説明

重合性単量体組成物および重合防止方法

【課題】重合を防止する方法、ならびに該方法に好適に用いられる、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と特定の重合防止剤とを含有する重合性単量体組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と、安定フリーラジカル化合物とを含む重合性単量体組成物は、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合および重合による異物の発生を効果的に防止することができる。また、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と近い蒸気圧をもつ安定フリーラジカル化合物を用いることにより、蒸留設備の気相部および凝縮部などの重合を効果的に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と安定フリーラジカル化合物とを含む重合性単量体組成物および(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリロイル基含有化合物は、熱、光およびその他の要因によりきわめて重合しやすく、製造工程および精製工程において、しばしば重合による異物が発生し、製造設備の故障の原因となっている。この異物が(メタ)アクリロイル基含有化合物の製造工程および精製工程の製造タンク、蒸留塔および配管などに付着すると、異物による閉塞および可動設備の固着などが起こるだけでなく、(メタ)アクリロイル基含有化合物の製造および精製にも支障をきたす。そして関連設備内に付着した異物の除去は、人力による作業によるために作業効率が悪く、その結果、長期間の運転停止を余儀なくされ、経済的損失が大きい。また、製品品質の低下の原因ともなる。
【0003】
そこで、(メタ)アクリロイル基含有化合物の製造設備内での異物の発生を抑制する重合防止剤および重合防止方法が数多く提案または実施されている。
一般に(メタ)アクリロイル基含有化合物の重合防止剤としては、従来、ハイドロキノンやメトキシハイドロキノンが用いられてきたが、十分な効果を示さず、これに替わる重合防止剤としてフェノチアジン、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)な
どの利用が提案されてきた。しかし、依然として十分な重合防止効果を得るには至っていない。
【0004】
特に、重合防止剤を直接添加し、濃度をコントロールできる液相部の重合防止よりも、蒸留工程などの気相部および凝縮部の重合防止がより困難である。蒸留塔および熱交換機などの蒸気が凝縮してできる液滴などには、液相部(蒸留釜液など)のように十分に重合防止剤が溶存していないため、重合が起こりやすい。これを解決するために、重合防止剤を有機溶剤や蒸留取得物などに溶解させて還流ラインに供給する方法(特許文献1参照)、酸素濃度を調整する方法(特許文献2参照)が提案されている。これらの方法によってある程度の改善はみられるが、重合防止剤の濃度を制御することが困難であることや、重合物が発生して製造設備内に付着することがあるため、より優れた(メタ)アクリロイル基含有化合物の重合防止剤および効果的な重合防止方法の出現が強く望まれている。
【0005】
(メタ)アクリロイル基含有化合物の中でも、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物は、活性水素をもつ化合物、例えば水酸基または1級もしくは2級アミノ基などの置換基を有する化合物に対して反応性の高いイソシアネート基と、ビニル重合が可能な炭素―炭素二重結合とを、同一分子内に有する。そのため、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物は、工業上きわめて有用な化合物であり、塗料・コーティング材、接着剤、フォトレジスト、歯科材料および磁性記録材料などの多くの用途に使用される多官能機能性モノマーである。この化合物は、反応性の高い官能基を同一分子内に複数持つために、製造工程中での重合危険性がさらに高い。また、イソシアネート基自身の反応性により、より重合物が発生しやすいことが想定される。したがって、より高いレベルでの重合防止対策が必要となる。
【特許文献1】特開2003−103155号公報
【特許文献2】特開平9−67311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
重合を防止する方法、ならびに該方法に好適に用いられる、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と特定の重合防止剤とを含有する重合性単量体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合特性を詳細に検討した結果、安定フリーラジカル化合物が(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止に効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下の事項からなる。
【0008】
[1](メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と、安定フリーラジカル化合物とを含む重合性単量体組成物。
[2]前記安定フリーラジカル化合物が、下記一般式(1)で表される[1]に記載の重合性単量体組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基であり、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示し、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示す。RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよく、RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよい。Zは、炭素数2〜5のアルキレン基または2価の芳香族基を示し、該アルキレン基および芳香族基はさらに置換基を有していてもよい。
【0011】
[3]前記Zが炭素数2または3の置換もしくは非置換のアルキレン基である[2]に記載の重合性単量体組成物。
[4]前記安定フリーラジカル化合物が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルから選ばれた少なくとも1種である[1]〜[3]のいずれかに記載の重合性単量体組成物。
