説明

野菜の接ぎ木苗の育苗方法

【課題】弱光・低温貯蔵工程において高湿度に制御することなく簡易な方法によって接ぎ木挿し穂の活着および発根を安定化することができる野菜の接ぎ木苗の育苗方法を提供すること。
【解決手段】台木2と穂木1とを直列に接合して接ぎ木挿し穂3を形成する工程と、保持部材11、12を用いて複数本の接ぎ木挿し穂3を垂直に保持して養生する工程とを備え、養生工程において、養生槽13a内で15〜35℃に維持され任意に培養成分を含む温水Whに、穂木1が吸水可能な位置まで各接ぎ木挿し穂3を浸漬させ、かつ穂木1が露出する雰囲気の温度を温水Whよりも低い温度に維持して養生することにより、台木2と穂木1とを活着させて接ぎ木苗5とする野菜の接ぎ木苗の育苗方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の接ぎ木苗の育苗方法に関し、特に野菜の接ぎ木苗を簡易な方法で丈夫に育てる育苗技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナス、トマト、キュウリ等の野菜の接ぎ木苗は、連作障害や病害虫に強く、生産性に優れていることから広く普及している。野菜の接ぎ木苗の生産では、苗の需要の変動によって必要な育苗面積や労働力が大きく変動する。そのため、育苗面積や労働力の季節的な変動を平準化し、効率的に苗や挿し穂の安定供給を図るために、苗や挿し穂を一定期間貯蔵する技術が開発されている。
【0003】
ここで、従来の一般的な接ぎ木苗の生産工程例を図11を参照しながら説明する。先ず、予め育苗された台木用苗の根部と穂部を切除して台木を準備すると共に、予め育苗された穂木用苗の根部を切除して穂木を準備する。このとき、台木用苗の根部を切除する理由としては、台木と穂木とを切断面で接合する際に根が邪魔になって作業性が低下すること、根の土が台木や穂木の切断面に付着すると病気になるおそれがあること、接ぎ木挿し穂を培地へ植え込む際に根が傷つき病気になり易いこと、成型培地を用いる場合は、根があると接ぎ木挿し穂を成型培地に植え込めないこと、台木から新たに発根させた根の方が種子から発根した根よりも活発であり、丈夫に苗が育つことなどが挙げられる。
次に、図11(a)に示すように、穂木1の切断部と台木2の穂部側の切断部を筒状の接ぎ木接合具11に挿入し、各切断面を密着させて穂木1と台木2を接合した状態に保持することによって、接ぎ木挿し穂3を形成する(図11(b)参照)。この接ぎ木接合具11は、弾性プラスチックからなり、軸方向に切れ込みを有しているため、接ぎ木挿し穂3の接合部4が活着して茎径が大きくなるのに応じて拡径する。
【0004】
次に、図11(b)に示すように、接ぎ木挿し穂3の開放端(台木側)を成型培地6に植え込む。この成型培地6は市販のものが用いられている。次に、図11(c)に示すように、接ぎ木挿し穂を弱光下で一定期間(例えば数週間〜数ヶ月間)低温貯蔵する。この際、接ぎ木挿し穂3の接合部4完全に繋がっておらず、台木2の吸水力も弱いため、穂木1の水分の蒸散を防止しかつ水分補給するために、貯蔵庫内を高湿度に維持する必要がある。例えば、気温:15℃以下、相対湿度:70%以上、光合成有効光量子束密度:0〜30μmolm-2-1の環境条件に貯蔵庫内を制御する。このように、接ぎ木挿し穂3を一定期間低温貯蔵する目的は、主として接ぎ木挿し穂3の成長を鈍化させて生産調整を図り、育苗面積や労働力を平準化することにある。
【0005】
次に、図11(d)に示すように、活着および発根を促進させるために接ぎ木挿し穂3を養生しながら徐々に屋外の環境に順化させていく。この養生・順化期間で接ぎ木挿し穂3の接合部4を活着させると共に台木2から発根させる。なお、図11(c)の弱光・低温高湿貯蔵工程を省略し、図11(d)の養生・順化工程に移る場合もある。
その後、図11(e)に示すように、活着した接ぎ木苗5をポット14内の培地Bへ植え込み、出荷する。なお、図11(b)で説明した成型培地6を用いず、接ぎ木挿し穂3を直接ポット14内の培地Bへ植え込み、弱光・低温高湿貯蔵工程および養生・順化工程を行なう場合や、弱光・低温高湿貯蔵工程を省略して養生・順化工程に移る場合もある。
【0006】
また、上述の弱光・低温高湿貯蔵工程から養生・順化工程までは、例えば特許文献1、2、3および4に記載の方法が提案されている。特許文献1には、気温(15℃以下)および培地を低温に維持しかつ湿度70%以上に維持して接ぎ木苗を準貯蔵状態に保つことが記載されている。特許文献2には、活着段階において、気温5〜15℃、相対湿度70%以上、光合成有効光量子束密度0〜30μmol/(m2・s)の環境条件下で接ぎ木挿し穂を養生し、弱光・低温高湿工程後を経た養生・順化工程において、2〜3日かけて湿度を90%から40%まで下げて段階的に外気環境湿度に近づけることが記載されている。特許文献3には、接ぎ木直後の接ぎ木挿し穂を外気よりも低い気温(28℃前後)、高湿度および弱光の環境で養生し活着させることが記載されている。特許文献4には、気温25〜28℃、湿度90〜93%の環境で接ぎ木挿し穂を養生し活着させることが記載されている。
また、樹木の接ぎ木に際して、接合部を温水パイプに接触させることによって活着を促進させる方法が非特許文献1に開示されている。
また、弱光・低温貯蔵工程中に接ぎ木挿し穂の開放端のみを温めた培養液に浸漬させることにより、植物の消耗を抑えつつ効率的に発根を促進させる方法が非特許文献2に開示されている。
その他、面状ヒータの上の培地を加温することにより接ぎ木挿し穂の発根を促進させる方法が公知である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−38031号公報
【特許文献2】特開2003−304743号公報
【特許文献3】特開平9−224491号公報
【特許文献4】特開平7−250565号公報
【非特許文献1】Hartmann, H.T., D.E. Kester, F.T. Jr. Davies, and R. L. Geneve.2002. “Techniques of Grafting”in “Plant Propagation, Ed.7”, Pearson Education, Upper Saddle River, NJ, pp 880. p501.
