説明

重送防止部材

【課題】低温条件下において、優れた摩擦抵抗を維持しつつ、鳴きの発生を防止することができ、さらに製造コスト面において有利な重送防止部材を提供する。
【解決手段】混練型ウレタンゴム100質量部に対して、シリカを20質量部以上50質量部以下、およびシリカ以外の無機充填剤を10質量部以上50質量部以下含み、JIS−A硬度が70以上90以下のゴム組成物からなる重送防止部材に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複写機、ファクシミリ、プリンターなどの給紙機構に用いられる、紙葉重送防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンターなどは、図2に示されるような給紙機構24を備えている。給紙機構24には、紙葉22を搬送するため、紙葉の搬送方向下流側に、重送防止部材21と紙送りローラ23とが対向配置されている。そして、複数枚の紙葉が重送防止部材と紙送りローラとの間に供給された場合には、重送防止部材と紙葉との間に生じる摩擦抵抗によって、重送防止部材側の紙葉22aが、紙送りローラ側の紙葉22bと一緒に搬送される、いわゆる重送が防止されている。すなわち、重送防止部材には、長期間の使用にわたって、紙葉との間に優れた摩擦抵抗が維持されることが求められる。
【0003】
一方、上記の紙葉と重送防止部材との間に生じている摩擦力の変動により、重送防止部材に振動が生じて、いわゆる「鳴き」という異常音が発生することがある。そこで、優れた摩擦抵抗を維持しつつ、「鳴き」の発生を防止することができる重送防止部材が研究されてきた。
【0004】
たとえば、特許文献1(特開平5−170348号公報)には、紙葉と接触する表層側の給紙構体を、シリコーンゴムを主成分とするゴム組成物から形成すると共に、その裏面に両面テープなどの接合材を介して接着される裏層側の給紙構体を、シリコーンゴムと耐油性ゴムのポリマーアロイからなるゴム組成物から形成した紙葉分離用ゴム部材が開示されている。しかし、該紙葉分離用ゴム部材は、2層構造を有しているため、製造コストが高いという問題がある。
【0005】
特許文献2(特開2002−275233号公報)には、エステル濃度(エステル基のモル数/ポリエステルの重量)(mol/g)が2〜8mmol/gの範囲にあり、かつ数平均分子量500〜5000のポリエステルポリオールを用いて得られた注型タイプのポリウレタンからなるゴム弾性体からなる紙葉類分離ゴム部材が開示されている。しかし、注型タイプのポリウレタンの製造には通常のゴム設備が使用できないため、該紙葉類分離ゴム部材は製造コストが高いという問題がある。
【0006】
また、「鳴き」は、特に低温条件下(0〜10℃)で発生しやすいことが知られているが、上記の技術において、低温での鳴きの発生の防止効果は検討されていない。
【0007】
したがって、低温条件下において、優れた摩擦抵抗を維持しつつ、鳴きの発生を防止することができ、さらに製造コスト面において有利な重送防止部材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−170348号公報
【特許文献2】特開2002−275233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低温条件下において、優れた摩擦抵抗を維持しつつ、鳴きの発生を防止することができ、さらに製造コスト面において有利な重送防止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の重送防止部材は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、シリカを20質量部以上50質量部以下、およびシリカ以外の無機充填剤を10質量部以上50質量部以下含み、JIS−A硬度が70以上90以下のゴム組成物からなる。
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、重送防止部材を上記の通り、混練型ウレタンゴムと、所定量のシリカおよびシリカ以外の充填剤とを含むゴム組成物から形成することで、0〜10℃の低温条件下において、優れた摩擦抵抗を維持しつつ、鳴きの発生を防止することができることを見出した。さらに、ゴム組成物のJIS−A硬度が70以上90以下である理由は、JIS−A硬度が70未満であると、摩擦係数が高くなり紙葉の不送りが発生するためであり、JIS−A硬度が90を超えると重送を防止するために必要な摩擦係数の確保が困難になるためである。さらに、本発明の重送防止部材は、混練型ウレタンゴムを原料に用いているため、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0012】
本発明の重送防止部材において好ましくは、無機充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、クレーおよびチタンホワイトよりなる群から選択された1種以上である。
