説明

野獣侵入防止用電気柵設備の改良

【課題】従来の野獣侵入防止用電気柵設備の改良。
【解決手段】導電材によって形成される柵本体と該柵本体と絶縁される裸電線と該裸電線と該裸電線に衝撃電圧をかける電源装置とから構成してなる電気柵1において、ハウスパイプ・溶接金網・裸電線を別体形成してなり、更にハウスパイプを地中に装設して上端に溶接金網を張設し、かつ該溶接金網の上面部に裸電線を張設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜・果実園・植林地等に侵入するサル・ニホンシカ・イノシシなどの野生鳥獣類による被害を防ぐ方法であるが、詳しくはこれら野生鳥獣類を仮死状態で捕獲する野獣侵入防止用電気柵設備の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気柵を用いて野獣の侵害防止する方法としては、例えば特許第2656910号の「電気柵」や特許第2619209号の「猿害防止装置」など開発されている。
【特許文献1】特許第2656910号公報(文献1) 文献1の特許は、外部より侵入しようとする動物あるいは内部から脱出する動物に電気ショックを与える電気柵に関するものであり、その主要な構成は導電材によって形成されている柵本体と、上記柵本体の上部より側方へ突出したブラケットに支持されて、該柵本体から側方へ離れた位置に張られ且つ該柵本体とは絶縁されている裸電線と、上記裸電線に衝撃電圧をかける電源装置とから構成される電気柵である。更に上記電源装置のプラス極が上記裸電線に接続され上記電源装置のマイナス極が地中にアースされているとともに上記柵本体に接続されており、また上記柵本体が金網と該金網を地上に支持する支柱とを備えてなり、上記電源装置のプラス極が上記裸電線に接続され上記電源装置のマイナス極が地中にアースされているとともに上記金網に接続されており、更に上記柵本体の上方位置に互いに上下に間隔をおいて張られた2本以上の裸電線を備え該裸電線に上記電源装置のプラス極が接続されている電気柵である。すなわち、文献1の発明は、金網のような導電性の柵本体に衝撃電圧をかける裸電線を組み合わせることによって、野生動物の侵入防止、家畜の脱出防止の効果を高めるところに特徴を有する。
【0003】
更に図5により具体的な実施例について説明すれば、11は柵本体、12は柵本体11の上部の側方位置に該柵本体11の上縁に沿って水平に張設された第1裸電線、13は柵本体11の上方位置に該柵本体の上縁に沿って水平にかつ互いに上下に間隔をおいて張設された3本の第2裸電線、14は裸電線2、3に衝撃電圧をかける電源装置であり、これらによって電気柵が構成されている。また、柵本体11は導電材によって形成されているものであって菱形金網15と上・中・下の3段に設けられた鋼製の骨線6とよりなる金網パネルが適宜の間隔で地上に立設された水平断面C形の鋼製の支柱17に鋼製のフックボルト18によって支持されてなる。この支持構造は、支持17を貫通させたフックボルト18のフック部に骨線16が支持され、該フックボルト18はナットによって支持17に固定されている。支柱17は、下端部が地中に埋め込まれている。
【0004】
次に、第1裸電線12は各支柱17の上部より当該電気柵の外側へ突出させたブラケットに支持されている。ブラケットは、基盤より突出したねじ棒と該ねじ棒に被せられた電気絶縁性を有する樹脂製パイプとよりなる。また、第1裸電線12は樹脂製パイプに巻き付けられて支柱17に絶縁された状態でかつ該支柱17から外側方に離された状態に支持されている。一方、3本の第2裸電線13は各支柱17より上方へ突出させた塩化ビニール製のパイプに碍子が半球状基部の頂部に2枚のずれ止めプレートによって挟まれた電線支持部が設けられたものであり、パイプにフットボルトによって固定されている。
【0005】
なお、電源装置14は電源として太陽電池及び化学電池のうちのいずれか一方を選択使用することができるものであって、電気柵の内側に設けられている。この電源装置14は、電源スイッチ、プラス極(出力端子)、マイナス極(アース端子)、電源ランプ、出力安定回路等を備えており、上記プラス極に6〜12Vの衝撃電圧を約1秒間隔で印加するようになっている。そして、プラス極より延設された出力線が第1裸電線12に接続されかつマイナス極より延設されたアース線が地中に埋め込まれたアース棒(図示省略)に接続され、該アース線より分岐した分岐線が金網15の上部に接続されている。また、第1裸電線12及び第2裸電線13の計4本の裸電線は電線によって互いに接続されている。