【0012】
[5]前記安定フリーラジカル化合物が、前記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物に対して1質量ppm〜10質量%の量で含まれる[1]〜[4]のいずれかに記載の重合性単量体組成物。
【0013】
[6]前記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物が、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシブチルイソシアネート、5-メタクリロイルオキシペンチルイソシアネート、6-メタクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-メタクリロイルオキシフェニルイソシ
アネートおよび1,1―ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートから選
ばれた少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれかに記載の重合性単量体組成物。
【0014】
[7](メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止剤として、安定フリーラジカル化合物を用いる(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【0015】
[8]前記安定フリーラジカル化合物が下記一般式(1)で表される[7]に記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【0016】
【化1】

【0017】
式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基であり、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示し、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示す。RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよく、RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよい。Zは、炭素数2〜5のアルキレン基または2価の芳香族基を示し、該アルキレン基および芳香族基はさらに置換基を有していてもよい。
【0018】
[9]前記Zが炭素数2または3の置換もしくは非置換のアルキレン基である[7]または[8]に記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
[10]前記安定フリーラジカル化合物の蒸気圧が(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の0.2倍〜5倍である[7]〜[9]のいずれかに記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【0019】
[11]前記安定フリーラジカル化合物が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルから選ばれた少なくとも1種である[7]〜[10]のいずれかに記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【0020】
[12]前記安定フリーラジカル化合物を(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物に対して1質量ppm〜10質量%の量で用いる[7]〜[11]のいずれかに記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【0021】
[13]前記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物が、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシブチルイソシアネート、5-メタクリロイルオキシペンチルイソシアネート、6-メタクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-メタクリロイルオキシフェニルイソシアネートおよび1,1―ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートから
選ばれた少なくとも1種である[7]〜[12]に記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【0022】
[14]重合防止剤として、フェノール系重合防止剤、硫黄系重合防止剤およびりん系重合防止剤から選ばれた少なくとも1種を併用する[7]〜[13]のいずれかに記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【0023】
[15](メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物由来の構成単位を有する(共)重合体と、安定フリーラジカル化合物とを含む重合体組成物。
[16][1]に記載の重合性単量体組成物を重合させてなる重合体組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と、安定フリーラジカル化合物とを含む重合性単量体組成物は、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合および重合による異物の発生を効果的に防止することができる。
【0025】
また、蒸留工程において、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と近い蒸気圧をもつ安定フリーラジカル化合物を用いることにより、蒸留設備の気相部および凝縮部などの重合を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の製造時および精製時において、安定フリーラジカル化合物を用いることによって、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合を防止し、さらに重合によって生じる異物の発生を効果的に防止する(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と安定ラジカル化合物とを含む重合性単量体組成物および重合防止方法に関するものである。
【0027】