【0013】
本発明の重送防止部材よれば、無機充填剤としてシリカとともに、炭酸カルシウム、タルク、クレーおよびチタンホワイトなどを用いると、カーボンブラックを配合した場合に比べて、ゴム組成物の摩耗による用紙の汚れを抑制することができると考えられる。
【0014】
本発明の重送防止部材において好ましくは、ゴム組成物の粘弾性スペクトロメータで測定した温度10℃における損失正接(tanδ)の値が0.1以上0.2以下であり、かつ、損失正接(tanδ)の最大値が測定温度−30℃以下において得られる。
【0015】
本発明の重送防止部材よれば、10℃における損失正接の値を上記の範囲とすることで、紙葉と重送防止部材との間に生じるエネルギー損失を低減することができる。このため、通紙に起因する重送防止部材の摩耗を抑制することができると考えられる。さらに、測定温度−30℃以下のときに損失正接が最大値を示すと、ゴムの結晶化を防ぎ、摩擦係数の低下を防ぐことができる。
【0016】
本発明の重送防止部材において好ましくは、ゴム組成物が、さらに可塑剤を含む。
本発明の重送防止部材よれば、ゴム組成物に可塑剤を配合することで、ゴム組成物の硬度を所望の大きさに調節することができる。
【0017】
本発明の重送防止部材において好ましくは、ゴム組成物の20℃における反発弾性率(Rb20)と、10℃における反発弾性率(Rb10)の差(Rb20−Rb10)が、0%以上5%以下である。
【0018】
本発明の重送防止部材によれば、ゴム組成物の(Rb20−Rb10)の値を上記の範囲とすることで、ゴムの結晶化を防ぎ、必要な弾性の低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた摩擦抵抗を維持しつつ、鳴きの発生を防止することができ、さらに製造コスト面において有利な重送防止部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態における重送防止部材を用いた給紙機構の模式的断面図である。
【図2】従来の給紙機構の一例を示す模式的断面図である。
【図3】鳴き発生がある場合の鳴き発生回数を示す通紙時振動データの一例である。
【図4】鳴き発生がない場合の通紙時振動データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図1を用いて説明する。
[重送防止部材を用いた給紙機構]
図1は、本発明の重送防止部材が用いられた給紙機構の一例を示す模式的断面図である。給紙機構4は、搬送される紙葉類2を挟んで、紙送りローラ3と板状の紙葉類重送防止部材1が対向配置されている。この紙葉類重送防止部材1と紙葉類2との間の摩擦抵抗によって、紙葉類が2枚以上同時に搬送されるという不都合を防止している。
【0022】
[重送防止部材]
本発明の一実施の形態において、重送防止部材は混練型ウレタンゴム100質量部に対して、シリカを20質量部以上50質量部以下、およびシリカ以外の無機充填剤を10質量部以上50質量部以下含み、JIS−A硬度が70以上90以下であるゴム組成物(以下、重送防止部材用ゴム組成物ともいう)からなる。
【0023】
(混練型ウレタンゴム)
本発明の一実施の形態において、重送防止部材用ゴム組成物は混練型ウレタンゴムを含む。ウレタンゴムは加工、成形方法の相違から、注型ウレタンゴム、混練型ウレタンゴム、射出成形型ウレタンゴムに分類することができる。混練型ウレタンゴムは、通常のゴム設備を使用することができるため、特別な製造設備や金型を必要とする注型ウレタンゴムや射出成形型ウレタンゴムに比べて、製造コストを抑えることができる。さらに、混練型ウレタンゴムは充填剤を配合することができるため、充填剤を調節することで、所望の物性のウレタンゴムを得ることができる。
【0024】
本発明で用いる混練型ウレタンゴムとは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応することにより得ることができるものであり、構造の相違から、ポリエーテルタイプとポリエステルタイプに分類することができる。本発明においては、ポリエーテルタイプおよびポリエステルタイプのいずれも用いることができ、いずれも一般的なものを用いることができる。
【0025】
ポリエーテルタイプは、たとえば、ポリエーテルとポリイソシアネートとを反応して得ることができる。ポリエーテルとしては、ポリ(オキシプロピレン)グリコールやポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなど、二官能性ポリエーテルなどを用いることができる。ポリイソシアネートとしては、2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、3,3−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート(TODI)などを用いることができる。
【0026】
