説明

金型付着の低減したポリイミド樹脂

プレートアウト及び金型付着物の低減したポリイミド樹脂を製造するためのポリイミド組成物及び方法が記載される。樹脂成形作業に際し、低プレートアウト樹脂は装置のクリーニングの間の作業期間が長く、一層効率のよい作業をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型付着の低減したポリイミド樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド、特にポリエーテルイミドは、有用な高性能ポリマーであることが知られている。ポリエーテルイミドは、ポリイミドの高温特性を併せ持つが、それでも圧縮成形、ガスアシスト成形、異形押出、熱成形及び射出成形のような通常の成形技術で容易に成形するのに十分な溶融加工性を有している。ポリエーテルイミドの溶融加工性は成形品を形成するために非常に有用であったが、溶融ポリマーを加工して成形品を形成するための装置上への付着物の蓄積に関する欠点が認められてきた。これは、射出成形プロセスで特に顕著であった。成形時、特に長時間の成形作業に際し、加工装置上(例えば、金型そのものの内部)に付着物が蓄積する。このような蓄積は、しばしばプレートアウトといわれる。プレートアウトは溶融加工装置の適正な動作を妨害し、プロセスによって製造される成形品の性能及び美観を損なうことがある。したがって、これらの金型付着物は金型及び装置から定期的に除去しなければならない。これは、装置の運転を停止し、通常は手作業で金型のクリーニングを行うことを意味する。これは、作業員を潜在的に危険な状況にさらすと共に、装置及び/又は金型をクリーニングする間には製造量の損失を引き起こす。このように、ポリエーテルイミド樹脂の溶融加工に伴う金型付着は問題を提起する。
【0003】
Dellacolettaの米国特許第4910288号には、無水フタル酸(PA)末端封鎖剤の使用に起因するポリエーテルイミド(PEI)樹脂中の低分子量化学種について記載されており、低分子量化学種を低減させるためのプロセスが記載されている。ビスフェノールA二無水物とm−フェニレンジアミン(MPD)との反応で製造される無水フタル酸封鎖ポリエーテルイミドでは、2モルのPAと1モルのMPDとの反応で低分子量化学種が生成する。この化合物は、無水フタル酸−m−フェニレンジアミンイミド(PAMI)である。PAMIは、市販のポリエーテルイミド製品の成形時に見られるプレートアウトの主な低分子量成分の一種である。米国特許第4910288号のプロセスを用いるとPAMI含有量は低減するものの、なくなるわけではなく、PAMIは依然として存在する。さらに、米国特許第4910288号に教示された製造プロセスは複雑であり、終了までに多大な時間を要する。米国特許第4910288号の長時間プロセスでは、ポリイミド樹脂製造用の非常に高価な装置が低い効率で使用されることになる。
【特許文献1】米国特許第4910288号
【発明の開示】
【0004】
我々は、ポリイミド樹脂及び樹脂の製造に使用する方法を変更することで、金型付着を劇的に低減させ、さらには排除できることを見出した。
【0005】
一態様では、本発明は、以下の式の構造単位を含んでなるポリイミド組成物の製造方法であって、
当該方法が分子量100〜500の有機ジアミンモノマーと分子量218〜1000の芳香族二無水物モノマーとを反応させることを含み、ポリエーテルイミドの分子量が分子量93〜250の芳香族モノアミン封鎖剤の添加で調節され、
ポリイミドに含まれる不純物がポリイミドの重量を基準にして5重量%未満であり、上記不純物が約500ダルトン未満の分子量を有していて、1種以上のモノマー単位又は1種以上の芳香族モノアミンから誘導される構造単位を含んでいる、方法に関する。
【0006】
【化1】

式中、「a」は1を超える値を有し、Vは四価リンカーであり、Rは置換又は非置換二価有機基である。
【0007】
別の態様では、本発明は、以下の式の構造単位を含んでなるポリイミド組成物であって、
上記構造単位が分子量100〜500の有機ジアミンモノマーと分子量218〜1000の芳香族二無水物モノマーから誘導され、当該ポリイミドがさらに分子量93〜250の芳香族モノアミン封鎖剤から誘導される構造単位を含んでおり、
当該ポリイミドに含まれる不純物が当該ポリイミドの重量を基準にして5重量%未満であり、上記不純物が約500ダルトン未満の分子量を有していて1種以上のモノマー単位又は1種以上の芳香族モノアミンから誘導される構造単位を含んでいる、ポリイミド組成物に関する。
【0008】
【化2】

式中、「a」は1を超える値を有し、Vは四価リンカーであり、Rは置換又は非置換二価有機基である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
一実施形態では、本発明はポリイミド組成物の重量を基準にして低分子量不純物含量が5重量%未満のポリイミドに関する。ポリイミドは、有機ジアミン又は化学的に同等な誘導体と、芳香族環状二無水物、芳香族テトラカルボン酸、又は環状無水物を生成し得るその誘導体との反応から導くことができる。今回、ポリイミドの分子量の調節に芳香族モノアミンを使用すると、分子量の調節に単官能性無水物を使用した場合よりも金型付着が実質的に低減するという予想外の知見を得た。
【0010】
有用なポリイミド樹脂には、下記の一般式(I)の構造単位を有するものがある。
【0011】
【化3】

式中、「a」は1を超え、通例は約10〜約1000以上、さらに好ましくは約10〜約500の値を有し、Vはポリイミドの合成又は使用を妨げない限りは特に限定されない四価リンカーであり、Rは置換又は非置換二価有機基である。好適なリンカーには、特に限定されないが、(a)炭素原子数約5〜約50の置換又は非置換、飽和又は不飽和の芳香族単環式及び多環式基、(b)炭素原子数1〜約30の置換又は非置換、線状又は枝分れ、飽和又は不飽和のアルキル基、或いはこれらの組合せがある。好ましいリンカーには、特に限定されないが、以下の式(II)の四価芳香族基がある。
【0012】
【化4】

式中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−C2y−(yは1〜5の整数である。)及びこれらのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)からなる群から選択される二価部分、又は式−O−Z−O−の基である。ここで、−O−又は−O−Z−O−基の二価結合は3,3′位、3,4′位、4,3′位又は4,4′位にある。
【0013】
若干の実施形態では、部分「Z」はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素から誘導される二価芳香族基であり、下記の一般式(III)を有する。
【0014】
【化5】