ここで、本明細書において「(メタ)アクリロイル」はアクリロイルまたはメタクリロイルを意味し、その一部の水素原子が置換されているものも含む。また、「(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物」は、化合物を意味するものとして特に断りがある場合を除き、微量の酸性ガスと加水分解性塩素とを含み得る、実質的に(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物からなる組成物を意味する。
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。
〔重合性単量体組成物〕
<安定フリーラジカル化合物>
本発明で用いられる重合防止剤としては、安定フリーラジカル化合物が用いられる。ここで安定フリーラジカル化合物とは、室温においてラジカル状態で単離することができる化合物をいう。本発明の重合性単量体組成物を構成する安定フリーラジカル化合物としては、例えば、
ニトロキシドフリーラジカル、たとえば、PROXYL(2,2,5,5-テトラメチル-1-ピロリジノオキシル)、3-カルボキシ−PROXYL、3-カルバモイル−PROXYL、2,2-ジメチル-4,5-シク
ロヘキシル−PROXYL、3-オキソ−PROXYL、3-ヒドロキシルイミン−PROXYL、3-アミノメチル−PROXYL、3-メトキシ−PROXYL、3-tert-ブチル−PROXYL、3-マレイミド−PROXYL、3,4-ジ-tert-ブチル−PROXYL、3-カルボキシリック-2,2,5,5-テトラメチル-1-ピロリジニノオキシル、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジノオキシル)、4-ベンゾキシロキ
シ-TEMPO、4-メトキシ-TEMPO、4-カルボキシリック-4-アミノ-TEMPO、4-クロロ-TEMPO、4-ヒドロキシルイミン-TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPO、4-オキソ-TEMPO、4-オキソ-TEMPO−
エチレンケタール、4-アミノ-TEMPO、2,2,6,6-テトラエチル-1-ピペリジノオキシル、2,
2,6-トリメチル-6-エチル-1-ピペリジノオキシル、およびこれらの誘導体;
ジアルキルニトロキシドラジカル、たとえば、ジ-tert-ブチルニトロキシド、ジフェニルニトロキシド、tert-ブチル-tert-アミルニトロキシド、DOXYL(4,4-ジメチル-1-オキサゾリジノオキシル)、2-ジ-tert-ブチル−DOXYL、5-デカン−DOXYLまたは2-シクロヘキサン−DOXYL、およびこれらの誘導体;
2,5-ジメチル-3,4-ジカルボキシリック−ピロール、2,5-ジメチル-3,4-ジエチルエステル−ピロール、2,3,4,5-テトラフェニル−ピロール、3-シアノ−ピロリン-3-カルバモイル
−ピロリンまたは3-カルボキシリック−ピロリンなど;
1,1,3,3-テトラメチルイソインドリン-2-イロキシルまたは1,1,3,3-テトラエチルイ
ソインドリン-2-イロキシルなど;
ポルフィレキシドニトロキシルラジカル、たとえば、5-シクロヘキシルポルフィレキシドニトロキシル;
2,2,4,5,5-ペンタメチル−Δ3-イミダゾリン-3-オキシド-1-オキシルなど;
ガルビノキシルなど;
1,3,3-トリメチル-2-アザビシクロ[2,2,2]オクタン-5-オン-2-オキシドまたは1-アザビシクロ[3,3,1]ノナン-2-オキシドなど;
ならびにDPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)が挙げられる。
【0029】
また、下記一般式(2)および(3)で表される化合物を用いてもよい。
【0030】
【化2】

【0031】
式中、R1 、R2 、R3 、R4 、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、塩素、臭素またはヨウ素などの原子;アルキルまたはフェニル基などの飽和または不飽和の直鎖状、分枝状または環状の炭化水素基;エステル基またはアルコキシ基;リン酸エステル基;
ポリメタクリル酸メチル鎖、ポリブタジエン鎖、ポリエチレンまたはポリプロピレン鎖、好ましくはポリスチレン鎖であるポリオレフィン鎖であってもよいポリマー鎖を表す。
【0032】
好ましい安定フリーラジカル化合物としては、式(1)で表される化合物が挙げられる。特に、工業的入手の容易さから、TEMPOおよび4-ヒドロキシ-TEMPOが好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基であり、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示し、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示す。RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよく、RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよい。Zは、炭素数2〜5のアルキレン基または2価の芳香族基を示し、該アルキレン基および芳香族基はさらに置換基を有していてもよい。)
安定フリーラジカル化合物自体を添加する以外に、該安定フリーラジカル化合物の前駆体を添加し、系中で安定フリーラジカルを発生させてもよい。安定フリーラジカル前駆体としては、たとえば、一般的なHALS(ヒンダートアミン光安定剤)化合物などが挙げられる。具体的には、Sanol LSシリーズ(三共ライフテック株式会社製、商標)、Tinuvinシリーズ(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、商標)などが挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物に対する安定フリーラジカル化合物の添加量は、重合性単量体組成物の組成により異なるため、最適な添加量は工程により異なる。不純物含量が多い場合または加熱する場合などは、重合しやすくなるため、重合防止剤も多く添加する必要がある。反応工程などのような不純物含量の多い状態および加熱温度の高い工程では、安定ラジカル化合物の添加量は、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の質量に対して0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲である。一方、蒸留工程などのような不純物含量の少ない状態では、安定ラジカルの添加量は、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の質量に対して1質量ppm〜5質量%、好ましくは20質量ppm〜1質量%の範囲である。安定フリーラジカルの添加量が多いと経済効率に劣るが、少ないと十分な重合防止効果が得られない。
