説明

重畳画像生成装置及びそれを備える重畳画像表示装置

【課題】画像処理に掛かる負荷を分散させつつ画像の重ね合わせ処理を行うことができる重畳画像生成装置を提供する。
【解決手段】重畳画像生成装置5は、画像生成部30,40と、受信部11と、重ね合わせ回路10と、を備える。画像生成部30,40は、互いに異なるオペレーティングシステムで動作する。受信部11は、画像生成部30,40で生成された画像データ及び加工画像データを映像データとして受信する。重ね合わせ回路10は、画像生成部30,40とは別のハードウェアから構成されており、受信部11が受信した映像データを、予め設定された優先順位に基づいて重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、2以上の画像生成部を備え、これらの画像生成部で生成した画像を重畳して表示部に出力する重畳画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば舶用機器が生成する2以上の映像データを受信し、この複数の映像データに基づいて得られる画像を重畳して1つの画像として表示する処理が行われている。特許文献1は、この種の機能を備えた航行位置表示装置を開示する。
【0003】
特許文献1が開示する航行位置表示装置は、海図と自船の航行位置とを重畳して表示することができる。具体的には、航行位置表示装置は、ロラン受信機やGPS受信機等の航行装置を備えており、自船の位置を取得することができる。この自船の位置は蓄積用記憶回路によって順次記憶されており、その記憶内容に基づいて自船の軌跡(航跡)が作成される。
【0004】
また、この航行位置表示装置には電子海図が記憶されており、取得した自船の位置に基づいて自船の周囲の海図を読み出して画像表示装置に表示することができる。また、この画像表示装置においては、読み出した海図と、前述した自船の軌跡と、を重ね合わせて表示することができるようになっている。
【0005】
このように複数の画像を重ね合わせる処理として従来から行われている方法について、図5を参照して説明する。図5は、従来技術における、2つの画像を重ね合わせて1つの画像を表示する構成を生成する構成を示すブロック図である。
【0006】
図5に示す処理部90には図略の各種舶用機器が接続されており、処理部90は、これらの舶用機器から航海情報(自船の軌跡等)を取得している。また、処理部90は画像生成部91を備えており、この画像生成部91は、入力された航海情報に基づいて画像データを生成している。この画像データは、画像合成部94に出力される。
【0007】
また、図5に示す処理部92は、電子海図が記憶された図略の記憶部を備えるとともに、他の機器から自船の位置情報を取得可能に構成されている。また、処理部92は画像生成部93を備えており、この画像生成部93は、入力された位置情報に基づいて電子海図を参照することにより、自船の周囲の海図を示す画像データを生成している。この画像データは、処理部92が備える画像合成部94に出力される。
【0008】
上述のように、画像合成部94には、自船の周囲の海図を示す画像データと、自船の軌跡等の航海情報を示す画像データと、が入力されている。画像合成部94は入力されるデータに対して画像重ね合わせ処理を行い、新たに生成した画像データを表示部95に出力している。この構成により、海図の上に自船の軌跡等を重ね合わせて表示することができる。
【0009】
なお、処理部90のオペレーティングシステムは、組み込みオペレーティングシステムやリアルタイムオペレーティングシステム等であり、処理部92のオペレーティングシステムは、汎用オペレーティングシステム等である。一般的に、組み込みオペレーティングシステムやリアルタイムオペレーティングシステムは大規模な画像処理にはあまり適さないため、画像合成部94は、処理部92に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−142218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記特許文献1の構成は、処理部92が画像の生成だけでなく画像の重ね合わせ処理も行っているため、処理部92に計算負荷が集中してしまう。従って、素早く画像を重ね合わせて表示するためには、処理部92に相応の性能が要求されるため、装置の高コスト化に繋がってしまう。
【0012】
また、重ね合わせ機能を有していない装置に対して上記特許文献1の構成を導入する場合、新しく作成したソフトウェア(画像合成部94)を処理部92に追加する必要がある。また、画像の重ね合わせを行う構成においては、特許文献1のように処理部同士のオペレーティングシステムが互いに異なることも多いため、新しいソフトウェアの作成に手間が掛かることもあった。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、画像処理に掛かる負荷を分散させつつ画像の重ね合わせ処理を行うことができる重畳画像生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の重畳画像生成装置が提供される。即ち、この重畳画像生成装置は、複数の画像生成部と、受信部と、重ね合わせ部と、を備える。前記画像生成部は、互いに異なるオペレーティングシステムで動作する。前記受信部は、前記画像生成部でそれぞれ生成された画像データを映像データとして受信する。前記重ね合わせ部は、前記画像生成部とは別のハードウェアから構成されており、前記受信部が受信した複数の映像データを、予め設定された優先順位に基づいて重ね合わせる。
