説明

重鎖間ジスルフィド結合を欠く免疫グロブリン分子の単離

本発明は、生物学的活性を保ったまま、免疫グロブリン半抗体を免疫グロブリンの完全な抗体から確実かつ制御可能に分離する方法、ならびに精製された免疫グロブリン半抗体調製物および精製された免疫グロブリンの完全な抗体の調製物に関する。解離された半抗体は、クロマトグラフィーによって完全な抗体から分離できる。IgG分子には4つの既知のサブクラス:IgG;IgG;IgG;およびIgGが存在する。IgG分子は、2つの重鎖サブユニットを結合させるジスルフィド結合が必ずしも形成されない点で他のIgGアイソタイプと異なる。重鎖サブユニットをまとまらせる非共有相互作用が原因で、IgG分子の不均一性は、精製されたIgGタンパク質のゲル濾過後に明らかでない。しかし、精製されたIgG4タンパク質を変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって非還元条件下で分離する場合、2つの異なるタンパク質種−完全な抗体および「半抗体」を同定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリン半抗体を、「免疫グロブリンの完全な抗体」から、生物学的活性を保ったまま、制御分離することを可能にする方法論を提供する。より詳細には、本発明は、免疫グロブリン半抗体を免疫グロブリンの完全な抗体から分離する方法、ならびに精製免疫グロブリン半抗体調製物および精製された免疫グロブリンの完全な抗体の調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM分子といった免疫グロブリン分子は、脊椎動物の免疫反応に関与する多量体タンパク質である。免疫グロブリン分子の基本構造は四量体であり、2個の軽鎖サブユニットと2個の重鎖サブユニットから成る;重鎖サブユニットはクラスに特有であり、免疫グロブリン分子の別のクラスに独自の影響を与える。免疫グロブリン分子の四本鎖構造は、各重鎖サブユニットのアミノ末端側の半分と軽鎖サブユニットの間、および2個の重鎖サブユニットのカルボキシ末端側の半分の間の、強い非共有相互作用によってまとまっている。ジスルフィド結合は、重鎖および軽鎖サブユニット、および2個の重鎖サブユニットの、両方の間に結合を形成することによって、これらの相互作用をさらに強化する。本発明の目的のために、IgMは重鎖10本と軽鎖10本を有し、一方、IgAは主に、軽鎖と重鎖の両方の種類の4本を含む二量体であることに注意すべきである。
【0003】
IgG分子には4つの既知のサブクラス;IgG;IgG;IgG;IgGが存在する。IgG分子は、2個の重鎖サブユニットを連結させるジスルフィド結合が必ずしも形成されないという点で、他のIgGアイソタイプと異なる。重鎖サブユニットをまとまらせる非共有相互作用が原因で、IgG分子の不均一性は精製IgGタンパク質のゲル濾過後に明らかではない。しかし、精製IgGタンパク質が変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって非還元条件下で分離される場合、2つの異なるタンパク質種を同定することができる。一方は四量体分子の大きさと合致する150kDサイズ範囲に移動し、他方は重鎖サブユニット1個と軽鎖サブユニット1個を含む「半免疫グロブリン」の大きさと合致する約80kDサイズ範囲に移動する(非特許文献1)。
【非特許文献1】King et al. (1992),Biochein J281; 317−23
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、部分的には、いくつかの変性条件が「免疫グロブリン半抗体(immunoglobulin half antibodies)」の解離を誘発できるが、一方でそれらの条件の大部分は凝集および不可逆的変性を引き起こし、生物医薬のための80kDと150kD種の分離には容易に適用できないことの発見に基づく。条件の注意深い選択が解離を調節できる場合、酸性化によっても解離を達成することができる。本発明は、「免疫グロブリンの完全な抗体(immunoglobulin whole antibodies)」から、生物学的活性を保った状態で免疫グロブリン半抗体を制御分離することを可能にする方法論を提供する。
【0005】
IgG抗体の産生の結果、完全な抗体と半抗体の混合物の形成が生じる。完全な抗体は、重鎖のヒンジ領域における重鎖間ジスルフィド結合を介して四量体を形成する。一方、半抗体は、これらの重鎖間ジスルフィド結合を欠く。半抗体は、重鎖間ジスルフィド結合の欠如にもかかわらず四量体を形成するように非共有相互作用することが見出されている。半抗体間のこの非共有相互作用のために、半抗体の物理的性質は完全な抗体のものと非常に類似しており、非変性条件下で半抗体を完全な抗体から分離するのを困難にしている。本発明はこの分離についての困難を克服する方法論を提供する。
【0006】
本発明はまた、部分的に、クロマトグラフィーによって、解離した半抗体を完全な抗体から分離できることの発見に基づく。したがって、本発明は、免疫グロブリン半抗体を免疫グロブリンの完全な抗体から分離する方法、ならびに、精製免疫グロブリン半抗体調製物および精製された免疫グロブリンの完全な抗体の調製物に関する。
【0007】
したがって、一態様では、本発明は、半抗体と完全な抗体が同一のアイソタイプである場合に半抗体を完全な抗体から分離する方法を提供する。その方法は:
同一のアイソタイプの半抗体と完全な抗体の混合物を含む試料を得る;
半抗体が互いに解離するように試料のpHを低下させて溶液(resulting solution)を形成する;
溶液を、IgG半抗体と完全なIgG抗体の移動度を差別化して遅らせるカラムに装填する;工程を含む。
【0008】
好ましい実施形態では、抗体は免疫グロブリン分子、たとえば、IgG、IgG、IgG、またはIgG分子である。好ましくは、抗体はIgG分子である。別の実施形態では、抗体はIgA、およびIgA、IgD、IgE、またはIgM分子である。
【0009】
一部の実施形態では、抗体は天然に存在する抗体、たとえば、哺乳類において産生された抗体、たとえば、マウスモノクローナル抗体またはヒト抗体である。別の実施形態では、抗体は改変されている、たとえば、組み換え抗体、たとえば、キメラ抗体、ヒト化抗体、または抗体断片、たとえば、F(ab)断片である。さらに別の実施形態では、抗体はたとえば、特定のリガンドについての親和性および特異性に関して、たとえば、ファージディスプレイ法によって、改変されている。抗体は、たとえば、軽鎖または重鎖の定常領域または可変領域において改変されている。たとえば、抗体は、たとえば、欠失、挿入、または置換によって、抗体の可変領域の1個以上のCDRおよび/または骨格部分内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、および/または、抗体の定常領域内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、改変されている。産生方法として、遺伝子導入哺乳類、特に有蹄類の乳または他の体液中への産生を含む。最も好ましくは、ヤギまたはウシでの産生が挙げられる。
【0010】
本発明の他の特性および利点は下記の詳細な説明および請求項から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
用語の説明
イオン交換クロマトグラフィー:
タンパク質は20種類の共通なアミノ酸から構成される。これらのアミノ酸の一部は、正または負のどちらかに荷電している側基(「R」基)を持つ。正電荷または負電荷の全体数の比較は、タンパク質の性質についての手掛かりを与える。タンパク質が負電荷より多くの正電荷を持つ場合、塩基性タンパク質と呼ばれる。負電荷が正電荷より大きい場合、タンパク質は酸性である。タンパク質が優勢なイオン性電荷を含む場合、タンパク質は反対電荷を有する担体に結合されうる。塩基性タンパク質は、正に荷電しているが、負に荷電している担体に結合する。酸性タンパク質は、負に荷電しているが、陽性担体に結合する。イオン交換クロマトグラフィーの使用は、したがって、分子をその電荷に基づいて分離することを可能にする。分子の種類(酸性分子、塩基性分子、中性分子)をこの方法によって容易に分離することができる。これはおそらく、タンパク質精製のために最も高頻度に用いられるクロマトグラフィー法である。
【0012】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(「HIC」):
HICは、イオン交換クロマトグラフィーについて観察されるよりもはるかに大きい選択性を可能にする。これらの疎水性アミノ酸は、固定化された疎水性基を含む担体に結合することができる。これらのHIC担体は「クラスター化」作用によって働くことに注意する;これらの分子が会合する際に、共有結合またはイオン結合は形成も共有もされない。
【0013】
ゲル濾過クロマトグラフィー:
この方法はタンパク質を大きさおよび形に基づいて分離する。ゲル濾過クロマトグラフィー用の担体は、任意の大きさの「ポア」と呼ばれる孔を含む。ポアに侵入することができないより大きな分子はビーズを迂回して、ビーズを隔てる空隙を、ポアに侵入しうるより小さな分子よりも速く移動する。
【0014】
アフィニティクロマトグラフィー:
この方法は標的分子の1段階精製を可能にする。この方法は、特異的リガンドが入手可能であるならば、任意のタンパク質の精製に有用である。
【0015】
本発明は完全な抗体と半抗体の分離を改良するための系に関する。ここで用いられる「Ig」または「抗体」の語は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM分子といったまたはその任意のサブクラス、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4をいう。
【0016】
ここで用いられる「完全なIg(whole Ig)」または「完全な抗体(whole antibody)」の語は、2個の軽鎖免疫グロブリンサブユニットおよび2個の重鎖免疫グロブリンサブユニットから成り、2個の重鎖免疫グロブリンサブユニットが1個以上のジスルフィド結合によって互いに共有結合している、IgAおよびIgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM分子といった免疫グロブリン分子、またはその任意のサブクラスをいう。
【0017】
ここで用いられる「半Ig(half Ig)」または「半抗体(half antibody)」の語は、1)1個の軽鎖免疫グロブリンサブユニットおよび1個の重鎖免疫グロブリンサブユニット;または2)重鎖サブユニットがジスルフィド結合によって互いに共有結合していない、2個の軽鎖免疫グロブリンサブユニットおよび2個の重鎖免疫グロブリンサブユニット:のどちらかから成る、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgM分子といった免疫グロブリン分子、またはその任意のサブクラスをいう。
【0018】
ここで用いられる「アイソタイプ」の語は、抗体を説明するのに用いられる場合、抗体の特定のクラスおよびサブクラス、たとえば、IgGアイソタイプをいう。
【0019】
ここで用いられる「移動度を差別的に遅らせる」の語句は、タンパク質をカラムに装填し、一方のタンパク質がカラムに入って出るのに要する時間が、平均して、他方のタンパク質がカラムに入って出るのに要する時間とは異なる、少なくとも2種類のタンパク質を含む過程をいう。
【0020】