安定フリーラジカル化合物の添加方法および時期については、なんら限定されず、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物または(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物を含む溶液に添加してもよいし、安定フリーラジカル化合物を含む溶液を調製してから添加してもよい。たとえば、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の製造時の蒸留工程においては、安定フリーラジカル化合物は、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の製造工程において用いられる有機溶剤に比較的溶解しやすいので、供給液や還流液に溶解させて工程中へ導入することができる。
【0036】
<(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物>
本発明の重合性単量体組成物の構成成分である、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物は、通常の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の製造方法に
より得られる(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物であれば、特に限定されない。
【0037】
たとえば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-メタクリロイルオキシn-プロピルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシイソプロピルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシn-ブチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシtert-ブチルイソシ
アネート、2-メタクリロイルオキシブチル4-イソシアネート、2-メタクリロイルオキシブチル3-イソシアネート、2-メタクリロイルオキシブチル2-イソシアネート、2-メタクリロイルオキシブチル1-イソシアネート、5-メタクリロイルオキシn-ペンチルイソシアネート、6-メタクリロイルオキシn-ヘキシルイソシアネート、7-メタクリロイルオキシn-ヘプチルイソシアネート、3-メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-アクリロイルオキシn-プロピルイソシアネート、2-アクリロイルオキシイソプロピルイソシアネート、4-アクリロイルオキシn-ブチルイソシアネート、2-アクリロイルオキシtert-ブチ
ルイソシアネート、2-アクリロイルオキシブチル4-イソシアネート、2-アクリロイルオキシブチル3-イソシアネート、2-アクリロイルオキシブチル2-イソシアネート、2-アクリロイルオキシブチル1-イソシアネート、5-アクリロイルオキシn-ペンチルイソシアネート
、6-アクリロイルオキシn-ヘキシルイソシアネート、7-アクリロイルオキシn-ヘプチルイソシアネート、3-アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、4-アクリロイルオキシフェニルイソシアネート、1,1−ビス(メタクリロイルオキシメチル)メチルイソシアネート、1,1−ビス(メタクリロイルメチル)エチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)メチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどが挙げられる。またこれらのアルキル基水素原子のフッ素置換体が挙げられる。これらの中では2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシn-ブチルイソシアネート、5-メタクリロイルオキシn-ペンチルイソシアネート、6-メタクリロイルオキシn-ヘキシルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート、1,1−ビス(メタクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが好ましい。
【0038】
<その他の成分>
前記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の製造工程において発生する異物としては、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の(メタ)アクリロイル部位と製造工程で生じる不純物とが反応して生成するオリゴマーおよびポリマーなどでゲル状またはポップコーン重合物、あるいは(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物のイソシアネート部位が反応して形成する、ビュウレット、イソシアヌレート、ウレタンまたはウレア結合などを有する化合物など、低流動性もしくは固体状の重合体が挙げられる。これらの重合体が製造設備の配管、熱交換機およびポンプ類などに付着または混入すると、工程液の流動が阻害されたり、回転機器の稼働が阻害されたりするなどのトラブルが発生し、製造工程および精製工程の制御に困難をきたす。
【0039】
〔重合防止方法〕
<重合防止方法の評価方法>
重合防止方法の評価方法としては、一般的な方法で評価することが可能である。特に、製造設備の稼動上の課題である異物の発生という観点から評価する場合には、たとえば次のような評価方法が挙げられる。工程液または製品に、重合防止剤を添加し、
(A)一定の温度に保持し、ポリマーの核ができるまでの時間を測定する方法、
(B)実際の製造工程と同様の操作(蒸留、凝縮および撹拌など)を実施し、そこでポリマーの核ができるまでの時間を計測する方法。
ポリマーの核が発生することの検出方法は、たとえば、目視により判断する方法または重
合熱による温度上昇を検知する方法などが挙げられる。
【0040】
<重合防止剤の蒸気圧>
