モノマー、ビニルエステル類、アルケン類、共役ジエン類や;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、及びジアルキルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
【0094】
これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、分散剤、特にビニル系重合体Bによる重合安定化能力の面から、スチレン系モノマー、及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく、より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー、及びメタクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくは、アクリル酸エステルモノマーである。本発明においては、これらの好ましいモノマーを、他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させて、ビニル系重合体Bの主鎖を形成しても構わない。
【0095】
本発明で用いられるビニル系重合体Bの主鎖は、これらの好ましいモノマーを、主として重合して得られるものであることが好ましい。具体的には、これらの好ましいモノマーが、重量比で60%以上、ビニル系重合体Bそのもの、又は、ビニル系重合体Bの主鎖に、含まれていることが好ましい。なお後述する極性官能基Xを含有するモノマー、又は、官能基Yを含有するモノマーが、スチレン系モノマー、又は(メタ)アクリル酸系モノマーである場合は、極性官能基Xを含有するモノマー、及び官能基Yを含有するモノマーも含めて上記好ましいモノマーが重量比で60%以上含まれていればよい。
【0096】
前記(メタ)アクリル酸系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、及び(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が例示できる。
【0097】
前記スチレン系モノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等が例示できる。
【0098】
前記フッ素含有ビニルモノマーとしては、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等が例示できる。
【0099】
前記ケイ素含有ビニル系モノマーとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が例示できる。
【0100】
前記マレイミド系モノマーとしては、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が例示できる。
【0101】
前記ニトリル基含有ビニル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が例示できる。
【0102】
前記アミド基含有ビニル系モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が例示できる。
【0103】
前記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等が例示できる。
【0104】
前記アルケン類としては、エチレン、プロピレン等が、また、前記共役ジエンとしては、類ブタジエン、イソプレン等が例示できる。
【0105】
(疎水性単量体単位)
さらに、ビニル系重合体Bの主鎖を構成するビニル系モノマーとしては、疎水性単量体単位をも有することが、以下の2点から好ましい。
【0106】
即ち、重合溶媒が、親水性溶媒である場合には、生成過程における重合体微粒子表面への、ビニル系重合体Bの吸着能力(所謂、アンカー効果)を高めるために重要である。
【0107】
また、重合溶媒が、疎水性溶媒である場合には、生成過程における重合体微粒子の周囲に溶媒和層を形成せしめて、粒子を安定化するために必要である。
【0108】
このような疎水性単量体とは、20℃における水への溶解度が2重量%以下である単量体を意味し、ビニル系重合体B中、5〜95重量%であることが好ましく、より好ましくは、20〜90重量%である。
【0109】
20℃における水への溶解度が2重量%以下である単量体としては、例えば、メタアクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸パーフロロアルキル、メタクリル酸パーフロロアルキル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、スチレン、α − メチルスチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、及びアクリル酸プロピル等が挙げられる。
【0110】
(炭素−炭素二重結合を含有する基Zの導入方法)