式中、「A」は、特に限定されないがフェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどを含む芳香族基である。若干の実施形態では、「E」は、特に限定されないがメチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデンなどを含むアルキレン又はアルキリデン基であり得る。他の実施形態では、「E」がアルキレン又はアルキリデン基である場合、それはアルキレン又はアルキリデンと異なる部分で結合された2以上のアルキレン又はアルキリデン基からなっていてもよい。かかる結合部分には、特に限定されないが、芳香族結合、第三級窒素結合、エーテル結合、カルボニル結合、含ケイ素結合(シラン、シロキシ)、含硫黄結合(特に限定されないが、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどを含む)又は含リン結合(特に限定されないが、ホスフィニル、ホスホニルなどを含む)がある。他の実施形態では、「E」は脂環式基(その非限定的な例には、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イリデン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンがある)、含硫黄結合(特に限定されないが、スルフィド、スルホキシド又はスルホンを含む)、含リン結合(特に限定されないが、ホスフィニル又はホスホニルを含む)、エーテル結合、カルボニル基、第三級窒素基又は含ケイ素結合(特に限定されないが、シラン又はシロキシを含む)であり得る。Rは、各々独立に一価炭化水素基(特に限定されないが、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルを含む)を表す。様々な実施形態で、Rの一価炭化水素基は、例えば式C=C(Z)(式中、1以上のZが塩素又は臭素であることを条件にして、各Zは水素、塩素又は臭素である。)のジハロアルキリデン基及び上述の部分の混合物のように、ハロゲン置換(特にフルオロ又はクロロ置換)されたものであり得る。特定の実施形態では、ジハロアルキリデン基はジクロロアルキリデン基、特にgem−ジクロロアルキリデン基である。Yは、各々独立に無機原子(特に限定されないが、ハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)を含む)、2以上の無機原子を含む無機基(特に限定されないが、ニトロを含む)、有機基(特に限定されないが、一価炭化水素基(特に限定されないが、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルを含む)、或いはオキシ基(特に限定されないが、OR(式中、Rは一価炭化水素基(特に限定されないが、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルを含む)である。)を含む)であり得る。なお、Yはポリマーの製造に使用する反応体及び反応条件に対して不活性であり、これらの影響を受けないものでありさえすればよい。若干の特定の実施形態では、Yはハロ基又はC〜Cアルキル基からなる。文字「m」は、0(0を含む)からA上の置換可能な部位の数までの整数を表し、「p」は0(0を含む)からE上の置換可能な部位の数までの整数を表し、「t」は1以上に等しい整数を表し、「s」は0又は1に等しい整数を表し、「u」は0を含む任意の整数を表す。
【0015】
式(III)で2以上のY置換基が存在する場合、これらは同一のものであっても相異なるものであってもよい。同じことは、R置換基についても当てはまる。式(III)中の「s」が0で、「u」が0でない場合、芳香環同士はアルキリデン又は他の橋かけ基の介在なしに共有結合で直接に結合される。芳香核残基A上での酸素基及びYの位置はオルト位、メタ位又はパラ位に変化し得ると共に、炭化水素残基の2以上の環内炭素原子がY及び酸素基で置換される場合、これらの基は隣接関係、非対称関係又は対称関係にあり得る。若干の特定の実施形態では、パラメーター「t」、「s」及び「u」の各々は1の値を有し、A基は共に非置換フェニレン基であり、Eはイソプロピリデンのようなアルキリデン基である。若干の特定の実施形態では、Aは共にp−フェニレンであるが、両方がo−又はm−フェニレンであってもよいし、一方がo−又はm−フェニレンで、他方がp−フェニレンであってもよい。
【0016】
部分「Z」の若干の実施形態では、部分「E」は不飽和アルキリデン基からなり得る。この場合に「Z」を導くことができる好適なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、以下の式(IV)のものがある。
【0017】
【化6】

式中、各Rは独立に水素、塩素、臭素、或いはC1−30一価炭化水素又は炭化水素オキシ基であり、各Zは、1以上のZが塩素又は臭素であることを条件にして水素、塩素又は臭素である。
【0018】
部分「Z」の例には、以下の式(V)のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素から誘導されるものもある。
【0019】
【化7】

式中、各Rは独立に水素、塩素、臭素、或いはC1−30一価炭化水素又は炭化水素オキシ基であり、R及びRは独立に水素又はC1−30一価炭化水素である。
【0020】
本発明の様々な実施形態では、部分「Z」は、米国特許第2991273号、同第2999835号、同第3028365号、同第3148172号、同第3271367号及び同第3271368号に名称或いは式(一般式又は特定式)で開示されたジヒドロキシ置換芳香族炭化水素から導くことができる。本発明の若干の実施形態では、かかるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4′−オキシジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、及び上述のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の混合物がある。他の実施形態では、かかるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、3,3−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及びビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドがある。若干の実施形態では、芳香族二無水物モノマーはさらに、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、スルホン、ペルフルオロアルキル基及びこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。特定の実施形態では、かかるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素はビスフェノールAからなる。
【0021】
若干の実施形態では、「Z」は、「E」がアルキレン又はアルキリデン基であると共に、1つの酸素置換基を有する1以上の芳香族基に結合した1以上の縮合環の一部であるようなジヒドロキシ置換芳香族炭化水素から導くことができる。この種の好適なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール及び1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オールのようなインダン構造単位を含むものがある。また、縮合環の一部として1以上のアルキレン又はアルキリデン基を含む種類の好適なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−1,1′−スピロビ[1H−インデン]ジオールも含まれ、その具体例には2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール(時には「SBI」として知られる)がある。ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素から誘導される構造−O−Z−O−は、上述のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の任意のものを含む混合物から誘導される構造単位の混合物からもなり得る。
【0022】
若干の実施形態では、Zは、特に限定されないが以下の式(VI)の二価基を含む。
【0023】
【化8】

式中、Qは特に限定されないが、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−C2y−(yは1〜5の整数である。)及びこれらのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)からなる群から選択される二価部分を含む。
【0024】
式(I)中の部分Rは、特に限定されないが、(a)炭素原子数約6〜約20の芳香族炭化水素基及びこれらのハロゲン化誘導体、(b)炭素原子数約2〜約20の直鎖又は枝分れアルキレン基、(c)炭素原子数約3〜約20のシクロアルキレン基、或いは(d)下記の一般式(VII)の二価基を含む。
【0025】
【化9】