【非特許文献2】寺倉、渋谷、外2名、「キュウリ挿し穂の低温貯蔵中における短期間の供給培養液の加温処理が貯蔵中の品質および貯蔵後の発根に及ぼす影響」、生物環境調節、42(2)、p.331−337、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図11(c)〜(d)で説明したように、従来では接ぎ木挿し穂を活着させ、低温貯蔵する段階では、穂木に水分が供給され難く萎れやすいため、環境雰囲気を高湿度に保つ必要があるが、それによって以下の問題が生じている。
(1)低温で高湿にするため特殊な環境制御設備が必要であり、設備コストが高額となる。
(2)接ぎ木挿し穂が高湿環境下にあるため、カビなどによる病気にかかり易い。
(3)接ぎ木挿し穂を高湿環境下で貯蔵することにより、その後の養生・順化工程において接ぎ木苗が軟弱になり易い。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、穂木と台木を接合した直後の接ぎ木挿し穂を養生する環境を高湿度に制御することなく、簡易な方法によって接ぎ木挿し穂を萎れさせることなく確実に活着および発根を促進させる野菜の接ぎ木苗の育苗方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして、本発明によれば、台木と穂木とを直列に接合して接ぎ木挿し穂を形成する工程と、保持部材を用いて複数本の前記接ぎ木挿し穂を垂直に保持して養生する工程とを備え、前記養生工程において、養生槽内で15〜35℃に維持され任意に培養成分を含む温水に、穂木が吸水可能な位置まで各接ぎ木挿し穂を浸漬させ、かつ前記穂木が露出する雰囲気の温度を前記温水よりも低い温度に維持して養生することにより、台木と穂木とを活着させて接ぎ木苗とする野菜の接ぎ木苗の育苗方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
台木と穂木を接合した直後は接ぎ木挿し穂の接合部は未だ繋がっておらず、多大なストレスを有しており、台木の吸水力も弱い。本発明によれば、このようなストレスの多い接ぎ木挿し穂を養生する工程において、台木を接合部まで温水に浸漬することにより、穂木自体が吸水するため、養生工程における貯蔵庫内を高湿にすることなく穂木の萎れを軽減することができる。それに加え、養生工程において、低温の貯蔵庫内を高湿度に維持するといった特殊で高額な設備が不要であり、設備コストがかからない簡素な養生装置で接ぎ木挿し穂を養生することができる。
また、温水によって接ぎ木挿し穂を局所加温処理することにより、接合部の活着が促進すると共に、台木の発根準備が整う。つまり、数日間(1〜5日)といった短期間の養生工程中に接合部が十分活着し、かつ台木の発根準備が整った元気な接ぎ木苗とすることができるため、その後接ぎ木苗を培地に植え込むことにより活発に発根し屋外環境への順化も早く、育苗期間を短縮することが可能となる。
また、養生工程を経た接ぎ木苗を弱光・低温の環境条件下で長期間貯蔵する場合にも、接ぎ木苗は活着および発根準備が十分進んでいるため、台木部分から水を補給しさえすれば雰囲気中を高湿度に維持する必要はなく、弱光・低温貯蔵工程において低温の貯蔵庫内を高湿度に維持するといった特殊で高額な設備が不要であり、設備コストを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の野菜の接ぎ木苗の育苗方法は、台木と穂木とを直列に接合して接ぎ木挿し穂を形成する工程と、保持部材を用いて複数本の前記接ぎ木挿し穂を垂直に保持して養生する工程とを備え、前記養生工程において、養生槽内で15〜35℃に維持され任意に培養成分を含む温水に、穂木が吸水可能な位置まで各接ぎ木挿し穂を浸漬させ、かつ前記穂木が露出する雰囲気の温度を前記温水よりも低い温度に維持して養生することにより、台木と穂木とを活着させて接ぎ木苗とすることを特徴とする。
本発明が対象とする野菜は特に限定されず、例えばナス、トマト、キュウリ等の一般的に接ぎ木が行なわれている野菜に適用できる。
【0013】
本発明は、前記養生工程の後、温水から引き上げた活着後の接ぎ木苗の台木を培地へ植え込んで屋外環境に順化させる工程(順化工程)をさらに備えてもよい。
さらには、養生工程の後、培地へ植え込む前に、温水から引き上げた活着後の接ぎ木苗を光量および水分補給が調整された貯蔵庫内で所定期間低温で貯蔵する工程(弱光・低温貯蔵工程)を備えてもよい。
【0014】
(養生工程)
養生工程に際しては、先ず、穂木と台木を準備する。穂木は、予め育苗された穂木用苗の葉部を残して茎上部を切断することにより得る。一方、台木は、予め育苗された台木用苗の葉部を有する茎上部と根部を切除することにより得る。このとき、穂木と台木を接合させる切断面は茎部の長手方向に対して、例えば斜めにカットされるが、これに限定されるものではない。