またビニル系重合体Bの末端に炭素−炭素二重結合を含有する基Zを導入する方法としては、特開平5−255415号公報、特開2000−44626号公報、及び特開2000−191728号公報などに記載されている従来公知の方法を用いることができる。例えば、連鎖移動剤としてアルケニル基含有ジスルフィドを用いる方法、重合終期に「アルケニル基と各種官能基(アルケニル基を含む)を併せ持つ化合物」を添加する方法、及び重合体の末端ハロゲン基をアルケニル基含有化合物で置換する方法、などが挙げられる。
【0111】
(極性官能基Xの導入方法)
極性官能基Xをビニル系重合体Bに導入する方法は、特に限定されないが、ビニル系重合体B主鎖を構築する際に、
(1)極性官能基Xを含有するモノマーを共重合する方法、
(2)官能基Yを含有するモノマーを共重合してビニル系重合体を得た後に、官能基Yを極性官能基Xに変換する方法、
(3)極性官能基Xを含有する開始剤を用いる方法、及び、
(4)官能基Yを含有する開始剤を用いてビニル系重合体を得た後に、官能基Yを極性官能基Xに変換する方法、
の4つの方法を好ましく用いることができ、これらの方法はそれぞれ単独で行ってもよいし、併用してもよい。
【0112】
即ち、上記(2)、及び(4)の方法のように、直接、重合体に極性官能基Xを導入する代わりに、保護された官能基Y(以下、「保護基Y」と称することがある。)を、官能基Y(保護基Y)を含有するモノマーを共重合させること、又は、官能基Yを含有する開始剤を用いることで、重合体に導入しておいた後に、この官能基Yが導入されたビニル系重合体中の官能基Yを脱保護、すなわち極性官能基Xに変換することにより、ビニル系重合体Bを製造してもよい。ここで「保護」とは反応性の高い官能基(極性官能基X)を、その後の反応に対して不活性な官能基にすることをいい、その官能基を保護基と言う。また、「脱保護」とは、保護した官能基を必要な反応が終了した後、適当な反応を行うことで保護をはずすことをいう。
【0113】
このような極性官能基Xを含有するモノマー、及び/又は、官能基Yを含有するモノマーの使用量は、特に限定されないが、ビニル系重合体Bの主鎖を構成する単量体のうち1〜100mol%の範囲で用いることができ、より好ましくは2〜90mol%、さらに好ましくは5〜80mol%、特に好ましくは10〜70mol%の範囲で用いることができる。ただし極性官能基Xおよび/または官能基Yがビニル系重合体B一分子当たり少なくとも0.8個以上含まれるのが好ましい。
【0114】
(極性官能基Xを含有するモノマー)
極性官能基Xを含有するモノマーとしては、極性官能基Xを含有するビニル系モノマーが好ましく、より好ましくは、一般式5で表されるモノマーである。
【0115】
【化5】

(式中、R7は、水素または酸素原子を2つまで含んでいてもよく、また芳香環を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。またR8、R9は、直接結合、又は酸素原子を2つまで含んでいてもよく、また芳香環を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、お互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。)
このような極性官能基Xを含有するモノマーとして具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシメチル、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシフェニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノフェニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル基、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル、(メタ)アクリル酸メルカプトエチル、カルボキシスチレン(ビニル安息香酸)、ヒドロキシスチレン(ビニルフェノール)、グリシジルスチレン、アミノスチレン(ビニルアニリン)、ジメトキシメチルシリルスチレン、メルカプトスチレン、ブテン酸(クロトン酸)、ペンテン酸、ヘキセン酸、アリルアルコール、ブテノール、ペンテノール、ヘキセノール、エポキシブテン(ブタジエンモノオキシド)、エポキシヘキセン、及びエポキシデセンなどが挙げられる。
【0116】
(極性官能基Xに対応する官能基Y)
ここで、極性官能基Xに対応する官能基Yとしては、特に限定されず、例えば、Jeremy Robertson著「Protecting Group Chemistry(Oxford Chemistry Primers)」(Oxford Univ Pr(Sd))(2000/08/03)やTheodora W. Greene, Peter G. M. Wuts著「Protective Groups in Organic Synthesis」(Wiley−Interscience)3rd版(1999/05/15)、有機合成化学協会編「有機合成ハンドブック」(丸善)(1990/03/31)などに記載の従来公知のものを選ぶことができ、所望の極性官能基Xに応じた官能基Yを用いればよい。
【0117】
極性官能基Xがカルボキシル基の場合は、官能基Yとしては、下記一般式3で表される基であることが好ましい。
【0118】
【化6】

(一般式3中のWは、一般式4で表される。)
