説明

重量物の梱包材及び梱包材を用いた梱包ユニット

【課題】トランスミッションのような重量物を、該重量物が車体に取り付けられるべき姿勢にて保持する梱包材を提供する。
【解決手段】梱包材3は、一端部に平面部分を有するトランスミッション2を、車両への取付け姿勢にて保持する受け体1を設け、該受け体1はトランスミッション2の重心Gを通る鉛直仮想線Lがトランスミッション2の前記平面部分を通らない姿勢で、トランスミッション2を保持する凹部10を形成している。凹部10は、トランスミッション2の重心部分を、受け体10の幅方向の略中央に寄せた姿勢で保持する。凹部10は受け体1上に少なくとも一対形成され、該一対の凹部10、10はトランスミッション2を互いに反対側に向けて保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重量物の梱包材、例えば自動車等の車両に搭載されるトランスミッションを輸送時に支持する梱包材、及び梱包材を用いた梱包ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
重量物の梱包材としては、従来から例えば図5に示すものがある(特許文献1参照)。重量物は例えばコンプレッサ(6)であり、円筒(60)の上面に半球体(61)を形成している。梱包材(3)は、円筒(60)が載る段ボール製の受け板(38)と、円筒(60)上に載り半球体(61)を囲む押さえ具(39)と、該押さえ具(39)上に載置される天面パッド(30)を具える。
図5では、梱包材(3)にてコンプレッサ(6)の上下端部を保護した梱包体(4)を形成し、これを2段積み重ねて、梱包ユニット(5)を形成している。梱包ユニット(5)は結束バンド(図示せず)にて一体に結ばれてパレット(50)に載せられ、該パレット(50)にフォークリフトのフォーク(図示せず)が挿入されて、梱包ユニット(5)が搬送される。
このように、受け板(38)に重量物の平面部分が載置されて、安定した状態で、重量物が支持されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−156489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人は、クッション性を有する発泡性樹脂を用いて、重量物の梱包材(3)、具体的には受け体(1)と天面パッド(30)を製造することを着想した。重量物は具体的には、車両用のトランスミッション(2)である。
これは図6に示すように、主軸(23)を有して車両のトルクコンバータやエンジンと結合できる開口部(22)と、潤滑オイルや変速ギアを内包した本体(21)と、カバーを有する基端部(20)を具えている。トランスミッション(2)の重心Gは、基端部(20)寄りにあり、且つ開口部(22)の幅方向に沿って、主軸(23)から稍ずれている。また、開口部(22)の周部は、トランスミッション(2)と該トランスミッション(2)が載置される面との接触面積が、トランスミッション(2)の外面上で最大の平面部分を有している。
これを従来の梱包と同様に、水平面を有する開口部(22)を下向きにして、受け体(1)に載置して梱包しようとすると、以下の問題がある。
1.トランスミッション(2)は、車両に横向きにして取り付けられる。即ち、梱包状態は車両への取付け状態から90度違えている状態となり、梱包を解いて、車両へ取り付ける際に、トランスミッションを90度反転させる。トランスミッションは重量物であるから、取付け時の作業性が悪い問題がある。
また、本来、横向きにして車両に搭載されるトランスミッションを開口部(22)を下向きにして梱包すると、主軸(23)から潤滑オイルが漏れ出す虞れもある。
2.トランスミッション(2)の重心Gは、主軸(23)から開口部(22)の幅方向に沿って、稍ずれている。このため、図7に示すように、トランスミッション(2)を受け体(1)に載置して、上下に積層すると、上段の梱包体(4)に主軸(23)と重心Gのズレ長さLに起因するモーメントMが発生することがある。これでは、下位の梱包体(4)に重量物の荷重の他にモーメントMが加わるから、複数段積層された梱包体(4)(4)の負荷が、真っ直ぐ垂直に最下位の梱包体(4)に加わらない。換言すれば、複数段積層された梱包体(4)(4)の荷重が、最下位の梱包体(4)に加わる箇所が一定しない。
これでは、受け体(1)と天面パッド(30)を強度が高い材料で構成する必要があり、コスト上昇を招来する。
本発明の目的は、トランスミッションのような重量物を、該重量物が車体に取り付けられるべき姿勢にて保持する梱包材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
梱包材(3)は、一端部に平面部分を有する重量物を、取付け相手体への取付け姿勢にて保持する受け体(1)を設けている。該受け体(1)は重量物の重心を通る鉛直仮想線Lが重量物の前記平面部分と交差しない姿勢で、重量物を保持する凹部(10)を形成している。
【発明の効果】
【0006】