【特許文献2】特許第2619209号公報(文献2) 農地や果樹園等に侵入して作物に被害を与える野生の猿を防除する猿害防止装置に関するものであり、その主要な機構は、猿の侵入を防止すべき境界線に沿って所定間隔で立設された支柱と、これらの支柱間に張設されたネットと、このネットの上部に架設され前記支柱により垂直ないし斜め方向に所定間隔を隔てて電気的に絶縁された状態で支持された少なくとも2本の裸電線と、同裸電線に衝撃電流を流す電源装置とを備えた猿害防止装置である。更にネットの上部の中間部と各裸電線との間を絶縁体で垂直に結合されており、更に猿の侵入を防止すべき境界線に沿って所定間隔で立設された支柱とこれらの支柱間に張設されたネットとこのネットの上部に架設され前記支柱により垂直ないし斜め方向に所定間隔を隔てて電気的に絶縁された状態で支持された少なくとも2本の裸電線と、同裸電線に衝撃電流を流す電源装置と前記裸電線に流れる電撃電流の状態を符号信号に交換する符号変換器と符号変換器で交換された符号信号を電波で発信する発信部と遠隔の場所において前記発信部から発信された電波を受信する受信部とこの受信部で受信された電波から前記符号信号を復調して電撃電流の状態を監視する監視装置とを備えた猿害防止装置にある。すなわち、文献2の発明は猿がネットをよじ登って柵を超えようとしてネットの上の裸電線に手をかけると電撃が猿に加わり、その衝撃で猿は手を放すため猿はネットの外側に落ちる。更に裸電線に流れる衝撃電流はその状態を符号信号に変換しこの符号信号を電波で発信し圃場と離れた遠隔の場所において監視することができる。
【0006】
更に、図5により具体的な実施例について説明すれば、21は衝撃電圧発生用の電源装置である。裸電線に衝撃電圧Eを通電し、アース側は裸電線に接続し、猿害を防止する。一方、この衝撃電圧Eを送信部に取り入れ、衝撃電圧Eの高低の状態を符号信号に変換して電波を発信する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら従来装置は、電気柵の構造が複雑のため理論的には優れているが実現的には多くの課題を有している。例えば、支柱とネットとが一体形成されているために現場での作業に多くの手間暇がかかるとか、衝撃電流を変換する符号変換器・符号信号を電源に発信する発信部・電源を受信する受信部・衝撃電流を監視する監視装置などの部材と装置が必要となるので現場での操作上に多くの不便さは勿論のこと、コスト高となり実用性において多く問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の如き従来の装置を改良したものであって、導電材によって形成される柵本体と該柵本体と絶縁される裸電線と該裸電線と該裸電線に衝撃電圧をかける電源装置とから構成してなる電気柵において、ハウスパイプ・溶接金網・裸電線を別体形成してなり、更にハウスパイプを地中に装設して上端に溶接金網を張設しかつ該溶接金網の上面部に裸電線を張設してなることを特徴とする野獣侵入防止用電気柵設備の改良の提供にある。また、前記の電気柵設備において地中に抗設されるハウスパイプの上端に電線用支柱を挿着しかつ該支柱の上端に塩ビ管を装着して裸電線を巻着してなる野獣侵入防止用電気柵設備の改良の提供にある。また、前記電気柵設備において溶接金網を一定の長さに切断しかつ一端をコ字状に屈曲形成し該屈曲部を介して連着してなる野獣侵入防止用電気柵設備の改良の提供にある。更に、前記電気柵設備において裸電線を張設する部分からの絶縁・アース・防水・ズレなどを防止するために一体型成した絶縁管からなる野獣侵入防止用電気柵設備改良の提供にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、導電材によって形成される柵本体と該柵本体と絶縁される裸電線と該裸電線と該裸電線に衝撃電圧をかける電源装置とから構成してなる電気柵において、ハウスパイプ・溶接金網・裸電線を別体形成してなり、更にハウスパイプを地中に装設して上端に溶接金網を張設しかつ該溶接金網の上面部に裸電線を張設してなることを特徴とする野獣侵入防止用電気柵設備の改良であるから、各部材を別々に型成することによって、現場での作業が簡便となり作業効率を早めることができる。