【0119】
【化7】

(一般式4中、CXは炭素原子またはケイ素原子を表す。R4〜R6は水素原子または炭素数1〜20の芳香環を含んでいてもよい炭化水素基を表す。R4〜R6は同じであってもよく、異なっていてもよい。またR4〜R6はそれぞれ独立していてもよいし、互いに結合していてもよい。)
官能基Yを表す一般式3中のWとしては、例えば、メチル基、t−ブチル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフェニルメチル基(トリチル基)、トリメチルシリル基、及びベンジル基(−CH2C6H5)などが挙げられるが、t−ブチル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフェニルメチル基、及びトリメチルシリル基からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0120】
極性官能基Xが水酸基の場合は、官能基Yは、−OGとすることができる。こここで、Gは、メチル基、トリフェニルメチル基(トリチル基)、t-ブチル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基)、テトラヒドロピラニル基、アセチル基、及びベンゾイル基などからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0121】
極性官能基Xがアミノ基の場合は、官能基Yは、−NHG、−NRG、又は−NG2とすることができる(式中、Rは酸素原子を2つまで含んでいてもよく、また芳香環を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)。ここで、Gは、ホルミル基(−CHO)、アセチル基(−COCH3)、トリフルオロアセチル基(−COCF3)、ベンゾイル基(−COC65)、ベンジル基(−CH265)、メトキシカルボニル基(−C(O)−OCH3)、t−ブトキシカルボニル基(−C(O)−OC(CH33)、及びトルエンスルホニル基(トシル基:−SO264−p−CH3)などからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0122】
(官能基Yを含有するモノマー)
官能基Yを含有するモノマーとしては、上記のような官能基Yを有していれば特に限定されないが、官能基Yを含有するビニル系モノマーが好ましく、一般式6で表されるモノマーを好適に用いることができる。
【0123】
【化8】

(式中、R11は、水素または酸素原子を2つまで含んでいてもよく、また芳香環を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、R12、R13は、直接結合または酸素原子を2つまで含んでいてもよく、また芳香環を含んでいてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、お互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。)
具体的には、例えば極性官能基Xがカルボキシル基の場合、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどを、官能基Yを含有するモノマーとして好適に用いることができる。官能基Yを含有するモノマーとしてこれらのモノマーを用いた場合、重合後、比較的温和な条件で選択的に脱保護、すなわち官能基Yから極性官能基Xへの変換をすることが可能である。
【0124】
(極性官能基X、又は、官能基Y、を含有する開始剤)
極性官能基Xを含有する開始剤としては、極性官能基Xを含んでいれば特に限定されず、特開2000−44626号公報、特開2000−191728号公報、及び国際公開WO99/65963号パンフレットなどに記載の従来公知のものを用いることができる。また、官能基Yを含有する開始剤としては、官能基Yを含んでいれば特に限定されず、これらに記載の開始剤、または、それらに含まれる極性官能基Xを保護して官能基Yとしたものを用いることができる。
【0125】
(官能基Yから極性官能基Xへの変換)
官能基Yから極性官能基Xへの変換は、官能基Yを含有するモノマーを共重合して得られたるビニル系重合体に対し、重合溶液のまま行ってもよいし、精製等の各種工程を経てから行ってもよく、また、官能基Yを含有するモノマーを共重合して得られたビニル系重合体単独で行ってもよいし、溶剤や触媒等の他の化合物の存在下で行ってもよい。さらに、その際の温度としては、特に限定されないが、官能基Yから極性官能基Xへの変換に要する時間を短縮するためには50℃以上が好ましく、100℃以上とすることもでき、また150℃以上、さらには200℃以上とすることもでき、極性官能基X、官能基Y、及びビニル系重合体Bの熱的安定性等を考慮に入れて適宜決めることができる。
【0126】
前記溶剤としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;及びエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0127】