ここで用いられる「〜と相互作用する」の語句は、タンパク質とカラムの相互作用を説明するのに用いられる場合、タンパク質の移動度がカラムによって変化させられる過程をいう。タンパク質の移動度における変化は;タンパク質とカラムの間の、たとえば、ファンデルワールス力および/または双極子−双極子相互作用が関係する、一過性分子相互作用;タンパク質とカラムの間の、たとえば、ファンデルワールス力または双極子−双極子相互作用が関係する、安定分子相互作用;またはカラムがカラム有効容積に対して有する、異なる大きさのタンパク質がカラムを通過する際に受ける作用、の結果として起こりうる。
【0021】
ここで用いられる「一過性分子相互作用」の語句は、1秒未満の半減期で形成されおよび破壊されるかまたは可逆的である、分子結合相互作用をいう。本発明に関しては、物質をカラムから溶出することができるということに注意することもまた重要である。
【0022】
ここで用いられる「安定分子相互作用」の語句は、1秒以上の半減期で形成されおよび破壊される、分子結合相互作用をいう。
【0023】
ここで用いられる「〜に保持される」または「結合する」の語句は、タンパク質とカラムの間の相互作用を説明するのに用いられる場合、10%を超えるタンパク質がカラムから洗浄緩衝液中に溶出することなく、カラム容量の数倍の適当な洗浄緩衝液をカラムに加える(すなわち、通過させる)ことができるような、十分な強さおよび持続時間の相互作用をいう。好ましくは、タンパク質がカラムに保持されるかまたはカラムと結合する場合、タンパク質の25%、10%、5%、2%、1%未満が、カラム容量の数倍の適当な洗浄緩衝液をカラムに加えた後にカラムから洗い出される。
【0024】
ここで用いられる「純粋な」の語は、半抗体の精製調製物、たとえば、クロマトグラフィーによって精製された半抗体調製物に用いられる場合、総抗体濃度の約25%以下だけが完全な抗体から成る半抗体調製物をいう。好ましくは、総抗体濃度の約15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満だけが完全な抗体から成る。
【0025】
ここで用いられる「純粋な」の語は、完全な抗体の精製調製物、たとえば、クロマトグラフィーによって精製された完全な抗体の調製物に用いられる場合、総抗体濃度の約30%以下だけが半抗体から成る半抗体調製物をいう。ここでも、製品に特異的であるが、30は報告された最高値である。好ましくは、総抗体濃度の約30%、20%、15%、10%、5%、またはそれ未満だけが半抗体から成る。
【0026】
他の語は、たとえば、本発明の分野の当業者にとって定義されるような、通常の定義を有する。
【0027】
発明の実施形態:抗体構造または特異性の変化
本発明によると、抗体構造の有用な改変を提供する多数の実施形態が存在する。これらの変化は、問題の抗体を製造するために用いられるDNAの変化を反映する。
【0028】
一部の実施形態では、抗体は重鎖ヒンジ領域の改変を含む。たとえば、ヒンジ領域またはその一部が、たとえば、欠失、挿入、またはたとえば、同一のクラスおよびサブクラスの天然に存在する抗体中に存在するヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部での置換によって、改変されている。
【0029】
一部の実施形態では、試料は、哺乳類、たとえば、有蹄類(たとえば、ウシ、ヤギ、またはヒツジ)、ブタ、ウサギ、またはマウスから得られる。たとえば、試料は、乳、血液(たとえば、血清)、または組織ホモジネートから得ることができる。別の実施形態では、試料は、鳥類、たとえば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、キジ、またはダチョウから得られる。たとえば、試料は卵、血液(たとえば、血清)、または組織ホモジネートから得ることができる。さらに別の実施形態では、試料は、たとえば、哺乳類細胞、鳥類細胞、魚類細胞、または昆虫細胞のような細胞を培養するのに用いられた培地である。好ましい実施形態では、試料を提供した哺乳類、鳥類、または細胞は、遺伝子導入哺乳類、鳥類、または細胞、たとえば、目的の抗体たとえば外来抗体を産生する遺伝子導入哺乳類、鳥類、または細胞である。好ましい実施形態では、試料は、哺乳類、たとえば、目的の抗体たとえば外来抗体を産生する遺伝子導入哺乳類から得られた乳である。
【0030】
好ましい実施形態では、試料のpHを低下させる前に、試料は部分精製される。たとえば、試料を処理して非免疫グロブリンタンパク質、低分子、および脂質を除去することができる。そのような処理は、クロマトグラフィー段階、たとえば、イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティクロマトグラフィー、沈澱段階、および遠心分離段階を含みうる。たとえば、乳を処理してカゼイン、細胞片および脂質を除去することができる;卵を処理してリゾチームを除去することができる;血液を処理して、たとえば、凝固を開始することによって、細胞および凝固因子を除去することができる;および、組織ホモジネートおよび細胞培地を処理して不溶性タンパク質および細胞片を除去することができる。一部の実施形態では、試料のpHを、酸、たとえば、酸性緩衝液、たとえば、グリシン−HCl、クエン酸、酢酸、ギ酸緩衝液、または酸性溶液、たとえば、HClまたはリン酸溶液を、試料に加えることによって低下させる。好ましい実施形態では、試料のpHを、グリシン−HCl緩衝液を試料に加えることによって低下させる。
【0031】
好ましい実施形態では、試料のpHを、解離が完全になるまで低下させる。一部の実施形態では、試料のpHを、約4.0、3.5、またはそれ未満になるまで低下させ、それによって、半抗体の大部分が互いに解離した、結果として生じる溶液を提供する。好ましい実施形態では、試料のpHを、約3.5になるまで低下させる。
【0032】
一部の実施形態では、カラムは陽イオン交換カラムである。別の実施形態では、カラムはサイズ排除カラムである。さらに別の実施形態では、カラムは疎水性相互作用カラムである。
【0033】
さらに別の実施形態では、カラムはアフィニティカラムである。好ましくは、カラムは陽イオン交換カラムである。Source S、S−Sepharose、POROS SHおよび他の高選択性陽イオン交換体。
【0034】
一部の実施形態では、カラムは得られた溶液中に存在する半抗体を保持する(すなわち、結合する)。別の実施形態では、カラムは得られた溶液中に存在する完全な抗体を保持する(すなわち、結合する)。さらに別の実施形態では、カラムは得られた溶液中に存在する半抗体または完全な抗体を保持しない(すなわち、結合しない)が、半抗体と完全な抗体がカラムを通って移動する速度が異なるように、半抗体、完全な抗体、または両方と相互作用する(たとえば、動きを遅らせる)。好ましい実施形態では、カラムは得られた溶液中に存在する半抗体および完全な抗体の両方を保持する(すなわち、結合する)。
【0035】
一部の実施形態では、イオン交換カラムは試料中に存在する抗体の大部分を保持する(すなわち、結合する)。一部の実施形態では、イオン交換カラムは試料中に存在する抗体の約80%、90%、95%、98%、またはそれより多くを保持する。好ましい実施形態では、イオン交換カラムは試料中に存在する半抗体の約80%、90%、95%、98%、またはそれより多くを保持する(すなわち、結合する)。好ましい実施形態では、イオン交換カラムは試料中に存在するIgの完全な抗体の約80%、90%、95%、98%、またはそれより多くを保持する(すなわち、結合する)。
【0036】
好ましい実施形態では、カラムは、たとえば、約5.0、4.5、4.0、3.5、またはそれ未満のpHの、低pH条件下で半抗体と結合する。より好ましい実施形態では、カラムは低pH条件下で半抗体と結合するが、しかしたとえば、約6.5、7.0、7.5、またはより高いpHの、中性ないし高pHの条件下では結合しない。
【0037】
好ましい実施形態では、カラムは、たとえば、約5.0、4.5、4.0、3.5、またはそれ未満のpHの、低pH条件下で完全な抗体と結合する。より好ましい実施形態では、カラムは低pH条件、およびたとえば、約6.5、7.0、7.5、またはより高いpHの、中性ないし高pHの条件下で、完全な抗体と結合する。
【0038】
一部の実施形態では、本方法はさらに、カラムによって保持された半抗体を選択的に溶出する条件にカラムをさらす工程を含む。そのような条件は、たとえば、カラム内に存在する緩衝液のpHまたはイオン強度を変えることを含んでいてよい。好ましい実施形態では、カラムに結合した半抗体を選択的に溶出する条件は、カラム内に存在する緩衝液のpHを、半抗体を選択的に溶出させるのに十分なレベルまで上昇させるように、緩衝液をカラムに加えることを含む。
【0039】
一部の実施形態では、カラム内に存在する緩衝液のpHを高めるためにカラムに加えられる緩衝液(すなわち、「高pH緩衝液」)は、約4.0ないし8.0のpHを有する。一部の実施形態では、高pH緩衝液は、たとえば、MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N'[4−ブタンスルホン酸)、酢酸緩衝液、またはその混合物を含む。一部の実施形態では、高pH緩衝液トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)。緩衝液のリストはまた、塩化ナトリウムを含むかまたは含まないリン酸緩衝液を含む。これらの緩衝液の一部は、ポリソルベート20またはポリソルベート80またはCHAPSまたはコール酸のようなイオン性または非イオン性界面活性剤を含んでいてもまたは含まなくてもよい。好ましい実施形態では、高pH緩衝液は約4.0ないし8.0のpHを有し、HEPES−酢酸緩衝液を含む。
【0040】
好ましい実施形態では、半抗体は、カラム内に存在する緩衝液のpHを約6.5、7.0、7.5、またはそれより高くまで上昇させることによってカラムから溶出される。好ましい実施形態では、半抗体の大部分、たとえば、半抗体の75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはそれより多くが、カラム内に存在する緩衝液のpHを約6.5、7.0、7.5、またはそれより高く上昇させることによってカラムから溶出される。好ましい実施形態では、半抗体は、カラム内に存在する緩衝液の塩濃度を最大300mMまで高めることによってカラムから溶出される。
【0041】
好ましい実施形態では、カラム内に存在する緩衝液のpHを約6.5、7.0、またはそれより高く上昇させる場合、完全な抗体はカラムに結合したまま保たれる。好ましい実施形態では、完全な抗体の大部分、たとえば、完全な抗体の80%、90%、95%、98%、99%、またはそれより多くが、カラム内に存在する緩衝液のpHを約6.5、7.0、またはそれより高くまで上昇させた後にカラムに結合したまま保たれる。
【0042】
一部の実施形態では、カラムに加えられる緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHが、1以上の段階から成る段階グラジエントとして上昇するように加えられる。別の実施形態では、カラムに加えられる緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHが直線グラジエントとして上昇するように加えられる。別の実施形態では、カラムに加えられる緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHがまず段階グラジエントとして、たとえば、pH約4.0、4.5、または5.0へ、次いで、直線グラジエントとして、たとえば、約6.5、7.0、7.5、またはより高いpHに上昇するように加えられる。さらに別の実施形態では、カラムに加えられる緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHがまず直線グラジエントとして、たとえば、pH約4.5、5.0、または5.5へ、次いで段階グラジエントとして、たとえば、約6.5、7.0、7.5、またはより高いpHへ上昇するように加えられる。好ましくは、カラムに加えられる緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHが段階グラジエントとしてpH約4.5へ、次いで直線グラジエントとしてpH約7.0に上昇するように加えられる。