ポリエステルタイプは、たとえば、アジピン酸と多価アルコールの重縮合によって得られるアジペートと、ポリイソシアネートとの重付加反応によって得ることができる。ポリイソシアネートは、上記のポリエーテルタイプと同様のものを用いることができる。
【0027】
ポリオールとポリイソシアネートとの配合割合は、一般的なものでよく、例えば、ポリオール100質量部に対して、ポリイソシアネート5〜20質量部である。
【0028】
混練型ウレタンゴムは、たとえば、ポリオールとポリイソシアネートとを70℃〜150℃で、10〜120分間で反応させ、その後、60℃〜120℃で、6〜48時間程度熟成させて得ることができる。また、硬化は、硬化剤として有機過酸化物を用いる場合は、有機過酸化物の分解特性により異なるが、たとえば150〜180℃で3〜60分間処理することができる。
【0029】
(シリカ)
本発明の一実施の形態において、重送防止部材用ゴム組成物はシリカを含む。通常、混練型ウレタンゴムは充填剤としてカーボンブラックを用いるが、本発明ではシリカを用いることで、必要な硬度を確保し易いという効果を得ることができると考えられる。
【0030】
シリカは、従来公知のシリカを用いることができる。なかでも、平均粒子径が18μm以上40μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒子径が18μm未満であると、ゴム組成物の硬度が過大となり、平均粒子径が40μmを超えると補強効果が低下する。
【0031】
重送防止部材用ゴム組成物において、シリカの配合量は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、20質量部以上50質量部以下であり、好ましくは20質量部以上30質量部以下である。シリカの配合量が20質量部未満であると必要な硬度が確保できず、シリカの配合量が50質量部を超えると混練およびプレス成型が困難となり好ましくないからである。
【0032】
(無機充填剤)
本発明の一実施の形態において、重送防止部材用ゴム組成物は、シリカ以外の無機充填剤を含む。重送防止部材用ゴム組成物がシリカとともに無機充填剤を含むことで、カーボンブラックを配合した場合に比べて、ゴム組成物の摩耗による用紙の汚れを抑制することができる。
【0033】
無機充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、クレーおよびチタンホワイトよりなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0034】
重送防止部材用ゴム組成物において、無機充填剤の配合量は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下であり、好ましくは30質量部以上50質量部以下である。無機充填剤の配合量が10質量部未満であると必要な硬度が確保できず、無機充填剤の配合量が50質量部を超えると混練およびプレス成型が困難となり好ましくないからである。
【0035】
(可塑剤)
本発明の一実施の形態において、重送防止部材用ゴム組成物は、可塑剤を含むことが好ましい。
【0036】
可塑剤は、混練型ウレタンゴム中のイソシアネート成分に不活性であり、かつ、得られた混練型ウレタンゴムにおいてブリードを生じない相溶性の高いエステル系可塑剤であればいずれも使用できる。たとえば、ジオクチルアジペート(DOA)、ジオクチルフタレート(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、ジブチルグリコールアジペート(BXA)、ジオクチルセバケート(DOS)、フタル酸ジヘプチル(DHP)などを用いることができる。
【0037】
重送防止部材用ゴム組成物において、可塑剤の配合量は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、20質量部以上50質量部以下が好ましい。可塑剤の配合量が20質量部未満であると、ゴム組成物の硬度を調節する効果が得られず、可塑剤の配合量が50質量部を超えるとゴム組成物においてブリードが生じるため好ましくないからである。
【0038】
(硬化剤)
本発明の一実施の形態において、混練型ポリウレタンに硬化剤を混練して熱硬化する。硬化剤としては、一般の合成ゴム用の有機過酸化物、硫黄、有機硫黄化合物、イソシアネートなどを用いることができる。なかでも、有機過酸化物からなる過酸化物架橋剤を用いることが好ましい。有機過酸化物としては、たとえば、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチル−ペロキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0039】
重送防止部材用ゴム組成物において、有機過酸化物の配合量は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下が好ましく、さらに3質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0040】