式中、Qは特に限定されないが、共有結合、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−C2y−(yは1〜5の整数である。)及びこれらのハロゲン化誘導体(ペルフルオロアルキレン基を含む)からなる群から選択される二価部分を含む。
【0026】
好ましい部類のポリイミドポリマーには、ポリ(アミドイミド)ポリマー及びポリエーテルイミドポリマー、特に溶融加工性を有する当技術分野で公知のポリエーテルイミドポリマー(例えば、その製法及び性質が米国特許第3803085号及び同第3905942号に記載されているもの)がある。最も好ましいポリイミド樹脂は、ポリエーテルイミド又はポリイミド構造単位及びポリエーテルイミド構造単位の両方を含むコポリマーである。
【0027】
ポリイミドの重合に際しては、触媒を使用することが多くの場合に有利である。触媒の例は、米国特許第4324882号に記載されているような酸素化化合物のアルカリ金属塩、或いは米国特許第4293683号に記載されているようなカルボン酸のアルカリ金属塩又は亜鉛塩である。他の触媒も、イミド生成を促進するのに有効な量で使用できる。好ましい触媒は、フェニルホスフィン酸のナトリウム塩としても知られるフェニルホスフィン酸ナトリウムである。触媒レベルは、広範囲に(例えば、ポリマーの重量を基準にして10〜500ppmの範囲で)変化し得る。
【0028】
好ましいポリエーテルイミド樹脂は、以下の式(VIII)の構造単位を2以上、通例は約10〜約1000以上、さらに好ましくは約10〜約500含んでいる。
【0029】
【化10】

式中、Tは−O−又は式−O−Z−O−の基である。ここで、−O−又は−O−Z−O−基の二価結合は3,3′位、3,4′位、4,3′位又は4,4′位にあり、Zは上記に定義した通りである。
【0030】
一実施形態では、ポリエーテルイミドは、上述のエーテルイミド単位に加えて、さらに以下の式(IX)のポリイミド構造単位を含むコポリマーであり得る。
【0031】
【化11】

式中、Rは式(I)に関して前記に定義した通りであり、Mは特に限定されないが上述の式(II)の基を含む。
【0032】
ポリエーテルイミドは、以下の式(X)の芳香族ビス(エーテル無水物)モノマーと以下の式(XI)の有機ジアミンモノマーとの反応を含む、当業者にとって公知の方法のいずれかで製造できる。
【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

式中、T及びRはそれぞれ式(VIII)及び式(I)に関して上述したように定義される。
【0035】
特に好ましい実施形態では、ポリエーテルイミド樹脂は、式(VIII)に従った構造単位であって、各Rが独立にp−フェニレン又はm−フェニレン或いはこれらの混合物であり、Tが以下の式(XII)の二価基である構造単位を含んでいる。
【0036】
【化14】

特定の実施形態では、部分Tが式(XII)からなる場合、ポリエーテルイミドは、以下の式(XIII)、(XIV)及び(XV)並びにこれらの混合物からなる群から選択される構造単位を含み得る。
【0037】
【化15】