また、穂木用苗としては収穫しようとする品種の野菜が選択され、台木用苗としては根の張りがよく病気に強い品種の野菜が選択される。通常、台木用苗は、穂木用苗と同じ種類の野菜であって異なる品種のものが選択されるが、これに限定されない。なお、本発明では、根部を有する台木を用いることを必ずしも制限するものではないが、台木の開放端に根部を有さないものを使用することが好ましく、その理由は上述と同様である。
【0015】
養生工程において、接ぎ木挿し穂を浸漬する温水の温度は、台木と穂木との活着促進および台木の発根準備を十分に整わせる観点から前記15〜35℃が好ましく、雰囲気温度は、穂木の水分蒸散を抑制する観点から少なくとも温水の温度よりも低温であることが好ましく、特に0〜15℃が好ましい。なお、温水の温度は、養生槽内で均一であり、接ぎ木挿し穂の接合部付近も15〜35℃とする。また、温水は15〜35℃の温度範囲に維持されればよいが、接ぎ木挿し穂の野菜の種類に応じたより最適な温度に制御することが好ましく、例えばナスでは好ましくは25〜30℃、より好ましくは27℃、トマトでは好ましくは25〜30℃、より好ましくは27℃、キュウリでは好ましくは23〜36℃、より好ましくは28℃である。
なお、温水の温度が15℃よりも低くなると、接ぎ木挿し穂の活着が遅くなると共に、発根準備が整い難くなる。よって、その後に培地へ植え込まれた接ぎ木苗は、根の成長が遅く、屋外環境への順化にも日数がかかる傾向になる。また、水温が35℃よりも高いと、台木が茹で上がり死滅することになる。また、雰囲気温度が0℃よりも低いと穂木の細胞組織を傷める低温障害を発生し、20℃よりも高いと穂木が成長してしまい生産調整ができなくなると共に、脆弱な接ぎ木苗に生育する傾向にある。
【0016】
また、養生工程において、接ぎ木挿し穂へ弱い光を連続的または断続的に照射してもよいが、光照射はなくてもよい。光照射する場合の光源としては、例えば、3波長型白色蛍光灯(FHF32EX−W−H、松下電器産業)等を用いることができ、光量(光合成有効光量子束密度)としては0〜30μmolm-2-1が適当である。
【0017】
接ぎ木挿し穂を養生させる設備や施設は、温水および雰囲気温度を上述のような温度範囲に制御できれば特に限定されず、特別な装置は必ずしも必要ない。例えば、温水を溜める養生槽および接ぎ木挿し穂を垂直に保持しながら穂木が吸水可能な位置まで温水に浸漬させる保持部材は必要であるが、外気温が20℃以下の場所であれば屋外に養生槽を設置し、養生槽内に温度センサ付きヒータを設置するといった簡素な装置構成とすることができる。しかしながら、年間を通して一定範囲に雰囲気温度および水温を維持するためには、空調可能な室内に養生槽(例えば恒温槽)を設置して接ぎ木挿し穂を養生することが好ましい。なお、本発明では、接ぎ木挿し穂は穂木が吸水可能な位置まで温水に浸され、穂木への水分補給は確実に行なわれるため、環境湿度は特に制限されず、湿度を制御する必要はない。よって、低温の空気中を高湿度に維持するといった特殊で高額な設備を省略でき、養生装置を簡素化および低コスト化することができる。
【0018】
養生工程において、保持部材にて垂直に保持された複数本の接ぎ木挿し穂は、その穂木が吸水可能な位置まで温水に浸漬されればよい。したがって、接合部が水面より下になるように接ぎ木挿し穂を温水に浸漬させればよい。一方、接合部が水面より上であっても、保持部材を利用した毛細管現象などによって温水が接合部まで上昇して穂木が吸水できる状態であればよい。
【0019】
養生工程に用いられる保持部材としては、次の3タイプが挙げられる。
(A)保持部材が、プレート状保持具からなる。このプレート状保持具は、複数の孔部を有し、かつ比重が養生槽の温水よりも小さい弾性材料からなる。この場合、プレート状保持具の各孔部に台木と穂木が挿し込まれて接合状態を保持され、かつプレート状保持具が養生槽内の温水上に浮かべられる。
(B)保持部材が、前記(A)と同様のプレート状保持具と、弾性筒体に軸方向の切れ込みを形成してなる筒状接合具の複数個とからなる。この場合、筒状接合具に台木と穂木が挿し込まれて接合状態を保持され、接ぎ木挿し穂を保持した筒状接合具がプレート状保持具の孔部に挿し込まれる。そして、このように複数本の接ぎ木挿し穂を垂直に保持したプレート状保持具が養生槽の温水上に浮かべられる。
(C)保持部材が、前記(B)と同様の複数個の筒状接合具と、比重が養生槽の温水よりも小さい材料からなるビーズの複数個とからなる。この場合、筒状接合具に穂木と台木が挿し込まれて接合状態を保持され、かつ複数個のビーズが養生槽内の温水上に隙間無く層状に浮かべられ、接ぎ木挿し穂を保持した筒状接合具がビーズの層内に垂直に植え込まれる。