(加工助剤)
本発明の一実施の形態において、重送防止部材用ゴム組成物は、加工助剤を含むことが好ましい。加工助剤としては、ステアリン酸、アミン類、亜鉛華(酸化亜鉛)、酸化マグネシウムなどを用いることができる。
【0041】
重送防止部材用ゴム組成物において、加工助剤の配合量は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下が好ましく、さらに0.5質量部以上2質量部以下が好ましい。
【0042】
(老化防止剤)
本発明の一実施の形態において、重送防止部材用ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどを用いることができる。
【0043】
(その他の配合剤)
本発明の一実施の形態において、重送防止部材用ゴム組成物は、一般的に用いられている添加剤、すなわちワックスなどの粘着防止剤、ポリカルボジイミドなどの加水分解防止剤を含むことができる。
【0044】
(ゴム組成物の物性)
上記の各種配合剤を混練した後、加硫して得られた重送防止部材用ゴム組成物は、JIS−A硬度が70以上90以下であり、75以上85以下がより好ましい。ゴム組成物のJIS−A硬度が70未満であると、摩擦係数が高くなり、紙葉の不送りが発生する。JIS−A硬度が90を超えると重送を防止するために必要な摩擦係数の確保が困難になるため好ましくない。なお、JIS−A硬度とは、JIS 6253デュロメータにより測定した硬度であり、国際規格表示の従来のショアA JIS−Aと同じ硬度である。
【0045】
重送防止部材用ゴム組成物は、粘弾性スペクトロメータにより、測定温度10℃で測定した損失正接(tanδ)の値が0.1以上0.2以下であり、かつ、測定温度−30℃以下のときに損失正接が最大値を示すことが好ましい。10℃における損失正接の値を上記の範囲とすることで、紙葉と重送防止部材との間に生じるエネルギー損失を低減することができる。このため、通紙に起因する重送防止部材の摩耗を抑制することができると考えられる。さらに、測定温度−30℃以下のときに損失正接が最大値を示すと、ゴムの結晶化を防ぎ、摩擦係数の低下を防ぐことができる。
【0046】
重送防止部材用ゴム組成物は、20℃における反発弾性率(Rb20)と、10℃における反発弾性率(Rb10)の差(Rb20−Rb10)が、0%以上5%以下であることが好ましい。(Rb20−Rb10)の値を上記の範囲とすることで、ゴムの結晶化を防ぎ、必要な弾性の低下を防ぐことができる。
【0047】
[重送防止部材の製造方法]
上記の各種配合剤を混練して得た未加硫物を金型内にセットして、150〜180℃で3〜60分間プレス加硫を行い、ゴムシートを作製する。このゴムシートを所望の厚さにスライスした後、さらに所望の大きさの長方形に裁断して、紙葉類の重送防止部材を得ることができる。重送防止部材は、製造コストを低減できることから、上記のゴムシートを単層で用いて作製されることが好ましい。
【実施例】
【0048】
<実施例1〜3、比較例1〜8>
[ゴム組成物の作製]
表1に記載の配合からなる混練物を作製し、該混練物を170℃20分の条件でプレス架橋して50mm×200mm×2mmのシート状に形成し、このシートを1.2mmにスライスした後、幅10mm、長さ60mmの長方形に裁断し、紙葉類の重送防止部材を製造した。得られた重送防止部材について、以下の測定を行った。
【0049】
[測定項目]
(JIS−A硬度)
JIS K6253(スプリング式測定法 デュロメータ硬さ)に従って、重送防止部材の硬度を測定した。
【0050】
(損失正接(tanδ))
レオロジー社製の粘弾性スペクトルメータを使用し、以下の条件で測定することにより、損失正接(tanδ)を求めた。
【0051】
測定温度:0℃、10℃、22℃、ジグ:引っ張り、波形:正弦波、チャック間距離:20mm、基本周波数:10Hz、変位振幅:50μm、初期制御:歪み2mm、サンプル形状:4mm×30mm×1mm(厚み)
また、温度を変化させて、損失正接(tanδ)の値が最大値になった時の温度も測定した。
【0052】
(反発弾性(%))
JIS K6255(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの反発弾性試験方法)に従って、20℃および10℃における重送防止部材の反発弾性(%)を測定した。
【0053】
(摩擦係数)
ヘイドン14型の摩擦係数測定器(新東化学社製の商品名「トライボギア TYPE:HEIDON−14DR」)を準備し、測定紙としてリコー社製のRICOPY PPC用紙 TYPE6200を用いて、以下の条件で摩擦係数を測定した。
測定温度および湿度:0℃、10℃×15%、22℃×55%、垂直荷重:400gf、用紙移動速度:47mm/s、用紙移動距離:100mm、パッド形状:36mm×22mm×1.2mm
(鳴き発生回数)