【0016】
これにより、異なるオペレーティングシステムにおいて作成された2以上の画像を重ね合わせて1つの画像を生成することができる。また、従来は画像の生成を行うハードウェアと画像の重ね合わせを行うハードウェアが同一であり、この場合、当該処理を行うハードウェアに負荷が集中してしまう。この点、上記の構成のように、画像生成部とは別のハードウェアで構成された重ね合わせ部が重ね合わせ処理を行うことにより、負荷を分散させて画像処理の高速化を実現できる。また、従来の構成では、既存の設備に対して新規に重ね合わせ機能を追加するときにソフトウェアを新しく作成する必要があったが、本発明の重ね合わせ部を用いることにより、その手間を無くして容易に重ね合わせ機能を追加することができる。
【0017】
前記の重畳画像生成装置において、前記重ね合わせ部は、ある映像データの透明部分又は半透明部分の位置において、当該映像データよりも優先順位の低い映像データの対応部分が表示部に出力されるように、前記受信部が受信した複数の映像データを重ね合わせることが好ましい。
【0018】
これにより、ある画像データの(半)透明部分から、他の画像データを参照することができるので、2つの画像の情報を複合的に参照でき、情報量の豊富な画面表示を提供できる。
【0019】
前記の重畳画像生成装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この重畳画像生成装置は、前記画像生成部が出力した画像データに基づいて、少なくとも画面の1フレーム分を記憶するフレームバッファ部を備える。前記フレームバッファ部が記憶したデータは、前記画像生成部が出力した画像データと同一形式のデータに戻された後に、重ね合わせ処理が行われる。
【0020】
これにより、画面の1フレーム分をバッファリングできるため、他の映像データと重ね合わせるときに、映像データ同士を同期させ易くすることができる。
【0021】
前記の重畳画像生成装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この重畳画像生成装置は、色数低減部を備える。前記色数低減部は、前記画像生成部が生成した画像データに含まれる色の数を低減して加工画像データを生成する。また、前記受信部は、前記色数低減部で生成された加工画像データを映像データとして受信する。
【0022】
これにより、色数を減らして画像データよりもデータ量の小さい加工画像データを生成することができるので、伝送を素早く行うことができる。
【0023】
前記の重畳画像生成装置においては、複数の前記画像生成部には、リアルタイムオペレーティングシステムで動作するものが含まれていることが好ましい。
【0024】
即ち、リアルタイムオペレーティングシステムは即時性が要求されるアプリケーションに用いられることが多いため、画像処理の高速化を実現するという本発明の効果を特に有効に発揮させることができる。
【0025】
前記の重畳画像生成装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記画像生成部のうち少なくとも1つは、地図情報を表す第1画像データを生成する。他の前記画像生成部のうち少なくとも1つは、地図上における所定の情報を示す第2画像データを生成する。そして、前記第2画像データに基づく映像データは、前記第1画像データに基づく映像データよりも優先順位が高く設定されている。なお、本明細書において、「地図情報」には海図情報が含まれる。
【0026】
これにより、所定の情報を地図上の位置と対応付けて表示部に表示することができる。従って、地図及び当該地図上の所定の情報を複合的に参照でき、情報量の豊富な画面表示を提供できる。
【0027】
前記の重畳画像生成装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1画像データを生成する前記画像生成部は、電子海図生成装置に備えられる。前記第2画像データを生成する前記画像生成部は、船舶用レーダ装置に備えられる。
【0028】
これにより、船舶用レーダ装置が検出した物標等を電子海図上に表示することができる。従って、電子海図映像及びレーダ映像からなる情報を複合的に参照でき、情報量の豊富な画面表示を提供できる。
【0029】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の重畳画像表示装置が提供される。即ち、この重畳画像表示装置は、前記の重畳画像生成装置と、前記重畳画像生成装置が生成した画像を表示する表示部と、を備える。前記表示部は、前記重畳画像生成装置が生成した画像を表示する。
【0030】
これにより、異なるオペレーティングシステムにおいて作成された2以上の画像を重ね合わせて表示部に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る重畳画像表示装置の構成を示すブロック図。