【0043】
一部の実施形態では、方法はさらに、カラムによって保持される完全な抗体を溶出させる条件にカラムをさらす工程を含む。そのような条件は、たとえば、カラム内に存在する緩衝液のpHまたはイオン強度を変化させることを含みうる。好ましい実施形態では、その条件は、完全な抗体を溶出させるのに十分な量で、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が上昇するようにカラムに緩衝液を加えることを含む。特に好ましい実施形態では、条件は、カラム内に存在する緩衝液のpHが上昇するようにカラムに緩衝液を加えること、および、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が上昇するようにカラムに緩衝液を加えること、その場合にpHとイオン強度の上昇の組み合わせが完全な抗体を溶出するために十分であることを含む。好ましい実施形態では、カラム内に存在する緩衝液のpHとイオン強度を独立に上昇させる。別の実施形態では、カラム内に存在する緩衝液のpHとイオン強度を同時に上昇させる。好ましい実施形態では、完全な抗体を溶出させる前に半抗体をカラムから溶出させ、カラム内に存在する緩衝液のpHを上昇させた後にカラム内の緩衝液のイオン強度を上昇させる。
【0044】
一部の実施形態では、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度を上昇させる、カラムに加えられた緩衝液(すなわち、「高イオン強度緩衝液」)は、高濃度を有する1種類以上の塩を含む。一部の実施形態では、高イオン強度緩衝液は、少なくとも1種類の塩、たとえば、NaCl、KCl、または、おそらく少なくとも5mM、100mM、150mM、またはより高い濃度で存在する、上昇した緩衝液濃度を含む。好ましい実施形態では、高イオン強度緩衝液は、少なくとも約50mMのNaCl、またはより好ましくは約100mMのNaClを含む。一部の実施形態では、高イオン強度緩衝液はさらに、他のリン酸塩を含む。
【0045】
好ましい実施形態では、完全な抗体は、1)カラム内に存在する緩衝液のpHを、たとえば、約5、7.0、またはより高くまで上昇させること、および2)カラム内に存在する緩衝液のイオン強度を、たとえば、高イオン強度緩衝液のイオン強度まで上昇させること;によって、カラムから溶出される。特に好ましい実施形態では、完全な抗体は、カラム内に存在する緩衝液のpHを約7.0に上昇させることおよびカラム内に存在する緩衝液のイオン強度を高イオン強度緩衝液のイオン強度まで上昇させることによって、カラムから溶出される。
【0046】
好ましい実施形態では、完全な抗体の大部分、たとえば、完全な抗体の51%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、またはより多くは、カラム内に存在する緩衝液のpHを約5.0ないし7.5、またはより高くまで上昇させること、および、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度を高イオン強度緩衝液のイオン強度まで上昇させることによって、カラムから溶出される。好ましい実施形態では、溶出された完全な抗体の純度は、約70%、75%、80%、85%、90%、またはより高い。
【0047】
一部の実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が、1個以上の段階を含む段階グラジエントとして上昇するように加えられる。別の実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が直線グラジエントとして上昇するように加えられる。別の実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度がまず段階グラジエントとして、次いで直線グラジエントとして上昇するように加えられる。さらに別の実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度がまず直線グラジエントとして、次いで段階グラジエントとして上昇するように加えられる。好ましい実施形態では、カラムに加えられている高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が、5mM NaCl溶液とほぼ等しいかまたはより高いイオン強度へ上昇するように加えられる。好ましい実施形態では、完全な抗体をカラムから溶出させる前に半抗体をカラムから溶出させ、それによって半抗体を完全な抗体から分離することを可能にする。特に好ましい実施形態では、完全な抗体をカラムから溶出させる前に、半抗体の大部分、たとえば、半抗体の75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはより多くを、カラムから溶出させ、それによって半抗体を完全な抗体から分離することを可能にする。
【0048】
別の一態様では、本発明は、半抗体と完全な抗体が同一のアイソタイプである場合に、半抗体を完全な抗体から分離する方法に関する。その方法は:
同一のアイソタイプの半抗体と完全な抗体の混合物を含む試料を得る;
半抗体が互いに解離するように試料のpHを低下させて、溶液を形成する;
得られた溶液を、半抗体と完全な抗体の両方がカラムによって保持されるようにイオン交換カラムに装填する;
カラム内に存在する緩衝液のpHが半抗体を選択的に溶出させるのに十分なレベルまで上昇するように、緩衝液をカラムに加える;および
完全な抗体を溶出させるのに十分な量で、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度を上昇させるように緩衝液をカラムに加える;工程を含む。
【0049】
好ましい実施形態では、抗体は、免疫グロブリン分子、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4分子である。好ましくは、抗体はIgG4分子である。別の実施形態では、抗体はIgA、IgD、IgE、またはIgM、分子である。
【0050】
一部の実施形態では、抗体は天然に存在する抗体、たとえば、哺乳類において産生された抗体、たとえば、マウスモノクローナル抗体またはヒト抗体である。別の実施形態では、抗体は改変されている、たとえば、組み換え抗体、たとえば、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fc融合タンパク質または抗体断片、たとえば、F(ab)断片である。さらに別の実施形態では、抗体はたとえば、特定のリガンドについての親和性および特異性に関して、たとえば、ファージディスプレイ法によって、改変されている。抗体は、たとえば、軽鎖または重鎖の定常領域または可変領域において改変されている。たとえば、抗体は、たとえば、欠失、挿入、または置換によって、抗体の可変領域の1個以上のCDRおよび/または骨格部分内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、および/または、抗体の定常領域内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、改変されている。
【0051】
一部の実施形態では、抗体は重鎖ヒンジ領域の改変を含む。たとえば、ヒンジ領域またはその一部が、たとえば、欠失、挿入、またはたとえば、同一のクラスおよびサブクラスの天然に存在する抗体中に存在するヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部での置換によって、改変されている。たとえば、IgG1、IgG2、またはIgG3抗体が、IgG4型ヒンジ領域を含みうる。
【0052】
一部の実施形態では、試料は、哺乳類、たとえば、有蹄類(たとえば、ウシ、ヤギ、またはヒツジ)、ブタ、ウサギ、またはマウスから得られる。たとえば、試料は、乳、血液(たとえば、血清)、または組織 抽出物から得ることができる。別の実施形態では、試料は、鳥類、たとえば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、キジ、またはダチョウから得られる。たとえば、試料は卵、血液(たとえば、血清)、または組織ホモジネートから得ることができる。さらに別の実施形態では、試料は、たとえば、哺乳類細胞、鳥類細胞、魚類細胞、または昆虫細胞のような細胞を培養するのに用いられた細胞培地である。好ましい実施形態では、試料を提供する哺乳類、鳥類、または細胞は、遺伝子導入哺乳類、鳥類、または細胞、たとえば、目的の抗体たとえば外来抗体を産生する遺伝子導入哺乳類、鳥類、または細胞である。好ましい実施形態では、試料は、哺乳類、たとえば、目的の抗体たとえば外来抗体を産生する遺伝子導入哺乳類から得られた乳である。
【0053】
好ましい実施形態では、試料のpHを低下させる前に、試料は部分精製される。たとえば、試料を処理して非免疫グロブリンタンパク質、低分子、および脂質を除去することができる。そのような処理は、クロマトグラフィー段階、たとえば、イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティクロマトグラフィー、沈澱段階、および遠心分離段階を含みうる。たとえば、乳を処理してカゼインおよび可溶性脂質および非外来免疫グロブリンであるタンパク質を除去することができる;卵を処理してリゾチームを除去することができる;血液を処理して、たとえば、凝固を開始することによって、細胞を除去することができる;および、組織抽出物および細胞培地を処理して不溶性タンパク質および細胞片を除去することができる。一部の実施形態では、試料のpHを、酸、たとえば、酸性緩衝液、たとえば、グリシン−HCl、クエン酸、酢酸、ギ酸緩衝液、または酸性溶液、たとえば、HClまたはリン酸溶液を、試料に加えることによって低下させる。好ましい実施形態では、試料のpHを、グリシン−HCl緩衝液を試料に加えることによって低下させる。
【0054】
好ましい実施形態では、試料のpHを、半抗体の大部分が互いに解離するまで低下させる。一部の実施形態では、試料のpHを、半抗体の約60%、70%、80%、90%、95%、98%、またはより多くが互いに解離するまで低下させる。一部の実施形態では、試料のpHを、約5.0、4.5、4.0、3.5、またはそれ未満になるまで低下させ、それによって、半抗体の大部分が互いに解離した、結果として生じる溶液を提供する。一部の実施形態では、試料のpHを、約2.0ないし4.0になるまで低下させる。好ましい実施形態では、試料のpHを、約3.5になるまで低下させる。
【0055】
好ましい実施形態では、イオン交換カラムは陽イオン交換カラムである。
【0056】