【0010】
また、本発明は地中に抗設されるハウスパイプの上端に電線用支柱を挿着しかつ該支柱の上端に塩ビ管を装着して、裸電線を巻着してなる野獣侵入防止用の電気柵設備であるから安全で高性能な設備を提供できる。また、本発明の溶接金網を一定の長さに切断しかつ一端をコ字状に屈曲形成し該屈曲部を介して、連着してなる野獣侵入防止用の電気柵設備であるから安全で強靱な金網を張設することができる。更に、本発明は裸電線を張設する部分からの絶縁・アース・防水・ズレなどを防止するために一体型成した絶縁管からなる野獣侵入防止用電気柵設備改良であるから、1つの絶縁管を介して多目的な機能を持たせた設備を提供できる。
【実施例1】
【0011】
以下、図面に従って本発明設備の実施例について説明する。本発明は従来の改良であるから、その基本的な構成は図5と図6に示す具体的な実施例について記載されているので、ここでは従来の改良点について説明すことにする。
構成1
電気柵の支柱を地上部分と地下部分とに分けて、地下部分を地中に打ち込んでから地上部分の支柱と繋ぐようになっている。例えば、次のような構成が考えられる。
ア、ツキノワグマ、ニホンシカ、ニホンサル、ニホンイノシシ等の野生動物から農作物を 守るための電気柵は、下を金網等で覆いその上をアルミ合金線で数段架設する。そこに 使う支柱は、地上部分だけでも最低1.5 mとなり、地下部分を含めると2.0 m以上とな る。
イ、2.0 mの支柱を地中に打ち込むには脚立等の踏み台がないと作業できないが、支柱を 地上部分と地下部分とに分けて地下部分(この場合地下部分0.5 m+継手部分0.2 m) 0.7 mを打ち込むのは、脚立等は必要なく安全で効率もよく作業性も良い。
ウ、また地下部分の杭は、地中の土質等の影響を受けることなく高さを調節することが簡 単にできるので経済的で見た目もよい。
エ、支柱には既存の支柱では地上部分と地下部分に分けることは難しいが、ハウス用単管 パイプ等を使うことで地上部分と地下部分を異なる口径の単管パイプに分けて地下部分 の支柱を地中に打ち込んでから、地上部分の支柱を地中から出ている地下部分の支柱に 差し込むことができるので簡単に上下の支柱を繋ぐことができる。この場合は、支柱を 差し込んだのちに重なっている部分に横から穴を開けてネジで留めると完全に一本の支 柱になる。
構成2
電気柵の支柱である単管パイプにキャップを被せる。例えば、次のような構成が考えられる。
ア、単管パイプを支柱に使うとパイプの中に水が溜まり、冬場凍みるとパイプがパンクす る恐れがあるのでパイプの先端にプラスチックのキャップを被せて水の侵入を防止する ことができる。
イ、キャップを作るときにプラスチックの中に蛍光塗料を入れて成形すると、夜少しの光 に反応してキャップが光るので野生動物が近づかない。
構成3
電気柵の支柱にアルミ合金電線を取り付けるとき、一般的には支柱に碍子を取り付けて碍子に電線を取り付けるが碍子の代わりの絶縁体として塩ビ管を用いて電線を張る支柱部分全体を覆うように被せて固定する。ついで、アルミ合金電線を塩ビ管の上に一重又は二重に巻きつけて張り、その上を絶縁テープを巻いて塩ビ管に固定する。例えば、次のような構成が考えられる。
ア、碍子の代わりに塩ビ管を使うのは、塩ビ管の方が用途が広く製品が沢山出まわってい るため価格が安い。
イ、絶縁体としての塩ビ管は、アルミ合金電線と支柱の間での漏電を避けるため肉厚の厚 いVP管を選び、長さも金網等の上部から支柱の先端部分までの長い塩ビ管を使うとよ い。
構成4
電気柵の支柱を金網等の支柱と電線用支柱に分けることで、ハウス用パイプのような細い支柱でもツキノワグマ、ニホンシカ、ニホンイノシシ、ニホンサル等に対応できる電気柵ができる。例えば、次のような構成が考えられる。
ア、この場合金網用の支柱は、金網の高さと同じ高さの支柱(金網の強度によっては、金 網の高さより低くても可)でよい。支柱の間隔は平坦地であれば1.05m〜2.50m間隔と して金網の継ぎ目がこの範囲内にあるときは繋ぎ目ごとに支柱を立て金網と固定する金 網の強度が増すことになる。