【図2】2つの画像を重ね合わせて1つの画像を生成する様子を示す概念図。
【図3】データ処理部の詳細な構造を示すブロック図。
【図4】重ね合わせ回路が行う処理を示すフローチャート。
【図5】従来技術における、2つの画像を重ね合わせて1つの画像を表示する構成を生成する構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、図1を参照して、重畳画像表示装置1の概要について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る重畳画像表示装置1の構成を示すブロック図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の重畳画像表示装置1は、重畳画像生成装置5と、表示部50と、を備えている。重畳画像生成装置5は、レーダ装置(船舶用レーダ装置)2内に配置された画像生成部30と、電子海図生成装置3内に配置された画像生成部40と、重ね合わせ回路(重ね合わせ部)10と、を有している。画像生成部30は、レーダ映像等の航海情報を表示する画像データを生成している。画像生成部40は、自船周囲の電子海図を表示する画像データを生成している。そして、重ね合わせ回路10は、画像生成部30及び画像生成部40が生成した画像を重ね合わせて表示部50に表示させることができる。
【0034】
次に、図1及び図2を参照して、レーダ装置2の構成について説明する。図2は、2つの画像を重ね合わせて1つの画像を生成する様子を示す概念図である。
【0035】
レーダ装置2は、図略のアンテナ及び演算部を備えている。アンテナは、回転しながらマイクロ波の送信を行うとともに物標からの反射波を受信することができる。そして、演算部は、アンテナが受信した反射波に適宜の演算を行うことで物標の位置を検出することができる。
【0036】
また、レーダ装置2は処理部100を備えており、演算部が求めた物標の位置情報(レーダ映像)は、この処理部100が備える画像生成部30に出力される。なお、このレーダ映像は、図2におけるレーダ映像部82のように表示される。
【0037】
なお、この処理部100のオペレーティングシステムとしては、ITRON(登録商標)等のリアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)やその他のオペレーティングシステム(例えば、組み込みオペレーティングシステム)を用いることができる。
【0038】
また、レーダ装置2には、AIS(船舶自動識別装置)、船速計、及びGPS受信機等が接続されており、それぞれ、他船の位置情報(AIS情報)、対地船速、自船の位置情報をレーダ装置2に出力可能に構成されている。そして、これらのデータは画像生成部30に出力される。
【0039】
なお、本実施形態では、対地船速及び自船の位置情報は、16.5kt、北緯35.1・・°及び東経139.4・・°のようにテキスト形式で表示するため、以下の説明においてこれらの情報を「文字情報」と称することがある。また、AIS情報は図2におけるAIS情報部83のように表示され、文字情報は図2における文字情報部81のように表示される。
【0040】
上記のように、画像生成部30には、レーダ映像、AIS情報、及び文字情報が入力されており、これらの3つのデータに基づいて画像データを生成している。この画像データの生成は、画像生成部30が備える、表示順序設定部31と、ルックアップテーブル32と、によって行われる。
【0041】
表示順序設定部31は、入力されたデータに基づいて画像を生成するための設定を記憶する。具体的には、入力された3つのデータ(レーダ映像、AIS情報、及び文字情報)に基づく画像が互いに重なったときに、どの画像を手前に表示するかが予め設定されており、表示順序設定部31はその設定を記憶している。
【0042】
本実施形態における設定は、最も手前に表示される画像から順に、文字情報、AIS情報、レーダ映像となっている。図2に示す画像では、画面の中央近傍においてレーダ映像部82とAIS情報部83とが重なり合っているが、上記の設定のとおりAIS情報部83がレーダ映像部82よりも手前に表示されている。この表示順序設定部31により、入力された3つのデータに基づくそれぞれの画像がどのように合成されるかが決定される。
【0043】
ルックアップテーブル32は、上記の合成により得られた画像について、伝送及び重ね合わせ回路10での重ね合わせ処理に適した形式にデータ変換を行うためのものである。このデータ変換としては、色アドレスが設定されたデータに対して、実際に色情報を設定するように変換する処理や、色情報とその色を表示する位置(アドレス)とが画素毎に設定された形式のデータに対して、位置情報を省略して所定の順序で色情報を並べる形式のデータに変換する処理等がある。以上のようにして、画像生成部30は画像データを生成し、重ね合わせ回路10に送信している。
【0044】