前記触媒としては、例えば、極性官能基Xがカルボキシル基(−COOH)で、官能基Yが−C(O)−OC(CH33の場合、酸触媒が好ましい。このような酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸;及びスルホン酸型などのH+型イオン交換樹脂などが挙げられる。この場合の触媒量は、特に限定されないが、官能基Yが導入されたビニル系重合体100重量部に対して0.0001〜50重量部が好ましく、0.001〜20重量部がより好ましく、0.01〜10重量部がさらに好ましく、0.1〜5重量部が特に好ましい。触媒量が少ないと、官能基Yから極性官能基Xへ変換が不十分になる場合があり、また触媒量が多いと、副反応が起こったり、過剰の触媒の除去が困難になったりする場合がある。
【0128】
(乳化剤)
上述した重合体微粒子の生成時に併用可能な乳化剤としては、アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、及びノニオン系乳化剤が挙げられる。
【0129】
前記アニオン系乳化剤としては、カルボン酸系乳化剤、スルホン酸系乳化剤、硫酸系乳化剤、コハク酸系乳化剤、及びリン酸系乳化剤等が例示できる。
【0130】
前記カチオン系乳化剤としては、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、及びイミダゾリン等のアミン型と、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジウム塩、塩化ベンゾトニウム等の4級アンモニウム塩型等が例示できる。
【0131】
前記ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等に代表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等に代表されるポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル等に代表されるポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、及びソルビタンモノラウリン酸エステル等が例示できる。
【0132】
(連鎖移動剤)
また、ビニル単量体Aの重合においては、重合において一般的に使用される、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−デシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、及びn−オクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、又は2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタンなどの連鎖移動剤を適宜使用することもできる。
【0133】
(架橋剤)
架橋成分を重合体微粒子中に導入する為には、ビニル単量体Aの重合において、二重結合を二個以上有するいわゆる架橋剤が用いられる。使用できる架橋剤の量については特に限定はないが、ビニル単量体の反応率が低い間は単量体に対する架橋剤の量を3重量%以下で行うのが良く、より好ましくは1.5重量%以下で行うのが良い。ビニル単量体の反応率が高い時期は、必要であれば、残存するビニル単量体を基準として、20重量%以下の架橋剤を一括、分割もしくは連続的に添加しても良い。重合の進行に合わせて分割もしくは連続的に添加するのがより好ましく、溶媒又は、半回分重合操作を行うならばビニル単量体と混合して添加しても良い。
【0134】
重合初期に架橋剤濃度を抑えなければならないのは、初期の核粒子析出時、分散安定剤の吸着安定化時期に架橋剤がある濃度以上存在すると、核粒子間での架橋構造が形成され、極端に安定性が阻害されるからであり、いったん核粒子が安定化されれば、ひき続いて進行する粒子の成長反応即ち、核粒子の単量体による膨潤から重合への過程が、滞りなく行われる。
【0135】
好ましく用いられる架橋剤としては、(メタ)アクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3−ブチレングリコール、イタコン酸ジアリル、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、及びトリアリルイソシアヌレート等に代表されるような分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能性単量体があげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
(重合開始剤)
本発明では、ビニル単量体Aを重合させるために重合開始剤を使用する。上記重合開始剤としては特に限定されないが、ラジカル重合において通常用いられる重合開始剤で、上記重合溶媒に溶解するものが好ましい。例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ステアロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ− 2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)又は2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物;及び 過硫酸カリウム等の過硫化物系化合物等から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを好適に用いることができる。