式(XIII)〜(XV)の構造単位は、それぞれ2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、混合二無水物である2−[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−2−[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、及び2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物としての芳香族ビス(エーテル無水物)から誘導される。上述の芳香族ビス(エーテル無水物)の任意の混合物も使用できる。特定の一実施形態では、約90モル%以上の2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む芳香族ビス(エーテル無水物)組成物がポリエーテルイミド組成物の合成で使用される。別の特定の実施形態では、約95モル%以上の2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物を含む芳香族ビス(エーテル無水物)組成物がポリエーテルイミド組成物の合成で使用され、以後はこの特定の芳香族ビス(エーテル無水物)組成物をビスフェノールA二無水物又は「BPADA」ということがある。これらの二無水物は、ビスフェノールAと適当なフタル酸無水物誘導体(例えば、4−クロロフタル酸無水物、3−クロロフタル酸無水物、4−ニトロフタル酸無水物、4−ニトロフタル酸無水物又はこれらの混合物)との反応で得ることができる。
【0038】
ポリイミド、特にポリエーテルイミドポリマーの数多くの製造方法として、米国特許第3847867号、同第3814869号、同第3850885号、同第3852242号、同第3855178号、同第3983093号及び同第4443591号に開示されたものが挙げられる。
【0039】
若干の実施形態では、ポリイミド合成のための好適な有機ジアミンは芳香族ジアミンからなり、その具体例には、特に限定されないが、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,6−ジエチル−4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、4,6−ジエチル−2−メチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,6−ビス(メルカプトメチル)−4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、4,6−ビス(メルカプトメチル)−2−メチル−1,3−フェニレンジアミン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、4,4′−オキシジアニリン、3,4′−オキシジアニリン、3,3′−オキシジアニリン、1,2−ビス(4−アミノアニリノ)シクロブテン−3,4−ジオン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2′−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ビス(p−β−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、1,2−ビス(3−アミノフェノキシ)エタン、ジアミノベンズアニリド、アミノフェノキシビフェニル、ビス(アミノフェノキシ)フェニルスルホン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(アミノフェノキシ)フルオレン及びm−キシレンジアミンがある。上述のジアミンの混合物も使用できる。例えば、2,6−ジエチル−4−メチル−1,3−フェニレンジアミンと4,6−ジエチル−2−メチル−1,3−フェニレンジアミンとの重量比80:20の組合せであるETHACURE100、及び2,6−ビス(メルカプトメチル)−4−メチル−1,3−フェニレンジアミンと4,6−ビス(メルカプトメチル)−2−メチル−1,3−フェニレンジアミンとの重量比80:20の組合せであるETHACURE300のようなETHACUREジアミンも使用できる。
【0040】
若干の実施形態では、好ましいジアミノ化合物は、ベンジル性水素を含まない芳香族第一ジアミン、特にm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン及びこれらの混合物である。若干の実施形態では、有機ジアミンは、エーテル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホン基、ペルフルオロアルキル基及びこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含み得る。若干の特定の芳香族ビス(エーテル無水物)及び芳香族ジアミンの例は、例えば、米国特許第3972902号及び同第4455410号に開示されている。
【0041】
ポリイミド合成のための芳香族二無水物の非限定的な具体例には、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ヒドロキノンジフタル酸無水物、レゾルシノールジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、ビスフェノールA二無水物、ベンゾフェノン二無水物、ピロメリト酸二無水物、ビフェニレン二無水物及びオキシジフタル酸無水物並びにこれらの混合物がある。最も好ましい二無水物は、ビスフェノールA二無水物、ベンゾフェノン二無水物、ピロメリト酸二無水物、ビフェニレン二無水物及びオキシジフタル酸無水物である。
【0042】
ポリイミドを末端封鎖するために使用できる芳香族モノアミンは、通例約3〜約24の環内炭素原子を有する第一アミンであり、特に限定されないが、置換又は非置換アニリン、置換又は非置換ナフチルアミン、及び置換又は非置換ヘテロアリールアミンを含み得る。これらの芳香族モノアミンは、芳香環に結合した追加の官能基、特に限定されないが、アリール基、アルキル基、アリールアルキル基、スルホン基、エステル基、アミド基、ハロゲン、アルキル−ハロゲン又はアリール−ハロゲン基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基或いはアリールケト基を有し得る。芳香族モノアミン上の若干の特定の置換基には、特に限定されないが、ハロ及びペルフルオロアルキルがある。結合した官能基は、ポリイミドの分子量の調節に働くという芳香族モノアミンの機能を妨げてはならない。
【0043】
本発明のポリイミドを封鎖するために使用する芳香族モノアミンの量は、前記ポリイミドの所望分子量を与える任意の量であり得る。若干の特定の実施形態では、芳香族モノアミンの量は、全アミン含有量を基準にして0.1〜15.0モル%の範囲内又は0.1〜5.0モル%の範囲内にあり得る。ここで、全アミン含有量は芳香族モノアミン及び有機ジアミンを含む。
【0044】
特記しない限り、本発明の様々な実施形態で使用する「アルキル」という用語は、炭素及び水素原子を含むと共に、任意には炭素及び水素以外の原子(例えば、周期表の第15、16及び17族から選択される原子)を含む線状アルキル基、枝分れアルキル基、アラルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基及びポリシクロアルキル基を表すものである。「アルキル」という用語は、アルコキシド基のアルキル部分も包含する。様々な実施形態では、ノルマルアルキル基及び枝分れアルキル基は1〜約32の炭素原子を含むものであり、非限定的な例として、C1〜C32アルキル、C3〜C15シクロアルキル又はアリールから選択される1以上の基で任意に置換されたC1〜C32アルキル、及びC1〜C32アルキルから選択される1以上の基で任意に置換されたC3〜C15シクロアルキルを包含する。若干の特定の具体例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルがある。シクロアルキル基及びビシクロアルキル基の若干の非限定的な具体例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロヘプチル及びアダマンチルがある。様々な実施形態では、アラルキル基は7〜約14の炭素原子を含むものである。これらには、特に限定されないが、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル及びフェニルエチルがある。様々な実施形態では、本発明の様々な実施形態で使用されるアリール基は、6〜18の環内炭素原子を含む置換又は非置換アリール基である。これらのアリール基の若干の非限定的な具体例には、C1〜C32アルキル、C3〜C15シクロアルキル又はアリールから選択される1以上の基で任意に置換されたC6〜C15アリールがある。アリール基の若干の特定の具体例には、置換又は非置換フェニル、ビフェニル、トルイル及びナフチルがある。ヘテロアリール基は約3〜約10の環内炭素原子を含むものからなり、特に限定されないが、トリアジニル、ピリミジニル、ピリジニル、フラニル、チアゾリニル及びキノリニルがある。
【0045】
本発明のポリイミド組成物中の低分子量不純物は、約500ダルトン未満の分子量を有すると共に、1種以上のモノマー単位又は1種以上の芳香族モノアミン或いはその両方から誘導される構造単位を含む化学種を含んでいる。かかる不純物は、未反応モノマー又は封鎖剤或いはその両方も含み得る。かかる不純物は、1モルの二無水物と1モルの有機ジアミンとの反応、又は2モルの二無水物と1モルの有機ジアミンとの反応、又は1モルの二無水物と2モルの有機ジアミンとの反応から誘導されることもある。かかる不純物は、1モルの二無水物と1モルの芳香族モノアミンとの反応、又は1モルの二無水物と2モルの芳香族モノアミンとの反応から誘導されることもある。かかる不純物は、上述の不純物の誘導体(例えば、アミド酸部分を含むもの)も含み得る。本発明では、ポリイミド組成物中の低分子量不純物の規定量は、ポリイミド組成物の重量を基準にして約0〜約5重量%又は約0.1〜約4重量%又は約0.2〜約3重量%又は約0.3〜約2重量%又は約0.3〜約1.5重量%の範囲内にある。特定の一実施形態では、ポリイミド組成物中の低分子量不純物は、ポリイミド組成物の重量を基準にして5重量%未満の量で存在している。別の特定の実施形態では、ポリイミド組成物は低分子量不純物を実質的に含まないが、これは不純物が常用される分析方法の検出限界未満で存在し得ることを意味している。
【0046】
本発明の別の態様は、分子量100〜500の1種以上の芳香族ジアミンと分子量218〜1000の1種以上の芳香族二無水物とを反応させることを含んでなるポリイミドの製造方法であって、ポリイミドの分子量が分子量93〜250の1種以上の芳香族モノアミン封鎖剤の添加で調節される方法である。本発明の別の態様では、芳香族ジアミンは108〜200の分子量を有し、芳香族二無水物は300〜700の分子量を有する。芳香族ジアミン、芳香族二無水物及び芳香族モノアミン封鎖剤がベンジル性プロトンを実質的に含まない場合に製造されるポリイミドは、得られたポリマーの溶融安定性が増大するため、若干の実施形態(特に溶融重合を伴うもの)では好ましいことがある。本発明に関しては、ベンジル性プロトンを実質的に含まないとは、ポリイミド生成物がベンジル性プロトンを含むモノマー及び/又は末端封鎖剤から誘導される構造単位を5モル%未満又は3モル%未満又は1モル%未満有することを意味する。特定の一実施形態では、ベンジル性プロトンを実質的に含まないとは、ポリイミド生成物がベンジル性プロトンを含むモノマー及び/又は末端封鎖剤から誘導される構造単位を0モル%有することを意味する。
【0047】
一般に、重合反応は、例えば式(X)の二無水物と式(XI)のジアミンとの反応を行わせるための公知溶媒(特に限定されないが、o−ジクロロベンゼン、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、m−クレゾール/トルエンなど)を用いて約100〜約250℃の温度で実施できる。別法として、ポリエーテルイミドは、同時に攪拌を行いながら出発原料の混合物を高温に加熱することによる芳香族ビス(エーテル無水物)(X)とジアミン(XI)との溶融重合で製造できる。一般に、溶融重合では約200〜約400℃の温度が使用される。かかる反応では枝分れ剤も使用できる。ポリエーテルイミド/ポリイミドコポリマーを使用する場合、ピロメリト酸二無水物又はオキシジフタル酸無水物のような二無水物をビス(エーテル無水物)と共に使用できる。ポリエーテルイミド樹脂は、芳香族ビス(エーテル無水物)モノマーと有機ジアミンモノマーとの反応で製造できるが、2種類のモノマーは実質的に等モル量で存在するか、或いは一方のモノマーが他方のモノマーに対して約0.2モル以下(好ましくは約0.2モル未満)過剰に反応混合物に存在するか、又は一方のモノマーが他方のモノマーに対して約0.1モル以下(好ましくは約0.1モル未満)過剰に反応混合物に存在するか、又は一方のモノマーが他方のモノマーに対して約0.05モル以下(好ましくは約0.05モル未満)過剰に反応混合物に存在するか、又は一方のモノマーが他方のモノマーに対して約0.02モル以下(好ましくは約0.02モル未満)過剰に反応混合物に存在する。