一部の実施形態では、イオン交換カラムは試料中に存在する抗体の大部分を保持する(すなわち、結合する)。一部の実施形態では、イオン交換カラムは試料中に存在する抗体の約51%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、またはより多くを保持する(すなわち、結合する)。好ましい実施形態では、イオン交換カラムは試料中に存在する半抗体の約51%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、またはより多くを保持する(すなわち、結合する)。好ましい実施形態では、イオン交換カラムは試料中に存在する完全な抗体の約51%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、またはより多くを保持する(すなわち、結合する)。
【0057】
好ましい実施形態では、イオン交換カラムは、たとえば、約5.0、4.5、4.0、3.5、またはそれ未満のpHの、低pH条件下で半抗体と結合する。より好ましい実施形態では、イオン交換カラムは低pH条件下で半抗体と結合するが、しかしたとえば、約6.5、7.0、7.5、またはより高いpHの、中性ないし高pHの条件下では結合しない。
【0058】
好ましい実施形態では、イオン交換カラムは、たとえば、約5.0、4.5、4.0、3.5、またはそれ未満のpHの、低pH条件下で完全な抗体と結合する。より好ましい実施形態では、イオン交換カラムは低pH条件、およびたとえば、約6.5、7.0、7.5、またはより高いpHの、中性ないし高pHの条件下で、完全な抗体と結合する。
【0059】
一部の実施形態では、カラム内に存在する緩衝液のpHを高める、カラムに加えられた緩衝液(すなわち、「高pH緩衝液」)は、約4.0ないし8.0のpHを有する。一部の実施形態では、高pH緩衝液は、たとえば、MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)、HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N'[4−ブタンスルホン酸)、酢酸緩衝液、またはその混合物を含む。一部の実施形態では、高pH緩衝液トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)。緩衝液のリストはまた、塩化ナトリウムを含むかまたは含まないリン酸緩衝液を含む。これらの緩衝液の一部は、ポリソルベート20またはポリソルベート80またはCHAPSまたはコール酸のようなイオン性または非イオン性界面活性剤を含んでいてもまたは含まなくてもよい。
【0060】
好ましい実施形態では、高pH緩衝液は約4.0ないし8.0のpHを有し、HEPES−MES−酢酸緩衝液を含む。
【0061】
好ましい実施形態では、半抗体は、カラム内に存在する緩衝液のpHを約6.5、7.0、7.5、またはより高く上昇させることによってカラムから溶出される。好ましい実施形態では、半抗体の大部分、たとえば、半抗体の75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはより多くは、カラム内に存在する緩衝液のpHを約6.5、7.0、7.5、またはより高く上昇させることによってカラムから溶出される。好ましい実施形態では、溶出された半抗体は約75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはより多い完全な抗体である。すなわち、半Abを溶出する際、結果として生じる産物は完全な抗体と考えることができ、または特定の純度レベルを有する産物のレベルとして表すことができる。たとえば、本発明の目的のためには、Abのうちどれだけが150kDであるかを百分率の形で表す。
【0062】
好ましい実施形態では、カラム内に存在する緩衝液のpHを約6.5、7.0、7.5、またはそれより高くまで上昇させる場合、完全な抗体はカラムに結合したまま保たれる。好ましい実施形態では、完全な抗体の大部分、たとえば、完全な抗体の80%、90%、95%、98%、99%、またはより多くが、カラム内に存在する緩衝液のpHを約6.5、7.0、7.5、またはそれより高く上昇までさせた後にカラムに結合したまま保たれる。
【0063】
一部の実施形態では、カラムに加えられる高pH緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHが、1個以上の段階から成る段階グラジエントとして上昇するように加えられる。別の実施形態では、カラムに加えられる高pH緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHが直線グラジエントとして上昇するように加えられる。別の実施形態では、カラムに加えられる高pH緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHがまず段階グラジエントとして、たとえば、pH約4.0、4.5、または5.0まで、次いで、直線グラジエントとして、たとえば、約6.5、7.0、7.5、またはそれより高いpHまで、上昇するように加えられる。さらに別の実施形態では、カラムに加えられる緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHがまず直線グラジエントとして、たとえば、pH約4.5、5.0、または5.5まで、次いで段階グラジエントとして、たとえば、約6.5、7.0、7.5、またはそれより高いpHまで上昇するように加えられる。好ましい実施形態では、カラムに加えられる緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のpHが段階グラジエントとしてpH約4.5まで、次いで直線グラジエントとしてpH約7.0まで上昇するように加えられる。直線グラジエント表記もまた使用できることにも注意すべきである。
【0064】
一部の実施形態では、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度を上昇させる、カラムに加えられた緩衝液(すなわち、「高イオン強度緩衝液」)は、高濃度を有する1種類以上の塩を含む。一部の実施形態では、高イオン強度緩衝液は、少なくとも1種類の塩、たとえば、NaCl、KCl、または、おそらく少なくとも5mM、100mM、150mM、またはより高い濃度で存在する、上昇した緩衝液濃度を含む。好ましい実施形態では、高イオン強度緩衝液は、少なくとも約5mMのNaCl、より好ましくは約100mM、またはより高いNaClを含む。一部の実施形態では、高イオン強度緩衝液はさらに、MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)、HEPES(N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N'[4−ブタンスルホン酸)、酢酸緩衝液、またはその混合物を含む。一部の実施形態では、高pH緩衝液はトリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)でありうる。緩衝液のリストはまた、塩化ナトリウムを含むかまたは含まないリン酸緩衝液を含む。これらの緩衝液の一部は、ポリソルベート20またはポリソルベート80またはCHAPSまたはコール酸のようなイオン性または非イオン性界面活性剤を含みうるかまたは含まないことができる。
【0065】
一部の実施形態では、完全な抗体は、カラム内に存在する緩衝液のpHおよびイオン強度の両方を上昇させることによってカラムから溶出される。好ましい実施形態では、完全な抗体は、1)カラム内に存在する緩衝液のpHを、たとえば、約6.5、7.0、7.5、またはそれより高く上昇させること、および2)カラム内に存在する緩衝液のイオン強度を、たとえば、高イオン強度緩衝液のイオン強度まで上昇させること:によってカラムから溶出される。特に好ましい実施形態では、完全な抗体は、カラム内に存在する緩衝液のpHを約7.0に上昇させることおよびカラム内に存在する緩衝液のイオン強度を高イオン強度緩衝液のイオン強度まで上昇させることによってカラムから溶出される。
【0066】
好ましい実施形態では、完全な抗体の大部分、たとえば、完全な抗体の51%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、またはより多くは、カラム内に存在する緩衝液のpHを、たとえば、pH約6.5、7.0、7.5、またはそれより高くまで上昇させること、および、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度を、たとえば、高イオン強度緩衝液の値まで上昇させることによって、カラムから溶出される。好ましい実施形態では、溶出された完全な抗体の純度は、約70%、75%、80%、85%、90%、またはそれより高い。
【0067】
一部の実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が、1個以上の段階を含む段階グラジエントとして上昇するように加えられる。別の実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が直線グラジエントとして上昇するように加えられる。別の実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度がまず段階グラジエントとして、次いで直線グラジエントとして上昇するように加えられる。さらに別の実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度がまず直線グラジエントとして、次いで段階グラジエントとして上昇するように加えられる。好ましい実施形態では、カラムに加えられる高イオン強度緩衝液は、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が、5mM NaCl溶液とほぼ等しいイオン強度まで上昇するように加えられる。
【0068】
好ましい実施形態では、完全な抗体をカラムから溶出させる前に半抗体をカラムから溶出させ、それによって半抗体を完全な抗体から分離することを可能にする。特に好ましい実施形態では、完全な抗体をカラムから溶出させる前に、半抗体の大部分、たとえば、半抗体の75%、80%、85%、90%、95%、98%、またはそれより多くを、カラムから溶出させ、それによって半抗体を完全な抗体から分離することを可能にする。
【0069】
別の一態様では、本発明は、ここに記載する方法によって得られた精製半抗体調製物に関する。
【0070】
好ましい実施形態では、精製半抗体調製物は、ガンマ免疫グロブリンを含む分子、たとえば、IgG、IgG、IgG、またはIgG半抗体を含む。好ましくは、精製半抗体調製物はIgG半抗体を含む。別の実施形態では、精製半抗体調製物は、IgA、IgD、IgE、またはIgM、半抗体を含みうる。
【0071】
一部の実施形態では、精製半抗体調製物は、天然に存在する半抗体、たとえば、哺乳類において産生された半抗体、たとえば、マウスモノクローナル半抗体またはヒト半抗体を含む。別の実施形態では、精製半抗体調製物は、改変された半抗体、たとえば、組み換え半抗体、たとえば、可変領域が別のポリペプチドまたは半抗体断片で置換された、キメラ半抗体、ヒト化半抗体、Fc融合タンパク質、たとえば、F(ab)断片から得られた半抗体を含む。さらに別の実施形態では、精製半抗体調製物は、たとえば、特定のリガンドについての親和性および特異性に関して、たとえば、ファージディスプレイ法によって、改変されている半抗体を含む。半抗体は、たとえば、軽鎖または重鎖の定常領域または可変領域において改変されている。たとえば、半抗体は、たとえば、欠失、挿入、または置換によって、半抗体の可変領域の1個以上のCDRおよび/または骨格部分内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、および/または、半抗体の定常領域内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、改変されている。