【0137】
上記重合開始剤の使用量は特に限定されず、製造する重合体微粒子の分子量や使用する重合開始剤の分解温度等を考慮して適宜決定すればよいが、通常、上記ビニル単量体Aと上記重合開始剤との混合比率は、重合収率を十分なものとし、また、重合速度を適切な速さに保って安定な重合を実施するために重量比で100:0.01〜100:40とすることが好ましい。
【0138】
(水溶性高分子化合物)
また、前記水溶性高分子化合物としては、デンプン、ゼラチン等の天然水溶性高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、ポリビニルエーテル、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スルホン化ポリスチレングリコール、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物は単独でも又は2種以上の組み合わせでも用いられうる。
【0139】
(水難溶性物質)
また、前記水難溶性物質としては、20℃の水に対する溶解度が0.05重量%以下で分子量が20,000以下の物質を好ましく使用することができる。このような水難溶性物質としては、例えば、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジノニルフェニル等に代表される炭素数が12〜30の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体類、セチルアルコールあるいはステアリルアルコール等に代表される炭素数が12〜22の高級アルコール類、ヘキサデカン、オクタデカン等に代表される炭化水素類、1−クロロドデカン、1−クロロデカン等に代表されるようなハロゲン化炭化水素類等から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0140】
ただし、本発明の製造方法により得られる重合体粒子を樹脂改質剤として用いる場合には、水難溶性物質として、高級アルコール類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類等の非重合性の化合物を使用すると、重合体粒子中に残存した水難溶性物質が原因となって成形時のガス発生や滑性過多等の問題を起こし易い場合がある。この問題を解決するため、分子内に少なくとも1つの重合性不飽和基を有する重合性の水難溶性物質を使用することが好ましい。また、コバルト、鉄、アルミニウム等の金属やこれらの合金; 酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル等からなる金属酸化物の微粉体;カーボンブラックニグロシン染料、アニリンブルー等の顔料、染料類等の添加剤を用いることも可能である。
【実施例】
【0141】
次に具体的な実施例により本発明について説明するが、これらはいずれも例示的なものであり、本発明の内容を何ら限定するものではない。下記実施例、および比較例中、数平均分子量、及び分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量との比)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804;昭和電工(株)製)を、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。重合体1分子当たりに導入された官能基数は、1H−NMRによる濃度分析、及びGPCにより求まる数平均分子量を基に算出した。NMRはBruker社製ASX−400を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて23℃にて測定した。
【0142】
また、重合体微粒子の数平均粒子径、体積平均粒子径、及びCV値の測定は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JSM−6300F)で観察し、無作為に選んだ200個の微粒子を画像分析し、上記の数式1、数式2、及び数式3により算出した。
【0143】
(製造例1)ビニル系重合体B(B1)の製造
アクリル酸t−ブチル20重量部、及びアクリル酸n−ブチル80重量部をよく混合し、モノマー混合物100重量部とした。このモノマー混合物のうち40重量部、及び臭化銅(I)0.42重量部、アセトニトリル8.8重量部を仕込み、窒素気流下80℃で攪拌した。これに2−ブロモ絡酸エチル1.9重量部を加え、さらに80℃で攪拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン(以後トリアミンと称す)0.034重量部を加えて反応を開始した。途中、モノマー混合物の残り60重量部を断続的に追加し、さらにトリアミンを適宜追加しながら反応溶液の温度が80℃〜90℃となるように加熱攪拌を続けた。モノマーの反応率が95%に達した後、反応容器内を減圧にし、揮発分を除去した。
