説明

重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法

【課題】 重質油を含む汚染土壌又は汚染水に対し、簡便な方法でかつ効果的に重質油を分解することができる汚染土壌又は汚染水の浄化方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 重質油で汚染された土壌又は水に白色腐朽菌を存在させて重質油を分解することを特徴とする、重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を用いて重質油を分解することにより、重質油で汚染された土壌又は水を浄化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油類に汚染された土壌や含油排水を浄化する方法としては、空気などのガスを送って軽質部分を揮散させたり、水中に存在する油分を活性炭で吸着分離するなどの物理的処理による浄化方法(例えば、非特許文献1参照)や、オゾンを発生させ難分解性物質を分解することによる浄化方法(例えば、非特許文献2参照)や、過硫酸塩を用いた化学的処理による浄化方法(過硫酸塩を用いて、難分解性物質を含有する汚染水を分解することによる浄化方法(例えば、特許文献1参照)や固体に吸着されている難分解性物質を分解する浄化方法(例えば、特許文献2参照))や、炭化水素資化性菌を用いた生物的処理による浄化方法(例えば、非特許文献3参照)などが知られている。
【0003】
上記浄化方法において、分解される石油類の種類としては、ガソリンや、灯油、軽油、あるいはA重油などの沸点が低く、分子量が比較的小さい軽質油がほとんどである。
【0004】
ところで、油で汚染された土壌や水を微生物を用いて浄化することは、製油所などの工場廃水に対し活性汚泥装置を用いて長年実施されている。ここで使用されている微生物は炭化水素資化性菌である。しかし、炭化水素資化性菌では重質油の分解が困難である。そのため、排水に重質油が混入している場合には、従来の活性汚泥装置を用いた方法では浄化が不充分であり、予め排水から重質油を分離して油汚染水を浄化することが望ましい。
【0005】
また、重質油で汚染された土壌を浄化する方法としては焼却処理が主な方法であり、それ以外の方法では浄化が困難であった。
【0006】
そこで、石油類で汚染された土壌又は水を浄化する方法において、重質油が混入されている汚染土壌や汚染水に対し、重質油を分離することなく、簡便な方法で重質油を含む石油類を効果的に分解することができ、汚染土壌又は汚染水を浄化することができる方法の提供が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開2004−49984号公報
【特許文献2】特開2004−49985号公報
【非特許文献1】API(American Petroleum Institute). (1994), Odor Threshold Studies Performed With Gasoline and Gasoline Combined With MTBE, ETBE, and TAME. API Pub.4592. Washington.
【非特許文献2】Claire E. Corless et al., Ozonation of Pylene in Aqueous Solution, Wat. Res.24, (1990) p 1119-1123
【非特許文献3】Environmental Protection Agency. EPA/600/R-00/006, January 2000. Natural Attenuation of MTBE in the Subsurface under Methanogenic Conditions
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記観点からなされたものであり、炭化水素資化性菌では分解が困難な重質油や重質画分を含む汚染土壌又は汚染水に対し簡便な方法でかつ効果的に重質油を分解することができる、該汚染土壌又は汚染水の浄化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、白色腐朽菌に重質油を分解する能力があることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)重質油で汚染された土壌又は水に白色腐朽菌を存在させて重質油を分解することを特徴とする、重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
(2)前記重質油には、沸点が429℃以上の石油系炭化水素からなる油分が含まれていることを特徴とする、(1)に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