【0048】
一般に、有用なポリイミド樹脂、特にポリエーテルイミド樹脂は、6.6キログラム(kg)の分銅を使用しながらASTM D1238に従って337℃で測定して約0.1〜約10グラム/分(g/min)のメルトインデックスを有する。好ましい実施形態では、有用なポリイミド樹脂は、ポリスチレン標準を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して約10000〜約150000グラム/モル(g/モル)の重量平均分子量(Mw)を有する。好ましいポリイミド樹脂、特にポリエーテルイミド樹脂は、10000〜60000g/モルのMwを有する。かかるポリイミド樹脂、特にポリエーテルイミド樹脂は、通例は25℃のクロロホルム又はo−クレゾール中で測定して約0.2デシリットル/グラム(dl/g)を超え、好ましくは約0.35〜約0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0049】
本発明の実施に際しては、芳香族モノアミン連鎖停止剤を任意適宜の時点で(例えば、重合時に)一度に又は少しずつポリイミド反応混合物に混合するか、又は溶融重合前にプレポリマーの一部として組み込むことができる。例えば、一方法では、芳香族二無水物及び有機ジアミンを連鎖停止剤の存在下で重合させることができる。別の方法では、溶融重合に先立って連鎖停止剤をプレポリマーの鎖端に組み込むことができる。さらに別の方法では、溶融重合に先立って連鎖停止剤をプレポリマーのプレポリマーに添加することができる。別の実施形態では、芳香族モノアミン連鎖停止剤及び有機ジアミンモノマーを均質に混合し、芳香族二無水物を含む反応混合物に一緒に添加する。芳香族モノアミン連鎖停止剤及び有機ジアミンモノマーは、公知方法(その具体例には、静止ミキサーを通しての混合及び溶媒中での混合がある。)を用いて均質に混合できる。ポリイミドを製造するための公知方法は、本発明の技術的範囲内に含まれる。
【0050】
本発明のポリイミド樹脂は、金型付着物の少ない組成物を得るため、さらに補強材、充填材及び着色剤並びに他の樹脂とブレンドすることができる。補強繊維及び充填材は、組成物の全重量を基準にして組成物の約5〜約50重量%、好ましくは約10〜約35重量%を占めることができる。好ましい補強繊維は、ガラス、セラミック、金属及び炭素であり、一般にその製造方法と共に当技術分野で公知である。石灰−アルミノホウケイ酸ガラスからなる繊維状ガラスフィラメント(「E」ガラスとしても知られる)が、多くの場合に特に好ましい。かかるフィラメントは、標準的な方法(例えば、蒸気吹き、空気吹き、火炎吹き及び機械的延伸)で製造できる。プラスチック補強用として好ましいフィラメントは、機械的延伸で製造される。最適の機械的性質を達成するためには、6〜20ミクロン又は10〜15ミクロンの範囲内の繊維直径が通例好ましい。通常は円形横断面の繊維が使用されるが、繊維は円形でない横断面を有することもできる。
【0051】
成形組成物の製造に際しては、繊維を長さ約0.3175〜約1.27センチメートル(cm)のチョップトストランドの形態で使用するのが好都合であるが、ロービングも使用できる。かかる組成物から成形される物品では、恐らくは組成物のコンパウンディング時の繊維の断片化のため、繊維の長さはさらに短くなるのが通例である。
【0052】
繊維は、樹脂母材への密着性を向上させるため、各種のカップリング剤で任意に処理することができる。好ましいカップリング剤には、特に限定されないが、アミノ−、エポキシ−、アミド−又はメルカプト−官能化シランがある。有機金属カップリング剤(例えば、チタン系又はジルコニウム系有機金属化合物)も使用できる。
【0053】
繊維被膜が存在する場合には、本発明の樹脂から成形品を形成するために必要な高い溶融温度での加工中に組成物の発泡又はガス発生をもたらすことがある被膜の分解を防止するため、高い熱安定性を有する繊維被膜が多くの場合に好ましい。他の充填材及び補強材を、単独で又は補強繊維と組み合わせて使用することもできる。これらには、特に限定されないが、炭素フィブリル、導電性炭素、雲母、タルク、バライト、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、ミルドガラス、石英粉末、シリカ、ゼオライト、及び中実又は中空のガラスビーズ又は球がある。
【0054】
本発明のポリイミド樹脂は、金型付着物の少ない組成物を得るため、さらに1種以上の第二の樹脂とブレンドすることができる。好ましい第二の樹脂の例には、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリアリーレート、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びエチレンとアクリレートやメタクリレートとのコポリマー)、ポリフルオロポリオレフィン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、並びにシリコーン及びシリコーンコポリマーがある。
【0055】
ブレンド中の第二の樹脂は、樹脂に応じて組成物全体の約0.3〜約85重量%の範囲内の量でポリイミド樹脂と混合できる。さらに好ましい実施形態では、ブレンド中の第二の樹脂は、組成物全体の約10〜約70重量%の範囲内の量でポリイミド樹脂と混合できる。金型付着物の低減という利益は、一般に、高いポリイミド含有量、特に高いポリエーテルイミド含有量を有するブレンドで一層顕著となる。
【0056】
本発明の組成物は、特に限定されないが、着色剤(例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛及びカーボンブラック)、安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、アリールホスフィット、アリールホスホニット、無機ハロゲン化物及びチオエステル)、並びに離型剤、潤滑剤、難燃剤、煙抑制剤及び滴下防止剤(例えば、フルオロポリマーを基剤とするもの)を含む各種の添加剤と混合することもできる。かかる組成物には、紫外線安定剤を有効量で添加することもできる。
【0057】
本発明の組成物は、処方中に所望される材料及び追加の添加剤を均質に混合することを含む各種の方法で上述の成分とブレンドすることができる。好ましい方法には溶融ブレンディングがあるが、溶液ブレンディングも可能である。商業的なポリマー加工設備では溶融ブレンディング装置が利用できるので、溶融加工方法が一般に好ましい。かかる溶融加工方法で使用される装置の具体例には、共回転式及び逆回転式押出機、一軸押出機、共混練機、ディスクパックプロセッサー及びその他各種の押出装置がある。ブレンディング工程での融液の温度は、樹脂の過度の劣化を回避するため、好ましくは最低限に抑えられる。溶融樹脂組成物中では約285〜約370℃の溶融温度を維持することが多くの場合に望ましいが、加工装置中での樹脂の滞留時間を短く保つことを条件にすれば、さらに高い温度も使用できる。若干の実施形態では、溶融加工される組成物はダイの小さな出口開口を通して加工装置(例えば、押出機)から排出され、こうして得られる溶融組成物のストランドは水浴中に通すことで冷却される。冷却されたストランドは、包装及び以後の取扱いのため、小さなペレット状に細断することができる。
【0058】
本発明の組成物は、射出成形、圧縮成形、押出及びガスアシスト射出成形のような、溶融ポリマーを成形するための各種の常用方法で成形物品に加工できる。かかる物品の例には、特に限定されないが、電気コネクター、電気機器用囲い、エンジン部品、自動車エンジン部品、照明用ソケット及び反射器、電動機部品、配電装置、通信装置など(スナップ嵌めコネクター中に埋め込まれたデバイスを含む)がある。かかるポリイミド樹脂は、フィルム及びシートに形成することもできる。
【0059】
多くの場合、物品又は物品の一部を金属表示で被覆することが望ましい。かかる被膜は、電波又は電磁波の遮蔽又は反射をもたらすことができる。それは、物品に導電性の経路又は表面を与えることもできる。被膜は任意の金属からなり得るが、銀、銅、金、ニッケル、アルミニウム及びクロム並びに上述のもののいずれかを含む合金が多くの場合に好ましい。物品は、異種の金属又は金属混合物を組み合わせた1以上の金属被膜を有し得る。金属表面は、当技術分野で公知の任意の技術(例えば、スパッタリング、真空蒸着又は無電解めっき)で施工できる。
【0060】
本明細書中に記載した方法で製造される熱可塑性組成物が本発明の別の実施形態であることは自明なはずである。また、本明細書中に記載した熱可塑性組成物で形成した物品が本発明の別の実施形態であることも自明なはずである。
【実施例】
【0061】
さらに詳しく説明を行わなくても、当業者であれば、本明細書中の記載を用いて本発明を十二分に利用できると考えられる。以下の実施例は、特許請求の範囲に記載した発明を実施するに際して当業者に追加の指針を提供するために示される。ここに示す実施例は、本願の教示に役立つ作業を単に例示するにすぎない。したがって、これらの実施例は特許請求の範囲に定義された本発明を決して限定するものではない。
【0062】
実施例1
低プレートアウトPEIの合成。反応器内に、567kgのBPADA(概略組成、BPADA97.6モル%、BPADAのモノN−メチルイミド2.4モル%)及び1155リットルのo−ジクロロベンゼン(ODCB)を仕込んだ。反応混合物を150〜160℃に加熱した。140〜150℃の溶融MPD(113.4kg)を30分間にわたって添加した。同時に、5.1kgのアニリンを添加した。アニリン及びMPDの両者は、静止ミキサーを通してポンプ輸送しながらBPADAに添加した。MPD添加の完了後、水を除去しながら反応混合物を180℃に加熱した。反応混合物を170℃に維持したホールドタンクに移し、次いで溶媒除去系に供給した。ワイプトフィルム蒸発器を用いて溶媒を除去して、ODCBを500ppm未満に低下させた。溶融ポリマーをストランド状に押し出し、水浴中で冷却し、細断して完成ペレットを得た。得られたポリマーは約31200g/モルのMwを有していた。示差走査熱量測定法(DSC)で測定したTg(ガラス転移温度)は217℃であった。
【0063】
実施例2
安定剤を含む低プレートアウトPEIの合成。反応器内に、567kgのBPADA(概略組成、BPADA97.6モル%、BPADAのモノN−メチルイミド2.4モル%)及び1155リットルのo−ジクロロベンゼン(ODCB)を仕込んだ。反応混合物を150〜160℃に加熱した。140〜150℃の溶融MPD(113.4kg)を30分間にわたって添加した。同時に、5.1kgのアニリンを添加した。アニリン及びMPDの両者は、静止ミキサーを通してポンプ輸送しながらBPADAに添加した。MPD添加の完了後、水を除去しながら反応混合物を180℃に加熱した。イミド化が実質的に完了し、それ以上の水が発生しなくなった後、0.65kgのトリアリールホスフィット及び0.65kgのヒンダードフェノール安定剤を添加した。反応混合物を170℃に維持したホールドタンクに移し、次いで溶媒除去系に供給した。ワイプトフィルム蒸発器を用いて溶媒を除去して、ODCBを500ppm未満に低下させた。溶融ポリマーをストランド状に押し出し、水浴中で冷却し、細断して完成ペレットを得た。得られたポリマーは約31200g/モルのMwを有していた。DSCで測定したTgは218℃であった。
【0064】
比較例A
安定剤を含む標準PEIの合成。反応器内に、552.7kgのBPADA(概略組成、BPADA97.6モル%、BPADAのモノN−メチルイミド2.4モル%)、8.12kgの無水フタル酸(PA)、及び1155リットルのo−ジクロロベンゼン(ODCB)を仕込んだ。反応混合物を150〜160℃に加熱した。140〜150℃の溶融MPD(116.3kg)を30分間にわたって添加した。MPD添加の完了後、水を除去しながら反応混合物を180℃に加熱した。イミド化が実質的に完了し、それ以上の水が発生しなくなった後、0.65kgのトリアリールホスフィット及び0.65kgのヒンダードフェノール安定剤を添加した。反応混合物を170℃に維持したホールドタンクに移し、次いで溶媒除去系に供給した。ワイプトフィルム蒸発器を用いて溶媒を除去して、ODCBを500ppm未満に低下させた。溶融ポリマーをストランド状に押し出し、水浴中で冷却し、細断して完成ペレットを得た。得られたポリマーは約31200g/モルのMwを有していた。DSCで測定したTgは216℃であった。
【0065】
本発明の実施例は、アニリンで封鎖しながらBPADA及びMPDから製造した。実施例1では、ホスフィットもヒンダードフェノール安定剤も添加しなかった。実施例2では、同じ量のアニリンで封鎖すると共に、組成はいずれもCiba Geigy社から入手できる0.1%のヒンダードフェノール(IRGANOX 1010)及び0.1重量%のアリールホスフィット(IRGAPHOS 168)を含んでいた。半分だけ充填した10.2cm×0.32cm(4×1/8インチ)の円板金型を用いて、150トン射出成形機上で成形品を形成した。成形品の部分充填を使用したのは、金型付着物の生成を促進するためであった。400℃の溶融温度及び38℃の金型温度で200の部分ショット(約50g)を射出成形した後、金型上の付着物を注意深く除去して秤量した。表1には、金型付着物の種類及び重量を示す。「C.Ex.」は比較例を表す。
【0066】
【表1】