【0072】
一部の実施形態では、精製半抗体調製物は、重鎖ヒンジ領域の改変を含む半抗体を含む。たとえば、ヒンジ領域またはその一部が、たとえば、欠失、挿入、またはたとえば、同一のクラスおよびサブクラスの天然に存在する抗体中に存在するヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部での置換によって、改変されている。たとえば、IgG1、IgG2、またはIgG3半抗体が、IgG4型ヒンジ領域を含みうる。
【0073】
一部の実施形態では、精製半抗体調製物中に存在する半抗体は、その調製物中に存在する総抗体の80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはより多くを構成する。好ましい実施形態では、精製半抗体調製物中に存在する半抗体は、その調製物中に存在する総抗体の少なくとも80%を構成する。
【0074】
一部の実施形態では、精製半抗体調製物は、夾雑物、たとえば、タンパク質、低分子、核酸および/または脂質夾雑物を含む。そのような夾雑物は、たとえば、精製半抗体調製物が得られた試料および/または調製物を得るのに用いられた処理の反映でありうる。たとえば、精製半抗体調製物が乳の試料から得られた場合、調製物は、典型的には乳で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、カゼイン、ラクトース、リン酸カルシウム、カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ラクトフェリン、および/または内因性免疫グロブリンのような痕跡量の血清タンパク質内因性免疫グロブリンを含みうる。卵から得られた場合、調製物は、典型的には卵で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、リゾチーム、卵白アルブミンを含みうる。動物血清から得られた場合、調製物は、典型的には血液で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、グルコース、コレステロール、ヘモグロビン、アルブミン、内因性抗体を含みうる。本発明の方法によって精製されうる最終起源または供給液では、調製物が細胞培地から得られた場合、調製物は、典型的には細胞培地で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、細胞外マトリクスタンパク質、ペニシリン、グルコースおよび細胞培地起源の他の成分を含みうる。
【0075】
別の一態様では、本発明は、ここに記載される方法によって得られた精製された完全な抗体の調製物に関する。
【0076】
好ましい実施形態では、精製された完全な抗体の調製物は、ガンマ免疫グロブリンを含む分子、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4完全な抗体を含む。好ましくは、精製完全な抗体の調製物はIgG4完全な抗体を含む。別の実施形態では、精製完全な抗体の調製物は、IgA、IgD、IgE、またはIgM、完全な抗体を含む。
【0077】
一部の実施形態では、精製された完全な抗体の調製物は、天然に存在する完全な抗体、たとえば、哺乳類において産生された完全な抗体、たとえば、マウスまたはラットモノクローナル完全な抗体またはヒト完全な抗体を含む。別の実施形態では、精製された完全な抗体の調製物は、改変された完全な抗体、たとえば、組み換え完全な抗体、たとえば、キメラ完全な抗体、ヒト化完全な抗体、Fc融合タンパク質またはその断片または完全な抗体断片、たとえば、F(ab)断片を含む。さらに別の実施形態では、精製された完全な抗体の調製物は、たとえば、特定のリガンドについての親和性および特異性に関して、たとえば、ファージディスプレイ法によって、改変されている完全な抗体を含む。完全な抗体は、たとえば、軽鎖または重鎖の定常領域または可変領域において改変されている。たとえば、完全な抗体は、たとえば、欠失、挿入、または置換によって、完全な抗体の可変領域の1個以上のCDRおよび/または骨格部分内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、および/または、完全な抗体の定常領域内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、改変されている。
【0078】
一部の実施形態では、精製された完全な抗体の調製物は、重鎖ヒンジ領域の改変を含む完全な抗体を含む。たとえば、ヒンジ領域またはその一部が、たとえば、欠失、挿入、またはたとえば、同一のクラスおよびサブクラスの天然に存在する抗体中に存在するヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部での置換によって、改変されている。たとえば、IgG1、IgG2、またはIgG3完全な抗体が、IgG4型ヒンジ領域を含みうる。
【0079】
一部の実施形態では、精製された完全な抗体の調製物中に存在する完全な抗体は、その調製物中に存在する総抗体の60%、70%、80%、85%、90%、またはより多くを構成する。好ましい実施形態では、精製された完全な抗体の調製物中に存在する完全な抗体は、その調製物中に存在する総抗体の少なくとも90%を構成する。
【0080】
一部の実施形態では、完全な抗体の調製物は、完全な抗体および半抗体の両方を含む。好ましい実施形態では、完全な抗体は、そのような調製物中に存在する抗体の総量の少なくとも80%、85%、90%、95%、またはより多くを構成する。特に好ましい実施形態では、完全な抗体は、そのような調製物中に存在する抗体の総量の少なくとも90%以上を構成する。
【0081】
別の一態様では、本発明は精製半抗体調製物に関する。好ましい実施形態では、精製半抗体調製物は、ガンマ免疫グロブリンを含む分子、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4半抗体を含む。特に好ましい実施形態では、精製半抗体調製物はIgG4半抗体を含む。別の実施形態では、精製半抗体調製物は、IgA、IgD、IgE、またはIgM、半抗体を含む。
【0082】
一部の実施形態では、精製半抗体調製物は、天然に存在する半抗体、たとえば、哺乳類において産生された半抗体、たとえば、マウスモノクローナル半抗体またはヒト半抗体を含む。別の実施形態では、精製半抗体調製物は、改変された半抗体、たとえば、組み換え半抗体、たとえば、キメラ半抗体、ヒト化半抗体、または半抗体断片、たとえば、F(ab)断片から得られた半抗体を含む。さらに別の実施形態では、精製半抗体調製物は、たとえば、特定のリガンドについての親和性および特異性に関して、たとえば、ファージディスプレイ法によって、改変されている半抗体を含む。半抗体は、たとえば、軽鎖または重鎖の定常領域または可変領域において改変されている。たとえば、半抗体は、たとえば、欠失、挿入、または置換によって、半抗体の可変領域の1個以上のCDRおよび/または骨格部分内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、および/または、半抗体の定常領域内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、改変されている。
【0083】
一部の実施形態では、精製半抗体調製物は、重鎖ヒンジ領域の改変を含む半抗体を含む。たとえば、ヒンジ領域またはその一部が、たとえば、欠失、挿入、またはたとえば、同一のクラスおよびサブクラスの天然に存在する抗体中に存在するヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部での置換によって、改変されている。たとえば、IgG1、IgG2、またはIgG3半抗体が、IgG4型ヒンジ領域を含みうる。
【0084】
一部の実施形態では、精製半抗体調製物中に存在する半抗体は、その調製物中に存在する総抗体の80%、85%、90%、95%、98%、99%、またはより多くを構成する。好ましい実施形態では、精製半抗体調製物中に存在する半抗体は、その調製物中に存在する総抗体の少なくとも99%を構成する。
【0085】
一部の実施形態では、精製半抗体調製物は、夾雑物、たとえば、タンパク質、低分子、および/または脂質夾雑物を含む。そのような夾雑物は、たとえば、精製半抗体調製物が得られた試料および/または調製物を得るのに用いられた処理の反映でありうる。たとえば、精製半抗体調製物が乳の試料から得られた場合、調製物は、典型的には乳で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、カゼイン、ラクトース、リン酸カルシウム、カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ラクトフェリン、および/または内因性免疫グロブリンのような痕跡量の血清タンパク質内因性免疫グロブリン、などを含む可能性があり、調製物が卵から得られた場合、調製物は、典型的には卵で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、リゾチーム、などを含む可能性があり、調製物血清から得られた場合、調製物は、典型的には血液で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、グルコース、コレステロール、ヘモグロビン、アルブミン、内因性抗体、などを含む可能性があり、または調製物が細胞培地から得られた場合、典型的には細胞培地で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、細胞外マトリクスタンパク質、ペニシリン、グルコースおよび細胞培地起源の他の成分を含む可能性がある。
【0086】
別の一態様では、本発明は、半抗体と完全な抗体の分離を含む、精製抗体の調製に関する。
【0087】
好ましい実施形態では、精製抗体調製物は、ガンマ免疫グロブリンを含む分子、たとえば、IgG、IgG、IgG、またはIgG完全な抗体および半抗体を含む。特に好ましい実施形態では、精製抗体調製物はIgG完全な抗体および半抗体を含む。別の実施形態では、精製抗体調製物は、IgA、IgD、IgE、またはIgM、完全な抗体および半抗体を含む。これらの抗体は任意の哺乳類の抗体であることができるが、好ましくは完全なヒト抗体またはヒト化抗体である。
【0088】
一部の実施形態では、精製抗体調製物は、天然に存在する抗体、たとえば、哺乳類において産生された抗体、たとえば、マウスまたはラットモノクローナル抗体またはヒト抗体を含む。別の実施形態では、精製抗体調製物は、改変された抗体、たとえば、組み換え抗体、たとえば、キメラ抗体、遺伝子導入抗体、ヒト化抗体、または抗体断片、たとえば、F(ab)およびF(ab)断片を含む。さらに別の実施形態では、精製抗体調製物は、たとえば、特定のリガンドについての親和性および特異性に関して、たとえば、ファージディスプレイ法によって、改変されている抗体を含む。抗体は、たとえば、軽鎖または重鎖の定常領域または可変領域において改変されている。たとえば、抗体は、たとえば、欠失、挿入、または置換によって、抗体の可変領域の1個以上のCDRおよび/または骨格部分内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、および/または、抗体の定常領域内に存在する1個以上のアミノ酸残基で、改変されている。
【0089】