【0020】
このような(A)〜(C)の保持部材によれば、接ぎ木挿し穂の接合部を温水中、温水の水面あるいは水面より僅かに上の位置に保持することができる。接ぎ木挿し穂の接合部が水面より僅かに上の位置に保持された場合、プレート状保持具または筒状接合具と台木との隙間に温水が毛細管現象によって接合部まで上昇するため、穂木は吸水することができる。
プレート状保持具およびビーズの材料としては、例えばスチロール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂を発泡剤にて発泡させた独立気泡または連続気泡構造の発泡プラスチックやスポンジ等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。プレート状保持具は、複数個の孔部を一列に配置したものでも複数列に配置したものでもよい。また、ビーズは、直径5〜20mm程度が好ましい。なお、ビーズは球形に限定されるものではない。
筒状接合具は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ナスニックス株式会社製の商品名:スーパーウィズを用いることができる。
【0021】
本発明において、養生工程は、接ぎ木挿し穂が穂木から発根する前で終了する。接ぎ木挿し穂は穂木が吸水可能な位置まで温水に浸漬されているため、活着段階において穂木の端部から発根し、そうなると台木としての本来的の機能が失われるからである。
接ぎ木挿し穂を温水へ浸漬してから穂木が発根する日数は、野菜の種類によって若干異なる。例えば、ナスであれば3〜7日、トマトであれば3〜7日、キュウリであれば 1〜3日であることを実験により確認している。また、これら各種野菜の穂木の発根時期よりも前には活着が十分促進していることも実験により確認している。したがって、野菜の種類に応じて発根時期よりも早く、好ましくは1〜2日早く接ぎ木挿し穂を温水から引き上げ、次の工程(弱光・低温貯蔵工程あるいは順化)に移す。
【0022】
さらに養生工程では、接ぎ木挿し穂の台木が断根されたものである場合には、台木の開放端から発根する前で終了することが望ましい。台木が発根すると、上述したように、接合部活着後の接ぎ木苗を培地へ植え込む際に根が傷ついて病気になり易いからである。接ぎ木挿し穂を温水へ浸漬してから台木が発根する日数は、穂木と台木が同種の野菜であれば、ほぼ同じであることを実験により確認している。しかし、台木の発根が穂木の発根よりもやや早い場合は、台木の発根前に接ぎ木挿し穂を温水から引き上げて次の工程に移すことが望ましい。
【0023】
また、本発明において、接ぎ木挿し穂の台木は、開放端に成型培地を有するものであってもよい。この場合、接ぎ木挿し穂を温水に浸ける前に、台木の開放端を成型培地に植え込んでおく。成型培地としては、水や培養液に溶けないものが好ましく、例えば、ジフィー社製の商品名:プレフォーマ・ボックスプラグ、グロダン社製の商品名:グローキューブ、株式会社ニッソーグリーン製の商品名:オアシス挿し木培地等を用いることができる。
このようにすれば、温水中で台木が発根しても根は成型培地中にあるため、温水から引き上げた接ぎ木苗を培地(苗床)へ植え込んでも根が傷つかず、病気になる心配はない。よって、養生工程の終了時期が台木の発根によって制限されなくなる。さらに言えば、養生工程中に接ぎ木苗を発根させておくことが好ましい。接ぎ木苗が発根していることにより吸水力を増すため萎れ難くなり、屋外(大気)環境へ順化し易くなる。ただし、当然ながら穂木の発根前には養生工程を終了する必要はある。
【0024】
本発明において、温水は、接ぎ木挿し穂の接合部の活着を促進させる観点から培養成分を含有するものであってもよく、特に接ぎ木挿し穂の台木が前記成型培地を有さない場合に好ましい。培養成分としては、一般的に育苗に有効な窒素、リン、カリウム等の成分が挙げられ、例えば大塚化学株式会社製の商品名:大塚ハウス1号および2号等の市販品の培養剤を温水に適量添加して用いることができる。また、培養成分とは別にベンジルアデニン等の植物生長調節物質を添加してもよい。
【0025】
(弱光・低温貯蔵工程)
本発明において、養生工程を経た接ぎ木苗は、生産調整を主な目的として弱光および低温の環境条件下に所定期間貯蔵されてもよい。このとき、接ぎ木苗への水分補給は必要であるが、穂木と台木は活着しているため低温の空気中を高湿度に維持するといった非合理的な環境条件を維持する装置・設備は不要である。例えば、低温(15℃以下)に制御される貯蔵庫内に設置された水槽内の水(室温と同等の水温)に接ぎ木苗の開放端を浸漬させる、あるいは継続的に湿らせた布、不織布、吸水性樹脂またはこれらの組み合わせ等に接ぎ木苗の開放端を接触させてもよい。また、接ぎ木苗が開放端に成型培地を有する場合は、上記のような方法で水分補給してもよいが、定期的に水を散布すれば成型培地に水分が蓄えられるため、接ぎ木苗は根によって成型培地中の水分および養分を吸収することができる。なお、養生工程で用いた接ぎ木苗の保持部材を貯蔵庫内でもそのまま利用することができる。