次に、電子海図生成装置3について説明する。電子海図生成装置3は、電子海図が記憶された図略の記憶部を備えるとともに、GPS受信機等の他の機器から自船の位置情報を取得している。また、電子海図生成装置3は、画像生成部40等を動作させるための処理部110を備えており、この画像生成部40は、記憶部に記憶された電子海図を自船の位置情報に基づいて参照することにより、自船周囲の海図の画像を生成している。
【0045】
なお、この処理部110のオペレーティングシステムとしては、Windows(登録商標)等の汎用オペレーティングシステムやその他のオペレーティングシステムを用いることができる。
【0046】
画像生成部40が生成した海図の画像は、図2における電子海図部80のようになっている。なお、図2の電子海図部80において、陸を示す部分を斜線で表し、海を示す部分をドットパターンで表している。また、図2の電子海図部80においては省略されているが、当該海図の画像には地名や水深等の表示も含まれている。
【0047】
そして、画像生成部40が生成した画像データは、データ処理部20を経由して、重ね合わせ回路10に送信される。
【0048】
次に、データ処理部20が行う処理について、図1及び図3までを参照して説明する。図3は、データ処理部20の詳細な構造を示すブロック図である。
【0049】
なお、重ね合わせ回路10及びデータ処理部20は、処理部100及び処理部110とは別のハードウェアで構成されている。また、この重ね合わせ回路10とデータ処理部20とは、1つのハードウェアから構成されていても良いし、別のハードウェアから構成されていても良い。
【0050】
図3に示すように、データ処理部20は、画像生成部40が生成した画像データを加工して、加工画像データとして重ね合わせ回路10に送信している。このデータ処理部20は、図3に示すように、LVDSインタフェース21と、カラーパレット(色数低減部)22と、ラインバッファ23と、SDRAMインタフェース24と、SDRAM(フレームバッファ部)25と、ルックアップテーブル26と、を備える。
【0051】
LVDSインタフェース21は、LVDS(Low voltage differential signaling)の規格でデータ処理部20と画像生成部40とがデータをやり取りするためのインタフェースである。なお、LVDSに代えて、DVI(Digital Visual Interface)やアナログRGB等の規格を用いることもできる。
【0052】
カラーパレット22は、画像生成部40から入力される画像データのそれぞれの画素に対して、色情報を設定するためのものである。また、本実施形態のカラーパレット22は、色情報を設定するときに色数を減らしているため、画像データのデータ量を軽くすることができる。
【0053】
ラインバッファ23は、表示部50の走査線1本分のデータを一時的に記憶している。これにより、画像生成部40から画像データが送られてくるタイミングと後述のSDRAM25への書き込みタイミングとの整合をとることができる。
【0054】
SDRAMインタフェース24は、ラインバッファ23及び重ね合わせ回路10がSDRAM25とデータをやり取りするためのインタフェースである。また、SDRAM25は、表示部50の1フレーム分のデータを一時的に記憶している(イメージデータに展開して記憶している)。これにより、重ね合わせ回路10へ画像データを送信するタイミングが、SDRAM25に画像データが送られてくるタイミングにあまり影響されなくなり、的確なタイミングで重ね合わせ回路10に画像データを送信することができる。
【0055】
なお、データ処理部20に入力される画像データは位置(アドレス)を省略して所定の順序で色情報が並べられた形式のデータであるが、SDRAM25に記憶される際には、色情報とその色を表示する位置とが画素毎に設定された形式のデータとなる。そして、この種のデータは、ルックアップテーブル26を介することにより、所定の順序で色情報が並べられた形式に戻される。
【0056】
そして、受信部11はこの加工画像データを映像データとして受信する。なお、以下の説明では、画像データ及び加工画像データであって、受信部11によって受信された後のデータをまとめて「映像データ」と称する場合がある。
【0057】
次に、重ね合わせ回路10による重ね合わせ処理について、図4を参照して説明する。図4は、重ね合わせ回路10が行う処理を示すフローチャートである。受信部11は、上述のように、画像生成部30から受信した画像データと、画像生成部40からデータ処理部20を介して受信した加工画像データと、を映像データとして受信している(S101)。
【0058】
そして、重ね合わせ回路10において重ね合わせ処理を行うにあたっては、受信する映像データのそれぞれについて優先順位が予め設定されている。本実施形態では、画像生成部30による映像データの方が、画像生成部40による映像データよりも優先順位が高く設定されている。
【0059】
重ね合わせ回路10は、レーダ装置2の画像生成部30が生成した画像(図2の上側に表示した画像)の各画素について、透明であるか否かの判断を行っている(S102)。そして、透明である場合は、電子海図生成装置3の画像生成部40が生成した画像(図2の下側に表示した画像)を表示部50に出力している(S103)。即ち、レーダ映像の透明部分の画素においては、それよりも優先順位の低い電子海図映像の対応部分の画素が表示部50に出力されるように、レーダ映像及び電子海図映像が重ね合わせられる。