(3)前記白色腐朽菌が、ファネロキーテ(Phanerochaete)属、アグロサイベ(Agurocybe)属、フレビア(Phlebia)属、フナリア(Funalia)属、シワタケ(Merulius)属、ヒラタケ(Pleurotus)属、シワウロコタケ(Phlebia)属に属する菌である、(1)又は(2)に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
(4)前記ファネロキーテ属に属する菌がファネロキーテ・クリソスポリウム(Phanerochaet chrysosporium) 、アグロサイベ属に属する菌がアグロサイベ・セミオルビクラリス(Agurocybe semiorbicularis) 、フレビア属に属する菌がフレビア・トレメローズ(Phlebia tremellosus) 、シワタケ属に属する菌がメルリウス・ツレメロサス(Merulius tremellosus) 、ヒラタケ属に属する菌がプレウロタス・オストレアタス(Pleurotus ostreatus) 、プレウロタス・プルモナリウス(Pleurotus pulmonarius) 、シワウロコタケ属に属する菌がフレビア・ブレビスポラ(Phlebia brevispora) である、(3)に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
(5)前記重質油で汚染された土壌又は水に、木質炭水化物を添加することを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
(6)前記木質炭水化物が、木材チップ、オガクズ、ピートモス、セルロース、バガス、CMC(カルボキシメチルセルロース)、フスマ、コムギ、オオムギ、ダイズ、ダイズカス、オカラ、及びコメヌカの中から選ばれる1種又は2種以上からなる、(5)に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
(7)前記重質油で汚染された土壌又は水に前記木質炭水化物を添加するのが、該土壌又は水に前記白色腐朽菌を加える時又は白色腐朽菌を加えた後であることを特徴とする、(5)又は(6)に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、重質油を簡便にかつ効果的に分解することができ、重質油で汚染された土壌又は水を無害化し浄化することができる有効な浄化方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法(以下、単に浄化方法ともいう)は、重質油で汚染された土壌又は水に白色腐朽菌を存在させ、白色腐朽菌により重質油を分解させることに特徴がある。
【0014】
本発明において重質油とは、沸点が429℃以上の石油系炭化水素からなる油分が含有されているものをいい、通常は、油分全体に対し、沸点が429℃以上の石油系炭化水素が80重量%以上含まれている。中でも、多環芳香族炭化水素であるレジン又はアスファルテンは、油分全体に対し、20重量%以上、好ましくは25重量%以上含まれている。
【0015】
ここで、土壌又は水中の油分の測定は、例えば次のように行う。
土壌中の油分の測定は、土壌を120℃で24時間乾燥させ、この土壌約200gを秤量し、N−ヘキサン約500mlを用いてソックスレー抽出器で抽出後、エバポレータ装
置で濃縮・乾固する。そして、120℃で24時間乾燥した後、土壌中の油分の重量を測定する。また、水中の油分の測定は、JIS K0102の24.ヘキサン抽出物質に準拠した測定法で測定する。
【0016】
また、油分を構成する各組成の含有量は、ヤトロン社製 薄層クロマト水素炎検出装置で、シリカゲル薄層棒に試料をスポットし、3種類の溶媒で順次展開することにより測定することができ、これにより飽和炭化水素分、芳香族炭化水素分、レジン分、又はアスファルテン分等の含有量を測定する。油分の組成は、ヒューレットパッカード社製、機種HP6890型HP/AC HP750 Methodsに基づき分析する。
【0017】
本発明において、土壌中の重質油が分解されるとは、沸点が429℃以上の石油系炭化水素が30%以下まで減る場合をいう。
【0018】