【0026】
弱光・低温貯蔵工程では、接ぎ木苗の生長を停止または鈍化させた状態で一定期間(数週間〜数ヶ月)保存するために、気温(室温)および水温は15℃以下が好ましい。また、接ぎ木苗を光照射する光源としては、養生工程と同様のものが使用でき、光量(光合成有効光量子束密度)としては0〜30μmolm-2-1が適当であり、連続的または断続的に光照射することができる。
なお、この弱光・低温貯蔵工程は、接ぎ木苗を養生する役割もあるが、主として生産調整を目的としている。したがって、接ぎ木苗を早く出荷したい場合は、弱光・低温貯蔵工程を省略し、養生工程後直ぐに後述の順化工程に移ってもよい。
【0027】
(順化工程)
順化工程は、養成工程後または弱光・低温貯蔵工程後の接ぎ木苗を培地(苗床)に植え込んで大気中の屋外環境に順化させ、最終的に接ぎ木苗を出荷できる状態にすることを目的としている。したがって、この順化工程では、空調設備を有するビニールハウスなどの施設内の培地に接ぎ木苗を植え込み、定期的に水を散布し、日毎に施設内の気温や湿度を屋外の気温に近づけていく。なお、接ぎ木苗を出荷用ポットに収容した培地に植え込めば、その後の接ぎ木苗の出荷が容易となる。
【0028】
順化工程では、屋外環境に耐え得る状態まで接ぎ木苗を養生し順化させるが、その必要期間は、養生工程から直ぐに移した接ぎ木苗(条件A)と弱光・低温貯蔵工程を経た接ぎ木苗(条件B)とでは若干異り、さらに養生工程での接ぎ木挿し穂が成型培地を有さない場合(条件C)と有している場合(条件D)によっても異なる。また、接ぎ木苗の野菜の種類によっても若干異なる。以下に各種組み合わせの場合での順化工程の必要日数を説明する。
<ナス>
条件:A+C → 順化必要日数:3〜7日程度
条件:A+D → 順化必要日数:0日
条件:B+C → 順化必要日数:3〜7日程度
条件:B+D → 順化必要日数:0日
<トマト>
条件:A+C → 順化必要日数:3〜7日程度
条件:A+D → 順化必要日数:0日
条件:B+C → 順化必要日数:3〜7日程度
条件:B+D → 順化必要日数:0日
<キュウリ>
条件:A+C → 順化必要日数:2〜4日程度
条件:A+D → 順化必要日数:0日
条件:B+C → 順化必要日数:2〜4日程度
条件:B+D → 順化必要日数:0日
【0029】
弱光・低温貯蔵工程を経た接ぎ木苗(条件B)は、低温貯蔵期間である程度養生されているため、養生工程後直ぐに移した接ぎ木苗(条件A)よりも順化期間が短くて済む。養生工程での接ぎ木挿し穂が成型培地を有していない場合(条件C)は、接ぎ木苗を培地へ植え込むことにより発根するため、順化工程にてある程度養生する必要があるが、養生工程にて発根準備は完了しているので植え込み後は早い時期に活発に発根する。一方、成型培地を有している場合(条件D)は、養生工程で接ぎ木苗が発根しているため既に屋外環境に適応できる状態(出荷できる状態)にあり、よって順化工程は必ずしも必要はないが、順化させればより好ましい。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本発明の野菜の接ぎ木苗の育苗方法の実施形態1を示す工程説明図である。この育苗方法では、先ず、図1(a)および(b)に示すように、予め用意した穂木1(茎の長さ:30mm程度)および根の無い台木1(長さ:50mm程度)を接ぎ木接合具11(長さ10mm程度)にて直列に接合保持し、接ぎ木挿し穂3を形成する。ここで使用する接ぎ木接合具11は、一般的に弾性プラスチックからなる鍔付き筒状部材に軸方向の切れ込み(図示省略)が形成された市販品である(鍔の無い接合具を用いてもよい。)なお、便宜上、穂木1と台木2との接合部4の接触面(切断面)は軸方向に対して直角に図示されているが、実際の接触面は斜めである。
【0031】
次に、図1(c)および図2に示すように、複数の孔12aが1列に並べられ、かつ各孔12aに連通する切れ込み12bが形成された、厚さ4mm程度の長方形板状の保持カートリッジ(プレート状保持具)12を用意する。孔12aと孔12aの間隔は、隣接する接ぎ木挿し穂3の葉が重ならない程度が好ましく、例えば20〜50mm程度に設定されている。そして、穂木1を上向きにして接合具11を保持カートリッジ12の切れ込み12bを通して孔12aに嵌め込む。あるいは、接ぎ木挿し穂3を台木2から孔12aに挿入してもよい。これにより、接ぎ木挿し穂3が保持カートリッジ12の平面に対して垂直に保持されると共に、接合部4が保持カートリッジ12の孔12aの内部または保持カートリッジ12の下に位置する。保持カートリッジ12は、水に浮き、かつ断熱材としても機能する発泡プラスチックまたはスポンジからなり、孔12aの上端開口部には接合具11の鍔部11aを嵌め込む凹部12cが形成されている。なお、この保持カートリッジ12の凹部12cは無くてもよいが、接合具11の鍔部11aは孔12aよりも大きいため引っ掛かりとなって接ぎ木挿し穂3を下にずり落とさないように保持するため有効である。