【0060】
一方、レーダ装置2の画像生成部30が生成した画像が透明でない場合は、この画像生成部30が生成した画像を表示部50に出力している(S104)。そして、この出力処理を全ての画素に対して行うことにより(S105)、重ね合わせ処理が完了する。
【0061】
このように重ね合わせ処理をすることにより、図2に示すように、電子海図上にレーダ映像等を重畳して表示することができる。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態の重畳画像生成装置5は、画像生成部30,40と、受信部11と、重ね合わせ回路10と、を備える。画像生成部30,40は、互いに異なるオペレーティングシステムで動作する。受信部11は、画像生成部30,40で生成された画像データ及び加工画像データを映像データとして受信する。重ね合わせ回路10は、画像生成部30,40とは別のハードウェアから構成されており、受信部11が受信した映像データを、予め設定された優先順位に基づいて重ね合わせる。
【0063】
これにより、異なるオペレーティングシステムにおいて作成された2つの画像を重ね合わせて、1つの画像を生成することができる。また、本実施形態では、画像生成部30,40とは別のハードウェアで構成された重ね合わせ回路10が重ね合わせ処理を行うことにより、負荷を分散させて画像処理の高速化を実現している。また、従来の構成では、既存の設備に対して新規に重ね合わせ機能を追加するときにソフトウェアを新しく作成する必要があったが、重ね合わせ回路10を用いることにより、その手間を無くして容易に重ね合わせ機能を追加することができる。
【0064】
また、本実施形態の重畳画像生成装置5において、重ね合わせ回路10は、ある映像データの透明部分の位置において当該映像データよりも優先順位の低い映像データの対応部分が表示部50に出力されるように、受信部11が受信した複数の映像データを重ね合わせる。
【0065】
これにより、これにより、レーダ映像の透明部分から、電子海図を参照することができるので、2つの画像の情報を複合的に参照でき、情報量の豊富な画面表示を提供できる。
【0066】
また、本実施形態の重畳画像生成装置5は、画像生成部40が出力した画像データに基づいて、少なくとも画面の1フレーム分を記憶するSDRAM25を備える。SDRAM25が記憶したデータは、画像生成部40が出力した画像データと同一形式のデータに戻された後に、重ね合わせ処理が行われる。
【0067】
これにより、画面の1フレーム分をバッファリングできるため、画像生成部30及び画像生成部40から受信した映像データ同士を重ね合わせるときに、当該映像データ同士を同期させ易くすることができる。
【0068】
また、本実施形態の重畳画像生成装置5は、画像生成部40が生成した画像データに含まれる色の数を低減して加工画像データを生成するカラーパレット22を備える。また、受信部11は、この加工画像データを映像データとして受信する。
【0069】
これにより、色数を減らしてデータ量を小さくすることができるので、伝送を素早く行うことができる。
【0070】
また、本実施形態の重畳画像生成装置5においては、画像生成部30は、リアルタイムオペレーティングシステムで動作している。
【0071】
即ち、リアルタイムオペレーティングシステムは即時性が要求されるアプリケーションに用いられることが多いため、画像処理の高速化を実現するという本発明の効果を特に有効に発揮させることができる。
【0072】
また、本実施形態の重畳画像生成装置5においては、電子海図生成装置3が備える画像生成部40が、海図情報を表す画像データ(第1画像データ)を生成する。また、レーダ装置2が備える画像生成部30が、海図上における所定の情報を示す画像データ(第2画像データ)を生成する。そして、第2画像データに基づく映像データは、第1画像データに基づく映像データよりも優先順位が高く設定されている。
【0073】
これにより、レーダ装置2が検出した物標等を電子海図上に表示することができる。また、第2画像データ(レーダ映像、AIS情報、文字情報)の透明部分から電子海図を参照することができるので、電子海図映像及びレーダ映像からなる複合的な情報を参照でき、情報量の豊富な画面表示を提供できる。
【0074】
また、本実施形態の重畳画像表示装置1においては、重畳画像生成装置5と、表示部50と、を備える。表示部50は、重畳画像生成装置5が生成した画像を表示する。
【0075】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0076】
上記実施形態における映像データは、完全に不透明な画素及び完全に透明な画素のみによって構成されており、これによって重ね合わせ処理を簡素化することができている。しかし、映像データに透明(不透明)の程度の情報を持たせるようにして、いわゆる半透明処理を行うことも可能である。この場合、優先度の高い映像データの画素の色と、それより優先度の低い映像データの画素の色と、を透明度に応じて混合することで、半透明の重ね合わせ処理を実現することができる。ただし、上記実施形態の構成のように半透明処理を行わない場合でも、優先順位の高い画像において例えば市松模様のように透明画素と不透明画素とを交互に並べることにより、擬似的な半透明を実現することができる。