重合防止剤としては、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の蒸留温度における蒸気圧と近い蒸気圧を有する安定フリーラジカル化合物を用いることが好ましい。(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の蒸気圧に近い蒸気圧を有する安定フリーラジカルを添加すると、釜内での重合を防止するだけではなく、蒸留装置の気相部で凝縮する重合性単量体留分中にも、安定フリーラジカル化合物も混入するため、蒸留装置の気相部での重合も効果的に防止することができる。安定フリーラジカルの蒸気圧は、蒸留工程における釜内液温度の条件で、(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の蒸気圧の0.2倍〜5倍、好ましくは0.3倍〜3倍の範囲である。
【0041】
蒸気圧は一般的な方法で測定することが可能であり、たとえば、ブルドン管を用いる静止法またはトランスピレーション法などを用いることができる。平成15年秋季第64回応用物理学会学術講演会(予稿集番号1p-ZA-1)に記載された熱天秤(TG)を用いた測
定方法による蒸気圧曲線を図1に示す。
【0042】
TGによる蒸気圧測定方法とは、容器の底部に浅く平らに置かれた試料から蒸発した蒸気が、容器上端では蒸気濃度ゼロとなる境界条件を満たすように流れるキャリアガスの影響を受けずに、容器内を分子拡散によってのみ上方に移動する状態にFickの拡散方程式を適用して蒸気圧を求める方法である。Fickの拡散方程式の解としてTGで測定した蒸発速度、Gillilandの式に沸点分子容を与え算出した拡散係数D、温度T、蒸発量N、サンプル表面から容器上端までの高さHを代入して蒸気圧を算出する。各温度での蒸気圧を求めることにより、各物質の蒸気圧曲線を取得することができる。
【0043】
2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)の減圧蒸留を釜内液温度90℃の
条件で実施する場合、AOIと蒸気圧の近いTEMPOを選択することが好ましい。フェノチアジンおよびBHTなどはAOIと比べ蒸気圧が低いため揮発する量が少なく、蒸留気相部凝縮
液の重合防止剤としては効果的ではない。
【0044】
<重合体組成物および製造方法>
本発明の重合性単量体組成物を重合または硬化する方法としては、通常の方法が使用できる。(メタ)アクリロイル基を重合および共重合させる方法としては、紫外線または電子ビームなどのエネルギー線を照射する方法または重合開始剤を添加する方法などが挙げられる。イソシアネート基を反応させる方法としては、活性プロトン化合物(アルコールおよびアミンなど)と反応させて、それぞれウレタンおよびウレア結合を形成する方法や、イソシアネート基同士の反応によりイソシアヌレートまたはビュウレット体などを形成することができる。安定フリーラジカルを含むことにより硬化物の安定性が低下することはなく、通常通り使用できる。
【0045】
〔実施例〕
以下、本発明の実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によってなんら制限されるものではない。
【0046】
<測定条件>TGによる蒸気圧測定
2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)33.240mgを、アルミ容器(φ5mm×高さ5mm)に取り、TG装置(セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA6200)に導入した。窒素ガスを350mL/分で流し、サンプル炉を室温から10℃/分の割合で90℃まで昇温した後、90℃で5分間保持した。この5分間の平均DTG(TGの変化量)は229mg/分であり、サンプル温度は91.5℃であった。
【0047】
サンプルの表面積=容器底面積=0.196(cm2)、MOI分子量155.15(g/mol)なので
蒸発速度N=229÷60000000÷0.196÷155.15=1.255×10-7(mol/cm2・s)
沸点分子容182.66(cm3/mol)、容器深さ(サンプル厚0.1cmより)H=0.4cm、気体定数R=82.06(cm3・atm/(mol・K))、Gillilandの式より拡散係数D=0.0789(cm2/s)、全圧P0=1(atm)

Fickの拡散方程式より蒸気圧P=NAHRT/DP0=1554(Pa)となる。
【0048】
〔実施例1−1〕
精密蒸留により重合防止剤を10質量ppm以下に除いた2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)に、重合防止剤としてTEMPOを2-アクリロイルオキシエチルイ
ソシアネートに対して500質量ppm添加して、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート溶液を調製した。重合防止剤の濃度は、ガスクロマトグラフィにより確認した。
【0049】
次いで、分子状酸素が重合防止効果に及ぼす影響を除き、TEMPOのみによる重合防止効
果をみるために、この2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート溶液5mlを20mlの試験管にとり、真空脱気を1分間行うことにより2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート溶液中の溶存酸素を除去し、窒素を導入した。この脱気および窒素置換の操作を3回繰り返した後、硝子で被覆された熱電対を通したゴム栓で試験管の口を封じた。熱電対の先端が内液の中央部に来るように浸し、自動温度記録計に接続した。この試験管を100℃のオイルバス中に浸漬し、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートの重合開始時間を測定した。重合開始時間は、試験管をオイルバス中に浸漬してから試験管内封液が重合により発熱を開始するまでの時間とした。結果を表1に示す。
<ガスクロマトグラフ条件>
カラム:J&W社 DB−1(長さ30m×内径0.32mm×膜厚1μm)
試料注入部温度:300℃
検出器温度:300℃
検出器:FID(水素炎式検出器)
昇温プログラム:50℃→10℃/分→320℃(5分間保持)
流量:1.2mL/分
試料希釈溶媒:塩化メチレン
〔実施例1−2〜1−4〕
TEMPOを用いる代わりに、重合防止剤として表1に記載の各化合物を、2-アクリロイル
オキシエチルイソシアネート(AOI)に対して500質量ppm添加したこと以外は、実施例1−1に記載の方法と同様の方法で重合性を評価した。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1−1〜1−4]