アニリン封鎖樹脂は、200ショット後に、無水フタル酸で封鎖した比較例より顕著に少ない金型上への付着物を示した。無水フタル酸封鎖比較樹脂(比較例A)に比べ、金型付着物は安定化アニリン封鎖樹脂について75%低減し、非安定化アニリン封鎖樹脂について98%低減した。金型付着物の大部分はPAMIであった。
【0067】
PAMI(フェニレンジアミンビスフタルイミド)、IRGAPHOS 168(トリアリールホスフィット)及びホスフィット酸化生成物は、AGILENT 6890ガスクロマトグラフを用いた高温ガスクロマトグラフィーで分析した。このガスクロマトグラフは、UAC−DX30 0.15μmフィルムを有する30m×0.25mmのウルトラアロイステンレス鋼製毛細管カラムと共に、オートインゼクター、450℃に加熱できるオーブン、電子式圧力調節器を有するクール・オン・カラム入口、及び水素炎イオン化検出器を備えていた。試料はアセトニトリルに溶解した。
【0068】
2種の安定化ブレンド(実施例2及び比較例A)についての金型付着物のうち、PAMIでない部分は、ガスクロマトグラフィーにより、トリス(ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィット(Ciba Geigy社からのIRGAPHOS 168)及びその酸化生成物と同定された。この特定の安定剤はポリマーの色を低減させるために役立つものの、高レベルのプレートアウトの一因にもなる。PEPQ(Clariant社から入手できるフェニルホスホニット安定剤)のような高分子量リン化合物が、トリス(ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィットより好ましい場合もある。PEI樹脂中に高分子量リン系安定剤を使用することは、米国特許第4508861号及び同第6001957号に記載されている。
【0069】
実施例2及び比較例Aの安定化樹脂から、約24時間にわたって照明用反射器を成形した。表2は、標準的な無水フタル酸封鎖樹脂(比較例A)に関しては、20分ごとに金型のクリーニングが必要であったことを示している。アニリン封鎖樹脂(実施例2)に関しては、金型のクリーニングは6時間ごとにしか必要でなかった。これは18倍の改善である。
【0070】
【表2】