複写機(リコー社製のIPSiO 400)を用いて、測定紙(リコー社製のTYPE6200、64g/m2)を30枚通紙したときの鳴き発生回数を測定した。鳴き発生回数は、たとえば図3で示される通紙時振動データにおいて、振動加速度が1G以上を示すピーク回数に対応している。なお、鳴きが発生しない場合の通紙時振動データは、たとえば図4のとおりとなる。
測定条件は以下のとおりである。
測定温度および湿度:0℃、10℃×15%、22℃×55%、垂直荷重:400gf、用紙移動速度:47mm/s、パッド形状:36mm×22mm×1.2mm
(判定)
摩擦係数および鳴き発生回数の測定値にしたがって、以下の基準で判定した。
A:0℃および10℃における摩擦係数がいずれも0.90以上、かつ、0℃および10℃における鳴き発生回数がいずれも8回以下。
B:Aの基準を満たさないもの。
【0054】
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
(注1)混練型ウレタンポリマー:バイエル社製のウレパン640
(注2)シリカ:トクヤマ社製のトクシールU
(注3)無機充填剤:白石工業社製の白艶華CC(炭酸カルシウム)
(注4)可塑剤:大八化学社製のDOA(ビス(2−エチルヘキシル)アジペート)
(注5)加工助剤:花王社製のステアリン酸
(注6)老化防止剤:バイエル社製のスタバクゾール
(注7)過酸化物架橋剤:日本油脂製のパークミルD(ジクミルパーオキサイド)
[評価結果]
実施例1〜3の重送防止部材は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、シリカ20〜50質量部および無機充填剤として炭酸カルシウム50質量部を含むゴム組成物からなる。いずれの重送防止部材も、低温条件(0℃、10℃)において十分な摩擦係数を維持しつつ、鳴きの発生回数を抑制することができた。
【0057】
比較例1の重送防止部材は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、無機充填剤として炭酸カルシウム50質量部を含み、シリカを含まないゴム組成物からなる。低温条件において鳴きの発生回数を抑制することはできたが、摩擦係数が不十分であった。
【0058】
比較例2〜4の重送防止部材は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、シリカ5〜15質量部および無機充填剤として炭酸カルシウム50質量部を含むゴム組成物からなる。いずれの重送防止部材も、低温条件において十分な摩擦係数を示したが、鳴きの発生回数を抑制することができなかった。
【0059】
比較例5〜8の重送防止部材は、混練型ウレタンゴム100質量部に対して、シリカ50〜80質量部含むが、シリカ以外の無機充填剤を含まないゴム組成物からなる。いずれの重送防止部材も、低温条件において十分な摩擦係数を示したが、鳴きの発生回数を抑制することができなかった。
【0060】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1,21 重送防止部材、2,22,22a、22b 紙葉、3,23 紙送りローラ、4,24 給紙機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練型ウレタンゴム100質量部に対して、シリカを20質量部以上50質量部以下、およびシリカ以外の無機充填剤を10質量部以上50質量部以下含み、
JIS−A硬度が70以上90以下であるゴム組成物からなる重送防止部材。
【請求項2】
前記無機充填剤は、炭酸カルシウム、タルク、クレーおよびチタンホワイトよりなる群から選択された1種以上である、請求項1記載の重送防止部材。
【請求項3】
前記ゴム組成物の粘弾性スペクトロメータで測定した温度10℃における損失正接(tanδ)の値が0.1以上0.2以下であり、かつ、損失正接(tanδ)の最大値が測定温度−30℃以下において得られる、請求項1または2に記載の重送防止部材。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、さらに可塑剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の重送防止部材。
【請求項5】
前記ゴム組成物の20℃における反発弾性率(Rb20)と、10℃における反発弾性率(Rb10)の差(Rb20−Rb10)が、0%以上5%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の重送防止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−132027(P2011−132027A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295326(P2009−295326)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】