本発明の浄化方法で用いられる白色腐朽菌としては、ファネロキーテ(Phanerochaete)属、アグロサイベ(Agurocybe)属、フレビア(Phlebia)属、フナリア(Funalia)属、シワタケ(Merulius)属、ヒラタケ(Pleurotus)属、シワウロコタケ(Phlebia)属に属する菌を挙げることができる。より詳しくは、上記ファネロキーテ属に属する菌がファネロキーテ・クリソスポリウム(Phanerochaet chrysosporium) 、アグロサイベ属に属する菌がアグロサイベ・セミオルビクラリス(Agurocybe semiorbicularis) 、フレビア属に属する菌がフレビア・トレメローズ(Phlebia tremellosus)、シワタケ属に属する菌がメルリウス・ツレメロサス(Merulius tremellosus) 、ヒラタケ属に属する菌がプレウロタス・オストレアタス(Pleurotus ostreatus) 、プレウロタス・プルモナリウス(Pleurotus pulmonarius) 、シワウロコタケ属に属する菌がフレビア・ブレビスポラ(Phlebia brevispora) であるとよい。
【0019】
本発明では、上記白色腐朽菌を用いて、又は上記白色腐朽菌に替えて若しくは上記白色腐朽菌と共に上記白色腐朽菌の由来物を用いて、重質油で汚染された土壌又は水に存在させることにより重質油の分解を行う。
【0020】
白色腐朽菌は、ポテトデキストロースなどの液体培地あるいはフスマやフスマとオガクズにバインダーとしてCMCを添加して固めた固体培地などで培養することにより得ることができる。尚、この際の培養条件としては、培養温度が15〜35℃、pHが4.5〜9.5、固体培地の水分が25〜75%であるとよい。
【0021】
上記のようにして培養した白色腐朽菌を培地ごと汚染された土壌や水に加えてもよいし、また、例えば、該白色腐朽菌を培養して得られた培養液から濾過、遠心分離等の通常の固液分離手段により回収することにより得られた白色腐朽菌を用いてもよい。
【0022】
上記白色腐朽菌の由来物とは、上記白色腐朽菌に由来するものを含むものであれば特に限定されるものではない。上記白色腐朽菌を含む液体又は固体培地の他、白色腐朽菌に処理を施した処理物を用いることができる。例えば、白色腐朽菌を培養して得られる培養液の処理物としては、培養液の濃縮物、乾燥物、界面活性剤及び/又は有機溶剤添加物、溶菌酵素処理物等が挙げられる。白色腐朽菌の処理物としては、白色腐朽菌の乾燥物、界面活性剤及び/又は有機溶剤添加物、溶菌酵素処理物、固定化白色腐朽菌、又は白色腐朽菌からの抽出酵素標品等が挙げられる。
【0023】
本発明の浄化方法は、汚染された土壌や水(以下、土壌等ともいう)に対し、好気的条件下で上記したような白色腐朽菌を存在させることで行う。ここで、存在させるとは、白色腐朽菌と土壌等とを混合或いは混練等により、両者を一つの反応系に共存させることをいう。白色腐朽菌と土壌等との共存は、具体的には、例えば、分解対象物である土壌等に
、白色腐朽菌を該白色腐朽菌の培養条件下に維持しておいておくというのがよい。この時の培養条件、すなわち白色腐朽菌により重質油が分解される際の条件としては、温度が10〜40℃、好ましくは15〜35℃、pHが4〜10、好ましくは4.5〜9.5、土壌の水分が10〜40%、好ましくは12〜25%であるとよい。また、嫌気条件にならないように自然通気あるいは強制通気下で分解がおこなわれるようにする。
【0024】
このようにして、白色腐朽菌、または白色腐朽菌を含む培地、白色腐朽菌及び/又は培地の処理物、酵素等の白色腐朽菌由来物を、そのまま或いは水溶液に懸濁又は溶解して、重質油が含まれている汚染された土壌及び/又は水に存在させると、重質油は分解され、汚染された土壌及び/又は水は浄化される。
【0025】
本発明では、上記白色腐朽菌が酵素反応によって発生するラジカルを利用して、重質油又は重質油画分の分解を行わせている。しかし、ラジカルを発生するこのような微生物は通常炭化水素を炭素源としては旺盛に生育できないため、本発明では、これらの微生物を用いる際、炭化水素以外の炭素源、具体的には木質炭水化物を栄養源として添加するのが好ましい。
【0026】
ここで、木質炭水化物としては、木材チップ、オガクズ、ピートモス、セルロース、バガス、CMC(カルボキシメチルセルロース)、フスマ、コムギ、オオムギ、ダイズ、ダイズカス、オカラ、又はコメヌカを挙げることができる。
【0027】
また、本発明では、重質油の分解効率をさらに高めるため、上記した木質炭水化物を添加する手順について規定する。
【0028】
上記木質炭水化物は、白色腐朽菌が増殖する際に栄養源となるだけでなく、汚染土壌や汚染水中に存在する他の微生物に対しても栄養源となることがある。本発明者らは、重質油で汚染された土壌や水に上記白色腐朽菌より先に上記木質炭水化物を添加すると、汚染土壌や汚染水中に存在する糸状菌等が繁殖してしまい、白色腐朽菌の増殖が妨げられるということを確認した。ここで糸状菌とは、具体的にはペニシリウム属に属する糸状菌等であるが、この微生物は石油を分解することができず、これらの微生物が増殖してしまうと、重質油の分解が妨げられてしまう。そこで、糸状菌が繁殖する前に木質炭水化物を添加するのがよく、具体的には、重質油で汚染された土壌又は水に白色腐朽菌を加える時又は白色腐朽菌を加えた後に木質炭水化物を添加するのがよい。ここで、木質炭水化物を添加する時間的目安としては、木質炭水化物の添加量や汚染土壌又は汚染水中に存在する糸状菌の量や白色腐朽菌の添加量等により異なるが、白色腐朽菌を添加するのと同時に、あるいは白色腐朽菌を添加してからおよそ300時間以内程度が好ましい。尚、白色腐朽菌を添加する48時間以内前に木質炭水化物を添加するのであれば、本発明ではほぼ同時の添加とみなし得る。但し、白色腐朽菌を添加する48時間以上前に木質炭水化物を添加してしまうと糸状菌が先に繁殖してしまうため好ましくない。