一部の実施形態では、精製抗体調製物は重鎖ヒンジ領域の改変を含む抗体を含む。たとえば、ヒンジ領域またはその一部が、たとえば、欠失、挿入、またはたとえば、同一のクラスおよびサブクラスの天然に存在する抗体中に存在するヒンジ領域とは異なるヒンジ領域またはその一部での置換によって、改変されている。たとえば、IgG1、IgG2、またはIgG3抗体が、IgG4型ヒンジ領域を含みうる。
【0090】
一部の実施形態では、精製抗体調製物中に存在する完全な抗体は、その調製物中に存在する総抗体の60%、70%、80%、85%、90%、またはより多くを構成する。好ましい実施形態では、精製抗体調製物中に存在する完全な抗体は、その調製物中に存在する総抗体の少なくとも70%を構成する。
【0091】
一部の実施形態では、精製抗体調製物は、夾雑物、たとえば、タンパク質、核酸、低分子、および/または脂質夾雑物を含む。そのような夾雑物は、精製抗体調製物が得られた試料および/または調製物を得るのに用いられた処理の反映でありうる。たとえば、精製抗体調製物が乳の試料から得られた場合、調製物は、典型的には乳で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、カゼイン、ラクトース、リン酸カルシウム、カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、ラクトフェリン、および/または内因性免疫グロブリンのような痕跡量の血清タンパク質内因性免疫グロブリン、などを含みうる。調製物が卵から得られた場合、調製物は、典型的には卵で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、リゾチーム、卵白アルブミンを含みうる。調製物が血清から得られた場合、調製物は、典型的には血液で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、グルコース、コレステロール、ヘモグロビン、アルブミン、内因性抗体を含みうる。最後に、調製物が細胞培地から得られた場合、調製物は、典型的には細胞培地で見出される夾雑タンパク質または低分子、たとえば、細胞外マトリクスタンパク質、ペニシリン、グルコース、および細胞培地またはバイオリアクター容器起源の他の成分を含みうる。
【実施例】
【0092】
実施例1
hIgG4の2種類の型の最適化された分離
1.ヤギ乳からのrhIgG4の単離
2.80kD種と150kD種の分離
3.調製(formulation)
【0093】
1.ヤギ乳からのrhIgG4の単離
ヤギ乳は二層十字流濾過によって清澄化し、清澄化された乳をPOROSプロテインA50カラムに負荷容量10mg/mLにて加えた。線速度120cm/hr
溶出は0.2Mグリシン−HCl pH3.5を用いて実施した。溶出されたタンパク質のpHを3.6に調整した
抗体を室温にて1時間インキュベートした。
【0094】
2.80kD種と150kD種の分離(半IgGと完全なIgG
pHを4.5に調整し、材料をSource Sカラムに負荷した
負荷容量9mg/mL
線速度120cm/hr
80kD種(半抗体)の溶出は、pH4.5ないしpH7.3のpHグラジエントを用いることによって実施した
150kD種(完全な抗体)の溶出は、NaCl濃度の小さい増加(0〜10mM)を用いることによって実施した。
【0095】
3.調製(formulation)
完全な抗体の画分および半抗体画分を集め、濃縮し、緩衝液をTween80添加PBS pH6.0に交換した。
【表1】

【表2】

【0096】
遺伝子導入動物における抗体産生
免疫グロブリンは、通常は循環Bリンパ球から合成、修飾、組立、および分泌されるヘテロ多量体タンパク質である。組み換えDNA技術を用いて、Bリンパ球以外の細胞を、免疫グロブリン遺伝子を発現するようにプログラムすることが可能である。この試みが直面する問題はいくつかの因子に由来する;1)免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の両方が適当なレベルで同時発現されなければならない;2)未完成の免疫グロブリンポリペプチドは、異種細胞では十分な信頼性または効率で起こらない可能性があるさまざまな翻訳同時修飾および翻訳後修飾を受ける;3)免疫グロブリンは組立のために補助的なシャペロンタンパク質を必要とする;4)細胞の合成および分泌能力が多量の異種タンパク質を分泌するのに不適当である可能性がある;および5)分泌された免疫グロブリンが異種細胞の細胞外環境において不安定である可能性がある。
【0097】
免疫グロブリンは多数の治療用途、診断用途および工業用途を有するため、これらのタンパク質を再現可能に高レベルで、機能する立体構造で、および容易に採集および精製が可能な形で、製造できる発現系が本分野で必要とされている。遺伝子導入動物技術の発達は、遺伝子にプログラムされたタンパク質工場として大型動物を用いることの可能性を高めている。国際公開第90/04036号パンフレット(1990年4月19日公開)は、免疫グロブリン発現のための遺伝子導入技術の使用を開示する。国際公開第92/03918号パンフレット(1992年3月19日)、および国際公開第93/12227号パンフレット(1993年6月24日)は、遺伝子導入動物の生殖細胞系列への、再構成されていない免疫グロブリン遺伝子の導入を教示する。完全な免疫グロブリン遺伝子(それぞれのプロモーター領域を含む)の使用は、リンパ球におけるそれらの発現および宿主動物の血流中への分泌を結果として生じる;これは、宿主の内因性免疫グロブリンの発現を抑制するための戦略を必要とさせ、および、タンパク質分解酵素を含む多数の他のタンパク質を含む血清から、免疫グロブリンを精製する問題を引き起こす。さらに、遺伝子導入手法を選択する場合、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方を、同時発現を可能にする方法で宿主ゲノムに組み込まなければならない。
【0098】
本発明は、遺伝子導入動物の乳中に分泌されるモノクローナル抗体の産生のための方法、およびそのような動物の作製のための方法に関する。これは、乳腺上皮細胞で優先的に発現されるプロモーター配列の下流に、特定の対の免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードするDNA部分がクローニングされたDNA構造を作製することによって達成される。プロモーターと結合した重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を含む組み換えDNAを次いで移植前胚へ同時注入する。両方の導入遺伝子の存在について子孫をスクリーニングする。これらの系統に由来する代表的な雌を次いで搾乳し、乳をモノクローナル抗体の存在について分析する。抗体が存在するためには、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方が同一細胞で同時に発現されなければならない。抗体を乳から精製することができ、または免疫グロブリンを含む乳自体を用いてレシピエントへ抗体を送達することができる。
【0099】
本発明において有用な免疫グロブリン遺伝子は、たとえば個々のB細胞クローンまたはそれに由来するハイブリドーマのような、天然起源から得ることができる。または、それらは軽鎖および重鎖可変領域が単一ポリペプチドの一部として発現される合成一本鎖抗体を含みうる。さらに、アミノ酸配列を変化させるかまたは変化させないヌクレオチド置換によって、配列の付加または欠失によって、またはポリペプチドの異なる領域が異なる起源に由来するハイブリッド遺伝子の作製によって、予測的に改変されている組み換え抗体遺伝子を用いることができる。抗体遺伝子は元来、極めて多様であり、したがって相当な変化を必然的に許容する。本発明の方法によって抗体を産生するための唯一の制限は、抗体は機能する立体構造へ組み立てられて安定型で乳中へ分泌されなければならないということであると当業者には理解される。
【0100】
本発明の実施において有用な転写プロモーターは、乳腺上皮細胞で優先的に活性化されるプロモーターであり、カゼイン、ベータラクトグロブリン(Clark et al.,(1989) Bio/Technology 7; 487-492)、乳清酸性タンパク質(Gordon et al., (1987)Bio/ Technology 5; 1183-1187)、およびラクトアルブミン(Soulier et al., (1992) FEBS Letts. 297; 13)といった乳タンパク質をコードする遺伝子を調節するプロモーターを含む。カゼインプロモーターは、任意の哺乳類種のアルファ、ベータ、またはカッパカゼイン遺伝子に由来しうる;好ましいプロモーターはヤギベータ−カゼイン遺伝子に由来する(DiTullio, (1992) Bio/ Technology 10; 74-77)。
【0101】
本発明における使用のためには、下記の方法論を用いることができる;独自のXhoI制限部位をプロモーター配列の3'末端に導入し、免疫グロブリンコード配列のルーチン挿入を可能にする。好ましくは、挿入された免疫グロブリン遺伝子は、乳腺特異的遺伝子由来の同族ゲノム配列が3'側に隣接し、ポリアデニル化部位および転写物安定化配列を提供する。その構造のin vivo転写は、結果として、カゼイン由来5'非翻訳配列を免疫グロブリン遺伝子の翻訳開始コドンの上流に、および3'非翻訳配列を免疫グロブリン遺伝子の翻訳終止コドンの下流に含む、安定なmRNAの産生を生じる。最終的に、カセット全体(すなわちプロモーター−免疫グロブリン−3'領域)に、プロモーター−cDNAカセットが容易に単一断片として切り出されることを可能にする制限部位が隣接する。これは、受精卵への注入前に、不要な原核ベクター由来DNA配列の除去を促進する。
【0102】
プロモーターと結合した免疫グロブリン重鎖および軽鎖DNAは次いで、哺乳類、たとえば雌牛、ヒツジ、ヤギ、マウス、雄牛、ラクダ、またはブタの生殖細胞系列へ導入される。哺乳類はここでは、乳腺を持ち乳を産生する、ヒトを除くすべての動物と定義される。乳を大量に長期にわたって産生する哺乳類種が好ましい。典型的には、DNAを受精卵の前核へ注入し、受精卵を次いでレシピエント雌の子宮内へ移植し、妊娠させる。出生後、遺伝子導入と推定される動物を、導入されたDNAの存在について試験する。これは、血液細胞または他の利用可能な組織から抽出されたDNAの、レシピエント種のDNAとクロスハイブリダイゼーションを示さない注入遺伝子の一部をプローブとして用いるサザンブロットハイブリダイゼーションによって容易に達成される。重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子の両方の少なくとも1コピーの証拠を示す子孫を、以降の分析のために選択する。
【0103】
遺伝子導入雌を、乳中への免疫グロブリン分泌について、本分野で標準的である免疫学的方法のうち任意のものを用いて試験することができる(たとえばウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA)。この分析に用いられる抗免疫グロブリン抗体は、単離された重鎖または軽鎖を検出するポリクローナルまたはモノクローナル抗体、または完全に組み立てられた(H2L2)免疫グロブリンとだけ反応する他の抗体であることができる。
【0104】
組み換え免疫グロブリンはまた、その機能性、すなわち特定の抗原に対する特異性および親和性によって特徴づけられる。これは、Scatchard分析、固定化抗原への結合、などといった本分野で標準的である免疫学的方法を用いて達成される。任意の種の乳中の免疫グロブリンの安定性特性もまた、動物からの回収後に、漸増する時間インキュベートした乳に上記の検出法を適用することによって測定される。