【0144】
これをトルエンで希釈し、合成ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ろ過助剤を添加し、酸素・窒素混合ガス雰囲気下で加熱攪拌した。固形分を除去した後、溶液を濃縮した。これをN,N−ジメチルアセトアミドに希釈し、メタクリル酸カリウム共存下70℃で7時間加熱撹拌した。濃縮後、トルエンで希釈して固形分を除去した。これに対してトルエン100重量部、p−トルエンスルホン酸4重量部を添加し、100℃で6時間加熱撹拌した。これをろ過後、揮発分を除去することによりビニル系重合体Bの一例として重ビニル系合体B1を得た。
【0145】
このビニル系重合体B1の数平均分子量は8400、分子量分布は1.2、重合体一分子当たりに導入された平均のメタクリロイル基数は1.0、主鎖を構成するモノマー由来の構成単位のうち、カルボキシル基を含有する構成単位は20mol%であった。
【0146】
すなわちビニル系重合体B1は極性官能基(カルボキシル基)を主鎖中に20mol%有し、かつ、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する基(メタクリロイル基)を有する。
【0147】
(製造例2)ビニル系重合体B(B2)の製造
製造例2として、以下の実施例3に使用するビニル系重合体B2を製造した。具体的には、上記製造例1において、メタクリル酸カリウムに代えて、アクリル酸カリウムを使用したこと以外は同様にして、分散剤でありビニル系重合体Bの一例である、ビニル系重合体B2を製造した。
【0148】
このビニル系重合体B2の数平均分子量は7600、分子量分布は1.2、重合体一分子当たりに導入された平均のアクリロイル基数は1.0、主鎖を構成するモノマー由来の構成単位のうち、カルボキシル基を含有する構成単位は20mol%であった。
【0149】
すなわちビニル系重合体B2は極性官能基(カルボキシル基)を主鎖中に20mol%有し、かつ、分子末端に炭素−炭素二重結合を有する基(アクリロイル基)を有する。
【0150】
(実施例1)重合体微粒子P1の製造
攪拌機、還流冷却器、温度計、及び窒素導入管を備えた500mlガラス製反応容器内にメタノール750重量部、水250重量部、メタクリル酸メチル100重量部、メタクリル酸アリル3重量部、分散剤としてビニル系重合体B1を2重量部、28重量%アンモニア水溶液(アンモニア純分で0.6重量部)を仕込んだ。翼径6cmの半月板状攪拌翼を用い、攪拌速度170rpmで攪拌した。窒素ガスをバブリングしながら、反応器内温度を60℃に調整した。ビニル系重合体B1が完全に溶解し、反応器内の混合溶液は完全に透明であることを確認した。反応器内温が60℃で安定したことを確認したのち、窒素ガス配管を反応液から引き上げ、その先端が液面より上になるように固定した。次いで、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル2重量部を仕込んで重合を開始した。2,2′−アゾビスイソブチロニトリル投入から数分で反応液に濁りが発生し、媒体に溶解しない粒子が生成したことが確認された。2,2′−アゾビスイソブチロニトリル投入から5時間後、反応液を40℃ まで冷却して、重合体微粒子P1の分散液を得た。
【0151】
直ちに、分散液の全量を150メッシュの金属網で濾過し、凝集発生の有無を確認したところ、凝集物はほとんどみられなかった。また、反応器の内壁、攪拌翼、及び温度計への凝集物の付着もほとんどみられなかった。
【0152】
濾過後の分散液について、120℃×60分乾燥によりもとめた固形分値と、仕込みから計算される理論固形分値から重合転化率を求めたところ、94.8%であった。さらに分散液を、別途上澄みが透明になるまで静置し、沈降部を回収後、室温乾燥させて、重合体微粒子P1を得た。得られた重合体微粒子P1について、走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)観察を行った結果、dv=1.33μm、dn=1.33μm、CV=5.8%であった。
【0153】
(実施例2)重合体微粒子P2の製造
実施例2として、上記実施例1におけるビニル系重合体B1の2重量部に代えて、ビニル系重合体B1を1重量部としたこと以外は同様にして、重合体微粒子P2の分散液を得た。
【0154】
施例1と同様に、分散液の全量を150メッシュの金属網で濾過し、凝集発生の有無を確認したところ、凝集物はほとんどみられなかった。また、反応器の内壁、攪拌翼、及び温度計への凝集物の付着もほとんどみられなかった。
【0155】
濾過後の分散液について、120℃×60分乾燥によりもとめた固形分値と、仕込みから計算される理論固形分値から重合転化率を求めたところ、95.0%であった。さらに分散液を、別途上澄みが透明になるまで静置し、沈降部を回収後、室温乾燥させて、重合体微粒子P2を得た。得られた重合体微粒子P2について、走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)観察を行った結果、dv=1.42μm、dn=1.41μm、CV=4.2%であり、実施例1と比較して、ビニル系重合体B1の使用量が半分の1重量部であるにもかかわらず、単分散性の指標であるCV値が良い結果となった。