【0032】
次に、複数の接ぎ木挿し穂3およびこれらを保持した保持カートリッジ12からなる苗保持ユニットU1の複数個を、図1(d)に示すような養生施設内の養生装置13に設置し、養生工程に入る。このとき、1つの保持カートリッジ12によって複数個の接ぎ木挿し穂3を輸送することができ、輸送性に優れる。
この養生装置13は、培養剤を含有する温水Wh(培養液)が収容された養生槽13aと、養生槽13a内に浄化した温水Whを循環供給し、かつ養生槽13a内の温水Whの温度を制御する温水制御手段13bを備える。また、養生槽13aは、内周面における温水Whの水面付近の高さ位置に保持カートリッジ12を嵌め込ませて反転しないように位置決めする枠部材13d(例えば発泡プラスチック)が設けられている。温水制御手段13bは、養生槽13a内の温水Whを給排水するための循環パイプ113aと、循環パイプ113aに接続されたポンプおよびフィルタと、温水Whを15〜35℃に制御するヒータとを具備する。また、養生装置13を設置する養生施設内には、接ぎ木挿し穂3に弱い光を照射する弱光ランプ13cと、室内の気温を制御可能な空調設備が備えられている。
【0033】
養生工程において、苗保持ユニットU1は温水Wh上に浮かび、接ぎ木挿し穂3の接合部4まで台木2が15〜35℃の温水Whに浸かり、穂木1は温水よりも低温の0〜20℃の空気中に露出している。また、弱光ランプ13cからは0〜30μmolm-2-1の光が照射されている。なお、接ぎ木の活着に光は必須ではないため、養生効果はやや劣るものの暗黒でも可能である。この状態で、接ぎ木挿し穂3は、接合部4と台木2のいずれかの一方が発根する直前まで養生される。これにより、養生工程の終了時には、図1(e)に示すように、接合部が活着し、かつ台木2の開放端に根の源基5aを有する接ぎ木挿し穂5が得られる。
【0034】
苗保持ユニットU1は、穂木1および台木2がそれぞれ発根する前に養生装置13から取り出され、その後、直ぐに順化工程に移される、あるいは弱光・低温貯蔵工程を経て順化工程に移される。
順化工程では、図1(g)に示すように、養生施設から苗ユニットU1を空調可能な順化施設内に搬送し、順化施設内で各ポット内の培地Bに接ぎ木苗5を植え込み、定期的に散水しながら徐々に施設内の気温や湿度等の環境条件を屋外と同等の環境に近づけていく。植え込まれた接ぎ木苗5は、根の源基5aを有しているため植え込み直後から数日(場合によっては1日)で、若くて元気な根が20〜30本程度発根する。
【0035】
一方、弱光・低温貯蔵工程に移る場合は、図1(f)に示すように、弱光光源15が設けられ、室温および換気を制御可能な低温貯蔵庫内に設置された水槽15内の水Wcに、養生施設から搬送された苗ユニットU1を浮かべて所定期間貯蔵する。なお、水槽16内の水を浄化して循環供給する循環装置17を設けてもよい。弱光・貯蔵工程では、水槽内の水Wcを加温しない点が養生工程とは異なり、その気温および水温は0〜15℃、好ましくは0〜10℃である。接ぎ木苗5を低温貯蔵庫から取り出して図1(g)のように培地Bへ植え込む時期は任意であり、出荷予定日および養生・順化の必要日数から逆算して植え込み時期を決定すればよい。
【0036】
(実施形態2)
図3は、本発明の野菜の接ぎ木苗の育苗方法の実施形態2を示す工程説明図である。なお、図3において、図1と同様の要素には同一の符号を付している。この育苗方法では、先ず、図3(a)および(b)に示すように、予め用意した穂木1および根の無い台木1を接ぎ木接合具11にて直列に接合保持し、接ぎ木挿し穂3を形成する。ここまでは実施形態1と同様であるが、その後、接ぎ木挿し穂3の開放端を成型培地6に植え込む。そして、図3(c)に示すように、成型培地6を有する接ぎ木挿し穂3を前記保持カートリッジ12の各孔12aに嵌め込んで、苗保持ユニットU2を形成する。
【0037】
その後、図3(d)に示すように、図1と同様の養生装置13の養生槽13a内に複数の苗保持ユニットU2を設置し、接ぎ木挿し穂3の接合部4から下の台木2を温水Whに浸漬する。この場合、成型培地6に培養成分が含まれているので、温水Whには培養剤が含まれていなくてもよい。そして、気温0〜20℃、水温15〜35℃、光量0〜30μmolm-2-1といった実施形態1と同様の環境条件で、接ぎ木挿し穂3を接合部4を活着させる。なお、接合部4が発根する前に接ぎ木苗を温水Whから引き上げる。