実施例2の安定化アニリン封鎖樹脂及び比較例Aの安定化無水フタル酸封鎖樹脂を別々に、二酸化チタン1重量%及び住友化学(株)社からBONDFAST Eとして販売されている12重量%のGMAを含むエチレン−グリシジルメタクリレート(PE−GMA)コポリマー5重量%と溶融ブレンドした。得られたブレンドから、長時間にわたってコネクターを成形した。表3は、アニリン封鎖樹脂から製造したブレンドが要求する金型クリーニングが、無水フタル酸封鎖樹脂で製造したブレンドより少ないことを示している。この場合、アニリン封鎖樹脂を含む組成物では、プレートアウトに原因する金型クリーニング間の時間が16時間以上増加した。
【0071】
【表3】


実施例4
以下の方法を用いてアニリン封鎖ポリエーテルイミドを製造した。機械的攪拌機、凝縮器及びDean Starkトラップを備えた丸底フラスコに、137.6gのBPADA(概略組成、BPADA97.6モル%、BPADAのモノN−メチルイミド2.4モル%)、1.59gのアニリン、27.5gのm−フェニレンジアミン、及び285mlのo−ジクロロベンゼン(ODCB)を仕込んだ。水を除去しながら反応混合物を180℃に加熱した。窒素で掃去しながらODCBを留去し、溶融ポリマーをパンに移して冷却した。示差走査熱量測定法(DSC)で測定したTgは219℃であった。Mwは約33600であった。
【0072】
実施例5
ベンジル性プロトンを含むPEIの合成。機械的攪拌機、凝縮器及びDean Starkトラップを備えた丸底フラスコに、137.6gのBPADA(概略組成、BPADA97.6モル%、BPADAのモノN−メチルイミド2.4モル%)、2.01gのm−トルイジン(3−メチルアニリン)、27.3gのm−フェニレンジアミン、及び285mlのo−ジクロロベンゼン(ODCB)を仕込んだ。水を除去しながら反応混合物を180℃に加熱した。ODCBを留去し、溶融ポリマーをパンに移して冷却した。DSCで測定したTgは215℃であった。Mwは約29000であった。
【0073】
実施例6
アニリンの代わりに2.01gのp−トルイジン(4−メチルアニリン)を用いて実施例4の手順を繰り返すことで、別のベンジル性プロトン含有PEIを製造した。Tgは218℃であった。Mwは約31100であった。
【0074】
実施例4、5及び6のポリマー約50gを粉末にし、40rpmのHAAKE混合ボウル内で個別に加熱した。ポリマーを330℃で4分間加熱して痕跡量の溶媒を除去し、次いで3℃/分で380℃に加熱し、その温度に維持した。30分、60分、90分及び120分の全加熱時間後に、メートル−グラム(m−g)単位で測定したトルクを記録した。表4を見れば、アニリン封鎖樹脂(実施例4)は380℃で加熱した後にトルクの控え目な増加しか示さないのに対し、ベンジル性プロトンを含むm−及びp−トルイジン封鎖樹脂(実施例5及び6)は大幅なトルク増加を示すことがわかる。
【0075】
【表4】


