説明

野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄排水の濾過処理方法

【課題】 野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄排水を濾過処理して、洗浄水として再利用するための濾過処理方法の提供。
【解決手段】 野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄排水を、少なくとも前記洗浄排水と接触する部分が親水性材料で形成されている限外濾過膜で濾過する濾過処理方法。前記限外濾過膜は、酢酸セルロースからなる内圧型中空糸膜が好ましい。濾過処理後の処理水は、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄水として循環使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄排水を濾過処理して、洗浄水として再利用できるようにする濾過処理方法、前記濾過処理方法による処理水を用いた野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や果物の洗浄には大量の清浄水が必要であり、一般的には水道水が使用されている。洗浄した後の洗浄排水は、そのまま排水されるか、もしくは荒いメッシュなどで大型の異物を除去し一部を再利用されている。
【0003】
近年、野菜や果物を食べやすい大きさにカットしたいわゆるカット野菜や、数種類のカット品を混合したサラダやミックスフルーツが、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売されるようになっている。
【0004】
このようなカット野菜や果物は、殺菌や洗浄を十分に行う必要があるため、大量の洗浄水を必要としている。また、カットした野菜や果物の細かい屑や切り口から、野菜汁や果汁が洗浄液や殺菌液(水道水に次亜塩素酸ナトリウムを混入したもの)に移るため、これらの再利用も難しい状況である。
【0005】
排水処理手段として多用される分離膜を、野菜等の洗浄排水の処理に使用することが考えられる。濁質成分は、精密濾過膜で除去できるが、有機物はほとんど除去できないので、逆浸透膜処理が必要となる。限外濾過膜は、高分子量の有機物であれば除去できるが、排水中の異物の性質によっては、除去できない場合がある。
【0006】
このため、膜による分離と、凝集や活性炭処理等を組み合わせた技術が検討されている。特許文献1では、野菜や果物などの農産物の洗浄水を精密濾過膜で濾過して再使用する技術が開示されている。
【0007】
この発明では、有機物除去のため凝集や活性炭処理を併用しているが、膜以外の技術を併用するため処理費用が上昇するため、経済的な方法ではない。また、膜の性能維持のため高圧で逆圧洗浄をしており、膜が破損するおそれもある。膜が破損すると、その部分から漏れが生じて処理水の水質を悪化させるため、特に食品関係の洗浄水に再利用する場合は衛生上の問題がある。
【特許文献1】特開平11−055081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄排水を処理した処理水を再利用できるようにする、濾過処理方法を提供することを課題とする。
【0009】
また本発明は、他の課題の解決手段として、前記濾過処理方法による処理水を再利用する野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄方法を提供することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、課題の解決手段として、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄排水を、少なくとも前記洗浄排水と接触する部分が親水性材料で形成されている限外濾過膜で濾過する濾過処理方法を提供する。
【0011】
本発明は、他の課題の解決手段として、請求項1〜3のいずれかに記載の濾過処理方法で得た処理水を、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄水として循環使用する、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の濾過処理方法で処理して得られた処理水は、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄水として循環使用することができるため、水資源を節約することができると共に、洗浄に要するコストも低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の濾過処理方法の処理対象は、各種野菜、各種果物のほか、花、その他の植物、及びこれらの加工品(切断乃至破砕物等)を洗浄したときに生じる洗浄排水である。
【0014】
本発明の濾過処理方法では、限外濾過膜で濾過処理する前、必要に応じて、ストレーナー等を用いて、葉や茎の破片、砂、小石等の大きめの異物を取り除く前処理をしてもよい。
【0015】
必要に応じて前処理した洗浄排水は、洗浄ラインから直接、又は一旦原水タンクに貯水した後に、加圧ポンプを作動させ、洗浄ライン又は原水タンクから、パイプを通して、限外濾過膜(濾過膜がモジュールケースに収容された限外濾過膜モジュール)に送って濾過する。
【0016】
本発明で用いる限外濾過膜は、少なくとも洗浄排水と接触する部分が親水性材料で形成されているものであるから、洗浄排水と接触しない部分は疎水性材料であってもよいが、膜全体が親水性材料からなるものが好ましい。
【0017】
親水性材料としては、酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、再生セルロース、これらの混合物、等のセルロース系材料を挙げることができる。また、ポリビニルアルコールなども使用できる。
【0018】