この養生工程により、工程の終了時には、図3(e)に示すように、接合部4が活着し、野菜の種類や台木2の品種によっては開放端の成型培地6中に根25aが生えた接ぎ木苗25が得られる。
【0038】
その後、苗保持ユニットU2を養生装置13から取り出し、図3(g)に示すように接ぎ木苗25をポット14内の培地Bへ植え込む。この培地Bへ植えられた接ぎ木苗25は、既に発根し屋外環境にも耐え得る体力を有している。
また、接ぎ木苗25を培地Bに植え込む前に、図3(f)に示すように、接ぎ木苗25を弱光・低温の環境条件下で貯蔵してもよい。この場合、弱光光源15を有し室内の気温および換気を制御可能な低温貯蔵庫内に苗保持ユニットU2を移し、定期的に散水してやればよい。例えば、図3(f)では、低温貯蔵庫内に苗保持ユニットU2を設置するための棚18を設け、成型培地6の下方に散水パイプ19を敷設し、給水源20から散水パイプ19に給水する場合を例示している。なお、貯蔵庫内の気温は実施形態1と同様に0〜15℃、好ましくは0〜10℃である。接ぎ木苗5を低温貯蔵庫から取り出して図3(g)のように培地Bへ植え込む時期は任意であり、植え込み後は直ぐに出荷することができる。
【0039】
(接ぎ木挿し穂の保持形態)
上述の実施形態1および2では、図4に示すように、接ぎ木挿し穂3の接合部4を筒状接合具11にて保持し、接合具11を保持カートリッジ12の孔12aに嵌め込んで苗保持ユニットを形成し、苗保持ユニットを養生槽13a内の枠部材13dに嵌め込んで温水Whの水面に浮かべるカートリッジタイプを例示したが、接ぎ木挿し穂の保持形態はこれに限定されず、以下のようにしてもよい。
例えば、図5に示すように、先ず、複数個の孔31aを並列して有し、養生槽13aの開口部サイズとほぼ同じサイズの発泡プラスチックパネル(プレート状保持具)31を用意する。そして、この発泡プラスチックパネル31を養生槽13a内の温水Wh上に浮かべ、接合具11にて保持した複数本の接ぎ木挿し穂3を台木2から発泡プラスチックパネル31の各孔31aに順次挿し込んでいく。この方法によれば、カートリッジタイプよりも接ぎ木苗の次工程施設への輸送性がよい。
【0040】
また、図6に示すように、筒状接合具を省略し、複数個の孔部を一列または複数列に配置したプレート状保持具41のみで接ぎ木挿し穂3を接合部分で垂直に保持するようにしてもよい。この場合、プレート状保持具41は、接合部4が外れないようしっかりと保持しかつ茎の成長に対応できる適度な弾性や断熱性を有し、かつ水に浮く素材(例えばスポンジ)にて形成される。この方法によれば、穂木1と台木2を直接保持カートリッジ4に挿し込むので、接ぎ木接合具にて接合する工程が削減できると共に、接ぎ木接合具のコストを削減できる。また、活着後の接ぎ木苗に接合具は不要であるため、省資源にも貢献できる。
また、図7に示すように、プレート状保持具は用いずに、温水Wh上に多数の発泡ビーズ51を浮かべ、接合具11にて保持した接ぎ木挿し穂3を台木2から発泡ビーズ51の層に挿し込む。このようにしても、接ぎ木挿し穂3を垂直に保持した状態で接合部4まで温水Whに浸けることができる。この方法によれば、接ぎ木挿し穂3同士の間隔を自在に調整できると共に、成型培地を有する場合でも対応できる。
【実施例】
【0041】
図8に示す3通りの方法でナスの断根接ぎ木挿し穂を養生し、養生開始後の接ぎ木挿し穂の接合部の活着具合を調べる実証実験を行なった。
(実施例1)
図1(a)〜(d)で説明した実施形態1の方法に基いて接ぎ木挿し穂を養生した。養生工程において、気温10℃、水温28℃、相対湿度80%、光合成有効光量子束密度10μmolm-2-1に制御し、接合部の温度を26℃に維持した。接合部の温度は、接ぎ木接合具に温度センサを挿し込んで測定した。
(比較例1)
気温9℃、水温10℃、相対湿度90%、接合部の温度が10℃であること以外は実施例1と同様にして接ぎ木挿し穂を養生した。
(比較例2)
図1(a)〜(b)で説明した方法に基いて接ぎ木挿し穂を形成し、接ぎ木挿し穂の台木を温室内の培地へ植え込んだ。温室内は気温15−30℃、相対湿度99%であり、培地は乾燥しない程度に散水した。
【0042】
実施例1、比較例1および2の接ぎ木挿し穂の活着具合を調べる方法は、接合具を取り外した接ぎ木挿し穂の穂木を固定し、台木の下部を引っ張り、接合部が千切れたときの引っ張り強度(荷重)を活着強度として評価し、その結果を図9に示した。なお、実施例1、比較例1および2の引っ張り強度測定には、それぞれ8個体の接ぎ木挿し穂が使用された。
図9の結果から、低温雰囲気管理で温水処理した実施例1は、温室で養生した比較例2よりも約2倍の速度で活着していることがわかった。また、低温雰囲気管理で冷水処理した比較例1は養生初日から4日経ってもほとんど活着が進んでいないことがわかった。