イ、電線用支柱の間隔は、アルミ合金線の強度や電線を張る張力によるが、3.0 m〜5.0 m間隔で金網に付けて立て金網用支柱の補強を兼ねることで、電気柵全体の強度が大幅 に増すことになる。
ウ、支柱については、上記を併用すれば材料費用が安く、しかも作業も安全で効率も良い 。
構成5
電気柵の金網の左右先端中、一方の先端の繋ぎ目部分の横鉄筋をUの字型に曲げることで、次の金網と繋ぐ場合に次の金網の縦鉄筋に引っ掛けることができるので簡単につなぎ合わせることができる。例えば、次のような構成が考えられる。
ア、この引っ掛けた縦鉄筋部分をU字型鉄金が、銜えたまま金槌等で叩き潰すことで横鉄 筋が縦鉄筋に巻きつく形となり繋ぎ目が強化される。この繋ぎ目を更に針金等を巻き付 けて止めれば、なお繋ぎ目が強固になる。
イ、この方法で金網を繋ぐと重なる部分が少なくなるのでロスが少なく、また歩留まりが 上がり作業性も良くなる。
ウ、この方法を使う金網としては溶接金網が最適であり、この溶接金網は建築に使われる ため種類が豊富だからどこにでもあり価格が安くて手頃である。なお、溶接金網は長さ が1.5 m〜3.0 mと短いため繋ぎ目の重ねをどれだけ、少なくすることによって歩留ま りが大きく異なってくる。従って、この方法で加工した溶接金網を使うと歩留まりを数 %〜10数%増やすことが可能である。
構成6
電気柵で、支柱の電線を張る部分を絶縁、アース、単管パイプ内側の防水、電線のズレ止めを考慮して一体型絶緑管にすることが可能となる。例えば、所定間隔に設置された支柱に金網等を張り付け、その上アルミ合金電線を数段所定の間隔で張ることで野生動物全般に対応できる電気柵となるが、この支柱のアルミ合金電線を取り付ける部分に成形した一体型塩ビ絶縁管を被せることで電気柵の設営作業の迅速化、均一化、品質の安定化、耐久化などを図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の野獣侵入用の電気柵設備を示した概要図。
【図2】図1の電気柵設備を示した組立分解図。
【図3】図1に示した電気柵設備の要部を示した拡大斜視図。
【図4】図1に示した電気柵設備の要部を示した拡大斜視図。
【図5】従来の電気柵を示した平面図。
【図6】従来の電気柵を示した平面図。
【符号の説明】
【0013】
1 電気柵 2 金網
3 金網用支柱 4 地中伉
5 電線用支柱 6 塩ビ管
7 裸電線 8 係止部
11 柵本体 12 第1裸電線
13 第2裸電線 14 電源装置
15 金網 16 骨線
17 支柱 18 フックボルト
21 電源装置 22 太陽電池
23 バッテリ 24 支柱
25 ネット 26 裸電線
27 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材によって形成される柵本体と該柵本体と絶縁される裸電線と該裸電線と該裸電線に衝撃電圧をかける電源装置とから構成してなる電気柵において、ハウスパイプ・溶接金網・裸電線を別体形成してなり、更にハウスパイプを地中に装設して上端に溶接金網を張設し、かつ該溶接金網の上面部に裸電線を張設してなることを特徴とする野獣侵入防止用電気柵設備の改良。
【請求項2】
請求項1の電気柵設備において、地中に抗設されるハウスパイプの上端に電線用支柱を挿着し、かつ該支柱の上端に塩ビ管を装着して裸電線を巻着してなる請求項1記載の野獣侵入防止用電気柵設備の改良。
【請求項3】
請求項1の電気柵設備において、溶接金網を一定の長さに切断しかつ一端をコ字状に屈曲形成し、該屈曲部を介して連着してなる請求項1及び2記載の野獣侵入防止用電気柵設備の改良。
【請求項4】
請求項1記載の電気柵設備において、裸電線を張設する部分からの絶縁・アース・防水・ズレなどを防止するために一体型成した絶縁管からなる請求項1から3記載の野獣侵入防止用電気柵設備の改良。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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