精密蒸留により重合防止剤を10質量ppm以下に除いた2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートに、重合防止剤として表1に記載の各化合物を、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートに対して500質量ppm添加したこと以外は、実施例1−1に記載の方法と同様の方法で重合性を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
重合開始時間は反応速度の逆数に比例するため、対数で評価することが好ましい。たとえば、日本工業規格JIS−K−6795では、樹脂の寿命予測を樹脂寿命時間の対数にして評価している。表1の結果を、重合開始時間の対数としてプロットした結果を図2に示す。安定フリーラジカル化合物の重合防止効果が大きいことが分かる。
【0053】
実施例1−1〜1−4および比較例1−1〜1−4から、安定ラジカル化合物を用いた場合は、他の重合防止剤を用いた場合と比べ、重合開始までの時間が長く、安定ラジカル化合物による重合防止効果が高いことが分かる。
【0054】
〔実施例2−1〜2−4〕
2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートの代わりに、精密蒸留により重合防止剤を10質量ppm以下に除いた2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を用いたこと以外は、実施例1−1と同様の方法で重合性を評価した。結果を表2に示す。
【0055】
[比較例2−1〜2−4]
精密蒸留により重合防止剤を10質量ppm以下に除いた2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)に、重合防止剤として表2に記載の各化合物を、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートに対して500質量ppm添加したこと以外は、実施例2−1に記載の方法と同様の方法で重合性を評価した。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
実施例2−1〜2−4、比較例2−1〜2−4から、安定ラジカル化合物を用いた場合は、他の重合防止剤を用いた場合と比べ、重合開始時間が長く、安定ラジカル化合物の重合防止効果が高いことがわかる。
【0058】
〔実施例3−1〜3−3〕
安定ラジカル化合物と他の重合防止剤とを併用した場合の効果を調べた。重合防止剤と
して表3に記載の各化合物を、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)に対してそれぞれ250質量ppm添加したこと以外は、実施例1−1に記載の方法と同様の方法で重合性を評価した。結果を表3に示す。
【0059】
[比較例3−1〜3−2]
重合防止剤として表3に記載の各化合物を、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)に対して250質量ppm添加したこと以外は、実施例1−1に記載の方法と同様の方法で重合性を評価した。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例3−1〜3−3および比較例3−1〜3−2から、安定ラジカル化合物と他の重合防止剤とを併用した場合は、安定ラジカル化合物以外の重合防止剤のみを用いた場合と比べ、重合開始時間が長く、安定ラジカル化合物の重合防止効果が高いことが分かる。
【0062】
〔実施例4−1〕
精密蒸留により重合防止剤を10質量ppm以下に除いた2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)に、重合防止剤としてTEMPOを2-アクリロイルオキシエチルイ
ソシアネートに対して1質量%添加した溶液を調製した。この溶液を磁気撹拌子を入れた200mLナス型フラスコに50g仕込み、ジムロート冷却管を取り付けた。ジムロート冷却管は使用前に100℃の電気炉で1時間加熱後、冷却し、十分に乾燥した後、重量を量っておく。80℃に設定したオイルバスに前記ナス型フラスコを浸漬し、加熱を開始するとともに4Torrの減圧下で保持した。この減圧加熱試験を24時間実施したが、ジムロート冷却管に重合物の付着はみられなかった。ジムロート冷却管は使用後にヘキサンを流して洗浄した後、100℃の電気炉で1時間加熱後、冷却し、十分に乾燥した後、重量を量り、使用後の付着物による重量の増加から蒸留気相部の重合物の量を求めた。結果を表4に示す。
【0063】
〔実施例4−2〜4−4〕
TEMPOを用いる代わりに、重合防止剤として表1に記載の各化合物を、2-アクリロイル
オキシエチルイソシアネート(AOI)に対して1質量%添加したこと以外は、実施例4−1に記載の方法と同様に重合性を評価したところ、ジムロート冷却管に重合物の付着はみられなかった。結果を表4に示す。
【0064】
[比較例4−1〜4−4]
精密蒸留により重合防止剤を10質量ppm以下に除いた2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)に、重合防止剤として表1に記載の各化合物を、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートに対して1質量%添加したこと以外は、実施例4−1に記載の方法と同様の方法で重合性を評価した。結果を表4に示す。
【0065】
【表4】

【0066】
実施例4−1〜4−4および比較例4−1〜4−4から、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)の蒸気圧に近い蒸気圧を有する安定ラジカル化合物を用いた場合、冷却管の重量増加が少なく、他の重合防止剤を用いた場合と比べて、冷却管に付着した凝縮液に対して安定ラジカル化合物の重合防止効果が高いことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】熱天秤(TG)を用いた測定方法による蒸気圧曲線を示す図である。
【図2】表1に記載の各重合防止剤を添加したときの重合開始時間を対数としてプロットした図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物と、安定フリーラジカル化合物とを含む重合性単量体組成物。
【請求項2】
前記安定フリーラジカル化合物が、下記一般式(1)で表される請求項1に記載の重合性単量体組成物。