また、養生4日後の実施例1および比較例1の接ぎ木苗(それぞれ8個体)萎れの状態を観察した。実施例1はほとんど萎れが見られず、比較例1は萎れが見られ、葉内水分が大きく減少していた。
【0043】
また、養生4日後の実施例1および比較例1の接ぎ木苗(それぞれ10個体)を室温26℃、相対湿度99%に制御された施設内の培地へ植え込み、培地が乾燥しない程度に散水しながら育苗した。植え込みから4日後の各接ぎ木苗の根部と根部より上の穂部(残部=穂木+台木)の生体重を測定して平均値を求め、その結果を図10に示した。この結果から、実施例1は比較例1に比べて、穂部では約1.5倍、根部では約18倍成長していることがわかった。
よって、本発明の野菜の接ぎ木苗の育苗方法によれば、簡易な接ぎ木苗の活着促進装置によって、接ぎ木苗の養生の効率化を図ることができると共に、生産調整による低温貯蔵においても萎れを防止することができると言える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の野菜の接ぎ木苗の育苗方法の実施形態1を示す工程説明図である。
【図2】実施形態1における保持カートリッジの斜視図である。
【図3】本発明の野菜の接ぎ木苗の育苗方法の実施形態2を示す工程説明図である。
【図4】本発明における接ぎ木挿し穂の保持形態1を示す説明図である。
【図5】本発明における接ぎ木挿し穂の保持形態2を示す説明図である。
【図6】本発明における接ぎ木挿し穂の保持形態3を示す説明図である。
【図7】本発明における接ぎ木挿し穂の保持形態4を示す説明図である。
【図8】実施例1、比較例1および2の接ぎ木挿し穂の養生状態を示す図である。
【図9】実施例1、比較例1および2の接ぎ木挿し穂の活着具合を示すグラフである。
【図10】実施例1および比較例1の接ぎ木苗の生体重を示すグラフである。
【図11】従来の一般的な接ぎ木苗の生産工程例を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 穂木
2 台木
3 接ぎ木挿し穂
4 接合部
5、25 接ぎ木苗
5a 根の源基
6 成型培地
11 接ぎ木接合具
12 保持カートリッジ
13 養生装置
15 弱光ランプ
25a 根
A 空気
B 培地
Wh 温水
Wc 水(冷水)
U1、U2 苗保持ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台木と穂木とを直列に接合して接ぎ木挿し穂を形成する工程と、保持部材を用いて複数本の前記接ぎ木挿し穂を垂直に保持して養生する工程とを備え、
前記養生工程において、養生槽内で15〜35℃に維持され任意に培養成分を含む温水に、穂木が吸水可能な位置まで各接ぎ木挿し穂を浸漬させ、かつ前記穂木が露出する雰囲気の温度を前記温水よりも低い温度に維持して養生することにより、台木と穂木とを活着させて接ぎ木苗とすることを特徴とする野菜の接ぎ木苗の育苗方法。
【請求項2】
養生工程が、接ぎ木挿し穂が穂木から発根する前まで終了する請求項1に記載の野菜の接ぎ木苗の育苗方法。
【請求項3】
前記養生工程において、雰囲気の温度が0〜20℃である請求項1または2に記載の野菜の接ぎ木苗の育苗方法。
【請求項4】
前記台木は、開放端に根を有さない請求項1〜3のいずれか1つに記載の野菜の接ぎ木苗の育苗方法。
【請求項5】
前記養生工程は、台木の開放端から発根する前で終了する請求項4に記載の野菜の接ぎ木苗の育苗方法。
【請求項6】
前記養生工程の後、温水から引き上げた活着後の接ぎ木苗を培地へ植え込んで屋外環境に順化させる工程をさらに備える請求項1〜5のいずれか1つに記載の野菜の接ぎ木苗の育苗方法。
【請求項7】
前記養生工程の後、培地へ植え込む前に、温水から引き上げた活着後の接ぎ木苗を光量および水分補給が調整された貯蔵庫内で所定期間低温で貯蔵する工程をさらに備える請求項6に記載の野菜の接ぎ木苗の育苗方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−267682(P2007−267682A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98076(P2006−98076)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度、農林水産省、農林水産研究高度化事業委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(501296494)ベルグアース株式会社 (3)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】