【0105】
本発明の方法によって産生された免疫グロブリンを、固定化プロテインGへの吸着、カラムクロマトグラフィー、および抗体精製分野において当業者に既知である他の方法を用いて、乳から精製することができる。
【0106】
個々の遺伝子導入哺乳類における組み換え免疫グロブリンの産生のレベルは、受精卵への注入後の、導入遺伝子の組み込みの部位および方法によって主に決定される。したがって、注入された別々の卵に由来する別々の遺伝子導入子孫は、このパラメータに関して異なりうる。乳中の組み換え免疫グロブリンの量はしたがって代表的な子孫において監視され、産生が最高である雌が好ましい。
【0107】
当業者は、本発明の方法を用いて天然および合成免疫グロブリンの産生を最適化しうることを理解する。遺伝子導入動物の作製、重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の両方の存在についての試験、雌の子孫の乳中への免疫グロブリンの分泌の測定、および、最後に、結果として生じる抗体の品質の評価の段階を、異なる用途のための好ましい構造を確立するために、必要以上の実験無しに連続的に反復することができる。
【0108】
本発明によると、組み換え免疫グロブリンの性質およびその特異的使用方法は変化しうる。一実施形態では、本発明は乳から採取および精製され、精製された形で使用される抗体の、高レベル発現を包含する。高レベル発現はここでは、タンパク質約1mg/mlの産生と定義される。別の一実施形態では、望ましい抗体は、感染症に対してヒトに防御を提供するよう操作されている;治療投与はその時、乳を飲用することによって達成される。さらに別の一実施形態では、乳を分泌する動物が、その子孫に特異的に有益である抗体を産生するように操作され、子孫は哺乳を通じてその抗体を獲得する。さらに別の一実施形態では、動物は、乳を分泌する哺乳類自身を、乳房病原体、たとえば乳腺炎を生じる細菌から保護する抗体を産生する。
【0109】
本発明に従って産生された遺伝子導入抗体、組み換え抗体、またはキメラ抗体、(たとえば、半抗体および/または完全な抗体)は、患者への投与のための医薬組成物の調製物に、または疾患の診断に、といった幅広い治療手続に用途を見出す。たとえば、遺伝子導入によって産生された抗体は、本分野で既知である通り、抗関節炎薬または抗がん剤として有用でありうる。
【0110】
乳タンパク質特異的シグナルおよびプロモーター配列を用いる、遺伝子導入動物の乳中での組み換え抗体の商業的生産への遺伝子導入技術の応用は、抗体産生の従来の方法に対して顕著な利点を提供する。これらの利点は、必要な設備投資の総額の減少、製品開発ライフサイクルの初期における施設構築のためのキャピタル・コミットメントの必要性の消失、および抗体を産生するためのハードについての単位当たり直接生産コストがより低いことを含む。中心的に重要なのは、完全な抗体と、すべてのジスルフィド結合を完全な形では有しない抗体との分離を可能にする、本発明によって利用可能になった分離法である。実際、遺伝子導入産生は、商業生産の唯一の技術的におよび経済的に実現可能な方法を示しうる。
【0111】
本発明の方法は、通常は非分泌であるタンパク質、たとえば、遺伝子導入哺乳類の乳中の抗体または抗体断片の、効率的な分泌に繋がる戦略を示す。ヤギβ−カゼインシグナルペプチド、またはβ−カゼインシグナルペプチドおよびβ−カゼインのN末端部分を、抗体のDNA転写物のN末端部分へ加えることが、これらの通常は細胞質に存在するタンパク質を遺伝子導入マウスおよび他の遺伝子導入動物の乳中へ分泌させるのに十分であることがここで実証されている。このように、本発明の方法は、望ましい抗体またはその断片の、遺伝子導入動物の乳中への、信頼できる一貫した産生を促進する。
【0112】
乳特異的プロモーター
本発明の実施において有用な転写プロモーターは、乳腺上皮細胞で優先的に活性化されるプロモーターであり、カゼイン、ベータラクトグロブリン(Clark et al., (1989) Bio/Technology 7; 487-492)、乳清酸性タンパク質(Gordon et al., (1987) Bio/ Technology 5; 1183-1187)、およびラクトアルブミン(Soulier et al., (1992) FEBS Letts. 297; 13)といった乳タンパク質をコードする遺伝子を調節するプロモーターを含む。カゼインプロモーターは、任意の哺乳類種のアルファ、ベータ、ガンマ、またはカッパカゼイン遺伝子に由来しうる;好ましいプロモーターはヤギベータカゼイン遺伝子に由来する(DiTullio, (1992) Bio/ Technology 10; 74-77)。乳特異的タンパク質プロモーターまたは乳腺組織で特異的に活性化されるプロモーターは、cDNAまたはゲノム配列のどちらかに由来しうる。好ましくは,それらはゲノム起源である。
【0113】
DNA配列情報は、上に列挙した乳腺特異的遺伝子のすべてについて、少なくとも1種類、およびしばしば数種類の生物において入手可能である。たとえば、Richards et al., J. Biol. Chem. 256,526-532 (1981)(α−ラクトアルブミン、ラット); Campbell et al.,Nucleic Acids Res. 12,8685-8697 (1984) (ラットWAP); Jones et al., J. Biol. Chem. 260,7042-7050 (1985) (ラットβ−カゼイン) ; Yu-Lee & Rosen, J. Biol. Chem. 258,10794- 10804 (1983) (ラットγ−カゼイン) ; Hall, Biochem. J. 242,735-742 (1987) (α−ラクトアルブミン、ヒト); Stewart, Nucleic Acids Res. 12,389 (1984) (ウシαs1およびκカゼインcDNA); Gorodetsky et al., Gene 66, 87-96 (1988) (ウシβカセ゛イン); Alexander et al.,Eur. J. Biochem. 178,395-401 (1988)(ウシκカゼイン); Brignon et al., FEBS Lett. 188,48-55 (1977) (ウシαS2カゼイン); Jamieson et al., Gene 61,85-90 (1987), Ivanov et al., Biol. Chem. Hoppe-Seyler 369,425-429 (1988), Alexander et al.,Nucleic Acids Res. 17, 6739 (1989) (ウシβラクトグロブリン); Vilotte et al., Biochimie 69,609-620 (1987) (ウシα−ラクトアルブミン)を参照。さまざまな乳タンパク質遺伝子の構造および機能は、Mercier & Vilotte,J. Dairy Sci. 76,3079-3098 (1993)によって総説される(その全体が参照により本開示に含まれる)。追加の配列データが必要でありうる程度まで、すでに得られた領域に隣接する配列は、その既存の配列をプローブとして用いることによって容易にクローニングすることができる。異なる生物に由来する乳腺特異的調節配列は、そのような生物に由来するライブラリを、既知の同族ヌクレオチド配列、または同族タンパク質に対する抗体を、プローブとして用いてスクリーニングすることによって同様に得られる。
【0114】
シグナル配列
本発明に従って有用であるシグナル配列の中に、乳特異的シグナル配列または、真核タンパク質または原核タンパク質の分泌を結果として生じる他のシグナル配列がある。好ましくは、シグナル配列は乳特異的シグナル配列から選択される、すなわち、乳中に分泌される産物をコードする遺伝子に由来する。非常に好ましくは、乳特異的シグナル配列は本発明の発現系に用いられる乳特異的プロモーターに関連する。シグナル配列の大きさは本発明に関しては重要でない。必要なのは、シグナル配列が、目的の組み換えタンパク質の分泌をたとえば乳腺組織において引き起こすために十分な大きさであるということだけである。たとえば、カゼイン、たとえば、アルファ、ベータ、ガンマまたはカッパカゼイン、ベータラクトグロブリン、乳清酸性タンパク質、およびラクトアルブミンをコードする遺伝子に由来するシグナル配列は本発明において有用である。好ましいシグナル配列はヤギβ−カゼインシグナル配列である。
【0115】
たとえば、肝細胞、腎細胞、または膵細胞によって分泌されるタンパク質といった、他の分泌タンパク質からのシグナル配列もまた用いることができる。
【0116】
結果として、完全な抗体からの半抗体の分離のための改良された方法をここに提供する。本発明の実施形態は、さまざまな開始材料について見出される際、単に本発明の原理の応用の一例に過ぎないことを理解すべきである。完全な抗体および半抗体の分離および精製使用のための改良された方法のための開示された方法の要素の形態、使用方法、および用途における変化は新規であり、および本発明の精神または付属の請求項の範囲を離れることなく改変および/または使用することができることは、前記の説明から明らかになる。
【参考文献】
【0117】

【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1はIgG4精製および150kD種の濃縮のフローチャートを示す。
【図2】図2は、さまざまな濃度のクエン酸(図2A〜図2C)を用いたIgG4解離の動態試験を示す。
【図3】図3AはpH3.0および100mMグリシンでのIgG4解離の動態試験、図3BはpH3.0および200mMグリシンでのIgG4解離の動態試験、図3CはpH3.5および100mMグリシンでのIgG4解離の動態試験、図3DはpH3.5および200mMグリシンでのIgG4解離の動態試験。
【図4】図4は抗体解離の動態試験とその後のサイズ排除クロマトグラフィー。
【図5】図5はIgG4r−Mab(組み換えモノクローナル抗体)の80kD種と150kD種の分離。(精製物質の安定性を最大3ヶ月間試験した。凝集または分解は検出されなかった。)
【図6】図6は陽イオン交換クロマトグラフィー画分の等電点電気泳動分析。
【図7】図7はIgG4陽イオン交換2/5/02画分のN−結合型オリゴ糖プロファイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgG半抗体を、該IgG半抗体と同一のアイソタイプの完全なIgG抗体から分離する方法であって:
IgG半抗体および該IgG半抗体と同一のアイソタイプの完全なIgG抗体の混合物を含む試料を得る;
前記半抗体が互いに解離するように前記試料のpHを低下させて、溶液を形成する;および
前記溶液を、前記IgG半抗体と前記完全なIgG抗体の移動度を差別化して遅らせるカラムに装填する;工程を含む方法。
【請求項2】
前記カラムが、前記溶液中に存在するIgG半抗体および完全なIgG抗体の両方を保持することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カラムがイオン交換カラムであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記イオン交換カラムが陽イオン交換カラムであることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記カラムを、該カラムに保持されたIgG半抗体を選択的に溶出する条件にさらす工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記カラムに保持されたIgG半抗体を選択的に溶出する条件が、カラム内に存在する緩衝液のpHがIgG半抗体を選択的に溶出させるのに十分なレベルまで上昇するように緩衝液をカラムに加えることを含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