【0029】
上記のように、汚染土壌又は汚染水に添加する白色腐朽菌と木質炭水化物の添加順序を規定することで、例えば、土着菌が混入している汚染土壌又は汚染水を予め殺菌し土着菌の増殖を抑制するなどの煩雑な方法をとらなくても、簡便な方法で白色腐朽菌の増殖を優先させることができる。その結果、白色腐朽菌の増殖が妨げられず、効率よく重質油を分解することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0031】
原油流出から3年経過した汚染土壌を浄化、修復するために、土壌を掘削し集めた。こ
の土壌を均一に攪拌・混合し、その一部をとり水分と油分を測定した。水分は110℃の恒温槽に24時間入れて測定した。その結果、水分は12%であった。油分は以下に示す方法により測定した。
(1)土壌油分の測定
【0032】
土壌中の油分は土壌を120℃で24時間乾燥させ、この土壌約200gを秤量し、N−ヘキサン約500mlを用いてソックスレー抽出器(株式会社千葉ニチカ製、500ml用ソックスレー抽出器)で抽出後、エバポレータ装置(柴田科学器械工業株式会社製、BUCHI RE III型)で濃縮・乾固した。120℃で24時間乾燥した後、油分の重量を測定し、定量した。油分は総量で2950ppmであった。具体的な手順は次のとおりである。
【0033】
1)採取した土壌300gを120℃の乾燥器で24時間乾燥させ、乾物重を求めた。
2)乾土(200g)を円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器の本体に挿入した。
3)定量瓶にN−ヘキサン500mlを入れ、本体にセットした。
4)マントルヒーターで加温し、約24時間還流抽出した。
5)円筒ろ紙を取り出し、抽出された油分を直ちにエバポレータにかけた。
6)60℃位の温浴中、アスピレータで吸引し溶媒を留去した。
7)120℃の乾燥器中で24時間乾燥した後、油分の重量を求めた。
【0034】
また、上記で得られた油分について、組成をヒューレットパッカード社製、機種HP6890型HP/AC HP750 Methodsに基づき分析し、油分を構成する各組成の含有量を、ヤトロン社製 薄層クロマト水素炎検出装置で、シリカゲル薄層棒に試料をスポットし、3種類の溶媒(ヘキサン、ヘキサン(20)+トルエン(80)(vol%)、ジクロロメタン(95)+メタノール(5)(vol%))で順次展開することにより測定した。その結果、沸点が429℃以上の石油系炭化水素からなる油分は総量で2530ppmであった。
(2)微生物の培養方法
【0035】
以下のようにして培養した微生物を用いた。
1)微生物の液体培養
市販のポテトデキストロース培地を蒸留水で希釈し、500ml容のいぼ付きマイヤーフラスコに100mlずつ分注し、121℃15分間殺菌した培地を用い、スラントから種菌を接種し、毎分100回転の速度で25℃で5日間培養した。
【0036】
2)微生物の固体培養
フスマ30重量%、ナラオガクズ65重量%、CMC5重量%を混合したのち、押し出し成型機を用いて直系10mmのペレットを作製した。このペレット80gを500ml容の蓋付きポリカーボネート製植物培養器にいれ、水分を65%にした後、121℃、20分間オートクレーブで殺菌した培地を用いた。この培地に液体培養した微生物を接種し、25℃の恒温槽で10日間培養したものを接種源として用いた。
<実施例1〜16、比較例1〜4>
【0037】
原油流出土壌600gを1容の蓋付きポリカーボネート製植物培養器にいれ、下記表1で示すように添加する微生物の種類と該微生物の接種量、添加する栄養源の種類と添加量と添加時期を変えて一定時間分解を行った。分解は25℃、湿度50%に設定した恒温、恒湿槽内に保管して行った。
【0038】
一定時間経過後、へキサンを添加して全量試料から油分を抽出した。油分の組成はヒューレットパッカード社製、機種HP6890型HP/AC HP750 Methodsに基づ
き分析し、油分を構成する各組成の含有量は、ヤトロン社製 薄層クロマト水素炎検出装置で、シリカゲル薄層棒に試料をスポットし、3種類の溶媒(ヘキサン、ヘキサン(20)+トルエン(80)(vol%)、ジクロロメタン(95)+メタノール(5)(vol%))で順次展開することにより測定した。
【0039】