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基であり、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示し、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示す。RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよく、RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよい。Zは、炭素数2〜5のアルキレン基または2価の芳香族基を示し、該アルキレン基および芳香族基はさらに置換基を有していてもよい。)
【請求項3】
前記Zが炭素数2または3の置換もしくは非置換のアルキレン基である請求項2に記載の重合性単量体組成物。
【請求項4】
前記安定フリーラジカル化合物が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルから選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の重合性単量体組成物。
【請求項5】
前記安定フリーラジカル化合物が、前記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物に対して1質量ppm〜10質量%の量で含まれる請求項1〜4のいずれかに記載の重合性単量体組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物が、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシブチルイソシアネート、5-メタクリロイルオキシペンチルイソシアネート、6-メタクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-メタクリロイルオキシフェニルイソシアネートおよび1,1―ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートから選ばれた
少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の重合性単量体組成物。
【請求項7】
(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止剤として、安定フリーラジカル化合物を用いる(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【請求項8】
前記安定フリーラジカル化合物が下記一般式(1)で表される請求項7に記載の(メタ
)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【化1】

(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基であり、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示し、RおよびRの少なくとも一方は、置換もしくは非置換の直鎖または分岐鎖のアルキル基あるいは置換もしくは非置換のアリール基を示す。RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよく、RとRとが互いに結合して環状構造を形成してもよい。Zは、炭素数2〜5のアルキレン基または2価の芳香族基を示し、該アルキレン基および芳香族基はさらに置換基を有していてもよい。)
【請求項9】
前記Zが炭素数2または3の置換もしくは非置換のアルキレン基である請求項7または8に記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【請求項10】
前記安定フリーラジカル化合物の蒸気圧が(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の蒸気圧の0.2倍〜5倍である請求項7〜9のいずれかに記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【請求項11】
前記安定フリーラジカル化合物が、2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシルから選ばれた少なくとも1種である請求項7〜10のいずれかに記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【請求項12】
前記フリーラジカル化合物を(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物に対して1質量ppm〜10質量%の量で用いる請求項7〜11のいずれかに記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【請求項13】
前記(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物が、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、4-メタクリロイルオキシブチルイソシアネート、5-メタクリロイルオキシペンチルイソシアネート、6-メタクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3-メタクリロイルオキシフェニルイソシアネートおよび1,1―ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートから選ばれた
少なくとも1種である請求項7〜12に記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【請求項14】
重合防止剤として、フェノール系重合防止剤、硫黄系重合防止剤およびりん系重合防止剤から選ばれた少なくとも1種を併用する請求項7〜13のいずれかに記載の(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物の重合防止方法。
【請求項15】
(メタ)アクリロイル基含有イソシアネート化合物由来の構成単位を有する(共)重合
体と、安定フリーラジカル化合物とを含む重合体組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の重合性単量体組成物を重合させてなる重合体組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−137948(P2008−137948A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325832(P2006−325832)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】