カラム内に存在する緩衝液のpHを約7.0以上に上昇させることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記カラムを、該カラムに保持された完全なIgG抗体を溶出する条件にさらす工程をさらに含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記完全なIgG抗体を溶出する条件が、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が完全なIgG抗体を溶出させるのに十分なレベルまで上昇するように緩衝液をカラムに加えることを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記IgG半抗体および完全なIgG抗体がIgG4アイソタイプであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記IgG半抗体および完全なIgG抗体が、IgG1、IgG2、またはIgG3アイソタイプであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記IgG半抗体および完全なIgG抗体が、哺乳類IgG半抗体および完全なIgG抗体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳類IgG半抗体および完全なIgG抗体が、ヒトIgG半抗体および完全なIgG抗体であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳類IgG半抗体および完全なIgG抗体が、キメラIgG半抗体および完全なIgG抗体であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳類IgG半抗体および完全なIgG抗体が、F(ab)半抗体およびF(ab)の完全な抗体であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、乳から得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記乳が、哺乳類に由来することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記乳が、有蹄類、ブタ、ウサギ、またはマウスに由来することを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、卵から得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記試料が、血清から得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記試料が、細胞培地から得られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項22】
請求項1記載の方法によって得られた精製IgG半抗体調製物。
【請求項23】
抗体がIgG4アイソタイプであることを特徴とする請求項22の精製IgG半抗体調製物。
【請求項24】
半抗体が調製物中の抗体総量の少なくとも90%を占めることを特徴とする請求項22の精製IgG半抗体調製物。
【請求項25】
半抗体が調製物中の抗体の総量の少なくとも95%を占めることを特徴とする請求項24の精製IgG半抗体調製物。
【請求項26】
半抗体が調製物中の抗体の総量の少なくとも99%を占めることを特徴とする請求項25の精製IgG半抗体調製物。
【請求項27】
請求項1記載の方法によって処理される前の試料と比較して、完全な抗体が調製物中の総抗体のより大きな部分を占めることを特徴とする、請求項1記載の方法によって得られた精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項28】
抗体がIgG4アイソタイプであることを特徴とする、請求項27記載の精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項29】
完全な抗体が調製物中の総抗体の少なくとも80%を占めることを特徴とする、請求項27記載の精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項30】
完全な抗体が調製物中の総抗体の少なくとも90%を占めることを特徴とする、請求項29記載の精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項31】
IgG半抗体を、該IgG半抗体と同一のアイソタイプの完全なIgG抗体から分離する方法であって:
IgG半抗体および該IgG半抗体と同一のアイソタイプの完全なIgG抗体の混合物を含む試料を得る;
前記半抗体が互いに解離するように前記試料のpHを低下させて、溶液を形成する;
前記溶液を、IgG半抗体および完全なIgG抗体の両方がカラムに保持されるようにイオン交換カラムに装填する;
前記カラム内に存在する緩衝液のpHがIgG半抗体を選択的に溶出させるのに十分なレベルまで上昇するように緩衝液をカラムに加える;および
次に、完全なIgG抗体を溶出させるのに十分な量で、カラム内に存在する緩衝液のイオン強度が上昇するように緩衝液をカラムに加える;工程を含む方法。
【請求項32】
前記試料が乳から得られることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記乳が哺乳類に由来することを特徴とする請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記乳が、有蹄類、ブタ、ウサギ、またはマウスに由来することを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記試料が卵から得られることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項36】
前記試料が血清から得られることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項37】
前記試料が細胞培地から得られることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項38】
前記IgG半抗体および完全なIgG抗体がIgG4アイソタイプであることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項39】
前記試料のpHをpH4.0未満に低下させることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項40】
前記試料のpHを約pH2.0ないし4.0に低下させることを特徴とする請求項36記載の方法。
【請求項41】
前記試料のpHを約pH3.5に低下させることを特徴とする請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記イオン交換カラムが陽イオン交換カラムであることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項43】
前記カラム内に存在する緩衝液のpHを6.5以上に上昇させることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項44】
前記カラム内に存在する緩衝液のpHを約7.0に上昇させることを特徴とする請求項43記載の方法。
【請求項45】
請求項31記載の方法によって得られた精製IgG半抗体調製物。
【請求項46】
抗体がIgG4アイソタイプであることを特徴とする請求項45記載の精製半抗体調製物。
【請求項47】
半抗体が調製物中の抗体の総量の少なくとも90%を占めることを特徴とする請求項45記載の精製半抗体調製物。
【請求項48】
半抗体が調製物中の抗体の総量の少なくとも95%を占めることを特徴とする請求項47記載の精製半抗体調製物。
【請求項49】
半抗体が調製物中の抗体の総量の少なくとも99%を占めることを特徴とする請求項48記載の精製半抗体調製物。
【請求項50】
請求項31記載の方法によって処理される前の試料と比較して、完全な抗体が調製物中の総抗体のより大きな部分を占めることを特徴とする、請求項31記載の方法によって得られた精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項51】
抗体がIgG4アイソタイプであることを特徴とする、請求項50記載の精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項52】
完全な抗体が調製物中の総抗体の少なくとも80%を占めることを特徴とする、請求項50記載の精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項53】
完全な抗体が調製物中の総抗体の少なくとも90%を占めることを特徴とする、請求項52記載の精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項54】
調製物中の総抗体の少なくとも90%が半抗体であることを特徴とする精製IgG半抗体調製物。
【請求項55】
半抗体および完全な抗体を含み、かつ総抗体の少なくとも80%が完全な抗体であることを特徴とする精製された完全なIgG抗体の調製物。
【請求項56】
前記調製物がさらにカゼイン夾雑物を含むことを特徴とする請求項55記載の調製物。
【請求項57】
前記カラムがHICカラムであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項58】
前記カラムがHICカラムであることを特徴とする請求項31記載の方法。
【請求項59】
前記カラムがHICカラムであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項60】
前記カラムがHICカラムであることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項61】
前記カラムがHICカラムであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項62】
前記カラムがHICカラムであることを特徴とする請求項43記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−508062(P2006−508062A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537770(P2004−537770)
【出願日】平成15年9月11日(2003.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2003/028543
【国際公開番号】WO2004/026427
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(504267622)ジーティーシー バイオセラピューティックス インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】GTC BIOTHERAPEUTICS, INC.
【Fターム(参考)】