1.梱包材(3)の受け体(1)は、重量物を取付け相手体である車両への取付け姿勢にて保持する。従って、重量物の梱包を解いて、該重量物を車両へ取り付ける際に、重量物を反転させる必要が無く、取付け時の作業性を改善することができる。
また、重量物が潤滑オイルを含有するトランスミッションである場合は、受け体(1)は、重量物を車両への取付け姿勢にて保持しているから、潤滑オイルが漏れる虞れはない。
2.従来の梱包材では、重量物の一端部に位置する平面部分が載置されており、重量物の重心を通る鉛直仮想線が重量物の前記平面部分を通る。従って、平面部分が載置面と接する箇所と重心が、載置面に沿ってずれる場合は、重量物の荷重が梱包材(3)に加わる箇所が一定しない問題があった。
本願では、重量物の重心を通る鉛直仮想線が重量物の前記平面部分と交差しない姿勢にて、重量物が受け体(1)の凹部(10)に保持されるから、たとえ重心が重量物の何れの箇所に位置しようと、重量物の荷重が梱包材(3)に加わる箇所が一定しない問題は生じない。
また、梱包材(3)で重量物を梱包した梱包体(4)を複数段積層しても、梱包体(4)(4)の荷重が真っ直ぐ垂直に、最下位の梱包体(4)に加わる。これにより、積層作業が容易になり、且つ受け体(1)を強度が高い材料で構成する必要がないから、コスト上昇も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】重量物であるトランスミッションを収納した受け体の平面図である。
【図2】(a)は天面パッドを被せて積層した受け体をA方向から見た左側面図、(b)は天面パッドを被せて積層した受け体をD方向から見た正面図である。
【図3】図2(a)の受け体及び天面パッドをC−C線を含む垂直面にて破断し矢視した断面図である。
【図4】トランスミッションが嵌まる凹部の拡大平面図である。
【図5】従来の重量物の梱包材を示す正面図であり、一部を破断している。
【図6】トランスミッションの正面図である。
【図7】トランスミッションを立てて積層した状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施例を図を用いて、詳述する。
図1は、トランスミッション(2)を収納した受け体(1)の平面図であり、図2(a)は、天面パッドを被せて積層した受け体(1)をA方向から見た左側面図、図2(b)は天面パッドを被せて積層した受け体(1)をD方向から見た正面図である。図1では、2つの受け体(1)(1)が横並びに配列されているが、3つ以上であってもよい。
トランスミッション(2)は、図6に示す従来のものと同じであり、開口部(22)の周部に平面部分を設け、重心Gは基端部(20)寄りに位置する。トランスミッション(2)は、車両に横向きにして取り付けられる。また、基端部(20)及び本体(21)上には、ソケットやフォトカプラ等の電子部品(25)(25)が配備されている。
【0009】
トランスミッション(2)は横向きにされ、下端部が受け体(1)に形成された凹部(10)に嵌まって収納される。即ち、トランスミッション(2)は車両への取付け状態で、凹部(10)に収納され、トランスミッション(2)の重心Gを通る鉛直仮想線(図3のL)は、トランスミッション(2)の前記開口部(22)の平面部分を通らない、或いは該平面部分と交差しない。
1つの受け体(1)は平面矩形状であって、長手方向に沿って、2つの凹部(10)(10)を形成している。受け体(1)の各凹部(10)には、トランスミッション(2)が開口部(22)を外側にして嵌められ、両トランスミッション(2)(2)は、受け体(1)の幅方向に沿って、互いに反対側を向いている。これにより、トランスミッション(2)の重心Gは、受け体(1)の幅方向の中央部寄りに位置する。また、両トランスミッション(2)(2)が互いに反対側を向いているから、受け体(1)の幅方向の両側に、略均等にトランスミッション(2)の荷重が加わる。
【0010】
図2(a)に示すように、トランスミッション(2)の上端部には、下面に凹み(31)を形成した天面パッド(30)が被さり、前記受け体(1)と天面パッド(30)で、トランスミッション(2)の梱包材(3)を構成する。トランスミッション(2)を梱包材(3)で梱包して、1つの梱包体(4)が構成される。梱包体(4)は図2(a)、(b)に示すように、少なくとも1段以上積層されて、梱包ユニット(5)となって、パレット(50)上に載置される。隣り合う受け体(1)と天面パッド(30)は互いに嵌合しており、梱包を解く際に、梱包体(4)が整頓し易くなっている。
【0011】
本例にあっては、トランスミッション(2)の重心を通る鉛直仮想線Lがトランスミッション(2)の前記平面部分と交差しない姿勢にて、トランスミッション(2)が受け体(1)に保持されるから、たとえ重心がトランスミッション(2)内の何れの箇所に位置しようと、トランスミッション(2)の荷重が梱包材(3)に加わる箇所は一定である。従って、梱包体(4)を複数段積層しても、梱包体(4)(4)の荷重が真っ直ぐ垂直に、最下位の梱包体(4)に加わる。これにより、積層作業が容易になり、且つ受け体(1)を強度が高い材料で構成する必要がないから、コスト上昇も防止できる。