【0156】
(実施例3)重合体微粒子P3の製造
実施例3として、上記実施例1におけるビニル系重合体B1の2重量部に代えて、ビニル系重合体B2を10重量部としたこと以外は同様にして、重合体微粒子P3の分散液を得た。
【0157】
実施例1と同様に、分散液の全量を150メッシュの金属網で濾過し、凝集発生の有無を確認したところ、凝集物はほとんどみられなかった。また、反応器の内壁、攪拌翼、及び温度計への凝集物の付着もほとんどみられなかった。
【0158】
濾過後の分散液について、120℃×60分乾燥によりもとめた固形分値と、仕込みから計算される理論固形分値から重合転化率を求めたところ、94.9%であった。さらに分散液を、別途上澄みが透明になるまで静置し、沈降部を回収後、室温乾燥させて、重合体微粒子P3を得た。得られた重合体微粒子P3について、走査型電子顕微鏡(以下、SEMという)観察を行った結果、dv=1.62μm、dn=1.61μm、CV=6.5%であった。
【0159】
(比較例1)
分散剤としてビニル系重合体B1の代わりにポリビニルピロリドン(BASF社製、K−90)を10重量部使用する以外は、実施例1と同様の操作を行い、重合体微粒子の分散液を製造することを試みた。その結果、重合中に多量の凝集物が発生したため、重合途中で中止した。従って、重合体微粒子を得ることは出来なった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合溶媒100重量部に、100重量部以下のビニル単量体A、及び該ビニル単量体Aに対して0.01重量%以上のビニル系重合体B、を溶解してなる重合溶液中で、該ビニル単量体Aを重合し、該重合溶媒に不溶の重合体微粒子を生成する重合体微粒子の製造方法であって、
該ビニル系重合体Bが、その数平均分子量が3000以上であり、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値が1.8未満であり、極性官能基Xを有し、かつ、下記一般式1、及び/又は、一般式2で表される炭素−炭素二重結合を含有する基Zを、1つ以上の分子末端に有することを特徴とする重合体微粒子の製造方法。
【化1】

(式中、R1、及びR2は、水素、または、炭素数1〜20の芳香環を含んでいてもよい炭化水素基を表す。また、R3は、直接結合、又は炭素数1〜20の芳香環を含んでいてもよい炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記ビニル系重合体Bの主鎖が、ラジカル重合により製造されてなる主鎖である請求項1に記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ラジカル重合が、リビングラジカル重合である請求項2に記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記リビングラジカル重合が、原子移動ラジカル重合である請求項3に記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ビニル系重合体Bの主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー、及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる1種以上のモノマーを主として重合して得られる主鎖である請求項1〜4のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記炭素−炭素二重結合を含有する基Z中のR1が、水素、及び/又は、メチル基である請求項1〜5のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記炭素−炭素二重結合を含有する基Z中のR2が、水素、及び/又は、メチル基である請求項1〜6のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記重合溶媒が、親水性溶媒である請求項1〜7のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記ビニル系重合体Bが、構成単量体単位として疎水性単量体単位を含む請求項1〜8のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記極性官能基Xが、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基、アセチルアセトナト基、及びメルカプト基からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記極性官能基Xが、カルボキシル基であって、かつ、前記ビニル単量体A重合時に、該カルボキシル基の少なくとも一部が、アルカリによって中和されている請求項10に記載の重合体微粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法により製造された重合体微粒子。
【請求項13】
体積平均粒子径が0.05〜20μm、かつ、CV値が30%以下である請求項12に記載の重合体微粒子。
【請求項14】
体積平均粒子径が1〜20μmである請求項13に記載の重合体微粒子。