また、試料を水に投入して油膜発生の有無を以下に記載の基準に従い目視により評価した。さらに、油臭についても、以下に記載の基準で評価した。
結果を表1に示す。
(3)油臭及び油膜の評価方法
【0040】
1)油膜
0 なし
1 あり
2)油臭
0 なし
1 やっと感知できるにおい(検知閾値濃度)
2 何のにおいであるかがわかる弱いにおい(認知閾値濃度)
3 らくに感知できるにおい
4 強いにおい
5 強烈なにおい
【0041】
【表1】

表1において、栄養源の添加時期が、同時とは汚染土壌に添加微生物と栄養源とを一緒
に加えた場合をいい、前とは、汚染土壌に栄養源を添加微生物より先に加えた場合をいい、後とは、汚染土壌に添加微生物を加えた後に栄養源を加えた場合をいう。
上記実験結果より、重質油が効果的に分解されることが確認できた。また、油分の種類により(沸点が異なる)油膜の発生状況は変わるが、油分が1000ppm程度以下になると、油膜も油臭もなくなる。全体の油分を1000ppm程度に減らすことができれば、重質油も充分分解されていることから、本発明により重質油を充分分解できていることが表1の結果からわかる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、重質油を簡便にかつ効果的に分解することができ、重質油で汚染された土壌や水を無害化し浄化することができる有効な方法を提供することができる。従って、本発明は、各種石油(化学)産業に関連する分野、工場等からの排水処理に関連する分野、機械油や潤滑油等で汚染された土壌や排水の処理に関連する分野などに広く適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重質油で汚染された土壌又は水に白色腐朽菌を存在させて重質油を分解することを特徴とする、重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
【請求項2】
前記重質油には、沸点が429℃以上の石油系炭化水素からなる油分が含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
【請求項3】
前記白色腐朽菌が、ファネロキーテ(Phanerochaete)属、アグロサイベ(Agurocybe)属、フレビア(Phlebia)属、フナリア(Funalia)属、シワタケ(Merulius)属、ヒラタケ(Pleurotus)属、シワウロコタケ(Phlebia)属に属する菌である、請求項1又は2に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
【請求項4】
前記ファネロキーテ属に属する菌がファネロキーテ・クリソスポリウム(Phanerochaet
chrysosporium) 、アグロサイベ属に属する菌がアグロサイベ・セミオルビクラリス(Agurocybe semiorbicularis) 、フレビア属に属する菌がフレビア・トレメローズ(Phlebia tremellosus) 、シワタケ属に属する菌がメルリウス・ツレメロサス(Merulius
tremellosus) 、ヒラタケ属に属する菌がプレウロタス・オストレアタス(Pleurotus
ostreatus) 、プレウロタス・プルモナリウス(Pleurotus pulmonarius) 、シワウロコタケ属に属する菌がフレビア・ブレビスポラ(Phlebia brevispora) である、請求項3に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
【請求項5】
前記重質油で汚染された土壌又は水に、木質炭水化物を添加することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
【請求項6】
前記木質炭水化物が、木材チップ、オガクズ、ピートモス、セルロース、バガス、CMC(カルボキシメチルセルロース)、フスマ、コムギ、オオムギ、ダイズ、ダイズカス、オカラ、及びコメヌカの中から選ばれる1種又は2種以上からなる、請求項5に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。
【請求項7】
前記重質油で汚染された土壌又は水に前記木質炭水化物を添加するのが、該土壌又は水に前記白色腐朽菌を加える時又は白色腐朽菌を加えた後であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の重質油で汚染された土壌又は水の浄化方法。

【公開番号】特開2006−314858(P2006−314858A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137003(P2005−137003)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】