親水性材料と組み合わせることができる疎水性材料としては、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等を挙げることができる。
【0019】
本発明で用いる限外濾過膜は、全体が酢酸セルロースからなる中空糸膜が好ましく、特に内圧型中空糸膜が好ましい。
【0020】
限外濾過膜として中空糸膜を用いるときは、例えば、内径0.3〜3.0mm(好ましくは0.5〜1.0mm)、外径0.4〜5.0mm(好ましくは0.7〜1.7mm)で、分画分子量3,000以上(好ましくは100,000以上)のものを用いることができる。
【0021】
中空糸膜は、処理水の量や処理水中の濁質成分の濃度に応じて、必要な本数を束ねた1束又は2束以上の中空糸膜束として用いることができる。
【0022】
濾過運転条件(透水速度等)は、処理水の量や処理水中の濁質成分の濃度に応じて適宜設定することができるが、例えば、透水速度0.5〜5.0m/日で、10〜1500分間濾過運転した後、0.5〜5分間逆圧洗浄する運転を1サイクルとして、これを繰り返す方法を適用できる。逆圧洗浄水には、公知の次亜塩素酸ナトリウム等の薬液を添加してもよい。また、逆圧洗浄の代わりに、運転中に濾過のみ停止して、原水側のみ通液するフラッシュ洗浄を実施してもよいし、フラッシュ洗浄と逆圧洗浄と組み合わせてもよい。
【0023】
本発明の濾過処理方法は、必要に応じて、いずれも公知の凝集剤による処理、精密濾過、活性炭による処理と組み合わせることもできるが、前記の各処理と組み合わせることなく、本発明の濾過処理方法で処理して得られた処理水は、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄水として、そのまま循環使用することができる。なお、前記処理水を洗浄水として再利用するときには、必要に次亜塩素酸ナトリウム等の殺菌剤を添加してもよいし、水道水と混合してもよい。
【実施例】
【0024】
(純水透過能力)
作製したモジュールを、98kPa の圧力下で純水を内圧にてデッドエンド濾過し、単位時間、単位膜面積(内表面積換算)あたりに透過する純水量を測定した。更に、濾過液の水温を測定し、水温25℃の水の粘度を基準として、測定水温の粘度の比率を測定した純水量にかけて、純水透過能力とした。
【0025】
実施例1
酢酸セルロース中空糸膜(FUC1582;内径0.8mm,外径1.3mm、分画分子量15万ダルトン)を20本束ね、内径20mmの長さ30cmのモジュールケースに収納し、両端をウレタン接着剤で封止したモジュールを作製した。このモジュールの膜面積は、0.0132mであった。このモジュールの純水透過能力を内圧全量濾過で測定したところ、601L/m・hr(25℃、98kPa換算)であった。
【0026】
このモジュールに野菜汁を想定した野菜ジュース(商品名;野菜一日これ一本、カゴメ(株)製)を1000ppm加えた水道水を、内圧50kPa以下で、部分濾過(濾過液80%、濃縮液20%)を行った。濾過液と濃縮液は系外へ排出した。膜面積あたりの濾過量が、100L/mに達した段階で濾過を停止し、水道水で置換した後、モジュールの純水透過能力を野菜ジュースの濾過前と同様に測定したところ、422L/m・hrであった。
【0027】
これは、初期の純水透過能力の70%であった。更に、水道水を用い、圧力50kPaで逆圧洗浄したところ、純水透過能力は、547L/m・hrまで回復した。これは初期の純水透過能力の91%であった。
【0028】
比較例1
膜をポリエーテルサルホン製(FUS1582;内径0.8mm,外径1.3mm,分画分子量15万ダルトン)に変更した以外は、全く同様にして、モジュールを作製し、全く同様の濾過処理を行った。その結果、初期の純水透過能力に対し、濾過直後は34%まで低下し、逆圧洗浄後では、38%までしか回復しなかった。
【0029】
実施例2
実施例1で得られた濾過液2リットルに、カットレタス50gを入れ、20分間攪拌して、濾過液とカットレタスを接触させた。その後、濾過液を良く切った直後のレタスの菌数と、72時間冷蔵庫で保存した後のレタスの菌数を、一般細菌数と大腸菌群数で評価した。一般細菌数は標準寒天平板培養法にて、大腸菌群数はデソキシコレート寒天平板培養法で培養した。
【0030】
その結果、レタス1個当たりの菌数は、一般細菌数は、直後で6.2×10、72時間保存後で1.6×10であった。大腸菌群数は、直後で1.5×10、72時間保存後で1.7×10であった。
【0031】
比較例2
実施例1で得られた濾過液の代わりに水道水を使用した以外は、全く同様にして評価した。その結果、レタス1個当たりの菌数は、一般細菌数は、直後で7.8×10、72時間保存後で1.9×10であった。大腸菌群数は、直後で2.2×10、72時間保存後で1.9×10であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄排水を、少なくとも前記洗浄排水と接触する部分が親水性材料で形成されている限外濾過膜で濾過する濾過処理方法。
【請求項2】
前記限外濾過膜に含まれる親水性材料がセルロース系材料である、請求項1記載の濾過処理方法。
【請求項3】
前記限外濾過膜が、酢酸セルロースからなる内圧型中空糸膜を用いたものである、請求項1又は2記載の濾過処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の濾過処理方法で得た処理水を、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄水として循環使用する、野菜及び/又は果物を含む植物の洗浄方法。




【公開番号】特開2007−181772(P2007−181772A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1504(P2006−1504)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】