【0077】
上記実施形態では、2つの画像を重ね合わせる構成を示したが、重ね合わせる画像の数は2つに限られず、3つ、4つ等、より多くの画像を重ね合わせる際にも本発明の構成を用いることができる。なお、例えば画像生成部が4つある場合、全てのオペレーティングシステムが異なっている必要はなく、例えば4つのうち3つが同一のオペレーティングシステムであり、残りの1つのオペレーティングシステムのみが異なるような場合でも、本発明の効果は有効である。
【0078】
重ね合わせ回路10に入力される映像信号同士の同期を他の装置等で行うことができる場合は、データ処理部20を省略することができる。
【0079】
本発明の構成は、画像を重ね合わせる構成である限り、舶用機器以外にも適用することができる。例えばカーナビゲーション装置において、地図と写真とを重ね合わせる装置として本発明の構成を用いることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 重畳画像表示装置
2 レーダ装置(船舶用レーダ装置)
3 電子海図生成装置
5 重畳画像生成装置
10 重ね合わせ回路(重ね合わせ部)
11 受信部
20 データ処理部
22 カラーパレット(色数低減部)
25 SDRAM(フレームバッファ部)
30 画像生成部
40 画像生成部
50 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なるオペレーティングシステムで動作する複数の画像生成部と、
前記画像生成部でそれぞれ生成された画像データを映像データとして受信する受信部と、
前記画像生成部とは別のハードウェアから構成されており、前記受信部が受信した複数の映像データを、予め設定された優先順位に基づいて重ね合わせる重ね合わせ部と、
を備えることを特徴とする重畳画像生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の重畳画像生成装置であって、
前記重ね合わせ部は、ある映像データの透明部分又は半透明部分の位置において、当該映像データよりも優先順位の低い映像データの対応部分が表示部に出力されるように、前記受信部が受信した複数の映像データを重ね合わせることを特徴とする重畳画像生成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の重畳画像生成装置であって、
前記画像生成部が出力した画像データに基づいて、少なくとも画面の1フレーム分を記憶するフレームバッファ部を備え、
前記フレームバッファ部が記憶したデータは、前記画像生成部が出力した画像データと同一形式のデータに戻された後に、重ね合わせ処理が行われることを特徴とする重畳画像生成装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の重畳画像生成装置であって、
前記画像生成部が生成した画像データに含まれる色の数を低減して加工画像データを生成する色数低減部を備え、
前記受信部は、前記色数低減部で生成された加工画像データを映像データとして受信することを特徴とする重畳画像生成装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の重畳画像生成装置であって、
複数の前記画像生成部には、リアルタイムオペレーティングシステムで動作するものが含まれていることを特徴とする重畳画像生成装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の重畳画像生成装置であって、
前記画像生成部のうち少なくとも1つは、地図情報を表す第1画像データを生成し、
他の前記画像生成部のうち少なくとも1つは、地図上における所定の情報を示す第2画像データを生成し、
前記第2画像データに基づく映像データは、前記第1画像データに基づく映像データよりも優先順位が高く設定されていることを特徴とする重畳画像生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の重畳画像生成装置であって、
前記第1画像データを生成する前記画像生成部は、電子海図生成装置に備えられ、
前記第2画像データを生成する前記画像生成部は、船舶用レーダ装置に備えられることを特徴とする重畳画像生成装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の重畳画像生成装置と、
前記重畳画像生成装置が生成した画像を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする重畳画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−44400(P2012−44400A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183096(P2010−183096)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】