ベンジル性プロトンを含まないアニリン封鎖樹脂(実施例4)は、良好な溶融安定性を有している。実施例5及び6では溶融安定性が低下する結果、加工装置で高い温度及び該温度での長い時間が必要とされるならば、ベンジル性プロトン含有樹脂を溶融加工して成形物品を得ることは一層困難になる。アニリン封鎖樹脂及びトルイジン封鎖樹脂はいずれもプレートアウトを低減させるものの、溶融安定性が良好な点でアニリン封鎖樹脂が好ましい。
【0076】
実施例7
ベンジル性プロトンを含むPEIコポリマーの合成。機械的攪拌機、凝縮器及びDean Starkトラップを備えた丸底フラスコに、137.6gのBPADA(概略組成、BPADA97.6モル%、BPADAのモノN−メチルイミド2.4モル%)、1.59gのアニリン、22.9gのm−フェニレンジアミン、5.0gの4,4′−メチレンジアニリン、及び285mlのo−ジクロロベンゼン(ODCB)を仕込んだ。水を除去しながら反応混合物を180℃に加熱した。ODCBを留去し、溶融ポリマーをパンに移して冷却した。DSCで測定したTgは216℃であった。Mwは約30000であった。
【0077】
実施例7のポリマー約50gを40rpmのHAAKE混合ボウル内で加熱した。ポリマーを330℃で4分間加熱して痕跡量の溶媒を除去し、次いで3℃/分で380℃に加熱し、その温度に維持した。30分の加熱後、ポリマーは367m−gのトルクを有していたが、60分の加熱後にはトルクが1134m−gに増大し、90分後にはトルクが1742m−gに上昇し、120分の加熱までにはトルクが2346m−gに増大した。ベンジル性プロトンを含むメチレンジアニリン(MDA)単位を少量用いただけでも、ポリマーはベンジル性プロトンを含まないアニリン封鎖樹脂(実施例4)よりはるかに高いトルクを示した。アニリン封鎖メチレンジアニリン−BPADA PEIコポリマーは低減したプレートアウトを有するものの、熱溶融安定性はベンジル性プロトンを含まない樹脂ほど良好でない。
【0078】
以上、典型的な実施形態について本発明を例示し説明してきたが、本発明の技術思想から決して逸脱することなしに様々な修正及び置換を行い得るので、本発明がここに示した細部に限定されることはない。したがって、当業者であれば、ルーチン実験を用いるだけで本明細書中に開示した本発明の追加の修正例及び同等例が想起されるであろう。かかる修正例及び同等例のすべてが特許請求の範囲で定義される本発明の技術思想及び技術的範囲に包含されると考えられる。本明細書中に引用したすべての特許の開示内容は、援用によって本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の構造単位を含んでなるポリイミド組成物であって、
上記構造単位が分子量100〜500の有機ジアミンモノマーと分子量218〜1000の芳香族二無水物モノマーから誘導され、当該ポリイミドがさらに分子量93〜250の芳香族モノアミン封鎖剤から誘導される構造単位を含んでおり、
当該ポリイミドに含まれる不純物が当該ポリイミドの重量を基準にして5重量%未満であり、上記不純物が約500ダルトン未満の分子量を有していて1種以上のモノマー単位又は1種以上の芳香族モノアミンから誘導される構造単位を含んでいる、ポリイミド組成物。
【化1】

式中、「a」は1を超える値を有し、Vは四価リンカーであり、Rは置換又は非置換二価有機基である。
【請求項2】
前記不純物が、1モルの芳香族二無水物モノマーと2モルの芳香族モノアミンとの反応生成物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
有機ジアミン、芳香族二無水物及び芳香族モノアミン封鎖剤がベンジル性プロトンを実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
上記四価リンカーが、以下の群から選択される式の構造単位を含む、請求項1記載の組成物。
【化2】

式中、Wは、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−C2y−(yは1〜5の整数である。)及びこれらのハロゲン化誘導体からなる群から選択される二価部分、又は式−O−Z−O−(式中、「Z」は二価芳香族基である。)である。
【請求項5】
「Z」が次式を有する、請求項1記載の組成物。
【化3】

式中、Aは芳香族基であり、Eはアルキレン、アルキリデン、脂環式基、含硫黄結合、含リン結合、エーテル結合、カルボニル基、第三級窒素基又は含ケイ素結合であり、Yは各々独立に一価炭化水素基、アルケニル、アリル、ハロゲン、臭素、塩素及びニトロからなる群から選択され、「m」は0(0を含む)からA上の置換可能な部位の数までの整数を表し、Rは各々独立に一価炭化水素基であり、「p」は0(0を含む)からE上の置換可能な部位の数までの整数を表し、「t」は1以上に等しい整数を表し、「s」は0又は1に等しい整数を表し、「u」は0を含む任意の整数を表す。
【請求項6】
「V」基が、以下の式及びこれらの混合物からなる群から選択される構造単位を含む、請求項1記載の組成物。
【化4】

【請求項7】
前記有機ジアミンが、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−オキシジアニリン、3,4′−オキシジアニリン、3,3′−オキシジアニリン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2′−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ビス(アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2′−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシ)フルオレン、ジアミノベンズアニリド及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のジアミンである、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
芳香族二無水物が、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ヒドロキノンジフタル酸無水物、レゾルシノールジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、ビスフェノールA二無水物、ベンゾフェノン二無水物、ピロメリト酸二無水物、ビフェニレン二無水物、オキシジフタル酸無水物及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の化学種である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
芳香族モノアミンが置換及び非置換アニリン、置換及び非置換ナフチルアミン、並びに置換及び非置換ヘテロアリールアミンからなる群から選択され、置換基は芳香環に結合したアリール基、アルキル基、アリールアルキル基、スルホン基、エステル基、アミド基、ハロゲン、アルキル−ハロゲン又はアリール−ハロゲン基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基或いはアリールケト基からなる、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
次式の構造単位を含んでなるポリエーテルイミド組成物であって、
当該ポリエーテルイミドが分子量100〜500の有機ジアミンモノマーと芳香族二無水物モノマーとから誘導される構造単位を含んでいて、当該ポリエーテルイミドの分子量が分子量93〜250の芳香族モノアミン封鎖剤の添加で調節され、
当該ポリエーテルイミドに含まれる不純物がポリエーテルイミドの重量を基準にして5重量%未満であり、上記不純物が約500ダルトン未満の分子量を有していて、1種以上のモノマー単位又は1種以上の芳香族モノアミンから誘導される構造単位を含んでいる、ポリエーテルイミド組成物。
【化5】

式中、Tは−O−又は式−O−Z−O−の基であり、−O−又は−O−Z−O−基の二価結合は3,3′位、3,4′位、4,3′位又は4,4′位にあり、Zは以下の式及びこれらの混合物からなる群から選択される二価芳香族基である。
【化6】


【公表番号】特表2007−518835(P2007−518835A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517218(P2006−517218)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018520
【国際公開番号】WO2004/113446
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】