また、トランスミッション(2)の重心は、受け体(1)の幅方向の中央部寄りに位置するから、梱包体(4)を複数段積層した場合の荷重は、受け体(1)の幅方向の中央部寄りに位置し、これによっても、段積みを安定させることができる。
また、受け体(1)は、トランスミッション(2)を車両への取付け姿勢にて保持する。従って、トランスミッション(2)の梱包を解いて、該トランスミッション(2)を車両へ取り付ける際に、トランスミッション(2)を90度反転させる必要が無く、取付け時の作業性を改善することができる。
また、受け体(1)は、トランスミッション(2)を車両への取付け姿勢にて保持しているから、トランスミッション(2)から潤滑オイルが漏れる虞れはない。
【0012】
図3は、図2(a)の1つの梱包体(4)をC−C線を含む面にて破断し矢視した断面図である。トランスミッション(2)の本体(21)の上面には、電子部品(25)が設けられているから、受け体(1)及び天面パッド(30)は夫々、本体(21)の周面に対応する部位に、凹部(10)及び凹み(31)よりも凹んだ空間(32)を形成して、該電子部品(25)に梱包、積層時の負荷や衝撃荷重が加わることを避けている。即ち、受け体(1)はトランスミッション(2)の基端部(20)と開口部(22)を受けている。
また、基端部(20)を受ける受け体(1)の部位Eは肉厚に形成されて、トランスミッション(2)を安定して支持している。
【0013】
トランスミッション(2)の輸送中に、トランスミッション(2)内部に粉塵が入ることを防止する必要がある。このため、トランスミッション(2)はポリシート(図示せず)にくるんで、受け体(1)内に収納されることがある。この場合、凹部(10)からトランスミッション(2)が脱落しないように、図4に示すように、凹部(10)の周壁から複数の突起(11)(11)を内向きに突出し、トランスミッション(2)に押圧させ、トランスミッション(2)の保持強度を高めてもよい。凹部(10)がトランスミッション(2)の外径形状にくなまく沿っているので、トランスミッション(2)は安定して輸送される。
【0014】
受け体(1)及び天面パッド(30)は、合成樹脂、具体的には発泡性ポリスチレン(EPS)から形成される。受け体(1)及び天面パッド(30)は、流通物品を搬送する容器として適切な他の樹脂、例えば熱可塑性樹脂から成形されてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂)、またはこれらを含む複合樹脂が挙げられる。もちろん、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などであってもよい。特にポリスチレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを含む複合樹脂を用いてもよい。
【0015】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
上記例では、受け体(1)上に凹部(10)を2つ形成しているが、3つ以上でもよい。また、重量物はトランスミッション(2)に限定されない。
【符号の説明】
【0016】
(1) 受け体
(2) トランスミッション
(3) 梱包材
(4) 梱包体
(5) 梱包ユニット
(10) 凹部
(11) 突起
(30) 天面パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に平面部分を有する重量物を、取付け相手体への取付け姿勢にて保持する受け体を設け、該受け体は重量物の重心を通る鉛直仮想線が重量物の前記平面部分と交差しない姿勢で、重量物を保持する凹部を形成したことを特徴とする梱包材。
【請求項2】
凹部は、重量物の重心部分を、受け体の幅方向の略中央に寄せた姿勢で保持する、請求項1に記載の梱包材。
【請求項3】
凹部は受け体上に少なくとも一対形成され、該一対の凹部は重量物を互いに反対側に向けて保持する、請求項1又は2に記載の梱包材。
【請求項4】
凹部の周壁からは、重量物の外面に接する突起が突出している、請求項1乃至3の何れかに記載の梱包材。
【請求項5】
重量物は車両用トランスミッションであり、取付け相手体は車両である、請求項1乃至4の何れかに記載の梱包材。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の梱包材に重量物を収納し、該重量物の上端部に天面パッドを被せて梱包体を構成し、該梱包体を少なくとも1段以上積層して構成される梱包ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−98747(P2011−98747A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253881(P2009−253881)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】